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美姉妹 秘蜜交姦


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          ・    目    次    ・
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      第一章 女子高生、白昼の凌辱・・・・・・・54行
      第二章 双子姉妹、淫靡な対面・・・・・・699行
      第三章 美少女、淫乱変身・・・・・・・1225行
      第四章 近親相姦、淫靡な蜜・・・・・・2152行
      第五章 淫乱学園、禁断の交わり・・・・2848行
      第六章 美少女の秘花は闇に疼く・・・・3483行




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第一章 女子高生、白昼の凌辱



 「お疲れさまでした!」
 コートに整列した啓星高校女子テニス部員は声を揃えた。
 啓星女子テニス部は美人ぞろいで学内でも有名なのだが、その中でも特に二年生の岸田真紀子は目立った存在だった。すらりと伸びた長い脚。スリムだが均整のとれた身体。セミロングの黒髪のヘアバンドがとてもよく似合う。整った美貌は、スコートから伸びるふっくらとした太腿や、対照的に引き締まったふくらはぎと同様、ひときわ目立って色白だ。陽灼けしにくい体質なのだろう。
 女子高校生とは言っても、日焼けサロンに通って茶髪にピアスをするような、いわゆるコギャルタイプと真紀子は全く違う、どちらかというと古風でおとなしいタイプなのだ。
 目鼻立ちのすっきりとした顔は清純そのものだが、知性的な魅力に溢れてもいる。事実彼女は学年で十位に入る成績だ。啓星高校の男子生徒で真紀子に憧れていない者はないが、彼女の清純で侵しがたい雰囲気のために交際を申し込むものはいない。
 真紀子自身も男子と口を聞くのは苦手だった。一人娘で大切に育てられた上、進学校である啓星に入学するまでは、幼稚園から一貫教育のお嬢さん学校に通っていたからだ。
 更衣室で制服のセーラー服に着替えている時、親友の横井真澄が声をかけた。
 「また今日もコートの金網に男子がへばりついてたね」
 以前からスコート姿の彼女達を見物する男子生徒はいたが、下校時に遠慮気味にちらちら見る程度だった。啓星高校は進学校だから男子は押し並べておとなしい内気な秀才タイプが多かった。が、最近は数人の『固定客』が金網の前に陣取って、じっくり彼女達を鑑賞するようになっていた。
 「みんな真紀子を見てたのよ。羨ましいな」
 「そんな……気のせいでしょ」
 彼女が艶のある髪をサラサラとなびかせ、スコートを翻しすらりと伸びた足を惜し気もなく見せる、その悩ましさ、美しさを真紀子本人は判っていない。内気でオクテな真紀子は、自分の身体に男たちを強烈に惹きつける魅力があることを、意識したことがなかった。
 けれど、誤解されることもある。自分が男にモテる事を知っていてわざと焦らすタカビーな女だと思われるのだ。
 可愛らしく親しみやすい雰囲気で、どちらかと言えば男子とも友達づきあいの出来る真澄は、そんな彼女をじれったく思う事もあった。
 「そうじゃないって。男子の目はみんな真紀子に向いてたもん」
 「私が下手だからよ」
 そう言いつつ、真紀子も男子生徒のなんだか暑苦しい視線を全身に感じていた。その固定客が誰かも判っていた。自分のクラスの坂口良平たちだ。
 着替え終えた真紀子は、束ねていた髪を解いた。彼女の肩に美しい黒髪がふわりと広がり、それが清純そのもののセーラー服によく似合った。高校生がセーラー服を着ると、ときどきまるで似合わなくて隠微な感じになる女の子もいるけれど、真紀子にはよく似合ったし、彼女自身も気に入っていた。
 「これ、やっかみじゃないから素直に聞いてね」
 真澄は真面目な表情で言った。
 「坂口たちが、真紀子を見てにやにやしてたの。金網でだけじゃないの。教室でもどこでも、真紀子を見てにやにやしてるの。なんだかヘンなムードよ」
 坂口はクラスの中でも目立たない男だった。女生徒に積極的に話し掛ける事もない。いつも数人の友人と一緒にぼそぼそ喋っているような陰気なタイプだ。そんな男が自分を見てにやにやしていたというのはあまり気分のいいものではない。
 着替えを終えて帰ろうかと思った真紀子は、忘れ物をしたのを思い出して教室に戻った。
 もう誰もいないだろうと思っていた二年C組の教室には、三人の男子が残っていた。今しがた話題になった坂口たちだった。
 ドアの開く音にびくっとした三人は、それまで見ていた本を慌てて隠したが、入ってきたのが真紀子だと判ると、狼狽が驚きに変わった。
 三人は顔を見合わせて絶句していたが、思い切ったように坂口が真紀子に声をかけた。
 「……あのさあ、岸田」
 男だけのなんとなく押し殺した雰囲気に気味の悪さを感じた真紀子は、自分のロッカーから本を出すと足早に教室を出ようとした。
 「ちょっと待てよ」
 「なに? 私、この本を図書館に返さないといけないから」
 「お前、なんか秘密を持ってるんじゃないか」
 坂口は一度は隠した本を持ってつかつかと真紀子のそばに歩み寄った。
 「これ、見てみろよ」
 彼が真紀子の目の前に突きつけたのは、無修正のいわゆるウラ本だった。少女と言ってもいいまだ若い女が大きく足を広げ、ぱっくりと口を開けた女陰に猛々しく大きな男のモノを深々と受け入れている、そのものズバリの写真。
 「きゃっ!」
 真紀子は思わず悲鳴を上げて目を背けた。
 十六才の彼女は、まだ男と女のナマな行為を経験した事はもちろん、見た事さえなかった。レディース・コミックなどで読むことはあるが、真紀子の好みはあくまでロマンティックな、愛し合う二人が確かめ合う行為としてのセックスだった。美男美女が裸の上半身を重ねあわせているだけで、性器そのものはぼかされている。このような剥き出しの性行為そのものを見るのは初めてだった。
 「よく見てみろよ」
 坂口は顔を背ける真紀子になおもウラ本を突きつけた。
 「よして! 見たくない! やめてください」
 真紀子の顔は、赤くなるどころか、真っ青になっていた。全身に鳥肌が立って恐怖で気を失ってしまいそうだった。
 ここで、犯される。
 真紀子はそう思った。
 「いや。助けて……」
 後ずさりしながら真紀子は哀願するような声を出した。
 「助けてって……」
 「坂口君はそんなことしないわよね、そうよね」
 助けを求めるように、真紀子は坂口を見た。
 「おい坂口。お前、誤解されてるぞ」
 元の席に座ったままの木島と加藤が笑いながら言った。
 「あ。そうか」
 坂口は真紀子の涙ぐんだ顔を見て慌てて説明を始めた。
 「いやその、アソコじゃなくて、この女の顔をよく見てみろって言いたいんだ、おれは」
 え?
 真紀子は彼の意外な言葉に目を上げて、言われるままにその写真の女の顔を見た。そのモデルの顔は、あろうことか……。
 これは、私だ!
 真紀子の全身に衝撃が走った。
 私が全裸になって、こんな淫らな格好をしている! でも、これは私じゃない。私の筈がない。
 「なあ、これお前だろ?」
 「ち、違う。私じゃない」
 「でもよ、どう見てもこれはお前の顔だぜ。ふーん。真紀子って、胸はふつうだと思ってたけど、案外巨乳なんだな」
 坂口は余裕を取り戻して、にやにやして真紀子の全身をじろじろと舐めるように見た。
 「ここの毛は薄いんだ。それとも仕事のために剃ったのか?」
 真紀子はショックのあまり、答えることも出来なかった。
 その写真の少女モデルは、たしかに真紀子本人が見ても自分にしか見えなかった。しかし真紀子は坂口が言ったようにスレンダーな身体つきで、このモデルのような大きなバストではない。髪だって真紀子は肩まで伸ばしたストレートだが、このモデルはウェーブのかかった派手なヘアスタイルがふんわりと真紀子そっくりの顔を取り巻いている。
 顔立ちもまったく瓜二つだが、よく見れば細面で清純で繊細な美しさの真紀子に対して、このモデルにはなんとなく淫蕩で下品な表情が浮かんでいる。それはセックスをしている写真だからではなさそうだ。
 「いつからオマエ、こんなバイトやってるんだよ」
 真紀子の身体を眺めているうちに、坂口の目の色が変わっていた。完全に欲情していた。
 「こんな写真撮ってるくらいなら、もうヤリマンなんだろ……やらせろよ」
 坂口は迫ってきた。
 「違うわ! これは私じゃない!」
 真紀子は後ずさりしたが、壁にどんとぶつかってしまった。学校で優等生で通っている真紀子はもちろんそんなバイトはした事はなかったし、そもそも処女なのだ。ヤリマンなどと言われる理由がない。
 坂口は真紀子に抱き付いた。
 「うっ。汗くせえ」
 真紀子の首筋に顔を埋めた坂口が呻くように言った。
 クラブ活動のテニスをやったあとだ。早く帰ってシャワーを浴びたかったのに。
 「女の汗の匂いは男とは違うな。いい匂いだぜ」
 「は、離して!」
 他の二人はにやにやしてその光景を眺めていた。坂口がうまくいったら自分たちも『参加』してくる気なのだろう。コヨーテのようなやつらだ。
 坂口の手が制服越しに真紀子の乳房を掴んだ。彼女の硬い果実は坂口の掌の中でぐにゃりと潰れた。
 「小せえな。写真とは大違いだ」
 「だ、だからあれは」
 真紀子はそれ以上喋れなかった。坂口の唇が覆いかぶさってきたからだ。
 彼の舌が自分の歯に触れるのを感じて、真紀子は思わず手が出た。彼女にとって大事に取っておきたかったファースト・キスなのに、こんな形でさせられてしまった怒りが湧いてきて、坂口の頬を思い切り平手打ちしてしまったのだ。
 「痛てえ!」
 坂口は燃えるような目で真紀子を睨みつけた。
 「いやっ! やめて!」
 真紀子は声を上げたが、それが彼らの本能を掻き立ててしまった。木島と加藤も席を立って真紀子に近づいてきた。
 「声を出すなよ。誰かに見られたいのか」
 木島が押し殺した声で言った。
 この高校はけっこう名の通ったハイグレードで成績優秀なところだ。今まで生徒が性的な問題を起こした事などなかった。ましてや校内でのレイプ事件など。しかし、それが現実に自分の身に起ころうとしているのか?
 真紀子には、事の成り行き信じられなかった。
 三人の男は真紀子を壁に押えつけると、無言のままセーラー服の下に手を入れてじわじわと獲物をなぶりにかかっていた。
 「元はと言えばお前が悪いんだぜ。啓星高校の女がウラ本のモデルをやってるなんてな」
 「先生に知れたら、お前、退学だな」
 「黙っててやるからさ、その代わり……」
 三人は口々に脅しともつかない言葉を発しながら真紀子の身体に手を伸ばしてきた。
 坂口は真紀子のスカートをぱっと捲りあげた。
 「へえ。わりと派手なパンティ穿いてるじゃないか。風紀委員として取り締まってやる」
 真紀子のパンティが少年たちの目にさらされた。色は純白だがハイレグ気味でレースを多く使った高級なものだ。薄い生地から透けて見える真紀子の淡い秘毛に少年たちは興奮した。
 坂口はたまらず真紀子のパンティに手を伸ばした。男の指が薄い布越しに大切な部分をなぶり、じわりじわりと執拗に這い回ろうとする。初めて経験する異様な感覚に、真紀子は身を震わせて逃れようとした。
 「止めて! 離して……」
 が、真紀子の声が途絶えた。今度は木島が彼女の唇を奪ったのだ。三人がかりで押さえつけられて、胸もずっと揉まれつづけている。
 坂口は、憧れの真紀子の秘めやかな部分に夢中になっていた。撫で回すと薄い布が秘毛と擦れてさりさりという感触が指先に伝わってくる。
 「坂口。風紀違反のパンティを没収しろよ」
 真紀子の唇を味わうのに没頭していた木島が、やっと口を離して言った。
 「よしきた」
 坂口は早速真紀子のパンティのゴムの部分に手をかけようとした。
 「イヤ! 助けて! お願い!」
 真紀子の声に怯んだのか、坂口は一瞬手をとめたが、秘部をもてあそぶ動きは変わらない。
 「どうして? なぜ私にこんなことを?」
 涙ぐんで尋ねる真紀子に木島が答えた。
 「なあ。何時までもカマトトぶるんじゃないよ。ヤリマンのくせに、そんなにおれ達とヤるのが嫌なのかよ」
 すっかり興奮した木島は、そう言いつつ真紀子の首筋におぞましく舌を這わせた。
 坂口の手はパンティのゴムの部分にかかった。
 「へえ、啓星高校のマドンナ、岸田真紀子にもやっぱり毛は生えてるんだな」
 夢中になった坂口はパンティをずらし始めている。
 「わりと薄いぜ。顔とおんなじでオマンコも清純なんだね」
 今まで誰にも見せたことのなかった真紀子のヘアが教室に差し込む夕陽に照らしだされた。
 真紀子の雪のように白い下腹部に少年たちの手が一斉に伸びた。一部とはいえパンティからはみ出した真紀子の秘毛は艶々として、その黒さは鮮烈だった。
 三人の指は真紀子の陰毛を掻き分け、引っ張ったり指に巻き付けたり、好き勝手にもてあそんでいる。
 そのあまりの羞恥に耐えきれず、真紀子は声を殺して泣き始めた。嗚咽を聞かれるのも恥ずかしかった。
 「やめて……お願いだから……もう、やめて」
 彼女の意に反して、真紀子の涙声はぞくぞくするほど色っぽかった。その声にさらに興奮した木島の手は、揉みしだき続けていた真紀子の胸を一度離れ、セーラー服をまくり上げようとし始めた。
 「こいつのオッパイも見てやろうぜ」
 部活のあとなのでスリップは身につけていない。暑かったし、すぐ帰宅するのだからと思ったのだ。セーラー服の下は素肌で、ブラジャーをつけているだけなのだ。
 「たまんないぜ、このしっとりした肌の手触りが……」
 ブラに手をかけようとする木島の手から逃れようと身をもがいていた真紀子が、その時、びくんと反応した。
 坂口がついにパンティの中に手を入れ、真紀子の秘裂に沿って指を這わしたからだ。
 「お、お願いです……これ以上は許して。誰にも言わないから。だから……」
 それを聞いた坂口は、逆に手を一層深く真紀子のパンティの中に突っ込んだ。
 「ああっ!」
 自分でも思いがけない声が出た。まったく予期しない電流が真紀子の背筋を駆け抜けた。
 坂口の指が真紀子の恥ずかしい突起に当たったのだ。
 「ははん。命中したな」
 坂口は真紀子のクリトリスをじっくりと嬲りにかかった。
 「クリトリスは皮をめくってやると感じるんだってさ」
 受験生だけあって本を読んで研究したらしい。坂口は真紀子のちいさな肉芽を摘まみ上げてその表皮をつるんと剥こうとした。処女のそれがすんなりと剥けるはずのないことを、この受験生は知らない。
 「どうだ、岸田、気持ちいいか? ほら大きくなってきたぜ。清純な顔しててもサネは感じるんだな」
 初めて体験させられるただただ異様な感覚に茫然としている真紀子から、木島はブラジャーを剥ぎ取ろうとしていた。
 純白でレースに覆われたパンティと対のブラは前開きだが、そのホックがなかなか外れずに焦れている。
 ぱちっと音がしてフロントホックが外れ、真紀子のやや小ぶりだが、引き締まってつんと上を向いたバストがピンクの乳首とともに外気にさらされた。
 「よしこれが岸田真紀子のオッパイだぜ」
 早速乳首を摘まみあげ、やわやわと揉みしだきにかかる木島に加藤が言った。
 「写真とずいぶん大きさが違うもんだな」
 加藤はウラ本の写真と真紀子を見比べている。彼らはレイプというより解剖をしているような雰囲気になってきた。
 「女のオッパイは興奮すると大きくなるらしいぜ」
 真紀子の乳房を絞りあげるように揉んでいる木島が知ったかぶりをした。彼も哀しいまでに受験生だ。
 坂口の指はあいかわらず真紀子のパンティの中を這い回り、今度は下のクレヴァスの周辺を淫猥になぞっていた。
 加藤はといえば、暴発しそうに大きくなった自分のモノをズボン越しに真紀子の太股に激しく擦り付けている。
 「イヤ! こんなのイヤ! お願い! 許して。誰にも言わないから。だから」
 この三人は決して不良ではなかった。変態じみた無気味なところはあったが、成績も良くておとなしく、ここまで力づくの行為に及ぶタイプではなかったのだ。
 男はみんなケダモノなのか。餌食になる前に嬲られながら真紀子は血も凍る恐怖を味わっていた。
 加藤の手がすべすべした太股をさっと撫でると、猛烈な嫌悪感が身体の底から沸き起こり、全身にさあっと鳥肌が立った。
 「やっぱり写真で見るよりナマの方がいいな。くそ。感じるぜ」
 坂口がもう我慢出来ないとばかりにズボンを脱ぎかけた、その時。
 そろそろ帰れよ、という教師の声が響いてきた。この高校は居残りする場合は事前に許可を求めないといけないのだ。
 「ちっ。あと少しだったのに」
 三人は慌てて真紀子から離れ、近くの席に座った。
 真紀子がはだけられた胸を隠し、スカートの乱れを急いで直していると、教室のドアが開いた。
 「何してる?」
 体育教師の笠井が顔を覗かせて三人と真紀子をゆっくりと見た。
 「あ……あの、僕ら、学校新聞に何か書いてくれって岸田さんに頼まれて、どうすればいいのか話し合っていたんです」
 坂口は見掛けによらず悪智恵が回る。真紀子が学校新聞の編集委員である事をとっさに思い出したのだ。
 「アニメ評を書いてくれって言われたんですけど、オタクに思われるのもイヤだから……なあ」
 坂口は他の二人に同意を求めた。木島も加藤も、そうそうと首を振った。
 「新聞も大変だな……明日また考えろ」
 笠井はそう言って立ち去ろうとしたが、振り返った。
 「岸田。お前、顔色悪いぞ」
 坂口は真紀子をキッと睨んだ。机の中の彼の手にはあのウラ本がある。ここで真紀子がすべてを話したら、坂口はきっとあの本を教師に見せるだろう。あのモデルは決して自分ではないが、あまりにもそっくりなので信じてもらうのは厄介だ。仮に信じてもらえなかったら……無実の罪で退学になってしまうかもしれない。そんなことになったら両親に何と言う? 噂もいっぺんに広まるだろうし……。
 「坂口君が、書いてくれないというので、とても困ってたんです。ページに穴が開いてしまうので」
 ふうん、と笠井は真紀子と坂口の顔を交互に見た。
 「坂口。そう言わずに書いてやれ。女を泣かす男は最低だぞ」
 この一本気な体育教師は、青春ドラマ風に言った。
 「ありがとうございます、先生。じゃ、坂口君、お願いね」
 真紀子はそう言うと、笠井と一緒に教室を出た。
 残された三人は、悔しそうに真紀子を見送るしかなかった。
 助かった。そう思うと、真紀子の膝ががくがくと震えだし、まともに歩けなくなった。しかし、この教師に悟られてはいけない。
 彼女はなんとか最後の力を振り絞ると学校から出て、ちょうどやって来たバスに乗り込んだ。


                  *


 バスの中で、真紀子はなんとか気を静めようとした。
 ファースト・キスを奪われた上に裸にまでされて恥ずかしい部分にまで手を触れられただなんて……。それだけではない。彼らを狂わせたあの自分そっくりのモデルはいったい何者なのだろう。あれほど自分に瓜二つの人間がいるものだろうか。
 そう言えば……彼女は、以前母親が話した事を思い出していた。真紀子には双子の妹がいたが死んでしまったのだと聞いた事があったのだ。
 悲しい思い出なのか、両親は妹の話をしたことがなかった。彼女自身、小さな頃の思い出で、かすかに覚えているような覚えていないような、そんな記憶しかなかった。ただ、両親は、『妹は昔行方不明になってしまった。誘拐されたのかもしれないが、身の代金の要求もない。迷宮入りのまま、きっと事故に遭って死んでしまったのだと思うが、失踪宣告をして戸籍から消すのは忍びがたいので、そのままにしてあるのだ』と言うだけだった。
 もしかして、と思いかけた真紀子は、慌ててその考えを打ち消した。そんな事はない。そんな事があるはずないじゃないの。それじゃあまりにも残酷な話だ……。
 真紀子はその考えを頭から追い出した。


 家に帰った真紀子は、本棚にあるアルバムを出して、行方不明のままの妹の写真を探そうとしたが、やめた。どうせ写真が残っていても赤ん坊の頃の物だ。それに……。
 彼女は、その事に触れるのに何か怖いものを感じたのだ。触れてはいけない事。両親が封印してある事を暴いてはいけない。そう思った。
 自分の部屋に顫った真紀子は、何も手につかなかった。帰ってすぐにシャワーを浴びた。しかし、全身を這い回り、胸をつかみ、一番恥ずかしいところまで侵入してきた同級生たちの手の感触が肌にいつまでも残って二度と消えないような気がして、涙が溢れた。
 自分の部屋でベッドに横になると、今日の忌まわしい出来事がどうしても思い出された。
 明日、学校に行って彼らと再び顔を合わせるのか? 真紀子は恐かった。彼らの目に宿った狂暴な光は見慣れた同級生の少年たちのものではなかった。自分をただのモノとして、一匹の雌としてさげすみ、踏みにじろうという目だった。
 あのおぞましい出来事を……摘まれた乳首の痛み、〓き乱された恥毛の感触、ズボンの布地越しに押しつけられた男のものの固さ、恥ずかしい突起を剥きあげられた時のあの感覚を、教室の中で思い出してしまったら……。
 真紀子は耐えられなかった。学校を休んでしまおうか? でも理由は誰にも言えない……。
 真紀子の考えが頭の中でどうどう巡りを始めた時に、母の声が聞こえた。
 「真紀子。いるんでしょ」
 「はい」
 彼女は努めて明るい声を出した。
 「お友達から電話よ」
 真紀子は部屋を出て廊下にある電話を取った。
 「おれ。坂口」
 その声を聞いた途端、真紀子は凍りつき、舌が痺れたように何も言えなくなった。
 男から掛かってきた電話なので、母は真紀子の様子を探るようにちらちら見ている。
 お願い、私をそっとしておいて……。
 真紀子は受話器を叩きつけたかったが、母の手前、何事もない振りをするしかなかった。
 「いいか、お前、誰にも言うなよ。今日のこと」
 坂口は押し殺したような声だ。なぜか息遣いが荒い。
 「俺達が退学になるんなら、お前も道連れだからな。あのウラ本見せてお前から誘ってきたって言ってやるぜ」
 ウラ本のグラビアであられもなく足を開いていた少女の姿、その顔、そしてその股間に突き刺さっていたグロテスクな男のもの……思い出すだけで真紀子は顔から血の気がひいた。
 「おい何とか言えよ。声聞かせてくれよ。おれ今、お前のあの写真見ながらさ……」
 坂口の息遣いが受話器の向こうで一層激しくなった。
 「せんずりこいてんだぜ。判るか? オナニー、マスターベーションだよ」
 蒼白めた真紀子の頬が一瞬紅潮した。思わず、いやっと耳を塞ぎたくなった。
 「切るなよ。今切ったら、ほかのやつにも言いふらすぜ」
 受話器を持つ手から力が抜けそうだ。坂口の淫猥な息遣いといやらしい言葉が容赦なく耳から侵入してくる。
 「たまんねえよ。お前の身体、写真みたら思い出しちゃうぜ。今度、あの写真の男みたいに後ろから入れさせろよな……」
 いたずら電話というものがあることは知っていたが、自分の家で、親もいるところで、こんなものを聞かされるなんて……。
 真紀子は涙ぐみ、激しい動悸に耐えるしかなかった。
 「……びんびんだぜ、俺のチンポ。入れてやるよ、お前のオマンコに。毛が薄くて気に入ったよ」
 とても同級生の坂口の言葉とは思えなかった。電話では大胆になるのだろうか?
 「岸田、お前も感じてるか? 濡らしてるんだろ、どうせヤリマンなんだから」
  坂口の息遣いはさらに一層激しくなった。グラビアの淫らな写真と受話器の向こうにいる真紀子のイメージが一体となって異様に興奮しているらしい。
 「いいか、明日、学校休むなよ。俺たち三人で絶対にハメてやるからな。たっぷりやってやるよ。楽しみにしてろよな……」
 真紀子は目の前が真っ暗になる思いだった。全身から力が抜けてゆく。坂口は言葉で一方的に真紀子を嬲る快感に、ほどなく絶頂に達したらしく突然電話を切った。
 茫然と受話器を握りしめたままの彼女に、母親の和代が声をかけた。
 「どうしたの、真紀子? 電話は終わったの?」
 「あ……ええ、貸してあげたノートを家に忘れたのでどうしようかっていう電話だったの」
 彼女は咄嗟に嘘をついた。
 「そうなの。ならいいけど」
 「けど?」
 真紀子によく似た清楚で美人の母親は笑顔になった。
 「あなたもボーイフレンドが出来る年頃なんだなあと思うと、ね。親としてはいろいろ心配なのよ」
 ……どうしよう。とてもママには言えない。口にするさえけがらわしいようなことを、一体どうやって言葉にすればいいのだろう。
 「心配しないで。私は大丈夫よ」
 真紀子は無理をして明朗な女の子風に言ったが、混乱し、絶望的な気持ちだった。
 今まで意識したこともなかったけれど、私をセックスの対象としか見ない男がいるんだわ。そういう事をする女の子は、全く別の世界に住んでいるものだとばかり思っていたのに、私がそうだと思われるなんて……。
 男の腕力と性欲の前では自分がいかに無力かを思い知らされた彼女は、暗澹たる思いだった。


                  *


 土曜日。
 学校にいる間、真紀子はずっと真澄と一緒だった。一人になって隙を見せたらどんなことになるか判らない。トイレに行くのでも真澄と一緒だったので、「あんなに連れトイレを馬鹿にしてたマキなのに」と真澄もおかしがったが、背に腹は変えられない。
 坂口たちは真紀子の様子をずっと伺っているようだった。あの暗い目で見られているのかと思うと、真紀子はどうしようもなく嫌な気分になった。
 学校の帰りに、真紀子は真澄と一緒に買い物に行った。彼女はもともとウィンドウ・ショッピングが好きだったが、今日は真澄とあれこれ喋りながらでも、通りすがりの男の視線がまとわりつく感じがしてとても嫌だった。
 「ねえ、このセーター、可愛いよね」
 「うん……」
 「なによ、さっきから生返事ばっかりで。マキ、どこか調子が悪いの?」
 と真澄に聞かれても、本当の事は言えない。どう言えばいいの? 私にそっくりのモデルのウラ本に興奮した同級生に裸にされて襲われそうになった、なんて絶対に言えない。
 これまで何とも感じなかった道ゆく人や店員の視線が、みんな自分の身体を狙って舌なめずりをしているように感じる。隙があれば襲いかかって犯されそうな感じがする。
 ああ、ノイローゼだわ。
 「悪いけど、私、帰る」
 真澄はちょっとむっとして真紀子を見たが、彼女の顔色があまり良くないのが判った。
 「うん。判った。家まで送ってこうか?」
 「それは大丈夫。一人で帰れるわよ。まだ買い物が残ってるんでしょ?」
 うんまあね、という真澄とはショッピングセンターの中で別れ、真紀子は一人で駅に向かった。
 しかし、自分を尾けてくるような気配はだんだん強くなってきた。うっとおしい視線が背中にまとわり付いてひりひりするようだ。
 こんな時は家で静かにしているのが一番。
 真紀子の足は早くなった。
 駅前のスクランブル交差点で、真紀子は突然腕を掴まれた。きゃっと声が出そうになったが、掴んだのが男だと判って、息を呑んだ。その男は見るからにヤクザのような怖い顔立ちだったからだ。
 「おい。こんなことろでなにしてる」
 押し殺した声で、男が言った。
 「誰の許可を貰った? え?」
 「許可って……」
 「客とデートか? こんなセーラー服なんか着ちゃってよ。こういう注文だったのか? 街中でセクハラ・プレイか?」
 注文? セクハラ・プレイ?
 男は真紀子の腕をぐいと引っ張って駅とは反対方向に連れて行こうとした。
 「売れっ子だからっていい気になるなよ」
 「ど、どういうことなんですか。私、なんのことだか」
 真紀子は後ろを見ると、この男の仲間のような男が二人、小走りでやって来るのが見えた。こいつらもヤクザ風だ。
 「こんな昼日中から堂々と出歩くなんて、いい根性してるじゃねえか。あんまり度胸がいいんで別人かと思ったぜ、え?」
 さっきから感じていた粘りつくような視線は、この男たちのものだったのだ。
 しかし、どうして私が、こんなヤクザに訳の判らない事を言われるの?
 真紀子は瞬く間に路上駐車してあったベンツに押し込まれてしまった。
 「スケジュールはいっぱい詰まってるんだしな。こんな制服着てちゃらちゃらしてるヒマなんかないだろうが。学校なんか行った事のないオマエがよ」
 彼女は、拉致されてしまったのだ。
 「判ったぜ。こいつ、衣裳の制服を着て逃げ出しやがったに違いない」
 最初に真紀子を掴まえた男が言った。
 「テメエ、逃げ出すたあどういう魂胆だ!」
 「ちょっと甘い顔するとこのザマだ。帰ったらたっぷりヤキを入れてやるからな」
 真紀子には何のことかさっぱり判らないが、ただ、とてつもなく大変な事に巻き込まれてしまったのは間違いなかった。
 とにかく、誤解を解かなくては。真紀子は恐ろしさにどきどきしながら、抗弁した。
 「違います。違うんです!」
 「なにが違うんだよ?」
 「人違いです! 勘違いです! 私はあなた方を知らないし」
 「あなた方ときたか。笑わせるぜ」
 真紀子は男二人に挟まれて座っていた。その両方が彼女に手を延ばしてきた。
 「おれたちが人違いなんかすると思うか? あんな人ごみの中でお前を見つけたんだぜ」
 右側の男がいきなりスカートの中に手を入れ、両足を自分のほうにぐいっと引っ張った。
 「ほうら。足を広げろよ。びろんと広げておれにも見せてくれ」
 「い、いや!」
 真紀子は膝を割られそうになったので、必死で両足をばたつかせた。
 「おらおら。無駄な抵抗をするんじゃないよ」
 男達の口調は、こういうことに慣れきった軽いものだったが、真紀子の頬には強烈な往復ビンタが炸裂した。
 親に手を挙げられた事もない真紀子である。あまりのショックに気が遠くなりそうだった。
 「なんだよ。ビンタくらいでビビるタマか? オマエ」
 彼女を殴ったくせに、男が少し驚いた。
 「おい。これ」
 真紀子の下半身をまさぐっていたほうの男が目配せした。
 「お洩らししてやがる」
 「街を歩いて普通の女の子に変身したのか? 板に付いてるじゃねえか。そそるぜ」
 ビンタを食わした男は、興奮したのか、いきなり真紀子の唇を奪った。
 もう、彼女は虚脱状態になっていた。男の指が濡れたパンティの中に入りこんでも、男に深々と舌を差し込まれてねちっこいディープ・キスをされても、なすがままだった。
 「おい。あんまり荒っぽく扱うな。こいつはアニキのお気に入りなんだからな。傷でもつけちゃあとが大変だぜ」
 ハンドルを握る男が口を出した。
 それもそうだ、と二人はそれ以上乱暴なことはしてこなかったが、真紀子の全身をまさぐる手はとめない。
 二人の男の膝の上に寝かされた状態になったままの真紀子は身体中を触り放題に触られながら、頭の中は真っ白で、あまりの事に涙すら出てこなかった。
 どうして。どうして私がこんな目に?


 車が止まった。
 「いつまでとろとろしてるんだ。さっさと降りろ」
 着いたところは一見普通のホテルのような建物だった。
 逃げないように男達に取り囲まれた真紀子は、中に引き擦り込まれた。
 フロントの男は、入ってきた真紀子を見るなり目を丸くした。
 「何を驚いてるんだ。ああ、こいつか。逃げ出したのを掴まえたんだ。お前ら、もっときっちり女どもを管理しねえとダメじゃねえか」
 運転していた男にドスの効いたお叱りを受けたフロントの男は、納得出来ない表情のまま頭を下げた。
 「あの……ショーは始まってるんですが」
 「始まってる? 誰が出てるんだ?」
 男はずんずんと奥に足を進めた。真紀子も二人に背中を押されてその後に続いた。


 客室のドアを開けると、そこは数部屋ぶち抜きの大広間だった。そして、その奥にはステージがあり、どぎついピンク色のスポットライトが、その上で蠢いている女を照らしだしていた。
 その女は全裸で足を大きく広げ、居並ぶ客に局部を見せている最中だった。指で秘めやかな部分をぱっくりと開け、誘うようにゆっくりと腰を動かしている。
 真紀子は一目その様子を見ると、俯向いてしまった。あまりの恥ずかしさに、もう二度と顔をあげられない気がした。
 なんておぞましいショーなのだ。
 しかし、男はそのステージ上の女を見てあっと叫んだ。二人の男もぎくっとした。
 「あそこにいるじゃないか! お前がいるじゃないか!」
 真紀子はその言葉を聞いて思わずステージを見た。
 「あっ!」
 真紀子は自分の目が信じられなかった。
 そこでおぞましいショーをやっているのは、誰あろう、真紀子自身だったのだ。
 男達はあっけにとられてステージ上の真紀子と、今連れてきたばかりの真紀子を見比べるばかりだった。
 「……じゃ、お前は誰だ」
 真紀子は目に入るもの、耳に入るものすべてが悪夢としか思えなかった。
 ステージ上の真紀子は、自分の秘所に大きなバイブレーターをゆっくりと挿入していた。ライトに照らされた女の淫裂はひくひくと別の生き物のように蠢き、中から湧き出る蜜でしとどに濡れていた。そこに出入りする黒いバイブも恥汁でてらてらと光っている。
 「あ〜ン、いいわ……いい……」
 その声は真紀子の声だ。かぶりつきの客が、鼻にかかった強烈に艶めかしい彼女の声にごくりとツバを飲み込むのが聞こえてくるようだ。
 ステージの真紀子は、妖艶な目で客を見渡した。
 「誰か……誰か来て……男の人のモノを入れて欲しいの……」
 その声に、数人の男が立ち上がり、我先にステージに上った。
 「大きくしてあげる」
 真紀子は一人の男のズボンを手際よく脱がせると、彼の逸物を口の中に迎え入れた。
 彼女の舌は男の一番敏感な部分をちろちろと焦らすように這いまわったかと思えば、ぺちゃぺちゃと大きな音を立ててしゃぶったりした。
 そして両手で上半身の服を瞬く間に脱がせると、男の小さな乳首を指でころころと弄り始めた。
 されるがままの客の口からは、喘ぎ声が漏れ始めた。
 真紀子は、既に大きくなった肉茎から口を離すと、その豊かな乳房でモノを挟みこみ、ぐいぐいと上下にしごいた。
 「ダメだよ……これでイッちゃうよ」
 「ダメ。こんなのでイッちゃ許さないから」
 少女は慣れた口調で客をあしらっている。
 男はだんだんと膝が笑ってきてしまい、がくがくと崩れ落ちそうになった。
 「一回イク?」
 彼女に聞かれた男は、快感で返事も出来ない。
 真紀子にそっくりの美少女は、男の尻から指を回して彼のアナルを責め始めた。
 うっと呻いた男は、激しい勢いで射精した。精液が真紀子と同じその顔にかかったが、彼女はそれを美味しそうに舐めた。
 「あなたのカルピス、濃くて美味しい……」
 なすがままになっている男は、真紀子に言われるままにステージ上に四つんばいになった。
 真紀子は、男の尻に舌を這わせた。手でモノをしごきつつ、舌はアナルをじっくりと舐め回す。
 射精した直後にもかかわらず、男の肉棒は驚異的な速さで回復した。
 「嬉しいわ。また元気になってくれて」
 真紀子はそう言うと、男を仰向けにしてまたがった。
 屹立したその肉棒は、濡れそぼった真紀子の熱くてエキサイティングな場所にするすると飲み込まれていった。
 「あああ……堪らない……」
 「堪らないのはこっちだよ」
 感極まった声で男が叫んだ。
 「吸い付く……ああっ、もうすこしゆっくり動いてくれよ……」
 真紀子の腰は、男の上でモノをしゃぶり尽くすようにうねうねと動いた。
 「どう? いい?」
 「さ、最高だよっ!」
 彼女は男の身体に覆い被さってその乳首をちろちろと舐めた。
 男は、まるで女のようなよがり声を上げた。
 それを見る客は、目が飛び出すように食い入るように見つめていた。おれもやりたい。そういう欲望が部屋中を満たしている。
 真紀子の腰の動きが激しくなった。彼女も堪らなくなったのか、大きな胸をぶるぶると震わせた。全身がピンク色に染まっている。強烈な照明とあいまって輝くようだ。
 「イくわ。イきそう……あなたもイッて」
 「イくよ……もうダメだ……」
 男がぴん、と硬直した。そしてがくがくと下から腰を突き上げた。
 真紀子の腰もひときわ激しく動くと、そのまま止まり、男の身体を抱きしめた。
 彼女の秘門からは男の白濁した液体がとろとろと流れ出した。
 ゆっくりと身体を離した真紀子は、男の耳元で「良かった?」と聞いた。男はただ頷くばかりだ。
 「あたし……まだ足りないわ……思いっきりあたしを抱いて」
 真紀子は客席に流し目をくれた。
 夢中になって別の男がステージに上った。
 「入れて。すぐに欲しいの」
 先の男が余韻に浸っているその横で、次の男は下半身を露わにすると真紀子にのしかかった。今のショーで、男のモノははちきれるように大きくなっている。
 男は乱暴にぐいぐいと真紀子を責め立てながら、指を彼女の敏感な芽に絡めた。
 「あうっ! もっと優しく……」
 真紀子の舌が男の首筋を這った。
 男の腰は大きくグラインドしながら彼女を追い込んでいった。男は女の両足を高く持ち上げると、より深く侵入した。
 「ああ……解けていきそう……」
 その声に我慢出来なくなったのか、三人目の男がステージに上がり、これまた鎌首を持ち上げたそれを取り出した。
 真紀子は、二人目の男と結合したまま横向きになって尻を三人目に差し出した。
 この男は、彼女のアナルにモノをあてがうと、一気にずぶずぶと沈めた。
 真紀子の声が変わった。
 「もっと、もっと突いて! 両方からめちゃくちゃにして!」
 彼女の声は甘いよがり声から野獣のような咆哮に変わっていた。
 前と後ろから激しく責められ、肉と肉がぶつかり合うひたひたという音が部屋に響いた。
 三人は同時に果てた。
 ほーっというどよめきに似たため息が部屋に居た全員の口から漏れた。
 ドアのそばで、その一部始終を見た本物の真紀子は、まるで自分が舞台の上でセックスをしたような感覚にとらわれていた。自分そっくりの女が、自分そっくりの声で喘ぎ絶頂の叫びをあげたのだ。
 真紀子は、身体の芯がじゅんと熱くなっているのが判った。処女だし自分で慰めたこともなく、オーガズムを知らない彼女にとって、これは初めての不思議な感覚だった。
 ステージの上の真紀子は、四人目の男を相手にしていた。底知れぬ貪欲さだ。これは、強制されてやっているのだろうか、それとも……。
 いつの間にか、ショーは終わっていた。詰め掛けていた客は、ドアの脇で茫然と見ている真紀子を見ると、目を見開き、ステージの上にいる女と見比べ、無遠慮で好色そのものの視線を投げ付けて出ていった。
 真紀子を連れてきた男達は、困惑の表情をありありと浮かべていた。
 「こんな事って、あるのか」
 完全な人違いをしてしまったのだが、そんなミスをしてしまった事が未だに信じられない、そんなつぶやきだった。
 「だって、そっくりだぜ」
 ショーが終わったもう一人の真紀子はステージから降りて、真紀子を見据えたまま、まっすぐにやって来た。全身からセックスの匂いをさせ、内腿には愛液と男の精液がしたたり落ちている、そのままの状態で。
 真紀子は、ただ一つの事を念じていた。言わないで。お願いだから、その言葉を言わないで。
 が、四人の男を大勢の前で相手にした真紀子そっくりの女は、真紀子の目の前にやって来ると、彼女を値踏みするようにゆっくりと見た。そして真紀子がいちばん聞きたくない言葉を言った。
 「あんたね。あたしのお姉さんて言うのは」
 彼女は死んだはずの妹だったのだ……。





第二章 双子姉妹、淫靡な対面



 「まあ、座ったら?」
 自分そっくりの妹に言われて、真紀子はベッドに腰をおろした。
 「一卵性双生児って、ほんとにクリソツなのね。あんたがドアのそばに立ってたの見て、驚いちゃったわよ」
 由里子と名乗る妹は、蓮っ葉な口調で喋った。全裸にローブをまとっただけの彼女の身体からはきつい香水とセックスの匂いがむせるように漂ってきた。そのローブは薄くて小さく、由里子の突起した乳首がそのまま浮き出て、形のいい長い足はほとんど全部露わだ。彼女が少し動くとちらちらと茂みまでもが顔を出した。
 「ここがどういうところか判るでしょ? 判らないかもね。あんたみたいな人には縁のないところだもんね」
 由里子は、真紀子にからうような笑みを投げた。
 「そのベッド、あたしの仕事場なんだよ」
 そう言われて真紀子は思わず立ち上がった。
 それを見た由里子は弾けるように大声で笑い始めた。
 「なにビビってんの。ベッドでセックスするなんて普通の事でしょうが」
 この部屋は由里子にあてがわれた個室だった。ここで由里子は客を取るのだ。一見してワンルームマンションのような部屋。チェストやテレビ、ビデオもある。ただ、普通の女の子の部屋と違うのは、壁に大きく引き伸ばされた由里子の全裸写真が飾られているところだ。足を大きく開いて自分の指で自らを慰めている、淫猥この上ない写真だ。
 「ここはね、もともと普通のホテルだったのを改造したの。さっきあたしがショーをやったのは『シアター』って呼ばれてる。レストランもあるからあたしたちは面倒な事は一切しなくていいの。セックスだけしてればいいから気楽なもんよ」
 由里子はグラスにワインを注ぎ、真紀子にも渡した。ここにあるものは何も信じられない。このワインにだって眠り薬が入っているかもしれない。それに、このグラスだって誰が使ったか判ったもんじゃない。
 真紀子はそう思うと口をつける気にならなかった。
 「妹にやっと再会出来たのに、何も言わないなんて薄情なお姉ちゃんね」
 ワインをぐっと飲み干した由里子が言った。
 「あたしは、あんたらのことを忘れた事はなかったのよ」
 そう言う由里子の目には鋭い光が宿っていた。
 「……ごめんなさい。でも、私、本当に驚いているのよ。何もかもウソみたいで信じられなくて」
 真紀子はおずおずと言ったが、これは本心だった。死んだと聞かされていた双子の妹が生きていて、あろうことかセックスを売り物にしている。それも何人もの男を続けざまに相手にして……。
 「あいにく、あたしがここで身体を売っているのは本当の事よ。あんたが学校に行ってる時に、あたしは男のアレを舐めてたり入れたりしてる訳」
 「どうして。どうしてあなたがそんなことを……」
 思わず聞き返した真紀子に、由里子はすべてを語り始めた。しかしそれは真紀子が聞いていた話とはまったく違っていた。
 由里子は、彼女がまだ二才になるかならないかの頃に、ここに連れて来られたと言うのだ。
 たしかに真紀子の、そして由里子の父親は小さいながらも会社を経営している。その会社が倒産しそうになって金策に困った父親は、借金の保証人になってもらう事と引き換えに双子の妹のほうを、養女に出してしまったと。由里子を引き取った人物が、幼女ポルノも製作している組織に関係していることを知りながら……。
 「あたしのおかげで、あんたたちは結構な生活をしてられるって言うわけよ。あたしを売り飛ばした、そのお金でね」
 二才の頃から由里子はセックスを仕込まれた。幼児にフェラチオさせるのが好きな変態もいる。生きる為には、男の相手をしなければならないと言われて由里子は大きくなった。
 小さな頃からセックス三昧の環境の中で大きくなった由里子は、セックスをするのが当然だと思っていた。女は自分の身体を使って男を喜ばせるものだと思い込んだ。きれいになってセックスがうまければ男はちやほやしてくれる。他の女達を見ていても、セックスは楽しそうだ。由里子は学校にも行かず、セックスの英才教育を受けて大きくなった。
 どっちを向いてもセックスしかない環境だ。由里子の中にタブーは存在しなかった。幼い頃から、セックスで快感を得ていた彼女には、嫌悪感も罪悪感もなかった。
 それだけではない。由里子は小さな時から女性ホルモンを投与され、顔は幼いのに身体は成熟した奇妙な魅力を放つようになっていた。ロリコンモデルの時からセックスは普通の行為だった。媚肉を引き締める為の体操もやって、由里子の身体はいつも最高の状態にチューニングされていたのだ。
 一六才の今、由里子はセックスのスペシャリストになっていた。あらゆるテクニックがOK。男あしらいもうまく、彼女の女陰は最高の名器だと評判で、この店でトップの売れっ子。だから、由里子にはセックスのプロとしての自信と誇りすらあった。なんせ一六才にして娼婦歴一四年のベテランなのだ。コギャルマゴギャルなど足元にも及ばない。
 「別にあたしは学校なんかに行きたいと思った事ないし、セックスが嫌だと思った事もない。こんな気持ちいい事だけやって生きて行けるんだもん、最高だと思ってるよ」
 由里子の勝ち誇ったような表情にはウソはなかった。事実二十人以上いる娼婦の中で、由里子は人気・実力共にナンバーワンなのだ。
 が、彼女は真紀子の表情に憐憫のような影が走るのを見逃さなかった。
 「なによ、それ。あたしがセックスにしか能がないと思って憫れんでる訳?」
 「いえ、そ、そんな……」
 真紀子は慌てて否定したが、図星だった。女の中の雌の部分だけを売るしかない由里子の生活は惨めすぎる。それを惨めだとか恥ずかしいとか思えないほど骨の髄までセックスに染まってしまった妹が不憫でならなかった。彼女が売られてきたという話が本当かウソかはどうでもいい。彼女は現に子供の頃からセックスだけの人生を送っていたという事だけで充分ではないか。
 「あたしを難民を見るような目で見ないでよ! あたしは馬鹿にされるのがいちばん嫌いなんだから」
 由里子の目には、邪悪な揺らめきがあった。
 「あたしは学校には行ってないけど、バカじゃないんだからね。あんたの妹だもん。それにね、バカじゃ最高のオマンコは出来ないんだよ。ただやるだけじゃナンバーワンにはなれないのよ」
 プライドを痛く傷つけられた由里子は真紀子に向かってまくしたてた。
 環境が違うとこんなにすべてが違ってしまうものなのか。真紀子は、もしも自分が由里子だったらと思うと鳥肌が立った。双子だったのだから紙一重の運命の差ではないか。
 「なんだか臭いわねえ。ションベンの匂いがするわ。おねえちゃん、あんたじゃないの」
 由里子はいきなり真紀子のスカートをばっと捲りあげた。
 「きゃっ!」
 真紀子は慌ててスカートを押さえた。お洩らしした下着を誰にも見られたくない。
 「なにが、きゃっだよ。あんた、あいつらにチョッカイ出されてションベンちびったんでしょ。セックスのセの字も知らないガキんちょになんだかんだと偉そうな事言って欲しくないわ」
 「私は何も……何も言ってないわ」
 「顔見りゃ判るのよ。ここにくる客にもいるの。どうしてこんなことしてるの、こんな事して恥ずかしくないのって言いながらやることだけはしっかりやって帰るヤツがさ」
 どうやら、真紀子は、由里子の心の奥深くにくすぶっていたわだかまりを一気に解き放ってしまったようだ。
 由里子は部屋の中のインターフォンのボタンを押した。
 「ちょっと来て。話があるの」
 すぐにドアが開いて長身の男が入ってきた。抜き身が歩いているような、危険な香りを全身から発散している男だった。
 「へえ。これがお前のオネエか」
 「紹介しとく。あたしのカレよ」
 由里子は男に甘えるように身体を預けて言った。
 「カレはあたしにセックスのすべてを教えてくれたの」
 カレと呼ばれた男は、否定もせずふっと笑った。血も凍るような怖い笑顔だった。きっとこの笑顔に接した何人もの女は地獄を見た事だろう。
 「桐生ってんだ。よろしくな」
 桐生と名乗った男は、真紀子の全身を舐めるように見た。
 「ねえ。オネエをどうするの? このまま帰すの?」
 由里子は桐生に媚びるように言った。
 「さあ。どうしようかな」
 桐生は、白々しくとぼけた。
 由里子は、あろうことか、真紀子をこの組織に取り込む事を言い出した。
 「このまま帰したら、組織がある事がバレるじゃない。この組織で娼婦にしてしまえば絶対漏らさないわよ。ここで何をわめいても関係ないもんね」
 「な、何を言い出すの! あなた、私の妹じゃなかったの?」
 真っ青になった真紀子を見て、由里子は噴き出した。
 「そうだよ。あたしはあんたの妹だよ。だから言ってるんじゃないの。こんな気持ちよくて楽しい毎日を、おねえちゃんにも分けてあげようと思ってさ」
 違う。由里子は完全に勘違いしている。セックスだけの毎日なんて、死んだほうがましな生き地獄だ。この身体を汚されるくらいなら死んでしまいたい。
 「よお。ここまで事情を知って、そのまま家に帰れると思ってるのか?」
 桐生は真紀子を見据えて言った。
 「ここで見た事も聞いた事も全部黙ってますって言うんじゃないだろうな、おねえちゃん。黙ってるって事は、お前の可愛い妹を見殺しにすることになるんじゃねえのか?」
 そうなのだ。真紀子は一切の秘密を守る代わりに家に帰して欲しいと言おうと思ったが、それは由里子をこのままにしておく事になる。
 「なによぉ。あたしはここの生活が気に入ってるし、ナンバーワンなんだからね。見殺しとかなんとか、余計なお世話じゃないの……だけど」
 由里子は邪悪な笑顔を満面に湛えて真紀子に言った。
 「お姉ちゃんはここを地獄だと思ってるんだよね。そう思ってるんなら、あたしを見殺しにしたまま自分だけ家に帰れるわけないよね」
 ジレンマだった。何と言う巧妙な罠だろう。
 「でも、あたしは、おねえちゃんにセックスの素晴らしさを教えてあげたいの。そうすりゃここの生活がどんなに最高か判るわよ」
 ああ、どうすればいいのだろう。私も由里子と同じことをしなければいけないの?
 真紀子は心臓が止まる思いだった。
 「へっ。お前のオネエは死にそうな顔してるぜ。おんなじ姉妹でもこうも違うもんかね」
 桐生は真紀子と由里子の好対照を楽しんでいる。
 「さ。もうじきショーの第二部が始まるんじゃないの?」
 「おう。そうそう。第二部はあのエロおやじが出るんだったな」
 「あのエロおやじ、あたし、見るだけで反吐が出そうよ」
 「ちょっと待ってください! 一度家に帰って、両親と相談します。妹を返してくれるのなら、いくらでもお金を用意してきます。だから」
 真紀子は必死の思いで言った。お金。それしか方法はないではないか。
 「バカ。金ならこいつの身体が稼ぎだしてくれるんだよ。芸者じゃあるまいし、身請けなんかさせるもんか。こいつはこれからもっともっと稼ぐんだ。あと二〇年は現役だぜ」
 桐生はそう言いながら真紀子の腕を掴んだ。
 「お前も小便の染み込んだパンツを脱いでさっぱりしたいだろ」
 由里子が嬉々としてドアを開けた。
 廊下を客たちが『シアター』に向かっている。
 「いや、いや、いや」
 真紀子はありったけの力を使って足を突っ張り抵抗した。
 「オレを舐めんなよ、こら」
 桐生は表情を変えずに真紀子の頬を数発殴った。プロの技だ。腫れたり内出血しないが脳震蘯を起こさせるのに充分なパンチだった。
 朦朧とした真紀子は桐生に引き擦られるようにしてシアターに連れ込まれた。
 一卵性双生児と言っても、セックス用に完璧にチューニングされた由里子と違って真紀子はスレンダーなボディだ。同じ顔をしていても、由里子にはセックスを知り尽くした淫蕩な表情が定着してしまっているが、真紀子は清純そのもの。そんな真紀子を舞台の上で犯して処女を奪う期待に由里子の心は踊った。歪んだ喜びだったが、それは真紀子への屈折した感情からだった。めちゃくちゃにしてやりたい。汚れを知らない清らかに見える身体も心も踏み付けてぼろぼろにしてやりたい。
 由里子には、同じ姉妹なのに苦労もなく何不自由なく育った真紀子に怨念のような気持ちが芽生えていた。


                    *

 幕の降りたステージの裏では、桐生と由里子がショーの準備をしていた。
 ぐったりした真紀子には鎖のついた手械足枷が装着された。まるで奴隷のような姿である。その鎖は滑車を通していったん天井に集められている。彼女の体位を好き勝手にコントロールするためだ。
 「目を覚ましなよ、おねえちゃん」
 由里子は真紀子の口にブランディを流し込んだ。熱い液体が身体の中を降りていき、真紀子は猛烈に咳き込んで目を開けた。
 「よし。じゃ、始めるからな」
 鎖が上に巻き上げられて、真紀子は爪先立ちしてやっと身体を支える事が出来た。
 桐生は真紀子の頬を撫でたが、その手は悪魔のように冷たかった。
 「あたしがサポートしてあげるから、安心して」
 由里子が無邪気に言った。
 「お、お願いです……こんな事止めてください……ほんとに私、ああ、死んでしまいたい」
 「心配するな。もうじき死ぬ死ぬって喚かせてやる」
 桐生はそう言うと、幕を開けるボタンを押した。
 幕が上がると、まばゆいばかりの照明が真紀子の目に飛び込んできた。
 「ああ、いやです。お願いです。助けて。由里子さん、あなたはどうして私をこんな目に」
 真紀子は全身でもがき、声を上げた。しかし桐生と由里子は、真紀子のそんな様子を冷笑して見ているだけだった。
 「あんたもアタマ悪いわね。そうやって泣き叫べば泣き叫ぶほど客は興奮するのが判らないの。みんなあんたみたいに清純な女の子が無残に犯られるのを見にきてるんだからね」
 由里子が冷ややかに言った。
 依然として真紀子はどうする事も出来ない罠に掛かったままなのだ。
 桐生が、真紀子の唇を無理矢理奪った。
 「うまいぜ。処女の唇って、こんなに柔らかくてうまいもんだったっけか……」
 彼は味をしめてゆっくりとディープキスを始めた。これは客を焦らす演出でもあったが、真紀子の唇の感触が素晴らしかったからでもあった。
 桐生はキスをしながら真紀子の胸をぎゅうっと握り潰した。
 「ううっ、い、痛い……」
 桐生は物も言わず、真紀子のセーラー服を引き裂いた。その下には純白のスリップがあった。
 桐生はナイフを出すと、真紀子の頬にぴたぴた当てて彼女の表情が歪むのを楽しんだ。
 「泣けよ。大声出して泣けばそれだけ受けるんだ」
 自分の反応がすべてショーアップの小道具になってしまう。真紀子は感情を押し殺して能面のようになろうと決意したが、それは出来ない相談だった。
 桐生はナイフの刃でスリップの上から彼女の胸を撫でていった。そして、突然、ざくざくと乱暴にスリップを切り裂き始めた。まるで真紀子の肉体をバラバラにするかのようなナイフの動きに、横にいた由里子も少々驚いた。真紀子はただただ悲鳴をあげ続けるしかなかった。
 桐生は、ブラに手をかけると一気に外して抜き取った。真紀子の小ぶりな乳房が彼らの目の前にぷるんとまろび出た。出来上がったのは、レイプされている犠牲者そのものといった感じの凄惨なオブジェだった。スリップの切れ目から真紀子のピンク色の小さな震えるような乳首が見え隠れしている。
 桐生は次に真紀子のスカートに手をかけ、これもびりびりと一気に毟り取った。
 彼は由里子にハサミを持たせた。
 「オネエのあんよがもっと見えるように切ってやんな」
 はいよ、と由里子は姉のスリップの裾をざくざくと切り捨てていった。
 「あれ! お洩らししてる!」
 由里子が素っ頓狂な声を上げて場内が湧いた。真紀子はまた失禁をしてしまったのだ。
 由里子は充分短くなったスリップの裾を捲くりあげて濡れたパンティを客に見せ付けた。
 「オネエはゆるいんだね」
 見るも無残な格好になった真紀子を前にして、桐生はズボンから自分の肉棒を取り出し、真紀子の顔の目の前に来るように鎖を緩めた。
 「舐めろよ。お前の初フェラを頂戴するぜ……口を開けな」
 桐生は真紀子の頬を両側から思い切り掴みあげた。このままでは歯が折れてしまう。
 少し口を開けたところをめがけて桐生の指がつっかえ棒のように入り、真紀子の口をこじ開けた。
 「おれの大事なものを掴んでみろ。お前の歯をバットで全部叩き折ってやるぜ。おフェラの為には歯なんて邪魔だからな」
 桐生は恐ろしい事を笑いながら言った。
 自分の口に入って来た肉茎を、おぞましさに耐えつつ真紀子はそのまま迎え入れるしかなかった。
 「舌でおれのモノをしっかり舐めるんだ。ソフトクリームだと思って舐めろ!」
 嫌だと言える状況ではない。真紀子は恐る恐る舌を動かしたが、いきなり桐生の肉棒の先端に触ってしまった。
 「おう。それが亀頭ってんだ。これから毎日お世話になるんだからよく覚えとけ」
 真紀子の舌はびくびくと彼の亀頭に触れたが、それがかえってじらす効果を上げてしまった。桐生は気分を出して彼女の顔の上でピストン運動を始めてしまった。喉の奥まで肉棒が差し込まれるたびに、真紀子は息が出来ず、怒張した男のものの匂いと感触に気が遠くなった。
 「ほれ。もっと口をすぼめておれのものを吸え」
 桐生は真紀子の顔に腰を押し付け、反り返った肉茎を処女の唇に根元まで埋め込んだ。男の猛々しい叢に、真紀子の整った清純な顔が無残に覆われる。
 真紀子は、込み上げてくる嘔吐感と戦っていた。ここで吐いたらどんなことをされるか判らない。しかし、大人の屹立した陰茎を見るのも初めての真紀子にとって、口の中に入れるという行為はおぞましさ以外の何物でもなかった。
 が、そういう真紀子の苦痛に歪んだ表情が桐生を大いに喜ばせた。真紀子の口の中で彼の肉棒は最後の瞬間を迎えつつあった。
 「いいか。出すからな。全部飲み込め。吐いたりしたらタダじゃおかねえぞ」
 そう言い残すと、桐生は真紀子の中で発射した。
 醜悪な肉茎がびくびくと痙攣し、熱いものが勢いよく喉の奥を打った。真紀子の喉は飲み込むのを生理的に拒否した。でも、ここはどうしても飲み込まなければならない。真紀子は顔を苦痛に歪めて必死の思いで、ごくりごくりと飲み込んだ。
 「いい眺めだぜ、おねえちゃん」
 「ほんと。そんなに美味しい? 感激でしょ」
 桐生と由里子は真紀子を嘲った。
 彼の合図で、真紀子の両足の鎖がどんどん左右に引っ張られ始めた。彼女はみるみる大股開きになっていく。大の字になった状態で、真紀子は身動きも取れない。
 「もう勘弁して……お願いだから止めてください……き、気が狂ってしまいそう」
 「ばか。さっき由里子のショーを見たろ。こんなのは前戯も前戯、序の口のじょの字にも行ってないぜ」
 桐生は、ナイフを真紀子のパンティに這わし、亀裂に沿って下に降ろしていった。
 「ここらへんに大事なものがあるの、知ってるか」
 桐生はナイフの先で彼女の肉芽を突ついた。
 「ああ……ひっ!」
 自由を奪われた身体で、真紀子は身悶えした。怖い。恥ずかしいというより、恐怖が先に立っていた。
 桐生は小さな布の股の部分を摘むと、ナイフで引き裂き、布片と化したパンティを客席に投げた。
 「ひっひっひ。可愛いおケケが顔を出したぜ」
 パンティを剥ぎ取られてしまい、真紀子の淡く頼りなげな秘毛が露わにされた。
 反射的に足を曲げて恥部を隠そうとする真紀子の足を抱きかかえた桐生は、膝を捕まえて物凄い力で左右に開いた。
 そのあまりの羞恥に耐えきれず、真紀子は声を殺して泣き始めた。嗚咽を聞かれるのも恥ずかしかった。
 「よおよお。泣くんなら思い切り大声で泣いてもいいんだぜ。いい音楽だ」
 桐生は鎖を引っ張って真紀子の足を開ききった状態で固定すると、空いた手で彼女のまだ誰にも見せた事のない大切な場所をじわじわと広げ始めた。鮮やかなピンク色の秘肉が露わにされた。
 由里子はというと、姉の乳房を両脇からすくい寄せて、指先で小さくて硬い乳首をくりくりと摘みあげている。その刺激を受けて真紀子のピンク色の部分はみるみる立ってきた。
 真紀子は顔を臥せて迫り来る羞恥と恐怖から少しでも逃れようとしていた。せめて顔だけは見られたくなかった。
 桐生の指は広げられた秘部の入り口をじらすように徘徊していた。
 「そろそろエロおやじを呼べよ」
 桐生が声を上げた。
 ステージの脇から、すでに丸裸になった男が舞台に上がって来た。ぶよぶよに太った醜い身体の全面に緋牡丹の刺青が彫られ、下腹部で半立ちになった男のものはどす黒く巨大だった。贅肉だらけのその身体は、女の生き血を吸って膨れ上がったように見える。その上に乗っている顔は下品で卑猥そのものだった。女の股間に顔を埋めていれば満足というような下卑た表情を浮かべたその中年男は、精力絶倫を誇示するかのように、禿げていた。
 「ほう。この女かい」
 エロおやじと呼ばれた中年男の田沼は、その狡猾で賤しい目を真紀子に向けた。
 彼女の全身から血の気が引いた。この男に処女を奪われる位なら、まだ桐生が相手のほうがマシだった。この田沼は、女がもっとも嫌悪する種類の男のイメージの集大成のような人間だったからだ。
 「いい肌だな」
 田沼は真紀子の脚をぺろりと舐めた。全身にぞくっと悪寒が走った。
 「この際だ。隠す事もねえだろ」
 田沼はスリップをひき千切った。真紀子は一糸まとわぬ全裸にされてしまった。
 「小さいけど、まだ誰にも吸われてないんだろ?」
 田沼は真紀子の乳首をちゅうっと音を立てて吸った。
 「いいいい、イヤ! 離して!」
 田沼は真紀子の反応を楽しみながら、蛇のように長い舌を伸ばして彼女の乳首をぺろぺろと舐めまくった。
 「あああ、い、いや。さ、触らないで……」
 一時は魂が抜けたようになっていた真紀子だが、田沼に触られるだけで生きた心地がしない。
 「まあ、そう言うなよ。今すぐ、おれを忘れられなくしてやる」
 田沼は小指の欠けたその短く醜い指で真紀子の秘門を大きく広げ、入り口を徘徊った。
 「温かい。ピンク色できれいだな。ま、でも、すぐに由里子みたいに毒々しい真っ赤になるんだがな」
 彼の男のものはすでに大きく聳り立っていて、その先端はぬらぬらと濡れていた。そして、この男の肉棒には大粒の真珠がいくつも埋め込まれていた。ただの男根というだけでも充分醜いのに、真珠が入ったそれはグロテスクそのものだった。田沼は、その陰茎を真紀子の目の前に突き出し、これ見よがしにしごいてみせた。
 独りで慰めた事すらない真紀子は、自分の中にこんなものが入ってくる事など想像もつかなかった。しかしその怪物のようなものは今彼女を汚そうと猛り狂って迫っているのだ。
 「イヤ! こんなのイヤ! お願い! 許して。他の事ならなんでもします。だから」
 「心配しなくても、後から他の事もやってもらう」
 田沼は、真紀子の汚れを知らぬ純白の太股を大きく押し分けてその真ん中に腰を据え、グロテスクな肉棒を真紀子の秘門にあてがった。
 「いやあ……お母さん……」
 真紀子は断末魔のような声を上げた。
 「嫌がるのは今だけだぜ。すぐにチンポを入れて欲しくて堪らなくなるんだ」
 誰の侵入も許した事のない場所に、醜い男の屹立した肉棒が分け入ってきた。狭く閉じられた真紀子の秘門は、めりめりと音がするように乱暴に押し広げられていった。
 自分の体内に異物が入ってくる激痛を伴った異様な感覚に、真紀子は気を失いそうになった。ただの破瓜の痛みだけではない。田沼の真珠が、真紀子のデリケートな柔肉を蹂藺していた。
 逃れられないのなら、いっそ失神できればいいのに、とも思ったが、下半身から伝わってくる屈辱的な痛みは真紀子を内部から責め募った。彼女はそのあまりの激痛に、身体を弓なりに反らせた。
 「ぐえっ……いやあああああ」
 真紀子は絞り出すような悲鳴を上げた。
 「叫んでろ。最初はみんな泣き叫ぶんだ。でも、すぐにおれのモノじゃないと満足出来なくなるんだぜ」
 田沼は、まだ男を知らぬ肉襞が絞めつけてくる感触にぶるぶるっと身を震わせた。巨大な肉茎の鋭敏な先端が閉じた内側に分け入ろうとするたびに拒絶され、それに打ち勝って力づくでじわじわと侵入していく、その快感に酔っていた。
 「くそ。処女はいいぜ……入れるだけで発射しちまいそうだ」
 「冗談言うなよ、このエロおやじが」
 桐生が返した。どうやらこの田沼は、このショーのレギュラー出演者らしい。
 「由里子をショーで失神させたのもおやじだったしな」
 「言うことをきかねえ女教師をよがり狂わせた事もあったな。あの女、色情狂になっちまって場末で男を咥えこみっぱなしだってよ」
 田沼は身の毛もよだつ事を喋りながら、体重をかけて、そのグロテスクな性器を真紀子の秘奥へ一気にめり込ませようとしている。
 「い、痛い……助けてください」
 湿り気を帯びていない真紀子の繊細で秘めやかな場所は、男の肉棒の暴力的な侵入にあって、引き攣り悲鳴を上げていた。
 真紀子は、自分の身体に分け入ろうとする異物が激しく突き上げ、体内で暴れまわる陰惨な感覚に、死にたいほどの屈辱と絶望を感じていた。早く終わって欲しい。田沼に半ば貫かれた彼女は、今はそれだけを念じていた。田沼はいっそう腰に力を込め、真紀子の身体の奥で、何かが裂けるような痛みがあった。
 田沼は、急に肉壁の滑りがよくなったのを感じた。破瓜の血が潤滑油の役目をしているのか。何とも言えない甘美な快感が先端から一気に脳髄まで貫いた。
 「た、たまんねえ……」
 田沼は真紀子の胸に顔を埋め、乳房を貪った。彼の腰の動きは激しくなりぐいぐいと真紀子を突き上げた。
 「ほうら、ほうら」
 田沼の腰は、大きく円を描いていた。男の肉棒は真紀子のすべての襞をまんべんなくなぞっていく。入り口を浅く責めていたかと思えば、突然奥深くに突き刺す。
 彼女はそのたびに悲鳴を上げたが、激痛のあまりもう声も絶え絶えになってきた。
 「いくぜ。おれの熱いシャワーを浴びな。おれに女にしてもらって有難いと思え」
 田沼は訳の判らない事を口走りながら腰を激しく動かした。
 真紀子は、その瞬間、自分の奥にどくどくと熱い奔流が注ぎこまれるのを感じて目の前が暗くなった。
 こんな……こんな男の精液が自分の中に注がれているだなんて……終わりだわ。もうすべて終わってしまったんだわ。
 「激しいプレイ、なかなか良かったわよ。ふふ、この、床に流れてくるカルピスまじりの血がまた刺激的よね! いちごミルク!」
 ぼろ布のようにぐったりした真紀子に向かって由里子が声をかけた。
 「ま、最初はこんなもんだ。すぐにチンポが欲しくて腰を振るようになる」
 田沼は自分の肉茎についた処女の印を、真紀子の身体に塗り付けていた。
 「どう? 女になった感想は」
 サディスティックな笑顔を浮かべて由里子が聞いた。真紀子は顔を上げる気力も失って、ただ涙を流すだけだった。
 「嬉し涙なの? そんなに良かった?」
 由里子は真紀子の乳首を摘んで言った。
 「判らない……私には判らない……あなたが犠牲になって売られたのだとしても……私は何も知らないのに……」
 由里子は聞こえないふりをして、真紀子の足を折り曲げて尻を突き出す格好にさせた。
 「おねえちゃん。セックスって、とっても奥が深いのよ。今日は徹底的に教えてあげるわね」
 こんなに……こんな酷いことをしても、まだ足りないの? 真紀子の絶望にはお構いなく、由里子の手は、彼女の臀部を左右に開いた。
 「あら。可愛い肛門ね」
 由里子が、ぺろりとアヌスを舐めたとき、真紀子は驚いて尻を振りあげたが、それが激しく彼女の顎を打ってしまった。
 「なにすんのさ舌を噛んじゃったでしょうが!」
 由里子は、一転して気が狂ったように真紀子の真っ白な尻たぶを思い切り平手打ちした。
 「あはは。おかしい。あたしの手形がくっきり残ったわ」
 由里子は面白がって真紀子の臀部に往復ビンタをくれた。
 「や、やめて。わざとじゃない……あんまりびっくりしたから……」
 自分がされている事のほうがよっぽど酷いのに、真紀子は謝るしかなかった。
 「いいわ。あたしの言うことをきくんなら、許してあげる。どうする?」
 「き、ききます……」
 「あんたのケツの穴をお客さんにもっと見てもらいなさい」
 何という事か。物心ついて以来親にも見せた事のない部分を、こんな恥ずかしい格好で見せなくてはならないなんて。
 「何してんのよ。あたしの言うことをきくって言ったんでしょッ!」
 真紀子はのろのろと身体の向きを変えた。
 「おーおー、お客さんにオナラでもかます気か?」
 桐生が混ぜ返した。
 「もっと足を開かねえと菊の門が見えねえだろ。そんなことも判らねえのか、このバカ!」
 田沼も一緒になって真紀子をいたぶった。男はその醜い手で彼女の尻たぶを広げて開帳した。
 その時、客席がどよめいた。
 由里子の下半身にペニスが生えたのだ。いや、彼女はレズ用の張形を装着していた。
 含み笑いしながら由里子は真紀子の顔の前に立った。
 「これをお舐め」
 思わず真紀子は顔を背けた。黒光りしてなにやら模様が彫りこまれたそれは、先程の田沼の男根を思い出させたからだ。
 「舐めるのよ。さあ!」
 由里子は、それの先端を真紀子の口に押し付けた。
 「さっき本物を美味しそうに舐めてたじゃないの。あんた、本物じゃないと嫌なのね」
 「そ、そうじゃありません」
 真紀子は張形に舌を這わせた。使い込まれて染み込んでいるのか、それには独特の臭気と苦いような味がした。
 「まんべんなく舐めたほうが、あんたのためよ」
 もう、なにがなんだか判らない。とにかく真紀子は言われるままに張形を口に含んだ。
 由里子は急に腰を引いてそれを引き抜いた。
 「じゃ、あんたの処女を貰うわ」
 え……。もう自分は処女を散らせた筈……。
 真紀子がそう思った時、彼女のアナルに気配を感じた。
 「いやああ! 止めてえ!」
 突然の冷たい感触に、真紀子は身悶えたが、突き出した尻を振る格好になったのを見て、由里子たちは大声を出して嘲笑した。
 由里子は真紀子の腰をしっかりと抱くと、彼女のアヌスにあてがった。
 「い、いやぁ……そこは違う……」
 由里子はバックスタイルで真紀子のアヌスに張形をじりじりと沈め始めた。哀れな真紀子は処女を失ったその上に、アヌスの処女も失おうとしていた。
 「おねえちゃん。あたしのコレがどこに入ってるのか、言ってごらん」
 「あ、そんな……言えない……」
 「言いなよほら。まさか知らないわけじゃないでしょ」
 由里子は乱暴に張形を突き入れた。
 「いやあああ」
 由里子は激しいピストン運動を始めた。彼女の下腹部が真紀子の尻たぶに当たって、ぴたぴたという卑猥な音を立てている。
 「……お、お尻の……あ、な……」
 消え入るような真紀子の答えに大笑いしながら、由里子は姉の尻たぶをばしばしと叩き、思う存分ぐいぐいと突き上げた。張形の根元には突起が付いており、装着した側のクリトリスを刺激するようになっている。激しい動きが生む快感に、犯す側の由里子の肌もピンクに染まっていく。
 うりふたつの双子の美少女がアナル・レズをやっているという異様な光景に、客は固唾を呑んでいる。
 真紀子の苦悶の表情を見て、由里子のサディスティックな興奮はいやがおうにも高まった。両手を伸ばし、二つの乳房を鷲掴みにすると力任せに絞り上げた。
 「ぐえ……」
 「男は出しちゃえば終わるけど、レズの場合はあたしがイクまで終わらないよ」
 しかし、真紀子の力は尽きた。四つんばいになっている事も出来ず、息も絶え絶えの彼女はぐったりとステージに倒れ伏した。とにかく今は菊座から忌まわしい張形を抜いて欲しい。
 「もう、もう止めて……お願いだから……し、死んでしまう」
 「人前で女にされてお尻まで犯された気分はどう?」
 真紀子の腰を抱え、容赦なく引き起こしながら由里子が聞く。
 「あ……あなたが、鬼に見える……」
 「上等じゃない。鬼にお尻を犯されてるあんたは何よ? 薄汚いメスブタ?」
 由里子は真紀子の臀部を力一杯びしびしと平手打ちした。
 ああ、私はどうなってしまうのだろう。今ここで目が覚めて、夢だと判ればどんなにかいいことだろう。
 しかし、これは夢ではなかった。悪夢のような現実だった。
 やがて由里子も高まってきた。真紀子の尻を打っていた手は自分の乳房を愛撫し始め、うねりが彼女を襲った。
 「あうッ……イク……ああッ……」
 絶頂に達した由里子は真紀子の上に倒れこんだ。
 「お願い……これで気が済んだでしょう……おうちに帰して……」
 妹の身体の重みの下で、真紀子は懇願した。
 「誰にも話さない。あなたがここを出たければなんとかする……」
 「そんなこと、しなくていいわ」
 由里子は冷たく言い放った。
 「今日からあたしがあんたになる」





第三章 美少女、淫乱変身



 由里子は衣裳部屋から啓星高校の制服を探し出してきた。コスプレに備えて、衣裳部屋には制服という制服が揃えられているのだ。
 「ブルセラ・ショップから買ってきたばかりなのよ。運が良かった」
 自室で制服を着た由里子は、どおぉ? と桐生に見せた。髪をとかしてストレートにした由里子は、ステージ上での隠微さをまったく感じさせなかった。
 「たまげたな。こうして見たら真紀子にしか見えないぜ」
 「そおぉ? これであたしも啓星高校生ね」
 由里子はにっと笑った。
 「ダメだ。笑うと由里子に逆戻りだ。お前には品というものがねえ」
 由里子と桐生はどっと笑った。
 一方真紀子は、先ほどまで由里子が着ていた毒々しいミニドレスを着せられ、きつい化粧を施されていた。外見だけ見ると由里子と真紀子は完全に入れ代わっていた。
 「でもお前、いつまで入れ代わってる気だ? お前はここのナンバーワンなんだから特例で許してやるが、限度ってもんがあるぜ」
 ヒモの桐生としては、稼ぎが減るのが心配なのだ。
 「大丈夫よ。その分おねえちゃんが頑張ってくれるって。男って、素人の方がいいんでしょ。おねえちゃんなら、がたがた震えながらフェラチオしてくれるわよ」
 「ふん。姉思いの妹だぜ」


 連絡はきちんと入れるという約束で、由里子は本来の彼女の家に向かった。
 外での生活をほとんど知らない由里子は、電車の切符一枚買うのにもまごついた。まるでこれじゃお上りさんね、と思ったが、それはそれで楽しい。
 時間はだいぶ遅くなっていた。車内には酒の入った男も乗っていて、制服姿の由里子を無遠慮にじろじろと眺めている。
 普段ほとんど衣類を身にまとわない由里子は、ブラはしたがスリップはつけていなかった。高校生にしては異様に豊かな胸の盛り上りが、セーラー服を持ち上げている。そのため、普通ならウェストを覆うはずのセーラー服の裾がたくし上がってしまい、彼女の真っ白な腹部が見え隠れしていた。
 男たちの視線は由里子の身体に釘付けになっていたが、そのうちの一人が、酔った勢いで声をかけてきた。
 「これから家に帰るの? おれとちょっと付き合わない?」
 由里子は酔って目の回りを赤くしているその男を見た。
 「でも……私、怒られるから……」
 由里子は俯向いて困ったように首を傾げた。そんな純情な由里子の風情に、男はノッてきた。
 「いいじゃない。それとも誰かと楽しんできた帰りなの?」
 電車が揺れたのを幸いとばかりに、男は由里子のヒップに手をかけ、いやらしく撫でまわした。ぽっと顔を赤らめるだけの由里子を見て、男は大胆になった。襞をとった制服のスカートに手を回し、耳元で囁いた。
 「いい身体してんじゃんよ。デートしよう。たっぷり楽しませてやるって」
 男の抜けたプレイボーイぶりに、由里子は俯向いたまま笑いを堪えるのに必死だった。
 「何言ってんだよ、オッサン」
 由里子は、いきなり顔をあげ、男を正面から見据えた。装っていた清純さが跡形もなく消え、ドスの効いた百戦錬磨の女があった。
 「あたしをガキだと思って舐めてるんじゃないよ」
 由里子はいきなり男のズボンの前に手を伸ばし、半立ちになっているその股間をぎゅっと握り締めた。白魚のように繊細な指だが握力は強い。思いもかけない攻撃の驚きと苦痛に男は硬直した。
 「あたしは高いんだよ。場末のソープにでも行って抜いてきな!」
 電車がホームに滑り込んだので、由里子は男を突き飛ばし、そのまま降りた。
 最高じゃん。
 由里子はこの上ない爽快感を感じていた。これは面白い事になりそうだわ。


 岸田家の玄関を開けた時は夜の九時になっていた。どう言っていいか判らない由里子は、とりあえず可愛い声で「ただいま」と言ってみた。
 奥から母親らしい中年女が飛んできた。
 「どうしたの。こんな時間まで。今日は塾はない日でしょ? 真澄さんから電話があったのよ」
 これがあたしを棄てた母親か。若作りしてスタイルもいいし、けっこう美人じゃないの。
 「こっちは心配してたんだから、なにか言いなさい」
 馬鹿野郎テメエわめくんじゃねえよ、と言いたいところだったが、由里子は抑えた。
 「ごめんなさい……」
 父親らしい渋めの男も出てきた。
 「ママ。そう言うな。真紀子も年頃なんだからいろいろあるよ。なあ真紀子」
 テレビドラマに出てくる物分かりのいい親父そっくりだ。テレビでしか家庭というものを知らない由里子に、猛烈な嫌悪感が湧いた。
 この偽善者め。反吐が出そうなクソ夫婦め。
 思わずきつい目で両親を睨みつけそうになるのを我慢して由里子は、そのまま自分の部屋に入った。
 淡いピンクにコーディネートされた可愛い部屋。なるほど由里子の個室とはまったく違う。セックスとはまったく無縁な少女趣味ななお部屋。
 窮屈な制服をぱっぱっと脱ぎ捨ててシースルーのパンティ一枚になった由里子は、きちんとメイクされ、これまたピンクのカバーがかかった真紀子のベッドに、どさっと横になった。
 急にやると怪しまれる。徐々に、徐々に。
 これから先のことを考えると興奮してくる。
 この清潔でお上品な部屋を、家庭を、偽善的な親たちを、あたしのセクシーなこの身体で目茶苦茶にしてやるわ。
 男だろうが女だろうが、高校生だろうがじじいだろうが、あたしのテクニックで蕩しこめない相手なんて居るもんか……。
 姉のものとはいえ、見知らぬ部屋に侵入して淫らな姿でいることには倒錯的な快感があった。それは部屋の持ち主である清純な真紀子を辱めることでもある。泣き叫び哀願する真紀子に無理矢理後ろからバイブを挿入した午後の体験を思い出すと、由里子は身体の芯が火照ってきた。
 なんだか自分とヤッてるみたいだった、アレは。ベッドでじっくりレズプレイをする時間があればよかったのに。恥ずかしがるのを無理矢理ってのがいいのよね……。
 そう思いつつ由里子の指は、すでにぐっしょり濡れたパンティの中に伸びていった。もう片方の手は、スリムな身体には不釣り合いなほど大きい乳房をすくいあげるように揉み、すでに堅く立った乳首を指先でいじめている。
 由里子が仕事以外でオナニーをするのは、これが初めてだった。


 翌日の日曜日。
 どことなく態度がおかしい由里子を、両親は腫れ物を触るように扱った。食事は自分の部屋で食べた。親の前で食べて無作法をさらけ出さないためだ。
 親なんかチョロイ。
 しかし、真紀子はあんな親に蝶よ花よと育てられたのかと思うと、由里子の心には強烈な嫉妬が煮えたぎった。
 全部、めちゃくちゃにしてやる。あいつに関する事は、すべて……。
 由里子は、壁に張ってあるアイドルのポスターを引き剥がし本棚のロマンス小説を床にぶちまけた。男と女なんて、こんな奇麗事じゃない。結局は身体を貪るだけじゃないのさ。


                  *


 月曜日。
 由里子はスカートを短めに穿いて登校した。駅までの道すがら、通行人は目玉が飛び出すような顔で彼女を見るのがおかしかった。
 風が吹いてなびくスカートの下には何も着けていないからだ。肉感的な太ももやヒップが朝の陽光にさらされても由里子は平気だった。なにしろ一昨日までは大きく広げた局部にスポットライトが当たっていたのだから。
 満員の電車の中で、由里子はわざと真面目そうな若いサラリーマンに身体を擦りつけてやった。知らん顔をして日経新聞に見入るその男の股間がみるみる膨らんでいくのが判って、彼女は笑いを堪えるのに必死だった。


 教室に入った時、みんなの目が彼女に集中した。特に坂口たちの視線は由里子の胸にへばりついた。自分の席が判らないので、みんなが席に着くまでぶらぶらした。
 由里子の席は何と、あの坂口の隣だった。
 「おい、電話で言ったこと、わかってるんだろうな? 今日こそ放課後に……」
 押し殺した声で彼が由里子に言いかけた時、通路をはさんだ席の少女が話し掛けてきた。
 「土曜日、どうしたの。夜電話したら、まだ帰ってきてないってお母さんが言うし……心配しちゃった」
 この可愛ぶった顔の女が、真紀子の親友だという真澄なのだろう。
 「うん……ちょっとね」
 真澄の目も由里子の胸を凝視していた。そりゃそうだろう。一昨日まで、形は良いが、ごく普通の大きさの胸だったものが、今ではバスト九〇はあろうかという巨乳に変貌しているのだから。
 「ねえ……お節介だろうけど……今日のブラ、趣味ワルイよ。そんなに大きく見せるの、逆効果よ。ヘンだよ」
 周囲を気遣いながら真澄が囁いてくる。
 「そう?」
 うん、と真澄は頷いた。ふん。本当はどこで売ってるのか聞きたいくせに。でもこれはブラじゃなくてあたしの自前なんだからね。
 一時間目に現れたのは美人だが、いかにもつんと澄まして、みるからにお高くとまった女教師だった。まだ若いが、教え方には落ち着きがあり、優秀な教師であることが判る。
 切れ長の眸、秀でた額、ウェーブしたセミロングの柔らかそうな髪。すらりとした長身をタイトなロングスカートと白いブラウスに包んでいる。典型的な女教師スタイルだ。彼女の教える数学の中身はちんぷんかんぷんだったが、由里子にとっては初めて見るタイプの女性だった。彼女の周りにいたのは獣欲に狂った男たちとセックス漬けの女たちばかりだったから。
 こんな女でもセックスするのかしら? するわよね。表面気取った女ほどあっちの方は激しいって客が言ってたもの。決めた。絶対にこの女を落としてやる。裸に剥いて、あたしのテクニックとバイブで責めたら、あの澄ました顔と声がどんなになるかが見ものよね……。
 由里子が食い入るようにその数学教師・小川美佳の姿を見つめていると、二人の視線がバッティングした。
 「岸田さん」
 美佳は由里子の視線が煩わしかったのか、やや眉をひそめて指名した。
 「この問題を解いてください」
 真紀子ならば難無く解けるはずの問題であったが、由里子に判るはずがない。立ち上がった由里子は仕方なく言った。
 「判りません」
 「あら? どうしたのかしら? あなた今日はなんかおかしいわね」
 美佳の視線も彼女の胸で止まった。
 「あたしが巨乳になったから、やっかんでるんじゃないんですかぁ?」
 まあ! と言ったっきり、美佳は一瞬言葉を失い、その後の授業はしどろもどろになってしまった。
 この教師もチョロイ。


 次の時間、由里子はスカートがうっとうしくて堪らなくなった。こんなに長時間服を着ていたことがないのだ。由里子にとって、服は脱ぐためのものでしかなかった。
 彼女は、さりげなくスカートをたくしあげ、ぱたぱたと扇いだ。それを見た周りの男子生徒達の顔が真っ赤になった。真っ白な太ももにちらりと黒い茂みも見えた筈だ。
 授業が終わると、彼らは前屈みの姿勢でトイレに飛んでいった。きっとオナニーをするのだろう。あいつらもチョロイ。
 授業は死ぬほど退屈だった。退屈するにつれて身体が疼いてくる。
 まる一日以上も男のものを受け入れない、なんて事は今までなかった。由里子は物心ついて以来、毎日必ず三人の男のものを咥え込まされて来たのだ。
 他にする事もない由里子の手は、スカートに包まれた自分の下半身に伸びた。中に手を入れてオナニーをしたい。しかし、いくら何でも、たくし上げるのは躊躇らわれた。
 そうだ、ポケットがあった。
 由里子の手はプリーツの間に忍び込んだが、ポケットが浅くて股の間まで手が届かない。布地越しに太ももを撫でるだけでは身体が火照るばかりだ。仕方なくノーパンでむき出しのその部分をひくひく動かしていると、ますます淫らな気分になってくる。
 ああ思いっ切りオナニーをしたい。今すぐ。
 苛々と周りを見回す由里子の目に、隣の坂口の机の上のカッターナイフが止まった。
 「ちょっとそれ貸して」
 「何だよ」
 先ほどから顔を紅潮させ、腰をくねらせている由里子の様子を、ちらちら見ていた坂口は驚いたようだった。
 「いいから」
 電光石火、手に取ったカッターをポケットの中にすべり込ませ、底を切り裂いた由里子は、腕をぐっと肘近くまで差し込んだ。
 隣にいる坂口には、脚を開き加減に坐った由里子の手がスカートの下で股間に伸び、自分をもてあそび始めたのが判った。
 「岸田、お前、何やってんだよ?」
 由里子は返事もせずに自分の手の動きに没頭している。スカートの下の指の動きが小刻みに早くなるにつれて、由里子は息をはずませ、両脚がますます開いてゆく。
 上体と顎をやや反らしたまま、うっとり閉じた目と半開きの唇、そして桜色に上気した頬がひどく淫らだった。
 真澄は、由里子が何をしているのか判らなかったが、やがて真っ赤になるとそっぽを向いた。
 ほんとうはオナニーなんかあまり感じない。指よりも男のものを咥えたほうがいい。でも今は、学校の授業中にオナニーをしている、その事がたまらなく刺激的だった。
 そんな由里子の様子を坂口は、じっと観察している。彼は授業そっちのけで由里子のオナニーをにやにやしながら視姦していた。
 「ああっ、んん……」
 思わず声が出る。小さな声だったが、私語もなく静かな教室には場違いなその喘ぎに、全員が由里子の方を見た。
 見てはいけないものを見てしまったように女生徒たちはぎょっとして目を逸らし、まだ若い男性の教師もどうして良いかわからず無視することにしたようだ。
 しかし男子生徒の中には、由里子の淫らな姿に目が釘付けになってしまった者も多かった。
 ああ、みんな、いやらしい私のオナニーを見て……。
 興奮した由里子の指の動きは一層激しくなった。静まり返ってしまった教室に、蜜壺から溢れた愛液と指が擦れ合う音がひそやかに響いた。
 ほら、これが私のオマンコの音よ……。
 真澄は一切聞くまいとして耳を塞いでいた。
 見られている事が由里子を刺激して、ほどなく彼女は、唇を噛みしめたまま絶頂に達した。広げて床に突っ張った脚がひくひくと震えた。
 声を殺してアクメにいくのもいいもんだわ。
 由里子はけっこう味をしめて、自分の蜜で濡れた指を坂口に見せた。
 さすがの坂口も、これには驚いて思わず教科書を床に落としてしまった。


 昼休み。
 みんなが弁当を広げだした時、由里子は坂口に流し目を送って席を立った。どういうわけか真澄は、教室を出て行く由里子を泣きそうな顔で見送った。
 由里子は誰もいない屋上に行った。
 まもなく坂口も姿を現した。
 「やっぱりあの写真のモデルはお前だったんだな」
 「だからなんなの?」
 由里子は坂口の肩を掴むと引き寄せて、いきなり股間に手を伸ばした。ズボンの布地越しに、男のいきり立ったものを撫でさすりながら、自分から唇を求めた。
 彼女の舌は坂口の中を舐め回す、濃厚なディープ・キスだった。おまけにその大きな胸を惜し気もなく彼に擦りつけた。
 夢遊病のような表情になった坂口は、由里子のスカートの下に手を入れた。すかさず由里子は手を添えて熱く濡れそぼっている秘所に導いた。
 「やって。今ここで」
 由里子は潤んだ瞳で坂口に囁いた。
 彼は慌ててベルトを外した。すでにパンツは大きく持ち上がっていた。
 由里子はパンツから彼の逸物をするりと取り出すと、手でしごきだした。
 「あ。止めてくれ」
 「どうして。怖いの? あんた、童貞でしょ」
 「怖くないよ。怖くないけど、その……」
 なによ、と言いながら由里子の手は止まらなかった。
 「止めてくれよ。でないと、おれ、あ……」
 坂口はあっけなく射精した。匂いのきつい濃い液体が勢いよく飛び出し由里子の制服にもかかった。
 「おじさんじゃないんだから、一回出たくらい関係ないよね」
 由里子は片足を大きく上げて、薄めの叢をむき出しにした。
 「さ、きて。欲しいの」
 童貞を棄てるなら、もっときちんとしたかった、と処女みたいな事を坂口は一瞬思ったが、そんなことはどうでもいい。彼はしゃにむに突き進んだが、初心者がイッパツで挿入は出来ない。
 「痛い。そこはオシッコするところよ!」
 由里子は慣れた手つきで坂口の肉茎を膣口に導いてやった。
 挿入した瞬間、坂口の表情はとろけきった。
 「ああ、あったかい。ここって、こんなに気持ちいいのか……」
 「もっと気持ちよくしてあげる」
 由里子はくいくいと腰を使い始めた。そして、ちょっと淫肉を締めてやっただけで、坂口はがくがくと痙攣し、あえなく昇天した。
 「ほんと、三擦り半ね。回数でカバーするしかないわ」
 由里子は非常口の裏側に坂口を引っ張り込んだ。ここなら不意に誰か来ても見られる事はない。
 由里子は坂口の上にまたがって、精液に濡れたままの彼の男根に自分の、これもぐっしょり濡れた茂みを激しくこすりつけた。
 半勃起状態だった坂口の肉棒は、たちまち硬くなった。すかさずその根元をつかみ、するりと自分の中に収めると、由里子はセーラー服の上衣を脱ぎ捨てた。ノーブラ、ノーパンで学校に来ているので、下には何もつけていない。
 由里子の白くて形のいい乳房がゆさゆさと揺れた。紡錘形の先端にピンク色の乳暈が大きい、ロケットのように突き出した乳房である。
 「ど、どういうことなんだ、これは……」
 「なによ。セックスするのに理屈がいるの?」
 「い、いや……」
 「ぼんやりしてないでオッパイ揉んでよ。腰も使って。ほら、下からもっと突き上げて……ああっ」
 坂口はもっともチョロイ。


 赤い顔をして息を弾ませて戻ってきた由里子と坂口を見て、真澄は由里子と一切口を利こうとしなかった。しかしそんなことを気にする由里子ではない。


 放課後。
 由里子は坂口を体育倉庫に誘った。
 「木島と加藤も一緒じゃダメか? あいつらだってお前の秘密を知ってるんだぜ」
 この期に及んでも坂口は由里子を嚇せると思い込んでいるようだった。
 「秘密? 別にそんなもの関係ないけど……いいわよ。あんたひとりじゃすぐ終わっちゃうけど、三人もいればあたしもなんとかイけるかもね。質より量よ」
 坂口は激しく傷ついた。しかし、体操マットの上でも坂口はあっけなく果てた。意外な事に木島や加藤のほうが長持ちし、由里子に喘ぎ声を出させる事に成功した。
 「あんたたち、オナニーばっかりしてるでしょう? だから長くなるのよ」
 事実、木島は由里子が指でしごき、口に含んだ挙げ句に、ようやくイッたくらいだ。
 この三人は完全に由里子によってフヌケ状態にされていた。
 「あんた達にヤッてほしい奴がいるんだけど」
 由里子が言い出した『頼み』を三人は聞かない訳にはいかなかった。


                  *


 翌日の放課後。
 小川美佳は手早く仕事を終えると帰り支度を始めた。今夜はフィアンセの体育教師・笠井とデートなのだ。理学部を優秀な成績で卒業した彼女は、長身でクール・ビューティであるがゆえに「冷たい」「お高い」と言われて敬遠され続けたが、笠井だけは彼女の本質を理解してくれていた。
 彼となら結婚してもいい。そう思っている美佳は、もしかして今夜あたり彼にすべてを与えることになるのではないか、という予感があった。
 職員室から出てきた美佳は、血相を変えて走ってきた木島に声をかけられた。
 「先生! 大変です! 加藤が、加藤が」
 「どうしたの。落ち着いて!」
 彼女は時々生徒がたまらなくバカに見える時がある。自分を基準にしてはいけないと思うけれど、思った事は顔に出てしまう。だから彼女は生徒からもよく思われていない事を知っていた。しかし本当は親身な教師になろうとして大学に残らずに教師の道を選んだのだ。
 「加藤が、音楽室で……スピーカーの下敷きになって」
 「行きましょう!」
 美佳は木島と一緒に走り出した。
 音楽室の巨大なスピーカーは天井から釣り下げられている。音楽スタジオを模した設計なのだが、学校の設備としては危ないと前から思っていたのだ。
 広い校舎を走り抜け、木島が音楽室のドアを開けた。
 と、同時にスピーカーからハードロックが耳をつんざく大音量で流れ出した。
 「ここのステレオを弄ってたんです。加藤はそこに……」
 美佳が中に入ると、分厚い遮音ドアがどしんと締まった。
 と同時にドアの影に隠れていた坂口と加藤が後ろから彼女に飛び掛かった。
 「何をするんです! やめて!」
 美佳は声を上げたが、誰一人怯むものはいなかった。
 「どんな大声を出しても聞こえないわよ。この部屋は完全遮音だし、あんたの絶叫だってロックのシャウトにしか聞こえないし」
 三人に組み据えられた美佳を見下ろした由里子の顔には邪悪な表情が浮かんでいた。
 木島は、今回はオレの演技が効いた、と美佳のスカートに手をかけた。
 「あ! 止めなさい!」
 今夜の事を考えて、いつもより大胆な下着を着けているのだ。それを見られたくない。
 しかし、木島は彼女のタイトスカートを捲くり上げた。
 「へええ! 先生もこんな猥褻なパンティ穿くの。てっきり木綿のズロースかと思ったわ」
 由里子が嘲った。美佳が穿いていたのはレースの部分がシースルーになったスキャンティだった。
 「こんなの穿いて彼氏を誘惑しようとしたんでしょ」
 「あなた方にどうこう言われる筋合いはないわ。早く手を離しなさい!」
 「おっ、こいつタカビーじゃん。SMクラブの女王様のほうが向いてるわよ」
 なおも何か言おうとした美佳の口を、木島が塞いだが、口を押さえて飛びのいた。
 「こ、このセン公、舌を噛みやがった……」
 「いい度胸してるじゃんよ。これから犯されようってのに」
 由里子は美佳の前にしゃがみこむと、思い切り往復ビンタを食らわせた。
 「き、岸田さん、あなたいつからスケ番みたいな……」
 「知らなかった? 勉強出来るから品行方正と思ったら大間違いなんだから」
 「そうだぜ。こいつのセックスは最高なんだ。優等生の顔して、ウラでヤリまくってたんだ」
 坂口が言った。
 「今日のあたしはコーチだよ。あんたらの技をチェックしてやるよ」
 由里子は腕組みをして座り込んだ。まるでその姿は星一徹だ。
 「あなた方、私の彼が、笠井先生だって判ってるの?」
 笠井は屈強な体育教師でありラグビー部の顧問、しかも生徒指導部の鬼教師だった。
 「だからなんだよ。笛でも吹いたら笠井が窓から飛び込んでくるのか?」
 木島はそう言いながら美佳のパンティをずり下げた。
 黒々と濃い恥毛が露わになった。
 「わあ、こいつ澄ました顔して毛深いじゃん。手入れぐらいすれば?」
 こんな小娘に……美佳は怒りと羞恥で頭に血が昇った。
 坂口と加藤は連携プレイで美佳の足を広げようとしたが、美佳は渾身の力を振り絞って逆らった。
 「内腿をつねればいいのよ」
 すかさず由里子がコーチした。
 「い、痛い!」
 痣が残るほどつねりあげられて思わず力を抜いた、その隙に美佳の両足は無残に大きく割り広げられてしまった。
 「へえ、毛深いのは上の方だけじゃないんだね。お尻の穴のほうまで生えてるよ」
 由里子の嘲笑に、美佳は消え入りたかった。
 「ほら、せっかく広げたんだから、よく見といたほうがいいよ。指で襞ひだを開いてみたら? まったく毛が邪魔で何も見えやしない」
 「そうだよ、俺たち手がふさがってるんだから、木島、お前広げてみろよ」
 口々にそそのかされて、木島は美佳の秘裂の両側をつまみ、全員によく見えるように思い切り左右に引っ張った。
 「ああっ、やめて……やめて頂戴」
 美佳の哀願にもかかわらず、女教師の肉襞は、そのピンク色の内側を生徒たちの視線に曝してしまった。
 「へえ、トシの割にはきれいな色してるぜ。あまり使い込んでないな、このオマンコ」
 三人とも先週までは一応普通の男子生徒だったのに、由里子のセックストレーニングの成果なのか、それとも進学校の生徒だけに覚えがいいのか、すっかり獣欲に狂ったオスと化している。
 「クリトリスは大きいぜ。この先公、案外独りでヤリ狂ってたりしてな……」
 最も恥ずかしい部分を教え子たちにあれこれ品定めされる辛さに、美佳は消え入りたかった。
 「ほら小川センセ、生徒に一体どこ見せてんだよ? いってみな」
 さっきまで教壇に立っていた高慢な女教師をいたぶる快感に夢中になった由里子が、彼女の頬をぴたぴたと叩く。
 「判りません、じゃダメだよ。言うんだよ。私は生徒にいやらしいオマンコを見せてますってね」
 木島は夢中になって女教師の肉襞をいじくり回している。
 「……岸田さん、あなたよくそんなことを……木島君もやめなさい、やめるのよっ」
 それでも教師としての立場を忘れない美佳に由里子の怒りが炸烈した。頬を思いっきり張り飛ばす。頭の中に火花が散り、一瞬、美佳は目の前が暗くなった。
 「言うんだよ。生徒にどこ見せてるんだよ? 言えよ。オマンコ見せてますって」
 胸に馬乗りになって美佳の肩をがくがくと揺さぶる由里子の目には狂暴な光が宿っている。すっかり脅えた美佳は、目に涙を溜めて繰り返すしかなかった。
 「お……オマンコを……見せてます……」
 口の中が切れたらしく、話しにくそうだ。
 女教師を屈伏させ、恥ずかしい言葉を言わせた由里子は、勝ち誇ったように木島に命じた。
 「ほら時間がないんだから、さっさとハメるんだよ」
 由里子の命令で木島はズボンをずり下げ、鎌首をもたげた下半身を剥き出しにした。恐怖と嫌悪に顔をそむける美佳には構わずのしかかってゆく。
 美佳の両足は坂口と加藤の手で、あざが出来るほど押さえつけられ、大股開きにされているのに、木島の一物は中々挿入できない。
 「ピピー! 安物の娼婦じゃないんだから濡れてもないのにはいらないよ!」
 由里子の的確な教育的指導が飛んだ。
 「ど、どうすれば……」
 「ツバで濡らすの。アタマ使うんだよ」
 木島は手にツバをしこたま吹き掛けると、それを美佳の秘部に塗りたくった。
 「もういいでしょ。どうせ初めてじゃないんだろうし。それとも先生、この歳になって、まだ処女?」
 二四才の美佳には経験はあったが、あまりの恥辱に口が利けなかった。
 木島はすでに怒張しきった肉茎を彼女の秘裂にあてがうと、ゆっくりと身体を沈めた。
 「ああああ……聡さん……」
 高校生とは思えない、どす黒く雁の張った木島の怒張が押し入ってくるのを感じて、美佳は何もかもが終わりを告げる予感がした。この後あの人にどんな顔をして逢えばいいのだろう。
 「ほら。いきなりピストンじゃ女は感じないって。ゆっくり探って急所をさがすんだよ」
 うん、と木島は素直に返事をすると、円を描くように腰を使ってグラインドをし始めた。
 「ああ……」
 思わず美佳が声を上げた。
 「ほほお。ここか」
 木島は勝ち誇ったように、美佳の急所を突き上げ、こすり立てて重点的に責め始めた。
 「おう。滑りがよくなってきたぜ。濡れてきたな」
 「いやいやいや。止めて。止めなさい」
 加藤と坂口は美佳の胸をはだけた。スキャンティと対のレースのブラを取ると、小ぶりな乳房が顔を出した。
 「真紀子と比べるまでもない貧相なオッパイだな」
 みんな自分を真紀子だと思い込んでいる。由里子にはそれが愉快で堪らなかった。
 「オマンコもよう、真紀子のほうがぐっと絞めてきてずっと気持ちいいぜ。粗マンだなこりゃ」
 当たり前だ。そこらの女とナンバーワンのあたしを比べないでよ、と由里子は言いたかったが、我慢した。そう言われた美佳の表情が傷ついて歪んだのが愉快だった。
 二人に嬲られた美佳の乳首は、みるみる硬くなった。二人は乳房を揉みしだき、舌で舐めた。
 「イク。イくぞ」
 「あ、嫌。中は駄目。お願いだから、木島君……中は」
 そんな事を聞く木島ではなかった。ふんふんと荒い息をして、美佳の中に思う存分精液をぶちまけた。
 この後、美佳は抵抗らしい抵抗をやめてしまった。続いて加藤と坂口が犯し、美佳の中に射精しても、彼女は虚ろな目で中空を見つめるだけだった。
 「つまんねえな。死人を犯してるみたいだ」
 「お前、死人とセックスしたことあんのかよ」
 「ないけど……比喩だよ」
 美佳はあまり感じない女だ。冷感症というより、経験が少ないから開発されていないだけだ。
 そう見て取った由里子は、この女教師のセックスを徹底的に開花させてやろうと決心した。あたしならこの高慢ちきなインテリ女を淫乱にしてやれるわ。
 美佳は三人に犯されたあと、ぐったりとしていた。もうなにも考えられなかった。
 「ねえねえ先生。これ何か知ってる?」
 由里子が美佳の頬をぴたぴた叩いて、小さな容器を見せた。
 「これ、イチジク浣腸っていうの」
 「し、知りません」
 「でも、浣腸っていうのは知ってるでしょ。ウンチをヒリ出すために使う薬よ」
 私をぼろぼろにしておいて、この上いったい何をしようと言うのか。美佳は底知れぬ恐怖を真紀子、いや由里子に感じた。
 由里子が目で合図すると、木島が美佳の身体をひっくり返した。ボロ布のようになっている美佳の態勢を変えるのは造作もなかった。
 「おら。岸田先生の浣腸をちゃんと受けろ!」
 木島は美佳の足を折り曲げて尻を突き出す格好にさせた。
 加藤の手が、美佳の臀部を左右に割り広げる。
 「さっき見たけど、可愛い肛門だね」
 「い、いや。そういうのは嫌。許してください」
 「どうして? 浣腸は健康にいいのよ」
 音楽室にはハードロックが大音響で鳴り続けている。ここでどんな声を出しても聞こえはしない。いや。もし誰かが来たらどうなる? 一番傷つくのは被害者の私ではないか。
 美佳は出口無しの状況を噛み締めた。もうなるようにしかならないのだ。彼らの思い通りにしかならないのだ。
 「じゃあ、浣腸を始めるわね。もっと足を開いてあたしにケツの穴を見せるのよ、センセ」
 美佳のアヌスに小さな冷たい管が差し込まれる感触がした。
 「いや! こんなの、イヤ! 絶対イヤ」
 「ああそう。でも、あたしがこの容器を握るだけでクスリはどんどん入っていくのよ」
 由里子がふふふと笑って、容器をぐいと握り潰すと、冷たい液体が美佳の直腸に勢いよく流れ込んできた。
 「いやああ! 止めてえ!」
 突然の冷たい感触に、美佳は身悶えたが、突き出した尻を振る格好になったのを見て、由里子たちは大声を出して嘲笑した。
 「一個じゃつまんないでしょ?」
 由里子は三人の少年たちに同意を求めると、もう一個の容器のキャップを取り、すかさず美佳のアヌスに突き刺した。
 浣腸された経験のない彼女にとって、薬の効き目は即座に現れた。お腹がグルグルと音を立て始めたのだ。
 「い……痛い……」
 「でしょ? 二つも入れたんだからかなり効くはずよ。漏らさないように栓をしないとね」
 由里子は木島に目配せした。この中で一番長持ちするのは木島なのだ。
 彼は自分の分身に唾をつけると、先端の雁首を美佳のアヌスにあてがった。
 「栓……栓って、な、何を……」
 「おれのチンポで栓をしてやるんだよ」
 「い、いやぁ……そこは違う……」
 木島はバックスタイルで美佳のアヌスに自分のモノをじりじりと沈め始めた。
 「先生。今先生はお尻の穴でセックスしてるんだぜ。今度彼氏の笠井先生とやってみたら?」
 「言わないで! 彼の事は言わないで!」
 「恋人ならなんでもすりゃいいじゃんよ」
 木島はぐいぐいと肉棒を突き入れた。
 「いやあああ」
 美佳の直腸は惨たらしい蠢動を始めていた。そして、その生理現象を促進するかのように木島の肉棒がもっとも鋭敏なアヌスの入り口付近を徘徊している。
 「お、お手洗いに行かせてください……」
 「トイレに行くも何も、おれのこれは、お前のどこに入ってるんだ?」
 木島は激しいピストン運動を始めた。
 「言えよ。言わなきゃここで垂れ流しだ。カーペットにお前のビチグソが染み込んで、掃除するのが大変だろうな。え?」
 美佳の便意はますます激しくなっていった。
 「……お、お尻の……あ、な……」
 木島は大笑いしながら彼女の尻たぶをびしばしと叩き、思う存分ぐいぐいと突き上げた。腸の中の圧力は出口を失って増す一方で、溜まってきたガスが美佳をより一層苦しめた。
 「お、お手洗いに……お願いです」
 彼女の苦悶の表情を見て、一気に高まった木島は、うおっと吠えると美佳のアナルの中にどくどくと射精した。
 「イッたの? だらしないわねえ」
 由里子は呆れた。やはりしょせん高校生だ。
 「心配するな。次はおれだ」
 坂口は勃起した、自分のモノをしごきながら木島と交代した。サディスティックな興奮に、先端から粘液が糸を引いている。
 「おらぁ、小川センセ、漏らすなよ。粗相したら自分で舐めてきれいにしろよ」
 木島の精液が潤滑液になって、坂口はぐいぐいとピストン運動をした。無残に広がった美佳のアヌスに容赦なく抽送し、ペニスを根元まで埋めこんでいる。
 「おい。こいつ、真っ青になってきたぞ。そろそろ出させてやんないとまずいんじゃないか」
 と、加藤が見兼ねるように言った。
 「待てよ。もうじきイくんだ」
 坂口はスパートをかけ、美佳の尻に激しく腰を打ちつけながら、一気にフィニッシュに達した。
 「いいか。抜いてやるが、ここでヒリやがったらお前が全部舐めてきれいにするんだぞ」
 美佳は訳が判らないままに頷いた。とにかく今は菊座からおぞましい肉棒を抜いて欲しい。
 ぷりっという音がした。溜りに溜まったガスが栓を抜かれた拍子に出たのだ。
 「こいつ、澄ました顔してでけえオナラしやがんの」
 「垂れてないだろうな」
 美佳は必死の思いで肛門の筋肉を引き締めていた。坂口に言われるまでもなく、人前で排泄など絶対に出来ない。
 「お、お手洗いに……」
 美佳はうわ言のように言った。
 「いいわ。約束だから。行かせてあげる」
 由里子の許可が出た。
 美佳は床に落ちているブラウスとスカートを手繰り寄せようとしたが、すかさず由里子が踏み付けた。
 「誰が服を着ていいと言った? トイレに行ってもいいと言ったけど、服を着ていいとは言わなかったわよ」
 音楽室から一番近いトイレまで、五〇メートルほどある。それも廊下を歩かなくてはいけないのだ。
 「こんな……こんな格好で廊下を歩けというんですか」
 「そうよ。それが嫌なら、ここでするしかないわね」
 加藤が遮蔽ドアを開けて外の様子を見た。
 「もう五時だし、こっちの校舎にはあんまり残ってないと思う。根性出せば誰にも見られずに行けるんじゃないの?」
 美佳の全身に脂汗が吹き出していた。いくら肛門を絞めても、もう限界に近い。
 「おらおら。どうするんだよ」
 木島が彼女の内腿を撫で上げた。悪寒が走ってまたガスが出た。
 「あたしたちも付いていってあげる。トイレまで行くしかないでしょうが? ! 
 」
 坂口と木島は全身を震わせて耐えている美佳を両脇から抱きかかえて立ち上がらせた。


 たしかに、遠くの別棟からは足音や人の声がするが、音楽室のある校舎には人気がなかった。
 美佳は全裸に剥かれたそのままの姿で、下腹部の激痛に耐えながら、そろそろと歩きだした。彼女の前には加藤がおり、彼女の後ろには、ちょっとでも腕で身体を隠そうとすると尻たぶをひっ叩く役の木島がいた。由里子は薄く笑みを浮かべ、美佳の惨めな姿を目で犯しながら、楽しそうについて来る。
 木島は、美佳の足が少しでも止まると、彼女の尻をぴしゃりと何度も叩いた。
 「あんまり乱暴にすると漏らしちゃうわよ……」
 由里子がそう言いかけた、その時。
 ぱたぱたというスリッパの音が近づいてきた。あの音は美佳のフィアンセの笠井のものだ。美佳の顔が一瞬明るくなったが、次の瞬間絶望的になった。
 「どうする。こっちに来るぜ」
 美佳はパニックになった。ようやくトイレのそばまで来たのに。自分は全裸で、その上太ももやヒップには輪姦されたしるしの精液がついたままだ。彼にすべてを話すか? とんでもない。そんな事は絶対に出来ない。
 美佳はとっさに掃除用具をしまうスチール・ロッカーを開けて身を隠した。
 その外では、やってきた笠井が坂口と立ち話を始めた。
 「お前らのレコード鑑賞、まだ終わらないのか?」
 「もうすこしです。休憩してるところなんです」
 「六時までには終われよ。おれももう帰る」
 何も知らない笠井は、すたすたという足音をさせて去っていった。
 「おれももう帰る、だとよ。テメエのスケがどうなってるか知らないで」
 坂口たちはげらげら笑ってロッカーのドアを開け、美佳を外に引っ張り出した。
 目の前がトイレだった。
 美佳は女子トイレに駆け込んだが、洋式トイレの個室ドアを閉める寸前に由里子の足が邪魔をした。
 「ドアは開けたまま。先生のうんこする姿を見せてもらうわ。ビデオがなくて残念ね」
 「もう……もうこれで勘弁してください。どうしてそんなに私を辱めなくちゃいけないんですか!」
 もうこれ以上の我慢は出来なかった。暴発しそうな猛烈な便意が羞恥心に優ってしまったのだ。
 美佳は便器に座ろうとしたが、木島と坂口が引き上げた。
 「それじゃよく見えないだろ。便器の上にしゃがんでやるんだ」
 もう、どうでもいい。どうなってもいい。
 美佳は言われるままに便器の上にしゃがんだ。
 四人が見つめる前で、美佳は決壊した。激しいガスの噴出とともに、セピア色の蕾がぐっと盛り上がり、よく今まで我慢したと思えるほどの量の大便が美佳のアヌスからとめどなく排出された。便器を打つ音は、気が遠くなるほど長く続いた。
 ああ、どうしてこんな惨めで恥ずかしい目に遭わなきゃいけないの……。
 美佳は排泄が終わると、虚脱と絶望感で倒れそうになった。
 「なにしてんのよ。これで終わりじゃないんだからね。六時までまだ時間はあるし」
 由里子は笑顔を浮かべた。


 音楽室に戻された美佳は、再び男たちの淫辱を受けねばならなかった。彼らは美佳の口の中にペニスを押し込み、髪をつかんで強引に頭を動かして一回ずつ果てた。涙ぐんで咳き込む彼女の花芯を責め、次は床に這わせてアヌスで、と留まることなく彼女を犯し続けた。
 「これから家に帰ってデートの支度か? 先生」
 「そうはいかないんじゃないの」
 涙と少年たちの精液にまみれ、無残な有り様の美佳を見て、四人は無責任に笑った。
 「これから先生のウチに行きましょう。先生に女の歓びを教えてあげる」
 由里子の言葉に、美佳は力なくうなだれるしかなかった。


                  *


 美佳のアパートに上がり込んだ由里子は、坂口たちに命じてバスタブに湯を張らせたあと、少年たちを締め出してバスルームに鍵をかけた。
 「さあセンセ、これで二人っきりだよ。早くもう一度裸になりなよ」
 年下で自分よりずっと小柄な由里子に、美佳は虚脱したように従った。
 備え付けのバスジェルを投げ入れ、泡立った湯ぶねに、それでも前を隠しながら、おずおずと身体を静める美佳のあとから由里子もはいってくる。
 巨乳を美佳の背中にぴったりとつけ、脇の下から手を回して、由里子は美佳の胸をやわやわと揉みしだき、乳首を摘んだ。
 「いけないわ。岸田さん、やめて……」
 教え子に、それも女の子にこんなことをされて感じてしまうなんて……美佳はかすかに残った理性で抵抗しようとした。
 「だめだって、カッコつけたって。オッパイの先が立ってるじゃん。気持ちいいんでしょ? ほら、ここはどう?」
 由里子の指がみぞおちをすべり降り、美佳の下腹部を覆っている柔らかな茂みのあいだに忍び込んでくる。
 「ああっ……そんな……そこは駄目……」
 由里子の指が美佳のクリトリスをとらえた。女ならではの繊細な指使いで包皮を剥きあげ、ちろちろと嬲る。もう片方の手は美佳の乳首を摘みあげ、二本の指ではさみ、転がし、容赦なく刺激し続けている。
 とても高校生とは思えないそのテクニックに、美佳は身体の奥から疼くような快感が湧きあがってくるのを抑えられなかった。
 「ほらほら、センセのクリトリス、もうプリプリになっちゃったよ」
 「やめて、岸田さん……そんなこと言わないで……」
 自分でもそこが膨れ上がっているのがわかる。美佳は恥ずかしさに消え入りたかった。由里子は人差し指と薬指で美佳の秘裂をさらに拡げ、今や倍ほどの大きさになった彼女のクリトリスを中指の腹で執拗にしごいている。いけないと思いつつあまりの快感に、美佳の腰はうねり始めていた。
 「センセ、こっちを向いて」
 美佳の首筋に唇を這わせていた由里子が、後ろから耳元で熱く囁いた。最早言われるままに美佳が向きを変え、湯ぶねの中で向き合う形になると由里子はいきなり美佳の頭に腕を回し、唇を重ねてきた。同時に片方の手で強引に美佳の股を割り、三本の指が美佳の秘所に無理矢理押し入ってくる。
 空いた親指でクリトリスを、小指でアヌスを刺激され、脚から力が抜けた美佳の柔襞の中を、三本の指が思い切り責め立てた。
 「ほらオマンコのなか、感じるでしょ、センセ。奥まで入れてあげる……ここはどう?」
 由里子の三本の指は、たちまち美佳のGスポットをさぐりあてたようだ。
 「ああっ、どうかなってしまいそう、お願い、もう許して……」
 「ダメだよ。センセがイッちゃうまでやめないからね」
 身体の奥深くを刺激しつつ、由里子の親指が美佳の膨らんだクリトリスをこすり立て、片手は美佳の乳房を荒々しく揉んでいる。美佳の脚は未だかつて味わったことのない快美感に、わなわなと震え始めた。
 「ああああっっ……もうだめぇっ、やめて、あああ、イッちゃううっ」
 湯ぶねの中で教え子に抱かれ、秘部をもてあそばれながら、美佳の身体は激しくのけぞった。生まれて初めて味わうオーガズムだった。身体の中から沸き起こる熱いものが一気に炸裂し、美佳は気が遠くなっていった。


 「……気がついた? 大きな声だったよお」
 意地悪そうに顔を覗きこむ由里子に頬を叩かれ、美佳は我にかえった。
 「教壇に立ってる姿からは想像もつかないよね。小川センセが教え子とレズって、こぉんなにヨガッってるなんてさ……」
 恥ずかしさに返す言葉もない美佳の前で、由里子は、ざばっと湯ぶねの中から立ち上がった。
 すんなりした太ももと付け根の薄い茂みが目の前に迫る。由里子は片足をバスタブの縁に掛け、美佳の顔の前にその秘裂を剥きだしにした。
 「センセがヨガってるの見て、あたしも濡れちゃった。ほら、あんたの口できれいにするんだよ。中まで舌入れてきれいに舐めないと承知しないからね」
 どうしてこんなことまで……この少女はどこまで私をいたぶれば気が済むのだろう……。
 哀願するように見上げる美佳の頭を、由里子はいきなり引き寄せて自分の股間に押し付けた。
 「さっさと舐めるんだよ! あたしの指オマンコに入れられてイッちゃったんだからね、あんたは。もう先生も生徒もないでしょ」
 美佳を激しく傷つける言葉を口にしながら、由里子は薄目のヘアが濡れて貼り付いた女の部分を容赦なく美佳の顔にこすり付けた。
 大人の女を、それも知性では到底かなわない相手をセックスで支配し、恥ずかしめる快感に酔っている。
 見た所は可憐な由里子の割れ目を顔一杯に押し付けられ、必死で舌を使いながら、美佳は屈辱とともに甘美な諦めが湧いて来るのを感じていた。
 女教師に恥ずかしい部分を舐めさせ、奉仕させる快感に、間もなく由里子も絶頂に達した。あられもない大声をあげ、口のなかでびくびくと動く由里子の媚肉を味わっているうちに、美佳もふたたび妖しい気分になってきた。
 「ね、岸田さん、お願い。さっきみたいに、もう一度指で……」
 「ええっ、もう味覚えちゃったの? ほんとに淫乱な先生だねえ。ダメだよ。今度はあいつらとやるんだから」
 息をはずませながら、由里子はバスルームの扉を開け放った。そこにはすでに服を脱ぎ捨てた三人の少年たちが待っていた。バスルームから聞こえてくる悩ましい声に、全員が一物を勃起させ、思い思いにしごき立てている。
 先ほど学校で犯され、浣腸された時は、あんなにまでおぞましかった少年たちの男根が、なぜか好ましいものに思えるのが不思議だった。ぼろぼろになっていた筈の身体に、精気が甦ってきた。そして美佳は坂口たち三人とまたも身体を合わせたのだ。少年たちに犯されながら何度も気をやり、最後には全員の奴隷となることを誓わせられた。


 翌日、美佳は由里子と少年たちに命じられるまま、タイトスカートの下には何もつけずに出勤した。それだけではない。薄地のブラウスの下にブラジャーをつけることも許されなかったので、淡い色の乳首が透けて見える。同僚の教師は慌てて目をそらし、男子生徒たちは一様に食い入るように見つめ、興奮を隠せないようだった。
 「何あれ?」という女子生徒たちの非難の眼差しが何より辛かったが、暴力、いやそれ以上に由里子たちに犯され、知性も尊厳も踏み躙られた上で絶頂を迎えてしまった屈辱の体験を知られたくなかったのだ。
 笠井との関係は一気に悪くなっていた。美佳は徹底して笠井を避け、笠井は不機嫌の塊だった。


 仕方なくやらされている美佳とは違って、楽しんでいるとしか思えない由里子の挑発はエスカレートする一方だった。たとえば体育の時間に着る体操着の下に、由里子は何も着けなかった。ただでさえ豊かな彼女の乳房は運動をするたびに煽情的にゆさゆさと揺れ、ブルマーは秘裂にきゅっと食い込んだ。
 男子たちはもちろん、教師までもが体育そっちのけで由里子の猥褻な姿に見惚れるのだった。トレパンの下で明らかに勃起させている生徒もいる。
 由里子の体育の担当は、あの笠井だった。彼は美佳にすっぽかされた上に一言も口を聞いてもらえず、その怒りは生徒に向かった。
 「岸田! そんなデカい胸じゃ邪魔になって走れんだろうが!」
 と言いつつ、その目は欲望に満ちていた。
 それを由里子が見逃すはずがなかった。
 由里子は、水泳の時間により派手な挑発を笠井に仕掛けた。
 この高校では派手でなければ水着は自由だったが、由里子は白の競泳用の水着を着た。もちろん胸パットや股布は切り取ってある。
 水の抵抗を最少限にするための薄い水着は裸も同然、巨乳の先に息づくピンク色の乳首、引き締まったお腹の臍のくぼみ、そして下腹部の茂みも薄めながら、はっきり黒ぐろと白日の元に曝されてしまうのだ。
 プールサイドに坐る生徒達の前を、わざとゆっくり歩くだけで、男子の目は由里子に釘付けになった。競泳用のパンツが隠しようもなくテントを張り、はみ出しそうに勃起させている者もいる。
 プールに入った由里子は、これ見よがしに仰向けになり、バックスタイルで泳いだ。水に濡れた身体の前面に、いよいよ水着がぴったりと張りついてほとんど肌色である。そこから透けて見える乳房やヘアは、全裸で泳ぐよりももっと猥褻だった。
 あまりにも恥知らずな由里子の振る舞いに一種異様な雰囲気が支配していた。刺激が強すぎて射精してしまったのか、前を抑えて更衣室に走る生徒もいるし、堂々とパンツに手を入れしごいている者さえいる。
 少年達は、すでにまともな羞恥心を失っているようだった。指導している笠井も困惑と羞恥のあまり何も言えないでいる。
 「まったくあの子、学校をなんだと思ってるのかしら」
 高校の水泳の授業とは思えない淫靡な雰囲気をつくり上げ、たった一人で同級生や教師を淫らなオスに変えてしまった由里子に女生徒たちも怒りを隠せない。
 「ほんと、あんな格好してよく恥ずかしくないわね」
 わざと聞こえるような陰口も、由里子には平気の平左だ。ふん、あんたたちに出来るものならやってごらん。受験勉強しか能がないくせに。女はね、男をキモチよくさせて、自分もキモチよくしてもらった者が勝ちなんだから。
 「岸田。お前、妙に色気づいてるんじゃないのか。そういう年頃だというのは判る。しかし、裸同然の水着とか、下着を着けないで体育をするとか、アレはまずい。お前は本校の風紀を乱してるんだぞ」
 授業の後、さすがにこれはマズいと判断したのか、プールサイドで笠井は由里子に注意した。注意しながらも、笠井の目はどうしても彼女の剥き出しも同然の胸や下腹部に行ってしまう。隠そうとしても笠井の水泳パンツはだんだんと持ち上がっていった。
 「お前、次からは紺色のダサイやつを着ろ。じゃないとその……」
 由里子は笠井がどんどん欲情していくのを見透かしていた。わざと胸元に手をやって水着を浮かせたり、もじもじと股間を引っ張って薄い水着をいっそう亀裂に食い込ませたりしている。
 その様子を見ている笠井は、真っ赤な顔になっていった。理性を保つのに必死の風情だ。笠井の痛いほど勃起した先端からは、すでに興奮のあまり粘液が溢れだし、競泳用のパンツに染み込んでいる。
 ここが学校のプールでなければとっくに飛び掛り由里子を丸裸にして、その熱く湿ったところに顔を埋めていたことだろう。
 「もういい! 帰れ! 早くオレの前から消えてくれ!」
 ついに教師は悲鳴のような声を上げた。


                  *


 「あいつ、そろそろ限界よ」
 放課後、体育倉庫の片隅で坂口の肉棒をしゃぶりながら由里子が言った。
 「じゃあ、どうする?」
 息を弾ませながら坂口が聞いた。
 「今夜、あいつのウチに行って遊んでやろうかな」
 「あいつにも抱かれるのか?」
 順番を待っている木島と加藤が恨めしげな声を上げた。出来ればこんないい女、おれたちだけのものにしておきたい。しかし、すべての主導権は由里子が握っている。彼女には逆らえない。逆らったらもうセックスはしてくれないだろう。
 「だれか、小さなテレコ持ってない?」
 「その心は?」
 「証拠を押さえるの。笠井が黙ればこの学校はチョロイって事」
 坂口は口の中で果てる前に、由里子の中に入ってきた。この頃は坂口のセックスの腕も上がってきた。
 「……お前がセン公を全員抱き込めば俺達は楽勝で卒業できるぜ。内申書もいいこと書いてもらえば推薦入学だってよお」
 坂口は腰を動かしつつ由里子のクリトリスを刺激していた。
 「あ……うまくなったわ……いい。感じる……」
 由里子は、もうじきこの三人も戦力になると踏んだ。
 「じゃあこっちは小川んチに行くか。ミカリンも完全にこっちのものにしとけば万全だぜ」
 木島は美佳のアナルが気に入っていた。
 「いいわよ。その代わり、あんたたちの力であいつを十回くらいイカせなきゃダメよ」


 笠井の住まいは独身者用の安アパートだった。
 ドアをノックしたのが真紀子、いや由里子だと知って、笠井は意外さと期待が入り交じった表情になった。
 「先生に是非相談に乗っていただきたい事があるんです……学校ではとても言い出せないので……」
 「こんな時間に……御両親は心配しないの?」
 万年床を片付けながら笠井は聞いた。
 時間はもう夜の六時を回っていた。放課後たっぷり抱かれた後、由里子はここに来たのだ。親にはクラブが忙しいと言ってある。もともと優等生の由里子を、両親は信用しきっていた。
 「先生。私、自分でも困ってるんです」
 笠井に差し向かいになった由里子は切り出した。
 「女の私が言いにくい事なんですけれど……」
 「言ってみなさい。先生は何でも聞く」
 美形の女生徒、それも最近は格段に色っぽくなった由里子に頼られて、笠井はすっかりいい気分になっていた。
 「自分で自分がコントロールできないんです……あの……身体が疼いてしまって……」
 由里子の口から出たものとは信じがたい言葉に、笠井はごくりとツバを飲んだ。
 「私、中学生のときに犯されたんです……処女でした。その男は、私を嚇して、何回も何回も関係させられたんです」
 「それは……かわいそうに……」
 笠井は一本気な男だったから、由里子の話に心から同情した。
 「それで……その時はそういうことをされるのがとっても嫌だったんですが、だんだんと気持ちよくなってきて……今はしないと堪らなくなるんです。身体が火照ってしまって……一人で慰めても満足しなくて……それで」
 由里子は両手を顔に当ててわっと泣き出した。自分でもうまい芝居だと思う。
 「いけない事ですけれど……授業中、自分で慰める事もあります。誰かが見てるんじゃないか、先生に知られるんじゃないかと思いながらするのが、感じるんです……」
 由里子は笠井に躙り寄り、身体を預けた。
 「先生。抱いてください。正直に言います。学校の男の子たちとやったこともあります。でも、大人の人に優しく抱かれたいんです……」
 じっくり、たっぷり、と言いたかったが、それは我慢した。真紀子になってから、男をリードするだけのセックスで、由里子は物足りなさを感じていたのだ。
 「しかし……教師が生徒とそういうことになるのは……」
 笠井の脳裏に美佳の顔がちらついた。が、由里子は豊かな胸を笠井の腕に擦りつけて哀願しているのだ。
 「私、先生が好きなんです……愛情があれば問題はないでしょう……先生だってまだ独身なんでしょう? 問題にする方がおかしいんじゃないんですか」
 由里子のスカートは捲れあがって、白くてむっちりとしたきれいな足が目に飛び込んでくる。
 由里子が笠井の首に腕を巻き付けて来たとき、笠井の男が限界に達した。
 「岸田。お、おれは、こ、これ以上は我慢できない!」
 笠井は由里子を押し倒した。震える指でセーラー服のホックを外すと、ノーブラの乳首が飛び出した。
 由里子の首筋を愛撫しながらパンティに手をはわすと、その秘部はしっとりと濡れそぼっている。自分のズボンを脱ぐのももどかしく、笠井は由里子のパンティを降ろし、秘裂に指を没入させた。
 「もうこんなに濡れちゃって……」
 「いや……先生。恥ずかしい事言わないで……」
 笠井の屹立したモノはするりと由里子の中に収まった。熱く濡れた彼女の淫襞が笠井の一物をじわりと包みこみ、締め付けた。
 「ああ……いい。君のここは……名器だ」
 「嬉しい……」
 笠井はゆっくりと由里子の中を味わっていった。肉棒が媚肉をぐるりと動いていく道中で、由里子はああーん、と切ない声を上げた。Gスポットだ。笠井はそこを中心に責めていった。
 由里子は、オトナに抱かれるのが好きだった。女を知り尽くして緩急を使い分けつつ、じわりじわりと責められる感覚は何者にも代えがたい。おまけに笠井の手はクリトリスにも延びてきて中と同時に責め始めた。
 「あう。ああーん。いい。先生。凄くいい……」
 「そうか。先生も最高だよ」
 由里子の濡襞はくいくいと笠井の肉棒を締め付けた。この感触は今まで抱いた女にはないものだ。もっとも、あまりモテない笠井が相手にしたのはだいたいがソープの女だったのだが。
 この由里子という女は、一六才だというのに、プロ顔負けの絶妙な反応をしてくるんだ……。
 感に耐えない表情で腰を動かしていた笠井は、由里子が起き上がって座位の態勢を取ったのにも驚いた。今の高校生はずいぶん知ってるのだ、と改めて思った。
 「先生……私を見たくないの? するだけ?」
 「い、いや。そりゃ君のすべてを見たいよ……」
 そう、と頷いた由里子は自分で服を脱ぎ始めた。まばゆいばかりの豊かで締まった乳房が、きゅっとくびれた腰が目の前に現れた。
 「先生。寝て」
 由里子は女性上位の態勢になると、くいくいと腰を使い始めた。彼女の腰の動きはまったくもって猥褻そのものだった。快感を求めて蠢く淫らな生き物のようだった。その動きに合わせて両の乳房がぷるんぷるんと動く。笠井は思わず手を延ばして乳房を揉み上げ、指で乳首をくりくりと摘んだ。
 「あうん……いいわ……」
 由里子の素晴らしい腰の曲線に手をはわすと、それだけで彼女の息遣いは荒くなった。
 「恥ずかしいお願いがあるんですけど……」
 「な、なに。何でも言ってごらん」
 「私のお、お尻に指を入れて……」
 笠井の指がずぶずぶとアヌスに収まって中を動きまわるうちに、由里子に最初の絶頂が来た。
 「あっ、あっ、あ……イク。イク、イッちゃう……」
 由里子の淫襞は絶頂にかけ昇るのに合わせてぎゅうっと締まった。
 こんなに凄い締まりかたを笠井は経験した事がなかった。
 が。
 あと少しだと言うのに、由里子は笠井から身体を離してしまった。
 「ど、どうして……」
 「男の人って、済ませてしまったらそれっきりってこと、あるでしょ」
 拗ねたように由里子は言った。
 「そんな……オレは違うよ……」
 「それじゃ、証拠を見せて」
 「証拠って言っても……」
 笠井は狼狽した。あと少し。あと少しなのだ。それに、こんな甘美なセックスも初めてだ。ここはどうしても最後まで行かなければ。
 「どうすりゃいいんだ? オレは」
 「あの……じゃあお願いがあるんですが……」
 じりじりした笠井の顔を見ながら、由里子は男をいたぶる快感で絶頂に達してしまいそうだった。





第四章 近親相姦、淫靡な蜜



 由里子の鍛え抜かれたテクニックに、笠井は手もなく篭絡(ろうらく)された。焦らしに焦らされた笠井は、なんとかして由里子と最後まで行きたい一心で、由里子の言うことならなんでも受け入れる有り様だった。
 そして今や彼女のセックスによって支配された坂口たちは、完全に由里子の別働隊として動いていた。女教師・小川美佳は、彼らによって禁断の味を覚えさせられ、彼女もまた由里子や坂口の言うなりになっていた。
 由里子のセックスによる啓星高校支配は生徒だけではなく、教師にまで及んでいたが、あまりにあっけなく自分の思惑通りに事が進むので、彼女はターゲットを自分の家族に向けた。
 由里子にとって、両親こそ憎むべき相手である。セックスの女王としての自分には誇りを持っているが、子供である自分を他人に、それも血も涙もないヤクザ同様の男達に売り渡した両親を決して許すわけにはいかない。
 どんな事情があったにしろ、泣いて土下座して由里子に謝罪したとしても、彼女は決して許すつもりはなかった。
 「あんたらを死ぬほど、いや、死ぬ以上に苦しめてやるわ」


 母親の和代が、母校の同窓会があるとかで一泊二日の旅行に出かけた、その夜。
 いつもより早く帰宅した父親の耕三は、娘が家にいるのを知って安心した。このところ真紀子の様子はおかしかった。連日帰りは遅いし、以前なら夕食の時に何でも話したのに、近ごろは何も喋ろうとしない。話し掛けても生返事しか返ってこない。
 「今日は早いんだな」
 耕三は声をかけたが、返事がない。また自分の部屋に閉じこもっているんだろう。
 仕事で現場を回ってきた耕三は汗をかいていた。今夜は妻もいないし、さっぱりしてゆっくりとビールでも飲むか。
 耕三はささやかな楽しみを味わおうと風呂場に行き、服を脱いでドアを開けた。
 すると、そこには娘がいた。当然ながら全裸で、こちらを向いたまま浴槽に身を沈めている。
 「すまん。いたのか」
 耕三は慌てて出ようとしたが、お湯の上に出ている娘の大きくてすこぶる形のいい乳房に、つい目がいってしまった。
 娘は物思いに耽っているようだったが、床に埋め込んである浴槽を上から覗き込んだ形になった耕三の目には、お湯の中でゆらゆら揺れる娘の恥毛が飛び込んできた。
 異性である父親に自分の裸身を見られても、娘は前を隠すでもなく、黙っていた。
 とても気まずい。きゃあとか言われたら何か言い返して冗談に出来るのに、これでは娘の裸を覗いてしまったという何やら後ろめたい気分しか残らない。
 下着だけ新しくして、耕三は自分の書斎に入った。と、彼の重厚なデスクの上に、一冊の写真集が置かれている。
 老眼鏡をかけてそれを手に取った耕三は、心臓を鷲掴みにされるようなショックを受けた。
 ヌードの写真集である。しかもそれは表紙からしてそのものズバリ、セックスの場面が写っている。それならまだいい。娘が冗談のつもりで置いたのかもしれない。しかし、その写真集の中で男とあからさまに交わっているのは、あろうことか、娘の真紀子なのだ。
 こ、これはどういうことだ。
 ただのヌードならまだしも、娘はその秘部を恥ずかしげもなくレンズの前に曝し、男のモノを受け入れている。
 耕三は震える手でページを捲った。
 別の写真では、真紀子が男のモノを口に含んでいる。男のスペルマを胸に浴びている。風呂場で小水をしている写真もあった。
 耕三はその場に倒れてしまいそうになった。
 そして、浴槽の中で物思いに沈んでいる娘の様子を思い出した。
 娘はとんでもない事に巻き込まれたのではないか? 無理矢理犯されてあんな写真を撮られ、嚇されているのでは?
 ドアが開いて、娘がリビングに入った音がした。
 ここにこんな本を置いたのは真紀子だろう。私に何か話したいのだろう。
 ここは父親として、どんな惨い話でも聞いてやるしかない。そして娘の味方になってやるしかない。
 意を決した耕三はリビングに行った。
 娘は、いつもならテレビを見ているか音楽を聞いているのに、今日の彼女は沈んだ様子でじっとソファに座ったままだ。
 「学校、休んだの……」
 暗い表情で娘は答えた。
 「そうか……」
 「パパに聞いて欲しい事があるんだけど……」
 由里子の沈んだ声を聞いて、耕三は来るべき物が来たと思った。
 このところ、耕三は年頃の娘を持つ親として、とても気を揉んでいたのだ。娘が女として急激に成長してしまったような気がしてならなかったのだ。
 彼は、自分の娘に、女のセックスを感じてしまってどぎまぎしていた。風呂上がりにピンク色の裸身を見せびらかすようにバスタオル一枚で家の中をうろうろする娘を見て、血が騒いだ。
 長めのTシャツだけの格好で床に座り込んでテレビのトレンディドラマを眺めている娘を見て、思わず後ろから抱きしめたくなる衝動を感じた事もあった。そして、さっきはっきりとその裸身を見て、女を感じたのだ。
 それはそれとして、娘の胸が急に大きくなった事もずっと耕三の頭に引っ掛かっていた。もしかして最悪の事になって妊娠でもしたんじゃないか。それを母親にも相談出来ずに思い悩んでいるのではないか。そう思うと、父親として頼られている実感が湧いて、耕三は嬉しくもあった。
 そうだ。私達は以前は何でも話す仲のいい親子だったんだ。
 「何でもいい。相談に乗るよ。話してみなさい」
 「うん……。ママには聞かれたくないから……今日まで待ってたの」
 やっぱりそうか。
 しかし娘は俯向いたまま何も話さなかった。耕三としても、この年頃の娘の扱いをどうしていいか判らない。
 「……話しづらいのかな?」
 由里子は頷いた。
 所在無くソファに腰掛けた耕三は、励ますつもりで、娘の肩を抱いた。
 「私を友達だと思って、何でも言ってごらん」
 由里子は耕三を見た。
 五〇近い彼はロマンスグレーの渋い中年だった。客としてやってきたら、きっと好きになる感じの由里子の好みのタイプだった。この歳にしては長身で、だらしなく太ってもいない。あまり酒も飲まず休日には母親とテニスに興じるスポーツマンでもある。自分を棄てさえしなければ、それは素敵な男に思えたろう。しかし、この男は温厚な紳士の仮面を被った最低の男なのだ。
 由里子は、そんな憎悪を押し殺して、苦しみ悩む少女の役を続けた。
 「……私の話って、なんだと思う?」
 ぽつりと娘に聞かれて、耕三はどぎまぎした。親としては最悪の想像をしているからだ。しかしそんな事を言ってしまっては娘を信用していないことになるではないか。
 「……あの写真集のことかな?」
 「そうなの……だけど、誤解しないで。あれはあたしじゃないの。そっくりだけど、あたしじゃないのよ。なのに学校で男子に、淫乱だとかヤリマンだとか言われて……」
 耕三は、安堵の余り涙が出そうだった。そうか。そりゃそうだ。私の娘が、あんなふしだらな写真のモデルになるはずがない。いくら強制されたとしても、真紀子なら絶対そんな事はないはずじゃないか。
 「そんな事を言うヤツを、ここに連れてきなさい。パパがぶっ飛ばしてやる」
 「パパ。嬉しい……」
 娘は彼に身を擦り寄せてきた。きっと心細いのだろう。耕三は娘の肩を更にしっかりと抱いてやった。
 若い娘特有の、何とも言えない甘い香りがした。香水の匂いではない。洗ったばかりの真っ白なハンカチのような、爽やかな香りだ。
 由里子は、耕三が何もしてこないので拍子抜けした。普通の客ならばここで由里子の胸をむんずと掴むか、スカートの中に手を入れてくるところだ。しかし耕三はぎこちなく肩を抱くだけだ。
 しばらくそのまま寄り添っていた娘は、肩を震わせて泣き始めた。
 「パパ、あたしが好き?」
 潤んだ目で由里子は耕三を見据えた。
 「もちろんだとも。パパはお前が好きだよ」
 「そう……」
 ピンク色の唇が、壊れやすいが故にまばゆい美しさで光っている。果実だ。手を触れてはいけない果実だ。しかし、この果実はなんと愛らしく美しいのだろう。
 娘は、信頼しきっているかのように耕三の肩に頬を乗せた。
 温かな娘の体温がほのかに伝わってきた。
 耕三はごくりと唾を飲み込んだ。この音を聞かれやしないかとひやひやした。
 絶えて久しかったむずむずする気持ちが湧いてきた。こんな気持ちは、数年前にアルバイトの女子大生に抱いて以来だ。あの時も、パソコンの操作方法を教えてもらいながら、女の子の香りや体温を感じてむずむずしたが、それから先のことはしなかった。その女子大生は知人の娘だったからだ。そうでなかったらどうなっていたか……耕三はそれ以来の舞い上がるような気持ちを味わっていた。
 いけない。落ち着かねば。この子は自分の娘なんだぞ。
 耕三は気を静めるためにテーブルの上のタバコを取ろうとした。
 その時、彼の手が娘の胸に触れてしまった。Tシャツの下の、ソフトボールのように引き締まった、しかし柔らかな感触が指から頭にじんと伝わった。
 ミニスカートから延びた娘の足が目に入った。白くてすらりとして長い足。モデルにしてもおかしくない美しさだ。
 ああ、どうしてこの年頃の少女はこんなにもすべてが魅力的なのだろう。耕三はこのとき、コギャルを買いに走る中年男の心理が判った。
 なにイジイジしてるんだろうね、と由里子は思った。
 あんたがドキドキしてるのは判ってるんだよ。肩に耳をおけば心臓発作を起こしそうなほどドキドキしてるのは判るの。あたしが娘だから我慢してるの? それとも自信がないの? 悪党なら悪党らしく、やることやったらどうなのよ。
 由里子は、耕三の頬にキスをしてやった。
 自分の娘の唇の感触を頬で受けて、耕三は切れかけていた。それだけではない。娘の胸が自分の胸に密着した。ノーブラらしい娘の豊かな胸は、ぐにゃりと潰れた。硬くなった乳首の感触が服を伝って判る。
 身体の向きを変えたので、スカートが捲くれ上がり、娘の太ももが見える。
 「パパ……」
 娘が耳元で囁いた。今はどんな声でも妖しく響く。
 娘は耕三の唇に合わせてきた。彼女の両手は父親の背中に回って抱きつく格好だ。豊かな胸の感触がじんじんと伝わり、耕三の頭の中は白くなってきた。
 突然のことで耕三はされるがままだ。
 このおやじ、ジジイの癖にウブなんだね。
 由里子は耕三の口の中に舌を差し入れた。ねっとりとしたフレンチ・キス。生き物のように動く由里子の舌は耕三のものに絡んで離さなかった。
 父親に抱きついてソファに倒れ込んだ由里子は、耕三にのしかかって大きな胸をずりずりと擦りつけた。これで感じない男は今までいなかった。
 案の定、耕三の顔が赤くなっていくのが判った。
 由里子の手は、彼の下半身に伝って降りていった。ズボン越しに触った耕三のものは、むくむくと勃起し始めていた。
 なあんだ。口では父親みたいなこと言っといて、しっかり欲情してるじゃない。
 由里子は父親のペニスを刺激しながら彼に足を絡め、フォールするようにしっかりと抱きしめた。
 「い、いけない。いけないよ、真紀子。これは、いけないことだ」
 娘の感触は、素晴らしいものだった。はちきれんばかりのすべすべした肌。ぴちぴちギャルとはよく言ったものだ。触るとぷるんと押し返されてしまいそうな弾力ある肌は妻では得られない。
 そしてこの、たわわに実った胸の躍動感はどうだ。自分の胸の上でぐにゃりと潰れたかと思うと、ぷりっと形が戻る。今にも雫が垂れてきそうに熟していて、歯を立てると破裂しそうだ。しかしこのこりこりした感触は、柔らかくなってしまった妻の乳房では味わえない至福のものだ。
 自分のモノが久々に完全に充電された状態で聳り立ったのが判った。ブリーフに擦れて痛いほどだ。
 どこで習ったのか娘の手が時折自分のモノに触れてくる。お前を女にしたヤツに教わったのか? そんな淫らな事をするんじゃない。しかし、なんという気持ちの良さだ。
 「あたし……寂しい……とっても寂しい……」
 天使のように蕩ける声が耳元でした。
 ああ、ダメだ、これ以上は。しかし。
 耕三は、由里子の身体を押しのけて起き上がろうとする意志を失った。由里子は父親の唇を吸いつつ、ズボンのジッパーを下ろしに掛かった。
 そのものは怒濤のように天に向かっていた。
 「パパ……凄い元気……」
 「真紀子! お前、いつ、こんな……」
 耕三は『ふしだら』という言葉を飲み込んだ。今娘にやって欲しい事は、そのふしだらな事そのものだったからだ。彼は当惑と羞恥が入り交じって混乱していた。たしかに勃起しながら娘の行いを説教しても説得力はない。
 由里子の指は父親のブリーフの中に忍び込み、男のモノの一番敏感な部分に触れていた。
 「あたしもパパの事、好きよ。だからいい事してあげるの」
 由里子の微妙な指使いで、父親の勃起したものはすでに爆発寸前だ。妻の和代にこんな事をしてもらった事はない。慎み深いのか無知なのか、和代は暗い寝室で夫を受け入れるだけだった。
 「うふっ。すっかり大きくなっちゃって」
 由里子はすっと身体をずらして父親の股間に顔を埋めた。
 彼女の温かく柔らかな舌が、耕三のモノに吸い付くように絡んできた。
 生まれて始めての感触だった。もちろん妻の和代はこんな事を……。ましてや風俗ギャルとは無縁の彼である。若い美少女にフェラチオされた経験など一切ない。それだけに、突然訪れた快感に耕三は身を震わせた。その相手が娘であっても。
 「や、やめ、やめなさい……こ、こんな……い、いけない……」
 今や本心では止めて欲しくないと思っている。由里子は性欲に屈伏した父親を見透かしていた。
 娘の柔らかくて温かな口が耕三の肉棒を優しく包み込んだ。娘の舌は彼のモノの一番敏感なところをぬらぬらと這い回っている。
 えも言われぬ快感だった。オーラルがこんなに素晴らしいものだったとは。昔からして欲しいとは思っていたが、どうしても妻には言い出せなかったのだ。たかがセックスのことで聡明な妻に軽蔑されるのは耕三にとって堪え難い事だったからだ。
 娘の歯が、軽く父親の肉茎を噛んだ。
 耕三は思わず、うおっと声を上げてしまった。
 ああ、なんという感触だ。娘の舌は妖しく蠢き、口をすぼめて肉棒を吸い込むと、全体がきゅっと狭くなりすべてがまとわりついてくる。
 由里子は父親の胸に手を這わして両方の乳首を指先で転がした。
 「ああっ。いけない。いかん。やめなさい」
 もうタテマエはおよしなさいよ。あんたのチンポはアレを発射したくてびくんびくん動いてるじゃないの。あんたの和代サンはマグロ女なんだね。女は子供を産むだけが能じゃないんだよ。
 由里子は快楽に身を任す父親の様子を見ながら毒づいた。
 「パパ、こういうの、初めてなんでしょ。ママにはやってもらった事、ないんだよね?」
 父親は何も言えず首を横に振った。
 「このままイッちゃう? それとも、もっといいことする?」
 由里子は返事を聞かずに父親にまたがった。スカートの下には最初から何も身につけていない。父親の手が自分の花芯にやってくるかと思っていたのに、早くもマグロ男状態になってしまって、由里子は不満だったが、まあ仕方がない。今は父親を犯すのだ。
 自分のモノが娘の中に入っていくとき、耕三は言葉にならないうめきを上げた。
 耕三のものは歳のわりに元気だ。いや元気すぎる。その硬度は若い男に負けず、その角度も立派だった。それは由里子の腰の動きに敏感に反応し、彼女がちょっと媚肉を絞めるととたんに硬度を増した。
 このままだと一気に昇天してほんとにあの世に行っちゃうかもね。でも、かまうもんか。この男は自分の娘を犯したあげく『腹下死』したと書き立てられるだけだ。それもまた面白いじゃないか。
 父親はもう、一言も言葉を発する余裕はなかった。長い人生で初めてのめくるめく快感に身を委ねているのだ。
 由里子はTシャツを脱ぎ捨て、豊かな胸を父親の目前に曝した。
 もう、由里子の誘いの言葉はいらなかった。父親の手は二つのたわわな果実に伸びてぎこちなく揉みしだき始めた。
 「教えてよ。ママとはどんなセックスをするの」
 そんな事を娘に言えるか。しかし今娘とはまさにその事をやっている最中なのだ。
 「正直に言わないと、やめちゃうよ」
 娘は腰の動きを止め、力を抜いた。とたんにぐいぐいと父親の肉茎を包みこんでいた温かで柔らかで淫らな濡襞が遠ざかった。
 「そ、そんな殺生な……」
 父親は思わず口走った。
 ほら。これがこいつの本心だ。
 「言いなよ。そしたら続けてあげる」
 「妻とは、和代とは……その、ただ接するだけだ……それも最近は……」
 「ふーん」
 彼女は身を屈めて、父親の乳首に舌を這わした。ころころと舌先で転がしてやると、父親は、ああもうだめだ、と絶望的な声をあげて思いの丈を娘の中にぶちまけた。


 耕三は甘美な気だるさの中で昏睡んでいた。こんな身体がふにゃふにゃになってしまいそうな絶頂を迎えたのは初めてだった。これまで妻を相手にしてきたアレは、単なる射精だったのか、と思えた。
 しかし、自分のそばに横たわっているのが実の娘だということを思い出すと、下腹部に残る痺れたような快感がすっと消えていった。
 由里子は全裸で目をつぶっていた。その股間からは、耕三の精液が流れ出している。
 なんてことをしてしまったんだ。私は取り返しのつかない事をしてしまった。これは娘の心に一生忌まわしい傷として残るだろう……。私は犬畜生にも劣る事をしてしまったのだ。たとえ娘のほうが望んだにしても、父親として断固として避けねばならなかったのだ。なんと言っても娘は心が不安定なのだ。私までが一緒になってしまってはいけなかったのだ。
 由里子は、父親の顔がどす黒くなっていくのに快哉を叫んだ。悩め。もっと悩め。
 「私は……私は、なんてことをしてしまったんだ……」
 そう言いかける父親の口を、由里子の唇が塞いだ。
 「パパ……素敵だったわ。最高……」
 由里子は父親の手を茂みに導いた。
 「パパも男なのね」
 激しい反省がもろくも砕け散りそうになった。由里子の手が強く弱く肉棒をしごき始めたからだ。
 「ママには内緒よ。ね?」
 父親の首は頷いていた。
 「今度は、パパが上になって」


                  *


 母親の和代は、真紀子の親友である真澄からの電話を聞いて心臓が止まりそうだった。
 「信じられないかもしれませんが、本当なんです。あんなに真面目でおとなしかった真紀子さんが、どうしてああなってしまったのか……」
 学校で真紀子は、口にするのも恥ずかしい淫らな事を生徒や教師とやっていると言うのだ。真澄の少女特有の性的な妄想ではないかと思ったが、たしかに娘の様子はこの間からおかしい。
 電話を切った和代は急に胸騒ぎを覚えた。そう言えば、夫の様子もおかしいのではないか。夜寝ているとふいに起き上がって寝室を出て行く。そして二時間ばかり経って足元をふらつかせて戻ってくる。和代が目を覚ました事に気づいて夫は、「仕事の事でちょっと気になることがあって調べものをしてたんだ」と言い訳をしたが、毎晩深夜に起きだして仕事をしなければならないほど会社が忙しいとは聞いていない。
 それだけではない。
 たまに家族三人が一緒になる夕食時、娘と夫は目をあわせて目配せをしているように思える事がある。あれはまるで恋人同士の「お誘いの合図」ではないか。真澄の電話を聞くまでは、それは親子の親愛の情の現れだと思っていたが、もしかして……。夫のあんな表情は新婚ほやほやの頃だって見た事がなかった。
 和代は清楚で理知的な顔を曇らせた。
 私に何も感じなくなったから? 私は年齢のわりにはまだ若いと思っているし身体だってそんなに悪くはないはずよ。この前の同窓会で、女同士お風呂に浸かった時だって、みんなから羨ましがられたもの。和代はいつまでもスタイル良くていいねって。彼女達はぶよぶよになって見られたものじゃなかったけど。そりゃオッパイが上を向いた一六・七の若い娘には負けるけど……。
 若い娘?
 和代の心に激しい嫉妬と疑念が芽生えた。
 が、それを深く考える事は恐ろしくて出来なかった。かと言って、黙って放っておく事も出来なかった。
 和代は娘の部屋に入った。
 部屋の様子は様変わりしていた。いかにも少女らしい愛らしいぬいぐるみなどのファブリックが姿を消し、参考書や本は埃を被っている。
 クローゼットを開けてみた。
 地味な下着に混じって、いつ買ったのかシルクやナイロンの、派手で刺激的なスキャンティやTバックがあった。
 あの子がこんなものを着けているのか? こんな挑発的な下着を着けた姿を、いろんな男に見せて誘っていると言うのか? その中に夫もいると言うのか?


 その夜、いつものように遅く帰ってきた娘は、済ませてきたから、と母親が用意した夕食に手もつけず早々と自室に引きこもった。
 由里子は教師の笠井に食事を驕らせたり美佳に作らせたりして、セックスの後その相手と済ませてくるのだ。激しくすればするほど食欲も増すが、家まで待てないし、お小遣いも限られている。母親相手に食事をしてなんやかやと話をするのは疲れるし面倒だ。それに、あんな女の作るものなど口に入れたくもない。
 由里子は勉強など一切しなかった。それでもこの間のテストはすべて白紙で出したがオール百点。いくら授業をサボっても欠席はゼロ。教師を垂らしこんで味方に付けておくと、こういう利点がある。
 部屋でCDを聞き、マンガに読み耽っている由里子は時計を見た。
 午前〇時。そろそろだ。


 耕三は、隣に寝ている和代を小声で呼んでみた。が、寝入ったらしく反応はない。
 耕三はそろそろとベッドから抜け出し、足音を忍ばせて真紀子の部屋に向かった。
 その後ろ姿を、和代は薄目を開けて見ていた。
 娘の部屋のドアの隙間からは明かりが漏れていた。あの日以来、深夜に耕三が娘の部屋を訪れるのは習慣になってしまった。最初の頃は妻が完全に寝入ってしまった深夜だったが、それでは自分も寝てしまう。ひどい自己嫌悪を感じながらも、あの快楽は何物にも代えがたい。今では快楽を味わいたい一心だ。考えてみれば、こんな美味しい話があるだろうか。今の状態は妻と愛人が同居しているのだ。その愛人には金も掛からず、妻には余計なウソやアリバイ工作もしなくていい。自分の部屋のすぐそばには、あの『セクシー・ダイナマイト』が自分を待っているのだ。
 思えばあの日の夜は、耕三は娘と話をしようと部屋を訪れたのだが、結局はまたしても同じ過ちを犯してしまったのだ。それからと言うもの、耕三の頭の中には、娘の裸身と、あのめくるめく快感のことしかなかった。娘もいいと言っているのだ。誰が泣いている訳でもない。ただ、妻には判らないようにしなければ。きっと妻はこんなことを夢にも想像していないだろう。
 父親はゆっくりとドアを開けた。
 娘はパジャマ代わりの大きめのTシャツだけの姿でベッドに横たわり、ヘッドフォンで音楽を聞いていた。
 父親はその脇に座ってTシャツの下に指を這わした。乳首はすでに硬くなっている。父親が来るのを予期して興奮しているのだ。
 その立っている乳首をくりくりと指で弄んでいると、娘の息がだんだんと荒くなっていった。
 父親の指は下へ降りていった。
 パンティは穿いていない。茂みに手を置くと、熱いものがむんむんと伝わってきた。
 指先で秘裂の奥の小さな部分に触れると、目を閉じた娘は、小さく「あっ」と呻いた。最初の日こそ完全に娘にリードされたが、それ以後は父親のほうが積極的になっていた。
 敏感な突起の下にある熱い泉には、蜜が溢れている。
 父親はその蜜を零すまいと口をつけ、味わい始めた。
 「いいわ……ああン、感じちゃう……」
 娘は可愛い声を出して、ゆらゆらと腰を動かした。
 父親の舌は門をくぐって中に入りこみ、鼻の先で肉芽を愛撫した。
 娘は、両手で自分の股間に顔を埋める父親の頭を強く抱きしめた。
 父親の手は秘裂を大きく押し広げ、肉芽を剥き出しにして強く吸った。
 思わず大きな声を出しそうになった娘は顔に羽根枕を押し付けた。くぐもった喘ぎ声が父親の耳の届いた。
 娘は、父親の男の部分を完全に復活させ、自信をもたせた。ママだけに使ってるのもったいないわよ、とまで言った。これは父親の雄としての本能に火を付けた。
 父親のクンニだけで、娘は最初の絶頂に達した。
 由里子はこの日も学校で数回、放課後数回セックスをしたが、深夜の父親とのセックスはまた格別だった。なんせ、嫉妬に狂った母親が見ているのだから。
 父親の手が娘のTシャツを捲くり上げた。成熟した豊かな乳房がまろび出た。
 「今度は私が楽しませてもらうよ」
 父親は指で娘の乳首を愛撫しつつ、のしかかった。
 ドアの隙間の向こうでは、息を殺した母親が、この部屋の光景を食い入るように見つめているのだ。母親の目は、時折鋭く光った。今や彼女は一人の女として娘に激しい嫉妬の炎を燃やしているのだ。
 見られている事を確認した上で、由里子は父親の背中に手を回し、足を絡めた。
 「もっと奥まで……奥まで入れて。もっと激しく、激しくやって」
 由里子は和代によく見えるように身体をずらせた。これで和代には二人の結合部分がモロに見えるだろう。
 「もっと、もっと激しく。奥まで入れて……」
 「ああ、判ったよ」
 ベッドがぎしぎしと音を立てた。
 「吸って。あたしの胸の……」
 父親は腰を使いながら娘の乳首に舌を這わした。片手で体重を支えながら空いた手で乳房を潰れるほど強く掴んだ。
 「ああっ、いい! いいわ!」
 「声が聞こえる……」
 父親は窘めた。
 「我慢出来ない。パパはそれほどいいのよ」
 いい言葉だ。こうなりゃ妻にバレてもどうなってもかまうもんか。獣欲で膨れ上がった耕三の頭は他の事などどうでもよくなっているのだ。
 由里子は和代の様子を窺った。
 母親は、夫と娘の交情を見ながら、指で自分の花芯を慰めていた。息を荒くして、ときどきひくひくと身体を痙攣させている。しかし、彼女の目は依然として嫉妬と怒りにらんらんと燃えていた。
 由里子自慢の媚肉絞めを数回繰り返すうちに、父親のフィニッシュが迫ってきた。由里子は腰をぐいぐいと動かした。
 「あっ、ダメだ……イク。イッてしまう」
 父親は娘の奥深くに熱いたぎりを噴出した、その瞬間。
 「ママ。そこにいるのは判っているのよ。黙って一人でやってないで、入ってきたらどう?」
 由里子が鋭い声で言った。
 なんだって?
 娘の上に乗っている耕三は狼狽えたが、どくどくと続く射精を止める事は出来ない。
 由里子の上で父親が射精の後も腰をがくがくさせている最中に、物凄い形相の和代が入ってきた。
 「私は、知っていたのよ。知っていたけど、あんまり恐ろしいから黙っていたのよ」
 和代の声は震えていた。
 「それで覗いてた訳?」
 揶揄うような口調で由里子が言った。
 「その上覗きながらオナニーしてた訳?」
 「あなたは、なんて子なの。いつからこんな、恥知らずな、ふしだらな、淫乱な、人の道に外れた……」
 和代は由里子に有らん限りの罵声を浴びせ始めた。由里子はそれを薄笑いを浮かべて聞いている。こんな時、男はからっきし意気地がなくなる。耕三は射精したままの態勢で由里子の胸に顔を埋めたままだ。
 由里子は、父親の髪の毛を掴んで頭を持ち上げた。
 「ねえ。あんなこと言わせておいていいの。亭主ならなんか言ってやったらどうなの」
 由里子は浮気の現場を本妻に押さえられた愛人のような口調で言った。
 「い、いや……わ、私は、その……」
 この男はやっぱりどうしようもない腰抜けだ。現場を押さえられて、なおも言い逃れを必死になって考える情けないやつだ。
 「あんたの亭主は、こんな最低の男なんだよ。知ってた?」
 「あなたは、その最低の男の娘なのよ!」
 和代は切り返した。
 「そうね。あたしは最低の男と最低の女から生まれた、最低の娘ね。だから、そんな最低の娘なんだから、最低な事をしてもいいでしょ」
 「どうして私が最低の女なのっ!」
 和代は地団駄を踏んだ。
 「こういうことを知りながら黙ってるからよ。今あたしが声をかけなかったら、いつまで黙ってる気だったのよ。馬鹿な女」
 由里子は大声で嘲笑した。
 和代は思わず由里子の頬を平手打ちしようとした。しかし、こういうことにかけては由里子のほうが圧倒的に上手である。由里子は和代の手首を掴むと、ぐいっとねじ曲げた。
 「い、痛い」
 由里子は苦痛に歪む母親の顔を楽しんだ。そして、彼女の足を払った。
 あっけなく母親は床にひっくり返った。
 「なに考えてんのよ、アンタ」
 由里子は母親の腹を踏んだ。
 「あたしがここから出てきたのかと思うと死にたくなるわ」
 和代はすべての感情が頂点に達して、ヒステリー状態である。うめき声を上げてひくひくと痙攣している。
 「ねえ、どうする?」
 由里子は耕三に聞いた。
 「アタマがぷっつんしたかもよ。そしたら、何するか判らないよ。包丁持って剣の舞を踊って、あたしたちをズタズタにするかも」
 耕三には何も考えられなかった。出来ればここから逃げ出したかった。娘相手の近親相姦が妻にバレ、娘はアバズレのように開き直り、妻は怒りの余りヒステリーの発作。家庭というものはこんなにあっけなく木っ端微塵になるものなのか。
 「なにかヒモを探してきてよ」
 娘が言った。思考力ゼロの耕三は、自分のナイトガウンのヒモを抜いて娘に渡した。
 由里子は、和代の両手を縛るとベッドの足に結び付けた。そして、近くにあった電気のコードで、今度は足を縛ってベッドに固定した。
 由里子は、以前相手にした客が言った事を思い出した。女のヒステリーはセックスに飢えているのが原因だ。これはフロイトの理論なんだぞ。客はそう言ったのだ。とすれば。
 彼女は、母親の胸を触った。ナイトガウン姿の母親はもちろんブラなどしていない。
 「あんた、抱いてもらってないんじゃないの」
 「あ、あ、あんたにそ、そんなこと言われたくないわっ!」
 和代は怒りの余り涙をいっぱい溜めて叫んだ。
 「女も年取ると亭主にも相手にされなくなって寂しいね」
 由里子はそう言いながら和代のガウンの胸をはだけた。けっこう大きな乳房がぷるんとまろび出た。
 「けっこういい線いってるじゃない。他の男なら欲情するかもよ」
 「あ、あたしはそんな女じゃありません!」
 由里子は母親の胸をゆっくりと揉みしだき始めた。指で乳首を挟んでゆるゆると揉み上げていった。
 「や、やめなさい。なんてことをするの」
 「あんたをイカせてあげるよ」
 由里子は母親の乳首に口をつけ、軽く噛んだ。由里子にとって和代は母親でもなんでもなかった。美しいが、ただの中年の女だった。その女の乳首は、刺激を受けてこりこりと硬くなっていった。
 「なんだかんだ言っても感じてるじゃん」
 由里子の手は和代の下半身に伸び、パンティの上から秘部を撫でた。
 「入れてもらってないんだろ? ここにクモの巣でも張ってるんじゃないの?」
 「そ、そんなこと、もう卒業しましたっ!」
 娘が母親を犯そうとしている悪夢のような光景を目の当たりにして、耕三は自分の事を棚に上げて空恐ろしいものを感じていた。しかし、妻が娘によってどうなるのか、それを見たいという欲望が湧いた。
 由里子はパンティ越しに母親の恥部を弄んだ。
 「やめなさい。やめて。ね。これ以上はやめなさい」
 母親は、娘の指の動きで身体が火照ってくるのを感じて狼狽えていた。こうしてされるがままになっていると、どうなるか判らない不安が和代を襲っていた。夫とのセックスで快感を得た事はない。いやむしろセックスは煩わしいものだと思っていた。映画やドラマで女がよがるのはウソで、まともな女は感じないのだと思っていた。感じるのは、その女が淫乱な証拠なのよ。
 しかし今は自分の女の部分がかっと熱くなっていた。じっとしている事が出来ないほどのむずむずしたものが身体の芯から湧いてくるようだった。
 「感じてるでしょ、ママ」
 由里子はそう言って和代の脇腹をさっと撫でた。電気が背筋を走った。
 「ひっ!」
 由里子は和代のパンティに手をかけて、一気にずり降ろした。それだけではない。由里子は足の縛めをベッドから外して頭に持っていき、手と一緒に結び直したのだ。和代の身体は折り曲げられて、明るいところでは露わにした事のない恥ずかしい部分が剥き出しになってしまった。彼女は顔を覆いたかったが、その手は縛られている。
 びくん、と和代の全身に衝撃が走った。
 由里子の舌が自分の最も敏感な部分に触れたからだ。風呂で洗う時もこんなに感じた事などなかったのに。
 由里子の舌は、ぺちゃぺちゃと下品な音を立てて和代の肉芽をしゃぶった。
 「ママ。こりこりしてきたよ」
 和代のクリトリスが勃起した。
 何とも言えない甘美な痺れが下半身を覆った。由里子の舌は肉芽から離れて下の唇を這った。和代の泉からは熱いものが流れ出すのが自分でも判った。由里子の歯が陰唇を軽く噛んだ時、強烈な電気が全身を駆け抜けた。
 「あっ、そ、そこは、い、いいい……」
 和代は言葉にならない声を発するしかなかった。
 由里子の指が入ってきた。
 和代の息は思わず止まりそうになった。生まれて初めての感覚だった。
 由里子の指は、彼女の濡襞を掻き乱した。女の身体を熟知した由里子は、和代のGスポットを探り当てた。そして、そこを焦らすようにゆるゆると撫でていった。
 「お、お願い。やめて。私、私……おかしくなりそう……怖い、怖いのよ」
 生まれて始めて、この歳になって味わう目も眩む感覚だった。腰が抜けそうだった。夫のものが幾度となくそこに入ってきたのに、一度たりとも感じた事のない強烈な快感だった。痺れを伴う物凄い電流が背筋を駆け上がり、頭の中でスパークした。
 由里子の指が彼女のクリトリスを摘まみ、擦り上げた瞬間、和代は崩壊した。なにがなんだかまったく判らなくなった。目が眩んで頭の中で花火がいくつも炸裂した。そして全身が無重力の空間に放り出されたように、あてもなくさまよい始めた。
 「あーっ! あううううっ! 死ぬっ! 死んでしまう!」
 和代は身も世もなく絶叫した。そして自分はけっして口にする事はないだろうと思っていた言葉を絞り出した。
 「イク! イクぅ!」
 和代の全身が、感電したように激しくがくがくと痙攣した。
 ジェットコースターに乗ったように、どこまでも落ちていく。永遠に落ちていく。闇の中に吸い込まれていく。吸い込まれてなくなってしまう。
 そう思った時、和代は失神した。


 気がついた時、和代はベッドに寝ていた。全身に汗をびっしょりとかいていた。が、股間にはなにやら懐かしい感触のものがあった。
 「気がついた?」
 由里子が覗きこんでいた。
 「あんまり凄い声を出すもんだから、近所の人が飛んでくるかとひやひやしたわよ」
 由里子は涼しい顔をして言った。
 「わ、私はいったい……」
 「イッちゃったのよ。あんた」
 由里子はずばりと言った。
 「オマンコから汁をいっぱい出してね。ママのあそこは凄くワイセツね。ひくひく動いてさあ」
 由里子はそう言うとけたけたと笑った。
 私は娘に犯されたのか。それも、夫の見ている前で。
 和代は、あまりの事に死んでしまいたかった。こんな異常な、屈辱的な事があるだろうか。夫にされたのならまだしも、夫と密通していた娘に弄ばれ、その上我を忘れて初めて絶頂を味わってしまったのだ。
 「気にする事ないわよ。ただパパがヘタクソでママをイカせられなかっただけじゃない」
 由里子の手は、和代の胸を揉んでいる。
 これで終わったのか。あれは一時の事だし、もうあんな事はないだろう。二度とあってはいけない事だ。和代はそう思い込もうとした。強姦されて感じてしまったことを恥じるような気持ちだった。
 しかし。さっきから感じている、この股間の感触はなんだろう。
 「さっきのはイントロ。今度が本番よ。だって、ママはほんとのセックスを知らないんだもん」
 「な、なにをしてるの。今私に何をしてるの」
 和代は怖かった。知ってはいけない禁断の味を知った上に、それ以上の事が待っているというのか?
 由里子は和代の下半身に手を添えた。
 私のあそこに、なにか入っている。それは……。
 由里子は和代の秘所に収まっているバイブを抜き差しした。それにつられて和代の秘門がそれを飲み込んだり吐き出したりした。
 「ああ……。そんな恥ずかしい……」
 「なに言ってるのよ。あいつとさんざんやったくせに。子供を産んだってことは、セックスをしたってことでしょ。上品ぶってるんじゃないよ。男を咥えこんでるんだから、あんたも売春婦もおんなじじゃん」
 由里子は、バイブをぐりぐりと暴れさせた。その先端が濡襞を掻き回し、さっきのレズプレイとは違う感覚をもたらした。
 「あたしが鍛えてあげたから、パパもけっこううまくなったけど、こっちのほうがじっくり出来るからね」
 由里子は緩急自在にバイブを動かした。先程とは違い、今度の快感は、もっと身体の奥深くからふつふつと湧きだしてくるようだった。それは強い流れで渦を巻き、和代の身体を押し流すようだった。
 彼女の腰が、知らず知らずのうちに由里子の動きに同調して蠢いていた。
 「もっとよくしてあげる。ターボだね」
 由里子はバイブのスイッチを入れた。
 「いやああああっ!」
 途方もない衝撃が和代を襲った。
 バイブの先端がうねうねと動きだし、彼女のGスポットをじくじくと責め始めたのだ。
 先程から無言のまま見ていた耕三は、女の底無しの性感に感嘆していた。一度セックスの味をしめた女が貪欲になっていく理由が判ったような気がした。スポーツ新聞などに載っているピンク記事の内容はウソではなかったのか……。
 和代は、またも絶頂に駆け上がった。しかし、バイブの動きは止まらない。新たな波が襲ってきた。和代はまた頂点に達した。しかしまだまだ終わらない。すぐに次の波がきて、またも絶頂に押し上げられた。
 引いては戻す波の振幅は、だんだん大きくなっていった。今でも全身がばらばらになってしまいそうなのに、一番大きな波が来たら私はどうなってしまうのだろう。
 ああ、このままだと気が狂ってしまう。和代は思った。でも……それでもいい。
 その大きな波が来た。
 和代は、「いやああああああっ!」と絶叫すると、全身をきゅうんと大きく弓なりに逸らせた。それがどのくらい続いたのか、自分でも判らない。途方もなく長い時間に思えた。背中がベッドに着地すると、揺れ戻しが来た。全身ががくがくと激しく痙攣した。
 今度は失神しなかったが、このうえなくハッピーな至福の空気に全身が包まれ、いつまでも雲のなかに浮遊している感じだった。
 由里子が和代に口付けをした。和代は自分の中に入ってくる由里子の舌を貪った。二人の舌はどろどろに絡まって、甘美な快感をいっそう強くした。
 「……私、もう、どうなってもいい……」
 欲情しきってとろんとなった和代の目は焦点が合わないまま由里子を見つめ続けていた。
 和代もまた、由里子のセックスの虜になってしまったのだ。


                  *


 一方、組織の手に下った真紀子は、地獄の日々を送っていた。あの淫乱で天性のテクニックを持った由里子と同じ顔をした少女が、男の男根に震え、組み敷かれて泣きながら犯される。男達はそういう光景をこの上もなく楽しんだ。
 「一人の女が淫乱になったり清純な令嬢になったりするんだからな。一粒で二度美味しいとはこの事だぜ」
 ここに連れてこられてもう一ヵ月ほどが経ったが、それまでセックスとは一切無縁だった真紀子にとって、絶望こそ深まれ、慣れるという事はなかった。自分が流す涙も、許しを乞う必死の言葉も、男達にとってはただただ興奮の材料にしかならない。彼女が脅え悲しむほど彼らは男のものを屹立させ無理矢理押し入ってくるのだ。
 ステージに立たされて『強姦ショー』を終えた後、真紀子は個室で客を取らされた。彼女は涙を流して真剣に訴えた。
 「私は間違えられてここに連れてこられたんです。お願いです。助けてください。一生感謝しますから」
 「そうかい。それは大変な事だ」
 客は一様に同情する。
 「でもな、こっちも高い金を払って来てるんだ。君はさっき舞台でもやってたろ。楽しませてくれたらこっちも真剣に君の救出に努力するよ」
 「ほんとですか。ほんとですね」
 真紀子は助かりたい一心で、この客に奉仕した。嫌で堪らないフェラチオをして見ず知らずの男の男根を舐めた。
 言われるままに足を開き、男の舌がいちばん恥ずかしいところを這いまわるのを我慢した。男の狂暴な肉棒が、彼女の秘められた柔らかな部分を蹂藺するのを黙って受け入れた。
 でも、いっこうに助けは来ない。常連となった客たちは、口を揃えて「努力している最中なんだよ」というばかり。
 「そういうふうにおれを詰るけどな、君だって同じ事をいろんな男に言って、こんなことをやってるんだろ。いるんだよ。そうやって客の同情を惹く娼婦がよ」
 ああ、私は娼婦になってしまった。やっている事は娼婦と変わりない。でも、これをしなければ男達にひどい目にあわされるのだ。
 出口無しの状況で、真紀子は次第に生きる望みを失っていった。いっそ死んでしまおうか。そう思い詰め始めた時、桐生が朗報をもたらした。
 「あいつが帰ってくるとよ。由里子がここに帰ってきて、お前を家に帰してやるって」
 「ほ、ほんとうですか?」
 桐生の肉茎から口を離して、真紀子は思わず叫んだ。ああ、やっと助かる。やっぱりあの子は血を分けた妹だったのだ。
 「こっちにしたら、あいつは金を生み出すウチデの小槌だからな。元手の百倍にはなってるぜ」
 「元手?」
 「ああ。ガキのころにあいつを買ったカネもハンパじゃなかったが、今じゃあいつはそんなカネ、一ヵ月で稼ぎだすぜ。お前の親も、娘を売り飛ばさずに稼がせりゃよかったのによ。いくら当座の金が無くて切羽詰まってたって言っても、引き合わねえ取り引きだったっつーわけだ」
 由里子が聞かされていた話はやはり本当だったのだ。真紀子が親から聞かされた話こそ、世間体を取り繕うためのウソだったのだ。
 私の両親が、お金のために自分の娘を誰かに売り渡すだなんて……。
 「あいつをガキからいっぱしのオンナに育て上げるには、それなりに手間もかかったがよ。でもま、今はチャイルド・ポルノも金になるしな。あいつは子供の頃から金を生み出してくれたぜ」
 真紀子は、子供の頃からの由里子の日々を思うと、手放しで喜べなくなった。
 「せっかく自由になれたのに、あいつはオネエを思ってここに帰ってくるって言ってるんだぜ。泣かせる話じゃねえか」
 私が元の世界に戻れたら、なんとかして妹を救い出そう。それが由里子への償いだ。
 真紀子はそう固く決心した。
 桐生には、由里子の毎日が克明に報告されていた。真紀子にすり変わった由里子は、実に愉快な活動を繰り広げている。今の真紀子はすっかり淫乱なメスとして有名になったらしい。
 もう、真紀子の周囲の世界は、彼女にとっては完全に崩壊したのだと言う事を、本人だけが知らないのだ。もちろん、由里子が両親までも顫絡してしまった事も。
 「あいつはもう、淫乱のセックス大好きのどうしようもないサカリのついたメスだと思われてるぜ。真紀子が元の世界に戻って、どんな顔をするか、これは見物だぜ」
 桐生は仲間の男たちとほくそえんだ。





第五章 淫乱学園、禁断の交わり



 解放される前夜、真紀子は寝付けなかった。その日も激しいセックスを強制されて、身体はくたくたになっている筈なのに、どうしても眠れなかった。
 この一ヵ月ほどの体験を、一生忘れる事はないだろう。忌まわしい思い出としていつまでも私を苦しめるかもしれない。でも……妹につかのまの少女らしい生活を送らせてあげる事が出来たんだから……それに私も、男の本性について勉強になったんだわ。
 真紀子は、なんとかそう思い込んで心の傷を癒そうとした。


 真紀子と由里子が入れ代わるのは、通学で使う駅だった。
 朝の八時。真紀子は桐生と一緒に駅の改札の前に立っていた。が、三〇分経っても由里子は姿を現さない。
 「騙したんですか」
 「誰が好き好んで朝もはよからお前を騙すかよ。遅刻だろ。由里子は昔から朝が弱いんだ」
 ならばこの一ヵ月、由里子は毎朝遅刻していたのだろうか……。
 九時すぎになってようやく由里子が腫れぼったい顔でやってきた。
 「遅いじゃねえか」
 さすがに桐生も由里子に文句を言った。
 「しかたないじゃない。だってさあ……」
 由里子は桐生の耳元で、夕べもたっぷり岸田夫婦を相手にしていたのだと囁いた。
 「傑作だな。真紀子は何にも知らないんだぜ」
 「そんなの序の口よ」
 由里子はつかつかと真紀子に近寄って、かばんを渡した。
 「一応時間割通りの本は入ってるわよ」
 「ありがとう……」
 由里子は、真紀子にどのような変化が起こっているか、興味津々な様子で彼女をじろじろと観察した。
 「なんだ。外見はまるで変わってないのね。私は毎日オマンコしてました、って顔になってるかと思ったけど……やってたんでしょ」
 真紀子は真っ赤になって俯向いた。由里子には真紀子がどんなことをしていたかありありと想像されてしまうからだ。彼女に視姦されて丸裸になったような感じがして、真紀子は思わず両手で胸を覆った。
 「オネエはずっと清純だったぜ。身体中男のスペルマだらけにしても野に咲く百合のようにだな」
 「ふーん」
 そんな清純さも、どこまで持つか見物だわ。由里子はほくそえんだ。
 「もう遅刻です。早く行かせてください」
 真紀子は気が気ではなかった。彼女は時間に遅れた事など無かったからだ。
 「へえ。妹をまたあそこに放りこもうってのに、時間の方が大事かねえ」
 桐生に言われて真紀子ははっとした。しかし、由里子は私がきっと助けだして見せるのだ。
 「じゃあ……なんて言っていいか、判らないわ」
 真紀子の目にうっすらと涙が湧いたのを見て、由里子はとことんおめでたい女だと思った。
 駅のホームには、坂口が立っていた。
 「よお。今日は早いじゃないか」
 どうして坂口がここにいるの? どうしてこんな事を言うの?
 真紀子が何か言おうとした時、電車がホームに滑り込んだ。
 この時間の電車はほとんどが通勤のサラリーマンでぎゅう詰めだ。
 毎朝、真紀子の「痴漢プレイ」を見るのが坂口の楽しみだった。腕のいい痴漢になら真紀子は進んで身をまかせ、車内で立ったまま最後までやらせることもあったし、ヘタクソな痴漢だったら一転してその手を捻り上げ、男がインポになるような凄まじい言葉を浴びせた。
 どっちに転んでもそれは楽しい眺めだった。
 坂口はいつものように、真紀子からすこし離れて立っていた。案の定、電車が動きだしてすぐ、誰かの手が真紀子の体に延びた。この路線は「痴漢電車」として有名なのだ。
 痴漢の手は真紀子の胸に延びた。なんだか今日の真紀子の胸は小さくなったようだけど、気のせいかもしれない。
 痴漢の手は、セーラー服越しに胸を揉み上げた。おーおー、今日の痴漢は何時になく大胆じゃないか。このぶんだときっと真紀子は怒りだすな。
 坂口はにやにやして見ていた。あんまりひどい事になると出ていって次の駅で痴漢を駅員に突き出すのが彼の役目だ。
 しかし、真紀子はなぜか真っ赤になって震えたままだ。
 されるがままになっている真紀子の反応を見て、痴漢はスカートの中に手を入れた。尻から彼女の敏感な部分に指を這わしているらしい。
 しかしどういう事だろう。真紀子は唇を噛んで必死に耐えているだけではないか。
 彼女の身体がぴくんと大きく反応した。痴漢の指が中に入り、柔肉の間で蠢いているのだ。
 真紀子は坂口に助けを求めるような目を向けた。口元は微かに、『助けて』と言っているようにも見える。
 が、ここでうっかり助けに行ったら「せっかくいいところだったのに!」と怒られてしまうかもしれない。坂口はそうやってよく由里子にいたぶられていた。
 坂口が躊躇していると、真紀子の頬に涙がつつ、と伝った。
 あの真紀子が泣いている。
 坂口は満員の中を無理矢理移動して、彼女のスカートの中に手を入れている五〇近くのサラリーマンの脛を蹴り飛ばした。ぐ、と呻いたその男に、坂口はみぞおちにパンチをめり込ませた。普段の坂口は暴力はふるわないのだが、今日は妙に頭に血が昇った。何時になくあの真紀子がしおらしいからか?
 たしかに変だ。いつもなら、真紀子自身が相手の男のキンタマを思い切り握り潰している筈なのに。
 電車が次の駅について、真紀子は居たたまれないように降りた。坂口は、男の股間を蹴り上げると真紀子を追った。
 「どうしたんだよ」
 真紀子は蒼白になっている。
 「ひ、酷い事されて、あなたが暴力をふるって……私もう……」
 元の世界ならセックスと暴力とは無縁だと思っていたのに……。
 坂口にサンドバッグにされた初老の痴漢は、よろよろとホームに降りてきた。
 ヤバイと思った坂口は、真紀子の手を引いて発車間際の電車に飛び乗った。
 「いいんだよ。あんなクソジジイ」
 しかし真紀子の震えは止まらなかった。
 おいおい、どうしちゃったんだよ。坂口は当惑した。いつもの真紀子と調子が違う。


 教室に入った真紀子は、みんなの自分に対する態度ががらっと違うのを感じた。男子生徒たちはにやにや笑って真紀子を見た。
 女生徒たちも、ぽっと顔を背けたりもじもじしたりして真紀子を見た。まるでAV女優かソープ嬢が転校してきたような雰囲気だ。
 久しぶりに教科書を広げた真紀子は、それとなく授業がどこまで進んだか隣の真澄に聞こうとした。が、あれほど仲の良かった真澄は、敵意に満ちた形相で真紀子を睨みつけるとまったく口を利こうとしない。
 「ねえ……どうかした? 私がどうかしたの? 何か悪い事でも……」
 真紀子の言葉を聞いて、真澄は目が点になった。
 「よくもまあ、しゃあしゃあとそんな事が言えるわね……悪いけど私、あなたの顔も見たくないし声も聞きたくないの!」
 そう言うなり真澄はそっぽを向いた。
 始業ベルが鳴って、教師が入ってきた。物理の岡嶋だ。今まで無口で存在感の薄かったこの中年の冴えない男は、真紀子を見るなり大声で言った。
 「よ! 今日のパンツは何色だ? それともまた穿いてないのか?」
 真紀子は耳を疑った。
 男子生徒は笑い転げ、女生徒も笑ったりお互いを肘で突つきあったりしている。
 授業中も、岡嶋は真紀子に卑猥な冗談を言い、腰をカクカク動かして露骨にセックスの真似事までやって見せた。
 これはどういうことだ。この真面目な進学校の教師が、私を完全に淫乱扱いして三流以下の堕落した空気に染まっている。真紀子は困惑と憤りで授業がまったく頭に入らなかった。
 休み時間になった。男子生徒が真紀子のところにやって来た。
 「何してるんだよ。一〇分しかないんだから、早く来いよ」
 「え? 来いって、どこに……」
 何を焦らしてるんだ、という表情で、その男子生徒は言った。
 「便所だろ。決まってるじゃないか。予約してあったんだからな」
 それまで真紀子と話もした事のなかったその男子生徒は、彼女の腕を無理矢理とって立ち上がらせた。
 「ちょ、ちょっと待って。私、なんのことだか」
 そう言いながら、真紀子は彼に引き擦られるようにして教室から連れ出され、男子トイレに連れていかれた。回りの生徒は、にやにや笑って見ているだけだ。
 「入れよ。早く」
 真紀子は問答無用に大便所に連れ込まれた。
 「何をしようって言うの。あなたはいったい」
 その男子生徒は、急くようにベルトを外すとズボンを降ろした。
 「時間がねえや。口でいいから抜いてくれよ」
 彼はパンツを降ろして半ば大きくなった男のモノを真紀子の顔に突き出した。
 どういうことだこれは。やっとあの地獄から脱出出来たと思ったのに、この男子生徒は、桐生たちと同じ事を私にさせようとしている。それも学校のトイレで。
 「時間がないんだよ!」
 彼は真紀子の髪を掴むと自分の下腹部にぐいと引き寄せた。
 「いつもやってることじゃないか。おれだけに出来ないって言うのか。阿部とか斎藤にはたっぷりと舐めてやったんだろ!」
 由里子だ。あの子は一体、私の学校で何をしていたのだ? 。
 真紀子は屈辱にまみれながら、彼の肉棒を口にふくんだ。


 蒼い顔をして便所から戻ってきた真紀子を見て、坂口の疑念は深まった。
 どうしたんだ、あいつは。昨日まであんなに好き放題してやがったのに。
 坂口は、真紀子を弄ぶつもりだったのに、逆にセックスによって彼女に支配されてしまった事に我慢がならなかった。
 とは言っても彼女の言うことを聞いていれば出来ない事はなかった。教師はみんな真紀子の言いなりだし、女生徒にしても真紀子のレズ攻略に堕ちたヤツは抱き放題だ。
 彼は真紀子の一の子分として男子生徒に君臨する事が出来たが、それはなにより真紀子あっての事だ。
 陰で自分の事を「小判鮫」だとか「金魚の糞」だとか「真紀子のオマンコにキンタマを抜かれたヤツ」と呼ばれているのを彼は知っていた。
 これはチャンスではないか? なにが原因で真紀子が弱気になっているのか知らないが……まてよ。あんなに胸の大きさが変わるのはおかしいぞ。ひょっとして……。
 坂口はバカではなかった。国立を狙おうとしている受験生でもある。彼は、真紀子は二人居るという仮説を立てた。
 それなら辻褄があう。
 あいつが急に巨乳になって淫乱になったのも、今日羞恥心の塊のような元の真紀子に戻ったのも、ウラ本のモデルが真紀子に瓜ふたつだったのも……。
 次の授業時間の間、真紀子はみんなの視線に脅えるようにして座っていた。昨日までの真紀子なら、教師に見せ付けるようにしてスカートを捲くり上げたり胸元を大きく開けたりして男を発情させるのを楽しんでいたのだ。「あ〜ら先生、勃起してるの?」とか言って平然と嘲っていたのだ。
 次の休み時間、坂口は真紀子に近寄る男子生徒を蹴散らした。
 「坂口君、有り難う……」
 真紀子には坂口が救いの神のように見えたが、彼こそ地獄の使者だった。
 彼は真紀子を屋上に連れ出した。
 「……これを着けろ」
 坂口が取り出したのは、黒々としたバイブレーターだった。
 「えっ!」
 どうして彼がこんなものを持っているのだ?
 「これをハメたまま、次の授業を受けろ」
 坂口は平然と言い放った。
 「坂口君、あなた、何を言ってるのか判ってるの?」
 「判ってるさ。お前のあそこに、このぶっといバイブを入れろって言ってるんだよ。どうせさっきは便所で小野田のチンポをしゃぶってたんだろ」
 「やめて! これもみんな、あなたが仕組んだ事なの?」
 そうだ。坂口は木島や加藤と組んで由里子にセックスを強要していたに違いない。あのウラ本をネタに、学校にバラすと嚇したのだ。そして由里子は、私の為にせっかくの学校生活でもセックスを強制されていたのだ。ああ、何と言う事だろう。
 「嫌ならいいんだぜ。みんなの見てる前で、口では言えないようなことしてやるよ」
 「あなたがこんな卑劣な人だとは思わなかったわ」
 真紀子は吐き棄てるように言った。
 「なんとでも言え。さあ、これを咥え込めよ。小さくてイヤだなんて言うなよ」
 クラスの全員が、そして教師たちが自分を見る目からして、どんな恥ずかしいことをされるかわからない。事情が飲み込めない今は、悔しくても坂口の言う通りにしておかないとまずい。
 真紀子は、そのワイセツ極まりないバイブを手にした。
 「言う通りするから、見ないで!」
 「判ったよ。向こうを向いてるからさっさと入れろ」
 坂口はそっぽを向いた。
 真紀子はそのバイブを恐る恐る自分の秘所に入れていった。
 あの忌まわしい感触が甦った。もうけっして味わう事はないだろうと思っていたものなのに。ステージ上で桐生にこれを使われて弄ばれ見世物になった事が何よりの恥辱だったのだ。
 バイブはするすると入っていった。わずか一ヵ月で真紀子の女性の部分は娼婦のような持ち物に変わっていた。
 「入れたか」
 スカートの上からでは判らない。しかし歩いてみると、その巨大な異物の感触が股間から全身に伝わってきた。落とすまいとして恥肉を絞めようとすると、その感触は余計に強く響いてくる。
 ガニ股になってしまうのを隠そうとして普通に歩けば歩くほどすべての襞がバイブに絡みついてゆく。
 屋上から教室までの間、真紀子はセックスでは感じた事のなかった何とも言えない感覚を味あわざるをえなかった。これを快感と思ってはダメだ。甘い蕩けるような感覚だが、強制された屈辱的な行為なのだ。嫌悪すべき事なのだ。真紀子は必死でそう思おうとした。
 そんな彼女の様子を坂口はへらへらと笑ってみていた。どうやらおれの仮説は正しいようだ。
 授業が始まってしばらくして、突然真紀子は、あっ! と声を上げてしまった。
 彼女の中のバイブがうねうねと蠢き始めたのだ。スイッチなんか触っていないのに。ただ入れているだけでも感じてしまうのに、そのバイブは秘裂の中を掻き乱すように動いた。
 その授業は美佳の担当だった。美佳は真紀子の反応を見てすこし顔をしかめたが、無視して授業を進めた。下手な反応をするとあとで坂口たちの折檻が待っているからだ。美佳は毎晩のように坂口たちに責められて、ほとんど情婦のようになっていたのだ。
 美佳に無視されて真紀子は有難かったが、バイブの動きは止まらない。
 ふと視線があった坂口は、にやりと笑って、手に持っているリモコンを真紀子に見せた。
 このバイブはワイヤレスリモコンのバイブレーターなのだ。
 うねりのようなものが、真紀子の身体の芯から湧いてくるのを感じた。
 いけない。ここで感じてしまっては私は由里子と同じになってしまう。快感に身をまかせるなんでもアリの女になってしまう。
 真紀子は歯を食いしばって押し寄せてくる波と戦った。
 ふいに動きが止まった。
 リモコンが坂口から木島の手に渡ったのだ。木島は真紀子の様子を伺いながら、焦らすようにスイッチの上で指を徘徊わせた。
 動きだすようで動かない。動けば禁断の快感の波が襲ってくるし、動かなければ動かないで、いつ来るか判らないという不安が真紀子を襲った。彼女の媚肉の中に収まったモノがずっと大きく膨らんできたような感覚に襲われた。
 それだけで彼女は参ってしまった。濡れてしまったのだ。パンティはもうしとどに濡れそぼっている。
 ウイン、と微かな音を立ててバイブが再び動きだした。周囲に音が聞かれはしないかと真紀子は気が気ではなかったが、そんな事は次第にどうでもよくなっていった。
 バイブの動きに合わせて、腰が動いていた。
 隣の真澄は、そんな真紀子の様子を、汚いものを見るような表情で盗み見していた。
 真紀子の手が、自然に胸を這った。身体が火照ってどうしようもなかった。こんなこと、あの『ホテル』でセックスをされた時にも感じなかったのに。
 ああ、イッてしまいそう、と思った時、また止まった。
 「ど、どうして」
 と、思わず声が出てしまった。真紀子は焦らされて気が狂いそうなのだ。
 リモコンは、加藤の手に渡った。加藤はスイッチを入れたかと思うと切り、また入れた。真紀子がアクメに達する寸前を見計らって切っているような、切ないタイミングだった。
 どうせならイカせて欲しい。
 しかし、加藤は真面目な顔をして絶妙なオンオフを繰り返した。
 もう、どうしても我慢が出来なかった。真紀子はスカートの中に手を入れて、自ら慰めるしかなかった。バイブの根元を持ってぐりぐりと動かしながら、指で肉芽にも触れた。もう授業中だろうが、誰が見ていようが関係ない。
 焦らしに焦らされた後、真紀子は達した。イスから転げ落ちるのではないか思うくらいの強烈な波が彼女の全身を襲い、彼女は座ったまま弓なりに反り返った。
 その様子を、坂口たち三人はほくそえみながら見ていた。
 ああ、昼休みにまた私は人には言えない事をされるのだ。そう思うと真紀子は絶望的になったが、とことん快感に身を委ねてしまいたいという気持ちも感じてしまうのだった。
 昼休み、母の手作り弁当のほとんどを残して、真紀子は視聴覚教室に行った。坂口たちに顔を出せ、と言われていたからだ。
 そこに足を踏みいれた瞬間、彼女の目に入ったのは、教室に備えられたいくつものテレビモニターすべてに映しだされた真紀子、いや由里子と彼らのセックスの生々しい映像だった。
 画面の中の由里子は、真紀子の部屋で、真紀子のピンクのベッドで彼らを相手に目を背けたくなるような激しいセックスをしていた。騎乗位で坂口にまたがり、激しく腰を使いながら口では木島の怒張した男根を受け入れ、さらにその背中からは加藤がのしかかり由里子のアヌスを犯していた。
 私の部屋のベッドで、その上ビデオまで撮るなんて、まったくなんてことだろう! ……彼らにとって由里子は真紀子だ。そしてこの映像を見るもの全員がそう思うだろう。
 「止めて! どこまで私をいたぶれば気が済むの!」
 教室の影から昨日のメンバーの坂口、木島、加藤が姿を見せた。
 「この映像を学校中に流す事も出来るんだぜ。口の利きかたに気をつけな」
 坂口は、真紀子のスカートを捲くりあげると上からパンティの中に手を入れた。
 「お前はおれたちの奴隷なのさ。それを改めて確認しとこう」
 坂口の手は、そのまま下に降りた。真紀子のパンティはずるずると下にさがった。
 「机に手をついて尻を突き出すんだ」
 木島は、教卓にあるスイッチに手をかけていた。
 「このスイッチを倒すと教室にあるテレビに電源が入って強制的に一斉放送が出来るんだよ。その意味、判るよな?」
 「ま、今更放送しなくても、みんなこのビデオはもう見てるけどな」
 みんな見ている? 私になりすました由里子が三人を相手にセックスしている、この酷いビデオを? ……まさかそんな、真紀子は恥ずかしさと絶望に打ちのめされた。
 「おい、さっさと尻を出せよ!」
 声を荒げる坂口に脅えた真紀子が言われるままに尻を突き出すと、すかさず坂口の肉棒が荒々しく押し入ってきた。
 「こうこなくっちゃ。もうお前の好きなようにされるのはゴメンだぜ。これからは、おれ達がお前を好きなようにするのさ」
 まったくの前戯なしで坂口はぐいぐいと腰を使った。
 「早くしないと、後がつかえてるからな」
 坂口が終わるのを待たずに、木島は自分のモノを出して、机に上り、真紀子の顔に突きつけた。
 「舐めろ」
 木島は、真紀子のフェラチオが気に入っているようだった。坂口が果てた後も花芯には挿入せず、舌で奉仕させる事を選んだ。
 加藤は真紀子のアヌスを好んだ。坂口の精液を自分のモノにたっぷりと塗りつけると尻たぶを大きく開き、ずぶずぶと沈めていった。
 「お前、時間で数をこなす安物の娼婦みたいだな。さっきは自分で派手にイッてたしな」
 かくかくと腰を蠢かしながら加藤が侮蔑的に言った。


                  *


 放課後は体育倉庫に来い、と言い渡されて真紀子は解放された。教室に戻った彼女は悔し涙を止める事が出来ず、真紀子に軽蔑しきった態度を取り続けていた真澄もさすがに放っておくわけには行かず、彼女を保健室に連れていった。
 「彼女、今日メンスなんです。気持ちが落ち着かないんだと思います。私が付いていますから」
 真澄は嘘をついて保健の教師を騙し、二人だけになった。
 「……私は、真紀子が判らないわ」
 真澄がぼそっと言った。
 「あなた、どうしておかしくなっちゃったの? 今のあなたはまるで……以前の真紀子はどうしちゃったのよ」
 真澄に本当の事を言っても信じてくれないだろう。それどころか本当に頭がおかしくなってしまったと思われるに違いない。
 真紀子が黙ったままなのを見て、真澄はため息を付いた。
 「親友だと思ってたのに……言ってくれないのね……」
 真澄は真紀子の手を取った。
 「ね。あなた、秘密があるんでしょう。それは何? どんな秘密なの?」
 真澄は好奇心いっぱいの表情で尋ねた。
 「あなた、誰かを好きになったんじゃない? で、その人に教わったんでしょう……いろいろいけない事を」
 真澄は完全に勘違いしている。真紀子が恋人に請われるままにセックスを覚え、それがあまりに良いのでのめり込んでいるのだと思っているのだ。
 「ええ……それは……」
 真澄は真紀子にいっそう顔を寄せてきた。
 「……私ね、マキには黙ってたけど、クラスの海老原君にあげたの。でも、ちっともよくない。海老原君は自分が気持ちよくなるだけで私の事なんかお構いなしに入れて来るだけだし……。それで、私、セックスがとっても嫌になっちゃったの。結婚したらあんなこと毎晩しなきゃいけないのかと思うとぞっとするわ……でも」
 真澄は真紀子の胸に手を置いた。
 「あなたを見てると……そうじゃないんじゃないかって思えてきたの……あなた、授業中に一人でやってたでしょう。とっても気持ちよさそうに。私、そんなになったことないもん」
 真澄は真紀子にそっと口づけをした。ベッドの真紀子に乗ってきた。そしておずおずと制服の上から優しく彼女の乳房を揉みしだいた。
 「ね、私に教えて……気持ちいいセックスを教えて」
 「真澄……あなたまで何を言い出すの」
 真紀子は驚いた。あんなに嫌悪の表情を露わにしていたくせに、真澄まで淫猥な空気に染まってしまったのか。
 「あなた一人気持ちいいなんて、ずるい……」
 真澄の指は真紀子のパンティに延びた。その股間は花芯から降りてきた男の精液で濡れていた。
 「私はみんな知っているのよ……あなたのビデオが密かにコピーされて男子生徒の間に出まわってるの。坂口君たちとしてるところを撮ったビデオよ」
 真紀子は再びショックを受けた。ああ、やっぱり……妹の、私の恥ずかしい姿は学校中の見世物になってしまったのね。坂口はいったい何と言う事をするのか。そして、それを許した由里子は一体……いや、そういうことをさせたのは由里子なのかもしれない。それでみんなの私を見る目が、マドンナに対する憧れから娼婦に対する侮蔑に変わっていたのだ。
 「男の子たちはみんなマキを軽蔑してるくせに、坂口君にはあなたとやりたい、と申し込んでるのよ。あなたが休み時間に男の子とお手洗いで口でしてあげてる事も、セックスしてる事も、小川先生とレズってることも、笠井先生や他の先生たちとしてることも……公然の秘密だけど」
 真澄は濡れたパンティの上から真紀子の秘裂をなぞっていた。
 「私にもしてよ。あなた、クラス委員の牧原さんとレズったの知ってるのよ。あの子とするんなら、どうして私にしてくれないの?」
 真澄は真紀子の顔の上にしゃがみこむと、パンティを膝まで降ろした。
 「ね。レズって、ここを舐めるんでしょ。先にして。私を舌でイカせて」
 「な、なんてことを……」
 真澄は腰を落として真紀子の顔の上に秘所を押し付けた。
 「ね。お願い……」
 由里子と違って、真紀子は由里子とのアナル・プレイは別にすると、レズの経験はなかった。『ホテル』でも、相手にするのは男だけで、女同士することはなかったのだ。でも……。私を娼婦あつかいせず、優しい言葉をかけてくれるのは、もう真澄しかいない。
 心が弱った真紀子は、真澄の秘門を唇で挟んでみた。それだけで真澄はふるふると腰を震わせた。
 下の唇にキスしながら、真紀子の舌は真澄の肉芽に触れた。それは小さなままだったが、真紀子の舌が転がしているうちにぷっくりと膨らんできた。
 「ああっ……」
 真澄が切ない声を出した。
 彼女の秘裂は濡れ始めていた。真紀子の舌が触るたびに真澄は甘い声を漏らし、ひくひくと腰を揺らせた。
 真澄は、自分で胸をはだけ、乳首を摘まんだ。高校生にしては小ぶりな乳房はピンク色に染まっている。
 真紀子は、自分が男たちにされたことを真澄にやってみた。彼女の秘裂を指で大きく広げて肉芽を剥き出しにすると、それをちゅうちゅうと吸ってやったのだ。
 「あうっ! あン……凄い……感じる……」
 真澄が感じ始めると、ふっとはぐらかして今度は下の陰門を舐める。舌を中に差し込んでやると、真澄の花芯は火照ったように熱くなっている。
 真紀子はそこに指を添えた。真澄の中はまだ狭く、一本入れただけで、きゅうっと絞めてきた。
 真紀子は指をくの字に曲げると、恥骨の裏側辺りを徘徊わせた。ざらっとした部分に触れると、とたんに真澄の声が変わった。
 「いやっ。凄い。いい。いいの。そこ、そこよ」
 Gスポットだった。クリトリスとGスポットの同時攻撃で、真澄の身体から力が抜けていった。
 「これね……これがそうなのね……いい。とってもいい。イきそうイきそうなの……」
 真澄はベッドの鉄パイプを握り締めて身体を必死で支えている。それでも我慢出来ずに、乳房を鉄パイプにすりすりと擦りつけた。
 「イク……イク……イッていいでしょ」
 真紀子は舌と指に力を入れた。
 真澄はがくがくと全身を痙攣させた。
 その時。真紀子の顔に熱い液体が降りかかった。オーガズムに達した真澄が、その快感の余りに失禁したのだ。
 「ああっ、いや、いやだ……恥ずかしい……でも……ああっ、止まらない」
 真澄は身悶えしたが、出始めた小水は止まらない。
 真紀子は、彼女の液体を口で受け止める羽目になったが、それは妙に甘い味がした。
 「私……あなたを便器にしちゃったのね……でも、どうしても止まらなくて……」
 激しい絶頂から落ち着きを取り戻した真澄は、顔を赤く染めて真紀子に謝った。
 「でも、こんなに素晴らしいとは思わなかったわ……あなたが夢中になってしまうのも無理はないわね」
 真紀子と一緒に横になった真澄は、真紀子の胸を指でなぞりながら甘えた声を出した。
 「ね……もう一回……いいでしょ?」


                 *


 五時間目の授業を二人してサボってしまった真紀子と真澄は、なにやら気恥ずかしい面持ちで教室に戻った。真紀子にとって、好意を持つ相手とそういう関係になったのは初めてだったからだ。いかにレズとはいえ、ほのぼのした気持ちさえ生まれていた。
 が。教室で待つ坂口たちの顔を見た瞬間、そんな気持ちはどこかに消し飛んでしまった。彼らと放課後、また暴力的で屈辱的なセックスをしなければならないのだ。
 その前に、真紀子は他の男子生徒の『予約』をこなさなければならなかった。これでは桐生と同じではないか。そう思いながらも真紀子は坂口の命令に従わざるをえなかった。もし逆らえば、彼らは両親にある事ない事通報するだろう。上品な母親にも優しい父親にも一切知られたくない。
 真紀子はトイレで何人もの男子生徒に抱かれた。
 「まったく高校慰安婦とはよく言ったな」
 トイレの外に行列が出来るほどの盛況ぶりには坂口たちも呆れるほどだった。昨日までとは人が変わったようにおとなしくなり、脅えるような様子さえ見せている真紀子に、そそられた男子たちから予約が殺到したのだ。
 「岡嶋が言ってたけど、真紀子が活躍するようになってウチの成績が上がったんだってよ。全国模擬試験での順位が上がったんだと。これじゃあセン公たちも文句を言えないよな」
 一日に何人もの男に抱かれているうちに、身体が敏感に反応し始めるのが自分にも判り、真紀子は情けなかった。
 狭い個室だから、真紀子は尻を突き出したスタイルで相手を待つしかない。
 「おい、こっちを向けよ」
 目を閉じてひたすら耐えていた真紀子は、聞き覚えのある声に思わず振り向いた。
 入ってきた相手は、男子テニス部のキャプテンで、真紀子が以前からほのかな恋心を抱いている三年生の柚木だった。
 柚木は、個室に入ってくるなり真紀子のスカートを捲くり上げた。パンティはすでに足首まで降ろされているので、ふっくらとした白いヒップが、恥ずかしい部分共々丸見えになる。
 ああ、先輩も他の男の子と同じなのね。先輩とはこんなところでこういう形で逢いたくなかったのに……。
 真紀子は消えてなくなりたかったが、身動きは取れない。
 柚木は、そんな真紀子にはお構いなしに彼女の尻たぶを指で押し広げて、まじまじと観察した。
 「きれいなお尻だな。どうせならお前のヌードをじっくりと見たいよ」
 こんな屈辱的な格好をいつまでも観察されるなんて……憧れの先輩だけに真紀子は泣きたい気持ちだった。もう、早く済ませて欲しい。
 真紀子はつい小さな声で「早く入れてください」、と言ってしまい、言った後でその意味に気がついてはっとした。男のモノを欲しがる淫乱な女みたいなことを……でも先輩から見れば私は淫らな娼婦なのだわ。
 真紀子の悲しみをよそに、柚木の手は、すべすべした彼女のヒップを撫で回している。
 「今度の日曜日、ゆっくり逢ってくれよ。オレの部屋広いしさ、こんな入れて出すだけのセックス、お前もイヤだろ……オレ、前からお前の事好きだったんだ」
 そう言いながら柚木はずぶりと肉棒を差し入れてきた。
 好きならこんな事しないで。
 真紀子だって好き好んでこんなセックスをしているのではない。でも、いつの間にか彼女はプロの娼婦のように、前戯なしでも濡れていつでも男のモノを受け入れられるようになっていた。一ヵ月前なら痛くて入らなかったのに。
 柚木のモノは反り返っていて、真紀子の敏感な場所をごりごりと刺激した。
 「あうっ」
 声が漏れた。相手はそれを聞いてますます刺激されて動きが激しくなった。真紀子の尻たぶと男の下腹部がぱんぱんと当たる音がトイレに響いた。
 柚木先輩と、こんな形でセックスすることになるなんて……。
 真紀子は惨めさに死にたくなるほど哀しかったが、一方他の相手とは違う妖しい感覚が生まれてもいた。やっぱり先輩のことが好きだから? 私の中にはいっているのが先輩のアレだから?
 思わず知らず襞を締め付け、腰を使い始めた真紀子に、ほどなく柚木は爆発した。熱い奔流が真紀子の奥深くにほとばしるのを感じた。
 「ああ、やめないで、お願い……」
 声にならない声をあげた真紀子は、激しいノックの音で現実に引き戻された。
 「いつまで入ってるんだ。早く出ろよ!」
 柚木は余韻を味わう暇もなくズボンを上げて、そそくさと出ていってしまった。
 次の相手は洋式便器に座って、嫌がる真紀子を膝に乗せた。生徒会長の玉城だった。
 「おれ、ソープでけっこうモテるんだぜ。デッカイってな」
 日頃真面目な玉城とは思えない口調で、彼は真紀子の首筋に舌を這わせながらいやらしく囁いた。両手は彼女のセーラー服の下に滑り込み、胸を揉んでいる。
 「お前、こんな事やってて大学行くつもりなのか? まあ、今の大学生なんて何でもありだからな。お前なら女子大生を売り物にして稼げるんじゃないの? 今からでもやれよ。オジサンなら高く買ってくれるんじゃないの。女子高生のほうが女子大生より高いらしいぜ」
 玉城はすでにオジン化したモノの考えしか出来ない。そういえば『ホテル』ではこんなヤツが一番淫らな行為を要求したのだ。こういう場所では男の本性が丸出しになる。
 しかし、真紀子の体は悲しいことに、この嫌悪すべき男にも反応した。真紀子は、自分の身体の淫猥な変化に、女である事を怨んだ。が、甘美な電気が背中を昇りつめるたびに、切ない声を上げてしまうのだった。


 真紀子は、坂口たちと一緒に美佳のアパートに行った。
 美佳はスリップ一枚の姿で、玄関口で正座して待っていた。
 「こいつはもうおれ達の言いなりだぜ。やっぱり女はガキよりオトナのほうがいいな。真紀子は別だけど」
 坂口はいっぱしの口を利いた。
 美佳は、由里子や坂口たちに蹂藺されてからというもの、すっかりアブノーマルなセックスに目覚めていた。
 そんな自分は汚れてしまったと思い、フィアンセの笠井から遠ざかろうとしたのだが、笠井はそんな事情を知らない。彼の押しに負けて寝てはみたが、坂口たちのセックスには叶わなかった。
 もう彼らには恥をすべて見せている。だからセックスにタブーはなかった。
 でも笠井が相手だと思い切り声も出せない。
 笠井は彼女を才色兼備のマドンナだと思っているからだ。そんな彼に、お尻のほうが感じるの、とは言えないではないか。
 坂口たちは、底無しの精力で美佳に挑んだ。
 木島にすっかり開発されたアナルを責められて、美佳は狂乱した。学校での澄ました顔からは想像もつかない。
 「美佳先生よ。お前も苦労するよな。ケツでやってくれる男を見つけるの、なかなか大変だぜ。変態と結婚でもするか」
 「いや。言わないで。私をこうしたのはあなた方よ」
 美佳は木島にアナルを責められながら、その首謀者の真紀子に恨みがましい目を向けた。
 「真紀子さん……私はあなたの事が心配よ……一六才で、そんなにセックスに狂ってしまっていいの?」
 美佳は荒い息で言った。
 「セックスの最中に生徒を説教するんじゃねえよ。テメエはどうなんだよ。教師のくせに、毎日毎日生徒のチンポをケツで咥え込んでいいと思ってるのかよ」
 木島の手が前に延び、美佳のクリトリスを摘まみ上げた。美佳は堪らず最初の絶頂を迎えた。
 彼女はもう、一度や二度の絶頂では満足出来ないようになっていた。
 そんな美佳の身体をひっくり返して、正常位の好きな坂口がのしかかった。しかし彼もアナルに指を入れての両面攻撃だ。
 「なに蒼い顔してるんだよ」
 あまりの光景に絶句している真紀子を見て、坂口の行為をサカナに自分のモノをしごいている加藤が言った。
 「お前がレズってやって美佳先生はフルコースを終わるんだぜ。お前の舌遣いはおれ達には真似出来ないんだってよ。そうだろ、先生」
 美佳は二度目のアクメを迎えて、喘ぎながら、そ、そうよ、と呻いた。真紀子さんのクンニは最高なのよ。
 「ああ、待ちきれないぜ」
 加藤は真紀子に挑みかかってきた。


                  *


 疲れきった真紀子は、自宅の玄関を開けた。もはや学校はセックス地獄だ。真紀子の安住の地は、この家しかない。
 おかえり、と母親の和代が出てきた。
 「ママ」
 真紀子は泣きじゃくりたかった。もうこの家から一歩も外に出たくない。あんな学校なんかに行きたくない。この家でじっと静かに暮らしたい。そう思った。
 「お風呂に入りたいわ」
 真紀子は、何人もの体液が残る身体を洗い清めたかった。母親にスペルマの匂いを嗅ぎ取られるのではないかとはらはらした。
 しかし、風呂場に向かう真紀子の背中に向かって、母親は妙な事を言った。
 「パパは今夜遅くなるんだけど、みんな揃う前に、どうする? 私と、その……」
 「え?」
 もじもじと少女のように恥じらいながら話す母親の言う事が、真紀子には理解出来なかった。
 「夕べのアレ、もう一度してほしいの……」
 「夕べのって……」
 「意地悪ねえ、あなたも。私に言わせる気?」
 夕べ何が起こったのだろう? 由里子は一体なにをしたのだろう。真紀子は、もしや、と思ったが、すぐにその考えを打ち消した。いくらなんだってそんな事は。
 シャワーを浴びて身体を洗い、湯船に浸かって、真紀子はやっと生き返ったような気がした。今日あった事が、いえ、この一ヵ月の間に起こった事が全部夢だったらいいのに。そう思っていた。
 風呂場のドアが開いて、母親が顔を覗かせた。
 「私も入っていい?」
 母親と一緒に風呂に入るなんて何年ぶりだろう。母親は真紀子の返事も聞かずに入ってきた。
 四〇過ぎなのに、母親の体はきれいだった。なんだか若返ったようにも見えた。
 「出なさい。洗ってあげる」
 母が背中を流してくれるなんて。真紀子はなんだか嬉しくなった。学校であんな事があっただけに、肉親の無私の愛情を感じて泣きたくなった。
 和代は、自分の身体にボディ・ソープを塗ると、派手に泡立てた。まず自分を先に洗うのか。そう思っていたら、泡だらけの身体を真紀子に押し付けてきた。
 え? なにこれ。どうしたの?
 真紀子が驚く暇もなく、和代は自分の身体で真紀子を洗い始めた。
 「昼間、ビデオを見て勉強したの。泡踊りって言うんでしょ、これ。女同士じゃあんまり感じないかしら?」
 和代の硬くなった乳首が真紀子の背中をむずむずと這いまわった。
 「ママ。何してるの」
 「下手かしら。真紀子はほんとに上手だったもの。私、あれだけで変な気分になっちゃったのよ」
 母親は真紀子の肩を押して、広い洗い場に横にさせた。そして、彼女の上に覆い被さってきた。
 「ここをタワシにするのよね」
 母親は濃い目に茂った陰部を真紀子の胸に擦りつけてきた。
 「ママ。止めて。何のつもりなの?」
 和代は自分の乳房を真紀子のそれに擦りつけてきた。
 「私もソープ嬢なみかしらね?」
 「ママ。趣味の悪い冗談は止めて」
 しかしママは止めなかった。それどころか、ママの指は真紀子の秘裂に触り、その奥にある肉芽に達した。
 「お願いだから、ママ」
 上気した和代には、真紀子の哀願は届かない。母親の唇は娘の乳首を吸い、舌を蠢かせた。
 「い、いやぁ……ママ。止めて……」
 「ねえ真紀子。夕べみたいに、私のあそこを、気持ちよくして欲しいの」
 和代は媚びるように真紀子の耳元で囁いた。
 「今日も一日中身体が疼いて仕方なかったわ……。あなたが早く学校から帰ってこないかと、時計ばかり見てたのよ」
 母親は自分でクリトリスを嬲っていた。
 「ここでする? それとも、ベッドで?」
 ママは狂っている。由里子が狂わせたのか? 由里子は両親を怨んでいる。それで狂わせてしまったのか? ああ、なんてことだ……。
 その時、誰かの足音が聞こえてきた。
 「おい。二人とも風呂なのか?」
 パパだ。パパが帰ってきたのだ。パパなら助けてくれる。
 真紀子はほっとした。パパならば、色気狂いのようになったママを窘めてくれるだろう。
 しかし、真紀子は甘かった。
 父親が風呂場に入ってきた。
 彼はすでに服を脱ぎ捨て、その男のモノは大きくなって鎌首を持ち上げていた。
 「なんだお前ら。二人だけでいいことしようったって、そうはいかないぞ」
 父親の目も、情欲でぎらぎらと光っていた。
 「違うのよ、あなた。今日はパパとママとで可愛い真紀子を思いっきりイカせてあげましょうよ。いつもこの子にイカされてばかりじゃねえ……」
 「それもそうだ。大人としてしめしがつかないからな。よし、真紀子、ママの指と舌とパパのここで、これからお前を目茶目茶に可愛がってあげるよ」
 「そうよ、とても恥ずかしくて気持ちいいことをしましょう」
 裸のパパとママが迫って来る。
 真紀子にとって、元の世界の学校も家も、すべてセックスの地獄と化してしまっていたのだ……。
 まだあの「ホテル」のほうがいい……。
 真紀子は心の底からそう思った。





第六章 美少女の秘花は闇に疼く



 父親の耕三が肉棒を勃起させて風呂場に入ってきた。真紀子はとにかく無我夢中で彼を突き飛ばし、風呂場から転がるように逃げ出した。
 狂ってる。みんな、狂ってる。
 「おい、待て!」
 という父親の声を聞いて、真紀子は素肌にトレーナーとジーンズを身につけると家から飛び出した。
 とにかく少しでも家から離れたかった。真紀子にとって一番安全で心休まる場所であったはずの家まで獣欲に狂っていた。
 由里子だわ。すべて由里子のせいなんだわ。
 夜の道を走りながら、彼女はやっと由里子の魂胆が判った。由里子は私のすべてを破壊したかったのだ。私を淫乱この上ない女子高校生に仕立て上げて、私の世界をすべて踏み躙ろうとしたのだ。そして、その由里子の計画は完全に成功したのだ。私は学校中の誰もと男女を問わずセックスするふしだらで淫乱な女になったのだ。それだけではない。あろうことか、私は母親や父親とも交わる獣になってしまったのだわ。
 真紀子には帰るところがなかった。どこにも真紀子が安心出来る場所はなかった。
 死んでしまおうか。彼女はそう思って近くの橋に行ったが、冷たく流れる黒い川面を見ていると、自殺する勇気も消えうせた。
 夜の街を徘徊い歩いた真紀子は、いつの間にか、あの『ホテル』の前に来ていた。あれほど逃げ出したくて堪らなかったのに、真紀子は自らそこに舞い戻ってしまったのだ。
 今の私にとって、ここが一番安心出来る場所なのかもしれない……。
 真紀子は、吸い寄せられるように、その建物の中に入っていった。


 「結局こうなると思ってたぜ。一度ここで味を覚えると元の世界には戻れないんだ」
 出迎えた桐生はほくそえんだ。淫乱と清純の双子の美少女が揃えば、これは凄いことになるぜ。
 「よく判ったろう。お前の生きる場所は、もうここしかねえんだよ」
 「由里子は、由里子はどこにいるんですか? どうしても聞きたい事があるんです」
 私をここまで堕として満足なのか、と真紀子は聞きたかったのだ。
 「あいつは今夜は貸し切りだよ。この一ヵ月満足出来なかったから、今はくんずほぐれずの真っ最中だぜ。見てみるか?」
 桐生と真紀子は由里子の個室の隣の部屋に入った。ここの壁は一面マジックミラーになっていて、由里子の個室の様子がすべて見えた。
 由里子は三人を相手にしていた。一人の男の上にまたがって女性上位で媚肉に肉棒を咥えこみ、背後からはもう一人が彼女のアナルにモノを収めていた。
 そうして彼女は、口で三人目の男の屹立したものを受け入れているのだ。男は三人とも激しく腰を使い、疲れを知らない様子で由里子を責め立てている。三本の逞しい肉棒を受け入れている由里子は、紅潮して蕩けるような表情だ。
 「これでこそ由里子だぜ。普通のセックスじゃ満足しねえんだよ、アイツは」
 そんな由里子にとって、童貞に等しい高校生や遊び慣れない教師を虜にする事など雑作もなかっただろう。まさに由里子はセックスがすべての女なのだ。
 「さあ。お前も妹に負けないようにしないとな。ここでやってくんなら、技を磨かねえといけねえぜ」
 ああ、やはりここも地獄なのだわ。でも……ここはセックスがすべてのところ。元の私がどうであろうが一切関係ない。学校や家で慰み者になるよりましなのかもしれない……。
 真紀子は桐生に従って、別の部屋に入った。
 そこには、あの嫌悪すべきエロおやじの田沼が、相変わらず背中の醜悪な刺青を見せてベッドに胡坐をかいていた。
 「おう。やっぱり帰ってきたか。おれのチンポが恋しかったんだろ」
 「おやじ。今夜は思う存分こいつを可愛がってやってくれよ。こいつも、ここで頑張ると決めたようだから」
 桐生は真紀子を田沼に引き渡した。
 もう何もかも忘れたい。手を触れられるのもおぞましかったこの男に身をまかせて、自分を滅茶苦茶にしてしまえばいいんだわ。
 真紀子は捨て鉢な決意をした。
 田沼は真紀子を抱き寄せるとおもむろに胸を掴んだ。
 「いやあ!」
 決意をしても、この醜悪な男に抱かれるのはやはり吐き気がするほど嫌だった。
 「ふん。これから商売になるホントのセックスをたっぷりと教えこんでやるぜ。おれが相手だとすれっからしのソープの女も夢中になるんだからな」
 あっという間に全裸にされた真紀子は、田沼に両足を高く持ち上げられ、その股間に舌が這いまわり始めた。
 「あれだけ姦られたのに、まだ色はきれいだな。じきに男なしじゃ日も暮れないオマンコにしてやるぜ」
 田沼の舌使いは絶妙だった。肉芽を舌先で嬲ったと思ったら花弁を吸い、中に舌を入れていく。空いた手で乳首を弄びつつわざと乱暴に揉みしだく。
 その手管はやはり素人の男では味わえないものだった。田沼は真紀子の波を巧みに掴み、じわじわと責め、じらしにじらした。
 真紀子の秘門からは淫液がとめどもなく湧き出て、花弁は男根を求めてひくひくと蠢いた。
 「どうしてほしい?」
 「ほ、ほしい……」
 真紀子は初めて自分から男を求めてしまった。男の大きな肉棒で、あそこを貫かれたい、熱いものを花芯で感じたい、と真紀子は心から思った。
 「ほしいって、何がほしいんだ? はっきり言わないと判らねえよ」
 「そ、そんな……恥ずかしい……」
 「言わなきゃ何も出来ねえな」
 田沼は舌の動きも止めてしまった。
 「あ……そんな……ひどい……」
 真紀子は田沼のモノを求めて腰をゆらゆらとくねらせた。手を延ばして肉棒を引き入れてしまいたいほどだ。しかし、さすがにそれは出来ない。
 「お願い……入れて……欲しいの」
 「まだまだ。もっと悶え狂わせてやる」
 田沼の指は、花芯と菊座を同時に襲った。
 「ゆ、指じゃないの……」
 「そうがっつくな。お楽しみはこれからだぜ」
 挿入された指は、真紀子の内側をゆっくりと擦り上げていった。
 「ほ、欲しい! 入れて! ああっ。堪らない」
 田沼がやっとパンツを脱ぐと、反り返った上に真珠が埋めこまれた巨大な肉茎が現れた。
 「これが欲しかったんだろ」
 真紀子は夢中で頷いた。
 「欲しい。入れて欲しい……」
 「ダメだ。これはなんて言うものだ?」
 「あ、あなたの、チンポ……」
 真紀子はとうとう口走ってしまった。
 田沼はにやりと顔を歪ませて、真紀子に覆い被さった。
 男のものが真紀子の熱く煮えたぎった秘裂にあてがわれた。
 「ああ……」
 「へ。そんなにこれが恋しかったか」
 男の先端は入り口で焦らすように陰門を撫でた。それだけで今の真紀子は蕩けそうだった。
 「それじゃ、いくぜ」
 田沼の真珠の入った肉棒がずぶずぶと沈んでいくだけで、真紀子は早くもアクメになった。田沼がモノを動かすたびに、幾つもの真珠がGスポットや他の敏感な部分をこすりあげ、真紀子は狂乱状態になっていった。
 「これだけじゃねえんだ」
 田沼はシリンダー式の浣腸器を取り出すと、真紀子のアヌスに突き立てた。
 「クソを我慢しつつやるオマンコは最高だぜ」
 ほぼ原液のグリセリンは、即座に真紀子を責め始めた。激しい便意を堪えてアヌスをすぼめるたびに淫襞にも力が入り、絞めつけは増した。それは真紀子のエクスタシーも高めるのだ。
 「ああああああ……どうにかなってしまいそう……」
 その光景を見ていた桐生は、そっとホテルのフロントに向かった。
 そろそろあいつが来るころだ。
 桐生は、真紀子が帰ってきたと聞いて、すぐにその人物に電話をしたのだ。
 その人物、すなわち真紀子の父親の耕三は息せき切ってホテルに現れた。
 「あんたか。私の娘を預かっているというのは」
 そのときの耕三は、娘を掠われて動転している父親そのものだった。
 「娘をどうする気だ?」
 何をほざいてやがる。テメエの娘と寝たくせに偉そうな口を利くんじゃねえ、と桐生は思った。
 「真紀子はもう二度と家には帰りたくないとよ。お前のような親のいる家にはな」
 「な、何を言う。娘に逢わせろ。娘からじかに話を聞く」
 耕三はずかずかと奥に入って行こうとしたが、桐生にやんわりと止められた。
 「勝手な真似をするんじゃねえよ。ここはただのホテルじゃなんだからな」
 「うるさい。手を離せ」
 今の耕三は、娘を取り戻したい一心だった。それは、娘を愛しているからというよりも、娘を自分のものにして貪りたいからだった。
 桐生の拳が、耕三のみぞおちにめり込んだ。
 ぐえっと唸った耕三はその場に崩れ落ちた。
 奥からは、女のよがり声が聞こえてきた。
 「あ、あの声が……」
 「そうだよ。お前の娘の声だ。さっきからチンポがデカいだけが取り柄のエロおやじに抱かれてひいひい言ってるんだ。そろそろフィニッシュなんじゃねえかな」
 娘が、私の娘が他の男に抱かれている。
 そう思うと耕三は気が狂いそうになった。彼は真紀子が学校でどんな目に遭ったか、そして一ヵ月間ここでどういうことをしていたか、まったく知らない。
 「付いてきな。これがセックスだってヤツを見せてやるぜ」
 桐生は奥に入っていった。耕三もそれに続いた。
 廊下に面した部屋からはくぐもった嬌声が聞こえてきた。ここは売春宿なのだ。こんなところにどうして真紀子が……。
 「言っとくが、真紀子は自分からここに来たんだ。おれたちが掠ったんじゃねえからな」
 「おまえたちが連れてこなければ、あの子が自分からこんな所に来る訳がないだろう! あの子は私が手塩にかけて……」
 「ここだ。入れよ」
 その部屋では、真紀子が田沼に抱かれていた。両足を頭のほうに押し上げられて、秘部を剥き出しにされた体位で、真紀子は男のモノを受け入れていた。一番深く結合するスタイルだ。
 田沼は緩急自在に腰を使っていた。ゆっくりと腰をグラインドさせていたかと思うと、突然真紀子の奥まで突き上げた。そのたびに真紀子は切な気に啜り泣くのだ。
 「ああ……お願い……もう、堪らない……死んじゃう……もう、ダメ……」
 浣腸されたまま腹を圧迫される体位で、真紀子はエクスタシーと同時に猛烈な便意と戦っていた。排泄と同時に、今まで味わった事のないほどの強烈な絶頂に襲われるだろうと真紀子は予感した。しかし、今はトイレに行くこともオーガズムに達する事も許されず、ぎりぎりのところを徘徊っているのだ。
 「気が遠くなりそう……ああ、どうにかしてっ!」
 娘がこんなに乱れるなんて。
 耕三は目の前の光景が信じられなかった。彼女は父親が見ていることなど一切関係無しに法悦の境地の真っ只中にいるのだ。
 「どう? 自分の娘がこんな男にヤられてるのを見た感想は?」
 その声に耕三ははっとした。
 自分の後ろには、もう一人の真紀子が立っていた。こちらの真紀子は全裸で、汗をびっしょりかいている。
 「あたしもずっとヤってたんだけど、真紀子が帰ってきたと聞いて見にきたのよ」
 由里子は大きな胸を震わせて笑った。
 「やってるじゃない。こんなによがってちゃ、清純も何もあったもんじゃないわね」
 「お、お前は……」
 耕三には、今、すべてが判った。
 この女は、一四年前に養女に出した真紀子の双子の妹だ……。養女に出す時、先方の身元に何やら薄暗いものを感じたが、あの時はそうするしかなかったのだ。お蔭で自分と妻と娘の真紀子の今の生活がある。……これが犠牲になったもう一人の娘の復讐なのか?
 「あたしはあんたを親父だともなんとも思ってない。だからあんたと何をしても平気だったのよ」
 由里子は自分の胸を持ち上げて、扇情的に耕三にからだを擦り寄せた。他の男の匂いが強烈に匂った。
 「あんたのセックスはヘタクソもいいとこだけどね。あんた、自分ではうまいとうぬぼれてたでしょ」
 自分のモノを受け入れて切なく甘い声を出していたのは、すべて復讐のための演技だったのか。おれはそれを真に受けてこの女の色香に迷ってしまったのだ。
 「あんたの女房も相当な欲求不満だね。そりゃそうだよ。あんたの粗チンじゃ満足できるわけないじゃん」
 「やめろ。それ以上言うな」
 ふふん、と由里子は鼻で笑った。
 「見てごらんよ。あんたの可愛い娘がもうすぐめちゃくちゃになるよ」
 目の前で醜い男に犯されている真紀子の全身からは、何とも言えない成熟した女の淫らで艶めかしい匂いが発散されていた。
 真紀子の目は完全に我を忘れ恍惚の境をさまよっていた。白い肌はピンク色に染まり、全身が、がくっがくっと揺れ続けている。
 田沼が大きくグラインドすると、真紀子の口から絶望的な、ああああ、という声が出た。そして身体が大きく弓なりに反り返った。
 「出せよ。お前のパパの目の前で思いっきりクソを垂れてイッてしまえ」
 桐生が言った。
 真紀子は焦点の合わない目で耕三を見た。
 「パパ……どうしてここに?」
 「真紀子……お前……」
 しかし真紀子はパパがここにいようがどうしようがもうどうでもよかった。全身を襲ってくる、どうしようもない波に押し流されようとしていたのだ。
 「あああああああ。もう、もうダメ。み、見ないで……出ちゃう……イッちゃうゥゥゥ」
 真紀子は全身を硬直させると、言葉にならない声を上げた。
 次の瞬間、ベッドの上にはおびただしい排泄物がとめどなく吐き出された。
 真紀子は身体を激しく痙攣させ続けた。続けざまに襲ってくる強烈な波に翻弄されていた。下半身を自分の汚物で汚すのもお構いなしに、彼女は腰をがくんがくんと振り続けた。止まらない。止められない。田沼の肉茎がかすかに動くだけで全身に電気が走り、頭の中で爆発した。
 「この味を一度知ったら、あとは淫乱の道をまっしぐらだぜ」
 田沼はそう言いながら、自分もここぞとばかりに激しく腰を使った。大きなモノが真紀子の奥に激しくぶつかるたびに、彼女の身体は大きく反り返り、歓喜の叫びが口をついて出る。これ以上大きな波はもう来ないと思っていたのに、更に大きな波が襲いかかり、真紀子は完全に溺れてしまった。
 身体がふわっと浮き上がった。
 真紀子はほとんど失神していた。


 気がつくと、真紀子は新しいシーツの上で寝ていた。桐生と由里子がその顔を覗き込んでいた。
 「……私、どうなってしまったの?」
 「聞きたいか? お前はクソと小便を垂れ流しながら、イキまくったんだ。もう終わったと思ったら、またイッて、なんべんイッたか判らねえよ」
 桐生は真紀子の乳房を擦った。余韻の残る身体には、それだけで激しい電気が走る。
 「ああ……もうやめて……」
 「こうなりゃ、いくとこまで行こうじゃねえか。おい、由里子。お前のオネエは、お前より淫乱かも知れねえぞ」
 由里子も、姉の激しいアクメを見てちょっと驚いていた。自分でもこんなにめちゃくちゃに乱れた事はない。どんなに凄いオルガを味わったのかと思うと、由里子は真紀子に嫉妬を感じた。
 桐生は真紀子の足を広げて、また濡れ始めた媚肉を舐めていた。
 「もっとやりてえんじゃねえのか? お前のここはそう言ってるぜ」
 真紀子はめろめろになっていた。身体は疲れ果てているのに、桐生の舌には敏感に反応して、また熱いものが奥から湧きあがるのを感じていた。
 耕三は、茫然としたままだ。
 自分が交わったのが真紀子ではなかったと知って安堵したのだが、汚れを知らないと思っていたその真紀子が、獣のような姿で男に足を絡め、両手で男を抱きしめて離さず、ワイセツ極まりなく腰を動かし、絶叫し、色情狂のように何度も何度も絶頂に達するとは……。
 失神したままの真紀子はシャワーで清められ、また寝かされたが、また果てしなく男を求めようとしている。
 「パパ。あんた、真紀子とやりたいんでしょ」
 由里子は耕三のモノを手でしごいていた。
 「やりたいからここにノコノコ来たんでしょ」
 「バカを言うな。私は、娘が心配で……」
 「よく言うよ……あたしだって、あんたの娘なんだからね。あんたは娘とオマンコしたことには変わりないんだ」
 言うな、と言いながら、耕三の陰茎は由里子の巧みな手さばきで屹立している。由里子は父の肉茎を口に含んだ。
 桐生は、真紀子の肉芽を責めていた。さっきのプレイではVとA感覚だけだったが、桐生はC感覚を引き出そうとしていた。
 また別の新たな感覚が真紀子を襲っていた。ああ、私はすっかり淫乱になってしまったわ……。
 「こっちはOKよ」
 由里子が耕三の下腹部から口を離して言った。
 「ど、どうするつもりだ」
 「判ってるくせに。あんたの悲願を達成させてあげようって言うのよ」
 桐生も真紀子の秘部から口を離した。そこはもうとろとろにとろけている。中からは蜜がとめどなく溢れている。女に限度はないというが、本当だと桐生は改めて思った。この姉妹はナミの女じゃない。
 「さ、ハメなよ」
 由里子は耕三の背中をどんと押した。
 「いや……」
 耕三は躊躇した。
 「馬鹿野郎。根性のねえヤツだ。おい、そこの椅子を取れ」
 じれったくなった桐生は、SMプレイ用のロープを取り出し、押さえつけるように座らせた耕三の胸と両足を、無理矢理椅子に縛りつけてしまった。
 「ど、どうするつもりだ!」
 「お前が遠慮してるから、おれたちがお膳立てしてやるのさ」
 次に桐生は、ぐったりとベッドに横たわる真紀子の身体を軽々と抱き上げた。
 片手を真紀子の腿にかけ、脚を大きく広げさせた。娘の薄い秘毛と、ピンクの陰唇が、耕三の目に曝された。
 椅子に縛られながらも依然として、耕三の逸物は屹立したままだ。
 「やめろ!」
 桐生が自分に何をさせようとしているかを悟った耕三は絶叫した。
 その声にハッと我にかえった真紀子にも、桐生のもくろみが判った。
 「いやあっ! それだけは……それだけはやめて」
 私をパパと交わらせようとしている……。
 父と娘が交わるという地獄からのがれるために、うちから逃げてきたのに。
 真紀子は桐生の腕の中で必死にもがいたが、ヤクザの力は強かった。開かせた脚の間にある娘の部分が、父親のそそり立った陰茎に、容赦なく近づけられてゆく。
 桐生に吸われてしとどに濡れたその部分が、真紀子の意志に反してひくひくと男を求めている。
 桐生が真紀子の股を大きく広げたまま耕三の上に跨らせたところで、由里子が耕三の聳り立った肉棒に手を添えて軽蔑を込めて言った。
 「これがあんたの望みだったんでしょ。可愛い真紀子と姦るのがさ」
 「やめろ。やめてくれ……」
 耕三の欲望は言葉とは裏腹なのは一目瞭然だった。
 耕三のいきり立ったモノが真紀子の花芯に触れた。桐生は真紀子の腰をぐい、と押すと、耕三の痛いほど屹立した肉棒は熱く濡れた蜜襞の中にずぶずぶと飲み込まれていった。
 ああ、とうとうこんな事まで……という絶望とは裏腹に、真紀子の媚肉は父親を迎え入れた瞬間、歓びに震えた。
 「あン……パパ……」
 父親のモノが入ってくる何とも言えない感触に、真紀子は思わず甘い声を上げた。
 「ま、真紀子……」
 父親の声も、感極まって蕩けそうだ。
 ああ、もうどうなってもいい。
 真紀子はゆらゆらと腰を使い始めた。肉芽に当たるように大きくグラインドさせるその動きはたまらなく卑猥だった。
 縦横無尽に振り回されて、耕三はかっと目を見開いた。
 あんなに愛らしかった娘が、淫売のように腰を使っている。だが、なんていいんだ……吸い付くようじゃないか……。
 「真紀子っ!」
 耕三は自分から腰を突き上げた。同時に目の前にある熟しかけの娘の乳房に激しく舌を這わし吸い始めた。
 真紀子はひっ、と呻くとまたしても波に飲まれていった。
 「すっかり淫乱女子高生って評判が広まってさ。安心しなよ。あんたはもう立派にプロとしてやっていけるよ。なんせあんたは自分の父親とも寝る淫乱女なんだから」
 由里子は嘲るように、姉と父親の営みを見ていた。もしかして、こんな可愛い顔して姉は自分より淫乱で感度が良くて味のいい持ち物で、凄い快感を味わってるんじゃないのか。セックスだけは自分のほうが上だと思っていたのに……。由里子は悔しかった。
 「血だな。育ちは違っても、持って生まれた血筋は争えないって事だ」
 桐生は、この淫乱な双子の美女が自分の手の中にある幸運を感じていた。
 真紀子も、自分の中に由里子と同じ淫蕩な血が流れている事を意識せざるをえなかった。だって、こんなにいいんだもの……由里子より淫乱になったらどうしよう……。でも、いい。こんなに気持ちいいんだもの……。




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   |                            |
   |         グリーンドア 文 庫         |
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   |    ・美姉妹 秘蜜交姦・              |
   |                著者 安達 瑤     |
   |   ――――――――――――――――――――――   |
   |                            |
   |  初 版 発 行   1995年 1月30日       |
   |  発 行 所   株式会社 勁文社          |
   |          住所 東京都中野区本町3-32-15    |
   |          電話 (03)3372-5021         |
   |                            |
   |  制 作 日   1998年 7月30日       |
   |  制 作 所   株式会社フジオンラインシステム   |
   |          住所 東京都豊島区東池袋3-11-9   |
   |                 ヨシフジビル6F   |
   |          電話 (03)3590-9460         |
   |                            |
   |     本書の無断複写・複製・転載を禁じます。    |
   |                            |
   |                ISBN4-7669-2141-0    |
   |                            |
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令嬢姉妹 完全飼育



       

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   ◆  §    《 グリーンドア 文 庫 》   §  ◆
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           ・∞・∞・∞・∞・∞・∞・
          §             §
          ・    目   次    ・
          §             §
           ・∞・∞・∞・∞・∞・∞・



      第一章 悪夢の完全レイプ・・・・・・・・・54行
      第二章 恥辱の店内教育・・・・・・・・・718行
      第三章 屈辱の学園レイプ・・・・・・・1371行
      第四章 地下牢の中の性奴・・・・・・・2013行
      第五章 アナル姦の美少女・・・・・・・2527行
      第六章 地獄の姉妹相姦・・・・・・・・3122行




∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・




第一章 悪夢の完全レイプ



 「あ、やめて。今日はしないって約束したじゃない……」
 青井恵美子は、セーターの上から乳房をまさぐる飯島浩一の手を押さえた。
 「後期試験のノートを見たいって言うから来たのに……」
 「いいだろ、そんなにもったいぶらなくてもさ。俺達はステディなんだから、
いつやってもいいじゃないか」
 浩一の手はセーターの下に潜り込み、ブラジャーを外しにかかった。
 学生街の外れにある浩一のワンルームマンション。男にしてはこぎれいにして
いるその部屋の、フローリングの床に置かれたベッドの上で、浩一は恵美子に覆
い被さっていた。
 恵美子と浩一は同じ大学の二年生。テニスのサークルで知り合って以来のつき
合いになる。高校時代からオクテだった恵美子は、浩一以外に男を知らない。成
績がよくて知性的な恵美子と、受験勉強一筋で真面目一方の色白でおとなしい浩
一のカップルはお似合いだと、仲間うちでは早くから公認の仲だ。
 が、そんな浩一のセックスは単調だった。おざなりのペッティングの後、恵美
子が濡れていようがいまいがお構いなしに挿入して来る。恵美子は、浩一に見せ
られるポルノビデオの中でよがり悶える女の反応が信じられなかった。自分たち
のセックスはちっとも良くないからだ。
 浩一の手は執拗に恵美子の乳房を揉みしだいていた。彼女のセーターはすでに
首までたくし上げられている。
 「でも、君のこれは硬くなってつんと立ってるよ」
 浩一は乳首をぎこちなく舐め回しながら言った。
 「あ、だめ……ダメだったら。それ以上はよして」
 乳首は恵美子の性感帯だった。浩一がそれを知って乳首だけは愛撫するから、
恵美子は彼とのセックスに何とか耐えられるのだ。
 浩一の舌は恵美子の左の乳首をころころと転がすように這い回り、指では右の
乳首をくりくりと摘まみ上げていた。
 「ああ、浩一君。卑怯よ。私の弱い所をそうやって……」
 恵美子がもがくとストレートなロングヘアが、さらさらと顔にかかった。
 浩一は無言で、行為に没頭していた。恵美子は愛の言葉を囁かれながらして欲
しいのに、浩一はいつも無言で放出するばかりなのだ。
 彼は恵美子の手を取ってズボンの上から大きく張り裂けそうになっている自分
のモノに触れさせた。
 「いいだろ、な」
 浩一が喋るのはいつもこういう時だけだ。
 浩一の手は強引に恵美子の白いミニスカートの中に滑り込んだ。
 「いや……お願いだからやめて」
 「いいだろ。頼むよ」
 そう言いながら浩一の指はパンティの脇から中に入り、恵美子の熱くなった秘
部にタッチした。恥毛が指で擦れるじょりじょりという淫らな音が聞こえた。
 恵美子の恥毛は清楚な外見に似合わず濃かったから、明るい部屋で下半身を見
られるのが嫌いだった。濃い陰毛は、それ自体が別の生き物のように彼女の下半
身にへばりついているように感じるからだ。
 恵美子は部屋を暗くして欲しかったが、そう言うと自分がセックスを求めてい
るようになってしまう。ここまでくれば許してしまおうか、とも思うけれど、今
日はどうしてもその気になれないのだ。
 浩一の指は恵美子の恥毛に絡みつきながら奥へ奥へと分け入って、花芯に行き
着いた。
 恵美子のそこは、まだあまり濡れていなかった。
 「いいだろ。ここでオアズケ食ったら、勉強なんか出来るものか」
 浩一の指はごりごりと彼女の花芯を押し潰した。そこは敏感なところだけに乱
暴に扱われては痛いだけだということを浩一は全く判っていない。
 今までの快感をぶち壊された気がして、恵美子は急に嫌気がさしてしまった。
 「やめて!」
 恵美子は浩一の手を跳ねのけると、ベッドから立ち上がった。
 「いつもこんなふうになしくずしにしてしまうの、嫌なのよ。君は私を愛して
るの? ただセックスしたいだけなんじゃないの?」
 「僕は君が好きだよ。愛してるに決まってるじゃないか。だから君と」
 恵美子はブラをつけ直し、セーターの乱れを直すと、当惑する浩一を尻目に、
散乱したノートを集めだした。
 「私、ケジメのつかない人は嫌いなの」
 恵美子は火照りだした身体を冷ますかのように、窓を大きく開けて深呼吸した。
 「帰るわ。私のノートのコピーは置いて行く。英文学史の河野先生は厳しいか
ら、全部読んでおかないとだめよ」
 恵美子はノートをバッグに詰め込むと、引き止めようと腰を浮かした浩一を尻
目に、さっさと靴を履き、ドアを開けた。
 そのとき、ドアの外から慌てて離れる人影が見えた。
 恵美子が急にドアを開けたので、その人物は彼女に見つかってしまった。それ
は恵美子のサークルの先輩の佐野達彦だった。
 日に焼けて筋肉質、見るからにマッチョの雰囲気を漂わせた達彦は、悪びれた
にやにや笑いをして恵美子の前に立ちふさがった。達彦は恵美子の嫌悪の対象だ
った。
 「あれ? もう帰るの。お楽しみだったんじゃないのかな?」
 恵美子は無視して立ち去ろうとした。
 「いやね、飯島に逢おうと思って来てみたらさ、君がいたんで遠慮してたのさ」
 「なに言ってるんですか。私は飯島君と後期試験の勉強を……」
 達彦は、廊下に面した台所の窓を指差した。その窓はロックが外れていて、す
こし開いていた。
 「最初から開いてたんだ。悪いと思ったけど、鑑賞させてもらったぜ」
 恵美子がその窓から中を覗くと、ベッドに座り込んだ浩一の姿が丸見えだった。
 「青井。お前、胸が感じるんだな。思ったより小さいんで、新鮮だったぜ」
 「覗きをしてたのね!」
 「見えちまったんだよ。男なら誰でも、ああいう光景には見惚れるってもんだ」
 達彦は、恵美子に後ろから抱きついた。
 「どうだ。これから俺と楽しまないか。俺は飯島みたいな粗末なモノじゃない
ぜ。え? お前だってこのまま帰るのがもったいないんじゃないか?」
 達彦は両手を前に伸ばすと、恵美子の乳房をむんずと掴んだ。
 「いい声出してたじゃないか。ここがお前のウィークポイントだったのか」
 達彦の指は、邪悪だが甘美なほとばしりを汲み出すかのように彼女の胸をうね
うねと弄った。
 「いや。止めて……やめてください」
 誰に見られるか判らない。そんな異常な状態が恵美子に作用したのか、彼女の
胸に電気が走り、乳首がこりこりと硬くなって立ってくるのが判った。
 達彦は舌を彼女の首筋に這わせた。
 「どう? 下に車があるんだ……ステキなホテルに案内するぜ」
 達彦の息が耳にかかってこそばゆい。電車の中で痴漢にされる時は不快なだけ
なのに、今はなぜかどんどん甘美になっていく。
 その疼くような感覚は身体の奥を走って足の間の一番敏感なところにじんじん
と押し寄せた。
 浩一の愛撫ではまったく感じなかったその部分が、どうしたことなのだろう、
今はひとりでにきゅっと締まり痛いほどだ。
 達彦の抗し難い魔力に魅入られたように、恵美子の腰がうずきに耐えかねて思
わず動くと、肉襞のあいだから蜜が滲み出てパンティを濡らすのがわかった。(
どうして? どうしてこんなに感じてしまうの? こんなこと、あってはならな
い事なのに……)
 「やめてください! 声を出しますよ!」
 達彦は恵美子の口を塞ぐようにディープキスをしてきた。達彦の舌は恵美子の
唇を押し開けてぬめぬめと中に入って来た。
 声を出せば達彦の舌が中に入って来る。しかし、声を出さなければもっとひど
い事になってしまう。
 が、達彦に唇を吸われ舌を絡ませられると、頭の芯がぼうっとなって来た。
 いけない。これではいけない。
 恵美子は達彦の手を振りほどき、逃れようとしたが、達彦の力は強く、恵美子
を放そうとしなかった。それどころか、達彦の手は恵美子のミニスカートをたく
し上げようとしていた。
 「やめてください! こんな場所で、どういう気なんですか!」
 恵美子はこの声を聞いて浩一が助けに来てくれないものかと願ったが、部屋の
中の浩一は、のろのろとオナニーをするところだった。
 「おっと、こんなところで悪かったな」
 達彦は恵美子を後ろから抱きすくめたまま、非常階段の陰にずるずると引き擦
っていった。
 「ここならどうだ。そうそう人には見られねえぜ」
 「浩一君!」
 「浩一君はそれどころじゃねえとさ。ふん。あいつはまったく、だらしねえ野
郎だぜ。あんな奴のふにゃけたナニより、俺のほうがいいぜ。固いし、デカイ。
試してみろよ」
 揉み合いながら、達彦の手はしっかりパンティの上から彼女の秘部に触れてい
た。
 「なんだなんだ? 濡れてるじゃないか。お前のパンティに蜜が染み込んでる
ぜ」
 達彦は慣れた手つきでパンティの中に手を滑り込ませた。
 ああッ、と恵美子は思わず声を出してしまった。こともあろうに達彦の指がじ
かに恵美子の一番敏感な部分に触れたからだ。その上彼の右手は執拗に胸を強く
揉みしだき続けている。
 恵美子は息をもらした。この微妙なタッチは浩一には出来ないものだったから
だ。
 達彦の指は彼女の陰唇の周りをじらすかのように微かなタッチで触れるかと思
えば、肉芽をいきなり摘まんだりした。その緩急自在さが恵美子にはショックだ
った。(ああ、この男の指は、私を翻弄している)
 頭の中が真っ白になって来た。こんな快感を得たことは未だかつてなかったこ
とだ。
 「身体は正直に反応してるぜ。頭は模範的な優等生でも、こっちはそうじゃな
いらしいな」
 「い、いや……お願いだからやめて」
 「でも、身体は感じてるぜ。そうだろ?」
 恵美子は唇を噛んで、必死で耐えようとした。ここで感じていると認めてしま
っては、私は淫乱のように思われてしまう。愛情も感じない男にこんなことをさ
れて、自分の身体がこれほど反応してしまう事が恵美子自身、信じられなかった。
 達彦は、そんな恵美子の表情を横目で見ると、くくくと笑いながらいっそう恵
美子の花芯を苛んだ。
 彼女の花びらを摘まんで引っ張ったり、ヴァギナの入り口を徘徊していた指は、
ぐっと奥まで入って来た。
 「くぅーっ。ああ、そこはダメ……許して……」
 達彦の指は、恵美子の中を自在に暴れまくった。子宮の入り口を指先でつつか
れると、恵美子はもはや自分を制御出来なくなった。
 「だ、だめ……それ以上は、いや……」
 「すごいぜ、お前。湧き出た蜜でべとべとだぜ」
 達彦はにやにや笑いながら、自分の指についた彼女の愛液を恵美子に舐めさせ
た。
 「これがお前の愛の蜜だ。おいしいだろ」
 されるがままに、恵美子は達彦の指についた自分の愛の蜜を舐めた。
 「へっ。お前、相当好きなんだな。目を見りゃ判るぜ」
 「お願い……もうやめて……」
 達彦は中指を恵美子の身体の奥深くに差し込んで、中を探った。
 柔らかい襞の中に一か所だけざらざらした部分がある。そこを押してみると、
まるでスイッチが入ったように恵美子の息遣いがひときわ激しくなり、腰がびく
んと突き出された。
 恵美子の呼吸が一瞬とまった。
 生まれてはじめて味わう快感だった。腰から下の力がすぅーっと抜けて行くよ
うな、背筋に電気が走るような、からだ中が宙に浮くような、ものすごい快感が
一度に恵美子を襲った。(ああ……私、どうにかなってしまいそう……)
 達彦は恵美子のGスポットを集中的に攻めた。こうなりゃこの女は俺のものだ。
俺のセックスでこいつを完全に屈伏させてやる。
 「俺もいろんな女とヤったけど、お前が一番感度がいいぜ」
 達彦は、空いている手で恵美子のセーターをたくし上げると、乱暴にブラのホ
ックを外した。乳首が勃起した可愛い乳房がぷるんとまろび出てきた。
 達彦は、わざとじゅるじゅると下品な音を立てて乳首を吸った。一方の手はな
おも彼女の花芯への攻撃を続けている。
 達彦が彼女の乳首を軽く噛むたびに、恵美子の身体は電気が走るように、びく
んびくんと反り返った。
 恵美子はパニックになっていた。(……私の身体はどうなってしまうの? こ
んな男にこんなことをされて、どうしてこんなに感じてしまうの? 私は、誰に
でも感じる淫乱だったの? )
 味わったことのない快感を想像することは出来ない。恵美子は、今自分がどこ
で、誰に、何をされているのかよく判らなくなっていた。
 「いい……イッてしまいそう……」
 「イけよ。イくんだ」
 その時、誰かが非常階段を降りて来る音がした。
 達彦は、チッと舌を鳴らすと恵美子から手を放した。夢心地だった恵美子も、
一気に現実に引き戻されて、慌ててセーターを下ろし、廊下を駆け出した。(…
…どうして男はみんなこうなのだろう。どうして男はみんな私の身体ばかりを目
当てにするのだろう。私は特別にセクシーでもなんでもないのに)
 エレベーターの踊り場でパンティを穿き直し、ブラをつけ直しながら恵美子は
思った。
 プレーンな白のパンティが僅かにずり下げられただけで、恵美子の人より濃い
ヘアははみ出してしまう。
 達彦に掻き乱され、ぐっしょりと濡れたヘアがひどく淫らに感じられた。
 恵美子はパンティを引き上げて、ヘアをきちんと隠そうと苦心しながら顔が赤
らんだ。
 足音の主は知り合いらしく、さっきの場所でなにやら話をしている。
 それが恵美子にとっては救いの神だったのか邪魔者だったのかよく判らなかっ
た。
 あの足音の主は、私の声を聞いていたのではないだろうか。声だけじゃない。
私の恥ずかしい姿も見られたのではないだろうか。あんなところであんなことを
していたら、きっと私の事を変態か淫乱な女だと思う事だろう。そんな誤解は死
んでも受けたくはない。
 恵美子はその一心で小走りに通りに出た。


 達彦に触られて、からだ中が敏感になっているのを自分でも感じた恵美子は、
電車で帰宅するのを諦め、タクシーに乗った。ぬるぬると濡れたパンティを穿い
たまま歩く事は我慢出来ないと感じたのだ。(このまま歩くと、そのままイッて
しまいそう……)
 恵美子は浩一とのセックスでオーガズムを感じた事はなかった。しかし、達彦
のペッティングがあと数分続いていれば、オーガズムに至っていたかもしれない。
(あんな男に触られただけで、どうして? どうしてこうなるの? )
 恵美子は女をセックスの対象のようにしか扱わない達彦を嫌悪していた。後輩
の女子学生と何人も並行して付き合い、妊娠させても平気でほったらかしだと言
う噂だった。だから、潔癖な恵美子はサークルで達彦に会っても、挨拶すらしな
かった。
 そんな達彦にむりやり犯されかけたのに、今はからだ中がとろんとしているの
はどういう訳なのだろう?


 恵美子の家は、郊外の高級住宅街と呼ばれる街にあった。彼女の父親は外交官
で、母親と共に南米の某国に大使として赴任していた。現地は治安が悪いし、大
学にも入ったので恵美子は高校生の妹の彩香と共に東京に残ったのだった。
 「お帰りなさい。ね、今夜は外でお夕飯食べない? 近所に新しいレストラン
が出来たの」
 玄関に出てきた彩香はきゃしゃで小柄で、十七才の女子高生なのに中学生に見
られるほど頼りなげだった。肩まで伸びたきれいなストレートヘアが、見るから
にお嬢様らしい可愛いらしさをいっそう引き立てていた。
 「それともお姉さん、何か作ってくれる?」
 甘えたように小首を傾げる彩香を無視して、恵美子は自分の部屋に入り、ドア
をロックすると堪り兼ねたように服を脱ぎ捨てパンティ一枚になるとベッドに潜
り込んだ。身体の芯が疼いてどうしようもなかった。
 彼女のパンティの大切な部分は染み出た愛液が乾いてごわごわになっているが、
その中心は新たに染み出て来る愛液で濡れていた。
 その上から亀裂に沿って指を滑らせて行くだけで、彼女の大事な部分はかっと
熱くなった。中途半端なままに放置された恵美子の身体に火がついた。
 乳首に自然と指がいく。硬くなったそれを指先で弄ぶと、達彦から受けた感触
を思い出して出すまいとしても声が出てしまう。(一人でしていて、こんなこと
は初めて……)
 秘部を触っていた手はパンティの中に入った。茂みを掻き分けてぷっくりと膨
らんだ肉芽に触れると、媚肉がきゅんと締まるのを感じた。浩一との時は感じな
かった欲望がふつふつと沸き上がって来た。
 欲しい。男の人のアレがとても欲しい。熱くて大きな物をここに入れて欲しい。
中を思い切り掻き回して欲しい。
 恵美子の指は肉芽を触りつつ下の唇にも触れた。痺れるような電気が背筋を這
い上がった。
 いつしか恵美子は、さっきの非常階段で達彦に犯される場面を頭に思い浮かべ
ていた。彼の太い野獣のようなモノが乱暴に彼女の秘部に分け入って来る。それ
が彼女の柔らかな襞に擦れて痺れるようだ。
 「あ。感じる……いい。すっごくいい……」
 恵美子の腰は、知らず知らずのうちに卑猥な生き物のようにグラインドしてい
た。
 頭の中の達彦は巧みに腰を使い、カリの張ったその先端は彼女の敏感な部分を
擦りあげた。(ああ、そこ、そこがイイ。とろけてしまいそう……)(うう。そ
ろそろいくぜ。いいだろ)
 達彦は猛烈なピストン運動を開始して、恵美子の奥深くに熱いものをぶちまけ
た。
 その瞬間、ベッドの上の恵美子にも大きな波が押し寄せてどこかに連れ去られ
た。空中にぽんと投げ出されたふわーっとした感覚が全身を襲った。


 全身を汗びっしょりにして、恵美子は眠りに落ちていた。あまりの快感でその
まま寝てしまったのだ。
 ドアがノックされていた。
 「お姉さん。電話。寝てるんでしょう早く起きて。外務省からだって」
 恵美子は飛び起きて、ベッドの脇の電話の子機を取った。
 「外務省の足立です。どうしても必要な書類がありまして、現地のお父様に連
絡したところ、御自宅にあるそうなのですが」
 父がそんな大切な書類を家に置いたままというのは意外だったが、ない事では
ない。
 「明日でよろしかったら、お持ちしましょうか?」
 「いえいえ。こちらからお伺いします。午前中は御在宅ですか?」
 今日の事があるから浩一にも達彦にも顔をあわせたくない。大学は休む事にし
て、恵美子は必ず家にいます、と約束して電話を切った。


 翌日。恵美子は、フォーマルな白のブラウスと濃紺のタイトスカートを着て来
客を待っていた。こういう清楚なスタイルが恵美子の知的な顔立ちにはよく似合
う。
 約束の午前十時にドアチャイムが鳴った。
 玄関前には、黒のスーツに身を固めた真面目そうな男が二人、アタッシェケー
スを持って立っていた。
 「御面倒をおかけします。お父様の書斎に通して戴ければ、私達で探しますの
で」
 足立と名乗る先輩格の男は恵美子に丁寧な口調で話しだした。メタルフレーム
のメガネに七・三にきちんと分けたヘアスタイル。正調ブリティッシュ・スタイ
ルのスーツ姿の足立と、その同僚の栗橋は、どこから見てもエリート外務官僚だ
った。
 恵美子は二人を二階の書斎に案内した。
 が、男達は本の詰まった書棚も書類の詰まったロッカーも見ようとせず、恵美
子をじっと見つめるばかりだった。
 「……今お茶でもお入れしますから」
 「いえ、それには及びませんよ。私達が欲しいのはお茶ではなくて……」
 今まで温厚そうだった足立の目が、突然狂暴に光ると、彼は恵美子の両肩を乱
暴に突いて、仰向けに押し倒した。
 「お前の身体なんだよ!」
 どう見ても父の部下にしか見えない男が、強姦魔だなんて! 恵美子には信じ
られなかったが、現実に足立は自分に襲いかかっている。
 足立は恵美子にのしかかろうとしていた。栗橋は、足立に協力して恵美子の足
を押さえ込んでしまった。
 恵美子は必死で抗った。
 「何をするんです! 外務省というのは嘘なのね!」
 「俺達は強姦調査庁の調査員さ。お前の身体の具合を調べに来たんだ。有り難
く思え」
 今や化けの皮を剥いだ足立は、元来のものらしいぞんざいな口調で言い捨てた。
 足立はシャツをはだけた。
 恵美子の目に飛び込んで来たのは、肩から背中にかけて彫られた毒々しい刺青
と、生々しい傷跡だった。
 足立は慣れた手つきで恵美子のスカートを脱がしにかかった。
 身動きできない恵美子の細い腰から、ぴっちりしたタイトスカートが、あっと
いう間に剥ぎとられた。
 「俺達はプロだからな。諦めな」
 目が座っている栗橋は、スカートの下のスリップを思い切り引き裂いた。
 この男達の目的がはっきり判った。
 恵美子はなんとか逃れようと必死で暴れたが、馬乗りになっている足立を退か
す事は出来なかった。それどころか、栗橋は恵美子の黒のパンティストッキング
にまで手をかけた。
 「止めないと警察を呼びます!」
 「呼んでみろよ。電話まで歩いていけるのかよ」
 びりびりと音がして、パンストが引き裂かれた。黒のストッキングの間から、
恵美子の白い足がむき出しになった。
 「へへへ。白くていい足してんじゃないかよ」
 今にもよだれを垂らしそうな顔で栗橋が恵美子の足を撫で回した。
 「いや! やめて!」
 恵美子が必死になって振りほどいた足が、栗橋の顔に命中した。
 うーん、と呻いて栗橋は後ろに倒れこんだ。足立がそれに気を取られた隙をつ
いて、恵美子は渾身の力を振り絞って足立を振り落とした。
 恵美子は四つんばいになって這って逃げようとした。
 後ろから追いすがる足立は、お尻を突き出した格好の恵美子の恵美子のパンテ
ィに手をかけた。
 パンティがずり下がり、真っ白なヒップが、するりとむき出しになってしまっ
た。
 恵美子はなおも逃げようとした。
 足立はパンティの小さな布を離さなかった。
 びりびりと音を立てて、恵美子のパンティが引き裂かれた。
 しかし、パンティが破かれたことによって、恵美子は自由になった。
 下半身をむき出しにしたままで、恵美子は階段を這うように降りた。
 男達の魔の手から逃れるために、恵美子は足に絡みつくパンティの切れっ端に
足を取られながら、とにかく走った。今はとにかく逃げなければ。
 廊下に走り出た恵美子は振り向きざまに、足立と栗橋が恐ろしい形相で追って
来るのが目に入った。
 勝手知ったる自分の家で、恵美子は廊下から応接間に入り、続き部屋のドアを
開け、そこからもう一度廊下に出た。
 足立たちは今、応接間に入るところだ。
 恵美子は出し抜いたつもりで廊下を足音を忍ばせて玄関に向かった。
 しかし足立たちはすぐに部屋のからくりを見抜いて廊下に出てきた。
 玄関に辿り着くにはまだ数メートルあった。それでは足立たちに捕まってしま
う。
 恵美子はリビングに飛び込んだ。この部屋からは庭に出る事が出来るのだ。
 リビングの大きな窓を開けて裸足のまま庭に駆け降りた。
 芝生を張った広い庭には、午前の太陽がさんさんと降り注いでいた。
 隣家に助けを求めようと声を出そうとした恵美子はふと自分の下半身がむき出
しのままなのに気がついてパニックになった。哀れな事に引き裂かれたパンティ
が足に絡みつき、茂った陰部が太陽の光りに当たって、より黒々として見えた。
 ああっ、と恵美子は思わずしゃがみこんでしまった。このままでは誰にも声を
かけられない。今自分は暴力で犯されかけている事を宣伝するようなものではな
いか。しかしこのままでは私は本当に犯されてしまう。
 この一瞬の躊躇がいけなかった。
 「おやおや。走り疲れてお庭でお休みかい」
 にやにやしながら足立が庭に降りて来た。
 「来ないで!」
 そんな言葉にお構いなしに足立と栗橋はどんどん近づいて来た。
 「昼間っからアオカンもいいかもしれんな」
 考えてみれば恵美子の屋敷の塀は高くて外から中の様子を伺い知ることは出来
ない。
 足立は恵美子の胸倉を掴むと一気にブラウスを引き裂いた。
 栗橋は恵美子の太股にむしゃぶりついて、濃い茂みにいきなり舌を這わした。
 「あ!」
 虚をつかれた恵美子は、そのまま足をすくわれて芝生に倒された。
 またも馬乗りになった足立は、恵美子の純白のブラを剥ぎ取った。
 陽光のもとで、恵美子の乳房はよけいに白く、乳首はよけいに美しいピンク色
に見えた。
 「こんな上品な庭で、こんな風にやられるってのも、なんだかシュールだとは
思わないか」
 朝露に濡れた芝が、恵美子のお尻や内腿の敏感なところをちくちく刺すように
当たる。
 足立は勝ち誇ったような表情で恵美子に言い放った。
 「どうせなら、ここで検査をしてしまおうぜ。部屋の中よりよく見える」
 足立は栗橋に声をかけた。
 栗橋は頷いて恵美子の固く閉じた両膝をこじ開けようとしたが、彼女は必死の
形相で足を閉じ続けていた。恵美子の、最後の抵抗はこれしかなかった。
 が、男達は顔を見合わせてせせら笑うと、栗橋が彼女の身体を俯せにして尻を
突き出させた格好で抱きかかえた。母親が子供の尻を打つ態勢だ。
 「言うことをきけよ、こら」
 栗橋は恵美子の白くてキュンと上付きの形の良いヒップを、思い切り数発続け
ざまに叩いた。生まれてこのかた親にも手を挙げられた事のない恵美子にとって、
このような無残な形で暴力を振るわれるというのは大きなショックだった。
 足立は、ズボンのベルトを引き抜くと、赤く手形の付いた恵美子の臀部に振り
降ろした。
 肉を割くようなビシッという音が響いた。ベルトはヒップだけではなく彼女の
背中や太股にも襲いかかった。
 恵美子は余りの痛みで声を上げる事も出来なかった。
 「言うことを聞くなら止めてやる」
 恵美子は目に涙をいっぱい溜めて頷いた。栗橋の手が太股に延び、大きく開い
ていくのに為すがままになるしかなかった。
 「改めて見ると、顔に似合わず毛深いな。マン毛が下品に密生してるぜ」
 「どれどれ」
 二人は恵美子の下半身を覗きこんだ。彼女にとって恥ずかしさに歪んだ顔を見
られないのがせめてもの救いだった。
 栗橋は、力ずくで恵美子の両足を押し広げ、おおっ、と声を上げた。
 彼女の秘裂は、きれいなピンク色をしていた。指をあてがって広げていくと、
その花弁には色素が沈着していなく、しゃぶりつきたいほど淡くてきれいな色を
していた。処女ではないにしても、男をあまり知らないウブな女の持ち物だった。
 栗橋は自分の唾液で湿らせた指を、恵美子の局部に挿入して来た。
 「ジャングルに隠れてたから、なかなか見つからなかったぜ」
 栗橋はわざと彼女の一番敏感なところを乱暴に摘まんだ。
 「小ぶりだけど、感度のよさそうなオマメちゃんだ」
 「見ただけで判るのかよ」
 「俺は女体鑑定のプロだぜ。このヒダヒダも」
 栗橋は恵美子の花弁を指で挟んで撫で上げた。
 「なかなか高感度だと思うよ」
 栗橋は、指だけでは満足できず、股間に顔を埋めて舌を這わしてきた。チュバ
チュバと下品に音を立てて花弁を吸い、押し広げられた唇を舌先で執拗に舐め上
げた。
 恵美子は声が出そうになるのを必死で堪えていた。暴力で辱められているのだ
から、もちろん快感などはない。しかし、栗橋の指が微妙なタッチで彼女の敏感
なところに触れるたびに身体に電気が走りそうになった。
 「じゃあ、こっちのオマメさんも感度はいいはずだな」
 足立は恵美子の顔の方に向き直ると、乳首をころころと弄びはじめた。それは
見る間に硬くなり、男を獣欲に誘っているように見えた。
 栗橋は恵美子のもっと奥深くまで指を入れて来た。花芯の中を指が徘徊するさ
まを感じて、恵美子の目にはあまりの情けなさと惨めさで涙が滲んだ。
 栗橋は、その内部の感触を堪能していた。熱い淫襞が指に吸いついて来るのだ。
 堪らなくなった栗橋は、恵美子の中に入れている指をぐりぐりと動かした。
 「やめて……勘弁してください」
 「勘弁なんか出来ねえよ」
 足立は恵美子の乳首に爪を立てた。思わずああっと叫んだ彼女の頬に平手が飛
んだ。
 「なんて声を出しやがるんだ! テメエはおまんこ剥き出しにしてるの、判っ
てるのか!」
 なんとか言え、と足立は恵美子の乳房を鷲掴みにすると、思い切り絞りあげた。
小ぶりだが形の良い彼女の乳房が男の手のなかで変形した。恵美子は唇を噛んで、
必死に痛みに耐えている。
 栗橋も恵美子の肉芽を指で挟むとぐいっと引っ張った。
 「痛い! ちぎれてしまいます……」
 その言葉を聞いた栗橋は、足立が手にしていたベルトを拾い上げると、恵美子
の乳房に巻き付け、思い切り締め上げた。
 恵美子の乳房は絞り上げられて異様に膨らみ、パンパンになった。
 「針でも刺せばミルクが飛び出して来そうだぜ」
 と足立が感心したように言うと、栗橋が応じた。
 「刺してみるか?」
 いつも持ち歩いているのか、栗橋は財布の中からマチ針を取り出すと、ゴムマ
リのように膨らんだ恵美子の乳房にぷつ、と突き刺した。
 おもしれえ、と足立はもう片方の乳房を摘みあげ、その乳首に針を貫通させた。
 そのあまりの痛みに、恵美子は声を上げた。
 「けたたましいスケだ。まだ痛い目にあいたいのか?」
 足立は恵美子に往復ビンタをくれてやった。彼女の形の良い鼻孔からつつっと
血がこぼれ涙に濡れた頬をつたった。
 「ふん。ヴァージンじゃねえから下から血は出ねえってか……黙らねえともっ
と刺すぞ」
 「ああ……声は、声は出しませんから……針は抜いてください」
 栗橋は、ふんと鼻を鳴らして二本のマチ針を恵美子の胸から抜いてやった。
 涙と血に汚れた顔で震えている恵美子を見ているうちに、足立の中にサディス
ティックな欲望がむくむくと膨らんで来た。
 彼は恵美子の白い裸身から離れ、下着とズボンを膝まで下げると、早くも腹に
つくほど勃起して反り返った怒張をむき出しにした。無残に押しひろげられた恵
美子の両足の間に膝をついた足立は十分に潤っていない恵美子の秘裂にその巨大
なモノを押し付けてきた。(犯される! )
 恵美子は残った力を振り絞って男のおぞましい肉棒から逃れようとしたが、足
立の凄まじい平手打ちが彼女の頬に何度も炸烈した。
 「兄貴。もう入れちまうのかい? お楽しみはこれからじゃねえか」
 ちょっと待ってて、と栗橋は家に上がり込むと、何かを探し出して戻ってきた。
 この男が手にしているのは茄子だった。
 栗橋はにやにや笑いながら恵美子の股間にしゃがみこむと、その茄子を彼女の
秘部に擦り付け始めた。秘裂に沿って降ろしていき、茄子の先端で肉芽をこねた。
 恵美子はそのおぞましい感触に肩を震わせた。が、それは男達に感じていると
誤解されてしまった。
 肉芽をさんざん弄ぶと、栗橋は茄子を陰門に捩じ込み始めた。それは浩一のも
のより数倍太い。こんなものが入るとは思えない。
 「や、やめて……裂けてしまう……」
 敏感な入り口をこねられて、恵美子の身体には電気が走っていた。快感には程
遠いおぞましいものなのに、その力には抗しきれない何かがあった。
 彼女の秘部に茄子がすっぽりと収まった。その半分は黒光りして外に露出して
いる。
 「傑作な眺めだぜ。まるで太いチンポが生えたみたいだ、自分で見てみろよ」
 興奮して茄子をぐりぐりと動かし始めた栗橋は、恵美子の髪を掴んで上体を起
こし、無理やり股間に顔を近づけさせた。太い茄子が恥ずかしい部分を出入りす
るたびに花弁がつられて口をすぼめたり開いたりと蠢いている。自分の身体が自
分の意志を裏切って猥褻極まりないものになってしまったような感じだった。
 「お願いです……こんな、こんな事は止めてください……」
 「止めてもいいぜ。その茄子を指を使わずに抜いてみな」
 そんな事、出来るはずがない。
 「クソをする要領で気張ればいいんだ。ストリッパーはそうやってバナナを吐
き出すぜ」
 屈辱から逃れたい一心で、恵美子は中に力を入れてみた。秘所を締め付けると
いうワザだが、まだセックスの味もよく知らない彼女に出来る事ではなかった。
 顔を赤くして力を込めている恵美子を見ていて堪らなくなったのか、足立が茄
子に手をやった。ずぼりという音がして大きな茄子が乱暴に抜かれた。
 その隙を突いて、足立の肉棒がずぶり、と押し込まれた。
 「ううっ! い、痛い……」
 「せっかくの御馳走だ。ちゃんと味見しな」
 足立は力任せにぐんぐんとイチモツを中に沈めていった。
 「判るか? どんどん入っていくぜ」
 「ひぃぃぃ……ああ……」
 力で征服された恵美子は、もう何も考えられなくなっていた。(許して……浩
一君……)
 足立の持ち物には、幾つもの真珠が埋めこまれていた。これは足立の自慢の秘
密兵器だった。俺のモノでよがらなかった女はいない、というのが彼の自慢だっ
た。
 潤っていない恵美子の柔肉は、その巨大なモノに擦り上げられて悲鳴を上げた。
 「まるで処女とやってる感じだぜ。ひりひりする」
 明るい太陽が照り、空ではヒバリのさえずりが聞こえる平和そのものの庭で、
恵美子は暴力で犯されていた。足立の腰はぐいぐいと恵美子を攻め立てていた。
悪夢そのものの光景である。
 こんな悪夢は早く終わって欲しい。それだけだった。
 「ふ。見ろ。こいつ、濡れて来たぜ」
 デリケートな場所を保護するために、粘液は興奮とは関係なく沸き出してくる。
が、足立の肉棒にとっては、恵美子の奥の襞が潤うにつれて、その媚肉はむっち
りと足立の肉棒を包みこみ、ひくひくと締めくるように感じた。
 「感じてるな? お前。感じてるんだろう。上品ぶっても判るんだ」
 恵美子が何も答えないと、足立は腰を大きく動かして彼女の中で暴れた。
 「あうっ! そ、そんなに動かないで……お、お願い」
 堪らなくなった恵美子の腰は、足立の刺激のリズムにあわせて自然にゆらゆら
と揺れはじめた。痛みを少しでも防ぐためだった。
 恵美子は恐怖と屈辱で頭が次第にぼんやりしていった。
 恵美子はもはや喋る事も出来ず、男達のなすがままにされていた。もう抵抗す
る事は出来ない。抵抗しようにも身体がぐったりして言う事をきかない。
 栗橋の手が密着した二人の下腹部の間に割り込んで来て、恵美子の肉芽に触れ
た。(ああ、なんてことなの! )
 恵美子の身体に凄まじい電気が走った。その電気は脊髄を走り抜けて頭の中で
炸裂した。
 「いいいい、いや! 触らないで!」
 恵美子は、思わず声を上げた。
 「いいのか。そんなにいいのか。この淫乱女め」
 都合よく解釈している足立は、思い切り恵美子の奥を突いた。亀頭が恵美子の
子宮の入り口を突き上げると、彼女は思わず裸体を反り返らせた。
 足立は乱暴に乳首を押し潰したり引っ張ったりした。
 「どうだ。お前、どこが一番感じてるんだ」
 「ああ、言えません……そんなこと……」
 「言えないって事は知ってるんだな。じゃあ言ってみろ。十四十五のガキじゃ
あるまいし、言えねえのか!」
 足立は猛烈なグラインドをかけて来た。足立の反り返った肉茎は、恵美子のG
スポットを強烈に刺激しつつ子宮の入り口をぐりぐりと擦りあげている。
 「あまりの快感で言葉が思い出せないんじゃないの」
 栗橋は下卑た笑いを浮かべて言った。
 目も眩むような屈辱に、恵美子は声すら出せなかった。
 「そうか。それなら」
 足立は恵美子の花芯から勢いよく一物を引き抜いた。
 「処女じゃねえんだから、日頃のお勉強の成果を見せてもらおう。恵美子。俺
のコレが入っていたところはどこだ。言わないと、ひどいぞ」
 「乱暴は……乱暴な事はもう止めて……お願い……」
 足立は、恵美子の指をとって意地悪く秘所に導き、ぐっしょりと濡れた入り口


にあてがって激しく動かした。自分の指が秘所にすべりこむだけでも、恵美子の
背中には強烈な電気が走るのだった。
 男二人の目の前でオナニーをさせられる恥ずかしさと、どうしようもない屈辱
に恵美子は消え入りそうだった。
 「言え! そうすりゃ優しくやってやる。ここはどこだ」
 「……お、おまん……こ」
 育ちのいい恵美子には死ぬほど恥ずかしい言葉である。
 「何だ? もっとはっきり言え、と言いたいが、ま、今回だけは許してやるか」
 足立はもう一度恵美子の下の口に自分のモノを埋没させた。
 男は自分の獣欲のおもむくままに激しく腰を動かした。恵美子の乳房を乱暴に
押し潰し、引き千切るのかと思うほど強く掴みあげた。
 「あうっ! い、痛い……」
 うるせえ、と足立は恵美子に往復ビンタを食らわせた。
 横で見ている栗橋は、彼女の両足を高く上げた。
 「ハマってるのがよーく見えるぜ。茄子のときよりうまそうに食いついてるな」
 栗橋は恵美子の太股をばしばしと叩き、抓りあげた。
 足立はより深く彼女の媚肉に侵入し、ごつごつと子宮口を突き上げた。
 恵美子は、もとよりこんな乱暴な暴力でのセックスは初めてだった。内臓が口
から出るのではないかと思うほどの激しい突き上げだった。
 「くそ。いくぞ。いくぞ」
 中は止めて、と叫びたかったが、恵美子の意識はだんだん遠退いていた。
 身体の奥で、熱い噴出を感じたとき、彼女は何も判らなくなった。


 しばらく失神していたようだった。
 恵美子が気がつくと、彼女の上に乗っているのはいつの間にか選手交代した栗
橋だった。
 栗橋の責めは、足立とは違っていた。足立のように強烈に迫っては来ない。そ
のかわり、スローなテンポで、じわりじわりと恵美子を追い上げた。
 「お願い……少し休ませて……」
 「さっきまで白目むいてお休みしてたんだぜ」
 栗橋は、ゆっくりと腰を動かしながら、これまたゆっくりと恵美子の乳首を口
で吸った。
 「しかしお前のおツユの量はハンパじゃねえな。毛深い女はおツユも多いのか?
上の芝生も下の芝生も、お前のおツユでぐしょぐしょだぜ」
 ついさっきまで、こんな暴力とは無縁の平和な生活を送っていたのに、どうし
て私が、こんな男達の餌食にならないといけないのだろう。しかし今は何も考え
られなかった。
 「ふ。使い込んでないオマンコはなかなか締まりがいいぜ」
 栗橋は自分の肉棒に指を添えた。ペニスだけでは触れない他の場所を弄りだし
たのだ。
 その指の動きを感じて、恵美子は鳥肌が立った。
 それを見て、栗橋は彼女の顔に唾を引っ掛けた。
 「ばかやろう。いい気になるんじゃねえんだよ!」
 突然、栗橋はうっと呻いた。その瞬間、終わった。
 恵美子の濃い茂みには、自分の愛の蜜と二人の男の精液がついて、てらてらと
光っていた。花芯からも蜜と精液がとろとろと流れ出していた。
 恵美子は、芝生の真ん中でぼろ布のように全裸のまま横たわっていたが、今は
もう何もする力も残っていなかった。裸の身体を隠す力もない。局部を拭こうと
する力もない。今はただ、誰に見られてもいい、こうして横たわっていたかった。
 「自分の始末ぐらい自分でしろ。だらしねえ女だ。おまんこから俺達のカルピ
スが垂れてるぜ」
 庭のテラスにあるベンチに腰掛けた足立は、恵美子の裸体を眺めながらうまそ
うにたばこを吸っていた。
 栗橋がリビングの中からティッシュの箱を恵美子に抛ってよこした。
 涙も出ないほどショック状態の恵美子は、のろのろとティッシュに手を延ばし、
後始末をはじめた。痺れていた頭には普通の感覚が戻りつつあった。何があった
のか記憶が戻ってくると、今は清めるためのティッシュが花芯に触れだけで鳥肌
が立つように感じた。
 私はとうとう、口では言えないようなおぞましい事をされてしまったんだわ。
 強姦された後、自分で後始末をする事ほど惨めなものはない。恵美子は、声も
上げずに泣いた。
 「まあ、そう泣くな。お前は立派に合格だ」
 足立は愉快そうに言った。
 「検査は終了だから、さっさとこっちへ来い。そこらの連中にテメエのおまん
こを見て欲しいのか」
 恵美子は、のろのろと立ち上がると、全裸のままリビングに上がった。
 足立は、数枚の写真を恵美子に投げてよこした。それを見た瞬間、彼女は思わ
ずあっと声を上げた。
 それは、彼女が非常階段で達彦にレイプされかけた時の写真だった。むき出し
にされた胸と秘部に達彦の手が這っている。別の写真には、彼の指が深々と恵美
子の陰部に挿入され、濃い陰毛が淫液に濡れててらてらと光っているのまで写っ
ていた。もちろん恵美子の顔はしっかり写り込んでいる。
 達彦だ! あの男はグルだったのだ。そう言えばあの時非常階段で達彦が話し
ていた相手は栗橋に似ていた。
 「お前がさっき気をやって失神してた時にもばっちり撮ってやったぜ。おまん
こばっくりの写真をな。あそこからザーメンがとろとろ垂れて、男とやった跡が
歴然ってヤツさ」
 栗橋はカメラを手に、にやにやして言った。
 「ど、どうして私を……」
 「ま、そんなことはどうでもいいじゃねえか。それより、この写真をばらまい
てやろうか。この近所とか大学とか、外務省とかによ」
 「や、止めてください! そんなこと、お願いだから!」
 恵美子の父は、日本に戻ったら本省の要職に就く予定である。役所という所は
身内のスキャンダルを嫌う。特に外務省は尚更だ。こんな写真がばらまかれたら、
いかに暴力で犯されたと言っても父の経歴に傷がつくことは目に見えていた。相
手は恵美子のそういう事情をすべて知っているようだ。どこまで知っているのか
喋らないのが余計に恵美子を恐怖に陥れた。
 「取り引きしよう。お前が言うことをきけば、俺達はこの写真を表には出さな
い」
 「言うことをきくって……」
 「お前にうってつけのいいバイトを世話してやろうと言う親切な話さ」
 栗橋が鞄から写真アルバムを取り出した。
 そのアルバムには、恵美子と同い年くらいの女の子の写真がぎっしりと貼られ
ていた。それも全裸で足を大きく開いた淫らなポーズの写真が。
 「こいつらはみんな、ウチの店で働いてる女さ。こんな格好してるが、こいつ
なんか、上智の文学部なんだぜ」
 栗橋が示した写真の女の子は、屈辱に耐える表情で、スツールに腰掛けて片足
を上に持ち上げるポーズをしていた。彼女の性器は丸見えだった。その横の女の
子は、媚びを売るような笑顔で、自分の指で彼女自身の花びらを押し広げていた。
 「ああ、こいつはトン女だ。こいつは割りきりがよくてな」
 「私にこういうことをしろと言うのですか!」
 「セックスを楽しめて金が儲かる。ウチの店に来る客は金払いのいいどスケベ
ばっかりさ。どうだ、いい話だろ。うちは飛び切りの女しか置かないから、お前
を検査したのさ」(どうして私がこんな事に……)
 恵美子には選択の余地がなかった。この男達に犯されて、今も全裸のままだ。
恵美子に歯向かう事など出来るはずがない。ここで嫌だと言えば、さっきされた
以上の残虐な仕打ちが待っているに違いない。先ほどの足立の狂暴な目が頭に浮
かんで震えて来るばかりだ。
 恵美子は、頷くしかなかった。
 「そうと決まれば善は急げだ。気が変わらないうちにフーゾクデビューといこ
うぜ。一回やってしまえば平気になるもんだ」
 栗橋は、携帯電話を取り出すと、早速連絡を取り始めた。
 「あ、支配人? これから新人のコを一人連れていきますから。よろしく指導
してやってください。ええ。今回も訳アリですから。思う存分。ひひひ」
 恵美子には、栗橋の押し殺した笑いの意味が判らなかった。




第二章 恥辱の店内教育



 足立と栗橋に犯されたままの姿で、恵美子は無理矢理彼らが乗って来たベンツ
に乗せられた。
 そのベンツの窓には黒のフィルムシートが貼られていて、外からは車内を伺い
知ることが出来ない。それをいいことに、彼らは恵美子を二人の間に挟んで座っ
た。
 運転席には若いチンピラがいたが、足立と栗橋はそれを無視した。
 「まったく何度見ても、素っ裸の女が車に乗ってるってのはシュールな光景だ
な」
 「そうですね。ことに、股の間に俺達のザーメンがこびりついてて」
 栗橋はそう言いながら、必死になって胸と秘所を隠そうとする恵美子の両手を
払い除けて、花弁に指を入れて来た。
 「ここだってまだ濡れてるんですからね。へへへ。ティッシュのカスが生々し
いなあ」
 恵美子にはもう、男二人に抗う力は残っていなかった。ただただされるままに
なって涙を流すばかりだった。大学ではクラスでもサークルでも男と対等にやり
あっていたはずなのに、力づくで征服されてしまうと、女というものはこんなに
何も出来なくなるものか。恵美子は女である哀しみと無力感をひしひしと感じて
いた。下半身を集中的に愛撫する栗橋と対象的に、足立は恵美子の胸を責めた。
 「こいつのくりくりした乳首がなんとも言えないなあ」
 などと言いながら両手で恵美子の胸を揉みしだき、乳首を舌で転がした。
 恵美子の身体にくすぶっていた残り火に火がつきかけていた。二人の執拗なペ
ッティングに、腰が動いてしまうのを止められない。
 「ま、今から何度でも気をいかす練習をしとくのはいいことだぞ」
 「でも、一日に何遍もイッてたら身が持たないんじゃないですか」
 運転するチンピラがバックミラーで恵美子の裸体を視姦しながら言った。
 「男と違って女は大丈夫なんだよ。お前もちょっとは勉強しとけ」
 チンピラの目は、上気して迫り来る快感に抗うかのように首を振る恵美子の顔
にへばりついていた。


 彼らを乗せたベンツは、歓楽街の中にある雑居ビルの地下駐車場に滑り込んだ。
あたりには派手なキャバレーやピンクサロンのネオンがけばけばしく輝いている。
 「降りろ」
 「え? このままで?」
 「そうだ。どうせお前は身体を売り物にするんだ。服なんか着る必要はない」
 恵美子は栗橋と足立に押し出されるようにして車から降りた。
 二月の冷気が、何も着ていない恵美子の全身を襲った。
 物心ついて以来人前で肌を曝した事のない恵美子だった。恥ずかしさのあまり
その場に崩れ落ちてしまいそうな恵美子を、足立と栗橋は冷酷な笑みを浮かべて
引っ立てた。
 「ど、どこへ」
 両腕を持たれて引き擦られて恵美子は地下から地上に上がるエレベーターに乗
せられた。
 「これからお前が売り物になるところだ」
 エレベーターはどんどん上昇していく。途中で誰かがエレベーターに乗って来
たらどうしよう。助けを求めるか。その前に何も着ていないこの姿を見られてし
まう。
 誰も乗ってこない事を恵美子はひたすら祈った。
 しかし。無情にもエレベーターは途中で止まった。(ああ。どうしよう)
 恵美子は両手で胸と下腹部を隠そうとしたが、その肝心の両手は足立と栗橋に
しっかりと捉まれている。恵美子にはしゃがむ事すら許されなかった。
 扉が開いて乗り込もうとしたのは、すでに酔いの回った男二人組だった。
 その男二人は、丸裸で乗っている恵美子を見て目を丸くし、乗り込むのを躊躇
した。
 「どうぞどうぞ。これはウエルカムサービスです」
 とっさに足立が如才ない笑顔を浮かべて言った。
 「このコはね、今日、上の『シャングリラ』にデビューするエミちゃんです。
お客さんに是非ショッキングサービスをしたいと言いましてね」
 「へえ。今日がデビューなの? 可愛いじゃないの。あの店にねえ。可哀想な
んじゃないの」
 酔客は妙に同情を込めて足立に言った。
 「可哀想なもんですか。より一層のサービス向上ですよ」
 「でもさ、このコ、何にも知らなそうじゃないの」
 「そう見えるでしょう。でもね、このコ、こう見えてもアソコの方は感度抜群
でね。いつでもスタンバイOKのスキモノなんですよ。お疑いならご自分で調べ
てみますか」
 足立は自分の足を恵美子の股の間に抉じ入れた。足立の意図を察した栗橋も協
力して、恵美子の足は無理矢理開かせられた。
 「いいの? このコ、泣いてるよ」
 「泣いてる女を無理矢理触るチャンスなんてそうないですよ。イケイケの女よ
り刺激的ですよ、絶対」
 そうだな、そのほうがチンポが立つよなあ、と男二人は遠慮なく恵美子の恥ず
かしいところに指を触れて来た。
 「ほんとだ。濡れ濡れだね」
 もう一人の男は恵美子の乳首を摘まんだ。
 「このコ、ほんとに『シャングリラ』に出てるの?」
 「今日からですよ。どうぞごヒイキに」
 「なっちゃうなっちゃう。常連になっちゃう。こんなコがいるなら、毎日通っ
ちゃうよ」
 エレベーターは最上階に着いた。
 「エミちゃんよ、待ってるからね!」
 この二人の酔客は栗橋に案内させて店の中に入っていった。
 「さあ、お前はここからだ」
 足立は従業員用のドアを示した。


 そのドアの中はホステスの控え室だったが、そこの安物のソファで足を組んで
座り、たばこを吹かしているホステスがいた。彼女・朱実の身につけているのは
パンティ丸出しの申し訳程度の超ミニドレス。ストラップレスの胸の部分は、客
に手を入れてくださいと言わんばかりに僅かに胸のふくらみを隠しているだけ。
足立と目があっても、朱実はそのままたばこを吹かし続けていた。
 「もう開店してるんだろ。サボってるんじゃない!」
 足立は彼女を怒鳴りつけた。
 「こんな時間に何人客が来るってのよ。もう五人抜いたあとよ。やることはや
ってるわよ」
 「そうか……」
 さすがの足立も、このホステスには弱いらしい。年齢は恵美子より少し上程度
だが、すでにこの道の水に染まったある種の貫禄が漂っている。
 「マネージャーの木田を呼んで来てくれないか」
 わかったわよ、とそのホステス・朱実は腰を上げたが、その時、ドアの入り口
に立って慄えている恵美子と目があった。
 「なにこのコ?」
 「今日からここで働く新人のエミちゃんさ。よろしく頼むわ」
 朱実は必死になって胸と秘所を隠している恵美子の全身をじろじろと見回した。
 「あんたたち、大事な売り物をこんな扱いしていいの。風邪ひいたら使いもの
にならないんだよ」
 「おう。一番派手な衣裳を出してやってくれ」
 「その前にする事があるんじゃないの。このコ、股の周りに精液がこびりつい
てるじゃないのさ。あんたたち、輪姦してからここに連れて来たね」
 「そんなことはお前には関係のない事だ。早くしろ!」
 足立は朱実の尻をひっ叩いた。
 「シャワーを使いなさい。そのドアがそうよ」
 控え室から出て行き際に朱実は恵美子に声をかけた。
 恵美子は足立の返事も待たずにシャワー室に飛び込んだ。
 とにかくゴワゴワになってこびりついた精液を洗い流したかった。
 「悪い考えを起こすんじゃないぞ。お前はもう絶対に逃げられないんだからな」
 シャワー室のドアを開けて栗橋が入って来た。
 「どうせすぐにお前のあそこには精子が注入されるんだから、いい加減にしと
け」
 デリカシーのかけらもない言葉にも恵美子は傷ついている暇はなかった。
 シャワーを終えて出てきた恵美子に差し出されたのは、純白のベビィドールだ
った。
 朱実に呼ばれてやって来た木田や足立、そしてまだ客が少なくてお茶をひいて
いるホステス達が面白半分に見ている前で、更衣の衝立も何もないままに、恵美
子はそのベビィドールを着た。
 縁にフリルをあしらったそれは、ほぼ完全にシースルーで、着ている方がかえ
って全裸よりも猥褻であった。恵美子の抜けるように白い肌と区別がつかないほ
ど淡いピンクの乳首までがはっきり見えてしまう。スケスケの薄い布は乳房しか
覆っていない。前をリボンで留めてあるだけなので、開いた部分からみぞおちと
お腹、そしてパンティを穿いた腰までが全部丸見えである。
 そのパンティもまともなものではなかった。ベビィドールと同じく白のシース
ルー。恵美子の濃い陰毛がくっきりと浮き出る代物だ。前を覆う三角の部分もぎ
りぎりの面積しかない。おまけに後ろはTバックだ。
 ハイレグの両サイドはストリングになっていて、紐を解けばすぐに取り去る事
が出来る。これがどういう事を意味するのか判った恵美子の顔から血の気が引い
ていった。
 茂みが人よりも濃い恵美子は、苦労して何度もストリングを結びなおしたが、
どうやってみても完全に隠すことは出来ない。
 そんな恵美子を見物しているホステスたちが好奇心を露わにして見守っていた。
 「どうせ全部透けて見えてるんだから、隠したってムダよ」
 化粧も濃く、いかにもスレた感じのホステスたちが煙草を吹かしながらせせら
笑った。自分達の格好は、超ミニとはいえ一応はドレスの体をなしていた。
 こんな卑猥な格好をさせられてさえ、恵美子の清楚な顔立ちとすらりとしたプ
ロポーションは上品で、完全に場違いなのだった。
 Tバックでむき出しになったヒップがひどく頼りなく感じられた。
 服を身につける恵美子を、ロッカーにもたれて思うさま視姦していた木田が、
扉の一つを開けてハイヒールを取り出し、履くように言った。
 パンプスといえば踵の低い上品なものしか履いたことのなかった恵美子は、慣
れないヒールによろめきながら二、三歩あるいてショックをうけた。
 パンティが股間に食い込んでしまうのだ。
 少し身動きしただけで、ほとんど紐状に細いその部分はすぐによじれ、恵美子
の割れ目にはさまってしまった。
 木田やほかのホステスたちも見ているなかで敏感な部分に布地が擦れ、食い込
む感覚に耐えられなかった。彼女は鳥肌が立ち、足がすくんでしまった。
 「手をどけろ。隠してどうするんだ」
 胸と股間を手で押さえたまま動けなくなってしまった彼女に、木田の容赦ない
罵声が飛んだ。
 「パンツがアソコに食い込んで動けないのか」
 恵美子は顔を真っ赤にして頷いた。
 「歩けないならそのまま立ってこっちを向け」
 おずおずと手をおろす恵美子を、木田と他のホステスたちがじろじろと見つめ
て品定めする。
 全裸よりもっと淫猥なこういう姿になっても、すんなりと色白な恵美子の身体
は清純そのものに見えた。
 「うーん、きれいだけど色気がないわね」
 「でもあそこだけは毛深いんじゃない?」
 好き勝手に喋るホステスたちの言葉には、あきらかに嫉妬からくるトゲが感じ
られた。
 「確かに胸も小さいし、パンチが足りねえな。おい、朱実。口紅を貸してやれ」
 木田の言葉に、朱実がバッグから口紅を取り出し、立ち上がって恵美子に渡し
た。
 「あの、鏡も貸してください」
 唇に塗ろうとする恵美子に、朱実が邪険に言った。
 「口に塗ってどうするの。ね、あんた、店でなにするか全然知らないの? 男
のアレをしゃぶってるうちに、いくら落ちない口紅だってすぐ取れちゃうのよ」
 男のアレをしゃぶる?
 朱実の身も蓋もない言葉は恵美子にとって全身が打ちのめされるほどの衝撃だ
った。
 フェラチオという言葉を知らないわけではなかったが、そういう話題について
は毛嫌いしてきた恵美子だった。友達からもカマトトだとからかわれるほどだっ
たのだ。
 もちろん浩一にした事もなかった。彼の性器に触った事すらほとんど無いのに、
ましてや口に含むなどとんでもないことだった。
 「自分で乳首に塗るんだ。お前のオッパイにインパクトが足りねえんだよ」
 木田の指示が飛んだ。
 「乳首に? ……そんな、そんな恥ずかしいこと……」
 「なんだかんだ言える立場じゃねえんだよ、お前は」
 と言いつつ木田はつかつかと恵美子に近づき、いきなり両腕を取って背中に捻
りあげた。
 「痛い……乱暴はやめて……」
 恵美子は胸をつんと突き出す姿にされて悲鳴をあげた。
 「朱実、お前が塗ってやれ」
 床に落ちた口紅を拾った朱実は、恵美子のベビィドールをまくりあげ、片手で
乳房をすくい上げるように押さえてながら、淡いピンクの乳首にゆっくりと濃い
赤のルージュを塗りはじめた。
 硬いスティックが押しつけられる感触に、恵美子の人一倍敏感な乳首が反応し
てしまう。思わずびくんと胸を突き出した恵美子の顔を朱実は意地悪く見つめ、
ことさらゆっくりと乳首にスティックを往復させた。
 柔らかかった乳首がみるみる硬くなり立ってくる。切ないあえぎ声が漏れそう
になるのを必死に耐えていると、朱実が、
 「あらあら、この子感じてるんじゃない?」と追い打ちをかけた。
 横から足立が口を挟んだ。
 「しばらくの間、お前はここの研修生ってことになる。先輩やお客からいろい
ろと教えてもらえ。いいか。身体を使った商売なんだから、羞恥心なんてものは
邪魔なんだからな」
 恵美子のベビィドールの胸には『研修生』というバッジがつけられた。
 「研修生の間は、言われた事はなんでもやれ。マネージャーの言う事に逆らう
んじゃねえぞ。もちろん、客の言うことをきかなかったら、どんな目にあうか判っ
てるだろうな? お嬢さんの妙なプライドは今すぐここで棄てるこった」
 「あ、あの……私はここで、何をするんでしょうか……まさか、あの……」
 恵美子の脅え切った言葉を聞いて、木田と足立は吹き出した。
 「そんなこたぁ、このドアの向こうの店の中に入ればすぐに判る」


 木田に先導されて、店に足を踏み入れた恵美子は、鼻につく精液の匂いにたじ
ろいだ。ここは男を射精させる場所なのだ……。
 各テーブルはすべて同じ方向に向いていて、他の席の客の様子はよく見えない。
 しかし、木田に従って店内を回り始めた恵美子の目に、一番見たくない光景が
飛び込んで来た。ホステスが客の下半身に取り憑いて懸命にフェラチオをしてい
た。そうでなければ客にはだけた胸を擦りつけ、手は客の一物をしっかりと握り
締めて上下運動をしている。
 店の中央まで来た木田は、ボーイに渡されたマイクを使って店中に響き渡る声
でアナウンスを始めた。
 「皆様。エミちゃんです。今日入った研修生ですから、本当に何も知りません。
お客様がいろいろと遊び方を教えてあげてください。ええもう、何でも勉強です
から」
 客たちの飢えたような視線が恵美子の全身に突き刺さり、恵美子は身を縮めた。
彼女の両手は自然と胸と下の茂みを隠そうとした。
 「ほらほら。ウブでしょう。そんなことしても、ここでは無駄ですからねー」
 木田が赤ん坊をあやすような口調で恵美子の両手をバンザイするように高く上
げさせた。
 恵美子は今から何をされるのかわからない恐怖でぶるぶると慄えていた。
 そんな姿を先輩ホステスたちはにやにや笑いながら見ていた。
 「じゃ、一番テーブルから始めろ。チェンジのタイミングは俺が教えてやる」
 恵美子は一番奥のテーブルに押し込まれた。
 そこには常連客らしい男と朱実がいた。
 「あんたは研修生だからね。出し惜しみしちゃいけないよ」
 朱実がたばこの煙を鼻から出しながら恵美子に声をかけた。
 客は、恵美子の清楚な美しさに驚いた。まったく崩れていない彼女の雰囲気は、
どんな猥雑な衣裳を身につけていても、この場所には不似合いだった。
 嫌悪と恐怖に凍りついている恵美子は、もう客の横に座っただけで生きた心地
がしなかった。
 「どうしてキミはこんなところにいるの? キミほどの女の子なら、もっと適
当な場所があるでしょう」
 「どんなところなのさ」
 横から朱実が口を挟む。
 「そりゃあ、モデルとかさ、アダルトビデオとかさ……」
 客はそんなことを言いながら、いきなり恵美子の胸を鷲掴みにした。
 「固くてきれいなオッパイだねえ」
 突然の行為に、恵美子は飛び上がりそうになった。
 「何をするんですか!」
 「寝ぼけたこといってるんじゃないよ。ここはこういうコトをするところなの」
 撫で回されて恵美子の乳首は硬くなっていった。恵美子は自分の身体の反応を
呪った。
 「おお、感度も良好じゃないの」
 恵美子は客の手を払い除けようとしたが、朱実に先手を取られた。
 「あんた、何びびってるのよ。覚悟を決めなさい」
 「そうそう。覚悟を決めなきゃダメよ」
 ボックスシートの後ろからは木田と足立が恵美子の様子を監視していた。客に
逆らっては、この後何をされるかわからない。
 恵美子が何も抵抗出来ないことをいいことに、客の手はますます下におりてゆ
き、パンティの上から恵美子の秘所をまさぐり、ストリングを解きにかかった。
 「こんなものは邪魔でしょう。取ってしまいましょうね」
 客は手慣れた様子で恵美子のパンティを一気に脱がすと、茂みをむんずと掴ん
だ。
 「うひゃ! これはこれは。うっそうと茂ってるねえ」
 必死に耐えている恵美子を、朱実は冷ややかに見ているだけだった。
 客の指は、恵美子の陰毛を弄び、茂みを掻き分けて亀裂に沿って秘所に分け入
って来た。
 あまりにも異様な体験にすくみ上がってしまった恵美子は、下半身をむき出し
にされ、見知らぬ男に秘部を弄ばれているという強烈な刺激で心臓が止まる思い
だった。
 男の指が奥の割れ目を執拗にさぐってくる。ざらついた感触の指が肉芽をさぐ
り当て、揉みしだきはじめた時、恵美子はそのおぞましい感覚にもはや耐え切れ
なくなった。
 恵美子は客を跳ね除けて、下半身丸出しのまま、ホステス控え室に逃げ込んだ。
 控え室のソファに座り込み、顔面蒼白になって荒い息をする恵美子に、木田の
罵声が飛んだ。
 「こら。研修生がそんなことで済むと思ってるのか」
 客の前ではへこへこしていた木田は鬼のような形相で恵美子を睨んだ。
 「すみません。でも、私には……私には、どうしても出来ません」
 「何もやってないうちから出来ませんとはなんだ。え?」
 木田はいきなり恵美子の横っ面をはり飛ばした。
 「ここをどこだと思ってるんだ。パンツを脱がされてあそこに指を入れられた
くらいで喚くんじゃねえよ!」
 木田は恵美子を床に押し倒し、恵美子の花弁に指を突っ込んでこねくり回した。
 「ここはお上品な高級バーじゃねえんだ。下品でそのものずばりのコトをする
ところなんだ。イッパツやってエンジンを暖めねえとダメなんじゃねえか。どこ
のお嬢さんだったのか知らねえけどな、ここに来りゃあ、みんな同じメスなんだ
よ!」
 木田は手早くズボンを脱ぐと、恵美子にのしかかった。木田の一物は先ほど恵
美子を見た時から疼いており、すでに痛いほど硬くなっていた。まだ充分濡れて
いない恵美子の淫肉は、無理矢理押し入られて悲鳴をあげた。
 「い、痛い。やめてください。こ、壊れてしまう!」
 「ふ。こんな程度で壊れるようなモノじゃねえだろ。さっき足立から全部話は
聞いてるんだ」
 木田は暴力的なピストン運動を始めた。
 「贅沢を言うんじゃねえよ。女のここはな、やってるうちに濡れて来るんだ。
テメエの事を考える前に、男が何をしてえのか考えな!」
 木田のピストン運動は、とにかく射精のためだけの暴力的なものだった。痛さ
のあまり、恵美子の口からは悲鳴しか漏れなかった。それを
 「なんだよ。ひいひい言ってるじゃないかよ」
 一仕事終えて、事情も知らずに控え室に入って来た朱実は、木田の下になって
助けを求める恵美子の表情を無視するどころか、逆に侮蔑の笑いを浮かべた。
 「お嬢さんを仕込むのにマネージャーも大変ね」
 「まあ見てな。どんなネンネでもこの店に来りゃ一ヵ月で淫乱になるさ。お前
がいい例だろ」
 木田は恵美子を責めながら、頬に歪んだ笑みを浮かべた。
 「この朱実だってな、一ヵ月前は上智に通ってたんだぜ。想像つくかよ」
 恵美子は、栗橋に見せられたアルバムの中にあった、羞恥心に染まりながら片
足を大きく上げた女の写真を思い出した。あれがこの朱実だったのだ。あの頃は
あんなに清純だったのに。私もいずれこういうふうに染まってしまうのだろうか。
恵美子は底知れぬ恐怖を感じていた。(染まってしまったら最後、元の私には戻
れないわ)
 「エミちゃんさ、あんたが逃げたからあたしがフィニッシュ決めてやったんだ
からね」
 朱実は蓮っ葉な言い方をした。
 木田は恵美子の裸体から肉茎を抜くと恵美子の顔に突きつけた。
 「ほら。手と口でいかせてみろ」
 恵美子にはフェラチオの経験も男根を手でしごいた事すらなかった。ただ挿入
されるだけで、男根そのものをこんなに接近して見た事すらなかったのだ。
 木田の陰茎は極端に大きいわけではなく、異様に黒くもなく、足立のように真
珠を埋めこんであるわけでもなかった。色、形、サイズともごくノーマルなもの
だったが、それでも男のモノを顔に突きつけられたことなどなかった恵美子は、
頭の芯が痺れるようなショックを受けていた。
 「ケッ! おフェラも知らねえのか」
 恵美子のそんなショックを意にも介せず、木田は彼女の口に指を入れてこじ開
けると、無理矢理肉茎を突っ込んだ。男根独特の臭気が鼻をついた。
 「いいか。間違っても噛むんじゃねえぞ。噛んだらお前の歯を全部抜いてやる」
 木田はさらにサディスティックな気持ちに駆られ、勃起しきった男根を思いっ
きり恵美子の喉の奥まで押し込んだ。
 喉を塞がれ、美しい顔には木田の陰毛が押し付けられて恵美子は息が出来ない。
 木田は恵美子の長い髪を掴むと前後に揺さぶった。
 「舌を使え。舌で俺のモノを舐めまくるんだ。裏側の部分をもっと舐めろ」
 木田の肉茎がノドを突き、恵美子は思わず吐きそうになり、喉を詰まらせた。
 それを見て木田は恵美子の顔を両手で挟み、さらに一層自分の股間に押し付け
た。
 「馬鹿野郎。何もしてないのに吐くなんて失礼な事をするな。もっと舌を使え
ってんだ!」
 恵美子はもはやなにも考えられず、木田の陰茎の裏側に舌を這わせようとした。
 口一杯に男のモノを含まされ、このうえどう舌を使えばよいかも判らなかった
が、とにかく舌尖を男根の根元の部分から上に動かそうとしてみる。
 恵美子の舌尖が頂のふくらんだ部分に達したとき、木田の男根はびくりと動き、
彼女の口の中でいっそう大きく、固くなる感じが伝わって来た。
 これまでは身体の中にねじ込まれる異物としか思えなかった男のモノが、自分
の舌に反応して別の生き物のように動いている……恵美子は屈辱に涙を滲ませな
がらも、不思議な感覚を味わっていた。
 「いいぞ。お前、スジがいいぞ。そのまま口をすぼめて俺のサオを唇でしごく
んだ」
 木田は自分でも腰を使い始めた。びくんびくんと木田の肉茎は最後の兆候を見
せはじめた。
 「いいか。出すからな、最後の一滴まで飲み干すんだ。吐き出したらただじゃ
おかないぞ」
 木田は、うっと呻くと、どくどくと恵美子の口の中に精液をほとばしらせた。
 恵美子は息が詰まった。とても飲み込めたものではなかった。胃液が腹の底か
ら込み上げて来て飲み込もうとする精液と交じりあう。目に涙をにじませ、死ぬ
ほどの苦しみを味わいながら、恵美子はおぞましい味と匂いの液体を飲み込んだ。
 木田の手は、彼女の下腹部に伸び、濃い陰毛を触っていた。
 「いつまでもお嬢さん気分が抜けないようなら、一本一本ここの毛を抜いてい
くぜ。お前のナニがうまくなるまでよ、え? 恵美子ちゃんよ」
 木田はそう言いながら、恵美子の陰毛を二・三本引き抜いた。
 「痛い! や、止めてください……」
 「へっ! プライドだけは人一倍お持ちってことかい。くそ。ヘタクソなくせ
に!」
 木田は恵美子の口から一物を抜くと、すかさず彼女の頬を平手打ちした。
 「おい! 誰か! 例のキットを持って来い!」
 木田は部屋の外に声をかけた。
 程なくドアが開き、ボーイがバスケットを提げて来た。
 「よし。おい、お前。ついでだ。こいつの両足を押さえてろ」
 まだ年若いボーイの目が輝いた。仕事中はじっくりと拝む事の出来ないホステ
スのあそこを見る事が出来る。願ってもない事だ。それに、これから木田のしよ
うとしている事は……。
 ほとんど抵抗もせずソファに寝かされボーイに両足首を持たれた恵美子は、こ
れから自分の身に起こる事を知らなかった。
 木田はバスケットの中からシェービング・フォームのボトルを取り出し、恵美
子の股を大きく割った。
 「な、何を……」
 木田は無言のまま恵美子の下腹部の茂みに泡を吹き掛けた。
 その次の展開を知っているボーイが思わず忍び笑いをした。
 「や、やめてください! お店では一生懸命働きますから! 約束します!」
 「お前にはヤキを入れないと判らないんだよ」
 木田はバスケットから剃刀を取り出し、明かりにかざしてその研ぎ具合を見た。
 きらりと剃刀の刃が光った時、さすがの恵美子も、これから自分がどんな目に
遭うのか判った。
 「やめて! それだけはやめて!」
 木田は恵美子の顔に尻を向ける態勢で彼女の身体の上に馬乗りになり、下腹部
に剃刀をあてた。
 じょり、という音がして、一握りの陰毛が剃り取られた。
 「ああ……こんな恥ずかしい事……」
しゃべることしか出来ない恵美子の哀願を完全に無視して、木田は黙々と作業
を進めた。
 うっそうと茂っていた恵美子の茂みは、みるみるうちに剃り上げられていった。
彼女の亀裂が童女のように露わになった。
 木田は、剃刀を恵美子の内側にも当てていった。
 「花びらのまわりだけにおケケが残ってるのもおかしいだろ」
 そうですねえ、とボーイが頷いた。
 もう私には、隠すものは何も与えられないのだ。恵美子は自分の運命を呪った。
 木田は下腹部に残ったフォームを掌でぐい、と拭った。
 「ひゃあ。きれいだ。支配人の剃刀はいつ見てもあざやかですねえ!」
 ボーイが素直に感心したように、恵美子の下腹部からは茂みがきれいさっぱり
消えていた。
 「可愛くなったねえ。まるで中学生みたいだ」
 木田は、満足するように恵美子の何もない花びらのまわりを撫で回した。
 「お前が一人前におまんこを使いこなせるようになるまで、ここを毎日剃れ。
それまでお前は半人前なんだからな」
 恵美子のむき出しになった亀裂にそって指を這わせたり、唇を押し広げたりし
ていながら木田が言った。
 「いつまでも下手な事してると、場末のソープにでも売り飛ばすぜ」
 木田は恵美子のきれいに剃りあげられた下腹部を、思いっきり平手で打った。
 茂みを剃り取られた青白い肌には、木田の手形がくっきりと赤く残った。


 新しいパンティを身につけて、恵美子は、また店の中に入って来た。
 「あんた、判ってるの? 一度こういう場所に足を踏み入れたら、思い切らな
いとダメなんだよ」
 ドアの脇には、朱実が立っていた。
 「とにかく、男のモノを舐めるのよ。しゃぶってミルクを飲んでやれば男は満
足するのよ。判った? それしか道はないんだからね」
 恵美子はとことん惨めな気持ちになって思わず涙を零したが、朱実はそんな彼
女を鼻先で笑うと客席に戻っていった。
 恵美子は、ボーイに案内されて、さっきとは別のボックスに座った。そこにい
た客は、さっきエレベーターの中で恵美子の肉襞を執拗に弄んだ例の男達であっ
た。
 「よお。君を待ってたんだぞ」
 彼らは両側からさんざん恵美子の乳房を揉みしごき、嬲ったあとにキスをして
来たが、客の酒臭い息に恵美子は吐き気をもよおした。客の舌はディープキスを
しようと、恵美子の唇の中にぐいぐいと強引に入って来た。これほど嫌悪を感じ
ているのに、触られた快感にぴんと尖ったままの乳首が恨めしかった。
 もう一人の男の手は、恵美子の下半身に伸びた。彼女のパンティのストリング
はすぐさま解かれて、恵美子の秘部はむき出しになった。
 「おやおや。きれいに剃られてつるんつるんじゃないか!」
 客は口を塞がれて答えられない恵美子にはお構いなしに、彼女の秘所を無遠慮
にさんざん弄んだ。隠すものもなくなった恥ずかしい場所を目で犯されるのは、
最高の屈辱だった。
 恵美子の花びらをゴムのように引っ張ったり揉みくちゃにしたり、その上の肉
芽の包皮をするりと剥かれじかに指で触られるようなことまでされてしまった。
 あまりに敏感なところを乱暴に弄ばれて、恵美子は悲鳴を上げた。さっき木田
に無理矢理挿入された痛みがまだ残っている上に、この客の指は、恵美子が感じ
ていようがいまいがお構いなしに彼女の秘所を好きなようにおもちゃにした。
 「なんだよ。お前、全然濡れてこないじゃないか。不感症じゃないの」
 こんなにされては濡れる訳がない。
 キスに飽きたのか、恵美子を抱きすくめていた客は、彼女の手を取った。いつ
の間にか、客のズボンは下ろされ、一物がべろんと外に出ていた。
 「コッチのモノを君の可愛いお口で元気にしてくれや」
 恵美子は、言われるままに客のモノを口に含み、愛撫した。さきほど木田に言
われたように、恵美子は亀頭の裏側の最も感じる部分に舌を這わした。バスで洗
っているはずの無い客の男根は小便と精液の匂いでむせるほどだ。
 それでも恵美子は、懸命に吸い、舐めようとした。
 その一生懸命さが効いたのか、男は程なく恵美子の口の中で果てた。
 俗に言う『花びら回転サービス』で、恵美子は次々にテーブルを移り、客にフ
ェラチオをした。しかし十人を越すうちに、だんだんと唇が痺れて、頭の中が真
っ白になって来た。
 男のモノを含むのがあれほど嫌な事だったのに、どうしてこうも痺れるような
感覚に陥るのだろう。しかし今の恵美子には、これ以上ものを考える余裕はなか
った。
 「おいおい、そんなことじゃ感じないぞ。やる気あるのか?」
 常連らしい客は、ひざまずいて懸命にフェラチオする恵美子の身体をくるりと
逆向きにさせ、お尻を両手で持ち上げた。ベビィドールを捲くりあげ、パンティ
も毟り取ると、恵美子の花弁をぺろりと舐めあげた。
 恵美子の全身に悪寒が走ったが、客は彼女の腰をしっかりと掴んで離さない。
その手を振りほどこうと腰を動かすと、それは逆にとても猥褻に見えた。
 「お、舐めると感じるのか」
 恵美子が逃れようとすればするほど客は彼女の身体をしっかりと抱きかかえた。
秘部を舐めながら、空いている両手で乳房をぐいぐいと揉み始めたのだ。
 なんとか逃れようとする恵美子の動きが、端からは身もだえして身体をくねら
せているようにしか見えない。
 客は堪らなくなって立ち上がると、恵美子に抵抗する隙も与えずに一気に挿入
した。
 この店でもさすがに生本番サービスまでさせるホステスはいなかった。
 「お前は研修生なんだろ。他のホステスとおなじことをしてちゃ勉強にならな
いぞ」
 隣のボックスの客が本番をする恵美子の姿を目ざとく見つけ、おお、と声を上
げた。
 「やってるよ。あのコがやってるよ」
 客は恵美子の腰をしっかりと掴んでピストン運動を繰り返した。
 高く突き出された恵美子の形の良い尻がぶるぶると震えている。
 テーブルの端を持って上半身を支えようとする恵美子の腕の力を払いのけると、
客はすかさず彼女の胸をつかみ、空いた片手で彼女の両膝の裏側をすくい上げる
ようにして抱え上げた。あの部分をうしろから貫かれ、挿入されたまま立位になっ
てしまった。恵美子の身体の正面は他のボックスからも丸見えである。
 犯される恵美子の姿を見ようと、よそのボックスから客とホステスがどっと寄
って来た。
 客は悪乗りして、恵美子のベビィドールの胸元の紐を引っ張って脱がせてしま
った。恵美子は全裸の状態で客に犯され、それを店にいる全員が見物していた。
 客は中腰で彼女を下から貫き、乳房を揉みしだきながら、しばらくの間見せつ
けるように腰を使っていた。
 片方の腿が身体にぴったりとつくほど持ち上げられているので、きれいに剃り
上がられて露わになった濃いピンクの柔襞、そしてそこに激しく出入りする男の
赤黒い肉茎がすべて丸見えである。
 「ああ、なんてこと……」
 うろたえた恵美子は必死に脚を閉じようとした。
 しかし、見るからに清純そうな恵美子を人前で犯し、辱める快感に夢中となっ
た客は、痣になるほど強く彼女の内腿に指を突き立てた。もがけばもがくほど男
は息遣いを荒げ、押さえつけてくる。なおも抵抗しようとしていると突然、強い
光に目が眩んだ。
 ボーイが小型のスポットライトを結合している二人に光をあびせたのだ。
 男の肉茎に貫かれた二つの唇が毒々しいほどのピンクに濡れ光り、ライトに照
り映えた。
 衆人環視のなかでもっとも恥ずかしい姿を晒されてしまった彼女が怯んだ一瞬
の隙に、客は恵美子をかかえたまま深々とソファに腰をおろした。
 「いつまでも中腰じゃ疲れるからな」


 「お願いです、口で一生懸命やりますから、こんな恥ずかしいことは……」
 「今やめると、みんながっかりするって」
 見られながらの倒錯した快感に狂った客は、スポットライトのなかで恵美子の
両腿を思い切り割りひろげた。
 「いや、やめて……」
 言葉とは裏腹に恵美子のその部分は、すっかり濡れてしまっていた。
 恥毛を剃り取られてしまって秘部はむき出しである。強い光にぬめりを帯びた
肉襞が太い肉茎に貫かれている。その無残な光景はひどく淫猥で、屈辱に耐えて
いる清純そのものといった恵美子の顔だちを見れば、とても同じ女性の部分とは
思えなかった。
 客は恵美子の股を開かせている片手に力を入れ腿を引き寄せながら、再び乳房
にその手を伸ばしてきた。胸を揉みしだき乳首を摘みながら男は激しく腰を使い、
秘所を下から突き上げてくる。
 空いた片手は彼女の股間に伸び、大きく広げさせた恥ずかしい部分をさんざん
に弄りまくった。
 恵美子は、何もかもが明るいライトのもとにさらされ大勢の客やホステスたち
が見ている前で犯されているのに、どうしようもなく感じてしまっている自分が
信じられなかった。
 客の指が感じやすい肉芽を摘んでなぶるたびに切ないうめき声がもれる。
 ぐっしょり濡れて充血し、もはや興奮を隠しようもないほどふくらみきった陰
唇も左右に押しひろげられ、内側までむき出しにされてしまった。
 男の指が彼女の肉芽から離れ、敏感になった唇の内側をすっとなで上げたとき、
恵美子は思わず悲鳴をあげた。
 「ここも感じるのか?」
 ますますサディスティックになった客は、濡れてすべりが良くなった陰唇の内
側からその頂にある雛尖に何度となく指を往復させ、執拗に愛撫を加えつづけた。
 あかあかとライトに照らされ大勢の見ている前で、男を咥えた恵美子の秘唇か
らはついに透明な蜜があふれ出した。(ああ。今私は晒し者になっている。こん
な惨めな姿をみんなに見られている)
 そう思うと、恵美子の身体は熱くなって来た。羞恥心が身体に火を点けた。恵
美子の肉襞から沸きだす熱い物は止まる事がなかった。
 客は恵美子の身体の向きを変えさせて、自分の膝の上に恵美子を乗せ、対面す
る体位にした。
 「なんだお前、人に見られると興奮するのか」
 客は恵美子の乳房を下からすくい上げるように揉んでいた。
 「ち、違います。死ぬほど恥ずかしいんです。もうやめてください」
 「ここまできてやめられないだろ。俺がやめてもギャラリーが納得しないぞ」
 しかし客も、見られている事で異常に興奮したのか、程なく絶頂に達した。
 外に出して、と言う間もなく、客は恵美子の中に射精した。
 他のホステスは、そんな恵美子を笑いながら見ていた。
 そのフィニッシュを待っていたかのように店のBGMはアップテンポのものに
変わり、木田がマイク片手にがなりはじめた。
 「はい! ハッスルタイムです! みなさん頑張って!」
 恵美子を眺めていたホステスたちは競って店内の方々にある「お立ち台」に上
がると、かつてのジュリアナもどきに踊りはじめた。スタイル抜群のホステスは
ボディコンのドレスやランジェリースタイルで腰をくねらせ、踊りのヘタなホス
テスはさっさとドレスを脱いで全裸になり、ストリップまがいのポーズを取り始
めた。
 恵美子は、なぜ足立と栗橋が自分をこの店に送り込んだのか、その理由がいま
判った。
 ここはなんでもアリなのだ。おさわりもフェラチオも本番セックスもストリッ
プも。まさにここは酒池肉林の世界だったのだ。
 「ほらほら、イッパツやったからって疲れてるんじゃないよ」
 お立ち台の上で腰をくねらせている朱実から声が飛んで来た。急いでベビィド
ールを着ようとすると、客がそれを取り上げた。
 「そのまんまでいいじゃない。研修生だろ」
 客たちの掛け声と共にお立ち台に押し上げられた恵美子は、全裸のまま、股間
からはさっきの客の精液を滴らせ、リズムにあわせて踊るしかなかった。恵美子
の太股を精液がとろとろと伝って流れた。
 恵美子にとって、こんな公衆の面前で全裸になること、そしてましてや踊るこ
となど初めてだ。足がすくんでどうしても動かない。身体を曲げて局部を隠し、
手は胸を押さえてしまう。
 「真面目にやれ!」
 客から罵声が飛んだ。
 木田はお立ち台の下から恵美子の足や尻をひっぱたいた。
 「お客様にお前のおまんこを見てもらわないか! やってくださいとお客様に
頼むんだ!」
 恵美子は必死の思いでリズムにあわせて裸体を動かした。
 が、お立ち台の下に陣取った木田とボーイが、恵美子の足首を掴んでもっと足
を広げさせようとしていた。
 恵美子は足を取られてお立ち台の上でひっくり返った。大股開きで倒れたもの
だから、恥毛を剃り上げられた彼女の性器はこうこうとライトに照らし出されて
しまった。
 「よ! きれいなピンク色のおまんこが可愛いね!」
 客のヤジに、恵美子は慌てて足を閉じたが、木田はそうはさせじとなおも足首
を持ってこじ開けた。
 恵美子はストリップの特出し状態になってしまったのだ。
 客の視線とライトに直撃されて、恵美子の肌はかっと火照った。花芯がじゅん
と濡れて来るのが判った。(どうして? 私の一番恥ずかしいところをむき出し
にされて見られているのに、熱く感じてしまうのはどう言う訳なの? )
 恵美子は身体の芯に疼きを感じていた。
 突然、と言う感じで、ハッスルタイムは終わった。派手な音楽は止まり、七色
のライトが消えた。
 のろのろとお立ち台から降りた恵美子は服を着ようとしたが、他の客が恵美子
の手を引っ張って自分のボックスに無理矢理連れ込んだ。下半身はすでにむき出
しである。
 レスラーのように大柄なその客は、全裸の恵美子を抱き上げると、いきり立っ
た自分のモノを恵美子の花弁にあてがって、ずぶずぶと恵美子の腰を降下させた。
対面スタイルでの挿入である。
 「あいつにやらしたんだから、俺にもさせろよ」
 充分に濡れた恵美子の秘部は、この店に来て始めて反応を示した。今までの事
がすべて恵美子にとっては助走になっていた。
 客は恵美子の裸体の両脇に手を入れて抱え上げると、腰を激しく上下に使った。
 恵美子は、もっとも恥ずべき事態に追い込まれているのに、反応を示してしま
う自分の身体が恨めしくてならなかった。
 うっ、うっと恵美子が声を漏らすのを聞いてエキサイトした客は、激しく恵美
子を突き上げた。
 客の亀頭が恵美子の子宮をぐりぐりとこすり上げるたびに、恵美子は悲鳴を上
げた。
 夢中になった客は、恵美子の腰を抱えるとぐるぐると揺さぶりをかけて来た。
 客のペニスが、恵美子のGスポットを刺激し、肉襞からはとめどなく蜜が溢れ
た。秘所は、かっとするほど熱く、溶けそうだった。身体には電気が走り、痺れ
始めていた。
 しかし、恵美子の理性の部分は、そんな肉体に必死で抗っていた。こんなとこ
ろで、こんなふうにされて感じてしまうなんて、あってはならない。絶対にあっ
てはならない。
 しかし、客の指が肉芽を攻撃し始めると、もうダメだった。恵美子の頭の中は
真っ白になった。もう、誰が見ていようが、ここが客席であろうが、恵美子の恥
態を見せるためにライトが浴びせられようが、そんなことは関係なかった。恵美
子は完全に行為に没入していた。
 肉欲のうねりが身体の芯から湧き出て来た。客の肉茎も、その脈動を恵美子の
内部に生々しく伝えていた。
 「いくぞ。俺はもういくぞ」
 客は思いのたけを恵美子の中に噴出した。
 恵美子は、その熱い奔流を身体の奥で感じて、背中を強烈な電気が走るのを実
感した。
 恵美子は必死の思いで、なんとか絶頂に達するのを食い止めた。これは彼女に
とってせめてものプライドだった。


 「で? 今日は何人の客とホンバンしたんだ?」
 店がはねてから、恵美子は控え室で待っていた足立とホテルに入った。
 「三日もやれば慣れるさ」
 恵美子のからだ中に愛撫を加えていた足立は、そうではない、と思い直した。
 「もうお前は慣れちまったんじゃねえのか」
 あれからラストまでにもう五人ばかりの客に犯された恵美子は、イッてしまう
のを必死で我慢していたから、不完全燃焼を起こしていた。身体はエンジンは全
開状態なのに、湧き出る炎を押さえていたのだ。
 だから足立の執拗な愛撫に、恵美子はどうしようもなく乱れていた。熱いもの
が身体の芯からどんどん全身に広がり、足立のものを受け入れた肉襞はかっと熱
くなった。
 いい。堪らなくいい。恵美子はこれまでにない、底知れぬ感覚を味わっていた。
 足立の抽送が激しさを増した、その瞬間。すべてが溶けた。からだ中が火の玉
になった。恵美子の蜜襞はかっと熱くなり、溶けてなくなった。頭の中が真っ白
になった。数万ボルトの電気がスパークし、花火が炸裂した。
 恵美子の身体はがくがくと痙攣してぴーんと反り返った。
 恵美子の中で、足立がほとばしった感覚が伝わって来た。
 無重力状態になったように、彼女の身体がふわりと浮き上がった。雲の中を漂
っているような、とても安らかな、この世のものとは思えないような至福の一瞬。
 恵美子は完全なオーガズムに達した。
 その夜、恵美子は生まれて始めて幾度となく続けざまに絶頂に達してしまった。
そのあまりの強烈さに目が眩み、失神してしまったほどだ。肉欲をむき出しにし
た邪悪そのものの客に幾度となく犯されもて遊ばれ、その上に、いくら怨んでも
怨み足りない男に明け方まで貫かれているのに、恵美子はどうしようもなく感じ
てしまっていたのだ。
 浩一の行為を拒んだのは果たしていつの事だったのか。悦楽の真っ只中で、恵
美子は何も考えられなくなっていた。




第三章 屈辱の学園レイプ



 セクシーラウンジ『シャングリラ』に恵美子が入って二ヵ月がたった。
 「研修生」の間は、ただただ客にいたぶられ弄ばれるだけだったから、一ヵ月
たって例のバッジを外す事が許された恵美子は、心からほっとした。なにより陰
毛を剃らなくてもよくなったのが嬉しかった。
 彼女はまたたくうちに店の指名ナンバーワンになっていた。飛び切りの美人が
ドレスを来ている暇もなく店内を全裸で歩き、しかも店内で濃厚な本番もさせ、
見事な特出しストリップも見せる、と評判になり、「店外デート」をしたがる客
が押し寄せた。
 店の終わる時間間際になると、客の間で恵美子の争奪戦が繰り広げられた。そ
れを面白がった木田は、『今夜、恵美子と寝る権利争奪オークション』を始めて、
ショーにしてしまった。お立ち台の上に全裸の恵美子を立たせて、彼女を競りに
かけ、彼女の値段は毎晩のように吊り上がっていった。(私は売り物になってし
まったのだわ)
 恵美子は唇を噛みしめて全裸のまま落札されるまで、ライトを全身に浴びて立
っていなければならなかった。おまけに彼女を競り落とした客は、モトを取ろう
と恵美子に貪欲に挑みかかるのだ。そんな客を満足させなければ、彼女は足立に
ヤキを入れてやる、と責めさいなまれた。


 そんなある日。
 足立は、出勤して来た恵美子を有無を言わせず車に乗せ、行く先も告げず走り
出した。
 「どこへ……どこに行くんですか」
 「病院だ。お前をもっときれいにしてやろうと思ってな。お前の身体は商品だ
から、もっと磨きをかけて高く売りてえんだよ」
 着いたところは、美容整形で有名な病院だった。
 恵美子がチンピラの監視つきで別室で待たされている間、足立は医師に勝手な
注文を出していた。
 「彼女の胸を大きくして欲しいんです」
 「可憐な顔とバランスが取れた、形の良い可愛いバストのように見えるがね」
 マジックミラーを通して別室にいる恵美子の姿を見ながら医師が呟いた。
 「いやいや。もっとこう、巨乳にしてほしいんです。思わず掴んで揉みしだき
たくなるような、デカイものにしてほしいんですよ。彼女はああ見えても結構イ
ケイケでね」
 足立はこの病院のお得意だった。彼はこの病院に普通の女を連れて来ては、い
かにも淫乱そうな外見に整形して店に出していたのだ。
 そういう足立の欲しいものを、この医師も心得ていた。
 「なるほどね。あの知的なマスクに淫乱を象徴するかのような大きな乳房、ね。
そりゃ確かに刺激的だ」
 恵美子本人の知らないところで、彼女の身体を改造する話が進行していた。
 診察室に呼び入れられた恵美子は、いきなり足立にエーテルを嗅がされて眠り
に落ちた。
 「こういう問答無用の手術をしているなんて、外にバレたら大変なことになる
んだぞ」
 医師は足立を非難するように言ったが、通常より高い金を貰っているから、そ
れ以上の事は言えない。
 「ま、先生。今度ゆっくり遊びに来てください。先生にクリトリスを敏感にし
てもらった朱実、あいつが今やノリにノってますから。一度抱いてやってくださ
い」
 そう言われた医師は思わず卑猥な笑みに相好を崩した。


 恵美子の豊胸手術は簡単に終わった。(病室? あれから私は何をされたのだ
ろう)
 個室で、麻酔から醒めて意識を回復した恵美子は、自分の胸が重たい感じがし
て、何気なく鏡に自分の姿を映して見た。
 驚愕が走った。あまりの事に、自分の目が信じられなかった。
 胸の小ささにコンプレックスさえ感じていた恵美子が鏡の中に見たものは、D
カップでもまだ小さいくらいの、たわわに実った巨大な乳房だった。
 セックスそのものを感じさせるような巨乳。
 自分の肉体が知らないうちにこのように変えられてしまった事に、恵美子は言
葉を失って、鏡の前で全裸のまま茫然と立ち尽くすばかりだった。
 「どうだ。グラマーになったろう。これで一段とお前の商品価値が上がったな」
 いつの間にか病室に入って来ていた足立が言った。
 「それだけキョーレツなボディになったんだから、今までみたいなウブなお嬢
さんじゃ通用しないぞ。そのデカパイを使って、男どもを狂わせるんだな。男な
んて、デカパイの女はセックスしか頭にない淫乱だと思ってるから、お前はその
期待に応えるんだ」
 店での恵美子は彼女の知性も能力も関係なく、ただ魅力的で若い肉体を持った
女、として扱われていた。だが、これからは、それ以上の、セックスのみの淫乱
女として扱われるのだ。
 変貌してしまった恵美子の乳房は、彼女の希望を打ち砕くのに充分だった。
 「ばかやろう。高い金出してデカパイにしてやったんだ。もっと喜べよ」
 足立は、力づくで喜ばせてやる、と恵美子をベッドに押し倒して乱暴に挿入し
てきた。
 「いや。ここは、ここは病院です!」
 「外じゃ看護婦たちが聞き耳立ててるぜ。さあ、デカい声出してよがりまくれ」
 恵美子は声を出すまいと必死に口を閉じていたが、身体の奥から突き上げてく
る甘美な花火にあらがう事は出来なかった。わずか一ヵ月ほどの間に、彼女の身
体は男のモノにすぐ反応してしまう淫獣のようになってしまっていたのだ。
 「ふふふ。このデカパイは揉み甲斐も舐め甲斐もあるぜ」
 恵美子は、いつしかここが病室である事も忘れて嬌声を上げていた。


 それから何日か経ったある日、いつもより早く来るように言われた恵美子が出
勤すると、控え室ではカメラを持った男が木田と話し込んでいた。
 「おお、来た来た。このコが今話していたエミちゃんです。こちら、『ナイト
フォーカス』の工藤さん」
 工藤と紹介された男は、恵美子に一冊の雑誌を渡した。いろいろな風俗業界の
店を女の子ともども紹介する夜の情報誌だった。
 「ウチの雑誌でね、この店を紹介したいと思って。で、マネージャーにこの店
のナンバーワンの君について話を聞いてたんですよ」
 「なんせこのエミちゃんは顔に似合わずやる事がどスケベでね。工藤さんも遊
んでみれば判りますよ」
 そうでしょうねえ、と工藤も木田にあわせて笑った。工藤は、いつ撮ったのか、
店内の様子を写したポラロイド写真を手にしていた。
 「この素っ裸でフロアを歩いてるのがエミちゃんですか。ひやぁ、全裸でハイ
ヒールというのはキますねえ」
 「そうでしょう。と言うよりね、エミちゃんは、服を着てる暇がないんですよ」
 「パンティも?」
 「そうです」
 工藤は思わず、いひひ、と卑猥な笑いを漏らした。
 「この、お立ち台でオナニーをしてるのも、こっちの写真で、客とナマでやら
かしてるのも全部エミちゃんですよね」
 工藤は恵美子の豊かな乳房を舐めるように見ながら言った。
 恵美子は思わず工藤の手から数枚のポラ写真をひったくった。それらに写って
いるのは木田の言うとおり、すべて恵美子自身であった。写真の中の恵美子は、
淫乱でハレンチで、自分のようではなかった。二ヵ月前の自分なら思わず目を背
けて、こういうことをする女を軽蔑しただろう。そういう女に今はなっているの
だ。
 「まあまあ。とにかく工藤さんは、君をカラーページでどーんと紹介したいと
言ってくれてるんだ。店の宣伝になるし、君の宣伝にもなるし、最高の話だと思
うんだけど」
 「お断りします。雑誌に出るのはお断りします」
 木田は思わず怒鳴りつけようとしたが、工藤の手前、それを堪えて猫撫で声で
恵美子を説得にかかった。
 「どうしてよ。君の写真が載ればだな、君の指名が増えるんだよ。君目当ての
客も増えて、誰も損しないじゃないか」
 「それじゃ他の人を載せて上げてください。私は困ります。雑誌に載るのは困
るんです」
 恵美子としては、雑誌に写真入りで自分のことが載ることだけは絶対に避けた
かった。今はもう、人前でセックスもするし全裸で踊る。客にフェラチオするこ
とにも慣れてしまった。しかしそれはあくまで隠れてしていることなのだ。雑誌
に載ってしまったら、自分からスキャンダルを公にするようなものだ。父の為に
スキャンダルを起こさないように堪え忍んで来た今までの努力がまったく無駄に
なってしまうではないか。足立に強要されて娼婦紛いのことをやっている意味が
なくなってしまう。
 しかし、そんな恵美子の気持ちを木田は完全に無視した。
 頑なな態度の恵美子に業をにやした木田は、控え室の隅に彼女を連れていくと、
思い切り内腿をつねりあげた。
 「いいか。お前のわがままは通らないんだ。お前の淫乱姿が日本全国に晒され
ようが、そんなことは俺達の知った事じゃない。毎日おまんこざんまいのお前が
今更どうのこうの言ったってどんな意味があるってんだ。今やお前は立派な淫乱
だよ。誰かに知られるのは時間の問題ってもんだ」
 否応もなかった。すでに話は決まっていたのだ。
 「……せめて、目の部分だけでも隠してください……それだけはどうしてもお
願いします」
 木田は恵美子の身体を舐めるように見ていた。
 「ま、いいだろ。そのかわり顔を隠せば思い切りポーズが取れるよな?」


 ボックスシートで、工藤は、恵美子にバナナを持たせるとフェラチオするよう
に舐めてくれ、と注文を出したが、木田の入れ知恵で恵美子は全裸よりも猥褻な
いつものベビィドールを着せられ、シースルーのパンティ一枚だけ、しかも大股
開きという挑発的なポーズを取らされてしまった。
 工藤の横には木田が立ち、恵美子にあれこれポーズの指示を出した。
 「もっとお前のデカイオッパイを持ち上げろ。指で乳首を摘まんで立たせろ。
そのまま右手をあそこに押し当ててオナニーしてみるんだ」
 「顔は、顔は絶対に判らないようにしてくださいね」
 「判ってる判ってる」
 ストロボの強烈な光は、恵美子の茂みを情け容赦なく際立たせ、口紅を塗った
乳首は男の劣情を刺激した。シャッターを押す工藤の股間が盛り上がっているの
に恵美子は気づいた。
 工藤に言われるままに、恵美子は左手で乳房を扇情的に持ち上げ、右手で自分
の花弁をなぞった。
 「バナナ咥えるよりよっぽど強烈ですよ。こりゃ来月号のトップだな」
 木田の目も欲情してぎらぎらしていた。
 「よし。エミ! 全部脱げ。全部脱いでオナニーしろ!」
 「それは店の案内にはならないのでは……」
 「いや。巻頭のヌードページにも使わせてもらいます。ソープのコのヌードを
予定してたけど、こっちに差し替えだぁ!」
 工藤も興奮して叫んだ。
 「困ります! 私はヌードモデルじゃないんです!」
 「なにを今更カッコつけてるんだよ! 毎晩店でケツの穴まで見せてる女がな
に言ってやがる!」
 木田は恵美子のベビィドールとパンティを無理矢理毟り取って、ポーズを取ら
せた。


 シートに乳房を擦りつけたり、バナナを恥部に当てたり、文字どおりオナニー
をして見せたりして、たっぷり二時間の撮影が終わった頃には、もう店の開店時
間だった。(ああ、あんな恥ずかしい写真が載った雑誌が、堂々と本屋で売られ
てしまうの? )
 顔は隠してもらえるとはいえ、恵美子は、出来る事ならばその雑誌をすべて買
い占めてしまいたかった。自分の友人には、そして浩一にだけは絶対に見られた
くなかった。(私が今こういう仕事をしている事は誰にも話していないのに。完
全に秘密にしているのに。もしバレたら、すべてがダメになってしまう。破滅だ
わ。私はもう、この先誰にも逢う事は出来ない。両親にも逢えない。元の生活に
は絶対に戻れない。こんな身体になってしまったし、元の女子大生の青井恵美子
には絶対に戻れない。私は堕ちる所まで堕ちてしまったんだんわ)


『飛び切り美女は淫乱な巨乳現役女子大生! セックス大好き! アタシを外に
連れ出して! 』というキャプションが表紙に踊り、恵美子のオナニー姿のヌー
ドが巻頭を飾った雑誌がついに発売された。
 印刷された恵美子のヌードは、撮影している時の実際よりも物凄いものに感じ
られた。カラーグラビアの中の恵美子の目は欲情して淫らにすら写っていた。大
きな乳房を持ち上げる手つきは熟練した娼婦のようでもあり、自らの秘部に指を
這わせるその手つきは男なしではいられない、欲望に悶える淫乱な女の恥態その
ものだった。
 恵美子にとって哀しむべき事は、約束が反故にされて彼女の顔がそのものずば
り写し出されていることだったが、その切ない表情は男の劣情をてきめんに刺激
するものに仕上がっていた。
 「いい出来じゃないか。え? 明日から忙しくなるぜ」
 ホテルで恵美子の淫襞をまさぐりながら、足立は機嫌よく言った。
 「たった二ヵ月でここまで淫乱になるとはな」
 「ち、違います……私は言われるとおりにやっただけです……あっ、ダメ、そ
こはダメ」
 足立の指は恵美子のGスポットを徹底的に責め上げていた。
 「お前はヌードモデルでもやっていけるぜ。そうだ。そのほうが金になるかも
しれんぞ。そのヌードを見てお前を抱きたくなれば、『シャングリラ』に来いっ
てな」
 恵美子の肉襞から蜜が溢れて来たのを見計らって、足立はその肉棒を突き刺し
た。
 店でエンジンがかかり、店外デートで助走のついた恵美子の身体は、明け方の
足立の執拗な責めによって、ようやくフィニッシュを迎えられるのだ。
 恵美子は夢うつつの状態だった。本日最高のクライマックスがまどろみととも
に押し寄せて来る。この快感は、相手が足立であろうが、とにかく至福のひとと
きと言えた。これがあるから、どんなに厳しい客の要求にも耐えられる。いつの
間にか、恵美子は足立のセックスを心ならずもご褒美のように受け入れていたの
だ。
 「明日の昼、大学に行ってもいいぞ」
 「え? 大学……」
 「おう。お前、学年が変わって、明日がなんとかの締め切りじゃなかったのか」
 足立の言うとおり、明日は履修科目の登録締切日だった。
 今更大学など行けるものか。男も女も、きっとあの雑誌を見ているに違いない。
変わり果てた自分の哀れなヌードを見て嘲笑しているに違いない。そんなところ
にのこのこ出かけていくのは、恵美子にとって地獄以外の何物でもない。
 「大学には絶対行きません」
 「馬鹿野郎! 俺が行けと言ったら行くんだ!」
 「顔がバレてしまったんです。みんなに知られてしまったし……もう誰にも逢
いたくない……私はもう終わりです……」
 「ばか。お前は真面目な学生だったんだろ。誰がこの写真のアバズレ淫乱女を
お前だと思う? 似てるけど別人だと思うさ」
 足立には思惑があった。
 「ただしだ。お前が大学に行く時は、この格好で行け」
 恵美子は自宅から出勤して来る時は地味な私服だが、店がはねて客とホテルに
行く時は、身体にぴっちりの超ミニ・ボディコンに着替えるよう命令されていた。
胸元が大きく空いているから、もちろんノーブラ。パンティだって時にはライン
が見えるからと穿けない事もある。身体に吸いつくような生地のせいで乳首はお
ろかヒップの谷間までくっきりと出てしまうのだ。裸よりボディラインが強調さ
れるこのボディコンドレスでは、誰がどう見ても、商売女だ。自宅に帰る時には、
彩香の目を気にして途中で元の地味な私服にまた着替えるのだ。
 こんなボディコンで大学に行くなんて! あの雑誌に載っている淫乱女は私本
人で、今や私は娼婦にまで堕ちましたと自分から宣言して歩くようなものではな
いか。
 「お前かもしれないし、そうじゃないかもしれない。学園の男どもを悩まして
やれよ。え? せっかく雑誌に載ったんだ。お前は自分の身体を使って自分を宣
伝するんだ」
 しかし、足立の真の目的は違っていた。恵美子を心理的に翻弄して、身も心も
娼婦にしてしまう事だったのだ。
 恵美子は、足立に従うしかなかった。彼女を最初に強姦した時の、足立のあの
恐ろしい目がいまだに脳裏に焼きついている。足立に逆らえば、どんな目に遭わ
されるか想像するだけでも恐ろしかった。


 言われた通りにノーブラ・ノーパンのスタイルで自宅を出た恵美子は、このま
ま電車に乗る事はどうしても出来なかった。駅の階段の昇り降りで、絶対にお尻
が丸出しになってしまう。お尻だけならいい。角度によっては秘部まで見られて
しまう恐れだってある。
 なけなしの金をはたいて、恵美子はタクシーに乗った。
 バックミラーを通して恵美子を視姦する運転手は、行き先が大学だと何度言っ
ても信用しなかった。
 「享和大学っていうキャバレー、あったっけ」
 「いえ。私は享和大学の学生なんです」
 「ふうん。最近の女は大学でまで客を拾うのか」
 運転手は軽蔑しきった表情で言い放った。そう言われても仕方のない恵美子の
スタイルである。
 久々のキャンパスは、恵美子の心を和ませるどころか、激しく傷つけた。
 彼女に注がれる他人の目には、軽蔑、侮蔑、軽薄な好奇心がこもっていた。あ
るものは見てはいけないものを見てしまったように恵美子から目を逸らし、ある
ものは遠くから恵美子を指差して猥雑な笑い声をあげた。
 クラスメイトで同じテニスサークルだった木村いずみは、恵美子を無視するか
のように、足早に彼女のそばを通り過ぎようとしたが、すれ違いざまに恵美子の
耳元で「見損なったわ」と言い放った。
 教務部でも恵美子は注目の的だった。講義要綱、履修案内など履修関係の書類
を受け取りに行ったのだが、係の男達は目くばせしあい、にやにや笑いながら彼
女にだけはなかなか書類を渡してくれようとはしなかった。
 カウンターの中の女性達は彼女を一目見ただけで、まるで汚いものを見るよう
な顔をして奥に行ってしまう。
 男達の卑猥な視線が恵美子の身体に突き刺さる。
 やっと教務主任らしい中年の男が書類を手にして奥から出てきた。
 いかにも欲求不満といった感じのその目は欲情に濁り、恵美子の身体の線を舐
めるように視姦している。見事な曲線をえがくバストからヒップ、すんなりした
ノーストッキングの脚。
 ほっそりした身体つきには不自然なほど大きな乳房がドレスの薄い布地を持ち
上げ、攻撃的に前に突き出している。猥褻そのものの大きな乳房になってしまっ
たことが今ほど恥ずかしいと思う事はなかった。
 しかしズボンの前を膨らませた男達の目でむさぼるように視姦されていると、
その屈辱から不思議な感覚が生まれてくるのだった。それは店内を全裸で歩いて
いる時よりもさらに刺激的だ。
 男達の視線に反応して、まるで触られたように彼女の乳首は硬くなった。
 もともと薄い布地なので乳首のありかがはっきり判ってしまうのだが、今や興
奮を隠しようもないほどぴんと大きくふくらんだ乳房の尖端の乳首は、ひどく淫
らだった。興奮から感じやすくなった乳首がドレスの生地に刺激され、いつもの
ようにその刺激が脚のあいだに伝わってゆく。
 超ミニのドレスの下で、何も身につけていない、むき出しの唇が充血して痛い
ほどになった。肉芽が摘まれたように立ってくるのもわかる。(ああ誰でもいい、
私に触って……胸もあそこも滅茶苦茶にして)
 急に熱っぽく、ぼんやりしてきた頭で恵美子は、目の前で自分をじろじろと視
姦しているこの貧相な中年男に今すぐ身をまかせたいとさえ思った。
 「そういうカッコウで大学にきてもらっては困るね。ここで客を引く気かい」
 あざけるような言葉に恵美子は、はっと我に返った。
 彼女を存分に目で犯し終えた教務主任が、書類をカウンターの上に投げ出して
いる。(なんということを考えてしまったのだろう。ここは大学なのに)
 恵美子は水を浴びせられたようなショックを受け、同時に肉襞の中がしとどに
潤ってしまっているのを知ってうろたえた。
 いつもの仕事のときのように、見られる快感にぐっしょりと濡れ、愛液が内腿
をつたう、そんな恥辱だけは避けねばならない。
 蜜があふれ出さないよう肉襞に力をこめ引き締めるようにして、恵美子はカウ
ンターの書類入り封筒を胸に抱えた。
 まだ硬く立ったままの乳首をそれで隠すようにして、教務部の建物から外に出
る。
 超ミニの下で剥きだしになっている、脚のあいだの部分を春の風が吹き過ぎて
ゆく。
 ぐっしょり濡れてしまった恥毛が貼りつくように冷たく、気持ち悪く感じられ
た。
 少しでも気を抜けば、自分の恥ずかしい部分も黒々と濡れてしまった草叢も人
目にさらされてしまう。
 恵美子はできるだけ背筋をのばし、超ミニの裾をわずかでも動かさないように
注意深く足を運んだ。
 春休み前までは真面目な学生だったのに、今では淫売扱いする空気に耐えかね
て、恵美子は履修届けを済ますとすぐにキャンパスを立ち去ろうと思っていたが、
学生部の掲示板を見ると足が止まった。
 そこには、春休み前と変わらない学生の世界があったからだ。休講の通知やサ
ークルの連絡。ワークショップ開設の告知や学生も参加出来る学会の開催の案内
もあった。かつて恵美子はこういう集まりには積極的に参加していたのだ。
 足立は授業にも出ていいと言った。セックス一辺倒だったこの二ヵ月近くの生
活から脱出出来るかもしれない。夜は娼婦もどきの生活をするにしても、昼間は
学生になる。
 恵美子は、そんな淡い期待を胸に、掲示板に見入っていた。
 その時。
 恵美子の胸を無遠慮に触って来る手があった。
 驚いて振り替えると、それは、あの達彦だった。その彼の周りには、彼女の属
していたテニス部の男子メンバーが八人ほどにやにや笑って立っていた。
 「よお、恵美子。お前、アレ、ほんとにお前なんだろ? その格好だもんな」
 そう言いながら達彦の手は、恵美子の腰からウェストのくびれをなでさすり、
胸をすくいあげるように鷲掴みにした。
 「何のことですか。私は知りません」
 恵美子は必死で抗弁したが、男達は誰も信じてはいなかった。
 いつの間にか彼らは恵美子を取り囲んでしまい、外からはなにをやっているの
か見えないようにしていた。
 「ノーブラかよ。お前、でっかい胸になったな」
 と言いつつ、達彦は恵美子の敏感な乳首を二本の指で無遠慮に摘まんだ。
 若い男の掌の熱い感触。さっきから触ってほしかった身体のうずき。非常階段
で達彦に犯されかけたあの時の、目くるめくように異常な快感。そしてこんな事
になってしまう原因になったあの写真。そんな記憶がまざまざと甦って来た。
 「私を罠にはめて楽しいの?」
 「罠? 何のことだ? お前、犯られ過ぎて頭がおかしくなったんじゃないか?」
 達彦はあくまでシラを切った。
 「それによ、そんなことはどうでもいいだろ。お前はしょせん淫乱なんだから
な」
 にやにや笑っていた連中の一人が、例の雑誌の巻頭ページを開いて恵美子に見
せつけた。
 「おお、すげえデカパイ!」
 と、一人がこれ見よがしに嘲笑した。
 「これ、お前なんだろ? そっくりだもんな。こんなに似てる他人の空似って
あるか?」
 「前からイケイケのヤリマンだったんだろ。お高くとまってたくせに、結局、
スキモノだったんじゃねえか」
 「私じゃありません! それじゃ、急ぐから」
 恵美子は達彦の手を振りほどいて立ち去ろうとした。
 「こっちのページには、店外デートもOKだって書いてある。ここだって店の
外だぜ」
 達彦はいきなり恵美子の尻の合わせ目を超ミニの上からむんずとつかんだ。
 「あっ、そこは駄目」
 身をかわす暇もなく恵美子のむきだしの秘所は、ぐっしょり濡れた叢ともども
達彦の手にしっかり捕らえられてしまった。
 「うお! ノーパンだぜ、こいつ!」
 驚いたのもつかの間、達彦の指はすぐに攻撃に転じた。
 恵美子の柔襞にすかさず二本の指をすべりこませる。
 教務部で視姦された時から充分に潤っていた秘部は難なく指の侵入を許してし
まった。
 達彦の指は恵美子の肉襞のなかを執拗にさぐり、最も感じる部分に達しようと
している。(ここは大学の掲示板の前なのに、テニスサークルの男子たちも大勢
見ているのに、私はこんなことをされている……)
 春休み前とはあまりにも違いすぎる男たちの視線の中で、しかし恵美子はどう
しようもなく感じ始めてしまっていた。
 「お願い、もうやめて」
 膝からすっと力がぬけて、立っているのもやっとだった。逃げなければ、と思
っても脚が言うことを聞かない。達彦の指に反応して腰を使いそうになってしま
うのをこらえるだけで精一杯だった。
 「身体は別のことを言ってるぜ。もうぐしょぐしょなんじゃないのか」
 自分を頭から軽蔑してロクに挨拶もしなかった恵美子、ツンと澄ましていつも
ケダモノを見るような眼で自分を見ていたこの美しい後輩を、達彦はもっと苛め
たくなった。
 「ほらこういうふうにして欲しいんだろう」
 達彦はぐちょぐちょと卑猥な音をわざとさせて恵美子の恥ずかしい部分に激し
く指を出し入れした。
 テニス部の男子たちは、依然として恵美子と達彦を人目から隠すようにとり囲
んでいる。
 入学以来、男たちの憧れの的だった恵美子、楚々として清純でしかも浩一とい
う恋人もあり、自分たちにはとうてい手が出ないとあきらめていた恵美子が今、
牝そのものとなって達彦になぶられている。
 誰かが恵美子の胸から書類のはいった封筒を取りあげた。
 それをきっかけに全員が一斉に恵美子の身体に手をのばした。
 乳房を揉みしだく者、超ミニの裾に手を入れてまくり上げる者、愛の蜜がつた
う内腿に手を入れてこじ開けようとする者、深い襟ぐりから乳房をつかみ出そう
とする者までいた。
 全員が恵美子の身体を遠慮なく触り、達彦の微妙なタッチにはとうてい及ばな
いその乱暴さに恵美子は初めて身の危険を感じた。このままでは服を破かれてし
まう。
 「誰か、助けてください」
 必死に大声を出すと、さすがに全員が一瞬ひるんで手を引いた。
 その隙に恵美子はスカートの裾を下ろし、走り出そうとした。
 脚は自分の流した愛液でぬるぬるになり、ミニドレスのたくし上がった裾から
は、濡れて掻きき乱された恥毛がのぞいている。しかも片方の乳房はドレスから
引っ張り出され、乳首までまる出しのあられもない姿だったが、そんなことは構
っていられなかった。
 が。
 誰かが彼女の足を引っ掛けたらしく、恵美子は派手に前のめりに転倒してしま
った。
 「うへえ。ミニがめくれてお尻が丸見えだぜ」
 達彦は恵美子を助け起こそうとするフリをして、恵美子の体を仰向けにした。
 キャンパスの空気に彼女の陰部が晒された。
 「おいおい。ここは聖なるキャンパスだぜ。猥褻なマン毛をむき出しにしてい
いと思ってるのかよ」
 恥辱のあまり、恵美子は口が利けなかった。
 達彦は、恵美子のぐっしょり濡れた下腹部に手を当てた。
 「店が開店するまで、まだ時間はあるだろ。ちょっと来いよ。話がある」
 「……何の話なの」
 「部の運営についてさ。お前も運営委員だったの、忘れたのかよ」
 他の部員は、恵美子を逃すまいと一斉に迫って来た。
 これでは彼らの言う通りにしないと、どんな恥ずかしい目に遭わされるかわか
らない。これからも出来れば大学には来たい。
 そんな恵美子の心を見透かすように、達彦が彼女の耳元で囁いた。
 「ほんとの事を知ってるのは俺だけだ。言うことをきけば、雑誌に載ってる淫
乱女はお前じゃないと言ってやる。俺はお前と寝た事があるから知ってるんだと
言ってやるぜ」
 そう言われること自体屈辱だが、真実がバレるよりはまだましだ。恵美子はや
むなく彼らに従った。部員たちは、恵美子を覆い隠すように取り囲むと、テニス
サークルの部室まで連れて行った。
 恵美子が部室に入るや否や、羽交い締めにされ、寄ってたかって服を脱がされ
た。
 「抵抗するなよ。服が破けてもいいのかよ。ハダカで電車に乗って帰る気か」
 達彦は自ら手を下さずに、その光景をにやにや笑って見ているだけだった。
 男達は恵美子を部屋の中央にある大テーブルの上に組み伏せた。
 チンピラのボスのように達彦が前に出てきた。彼が最初に犯す、という暗黙の
了解が出来ていたようだ。
 「学校にこんな格好でのこのこ出て来て、ただで帰れると思ってるのか。男を
漁りに来たんだろ? だったら御希望に応じてやるぜ」
 「放して! 大声を出すわよ!」
 「出してみろよ。恥をかくのはお前だぜ。パンツも穿いてないから一枚脱がし
ただけで、もうスタンバイOKじゃねえか。あっちこっちでお前が男を誘うとこ
ろを見たって証言があっという間に集まるぜ。裁判じゃ強姦罪は成立しねえな」
 達彦は、他の男によって大きく広げられた恵美子の足のつけ根に手を延ばした。
 「みんな見てろ。こいつのココはすぐ濡れるんだ。済ました顔して、もとから
ヤリマンなんだよ、この女は」
 達彦の指は、恵美子の秘裂をまさぐり、花弁に押し入って来た。
 達彦は恵美子のGスポットの場所を知っている。それどころか、恵美子の弱い
ところも熟知している。彼は両手と口を使って、恵美子の二つの胸と秘所を同時
に責め始めた。
 思い出の詰まった部室で、馴染みの顔がぎらついて見つめる中で、恵美子は犯
されようとしていた。(どうせみんなは私の事を、身体を売り物にする汚い女に
なってしまったとしか思ってないんだわ。ちょっと前まで仲間だったなんて思わ
ずに、そこらの淫乱の尻軽女を抱くとしか思ってないんだわ)
 そう思うと、恵美子はなぜか被虐的な喜びが身体の奥底から沸いて来るのを感
じた。
 どうせそうなんだから、思い切りめちゃくちゃにして。
 花弁が熱くなって来るのが自分でも判った。
 肉襞から蜜が再びどくどくと湧き出て来るのが伝わって来た。
 「な。もう濡れて来たろ。俺の指はべとべとだぜ」
 達彦は、恵美子の胸に愛蜜を擦りつけると、自分のスラックスを下着と一緒に
下ろした。
 恵美子の目の前に、達彦の反り返って聳り立つ肉棒が現れた。
 「こんな元気のあるヤツ、はじめてだろ」
 達彦は一気にソレを恵美子の秘部に突き入れた。
 恵美子は思わず声をあげた。
 恵美子にとっても、達彦のような若い男のそそりたつ男根は久しぶりだった。
 足立のモノは真珠が入って刺激的だが、そのモノ自体が強烈なのは、達彦の肉
茎が初めてだった。
 達彦はエネルギッシュにピストン運動を続けている。反り返ったモノが彼女の
Gスポットを往復で刺激する。敏感な秘部の入り口を太くて固いモノが出入りす
る。
 恵美子の身体中から汗がどっとふきだし、出てしまう声を我慢出来なかった。
 「いいのか。俺のがそんなにいいのか」
 「イイ……とってもイイ。もう、私……」
 「中年のジジイのフニャチンとは大違いだろ」
 達彦の手が、恵美子の乳房を押し潰した。恵美子は溜まらずに猥褻な声を上げ
てしまった。達彦のリズムにあわせて動きだしてしまう恵美子の腰。乳首を触ら
れるたびに背中に電気が走り、恥肉はきゅうっと締まって達彦のモノをぐいぐい
と締め付けた。自分を陥れた憎むべき男に抱かれながらも、どうしても感じてし
まう自分のからだが恨めしかった。
 「くそっ! 締めつけて来やがるぜ!」
 恵美子の秘所は濡れに濡れて、今やずぼずぼという音を立てている。
 「いくぞ。中に出すぞ。いいな」
 「だ、出して。中に出して!」
 達彦は奔流のように熱いものを恵美子の中にぶちまけた。
 その勢いを淫襞が受け止めて、目の前のすべてが溶けた。恵美子も大きな波に
飲み込まれて、めくるめく絶頂を迎えた。
 達彦が抜くが早いか、下半身をむき出しにして勃起したものをしごいていた男
が恵美子の中に入って来た。
 かつてない絶頂感にひたっていた恵美子は、その余韻をもう少し味わっていた
かった。
 「お願い……ちょっと休憩させて……」
 「そんな無理なこと言うなよ。ノンストップでいこうぜ」
 若い男だけが出来る疲れを知らぬ激しいピストン運動に、恵美子は酔い痴れて
いた。
 見ていた他の男が堪らなくなって恵美子の口に一物を押しつけて来た。それを
恵美子は口に含み、フェラチオを始めた。
 同時に二ヵ所を攻撃されて、恵美子の頭の中は真っ白になっていた。今は男の
モノを一心に感じていたかった。
 恵美子は、目の前に突き出された三人目の男の男根を手で握り締め、しごきは
じめた。
 恵美子の下半身で小さな爆発が起きた。続いて口の中でも爆発が起きた。
 手でやっていた一物からも熱い噴出があり、男は快感にすすり泣く恵美子の顔
に、びくびくと痙攣する男根を所かまわず擦りつけた。陶酔する恵美子の顔はみ
るみるうちに多量の精液にまみれてしまった。
 その時、部室のドアががちゃりと音を立てて開き、浩一が入って来た。
 浩一は一歩入って来て、目の前の状況に愕然とした。
 彼の目に入ったものは、自分の恋人だったはずの恵美子が全裸で数人に犯され
ている姿だ。恵美子の顔にはスペルマが大量にかかっているし、陰部からは彼女
の愛蜜とともに達彦たちの精液が漏れだしていた。
 「飯島。お前の恵美子はこの通りの超淫乱女だったぜ。お前も久しぶりなんじ
ゃないのか。仲間に入れてやるぜ」
 自分の性器を丸出しにしてソファにふんぞり返っていた達彦が、浩一に声をか
けた。(ああ、こんな惨めな姿を、浩一君に見られてしまった……)
 恵美子は、浩一が見ていると知りつつも、何も言えなかった。消えてしまいた
かった。
 浩一は、無言のまま達彦や恵美子を睨みつけると、身を翻して出て行った。(
そうよ。私はこういう女になってしまったのよ)
 浩一の背に向かって、恵美子はつぶやいた。


 それから数週間が経った。
 訣別したはずの浩一が、恵美子の店に来た。
 ボーイに案内されて、おどおどと入って来る浩一の姿を、恵美子は視界の片隅
で捉えていた。
 恵美子は浩一の座った隣のボックスにいた。
 「ねえ。口でやるよりアソコでやった方がいいんじゃない?」
 「え? いいのかい? ここはそういうコトする店なの?」
 客の方が驚いて恵美子に聞いた。
 「なんでもアリなのよ。あの雑誌読まなかったの?」
 そう言うが早いか、恵美子は自らパンティのストリングを解いて下半身を丸出
しにすると、客にまたがり、すっと腰を下ろした。屹立した客のモノがずぶずぶ
と恵美子の中に飲み込まれていった。
 「ああ。ナマはいいなあ。おっ。そんなに動かすと、このまま出ちゃうよ」
 「いいのよ。そのままナマで出して」
 恵美子がくい、と腰を動かすと、このウブな客はひとたまりもなく昇天した。
 それをキッカケに、ハッスルタイムが始まった。
 恵美子は勢いよくベビィドールを脱ぎ捨ててお立ち台に上がった。今注入され
たばかりの客の精液が恵美子の太股を伝って流れ落ちていた。
 激しいリズムに乗って、恵美子は腰を揺らした。むき出しの茂みがライトに映
えて、このうえなく卑猥な生物が蠢いているように見えた。
 恵美子は踊りながらお立ち台から降りると、全裸のまま客席を回り始めた。
 恵美子の身体に手を延ばして来る客には、彼女はしたい放題に触らせた。彼女
の乳房を吸う客もいた。彼女の陰部に指を入れて来る客もいた。
 恵美子は客の求めに応じて、またもや客にまたがって挿入させてやりもした。
他のホステスは、今やそんな恵美子を揶揄するでもなく、逆に感嘆して彼女を見
ていた。自分ではとてもここまでの事は出来ない、という表情である。
 音楽と照明が変わり、ハッスルタイムは終わった。
 恵美子は全裸のまま、他の客の精液を垂らしながら、息を弾ませて、浩一の待
つボックスに座った。
 「お待ちどうさま。わあ、嬉しい。他のコを呼ばないで待っててくれたの」
 恵美子は裸の身体を浩一に押しつけて、わざと営業用の口調で浩一に話しかけ
た。
 浩一は無言で薄い水割りを口に運ぼうとした。
 「私が飲ませて上げる」
 恵美子は浩一のグラスを取ると水割りを口に含み、浩一にキスした。
 口移しに液体が浩一の口に入った。
 恵美子は裸の胸を浩一に擦りつけた。普通の客なら恵美子を抱きしめて来ると
ころだが、浩一は何の反応も示さない。
 恵美子は浩一のズボンを下ろして彼の一物を手際よく引っ張りだすと、それを
優しく指でしごきはじめた。
 「見たでしょう。私の姿を。雑誌に載ってた淫乱女はこの私よ」
 浩一は無言のままだった。
 「いいのよ。軽蔑しても。でも、これが私の今の姿なんだから」
 浩一の頬から液体が滴り落ちた。浩一は泣いていたのだ。
 「いいよ。そんなことしないでくれ」
 浩一は恵美子の手を押さえた。
 「話をしよう」
 「ここはお話をするところじゃないの。アレを出すところなの」
 恵美子は浩一の制止を無視して、彼のモノを口にふくんだ。
 その抜群の舌の動きに、浩一の一物は心ならずも勃起してしまった。
 「ほら。なんだかんだカッコつけても元気になったじゃない」
 恵美子は自ら彼にまたがった。
 「ね。私にこういうことをして欲しかったんじゃないの」
 「違う。今の君は……」
 浩一は絶句した。恵美子の肉襞が激しく浩一の男根を締めつけて来たからだ。
 「君はいつの間に、こんなコトを覚えてしまったんだ……まるで君は……」
 「そうよ。今の私はセックスを売り物にしてる淫売よ」
 「そんな言葉を使うんじゃないよ。教室でいつも教授に質問を浴びせかけてい
た君はどこに行ってしまったんだ……男に媚びなんか売った事のなかった君はど
こに行ってしまったんだ」
 「私は私よ。女として磨かれただけのことよ。キミは私を磨けなかっただけ」
 恵美子は腰を動かしながら、わざと浩一を傷つけた。
 「私はここで女として一流になったわ。他のホステスを見てよ。私が入った頃
はみんな馬鹿にしてたのに、今では私に何も言えないわ」
 浩一は、うっと呻いて身体が海老のように反り返った。
 「いいのか。中に出しちゃったんだぞ」
 「いいのよ。それが私のサービスなんだから」
 浩一は、他の男の精液がこびりついた恵美子の太股を凝視していた。
 「軽蔑してるのね」
 「そうじゃない……」
 浩一はしばらく恵美子の顔を見つめていた。
 恵美子の美しさは、身体は汚れてしまったとしても、以前と同じ美しさだった。
いや、その清楚な美しさにはいっそう磨きがかかったようでもあった。
 「いいかい。笑わないで聞いてくれ」
 「いいわよ」
 「僕と結婚してくれないか」
 「よしてよ。私がどんな女になってしまったか、今見たでしょう」
 「判ってる。けどこれは君の本意ではない。君は罠にはめられたんだ」
 「知ってるの……」
 浩一は恵美子の手を握り締めた。
 「ああ。達彦が教えてくれたよ。あいつは僕と君の仲を完璧に裂きたかったん
だ」
 「その計画は見事に成功した訳ね」
 「どうして。僕は君と結婚したいんだと言ってるじゃないか」
 意外な申し出に、恵美子は信じがたい表情で浩一を見た。今まで恵美子を口説
く客は大勢いた。結婚を口にする客もいたし、店を辞める交渉をしてやろうと言
う客もいた。しかし、そんな客はみんな恵美子と数度寝たら、もうそんなことは
口にしなかった。それは客とホステスの間の『お約束』だったのだ、と恵美子は
理解したのだった。
 「ダメよ。私はあなたの奥さんなんかになれないわ」
 「どうして?」
 「もう一人の男じゃ満足出来ないかもしれない」
 「君はそんな人じゃない」
 「それに……子供だって産めるかどうか判らないもの……」
 「…………」
 「私、もう何度も堕ろしてるのよ……最近、ナマでやっても妊娠しないわ……」
 「そんなこと……」
 浩一の声が弱くなった。
 「今夜、時間ある?」
 ああ、と浩一は答えた。
 「じゃあ、ホテルに行きましょう。ここじゃ出来ないことをして上げる」
 「違うんだ。僕は真剣なんだ」
 「私も真剣よ」


 店がはねるまで、浩一は何度もお直り料を払い続けて恵美子を待っていた。そ
の間恵美子は他の大勢の客のモノをしゃぶり、挿入させ、何度かのハッスルタイ
ムをこなした。
 それを浩一は黙って、時には涙を流して見ているだけだった。
 ホテルで、恵美子は浩一に最高のテクニックを使ってやった。ほんの少し前ま
で正常位しか知らなかった恵美子なのに、今では幾つもの体位を使いこなしてい
た。
 浩一も、さんざん目の前で恵美子のセックスを見せられていたから、その怒り
とも鬱憤ともつかないエネルギーを恵美子の身体に浴びせて来た。
 恵美子が後ろも出来るのよ、と言うと、浩一はアナルまで責めて来た。
 その激しい腰の使い方は、あの淡白なセックスしかしなかった浩一と同一人物
か、と思うほどだった。
 激しいセックスの後、二人はベッドに横たわっていた。
 浩一が何か話しだそうとする気勢を制して、恵美子が先に口を開いた。
 「楽しんだ?」
 恵美子は、浩一に手を差し出した。
 「お金をちょうだい」
 浩一は驚きと怒りの表情を隠せないでいた。
 「だから言ったでしょう。私はこういうことでお金を稼いでるの。プロなのよ。
だから、お金を貰うわ」
 「だから、そんなことは……」
 「ただでやると、私のプロとしての誇りが傷つくわ。私の事を思ってくれるの
なら、お金をちょうだい。他ならぬ浩一君だから、高い事は言わないわ」
 浩一は黙って財布を恵美子に放り投げ、背を向けた。
 恵美子の中で一つの区切りがついた。




第四章 地下牢の中の性奴



 恵美子のヌード写真が添えられた記事がスポーツ新聞のピンク情報のページに
踊っていた。『私、生まれつきの淫乱なの。男の人のアレが私の中に入ってるだ
けで、幸せなの』
 というような淫乱女が男を挑発する猥褻極まりない内容だ。
 彩香は、毎朝通学のため乗る電車の中でそのいやらしい記事の主役が自分の姉
らしいと察して以来、電車に乗るのが苦痛で堪らなくなった。
 彩香は姉の恵美子の行動が理解出来なかった。
 春休みの頃から姉の帰りは毎晩のように明け方で、もっと遅いときには学校に
行く彩香とすれ違いになることもしばしばだった。学校行事の関係で早く帰って
も、恵美子は疲れ切って夕方まで寝ている。
 そんな姉を見て、彩香は、尋常ではないものを感じていた。あれほど熱心に大
学に通い欠席したことなどなかった姉なのに。門限はきちっと守り、酒臭い息を
して男の匂いまでさせ淫猥な雰囲気のまま朝帰りなんかする事など決してなかっ
たのに。
 おまけに、しばらく旅行すると言って帰って来た姉の身体が変わっていた。ど
う見ても胸がふた回りも大きくなっているのだ。
 姉の小さなバストは、知性美を感じさせていたのに、あの醜悪なまでの巨大な
バストはむき出しの性器のような淫猥なイメージを伝えるばかりだ。
 たまの休みに姉と一緒に買い物に行くと、彼女の細い身体には不釣り合いに大
きくてブラをしていてもゆさゆさと揺れる胸を、通りすがりの男はみんな食い入
るように見つめて行く。乳房が性器の一部である事を、彩香は初めて実感した。
 なんのために、こんな整形までしたのだろう。姉は一体何を思っているのだろ
う。
 彩香は、いろいろ姉に問いただしたかったが、本当のことを聞くのが怖くもあ
った。
 今や恵美子は、いやエロ記事に登場する『エミちゃん』は淫乱女子大生の代名
詞のようになってしまった。「ピンサロのスター」としてAVにも出演し、彼女
のヌードは週刊誌にも載るようになっていた。本屋に行けば男性週刊誌の表紙に
は必ず『エミちゃん』の名前がある。レンタルビデオ屋に行っても姉の艶めかし
いポスターがでかでかと張ってある。
 姉は一体いつからこんな淫乱になってしまったのか。姉が水商売のアルバイト
をしているらしいとは薄々感付いてはいたが、あの姉が、自分の姉が、こんなに
ふしだらで軽薄で淫乱な女だったということを、彩香はどうしても認めたくなか
った。
 幸い、彩香の周りではあの『淫乱エミちゃん』と彼女の姉の恵美子を同一人物
だと思う人はいなかった。親戚の誰も恵美子の真の姿を想像すらしていなかった。
誰かにバレるのではないかと、恵美子本人より彩香がはらはらしている始末だっ
た彩香は、姉がいない時に、クローゼットを覗いてみた。
 その中には、かつて姉が好んだ地味目の服は姿を消して、派手派手のボディコ
ンや超ミニ、下着と見紛うような挑発的な服しかない。
 下着も同様。着る方が恥ずかしくなるような物ばかり。すべてのパンティはシ
ースルーで、隠す部分がほんの少しのTバックが大半。中には大切な部分に穴が
空いているものや、ほとんど紐で、わざわざ穿く意味の無いようなモノさえあっ
た。
 そのうえ、英語の原書の詰まった本棚の隅っこには、恵美子の過激なヌードの
載ったエロ雑誌が何冊も差し込まれていた。
 あわてて仕舞おうとすると、その雑誌に挟まれていた数枚の写真が床に落ちた。
 グロテスクなほど大きな胸を欲情的に持ち上げて、乳首を摘んでうっとりして
いる。挑発するように足を大きく開き、自分の指で花弁を押し広げている。自分
の指を秘所に入れてオナニーしている。他ならぬ恵美子が卑猥なポーズを取って
いる写真ばかりだった。
 彩香が思わず目を背けたのは、恵美子が排泄をしている写真だった。屋外で全
裸になった姉がしゃがみこんで小水をしている。別の写真では、あろう事か、固
形物が、恵美子の尻から出て来るところが捉えられていた。
 勉強が好きで、真面目で清純だった、私の姉はどこに行ってしまったのだろう。
姉はどうしてこんなにも変わってしまったのだろう。これでは色情狂そのもので
はないか。
 彩香は震える手でそれらの写真を元に戻しながら暗澹たる気持ちになった。
 彩香の好きだった姉が死んでしまったような気持ちだった。今の姉は外見はそ
っくりだが心が入れ代わった別人だ。
 最近では家に男を上げるようになっていた。深夜、彩香が寝ていると信じてい
るのか、恵美子は自室で男とセックスをし始めた。くすくす笑いと息遣い、それ
がだんだん喘ぎ声に変わっていく。ベッドのぎしぎしと軋む音。肉が肉に当たる
ぴたぴたという音。男根と淫肉が擦れあう、ねちょねちょという音。男が思わず
漏らす陶酔した声。恵美子の声はだんだんと遠慮の無いものになっていった。そ
んな気を使えないほどの状態になっていたのだろう。
 ドアを通して恵美子の絶頂に達する淫猥な声が響いて来た。
 彩香は耳を塞いで聞くまいとした。
 あんな汚れた声など、絶対に聞いてやるものか。
 朝、玄関口に脱いである男の靴を踏ん付けて、彩香は登校した。恵美子が男を
自宅に連れ込むようになってから、彩香は姉と顔もあわせず、口もきかなかった。
パパやママが日本にいなくて本当によかった。彩香はそう思った。
 恵美子は、しばらく東京を離れていた。
 大学の夏休みにあわせるかのように、足立に命じられて、地方のキャバレーや
ストリップ劇場の巡業に出かけていたのだ。もちろん彩香には『アルバイトで出
張します。留守中よろしく』と書き残して行ったのだが。


 一学期の終業式の帰りの電車の中にも姉の淫乱記事が溢れていた。
 彩香は重い気持ちのまま学校から帰って来ると、誰もいないはずの家に、足立
がいた。恵美子が頻繁に連れ帰っていたのは、この足立だった。
 「姉は出張です」
 彩香は軽蔑を露わにして言った。
 「判ってますよ」
 足立はそんな彩香の態度を気にもしない。
 「なら、帰ってください。私、これから勉強しなければいけませんから」
 「今日から夏休みなのに、お勉強ですか」
 足立は彩香を見て、誠実そうな笑みを浮かべた。この笑みが足立の武器なのだ。
 「君の姉さんが、何の出張なのか、知ってるの?」
 「知りたくありません」
 「君は、姉さんを誤解している。姉さんは罠にはめられたんだ」
 足立は意外な事を口にした。
 罠にはめられた? お姉さんが?
 「姉さんは恋人と仲良くしている所を写真に撮られて嚇されてたんだ。金を払
えばネガを渡す、とね。お姉さんはお父さんの事を考えてスキャンダルになるの
を恐れて借金して金を払った。しかし、金を借りた所が悪かった。悪徳業者でね。
そいつらがボクの店に彼女を紹介して来たのさ。その話を彼女から聞いて、ボク
は親身に相談に乗って上げてたの。男と女だもの、そういうことで仲良くなって
もおかしくないでしょう?」
 足立は都合のいい嘘をしゃあしゃあと喋った。
 「でも、姉は変わってしまったんです。だって……私、毎日聞いていたんです
……」
 「なにを? 姉さんとボクがセックスしてるところかな」
 彩香はこくりと頷いた。そのしぐさがふとあどけなさを感じさせて可愛い。
 足立はそんな彩香にどんどん迫って来て壁際に追い詰めた。
 「こういう世界はね、一度色に染まると、一生抜けないんだ。君の姉さんは悪
い事に染まりかけてる。ハタチそこそこの女の子が娼婦みたいな雰囲気を漂わせ
てるんだよ。見てみろよ、この写真」
 ポケットから足立が出して見せた姉の写真は、全裸で男と絡んでいるものだっ
た。
 彩香は思わず目を背けた。排泄をしている写真よりもグロテスクだった。
 「目を背けないで、よく見るんだ!」
 足立は彩香の髪を掴んで写真の方に顔を向けさせた。
 その写真の中の恵美子の性器には、背後から巨大な男根が深く挿入されていた。
男の指が、肉茎を咥えこんでいる恵美子の花弁を大きく押し開いている。勃起し
た肉芽まで丸見えだ。
 こんな写真を見るのは初めての彩香は、ショックを受けた。
 「ストリップの売り込み用の写真だ。本番ナマ板ショーは常識だからな。姉さ
んは舞台ではもっとすごいことをするぞ。しかしな、いくら仕事とは言っても、
姉さんのこの表情を見ろよ」
 足立に促されて、彩香は恵美子の下半身から顔に視線を向けた。
 恵美子の表情には、なんともいえない色気があった。目は艶やかに潤んでいて、
相手の男をじっと見つめている。
 「姉さんを本物の娼婦にしてしまってもいいのか?」
 まさに、写真の中の恵美子は娼婦というより淫売、と言った方がぴったりきた。
 「姉さん……」
 彩香は、ここまで堕ちてしまっている姉の境遇が不憫でならなかった。
 「君が姉さんの事を本気で心配しているのなら、姉さんを救って上げたいと思
わないか?」
 「思います。でも、どうやって……」
 「はっきり言って、若ければ若いほどこの世界では金になる。ただ一時の事じ
ゃないか。二人で力をあわせれば、あっという間さ」
 「あ、あなたは、私にも姉と同じ事をしろって言うのね!」
 足立は真剣な表情を作って頷いた。
 「若い女というだけで金になる世の中なんだよ。金があればなんとかなる時に、
自分の武器を使わないでどうするんだ」
 「でも、私、まだ高校生だし……」
 足立は彩香の腕を掴み、床に押し倒した。
 「高校生だからいいんじゃないか。いいか。妹である君が協力すれば君の姉さん
もこの商売を辞める事が出来るんだ。そうすれば姉さんも色に染まらないで元の普
通の生活に戻れるんだ」
 そこまで言われたら、彩香としても嫌とは言えなかった。
 なんと言っても、彩香にとって恵美子は大切な姉だった。それにこんな事をい
ったい誰に相談できるだろう。姉があの有名な『淫乱エミちゃん』本人であるこ
とを明かすことは絶対に出来ない。自分さえ少し我慢すれば、そうすれば誰にも
知られずに姉を救い出すことができるのなら……。
 彩香は力なく答えた。
 「……私は、何をすればいいんですか」


 彩香は、『シャングリラ』に連れて来られた。
 恵美子が新人として入店した時と違って、今ではショーが目玉の店になってい
た。その功績は恵美子にあった。
 恵美子の強烈なオナニーショーや客席を回っての本番ショーが大評判になり、
恵美子以外のホステスもやり始めたのだ。
 「せっかく君が決心したんだ。君を少しでも高く売ってやろうじゃないか。そ
れが俺の好意ってもんだ」
 「高く売るって、何を」
 足立は、先ほどまでの親切そうなソフトな表情とは一転して、恵美子を犯しま
くった、あの時の野獣のものになっていた。
 「うるせえな。お前が処女だってことは知ってるんだ! だから高く売ってや
ろうって言ってるんじゃねえか!」
 「高くって、な、なにを……」
 足立はそれには答えずに彩香をステージの袖に引き出した。『シャングリラ』
のお立ち台は広げられて、ちょっとしたステージになっていた。
 木田は気を持たせて舞台の袖に控える足立と彩香の方を見やった。
 「お待たせしました! これより処女の競売です!」
 彩香は、競売されるのが自分だとは一瞬わからなかった。
 足立は彩香の背中を思い切り舞台に向かって押し出した。
 彩香は、連れて来られたままの有名私立女子高の制服のまま、舞台にまろび出
た。
 白のブラウスに胸元を結ぶ紺のリボン、紺のブレザー。白のハイソックスが愛
らしい彩香の清純さを嫌がうえにも際立たせている。
 舞台に立った彩香は、欲望で充血した目の男達で満席の客席を見て、足がすく
んだ。
 タイミングよく舞台に上がった木田は、そんな彩香の腕をしっかりと掴んで離
さない。その脇には、助手として栗橋が控えていた。
 「青井彩香ちゃん。十七才です。彩香ちゃんのお姉さんは、いわずと知れた、
あの淫乱女子大生のエミちゃん。淫乱の血統書つきです! 処女で淫乱! あど
けない顔をした処女の娼婦! これを逃すと絶対に後悔します!」
 客席の男達は、木田の煽りたてる台詞を聞いて彩香の清らかな姿に目が釘付け
になった。
 「ではこれから、この彩香ちゃんの処女の証明をいたします」
 木田はいきなり彩香の胸を掴んだ。彩香は思わず恐怖の声をあげた。
 「この通り感度は良好」
 木田は栗橋の力を借りて彩香の服を脱がしにかかった。
 「お願いです! 私、こんなつもりじゃなかったんです! 違う事ならなんで
もしますから。だから……」
 「なに? 俺には何にも聞こえないよ」
 木田は彩香のブレザーを脱がすと、客席に投げ込んだ。
 「ブルセラ・ショップで買うと三万以上する清陵女子高の制服ですよ! おま
けに脱ぎたてのホヤホヤだ!」
 木田と栗橋は手際よく彩香のタータンチェックのスカートのホックを外し、彼
女が抵抗するすべもなくぱさりと床に落とした。(いけない。このままでは私は
大変な事をされてしまう)
 我に返った彩香は木田と栗橋の手を振りほどこうとしたが、栗橋は渾身の力を
込めて彩香の両手を背中に捩じ上げた。
 彩香の両手に激痛が走った。
 舞台の天井からは、ロープに吊るされたフックが降りて来て、栗橋は彩香の胸
元からリボンを抜き取ると、それを使って一気に彼女の両手首を縛り上げ、フッ
クに引っ掛けて固定してしまった。
 天井から吊るされた格好になった彩香は、もう身動きがとれない。
 木田は、彩香の後ろに回って、白いブラウスのボタンを一つ一つ外していった。
 その下からは、清純な白のブラジャーが現れた。レースなど付いていない、ま
ったくプレーンなブラ。それは、大切なものを守る健気なものに見え、かえって
男達の劣情を痛いほどに刺激した。
 木田は、彩香の小さな胸を、後ろからブラ越しに揉みしだいた。
 「や、やめてください……」
 彩香の頬に一筋の涙が流れ落ちたが、今やそれは木田や客の興奮を煽るだけだ。
 さんざんじらしてからホックを外し、カッターナイフでストラップを切った木
田は、彩香のブラを一気に剥ぎ取った。
 客席からはどよめきともため息ともつかない異様な声が上がった。誰にも蹂藺
されていない、少女だけが持つ震えるような柔らかな産毛の生えたこぶりの乳房
が、ぷるんとまろび出た。木田は、これも買うと高い! と絶叫して彩香のブラ
を客席に投げた。客席では、客同士がそのブラを巡って大人げない争奪戦を演じ
た。
 前をはだけたブラウスの下は、もう小さな白のパンティだけだ。
 そのパンティに手を延ばそうとする木田を、彩香は身をよじらせて避けようと
したが、それが余計に艶めかしく見える。
 木田は、わざと乱暴に、彩香の股間をむんずと掴んだ。
 「おやおや! これはこれは!」
 木田は、股間を掴んだ手をこれ見よがしに嗅いで見せた。
 彩香は恐怖のあまりか、失禁していたのだ。
 栗橋がスポットライトを彩香の股間に当てた。
 小水で濡れた彩香のパンティは、強烈な光を当てられて、薄めの茂みを透かし
て見せていた。
 「どうです。この身体。脅えちゃってオシッコ漏らすなんて、可愛いじゃない
ですか」
 木田のその言葉に、彩香は死にたくなった。事実こんな屈辱を受けるなどと
いう事は、今まで想像すらしたことがなかった。
 「これほど無垢な処女ですから、お買い求めになったお客様の思うがままに教
育してください」
 彩香を吊っているロープが緩められ両手を自由にされて、栗橋が背の高いスツ
ールを運んで来た。
 「さ、これに座って小便漏らしたパンツを脱ぐんだ」
 ヒッと、喉の奥で彩香は悲鳴を上げた。
 「自分で脱がないと俺達が脱がすんだぞ」
 木田は彩香の耳元で囁いた。
 「踊りながら脱いでもらおうか」
 そんな屈辱には、とても耐えられない。
 彩香は流れる涙を拭おうともせずに、パンティを下ろした。が、どうしても少
し下ろしただけで、それ以上脱ぐ事は出来なかった。
 木田の合図で、栗橋が彩香のパンティに手をかけると、無残にも一気に足首ま
で引き擦り下ろした。同時にブラウスも剥ぎとられてしまった。
 丸裸にされた彩香は、あまりの屈辱に思わず両手で顔を覆うと、スツールから
降りてしゃがみこもうとした。
 木田はすかさず彩香の身体をスツールに乗せ直すと、思い切り膝を掴んで、両
足を広げた。ここまで広げられると、もう自分の力では閉じられない。
 「これが処女の証拠です。ピンクの下の唇を見てください」
 木田は、彩香の柔肉を指で無理矢理押し広げた。客たちはにじり寄って来て彩
香の、その一番恥ずかしいところを凝視した。
 死にたいほどの屈辱。
 「値段の張るお買い物ですから、どうぞお気の済むまでお試しください。ただ、
指だけは入れないように。処女の価値を損ないますからね」
 客たちは彩香の花びらや乳房に無遠慮なタッチをして来た。彼らは、その感触
によって値踏みをするのだ。
 今日は、常連の中でも特に選ばれた客しか招待されていない。彼らは思い思い
の表情で、彩香の淡いピンク色の乳首を摘まんだり、舌で転がしたり、はたまた
姉とは違って薄い恥毛で覆われている下腹部に手を延ばし、まだ男を知らない亀
裂の感触を楽しんでいた。
 中学の頃から女子校で、まだ異性とのキスの味も知らない彩香にとって、何人
もの男たちから指や舌で一番恥ずかしい部分を愛撫される事は、地獄の責めに等
しかった。
 一応他人の目を気にして、あまりえげつない事をしない客の中で、一番身だし
なみが下品で、ぺっぺと唾をフロアに吐いている頭の薄いオヤジは、自分の順番
が来ると、いきなり彩香の股間に顔を埋め、秘裂に沿って舌を這わした。
 その感触に、彩香は卒倒しそうになった。一番汚らわしい男が、一番汚らわし
い行為を仕掛けて来たのだ。
 しかし木田は、それを見ても何もいわなかった。
 その男は、舌が彩香のピンク色の肉芽に行き着くと、胸に手を延ばし、乳首を
くりくりと弄り始めた。舌は肉芽をちろちろと刺激している。
 上と下の同時攻撃。今まで経験した事のない刺激を身体の一番敏感な部分に受
けて、彩香に背中には電気が走った。それは、快感ではない。かといって屈辱か
ら来る汚らわしさのショックでもなかった。
 男の舌は、肉芽から徐々にまだ男を受け入れたことのない花びらに移って来た。
 そのぬめぬめした感触に耐え切れず、彩香は足をがくがく震わせ始めた。
 「なんだ。処女のくせに感じてるのか」
 男はうひひ、と下卑た笑いを漏らすと、舌をその恥肉の中に潜り込ませて来た。
 木田は、見て見ぬフリをして、他の客に話しかけた。
 「皆様すでにご承知の事とは存じますが、一応言っておきます。この処女の彩
香ちゃんを競り落としても、決して自宅に連れ帰って奴隷にするとか自分だけの
愛人にするとか、そういう考えは起こさないよう、お願いいたします。所有権は、
あくまで、このお店の中だけ、という事で」
 それを聞いて、彩香は地獄の中で一筋の光明を見出したような気がした。
 もしもこの男に競り落とされて、どこか見知らぬ場所に監禁されて一生こうい
うことをされるのかと思うと、いっそここで舌を噛み切って死んだ方がましだっ
た。残される姉には申し訳ないが、こんな最低の男に自分の身体を自由に弄ばれ
るくらいなら、死んでしまった方がどれほど楽な事だろう。でも、そうではない
らしい。(店の中だけ?)
 新たな疑問が彩香を襲った。それはどういうこと?
 しかし、彩香の思考は、男の舌と指の攻撃で中断された。男は彩香の可憐な花
弁を指で押し広げ、誰も触れた事のない内側を舐め始めたのだ。
 「い、い、嫌です。もう止めてください」
 彩香の全身に嫌悪感が走り、鳥肌が立った。
 木田も、そんな彩香の様子を見て止めに入ろうとした。
 「ま、なかなかのもんじゃないか、え。木田君よ」
 男は顔を上げて木田を見た。
 「処女らしく、ここの匂いは臭いねえ。処女ってもんは、どれもこれも使わな
いところを洗わないのかねえ」
 「は。さすが関屋様。処女の証拠をずばりと御指摘くださいまして」
 木田は恐縮した様子で言った。
 「いいよ。競売を始めてくれよ」
 関屋と呼ばれたこの男の言葉をきっかけに、競売が始まった。
 競り値は、五百万から始まった。
 自分に値段がつけられる。
 丸裸にされた自分の身体に値段がつけられる。私の人格や成績や今までやって
来た事などまるで関係なしで、肉体そのものに値段がつけられる。今の日本の社
会では到底考えられない事が、自分の身に起こっている。
 彩香は、今でも進行している事態を信じられないでいた。たくさんの男達に身
体を見られ、触られ、舐められた感触が残っているのに、まるで夢を見ているよ
うな気分だった。
 競り値は、あっという間に一千万に達していた。
 彩香は、観念した。もうこの異常な事態は夢ではないのだ。一度は足立にやる
と言ってしまったのだ。姉のためだ。やるしかない。でも、出来る事なら、競り
落とされるならば、あの関屋でない客がいい。関屋に競り落とされる事だけは許
して欲しかった。
 しかし、無情にも、競り値が千五百万になった時、手が上がったのは関屋だけ
だった。
 「はい。関屋様。千五百万でお買い上げ」
 彩香は茫然とした。あの関屋が自分の身体を千五百万で買ってしまった。その
値段が高いのか安いのか、彩香には判らなかった。
 舞台から降ろされた彩香は、関屋の膝の上に無理矢理座らされた。彩香は彼女
が一番嫌悪する男に買われてしまったのだ。
 関屋はきゃしゃな彩香の両肩を抱きかかえると、彼女の可憐な唇に自分の分厚
く醜い唇を押し付けた。
 息が出来ずに彩香が口を開けた瞬間、関屋の蛇のような舌がどろりと彼女の口
の中に侵入した。これが彩香のファーストキスだった。(し、死にたい……)
 彩香は本当にそう思った。涙があとからあとから沸いてきた。
 客席から拍手が沸いた。
 「はい。契りの口付けでした!」
 木田が声を張り上げた。
 「彩香。お前は今日から関屋様の持ち物だ。言っとくが、別に関屋様の愛人に
なるわけじゃないぞ。競馬馬みたいなもので、お前の姉さんみたいに客はとるん
だ。ただ、お前は関屋様好みに調教されて、お前が儲けた金は関屋様に行くって
寸法だ」
 にやにや笑う関屋の横で、木田が自分に話し掛けていたが、彩香には、その声
は聞こえなかった。ただ、『調教』という言葉だけが頭の中で鳴り響いていた。
『調教』? 人間が人間を調教する?
 彩香がその言葉の意味を知ったのは、別室に連れ込まれてからだった。


 「関屋様」と書かれた荷札を首からぶら下げられた彩香は、そのまま別室に連
れていかれた。
 そこは元々倉庫に使われていたところだったが、彩香の調教のために改装され
ていた。
 十畳くらいの広さの空間には、ビッグサイズのベッドがあり、コンクリート打
ちっぱなしの壁にはちょうど彩香の身長に合わすかのように上下に鉄輪が作りつ
けてある。その横には、どういうわけか、シャワーが取りつけられている。
 コンクリートの床は水捌けが良くなるように適度な傾斜がつき、排水溝に導か
れていた。
 「お前は夏休みの間、ここで暮らすことになる。九月までにご主人の関屋の思
う通りに仕上がるように頑張るんだな」
 足立は、彩香をベッドに押し倒すと、彼女の唇を奪った。
 「お前は、関屋の注文に従って調教される。お前は関屋に優先的に抱かれるこ
とになるが、もちろん他の客にも抱かれるんだ。一人でも多くの客のナニを咥え
こんで稼ぐ事だ」
 情け容赦ない足立の言葉に、彩香は自分がどう言う身分になってしまったのか、
ハッキリと判った。
 性奴隷、だった。


 「とりあえず、お前の身体をきれいにしてやろう」
 彩香の調教師を命じられたと言う堀切と名乗る男は、彩香を壁に向けて両手を
壁の鉄輪に取りつけながら言った。
 「あの、せめて、なにか着るものを……お願いですから……」
 「なに言ってるんだ。これから身体をきれいにしてやろうって言ってるんだ。
お前は風呂に入るのに服を着て入るのか?」
 彩香の両手は鉄輪に取りつけられて、身動きが出来ない。そんな彼女に、堀切
はいきなりホースで水を浴びせた。
 「あぁっ、冷たいっ……ど、どうして、こんなひどいことを……」
 「へ。若い女はいいねえ。見ろよ。脂のノった肌が水なんかぜんぶ弾いちまう」
 堀切は洗面器に作ってあった水溶液を、浣腸器で吸い上げた。
 彩香は浣腸などした事がなかったから、堀切が持つ大型の浣腸器が、どんな意
味を持つのか判らなかった。
 堀切は、彩香の尻を触った。
 「すべすべして最高のケツだぜ」
 堀切の指が、いきなり彩香のアナルに入って来た。彩香は腰を引いて逃れよう
としたが、両手が固定されているのでどうしようもない。
 「逃げてもダメだ。ほら、もう指が第二関節まで入ったぜ」
 堀切は、彩香のアナルをこねくり回した。
 「ああっ、そこは、そんなことをするところじゃありません……や、やめて…
…」
 堀切は、止めるどころか指をもう一本増やしてアナルを押し広げた。
 「は、恥ずかしい……」
 「ふん。もっと恥ずかしい目に遭わせてやるぜ」
 堀切は、浣腸器を彩香の肛門に押し当てた。今、指で押し広げられたばかりだ
から、硝子の管は難無く彩香の中に消えて行った。
 「なにを入れたんですか! ぬ、ぬいてください」
 堀切は無言で、浣腸器のシリンダーを押した。
 冷たいグリセリン溶液が、彩香の直腸に奔流のように流れ込んだ。
 「い、いや。そんなところに変なものを入れないで!」
 堀切はシリンダーを押し切ると、先端の管をグリグリと回して彩香の肛門を責
めた。
 「ううっ。いやです……お尻をそんなふうに虐めないで……」
 彩香は、腹が熱くなって来るのを感じて狼狽した。やがて熱さは痛みとなって
彩香を襲って来た。
 「な、なにをしたのですか! もしかして、私に、か、か」
 「そうさ。浣腸をしたんだよ」
 彩香の腹は堪え難い痛みに苛まれ始めた。ぐるぐるという音が部屋の中に響い
た。
 「お願いです……手の鎖を外して……お手洗いに行かせて……」
 「なに言ってるんだ。お前はこの部屋から一歩も外には出られないんだよ。ク
ソをするのも、小便をタレるのも、全部この部屋でするんだ」
 「で、でも、ここにはお手洗いがありません……」
 「床にぶちまければいいだろ。この部屋はな、どんなに汚れても水で洗い流し
やすいように出来てるんだ。お前がどんなに臭いクソをタレても平気だよ」
 「そ、そんな……こんなところで……お願いします……」
 そう言っている間に催してきた。抵抗は形ばかりだった。彩香は太股を固く閉
じて耐えようとしたが、あまりの強烈な便意に、腰がぶるぶる震えて来た。
 「なに感じてるんだ。ケツがダンスしてるぜ」
 「お、お願いします……お手洗いに……」
 「いいか。セックスってのは羞恥心があってはダメなんだ。お前の姉ちゃんも、
羞恥心を捨ててからセックスが良くなったしな。今度お前のハメ狂い姉ちゃんに
聞いてみろ」
 あああ、と彩香は気が狂いそうになった。(こんな男の目の前で排泄をするな
んて。それだけは絶対に避けなくては! )
 しかし、堀切の手が彩香の内腿に触れた時、彩香はびっくりして肛門の括約筋
の力をすこし抜いてしまった。
 ぴ、という音がして、彩香のダムは崩れ始めた。内腿を茶色の液体がすーっと
伝った。それは決壊の前触れで、すぐに本震がやってきた。
 彩香の尻は今から起こる事の恐怖でぶるぶる震えた。
 ああ、と彩香の口から絶望的なため息が漏れた途端。
 びびび、という絹を切り裂くような音がして、彩香のアナルからは、おびただ
しい便が放射された。最初は水のようだった彩香の便は、だんだんと固形になり、
最後には彩香の肛門からペニスが生えて来たように見えた。それは彩香の固い便
であった。
 ぽとり、とその便は彩香の足元に落ちた。
 「くせえぞ。美少女も臭いウンコをするんだな」
 そのうえ、排便に誘発されたのか、小水まで出始めた。
 彩香は、自分の身体の反応を呪った。
 家からここに来て、競売にかけられるまで、緊張のあまり尿意を忘れていたの
だ。そのツケが今回って来た。溜りに溜まった彩香の小水は、なかなか途切れる
ことなく、放物線を描いて床に放出されていた。
 彩香は自分の足元を茫然と見つめていた。自分のした事が信じられなかった。
強制されたとはいえ、人前で排泄行為をするだなんて。
 不思議と哀しみは沸いて来なかった。自分のした事がおぞましいとも思わなか
った。ただ、何が起こったのか、何をしてしまったのか、まったく信じられなか
ったのだ。
 堀切は、脱糞して汚れた彩香の下半身に勢いよくシャワーを浴びせた。
 「おらおら。いいかげん正気に戻れ」
 きれいになった彩香のアナルに、堀切は指を這わして来た。てっきり処女を奪
われると思っていた彩香は、意外な事の成り行きに驚いた。
 堀切は彩香の弾力のある白い臀部を優しく愛撫し始めた。舌を使って彩香の優
美な曲線を舐めていく。指で豊かな肉を押し分けて、舌は奥へと入っていく。
 堀切の舌が彩香のアナルだけを舐め始めた時に、彼女は、この男の意図を理解
した。
 「あ、あなたは何を考えているんですか。そこは違います!」
 しかし堀切の愛撫は巧みで、彩香は倒錯的な気分になって来た。彼の舌が、た
まにアナルの隣の花弁に触れた時、身体に電気が走るのが判った。
 「淫乱のお姉ちゃんに似て、お前もこっちが敏感なんだな」
 堀切は、ポケットから小瓶を取り出した。コールドクリームだった。
 大量のクリームをアナルに塗りつけられながら、彩香は恐怖に震えた。強姦さ
れて処女を失う恐怖よりも強烈なタブーに触れて、自分が果てしなく汚されて堕
ちていくような、そんな恐怖だった。
 堀切の指は、アナルの中にも入って来た。クリームは内部の奥深くまで塗りこ
められた。
 その時、彼女の御主人様である関屋が入って来た。
 「あ、準備万端整っております」
 堀切はそういうと場所を関屋に譲った。
 がたがたと歯を鳴らす彩香の蒼白な顔を見て、関屋は加虐者の笑みを浮かべ、
ズボンを脱いだ。たるんだ身体とは裏腹に関屋のモノは猛々しくそそり立ってい
た。醜悪な鉛色をしてエラの張った形が毒々しい。
 「いやぁっ」
 彩香は思わず顔をそむけた。お嬢さま育ちの彩香には、これがはじめて見る男
の肉茎だった。父親と一緒にお風呂に入った記憶など、もう遠いものになってい
る。
 関屋は、彩香の両手を鉄輪から外して自由にしてやった。が、今の彩香には、
逃げだそうにもそんな余裕は無い。
 関屋は彩香の髪の毛を掴むと自分の直立した男根に、彼女の顔を押しつけた。
 「舐めろ」
 「え?」
 「お前の口を使って、舐めろ」
 「口を、使って……」
 関屋は有無を言わせず彩香の口の中に肉棒を捩じ込んで来た。その先端が喉の
奥に当たって彩香は吐きそうになった。
 涙を流してむせている彩香に、側で見ている堀切が冷たく言い放った。
 「舌を使うんだ。お前の姉ちゃんはあっという間にうまくなったぞ」
 彩香にとって、男性のものを見る事はもちろん、触る事も舐める事も初めてで
ある。舌を使えと言われても、どう使っていいのか判らない。
 それでも懸命になって身体をおり曲げ、口の中に自分のモノを含んでいる彩香
を見て、関屋は彼女の尻に手を延ばした。
 先ほど入念に指での愛撫を受け、クリームを塗りこめられた彩香のアナルは熱
くなっていた。関屋の指が菊蕾に触れると、彩香は息を止めた。指がもっと深く


侵入して来ると、鼻孔が広がり、関屋のモノを吐き出しそうになった。
 関屋は彩香の頭を掴んで押しつけると、そのまま行為を続行した。
 嫌がる彩香は、尻を振って関屋の指から逃れようとしたが、それがかえって男
心をそそる結果となった。
 関屋は彩香の口から脈打つように膨れ上がった陰茎を引き抜くと、彩香を四つ
んばいにさせて、アナルに押し当てた。(ああっ、そこは違う! そこは人に言
えないものが出て来るところ……)
 そんなことをいう暇もなく、関屋のモノはずぶずぶと彩香のアナルに沈んで行
った。クリームと入念な愛撫のせいか、挿入は意外なほどスムーズにいった。
 彩香は処女のまま、アナルを貫かれてしまった。
 関屋は後ろから彩香の乳房を掴むと、両手で揉みしだいた。
 「ぐいぐい締めつけて来やがるぜ」
 関屋は荒い息をして言った。
 彼が腰を使うたびに、彩香は、自分のものが壊れてしまいそうな恐怖で声を上
げた。
 それを聞いた関屋は、ますます激しく動いた。邪悪な生き物が体内に入って蠢
いている。それが引かれるたびに身体の中のすべてのものが吸い出されそうで、
またそれが突き上げてくると、内臓が口から飛び出しそうな異様な感覚だった。
 動物のような格好で、それも肛門を犯される。お嬢様育ちの彩香にとって、そ
れは処女を破られる以上の屈辱だった。
 「今日からお前の後ろの穴は俺様のものだ」
 「そ、そんなひどい……それではまるで……」
 「ふん。自分を一人前の人間だと思うな。調教が済むまではお前はただのメス
なのさ」
 そんなサディスティックな言葉に酔ったのか、関屋は彩香のアナルに射精した。
 彩香は、直腸の中で、その熱い奔流を受け止め、あまりの情けなさに涙をはら
はらと零した。




第五章 アナル姦の美少女



 彩香の調教が始まった。
 彩香のオーナーの関屋がトレーナーの堀切に命じた事は、彩香には決して普通
のセックスをさせるな、ということだった。
 全裸での生活を強いられた彩香にはプライバシーと言うものがなかった。唯一
一人でいられるのは寝ている間だけ。
 朝起きると、彩香は堀切に浣腸を施された。極限まで我慢させられて、堀切の
目の前で、床に排泄する。トイレの便器ではないところに自分の汚物を排泄する
ことがいかに屈辱的な事か、彩香は骨身に染みた。トイレならば水を流せば消え
て行くが、この調教室では、床の隅の排水口に流れて行く間、ずっと排泄物が他
人の目に触れ続けるのだ。
 「今日も健康そのものだな。え? うんちの色が鮮やかだぜ」
 その上堀切は、彩香の流れて行く固形物を見て、言葉でも彩香を辱めた。
 決壊するまでは、無駄とは知りつつも精一杯の抵抗をする彩香だが、自分のア
ナルからモノが出てしまった後は、虚脱感のあまり、自分の太股に液状の大便が
伝っていても、それを恥ずかしがる余裕すらなかった。
 何かがすこしずつすり減っていく……。数日前ならば確実に錯乱するほどの汚
辱に満ちた行為を強要されているのに、このようにされるがままになっている自
分はどうなっているのだろう。(でも、逆らうとどんな目に遭うか判っているの
だもの。姉さんだって、こういう屈辱に耐えたんだから)
 彩香はそう思うしかなかった。
 それから午前中いっぱいは、彩香は堀切の監督の元、幾人かの男達にアナルを
責められ、フェラチオをさせられた。気が向くとオーナーの関屋も一緒になって
彩香を責めた。
 彩香はお尻を突き出すように、四つんばいになっている。
 大量のグリセリン溶液によって、腹の中のものをあらいざらい放出した後の彩
香のアナルはぽっかりと口を大きく開けている。そこに堀切はクリームをたっぷ
りと摺り込むのだ。
 肛門に這う堀切の指の感触。その指は、アナルからクリトリスへと移り、空い
ている方の手は、彼女の可愛い乳房を揉みほぐす。
 彩香は、まだオーガズムを感じた事もなく、快感を得た事すら自覚していない
が、それでも、この堀切の「性感マッサージ」は、彼女の未熟な身体に火を点け
るのに充分だった。
 「気分が出てきたじゃねえか」
 「嘘です……こんな事されて、気分なんて……」
 「お前の胸のマメは硬くなってるぞ。え?」
 堀切は、ささくれ立った掌で、彩香の背中から臀部にかけてをさーっと撫でた。
 彩香の脊髄に電気が走り、身体がぶるぶると震えた。
 「こういうのが、感じてるってことなんだよ」
 堀切の合図で、待機していた男が、彩香のアナルに屹立していた男根を挿入し
た。
 彩香の口から思わず、うっという声が出る。
 アナルの調教が始まってまだ数日だが、毎日こうしてアナルを重点的に責めら
れていると、感覚がどうしても磨かれていく。太い肉茎が自分の中に入って来る
快感を、彩香はどうしようもなく感じていた。それが関屋の男根であっても感じ
てしまう自分の身体が恨めしかった。
 お尻の穴でこんなに気持ちがいいのだから、あそこで男の人を受け入れたら、
どんな感覚なのだろう、と彩香はふと思った。
 男は激しく彩香のアナルを責め続け、堀切は、それを補助するように彼女の胸
に愛撫を加え続けた。
 肛門を男根が出入りする感触が、堪らなく彩香の身体を刺激し、彼女の白い裸
体はほどなくピンク色に染まっていく。
 堀切は、彩香の顔を持ち上げると、彼女の口に自分のものをあてがった。
 堀切はトイレに入っても、わざと自分の性器をきれいにしない。だから、その
男根からは臭気が漂って来る。こんなものを口に入れるのは狂気の沙汰だが、彩
香はそれを口に含んだ。
 「お前の舌を亀の頭に絡めるんだ!」
 そう言われても、これ以上の事はどうしても出来ない。彩香は、唇で肉茎をし
ごく事しか出来なかった。
 お尻にペニスを挿入され、口には別の男のモノを入れている。こんな自分の姿
を想像すると、彩香は、もう二度と人前には出られない、もう二度と友達にも先
生にも顔をあわせられない、自分は徹底的に汚されてしまったのだと思った。今
が夏休みで良かった。でも、休みが終わって、学校に行く勇気が残っているだろ
うか。いや、この男達は、私を学校に行かせてくれるのだろうか。
 そんな事を考えていると、彩香の目から涙が止めどなく流れて来るのだ。だが
不思議な事に、自分が今している事を考えると、かっと顔が火照り、頭の芯が痺
れた。身体中が熱くなり、男のモノを受け入れているアナルが怪しく疼いた。
 彩香は、知らず知らずのうちに被虐の喜びを少しずつ感じて始めていたのだ。
 「美少女が泣きながらアナルとフェラチオをしてるってのは最高だな」
 堀切は、彩香の反応をすべて楽しんでいた。
 何人かの精液が、彩香のアナルと口に放出された後、彼女はそのままの姿で食
事をした。、身体には精液がこびりついたままで食事をとる事は、自分
が性奴隷である事をしみじみと感じさせた。
 せめて食事中だけでも、何か着せて欲しい、食事の前にシャワーを使わせて欲
しい、と哀願して見たが、堀切が許す訳はなかった。
 「羞恥心ってのは、セックスの敵だ。そんな普通の女が持ってるようなものは
お前には必要ねえんだ!」
 アナルを責められ続けていると、どうしても肛門の括約筋が緩んでしまい、粗
相をしてしまうようになる。これでは汚くてしようが無いし、肝心の締まりも悪
くなる。
 食事の後は、股に紙を挟んで調教部屋をえんえんと歩かされた。歩きながら紙
を落とすと、堀切の罵声が飛び、時には彩香の尻に平手が飛んだ。
 「九十のばばあじゃねえんだから、クソをタレるような尻にするんじゃねえぞ!」
 午後は、ビデオ出演であった。こうこうと照らされるライトとスタッフの目の
前で、彩香はまたも浣腸を施された。それは完全な裏ビデオだから、彩香の恥ず
かしい部分はすべてレンズの前にさらけ出され、彼女の排泄行為の一部始終がテ
ープに収められた。
 朝の浣腸ですべてを出した後だから、彼女の放出するものは大便の色がついた
浣腸液だけだった。が、浣腸される苦しさは、出すものがなくても同じであった。
カメラは、苦悶に顔を歪める彩香の表情と、苦痛で震える彼女の尻を追っていた。
 その後は、カメラの前でフェラチオをし、アナルセックスをするのだった。
 何人もの目の前で、彩香は組み伏せられて、アナルに男根を突き立てられた。
 ビデオの男優は、朝、彩香が相手になった男とは別だった。彼らは見世物であ
る行為に徹底しているから、彼女が苦痛であろうが死ぬ思いをしていようが一切
構わずに、彩香を乱暴に扱った。彩香のアナルが裂けるのではないかと堀切が心
配するほどに激しいグラインドとピストン運動を繰り返した。
 彩香が泣き叫べば叫ぶほど、ビデオの監督は興奮した。
 「ワケアリの女じゃないと、こんなものは撮れないからな。金のためだけに出
る女だって、こんなことされりゃ警察にタレこむぜ。いいね。ワケアリってのは。
こんな可愛い美少女にさ、こんなことしてもOKなんてな!」
 監督は演出しているだけじゃたまらんと、自分もズボンを脱いで彩香のアナル
に侵入し、自分の獣欲を満たした。
 このビデオ撮影の間、彩香は淡い快感を感じつつも、ひたすら早く終わってく
れ、と願い続けるしかなかった。
 そして、夜になって、『シャングリラ』が開店すると、彩香はショーに出演さ
せられた。
 調教室から出る時には、彩香は堀切によってヴァギナに厳重な栓を施された。
 それは処女膜を損ねない程度の長さを持つシリコン製のもので、底の部分から
はチタンで出来たワイヤーが延び、彼女の花弁に固くはめられた小さなリングに
取りつけられるのだ。
 彩香は、ここに来て二日目に、彼女の可愛い花弁に、ピアス用の小さな穴を開
けられた。もっとも敏感な部分だけに氷で冷やして感覚を麻痺させても、穴を開
ける時には激痛が走った。
 「これもお前の処女を守る為だ。我慢しろ」
 堀切は非情に言い放った。
 シリコンの栓と花弁を結ぶワイヤーには余裕がなく、無理に栓を取り出そうと
すると花弁が引き千切れてしまう。栓を抜くには、それの底部にある鍵を解除し
ないとワイヤーが外れないのだ。世界でもっともコンパクトな貞操帯である。そ
れだけに外からは彩香がそのような栓を施されているとは判らない。
 店内のステージで、彩香は栗橋を相手に、フェラチオをし、この日何度目かの
浣腸を受け、アナルを責められる。
 ショーの始まる前に、彩香は無理矢理大量のビールを飲まされた。酔わせて恥
態を演じさせるためではない。ステージの上で、大量の小水を出させるためだ。
 この頃になると、彩香には物事を正常に判断する力は残っていない。ステージ
の上で、相手役の言うがままに身体を使うだけなのだ。
 栗橋の肉棒を口の中にねじ込められて、顔中精液まみれになっても、彩香の表
情は魂の抜け殻のように虚ろだった。
 そして栗橋によって浣腸を施され、激しい腸の蠕動を感じてはじめて、彩香は
生き物としての反応を示すのだ。
 栗橋の指が彩香のアナルに深く差し込まれ、栓をしている。
 「いいか。俺が出していいと言うまで粗相してはダメだぞ。もし漏らしたらお
仕置きだ」
 栗橋は、日によって、わざと彩香が粗相をするように持っていった。いつもよ
り量の多い浣腸液を使ったり、ほとんど原液の濃いものを使ったりするのだ。そ
んな時、彩香はたまらずに、栗橋の指の栓をも押しのけて自分の汚れたものを出
してしまう。そのあまりの勢いの激しさに、一番前で見ている客にかかるほどだ。
 「こいつ! お客様の服を汚しやがって! お仕置きをしてやる!」
 栗橋は、彩香の臀部に鞭を振り下ろす。真っ白な彼女のふくらみに、真っ赤な
跡が幾筋もついていく。
 その痛みは、内臓が口から出てしまうのではないかと思えるもので、彩香は胃
に残っているすべてのものを吐いてしまう。毎日生きているのが不思議なほどの
行為である。
 しかし、彩香のショーのある日に集まる客はサドの趣味のあるものばかりで、
精も根もつき果てたような彩香の表情を見て、「これぞ本物の責めだ」と喜ぶの
だ。
 彩香のオーナーの関屋も、客席で、彼女のそんな哀れな様を見て、そばの客に
自慢するのだ。
 「あれはわしの持ち物でして。どうです。思い切り尻を蹴飛ばしてみたいでし
ょう。あいつはマゾですから、反吐でもかけてやればひくひくと痙攣してアクメ
に達するんですよ」
 ステージの後、そんな関屋の言葉を間に受けた客が彩香を買って、わざと反吐
や排泄物を吐きかけたりするのだ。
 ステージ上でのショーは、彩香のアナル・セックスでフィナーレを迎える。
無理やり後ろから犯され、その様子を詳しく見るために客が前に集まって来る。
 もう、すべての思考能力を失った彩香は、自分のアナルと乳房に加えられる刺
激を味わうしか正気を保つ方法はなかった。
 栗橋の男根はアナルを激しく出入りし、その指は、彼女のクリトリスを弄び、
残った手で乳房を揉みしだいた。
 彩香のショーは、二回ある。その二回目になると、彩香の未熟な身体にもどう
しようもないほど火がつくのだ。
 彩香が秘部に入れられているシリコンの栓には、堀切によってたっぷりと催淫
クリームが塗られていた。その頃になると、敏感な入り口の部分にある栓がバイ
ブレーターのような効果を果たし、おまけに催淫クリームが充分彼女の柔肉に浸
透しているから、彩香の秘肉は感度が増すばかりだ。(ああ、あそこが燃えるほ
ど熱い。私の恥ずかしいところはたまらなく濡れそぼっている。栗橋の指がアナ
ルや肉芽を触るたびに、電気が走る。栓を押されるとくらくらする。もっと押し
まくって欲しいのに、どうして栗橋の指は通過するだけなの。ああ、どうして一
番熱いところを触ってくれないの。どうして一番感じる部分に入れてくれないの)
 彩香は、自分の腰がゆらゆら揺れ始めるのを止める事が出来なかった。
 しかし、栗橋の男根が彩香の直腸の中で暴れまくり、暴発する頃、彼女も腰が
抜けるような快感を味わって、四つんばいの姿勢を保てず、思わず突っ伏してし
まうのだ。
 「はい! 彩香がアナルでアクメになりました! アナル少女の彩香は、今夜
は三人とお相手します!」
 木田は彩香の激しい消耗などお構いなしに、二度のショーの後、客を取らせる。
 もちろん、客も、彩香がオーラル・セックスとアナル・セックスしか許されて
いない事を知っている。
 ステージ上でアクメに達した彩香は、シャワーを浴びてから、客の待つ個室に
向かうのだ。
 この店に連れて来られて、調教が始まってから、彩香は服を着た事がなかった。
着たとしても、ステージで脱ぐための「衣裳」でしかなかった。
 全裸のまま入って来る彩香を、客は飛び上がらんまでに狂喜して迎える。先ほ
どまでステージの上で恥態を演じていた美少女が、生まれたままの姿で、シャワ
ーの後の火照りを肌に残してやって来たのだ。その上、一日中責められて、理性
は完全に崩壊し、彩香にただ残っているのは快感をむさぼる本能だけだ。
 「アナルはいいな。妊娠する心配が無いものな」
 客の熱い奔流を腸で感じながら、彩香は朦朧とした意識の中で、何度もアクメ
らしきものを感じていた。
 三人めの客との行為が終わる頃には、彩香はほとんど失神状態になる。
 そして、ボーイによって調教室のベッドに運ばれた後、彩香は泥のように眠り
をむさぼるのだった。十七才という若さがなければ身体がもたない。そんな最高
にハードな毎日だった。


 調教室は、彩香だけのものではなかった。
 時には、アナルのトレーニングをさせられている彩香の横で、他の女達が、普
通のセックスのトレーニングをする事もあった。
 彩香の夏休みが終わりに近づいたこの日も、彼女の横では、他の新人たちが木
田やボーイによってセックスのトレーニングをしていた。
 「女はね、最高の絶頂を味わうと変わるものなのよ」
 彩香の様子を見に来た朱実が言った。
 「あたしもそうだったけどね」
 彩香は、彼女達に強烈な嫉妬を感じた。(どうして私だけ普通のセックスが許
されないの? どうして私のあそこには栓をされて、お尻でセックスをするだけ
なの? )
 「あそこで絶頂になると、どう変わるんですか」
 彩香はたまらずに朱実に聞いた。
 「そりゃ、本来入れるところに入れられるんだもの。最高よ。あんたには悪い
けど、お尻とじゃ比べ物にならないわね」
 朱実はそう言い放った。
 彩香は他の女が秘所を突き上げられる快感でのたうち回っているのを、激しい
羨望の目で見るのだった。


 「どうして私は普通のセックスが出来ないんですか。お尻の穴だけなんて、残
酷すぎます。この栓を、栓を外してください!」
 ステージでのショーを前にして、彩香は堀切に食ってかかった。これ以上、彼
女の欲望は押さえ切れないところまで来ていた。
 「お願いです。私にも普通のセックスをしてください」
 「ダメだね」
 堀切はニベもなく彩香の願いをはねつけた。
 「お前はオーナーには文句を言えないんだ。金を稼ごうと思うのなら、文句を
言うな」
 彩香の調教師はそう言い捨てた。
 「栓がダメなら、せめて、あの薬を塗るのを止めてください。感じやすくさせ
ておいてしてくれないというのは、あんまりです。残酷すぎます……」
 彩香が涙ながらに懇願しても、堀切は聞き流すだけだった。
 店に出る前に、堀切は彩香の栓を外し、彼女の秘部を入念に洗ってやった。
 堀切の指は、わざと彩香の秘部の敏感な場所をさ迷い、内部を洗う為に侵入さ
えして来た。
 それだけのタッチでも、彩香はアナルとは違う強烈な快感を得てしまうのだっ
た。それだけに、再び催淫クリームをたっぷり塗られた栓をされてしまう時は、
悲しくてならなかった。


 彩香のアナルセックスとオーラルセックスの腕前は瞬くうちにあがっていた。
彩香もアナルでオルガを充分に感じていた。男の肉茎を頬張るのにも快感を感じ、
その舌さばきは客達にも好評だった。
 ステージでのショーでも、彩香はアナルでバナナを切ったりバナナをぽんと発
射する芸も出来るようになっていた。
 しかし、彩香は、そんなことでは身体の疼きをどうする事も出来なくなってい
たのだ。 彩香は他の女がするような普通のヴァギナでのセックスをどうしても
したかった。
 「お願いです。私に普通のセックスをしてください。私のあそこは熱くなって、
もう堪らないんです!」
 「どうしてほしいんだ」
 「ですから……私のあそこに」
 「あそこって、どこのことだ」
 「お……おまんこ……」
 「お前はアナルでしかセックス出来ないといったはずだろ。ダメだね」
 彩香は、他の女が舞台でやるセックスショーを食い入るように見るようになっ
た。
 それだけではない。自分が個室で客の相手をしている時でも、他の女が個室で
あげる声に聞き入ってしまうありさまだった。
 「お願い。私のあそこに入れてください」
 彩香は客におねだりをしたが、オーナーの意志に反する事は、いくら客でも許
されない事だった。だいいち、あのシリコン栓を外す事は不可能だった。無理に
やれば、彩香の可愛いピンク色をした花弁が千切れてしまう。ちょっとワイヤー
を引いただけで花弁はぎりぎりと引っ張られた。
 「い、痛い……壊れてしまう……私のあそこが切れてしまう……そのワイヤー
を切れないの?」
 「彩香ちゃん。いくら君の頼みでも、それは出来ないよ。ワイヤーを切ろうと
したら君の花びらも切り落とす羽目になる……それに僕は君のアナルが好きだし
な」
 「どうして……あそこのほうが絶対イイに決まってるわ……」
 「いや。俺はアナルが好きなんだよ」
 「ああ……あなたも変態なのね……」
 「変態で結構。俺が変態なら、君はどうなんだ。アナルを責められてるだけで
もよがりまくってるじゃないか」
 「そ、それは……」
 彩香は満たされぬ性欲をアナルで感じようと懸命だった。しかし、彩香のヴァ
ギナからはとどまることなく愛液がほとばしるのだった。
 アナルを責められながら、彩香は自分のクリトリスに指を延ばした。すこしで
もヴァギナでのまともなセックスの快感を感じようと、自分でクリトリスの愛撫
をするしかなかった。


 彩香は普通のセックスを渇望するあまり、どうしようもなく淫乱になっていっ
た。
 まだ少女の面影を残す彩香は、ビデオの撮影の時でも、ステージでのショーの
時でも、そして個室で客を相手にしている時でも、思わず男の股間に自分の淫肉
を擦りつけていた。
 「お願い。ここに、ここに入れて」
 しかし、男が入れるのはアナルだった。
 「気が狂いそう。お願い、あそこに入れて!」
 腰をふるふると震わせて、彩香は相手の男に哀願するのだった。


 彩香がオーラルとアナルのテクニックを完全にマスターして、ヴァギナでのセ
ックスを渇望する頃、夏休みが終わった。
 この一ヵ月の間に、彩香は裏ビデオの世界では、「アナル女子高生」として有
名になっていた。まだ十七才の清純な美少女が、快感を求めるあまり、初々しい
肉体を悶えさせて激しい恥態を晒す内容が、マニアの間で評判になっていた。ビ
デオ雑誌にも紹介されて、彩香のビデオは高い値段がつき、その彩香の実物を一
目拝もうと、どこで聞きつけたのか、『シャングリラ』に来る客もうなぎ昇りだ
った。
 高校の二学期が始まった後、すべてのことを秘密にする条件で、彩香は高校に
通う事を許されていた。
 姉の恵美子は、長期の地方巡業からまだ帰って来ない。
 彩香は調教室から高校に通った。もちろん、例のシリコンの栓をされた上でだ。
通学路や学校で勝手な事をされては困るからだ。
 そして、放課後になるとビデオの撮影をし、店に出るのだ。


 「いいか。勝手にセックスをするな。お前がそんなことをしたら、お前と姉ち
ゃんがどんな目に遭うか、俺は保証出来ねえぞ」
 彩香は、堀切や足立の命令に背いた女がどんな目に遭わされるのか知っていた。
 たとえば、朱実はある客に恋をしてしまい、店の外でつき合っていた。店外デ
ートはOKだが、それはあくまで客を店に呼ぶための手段だ。女が自由に男と恋
をする事を許してはいない。
 そのことがバレて、朱実は陰毛を永久脱毛され、その何も生えなくなった下腹
部にサソリの刺青を施されてしまった。
 「これで普通の男はお前に寄って来ないぜ。ま、こんな変態女でも愛人にして
やろうかって言う奇特な男をあてがってやる」
 変わり果てた自分の下腹部を見て呆然とした朱実に、足立は冷たく言い放った。
 そんな目には遭いたくない。姉の借金を返し終わっても身体に一生残る刻印を
押されたくはない。彩香は、必死の思いで堀切の命令を守るしかなかった。
 しかし、清楚な高校の制服の下に隠された燃える肉体は、ヴァギナでのセック
スの渇望で爆発しそうだった。
 彩香は、夏休み前には、あれほど嫌だった電車の中の痴漢にも、進んで身体を
預けるようになっていた。
 痴漢の指がスカートの下に潜り込み、パンティの上から彩香の秘裂をなぞる頃、
彼女の淫襞からはとめどなく愛液が溢れていた。
 彩香は痴漢に自ら身体をすり寄せた。足を開き、指が自由に動くようにしてや
った。
 美少女の想像もしない態度に、痴漢は信じられない様子ながらも手を動かした。
 彩香の可愛い口からは、思わず喘ぎが漏れた。周囲の乗客が思わず彩香を見た
ほどの声である。
 調子に乗った痴漢は、彩香の濡襞に指を挿入しようとしたが、常識では考えら
れない異物が秘部に立ちはだかっている事が理解出来ない様子だった。
 彩香は、立っているのもやっとで、もう、前後の判断がつかなくなっていた。
 「このまま降りて、どこかホテルに行くか」
 大胆になった痴漢が、彩香の耳元で囁いた。
 思わず頷いた彩香を連れて、痴漢は途中下車してしまった。ところが駅から出
たところで、彩香は痴漢とはぐれてしまった。
 あちこち探す彩香から見えないところで、痴漢は彩香を尾けていた二人の男に
囲まれて、どこかに連れ去られてしまったのだ。
 彩香の渇望は、日に日にその激しさを増して行った。さかりのついたネコのよ
うに誰彼構わずセックスをねだるようになって来たのだ。
 彩香の高校は女子高だから、さしあたってのターゲットは教師である。
 彩香の美しさは、清純な中に強烈な色気を湛えはじめていた。制服姿でも、髪
をかき上げたり上目づかいで教師を見つめる彼女の姿はどきりとするほど鮮烈な
興奮を教師に与えた。
 男の教師は、全員彩香に背徳の感情を持ったが、お互いそれを口にする事はタ
ブーである。
 が、彼女のブルマー姿を見る事の多い体育教師は、どうにも我慢する事が出来
なかった。
 彩香は姉に倣ってテニス部に入っていた。二学期になってから練習に出られな
くなっていたが、彼女のスコート姿はまぶしく、他の女生徒が子供に見えてしま
う。彩香の臀部から太股にかけての曲線は、青い果実だけが持つ魅力に溢れてい
たし、地味な体操服に隠された胸は小ぶりでも、その形の良さが透けて見えた。
 彩香も、体育教師のそんな視線を感じていたから、更衣室の窓をわざと開けっ
放しにして着替えたり、トイレの外で、体育教師が彼女のその声を聞いているの
を知っていながら、女子トイレの窓を開けたままオナニーをしたりした。
 「青井君。最近の君の態度について話し合いたいんだが。どうしてクラブの練
習に来ないんだ」
 彩香と話す口実を見つけて有頂天になりながらも、体育教師は冷静さを装いな
がら彩香に話しかけた。
 昼休みの体育教官室。他の教師は誰もいない。
 次の時間は体育だから、彩香はブルマー姿になっている。
 「黙ってちゃ判らんじゃないか」
 体育教師は、彩香の肩に手をかけたが、彼女がブラジャーをしていないのに気
がついて、思わず手を離した。
 見れば、彼女の胸は乳首が硬くなり、体操着を内側から押し上げていた。
 彩香は、あくまで下を向いていた。もじもじと太股を擦りあわせていたのは、
肉芽が勃起してパンティに擦れて堪らなくなっていたからだった。これ以上じら
されては、ブルマーの外まで濡れてしまう。彩香は教師がどう出るか期待で心臓
がはちきれそうだった。
 ピンク色に染まった彩香のそんな太股を見て、教師は理性が吹っ飛んでしまっ
た。
 「青井! 俺は、たまらんぞ!」
 教師は彩香にむしゃぶりついて来た。
 乱暴に体操服を脱がすと、乳首が硬くなり、興奮して少し大きくなった形の良
い乳房がまろび出た。弾力があって思わず食べてしまいたいような乳房。
 教師は彩香の体を抱きしめると、乳房を強く吸った。
 「ああ……先生……私、もう……」
 彩香の口からは陶酔した声しか出ない。
 教師は、もどかしげに彼女のブルマーを脱がしにかかった。
 太股は汗をかいていて、触ると吸いついて来そうだ。
 ブルマーを膝まで下げて、教師は驚いた。彩香の穿いていたパンティが、恵美
子の持っているシースルーのTバックだったからだ。おまけにそれは彼女の愛液
でしとどに濡れていて、下腹部に密着している。
 心臓が口から飛び出そうなほど興奮した教師は、パンティの中に指を入れた。
 彩香は、熱いため息をついて身もだえした。
 「君がこんなに大人になっていたとは……」
 教師も彩香の耳に熱い吐息を吹き掛けながら彼女の秘裂に指を這わせて行った。
 肉芽に行き着いた時、彩香はそれだけでぶるぶると身体を震わせた。
 「なんて感じやすい身体なんだ……」
 「お願い……早くして……」
 教師はパンティを一気に膝まで下ろし、彼女の秘部に唇を這わした。
 彩香の腰の力が抜けた。
 瓦礫のように崩れ落ちる彩香の身体を支えようとして、教師も一緒に床に倒れ
こんだ。
 教師はもどかしげにジャージーから自分の屹立した一物を取り出すと、彩香の
秘部にあてがい、先に進もうとした時、驚きの声を上げた。
 「な、なんだこれは」
 彩香は愛撫だけでオーガズムに達し、喘ぎながら答えた。
 「先生……私としたいのなら、それを外して……お願い」
 「こんなもの、誰にされたんだ」
 教師は興奮のあまり震えが止まらない手で、栓から延びるワイヤーをカッター
ナイフで切断しようとしたが、刃が欠けるだけだった。それに、ちょっとでも栓
を動かそうとすると彩香の花弁が引っ張られ、彼女は苦痛の叫びを上げてしまう。
 「ダメ! 痛い! 千切れちゃう……」
 「クソッ……」
 「お願い……先生のも舐めるから、私のアソコを舐めて……シックスナインを
して……」
 仕方ないな、と教師はシックスナインの態勢になった。
 彩香が彼の一物を口に含んだ時、教師は思わず声を出した。あまりに彩香のフ
ェラチオが巧みだったからだ。男の一番敏感なところを繊細な舌使いで触れて来
る。
 教師は、その余りの快感の為に彼女の秘部を愛撫するのを忘れて、少女が強姦
される時のようなか細い悲鳴を上げた。
 その時。
 体育教官室のドアが乱暴に蹴破られた。
 カギは掛けてあったのに、と思わずドアを見た教師の背中に強烈な蹴りが入っ
た。
 教師は射精中枢を強打されて、ザーメンを空中に放出しながら倒れこんだ。
 「こら。教師の分際で、なんてことをしやがるんだ」
 乱入して来たのは、足立であった。
 「マスコミにバラしてやるが、その覚悟はあるんだな」
 教師の顔から血の気が引いて行った。
 「俺はこの子の親代わりだ。この子の家庭の事情を説明しようと思って来てみ
たら、どういうことだ、これは」
 「ゆ、許してください……お願いですから、このことは誰にも……」
 教師は萎んでしまった一物を露出させたまま、足立の前で両手をついた。
 彩香は、何が起こったのか理解出来ず、全裸のまま惚けたようにこの光景を見
ていた。
 「この子の処女を奪おうとする教師は抹殺してやる」
 足立は、教師に蹴りを入れた。顎でキックを受けた教師は、机の角で頭を打っ
て朦朧となった。
 「彩香。いつまでそんな格好でいるんだ。ちゃんと服を着ろ」
 学校の外ではほとんど全裸の生活をしている彩香は、裸でいる事にあまり抵抗
を感じなくなっていた。
 足立は、これ見よがしに彩香に自分の上着を着せると、彼女を立たせ、教官室
から連れ出そうとした。
 「あの……是非、話し合いを……」
 「ふん。スキャンダルにしたくなかったら、それなりの誠意を見せろ」
 「誠意と言いますと……」
 半泣きになりながら教師が言った。
 「お金なら、出来るだけの事をします。ですから……」
 「金か。この子の将来のために、金はいくらあっても無駄にはならねえ。用意
してもらおうか」
 教師は頷くしかなかった。
 「それとだ。このことは絶対誰にも喋るんじゃねえぞ。この子の将来に傷がつ
くからな。お前だって自分の恥を広める気はないだろ」
 「それはもちろんです。そちらこそ、是非ともご内密に……」
 足立は鼻で笑うと、彩香を教官室から連れ去った。


 「そろそろ彩香の処女オークションをやりましょうか」
 その日の夜、足立はオーナーの関屋に持ち掛けた。
 「彩香もそろそろ限界のようです。これ以上我慢させたら、あいつ、色情狂に
なっちまう」
 「それも面白いじゃないか。清純な美少女が、処女のまま色情狂か」
 「しかし、色情狂になると、後々の事が厄介です。関屋さんがあいつに飽きて
転売しようとしても、値段が下がります」
 ううむ、と関屋は唸った。彩香をとことん飼育して色情狂にするのも面白いが、
値段が下がるのは困る。次の新しい女を手に入れにくくなる。
 「今なら最高の値段がつきますけどねえ……」
 関屋の心を見通すかのように、足立は追い撃ちをかけた。


 彩香の処女オークションは、その夜行われた。
 彩香は処女らしく純白のベールに覆われてステージに引き出された。
 昼間のショッキングな事件の後、彩香は心を落ち着けるかのようにオナニーに
ふけっていたから、彼女の秘部は愛液でぐっしょりと濡れそぼっていた。
 スツールに座らされた彩香は大きく足を広げられた。もちろん、すでに例のシ
リコン栓は外されて、中はきれいに洗浄されている。
 「さあ、これより、淫乱アナル少女・彩香の処女のオークションをはじめます。
おフェラやアナルで、もう彩香は淫乱の名をほしいままにしていまして、エミち
ゃんが地方に行っている間にすっかりスターになりました!」
 木田が声を張り上げた。
 「お客様の中には、そんな彩香ちゃんが、本当に処女なのか、お疑いの方もい
る事でしょう。判ります。よーく判ります。あれほどアナルでアクメに達する彼
女が本当に処女なのか? とお思いでしょう。そこで」
 木田は助手役の栗橋から渡された器具を客に見せた。
 「これは胃カメラです。これを使って、彩香ちゃんの処女膜を皆さんとご一緒
に確認致しましょう」
 ステージには、大型のテレビモニターが運ばれて来た。
 足立が、彩香のベールを剥いで、下半身をむき出しにした。
 胃カメラのスイッチが入って、先端の小さなライトが灯った。
 彩香は、自分の身にこれから何が起こるのか、考える余裕がなかった。ただ、
これから私の処女が奪われて、本当のセックスが出来るのだ、という期待しかな
かった。それを思うと、彩香の花弁からは、蜜がとめどなく沸いて来るのだった。
 足立は、彩香の太股を淫液が伝わり落ちるのを見ながら、胃カメラを彼女の秘
部に接近させた。
 モニターには、彩香のクリトリスや小陰唇が鮮明なカラーで映しだされた。
 足立はわざと胃カメラを彼女の敏感な場所に擦りつけながら、先に進めた。
 客席の男達は、固唾を飲んで画面を見つめている。
 胃カメラが挿入された時、彩香は激しい刺激を感じた。(そうよ! 私が欲し
かったのは、これなのよ! )
 淫肉の間に胃カメラが入って行くのを感じて、彩香の身体に凄まじい電気が走
った。
 足立がわざと胃カメラを出したり入れたりしているうちに、彩香はそれだけで
アクメになってしまった。
 「この通り、感度はバツグンです。エミちゃんといい勝負です!」
 がくがくと身体を震わせて、彩香はオーガズムになったが、足立は構わずに胃
カメラを先に進めた。
 彩香の絶頂はなおも続き、ほとんど失神状態になってしまった。
 モニターには、襞のようなものが映しだされた。中央には小さな穴が空いてい
る。
 「これが処女膜です。ご承知の通り、処女膜には月経の血を通すための穴が空
いています。穴があるから処女ではないというのは間違いですからね! 処女膜
は襞であって、障子の紙じゃないんです!」
 彩香は、自分のヴァギナに異物が挿入されるはじめての感覚を味わって、息が
出来ないほどの快感に全身が脈打っていた。
 「彩香ちゃんが処女であることが証明されました! 淫乱で、アナルでのオル
ガを知っている処女です!」
 木田の司会によってオークションが始まった。
 血走った目の男達が争って彩香の処女を競り落とそうとした。競り落とせた男
は、このステージの上で彩香を抱けるのだ。
 彩香の処女を奪えるのなら、彩香を抱けるのなら、誰が見ていようと、どこで
やろうと構わない、という男達ばかりによって落札された。たったの七十万?
しかし、落札した男は一人ではなかったのだ。順番が下がるに従って安くなるが、
とにかくさっきまで処女だった十七才の高校生を抱けるのだ。
 五人が彩香を競り落とした。
 これから、ステージの上で、彩香は五人を相手にするのだ。
 ステージの上には、ベッドが用意され、彩香が横たえられた。
 一番最初の権利を落札出来た客が、服を脱ぎ、興奮に震えながら彩香に覆い被
さって行った。
 まぶしいライトに目が眩んだが、彩香は自分の上に乗って来る客の股間を見つ
めずにはいられなかった。目を閉じるなどという、まともな羞恥心はとうに失く
している。
 反り返った肉茎は怒張し、先端から透明な液体を滴らせていた。(……あんな
に大きなものが私のあそこに……どんな気持ちかしら……)
 まだあどけない顔立ちの彩香は半身を起こし、男のものをひたと見つめながら
犯されるのを待っていた。
 二四時間ぶっ続けの苛酷な調教で、華奢な身体はさらに細っそりとして痛々し
い。
 胸も腰も薄く中学生と言っても通りそうな身体だが、しかし彩香の全身からは
強烈な色気が漂っていた。異常なほど男の劣情をそそるこの妖しい雰囲気は、目
醒めているかぎりセックス漬けの生活から身についてしまったものだ。
 か細い両脚を彩香は思い切り大きく開き、むき出しのうすい繁みのなかの無垢
な唇を男達に見せずにはいられなかった。
 未だ男を知らない肉襞がわずかにピンクの色を覗かせているが、彩香はそれを
見せつけるようにして男を誘っている。可愛らしい顔からは想像も出来ないほど
卑猥な姿だった。(この美少女の清らかな場所を、おれがぶち抜いてやる……)
 猛然と嗜虐欲をそそられた客は、いきなり彩香の小さなヒップをつかみ荒々し
く引き寄せ、繊毛のなかの秘裂にぎんぎんに怒張し切った肉茎の先端を押し当て
た。
 催淫剤とシリコン栓の刺激で異常に敏感になっている彩香の膣口は、もうそれ
だけでどっと蜜をあふれさせた。
 彩香は思わず可愛らしい秘門を夢中になって男のものに擦りつけていた。
 「お願い、早く入れて……」
 可愛い少女の唇から出たとは思えない淫らな言葉。たまらなくなった客は一気
に根元まで押し入りたいという衝動にかられたが、かろうじて踏みとどまった。
 まず先端のカリの部分だけをじらすようにゆっくりと押し込む。
 彩香の全身に激しい痙攣が走った。歓びの声をあげ、男の手につかまれた細い
腰が悶える。男の敏感な先端を激しく締めつけてくる膣口の感触がたまらない。
 彩香は貪欲に快感を求めてすすり泣き、男のものを求めて激しく腰をくねらせ
た。
 いつのまにか片手が胸にのび、固い蕾のような乳房を自分で揉みしだき、もう
片方の手では薄い繁みの中のクリトリスを弄んでいた。
 あどけない顔立ち、そして幼さの残る身体からは想像もつかない淫らなふるま
いだった。
 その強烈過ぎる刺激に客は思わず射精しそうになった。彩香をゆっくりと犯し、
存分に時間をかけて凌辱するつもりだったが、もうそんなことを言ってはいられ
ない。七十万円も払って処女を奪う前に果てては笑い者だ。
 男は身体を沈め、小さな唇の奥まで一気に分け入ろうとした。
 しかしアナルを締める訓練を毎日させられていた彩香の内部は堅く締まり、男
の侵入を容易には許さない。
 無垢な花びらが肉茎をぴったりと締めつけ包みこんで来る快美な感覚。
 男は遮二無二突き進み、力まかせに腰を打ちつけてなんとか押し入ろうとした。
 彩香は大きく悲鳴をあげ、身体を弓なりに反らせたが、それが苦痛なのか快感
なのかもはや判らなかった。
 身体の奥に一瞬、引き裂かれるような痛みが走り、同時に男のものもびくびく
と痙攣して熱いものをほとばしらせた。
 苦痛とない交ぜになった激しい快感が怒涛のように押し寄せては、消えてゆき、
男はうなだれた性器をのろのろと引き抜いていた。(なんてあっけない……もう
終わりなの? )
 犯されたくてたまらなかったその部分で、ついに男を知った彩香の身体には火
がついていた。一刻も早くつぎの男を迎え入れ、貫かれたくて気が狂いそうだ。
 脚を開いたままの少女の秘裂からは処女の血が白い精液に混ざってどくどくと
あふれ出している。その痛々しさとはうらはらに、誘うように腰をくねらせる彩
香の姿は限りなく隠微で男たちの股間を疼かせずにはいなかった。
 二番目の男の肉棒がヴァギナの奥まで挿入されただけで、彩香の全身に甘美な
衝撃が走った。客がゆっくりとピストン運動をはじめると、彩香の頭の中は真っ
白になっていった。
 「ああ……イイ……。なんて素晴らしいの……どうにかなってしまいそう……」
 処女とは思えないよがり声を発しながら、寄せては返すとめど無いアクメに、
彩香は全身を仰け反らせた。
 「お願い……もっと長く……長くヤって……」
 彩香の裸体は、がくがくと震え、腰は邪悪な生き物のようにくねくねと動いた。
 男の肉棒が彼女の内側を抉るたびに、彩香は、
 「ああ……どうにかして! 死んじゃう!」
 と、叫び続けた。
 「これが、これがセックスなのね。これが本当の絶頂なのね!」
 男の射精を中で受けて、彩香を襲った強烈なオーガズムがようやく収まってい
った。
 その余韻が消えないうちに、三人目の男が彩香の中に入って来た。
 男達がフィニッシュを彼女の中で決める間、彩香は処女を喪失したばかりだと
いうのに、立て続けにオルガの嵐に見舞われていた。口からは涎を垂らし、下の
口からは、とめど無い淫液が滴り落ちていた。
 「もっと……もっと私を責めて……私、まだ足りない……」
 彩香は自分の乳房を鷲掴みにして、クリトリスを弄りながら客席に叫んだ。と
うとう性地獄に堕ちていた。




第六章 地獄の姉妹相姦



 彩香が足立によって完全な性奴隷に調教されている頃、姉の恵美子は地方のキ
ャバレーやストリップ劇場を回っていた。
 この地方巡業が、彩香をセックスの道に引きずり込むための足立の策略である
ことなど、恵美子は夢にも思っていなかった。足立は、恵美子がこの仕事をする
時に、妹にだけは何もしないという約束をしたのだから。
 この期に及んでも、恵美子は、この約束だけは信じていた。公演先から自宅に
電話しても、ちゃんと彩香が出たから安心していたのだ。
 「私は夏休みが終わる頃に帰れるかどうか判らないわ」
 「そう。私も忙しくしてるから、気にしないで」
 電話の彩香は、クラブが忙しくて疲れていると言っていただけだ。
 しかし、恵美子は、自宅の電話が転送されて彩香の調教室に繋がれ、堀切の監
視のもとに彩香が電話しているなどということはまったく予想もしていなかった。
 今回のショーは、ただのストリップではなかった。舞台の上で濃厚な本番ショ
ーをやる事はもちろん、出番がない時に恵美子はキャバレーや劇場の個室で客を
取っていたのだ。
 週刊誌のグラビアを賑わし、アダルト・ビデオにも出る東京の最高の淫乱女、
ということでその個室には長蛇の列が出来た。まるで慰安婦みたいね、と言いな
がら恵美子はこなしていった。今まで身につけたテクニックで、気に入らない客


には腰を動かし花弁を絞めるだけで、相手は簡単に射精した。
 私は、こんな手管まで覚えてしまったんだわ。
 恵美子はもう、元の普通の女には戻れないだろうという予感があった。
 それでもいい、と彼女は思うようになっていた。
 それは、浩一の存在である。


『シャングリラ』で恵美子がすっかりセックスを売り物にするプロの女になって
しまったのを目の当たりにしてショックを受けた浩一であったが、だからと言っ
て恵美子を忘れる事が出来なかった。
 押さえようとしても、忘れようとしても、浩一の胸には、彼女への思いが込み
上げて来るばかりだった。以前の普通のカップルだった頃にはなかった、彼女へ
の激しいいとおしさを感じて、彼は動揺した。
 あんなになってしまった彼女を一生愛する事が出来るのか。自分に、セックス
の猛者になってしまった彼女の相手が勤まるのか。
 浩一は幾度となく煩悶したが、出て来る答えは決まっていた。
 恵美子から離れる事は出来ない。形はどうであろうが、恵美子のそばにいよう。
恵美子と一緒に人生を送ろう。
 彼女がセックスのプロならば、その為の方法は一つしかなかった。
 浩一は、自分の決然とした思いを形に現すために、地方巡業に出かけたという
恵美子の後を追った。
 ある地方都市のストリップ劇場に出演している恵美子を発見した時、浩一の胸
は高鳴った。
 恵美子のステージは、『シャングリラ』の時よりも過激になっていた。
 一通りの特出しストリップの後、恵美子は濃厚なオナニーを見せた。太いバイ
ブを使い、そのくねくねした猥褻な動きにあわせて腰をグラインドさせる。その
動きはセックスを求めて蠢く薄暗い情念を感じさせた。他のストリッパーが見せ
る形だけのモノとは違い、恵美子のショーは本気だった。それが証拠には、彼女
の淫襞からはとめどもなく愛液が滴り、彼女の太股を伝っていた。
 客の視線によって磨かれて一層美しくなった彼女の肌はピンク色に染まり、そ
の喘ぎ声は切なく、男達の股間を膨張させて止まなかった。
 激しく裸体を痙攣させてアクメに達すると、恵美子は晴れやかな表情で、客席
に自分の濡れそぼった濡襞を見せて、「どうぞ」と舞台に誘った。これから本番
ナマ板ショーである。
 意を決した浩一は、真っ先に舞台に上がった。以前の浩一なら考えもしないこ
とだった。
 客席から現れた浩一を見て、恵美子は驚いた。恵美子は一瞬、信じられない、
と言う表情になった。
 「浩一君? 浩一君なの?」
 浩一は頷くだけだった。
 「どうして。どうしてこんなところにいるの。まさか、私を見に来た訳じゃな
いんでしょう?」
 「いや。君に逢いたくて……」
 客席から、喋ってないで早くやれ! と罵声が飛んだ。
 「これから何をやるのか、判ってるの?」
 恵美子は、浩一が頷いたので、仕方なく彼のスラックスを脱がした。
 その時、中から現れたものを見て、恵美子は驚愕した。
 浩一の持ち物は平均的な小ぶりなモノだったはずなのに、今浩一のパンツから
覗いているモノは、グロテスクなほど巨大な一物だった。それはすでに屹立して
いて、パンツには到底収まり切らず、先端がはみ出していた。見事に反り返った
それは、今しも女を貫こうと虎視眈々と狙っている野獣のようでもあった。
 客席の男達から、感嘆とも驚きとも羨望ともつかないため息が漏れた。
 恵美子は、魅入られたように、そんな浩一のモノを口に含んだ。彼の欲望がど
くどくと脈打った。(こんなに凄いものははじめて)
 恵美子は、浩一にどう思われるか考える余裕もなく、早く受け入れたいと思っ
た。
 こんなものが私の中に入って来たらどうなってしまうのだろう。それを考えた
だけで、恵美子の胸は高鳴り、頭の芯がじんと痺れた。
 熱い。淫襞から愛液がじゅんと染みだして来て、焼けるように熱くなっていた。
 そんな恵美子を察してか、浩一はソレを彼女の秘部にあてがい、一気に挿入し
た。
 ああっ、なんて凄いの!
 今や、たいしたことでは驚かなくなっていた恵美子だったが、浩一が身体の中
に入って来た時の衝撃は凄まじかった。秘部から一気に興奮が全身に伝わり、電
気が背筋を走った。彼女の果てしない欲望が満たされて、その何とも言えない満
足感が全身を覆った。
 浩一はピストン運動をはじめたが、なんという事だろう。浩一の巨大なモノの
先端が遠慮会釈なく恵美子の柔肉を掻き回し、めくるめく快感が彼女を襲った。
 思わず彼女の口から高らかな嬌声が漏れた。
 ステージの上で客と交わる時、常に恵美子は醒めていた。時間を気にし、時に
は警察の心配もした。しかし、今はそんな余裕はなかった。目の前の自分の淫欲
を満たす事だけしか頭になかった。
 浩一の巨大なモノが恵美子の柔肉の一番奥の最も感じる部分を激しく責め募っ
た。
 恵美子は一気にオーガズムになったが、絶頂に達した後も、その目の眩むよう
な強烈な快感は強くなりこそすれ、消えて行く事はなかった。
 ひとりでに腰が動いてしまう。恵美子は快感のあまり完全に我を忘れていた。
 頭の中では幾つもの花火が炸裂し、その花弁は燃えるように熱く、溶けてしま
いそうだった。身体がばらばらになり、宇宙に四散して行く。からだ中の力が抜
けていき、空中を漂う。魂がどこまでも昇って行く。
 恵美子は、天国の門を垣間見た。
 そんな恵美子の反応を見て、浩一は深い満足を覚えると同時に、感動もしてい
た。
 恵美子の柔肉は吸いつくように浩一の肉茎を包み込んだ。その襞は彼女が興奮
していくにつれてぐいぐいと締めつけて来る。彼の男根の動きにあわせて敏感に
反応して来る。
 これが名器というものなのか。
 普通の女子大生だった恵美子と何度もセックスをしていた浩一だったが、一度
も今のような興奮を味わった事はなかった。
 女は、磨かれるものなのだ。
 彼はそれを実感した。恵美子はセックスに関して磨き抜かれたのだ。
 浩一が恵美子の豊かな乳房をぐいと掴み、アナルに指を入れた刹那、彼女の淫
肉がきゅーっと締まった。
 浩一はたまらず思いのたけを彼女の中にぶちまけた。
 「こ、浩一君……いつからこんなに……凄すぎる……」
 彼女は舞台の上で、失神してしまった。


 気がついたのは楽屋の中だった。
 劇場の支配人と浩一が心配して彼女を覗きこんでいた。
 「私……こんなの初めて……」
 「俺も、舞台の上で我を忘れて失神した女をはじめて見たよ。一時はどうなる
かと思った」
 人の良い支配人は、恵美子が意識を取り戻したので、ほっとして言った。
 浩一は、大事な商品をこんなにして、とリンチまで覚悟していたが、支配人は、
浩一に愛想笑いを浮かべた。
 「しかしアンタのソレは凄いね。まだいきり立ってるじゃないの」
 慌てて恵美子を楽屋に運んだので、浩一は下半身が裸のままだったが、彼の巨
大なモノは、屹立したままだった。
 そんな一物を、楽屋に居合わせた他のストリッパーが羨望のまなざしで見つめ
ていた。
 「モノも立派だが、あんなに凄いナニをやれるのがもっと凄い。空前絶後とは
このことだ」
 支配人は言葉の限り浩一を誉めそやした。
 「でね。モノは相談なんですが……アナタ、その、プロになる気はないかね」
 「いけません。彼は普通の学生なんです。自分の恥ずかしいところやセックス
を見世物にするような世界には縁のない人なんです」
 驚いた恵美子は止めに入った。
 自分は浩一にいくら軽蔑されてもいい。でも、彼を自分と同じ世界に引っ張り
こむ事だけはしてはならない。恵美子はそう思ったのだ。
 しかし、今までずっと無言だった浩一から出た返事は予想もつかないものだっ
た。
 「是非、そうさせてください。この世界に入るにはどうすればいいのか、判ら
なかったんです」
 どうしても恵美子から離れられないことを悟った浩一は、自分の陰茎にシリコ
ン製の支柱を入れて常に最大限勃起している状態にし、亀頭の部分にはコラーゲ
ンを注入して巨大化する整形手術を施したのだった。
 恵美子にとって、自分が利用価値のある存在になる為にはどうすればいいか。
どうすれば恵美子と一緒に居られるようになるのか。これが浩一の考えついた答
えだった。
 恵美子に欠く事の出来ないセックス・パートナーになればいいのだ。
 浩一は、恵美子の今日二度目の舞台から一緒に出演した。
 今度は失神する事もなく、しかし発狂したかのような激しいオーガズムに達し
た恵美子は、浩一が舞台の袖に引っ込んだ後、舞台上で客を数人相手にしてから、
夢遊病者のように茫然となって楽屋に戻って来た。
 浩一が本番ショーの相方に志願してから、恵美子は一言も口を聞かなかった。
怒っていたのではない。浩一を自分と同じところまで堕としめてしまった、その
ことを悔やんでいたからだった。
 「あなたを見世物に堕とすつもりはなかったのに……」
 やっとのことで恵美子がぽつりと言った。
 「これは僕の意志なんだよ。君のそばにいたい。君が僕を必要として欲しい…
…その為には、これが一番いい方法だと思ったんだ」
 「どうして。どうしてそこまでして私のそばにいたいって言うの」
 「それは……どうしようもなく、君の事を愛しているからだよ。ひとときも離
れていたくないんだ。だから」
 恵美子は幸福で、訳が判らなくなりそうだった。それが倒錯した喜びであって
も、こんな自分を、ここまで愛してくれる男がいた事が、信じられないほど嬉し
かった。
 「それ、本当なのね。信じていいのね」
 「僕の決意を自分の目で見ているのに、まだ信じられないの」
 恵美子は、そんな浩一が急に愛しくなり、彼の巨大なモノを握り締め、優しく
口に含んだ。
 「あなたの愛を、おろそかにはしないわ……」


 恵美子と浩一のコンビの評判は東京の足立の元にも届いていた。
 「史上最高の淫乱カップルだな。サイバー・カップル、シリコン・ラヴァーズ
とでも名付けるか」
 新たな金鉱を発見した思いで、足立はにんまりした。
 長い地方巡業を終え、夜になって東京に帰って来た恵美子は、『シャングリラ』
のドアを開けた。店内からはハッスルタイムの華やかな音楽が流れていた。
 が。
 客席の中のステージを見て、恵美子は凍りついた。
 恵美子が見たものは、妹の彩香の姿だった。
 彩香は、全裸だった。
 そして、四つんばいになって後ろから犯されている彼女の下半身には、仮面を
つけた男の男根が深く突き刺さっていた。
 仮面の男は、激しく腰を動かした。
 それに合わせるように、彩香もピンク色に染まった全身をわなわなと震わせた。
小さいが形の良い乳房がぶるぶると揺れた。驚いた事に、彼女の乳首には小さな
ピアスが施され、ゆらゆら揺れていた。
 彼女の表情は、エクスタシーに達した女が見せる満ち足りた、うっとりしたも
のが浮かんでいたが、射精を済ませた男の肉棒を口に含んで清めてやる姿には、
淫猥さが漂っていた。
 彩香は、男のモノを舐めおわると、両足を客席に向かって広げ、彼女の媚肉の
間から男の精液がとろとろと流れ出す様を見せ、食い入るように見つめる客に流
し目を送っていた。
 そんな彩香は、恵美子よりもいっそう娼婦の持つ隠微な雰囲気を漂わせていた。
 それだけではない。彩香の両の小陰唇に開けられた穴には男の肉茎を刺激して
性感を増すための真珠が埋めこまれていた。そんな自分の性器を彩香は自分の指
で押し広げ、客席に見せているのだ。
 恵美子は、ショックのあまり、その場に棒立ちになったままだった。
 ステージの上の彩香は、姉が帰って来たのを目ざとく見つけた。
 「お姉さん。私、最高のセックスを知ったわ」(これは一体どう言う事なの。
彩香はまじめな高校生として静かに暮らしているはずじゃなかったの)
 恵美子の身体は、約束を破られた口惜しさでわなわなと震えて来た。
 「私だけじゃなく、妹までこんな目に遭わせて、どこまでやれば気が済むと言
うの」
 「これについては、彼女自身が言い出した事なんだ。私もお姉さんみたいにセ
ックスしたい、ってね」
 恵美子を出迎える為に出てきた足立が言った。
 ステージ上の彩香は、姉に見られている事を意識しながら、自らアナルにバイ
ブレーターを挿入し、オナニーショーを始めていた。
 ステージから降りた仮面の男は、全裸のまま親しげに恵美子の肩を叩いた。
 「よお! 派手にドサ回りして来たんだってな」
 男は口元を下品に歪めた。
 「誰だか判るか」
 この声には聞き覚えがある。しかし、まさか……。
 男は、ゆっくりと仮面を取った。その素顔は、あろう事か、達彦だった。達彦
は、恵美子を犯し、そして今は妹の彩香まで犯していたのだ。
 「元々は、お前を思う存分抱きたくてな。そこで俺は考えたよ。ここで男役の
バイトをすれば万事OKだってな」
 恵美子に遅れて、浩一が店の中に入って来た。
 「おう。エミちゃんのヒモさんか」
 達彦は軽蔑のまなざしを浩一にくれた。
 「あなたが浩一さんを軽蔑出来るの? 同じ事してるじゃない」
 「違うね。俺はあくまでアルバイト。だから仮面をつけてるのさ。いくらお前
とヤリたいからと言って、セックス・ショーの犯し役で一生を棒に振る気はない
からな。このデカマラのヒモさんと俺は違うんだよ」
 達彦は浩一にそう言うと、彼の大きく膨らんだ股間をいきなり掴んだ。
 「手術で粗チンをデカくするなんざ、お前にしては思い切ったことしたじゃな
いか。でもよ、いっつも立ちっぱなしってのも不便だろ。やっぱり人工チンポは
良くないぜ」
 「私が目当てなのに、どうして妹を……」
 恵美子は怒りと情けなさで言葉が続かなかった。
 「俺はお前がいるもんだと思って、ここに来てみたら、お前の妹がああいうこ
とをしてたんだよ。俺がアイツのバージンを戴いた訳じゃないんだぜ」
 足立は、達彦の話をにやにやして聞いていた。
 「彩香は、お前がいない間にイッキにセックスを覚えてな。淫乱の血は争えな
いねえ」
 「違うわ。あなたがたが、あの子にむりやり教えこんだんだわ」
 「教えこんだか、自分で学んだかはたいした問題じゃねえ。現にあいつはああ
やって客にヌレヌレの自分のおまんこをさらけ出してるんだ」
 ステージ上の彩香は、アナルでのオナニーショーを終えて、客席に降りるとこ
ろだったが、足立がそれを止めた。
 「どうだ、浩一君よ。お前さんのその立派なモノをご披露してくれないかな」
 「……恵美子は旅から帰って来たばかりですよ」
 浩一は遠慮気味に言った。
 「誰が恵美子とやれと言った? お前は彩香とやるんだよ」
 「そんな……」
 恵美子はさすがに絶句した。
 たしかに浩一の愛を信じている恵美子は、彼がだれと交わろうが気にはしない。
しかし、妹が相手だと話は違う。
 「心配するな。彩香はもう一日五、六人を相手にする立派な女になったんだ。
浩一のモノで壊れたりするもんか」
 足立は、浩一に、ステージに上がれ、と顎をしゃくった。
 浩一は、恵美子を悲しげに見たが、黙ってステージに上がり、スラックスを脱
いだ。ライトが、彼の巨大なモノを照らしだした。
 世の中には、こんなモノを持っているヤツもいるのか。客達が思わず発した声
にならないうめき声は、そういう気持ちを現していた。
 それを見て、さすがの達彦も言葉を失った。
 「ありゃバケモノだ……」
 浩一は彩香にディープキスをしながら、彼女の秘部に自分の分身を押し当てた。
 「こ、これが私の中に入るの……怖い……」
 「大丈夫だよ……加減するから」
 浩一は、ゆっくりと彩香の中に巨大な肉棒を埋めて行った。
 浩一のそれが入って来るだけで、彩香の呼吸が止まった。息も出来ない感覚が
花芯から全身に広がっていった。
 「ああ、動かさないで……死にそう……」
 反り返った浩一のモノは、彩香の一番敏感な部分を直撃していた。
 浩一はゆっくりと腰を使い始めた。
 それだけで、彩香はうめき声を上げた。
 「だめ……どこかに行ってしまいそう……」
 浩一は、少しだけピストン運動を早めた。
 彩香はたまらずに、最初のアクメに達してしまった。
 「さ、お前も行くんだ」
 足立は、恵美子のボディコン・スーツをびりびりと引き裂いた。彼女の大きな
乳房が飛び出した。
 それを見た達彦は、思わず恵美子に武者振りつき、下半身をわずかに覆ってい
たうすいスキャンティを剥ぎとった。
 達彦は、恵美子の身体を抱えるようにしてステージに引きずりこんだ。その横
では彩香が浩一と交わっている。
 大勢の観客の視姦によって磨き上げられた恵美子の裸身はビーナスのように美
しかった。それを見て、達彦の一物はたちまち反り返って元気さを取り戻した。
 「前戯なんて余計なものは省略させてもらうぜ」
 達彦は、もどかしげに恵美子の中に分け入った。
 巨大だが人工的な浩一のモノと違って、達彦のモノは言わば『天然モノ』だっ
た。すべてに血が通った達彦の男根は、その興奮を恵美子の柔肉に伝えていた。
 彩香を気遣いながらゆっくりと腰を使う浩一とは対象的に、達彦はその性格そ
のままに最初から暴力的に恵美子を突き立てた。
 「あう……いい……いいわ」
 「浩一の作り物と、どっちがいい?」
 「浩一さんには愛があるわ……」
 「俺には愛なんてモノはないけど、お前をめちゃくちゃにしたい欲望はあるぜ」
 「いいわ……めちゃくちゃにして」
 一方の彩香は、強烈なオーガズムの嵐の中でほとんど失神寸前だった。他の男
には効果満点の花びらにつけた真珠は、浩一には効かない。彼をイカせるには、
亀頭部分へ刺激を与えないといけないのだ。
 が、処女を失って日の浅い彩香には、そのようなテクニックは身についていな
い。自分がイクのが精一杯だ。
 「ああああっ、こ、こんな凄いの初めて……か、身体がばらばらになる……あ
そこが溶けてしまう……あっ! いやぁ!」
 彩香は、何度目かの絶頂に達したまま気を失ってしまった。
 「まだまだよ……」
 達彦は、恵美子から帰って来たその言葉と、隣の彩香が浩一によって失神させ
られたのを目の当たりに見て、少なからず傷ついていた。
 それを跳ね返すかのように、達彦は猛然とスパートをかけてきた。
 達彦のカリの張った男根が恵美子のGスポットを擦り上げ、子宮の入り口を突
き上げた。
 「いい……それよ。それが達彦さんのセックスよ……もっと、もっと激しく…
…お願い」
 よしきた、とばかりに達彦はより一層ペースを上げた。
 そのうち、さすがの達彦ももたなくなって来た。
 「くそ。ちょっと休憩……させてくれ」
 そんな達彦の肩を押して、代われ、と言ったのは浩一だった。
 「僕じゃなきゃ恵美子さんは満足しないんだ」
 達彦の代わりに、浩一のモノが恵美子の秘部に深く分け入った途端に、彼女の
奏でる声がまったく違って来た。感じている、というのではなく、何かを必死で
我慢しているような声になった。
 「ううううう、あなた、お願い。私をしっかり掴まえて……飛んで行きそう…
…」
 客席に裸体を見せる為に座位で浩一と交わっている恵美子は、浩一の身体に手
と足をきつく絡み合わせた。
 「僕が一緒だ。君だけを見世物にはしない」
 浩一も荒い息で応じた。
 「あああ……私、幸せ……」
 恵美子はがくがくと身体を震わせると、背中をぴんと反り返らせた。途方もな
いオーガズムが恵美子を包み込んだ。見ているだけで自分もイッてしまいそうな
強烈なセックスだった。
 「お姉さん……凄い……」
 途中から意識を回復し、恵美子のセックスを茫然と見つめていた彩香がうっと
りとした表情で呟いた。(アナルやフェラチオではお姉さんよりうまくなったと
思ったけど、やっぱり私は勝てっこないわ……)
 彩香は、恵美子の激しいアクメを見ながら、手が自然に自分の秘裂に伸びて肉
芽を慰めていた。
 その様子を見ていた足立が声を上げた。
 「恵美子。今度の相手は彩香だ。お前が妹を犯すんだ」
 手回しよくボーイがレズ用の張形を持って来た。
 絶頂の余韻未だ消えやらぬ恵美子は、浩一から身体を離すと、覚束ない手つき
で張形を自分の淫肉の中に沈めた。
 それを迎え入れる彩香は興奮のあまり腰をぬめぬめと動かしている。
 「彩香ちゃん……あなた、こうなって、後悔していないの?」
 彩香に挿入する前に、恵美子が尋ねた。これは近親相姦だ。
 「後悔なんて……お姉さんと出来るなんて、夢のようだわ」
 それを聞いて恵美子は張形のもう一つの先端を彩香の秘裂の奥深くに入れてい
った。
 彩香の口から、可愛いため息が漏れた。
 「ああ、最高よ、お姉さん……」
 恵美子には、別のバイブレーターが足立から手渡された。その意図が判った恵
美子は、それを彩香のアナルにゆっくりとじらすように挿入した。
 「ひぃぃっ……死にそう……」
 「彩香ちゃん、いいのね? 本当に、いいのね?」
 「いい……最高なの。もう、どうにでもして……」
 「あなたまでこんな事になって……私を許して……」
 「お姉さん……許すだなんて……私、どうなっても構わない……」
 彩香の喘ぎ声を聞きながら腰を使う恵美子も禁断のエクスタシーを感じていた
……。



    _____________________________
   |                            |
   |         グリーンドア 文 庫         |
   |   ――――――――――――――――――――――   |
   |    ・令嬢姉妹 完全飼育・             |
   |                著者 安達 瑤     |
   |   ――――――――――――――――――――――   |
   |                            |
   |  初 版 発 行   1994年 9月30日       |
   |  発 行 所   株式会社 勁文社          |
   |          住所 東京都中野区本町3-32-15    |
   |          電話 (03)3372-5021         |
   |                            |
   |  制 作 日   1998年 7月30日       |
   |  制 作 所   株式会社フジオンラインシステム   |
   |          住所 東京都豊島区東池袋3-11-9   |
   |                 ヨシフジビル6F   |
   |                            |
   |                            |
   |     本書の無断複写・複製・転載を禁じます。    |
   |                            |
   |                ISBN4-7669-2066-X    |
   |                            |
     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



看護婦の秘蜜



       

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   ◆   ∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞   ◆
   *  ・                     ・  *
   ◆  §                     §  ◆
   *  ・     看 護 婦 の 秘 蜜     ・  *
   ◆  §                     §  ◆
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   ◆  §                     §  ◆
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   ◆  §                     §  ◆
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   ◆  §                     §  ◆
   *  ・        影村 英生        ・  *
   ◆  §                     §  ◆
   *  ・                     ・  *
   ◆  §     《 グリーンドア文庫 》     §  ◆
   *  ・                     ・  *
   ◆   ∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞   ◆
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   ◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆




           ・∞・∞・∞・∞・∞・∞・
          §             §
          ・    目   次    ・
          §             §
           ・∞・∞・∞・∞・∞・∞・



     1 これが欲しいんだろ・・・・・・・・・・・・52行
     2 おしゃぶりが好きだと言ってみろ・・・・・470行
     3 よっぽど飢えていたんだろ・・・・・・・1138行
     4 こんなに濡れて恥ずかしくないのか・・・1809行
     5 うしろににぎりこぶしを使ってやるぞ・・2247行
     6 わたし、いま、とても欲しいの・・・・・2757行
     7 けつの毛まで濡れてるじゃないか・・・・3381行



∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・



            1 これが欲しいんだろ



 (ンもう。一也さんって、世間知らずで、マイペースの純情ボーイなんだから
………)
 切れ長の大きな目で、眉が濃く、野性的な顔だちの森高千沙子は、バスタブの
なかで、はりつめた太腿、ひきしまってきれいな両足を、思いきり伸び縮みさせ
た。
 彼女は、この安普請(やすぶしん)のマンションから二駅ほど先の医療法人財
団・仁愛総合病院に勤める二十二歳の正看護婦である。
 都内の看護専門学校をおえて、げんざい形成外科病棟に配属されているが、採
用内定のころからリハビリ病棟の実習生として、病院内部のことはほとんど心得
ていたので、いまは、あまりとまどうことはない。
 それでも、二週ごとの日勤、準夜勤、夜勤という三部交代制は、いくらペース
に馴れたといっても、なかなかたいへんである。
 しかも、今晩のように一也が寝室のベッドで待っているようなときは、のんび
りと湯に浸っているわけにはいかなかった。
 むろん、情熱的な一也に抱かれるのは嫌いではない。ただ、いつも溌剌として
疲れを知らず、すこしの翳りもない彼の健康さが、なぜか、時おりうとましく感
じられる。
 (いつもワンパターン。正常位しか知らないのかしら………)
 それは千沙子のわがままというものかもしれない。
 官庁勤めの有吉一也には、女を蕩(とろ)かす甘い雰囲気は望むべくもないが、
それを補って余りあるのは、彼がたゆみなく持続的に抜き差しできる野太く硬い
亀頭冠の持ち主であるということだった。
 「おーい、まだかい。早く来ないか」
 千沙子は、ザァーッと湯をわりこぼして降りたつと、なまめかしい素肌にピン
クのタオルを巻きつけた。
 「せっかちねえ。いま出るわ」
 彼の性急さは、いまにはじまったことではない。
 千沙子が三年間にわたる寮生活からはなれて、分相応のアパート住いをしよう
としたとき、
 「ぜったい、バスつきマンションにすべきだよ。ぼくが安いところをさがして
あげる」
 と主張し、病院に近いこの場所をみつけてくれたのは、一也である。
 彼とは、千沙子の友だちの結婚披露パーティで知り合い、物おじしない押しの
つよさに根負けして、半同棲のかたちになってしまった。
 同じころ交際しはじめた別のカップルはさっさと結婚し、一也も、正式に彼女
を家族に紹介したがっているが、千沙子は、
 (まだ若いんですもの。もっと青春を楽しまなくちゃ)
 と、なかなか応じない。
 いまの彼女にとって、自由がいちばん大切なものに思える。だから、安月給に
不相応な家賃も、実家から仕送りをうけ、ぜったい一也に負担させない。
 直情タイプの一也には、それがどうしても納得できないのだが、いっぽう、自
分が千沙子のはじめてのセックス・パートナーだったことにかなり満足している。
 「すこし飲んだほうがいいでしょう。土曜の晩ですものね」
 タオルを巻きつけたままで浴室から出てきた千沙子は、なまめかしい声で、ベ
ッドの一也に呼びかけた。
 「うーん。あした、企画書をまとめなくっちゃあならないんだが………」
 一也は口ごもり、挑発的で秘密っぽい雰囲気をただよわせる千沙子はちらっと
見た。
 タオルの裾から、もじゃっとする陰毛のむらがりがちらつき、いまにも放恣(
ほうし)な肉びらと陰核が、くわっといきりたつような気がする。
 すらりと伸びきった彼女の足は、磨きたてられた象牙のようにつやつやしてお
り、大胆な乳房のふくらみが、タオルから大きくはみだして盛りあがってみえる。
乳輪の色がかすかに濃さを増している。
 「じゃあ、ちょっとだけ………」
 一也は曖昧につぶやいた。
 (これだから早く結婚しておけばよかったんだ)
 という思いが、彼にはある。
 たまにしか会えないから、千沙子はじらして、徹底的に快楽をむさぼろうとす
る。
 (どうやら今夜は、体力を消耗することになりそうだな)
 一也は覚悟した。
 「さあ、どうぞ。ベッドで飲むなんてサイコーよ」
 千沙子は熱くかすれた声でささやき、ワインをなみなみとついだグラスをさし
だした。
 「いま行くわ、ちょっと待ってね」
 一也は一口飲んで、彼女がタオルをぬぎすて、化粧台の腰掛けにすわって、髪
の毛をくしけずるのを見守った。
 千沙子は、鏡のなかから一也にほほえみかけた。彼が興奮しているのがわかる。
 今夜は、楽しめそうだった。
 もっと飲ませておいてから、いいことをしてあげよう。でも、そのときまで黙
っていよう。そうすれば、もう止めることはできなくなる。
 一也は、呻き、喘いで、亀頭冠を舐め啜られるままに任せるだろう。
 「もっと飲みましょうよ、一也さん」
 千沙子はほほえみながら、ワインのボトルをとりあげ、彼のグラスに注いだ。
 一也が、睡蓮のつぼみのような乳首をみつめているのに気づくと、彼女は大き
く息を吸いこみ、思いきり乳房に圧力をかけて、ぐいっとつきだした。
 「灯りを暗くしてくれないか。すこし酔ってきたよ」
 一也は、彼女のなまめかしさに気押されたようにグラスをとりあげ、一息にあ
おった。
 「かわいそうに疲れてるのね、坊や」
 千沙子は全裸のまま、そっとベッドに入りこみ、ひたと一也に寄り添い、汗ば
む胸毛を撫で、男の乳首をこすった。
 「マッサージで、疲れた筋肉をほぐしてあげるわ、いいでしょ」
 「うん。でも、きみも疲れてるだろ」
 「ぜんぜん。あなた、くすぐったがらないでね」
 千沙子は笑って灯りを消し、寝室はまっ暗になった。
 いつもは灯りを消さないように頼むのだが、今夜は、すこし違っていた。
 「看護婦さんってのは、疲れた患者を元気にさせるツボを心得てるんだね」
 一也は、全身がやわらかくほぐれるのを感じたが、すでに勃(お)えきった部
分が、たくみな指先の動きで、ますますコチコチになってくるのがわかった。
 「こんどはあおむけになって………。ストレスがたまると、男性もヒステリー
になるんですってね………。さあ、楽にして………」
 悩ましげにささやき、難なく一也をあおむけにした千沙子は、相手が陶然とな
るまで、ねっとりたくみに、わき腹や腰の筋肉、内腿のしこりを揉みほぐした。
 ぴく、ぴくっ、と肉筒が反りかえり、じゃりじゃりする剛毛のかさばりが熱気
をおびている。
 「千沙子、いい気持ちだよ」
 一也は呻き、堪えきれぬように勃えきった王冠部がむくれかえるのを感じた。
 根もとがヒクヒクし、亀頭みぞに分泌物がにじみだしている。
 (ここも揉んでくれるだろうか。してくれたらいいのに………死ぬほど激しく
しごきたててくれよ………)
 千沙子の動きがとまった。
 彼女がグラスに残ったワインを飲みくださずに口に含んだ。
 一也は欲求不満の吐息をつき、肉筒の根もとに神経を集中した。
 「すこしは、からだがほぐれたでしょ」
 千沙子は、彼の太腿をそっと指先でまさぐり、陰のうと臀裂のあわいを軽く押
し揉みした。
 これで一也の注意をそらし、うむをいわさず直角に屹立する亀頭冠を咥えこみ、
舐めずりまわすつもりだった。
 マッサージのおかげで、一也は発情しきっている。
 「ああ、とてもいい気持ちだよ。いっそ、指を入れてくれないか」
 「指をって? どこに入れるの」
 「もっと下………。わかってるだろ」
 一也は、腰をひくつかせて呻くようにつぶやく。
 千沙子は、それを無視して、ヒクヒクする亀頭冠に唇を近づけていった。
 咥えこむのが待ちきれぬ思いだった。
 肉筒の昂ぶったほてりが、頬にふれるのが感じられる。いまが潮どきだった。
 ふいに千沙子の唇が吸いつき、甘美な熱いうるみが、ねちゃっ、と王冠部ぜん
たいにおよぶのを感じて、一也は呻いた。
 「うむう………。いい気持ちだよ」
 まるで粘りのある柔(やわ)ひだに、ほこ先が吸いこまれるような感じである。
 一也は、ヘルスギャルのような彼女の行為におどろいたが、ぐわっと張りだし
た鰓(えら)の部分は、ますます野太く、いきりたってくるのだった。
 (こんなに淫らなことをするなんて………)
 彼は、千沙子にやめさせようとして、髪の毛に手をのばしかけた。
 しかし、一也は、ほんとうはやめさせたくなかった。戦慄的で、とろけるよう
な快感がもっとつづくのを願っていたのだ。
 (ふとくて、大きいわ………。息がつまりそうよ………)
 千沙子は、嬉しそうに舌をからめて呻いた。相手が満遍なく舐めまわされるの
を喜んでいるのがわかる。
 ぬらぬらとまとわりつく喉ちんこに触れて、怒張の熱感がうずき、一也は、環
状の蜜の粘膜のあわいから引きぬきたくなかった。
 「くっ、いい。根もとごと引っぱりこまれるようだよ」
 「あうっ………。うっ」
 千沙子は無意識にあえぎ、唇を卵のかたちにしてつよくしめつけた。
 なまなましい肉筒が喉の奥で、異様に膨らみ、悶え、脈打っている。
 「千沙子、もういくよ、いいか。なかで出しても………」
 (むぐっ………。イッて………いいわ)
 一也が、だく、だくっとほとばしらせると、千沙子もまた、痺れるような絶頂
を迎えて、あわただしく精液を飲みくだした。
 こんな感覚ははじめてだった。
 いつも、こうだったらいいのに………。
 千沙子は、噴出の残りのひとしずくを舐めとり、羞じらって、彼の股間から唇
を離した。
 「すごいな、きみは………。ひと休みしなくっちゃあ」
 ぬめらかで、官能的な千沙子の喉のなか放出しきった一也は、精魂つきはてて、
すぐには回復しそうもなかった。
 ひと眠りすれば、すぐに立ち直ると思いながら、じっと目を閉じた。
 やがて、ネグリジェをまとった千沙子の規則ただしい寝息が聞えはじめた。ぐ
っすりと眠りの淵にひきこまれつつあるようだった。


 あけがた、寝室は静まりかえり、隣で彼女のやすらかな寝息が洩れるばかりで
ある。
 一也は半身を起こし、カーテンに映えるうすあかりを頼りに、整った千沙子の
横顔をまじまじとみつめた。
 すると、さっきのことが思いだされ、にわかに肉筒が勃えかえってくるのをお
ぼえた。
 「ねえ。ちゃんとやろうよ………」
 彼がネグリジェのボタンを一つ一つはずし、むちっと盛りあがる乳房をやわや
わと揉みしだくと、千沙子も目をさました。
 「ああン。元気になったのね………」
 おののきながら、彼女もまた、うるみの湧出につられて、男の首すじにとりす
がる。
 「さわってごらん。こんなに勃(た)ってる」
 一也は、ツンと張った乳房を舌で舐めずり、てのひらでネグリジェをはだけ、
ひきしまった千沙子の腹部から臍(へそ)のあたりをそろりと撫でまわした。
 もじゃっとする陰毛のかさばりをかきわけ、みぞからはみでた貝の身のような
びらつきをヌラヌラとまさぐる。
 「だめよ。つよくしないで………。あうっ。とても感じるわ」
 千沙子は息をあえがせて両膝をひろげ、つよく抱きしめられると、一也の熱感
が素肌につたわるのを感じた。
 「これが欲しいんだろ。どうしてもらいたいのかな」
 ねたつく肉びらのまくれかえりに、亀頭冠が押しつけられると、彼女は低く呻
いた。
 「じっとしててごらん」
 耳もとで彼女はささやくと、半ばひらいた千沙子の唇のなかに、ねっとり執拗
に舌をからませてくる。
 「ねえ、待って………ちょっと待って。いきなりだなんて………」
 千沙子は、威圧的にふくれあがる王冠部をてのひらでつかみ、悩ましげにしご
きおろし、しごきあげた。
 「ンもう。いけない坊やねえ。どうするつもりなの」
 濃厚な接吻をのがれて、千沙子が甘えるようにそそのかすと、彼の息が熱く湿
って、鼻腔にまで流れこんでくる。
 耳の穴に熱い舌先をさしこまれ、ゾクッとする快感のひらめきが、彼女の秘肉
の粒立ちをつらぬく。
 「変になりそう。あまり、いじめないで………」
 「こんどは、さっきとちがうぞ」
 自信ありげな一也のささやきに、彼女はなまめかしい舟状の割れ口を思いきり
押しひろげた。
 「おねがい。やさしくして………。あうっ」
 「もう、こんなにだして」
 狙いあやまたず、一也が突き入れ、思いのほかの狭隘(きょうあい)さにかす
かに呻くと、千沙子も喘いだ。
 みえない肉質がうごめき、内奥で悩ましい蜜層が脈打つのが感じられる。
 「なんて具合がいいんだ。ピクピクする。きみはすごい………」
 一也は、かすれ声で呻き、彼女の耳たぶを噛み、力を得たように、ねちゃっ、
ねちゃっと、突きあげる。
 紡錘のように重たげで、毛ぶかい陰のうが、ぬるぬるした蟻の戸わたりにある
のを、千沙子は感じた。
 「あなたもよ。すこし拭かなくちゃあ」
 揉みぬかれて、うるみがあふれ、彼女は箍(たが)がはずれかかっている。
 千沙子はくいしめるように腰を突きあげ、筋肉をふるわせる一也の背中を、思
いきりかきむしった。
 「いい。とてもいい」
 蕩けるように、熱く沸きたつ狭隘な構造をえぐりたてながら、彼は、もっと持
続させるために、すっとしりぞく。
 「いや。ぬいちゃ、いや」
 千沙子は火がついたような泣き声をたて、反射的に、相手の足首に両の踵をか
らみつけ、もどかしげに腰をふりたてる。
 「ぐちょぐちょになってる。すべりがよすぎるね。体位をかえようか」
 「いやっ。このまま、もっと強く、めちゃめちゃに突いて………」
 すこやかで、汗ばんだ一也の胸毛が、彼女の艶やかな肌をこすりたてる。
 弾力のある両の乳房が、あたりもやわらかく彼の胸毛をこすり、下半身をます
ます疼かせる。
 「ひどく濡れてる。もう、そろそろ………」
 「先にいっちゃいやよ。むっ」
 ひと突きごとに、ねとつく肉ひだを捏(こ)ねられると、千沙子の全身に放射
状の快感がひろがってゆく。
 いまや寝室は、ふたりの激しい息づかいと、猫がミルクを舐めずるような秘め
やかな音がみなぎっている。
 「どうして、こんなに長くて、先っぽがふくらむの」
 時おり、海鼠(なまこ)を輪切りにしたような吸盤状の壁にあたると、彼女は
胃袋のほうまで突きあげられる感覚をおぼえた。
 「奥まで突いても、押しもどされるようだ………」
 一也が低く呻きはじめた。
 汗まみれの男らしい腕が、しなやかな千沙子の肩をかかえこむ。
 「もっと、深く埋めて………。あ、あたるう。気持ちがいいわ」
 「うっ。もう。いきそうだ………。さあ、一緒に………」
 一也が声を軋らせ、耳もとでささやく。
 千沙子も呻き声で応じ、突きあげる相手になまめかしく腰をもたげ、うごめか
せてこたえる。
 花芯に信じがたい収縮がはじまり、ひた向きにのぼりつめたい。
 「ううっ。もうだめ。いっちゃう」
 遮二無二、嵩にかかってえぐりたてる男の下で、なやましくのたうつ女の顔は、
まるで砕けることのない恍惚の仮面のようだった。
 「待ってろ。さあ、舌をからませろ」
 勢いに乗じて、一也は彼女の口腔を舐めまわすと、千沙子も激しく舌で応じた。
 内腿のつけ根にぬるぬるしたものが湧きこぼれ、臀裂までが、きゅっ、きゅっ、
と収縮しはじめている。
 「おおっ、先っぽからとろけちゃう」
 一也が大きく呻いた。
 肩をかかえあげる腕に力がこもり、千沙子は甘美に粘る男のほとばしりを感じ
た。
 「あっ、あっ、いいっ、もっと、いっぱい出して………」
 千沙子は、たえかねて声を放ち、さらに深く咥えこもうと、激しく腰をわりた
てた。
 熱い粘着性の放出が、子宮頸部にあたり、ぬめらかな襞々(ひだひだ)が、す
わすわつつみこむのを感じている。
 「ひっ。感じる。やだ、感じるう」
 心まで蕩かす情欲に全身をゆだねながら、千沙子は、飛翔する感覚におそわれ
た。
 「ぼくもだ。ぜんぶ出ちゃう………」
 一也が呻く。
 ふたりは激しくもつれあい、互いの背をかきむしった。
 ようやく、千沙子は小刻みな波がゆっくりと引いてゆくのを感じた。
 二次、三次の狂おしい恍惚感につらぬかれて、千沙子は、彼の腕のなかで、し
みじみと幸せを味わっている。
 「すごかっただろ。こんどは、つながっているところをみせ合おうよ」
 「男の人って、エッチなのね。わたし、恥ずかしいからいやよ」
 「看護婦なら、患者のあそこをみることだってあるだろ。それなのに………」
 「あれは仕事と割りきってるからできるのよ。あなたはべつ」
 「手術のとき、男の患者の陰毛を剃ることだってあるんだろ」
 「いやっ。へんなこと言わないで………」
 一也は、彼女にのしかかったまま、熱い息吹きをふきかけたり、舌をさしこん
だりしている。
 千沙子は、朝の光が完全に寝室を明るくするまで、ずっとそうされていたいと
思う。
 彼はなおも、匂いのいい髪の毛を撫で、顔じゅうに接吻の雨をふらせつづけて
いる。熱っぽく愛撫し合いながら、時おり、互いの性器をまさぐりあった。
 「罪なひとねえ。また、刺激するなんて」
 「つい、いじりたくなるんだから仕方がないさ。きみだって、大きくさせよう
としてるじゃないか」
 耳のなかに、熱い舌先をさしこまれると、千沙子は、粘った肉ひだがふくれた
ようにひきつり、うるみの湧出が濃くなってくる。
 「おねがい。もう一度ちょうだい。とても欲しいの」
 「なにが欲しいんだい。はっきり言わないとわからないよ」
 「いじわる。知ってるくせに………」
 千沙子に腿をつねられて、一也の亀頭冠は野太くふくれあがり、前ぶれもなく、
ぬるりと入りこんだ。
 瓢箪(ひょうたん)の内部のような起状を、撓(しな)うように押しすすみ、
はじめの突きは深く、奥までとどいた。
 「いやあ、つかえるほど入れるなんて」
 彼女は、あられもなく太腿のつけ根をひろげ、つよい刺激をうけやすくする。
 目を閉じ、おおいかぶさる男の熱気を、オスの臭気を吸いこもうと、かたちの
いい鼻腔をふくらませた。
 一也の両手が、ふるえる双臀をかかえあげ、左右の肉をひろげた。
 「スケベなんだな。びらびらがよじれて………。ほら、こうしてやる」
 密着度のつよい体位のため、抜き差しの快感が千沙子の全身にひろがり、彼女
は気が遠くなるようだった。
 「乱れたいんだろ。声をだして、うめけよ………」
 「あうっ。乱れたいわ。もっとちょうだい」
 うるみとねたつきが増してくると、ふいに一也がピクッと動き、彼女を屈曲位
にして、加速度的にせめあげてくるのがわかった。
 「いやあっ。だめっ。また、いっちゃう」
 「ずぶずぶになってる。うっ」
 ピューッ、とはじけとぶのがわかり、ふたりは同時に達した。
 混じり合った精液と蜜の湧出が、双臀の割れ目に伝いおち、熱く湿ったシーツ
にまでにじんでゆく。
 それでも、まだ、千沙子はものたりなかった。一也は、困憊(こんぱい)しき
っていたが、なおも痴語をささやき、接吻し、愛撫しつづけた。
 やがて、窓辺に朝の光がさしこんできた。
 ふたりやようやく起きあがり、さわやかな光のなかで浴室に入り、シャワーを
浴びた。
 一也に背中を洗ってもらう間、千沙子の花芯は、まだ疼きっぱなしだった。
 「おなかがすいたでしょ。なににしようかしら」
 「心配しなくてもいい。ぼくがつくってあげるよ」
 千沙子は、ふり向いて彼に抱きつき、相手が太腿の内側をやさしくまさぐるの
を感じて、そっとほほえんだ。
 それから浮き浮きと寝室にもどり、そこそこに身づくろいをした。
 千沙子は、キッチンについてゆき、一也が朝食を作るのを手伝った。
 「きみは、あまり料理の作りかたを知らないんだろ」
 ベーコンをフライパンにのせながら、一也が聞く。
 「そうね。寮生活がながかったから、たいてい食堂か、ナースラウンジですま
していたわ………。実家に帰っても母さんがやってくれるし………」
 「でも、これからは、すこしずつ覚えていかなければならないよ」
 千沙子は黙りこんだ。
 これは間接的なプロポーズなんだわ、と彼女は思った。
 でも、わたしはまだ若いし、結婚だけを人生の目標にしているわけじゃないわ。
 「ママが、料理好きな女は、思いやりがあるって言ってる。ぼくは、必ずしも
そうは思わないが………」
 ほーら、はじまった。
 「ぼくはそうは思わないけど………」
 と言いながら、結局は、千沙子が従うことを強(し)いようとしているのだ。
 「そうね。患者さんの世話をするのが大好きっていう人もいるし………」
 せいいっぱいの皮肉のつもりだった。
 千沙子は、男にしばりつけられるのは嫌いではなかったが、二十六歳にもなっ
て、一也が二言目には、母親のことを持ちだすのが、いかにも良家の坊ちゃんじ
みて、歯がゆい。
 「食事を作るのは女の仕事だよ。みてごらん、これが二日酔いしたときの特別
スープの作りかたさ。ついでにベーコン・エッグの理想的な焼きかたを教えてあ
げよう。ママはこれがご自慢でね」
 「ありがとう」
 千沙子はそっけなく言った。
 「ああ、頭がズキズキする。これを飲めばすっきりするぞ」
 スープ皿を手にして、テーブルにつくと、一也は後悔の苦笑を洩らした。もと
もと、彼はワインだけでなく、アルコール類によわいのである。
 それも、もっぱら家風からきている。
 禁酒禁煙を代々の美徳とする有吉家の生活習慣のためだった。
 「そう。ごめんなさいね。だいじな土曜の夜をだいなしにしてしまって………」
 千沙子は詫びた。
 彼女は、せっかく作ってくれたベーコン・エッグをちらっと見たきりで、食べ
る気になれなかった。
 「かまわんさ。それより、もう出かけなくちゃあ。月曜の会議のために、立案
書を作るんだよ」
 一也は、軽い朝食をとりおえると、着がえをはじめた。ネクタイを結びながら、
ふと思いついたように言う。
 「そうだ。来週の休みの日に、きみを食事に誘うようにって、ママからことづ
かったのを忘れていた。かならず来てくれるよね」
 千沙子は、驚いたように彼をみつめた。
 「どうして、お宅にうかがわなくちゃあならないの」
 「ぼくの家族と会ってもらいたいからさ。ママだってきっときみを気に入って
くれるよ」
 一也の言葉は、妙に千沙子の胸にひっかかった。
 彼は、あまりにも一方的に、すべてを決めようとしている。
 「ちょっと待ってちょうだい。わたしにも都合ってものがあるわ。勝手に決め
こまないで………それにお宅のみなさんと気が合うかどうかわからないわ」
 「なにを言うんだ。きみはいずれ有吉家の一員になるはずじゃないか」
 「いいこと。わたしは家柄もないし、実家は金持ちじゃないけど、有吉家を選
ぼうとしてるわけじゃないのよ。そんな言いかたはやめてちょうだい」
 一也の表情が、みるみるうちに怒りで染まってきた。
 「もうママが決めたんだし、きみを家族に引き会わせたいんだ」
 「それでテストするのね。わたしは行きたくないわ」
 千沙子は言い張った。
 「ぼくたちは、もう他人じゃないだろ。いつまでもこんなかたちでつづけるつ
もりはない。ママは、ここに来てもいいって言ってるんだぜ」
 「もし、そんなことをしたら、あなたとは絶交よ。いまのわたしは、誰にも煩
わされたくないの。家族のことなんて別問題。あなたの態度は行きすぎよ」
 一也の顔は、怒りで紅潮していたが、徐々にもっと深い猜疑心と不満であおざ
めていった。
 彼は、頬をヒクヒク痙攣させた。
 (いつも身勝手なんだから………ちっとも、わたしの気持ちを考えてくれない
のね。こんなに愛してるのに………ママぬきで、男らしくわたしを迎えてよ)
 なんとも歯がゆかった。
 しかし、千沙子は、ひとつの妥協点をみいだそうとしていた。
 「ねえ、わたしも出かけるところがあるの。途中まで乗せていってくれるかし
ら」
 黙々と身支度をおえたふたりは、マンションを出て駐車場へ向かった。
 車に乗りこむときも、まったく口をきかなかった。
 (わからずやの女め。結婚しようってのに、なにが不服なんだ………。それと
も、ほかに好きな男がいるのか)
 気まずい雰囲気をただよわせたまま、一也はすごいスピードで車を走らせた。
 千沙子は助手席でちぢこまり、両手を膝のうえに乗せ、なんとか口を開くチャ
ンスをみつけようとしていた。
 (怒りだすと、なかなか機嫌が直らないんだから………)
 社会人になって四年もたつのに、まだお坊ちゃんそだちのわがままな性格を捨
てきれない。
 きょうは、とくにその傾向がいちじるしい。
 (とても、つきあいきれないわ)
 千沙子は、信号で車が停まりしだい、降りる覚悟を決めた。
 彼自身、自分の怒りを正当だと思っている以上、とりつくしまもなかった。
 車は、通りの両側に商店が立ち並ぶ地下鉄の駅の手前で停まった。
 休日に浮かれでた若者の姿がめだつ。家族らしい一群が声高に話しながら、通
りすぎる。
 千沙子はふと、白いリンネルのテーブルクロスを敷いて、銀の器に灯りがきら
めく豪華な食卓で、あれこれ采配をふるう一也のママの姿を思い浮かべ、自分が
格式ある有吉家のディナーに招かれるなど、思いもよらぬことだと実感した。
 この町角には、彼女と同じように自分の仕事を持ち、たしかな生活をしている
人々があふれている。
 それなのに、しきたりのきびしい家柄を誇る旧家の嫁になるなんて………。
 千沙子が望んでいるのは、一也とふたりきりの結婚生活だった。
 「ありがとう。ここで降りるわ」
 千沙子はできるだけ感情をおさえた声で言った。
 彼女が地下鉄の駅に向かって歩きはじめると、一也がかけよってきて、肩をド
ンと押した。
 「きみはいいかげんな女だな。真剣に結婚を考える気がないんだ。もう会わな
いからな………」
 一時の激情からか、本気なのか、一也の真意がよくつかめぬまま、千沙子はく
るりと向き直った。
 「なんですって。――いいかげんなのはあなたのほうだわ。わたしの気持ちな
んて、ちっともわかろうとしないで………。ああ、もう、マザコン男かんて、た
くさんだわ」
 千沙子は、たえがたい悲しみと、孤独感や怒りで、かすかに目じりに涙をにじ
ませ、彼のほうをみ向きもせずに、足早に地下鉄の階段を降りはじめた。



        2 おしゃぶりが好きだと言ってみろ



 森高千沙子が、明るい形成外科棟の廊下を歩いてくると、遠くからでも、白衣
の下の胸の盛りあがりと、ひきしまった腰高の曲線がめだつ。
 とうぜん、スポーツで怪我をして入院中の男性患者の注目の的だが、若い研修
医や病棟医のなかにも、彼女と一度デートしたいと願う者もすくなくない。
 しかし、このところ、千沙子はまったくついてなかった。小さな看護ミスでも、
つづけて起こると、どうもまずい。
 「森高さん、どういうことなの、採血中に注射針が折れるなんて………。しっ
かりしてちょうだい。あなた、このごろ注意力が散漫になってるわよ」
 みかねた看護主任の杉浦真子が、ついナースステーションで叱りつけるという
一幕があったのは、数日前のことである。
 千沙子は、自分でも、へまつづきなのにしょげかえっていた。
 日ごろは、勤めの疲れも気にならないほど健康なつもりだが、やはり、一也と
の仲たがいしたのがひびいいているのかもしれない。
 (こんどは本気なんだわ。電話もくれないなんて………)
 わずか一カ月しかたたないのに、千沙子の花芯は、一也を求めて疼きつづけて
いる。
 夜ごと夢みるのは、彼の野太くて流線型の肉筒にやすみなくえぐりたてられる
思い出ばかりだった。
 (もう一度、あの力づよく脈打つ太いアレを、うるみのとば口に咥えこみたい
わ)
 千沙子は、はっとして悩ましい肉のねたつきに身ぶるいし、目の前の点滴装置
に視線をうつした。
 ここは外科手術後の患者の病室なのである。
 准看護婦の相原由貴にたのまれて、すこしの間、患者の様態を見守ることにな
っている。
 千沙子は淫らな性の夢想を打ちはらうように、キャップを打ちふった。
 もう、ヘマは繰りかえしたくない。
 それにしても、数日まえの黒田部長の手術のときはひどかった。
 うっかり、まちがった機器をメイヨー台にのせたばかりに、尊大でいやみたっ
ぷりな黒田部長の陰湿な怒りを買ってしまったのである。
 四十代後半で、意志的な顎と、筋肉質な体躯(たいく)の黒田伸孝は、つねに
意識的なポーズをつくる冷徹な目の男だったが、いったん、順調にことがはこば
ないと、その場では無視し、あとで罵倒のかぎりをつくすのだった。
 手術室で看護婦をなぐるわけにはいかないから、無言でトレイを片づけさせ、
介添い看護婦の交代を命じた。
 「気にしないでいいのよ、いつものことだから。男のおヒスなの、黒田部長は」
 涙をこらえながら、手術室の外に出された千沙子は、同僚の清水文子になだめ
られたが、嗚咽がとまらなかった。
 あとで聞くと、黒田部長は、手術中ずっと機嫌がわるくて、麻酔医の児玉にも
侮辱するような態度をとったらしい。
 この種の完全主義者は、ささいなことでめくじらをたて、ののしりだすと毒蜘
蛛が糸をはきだすようにとまらなくなる。
 (相原さん、早く戻ってくればいいのに)
 千沙子は、点滴装置のカスをあつめる仕事をはじめようとして、ふと点滴管を
みあげた。
 (あれっ)
 なにかへんだ。ちゃんと調節したはずなのに、異常に点滴がのろくなっている。
 千沙子は、あわてて連結部分をみつめた。
 ほとんど流れがとどこおっている。
 患者の呼吸が心なしか苦しそうにみえる。
 思わずステーションに通じるベルを押そうとしたが、思いなおして、あわてて
ドアをあけ、担当の相原由貴をさがそうと、廊下をみまわした。
 たまたま通りかかったのは、黒田形成外科部長である。そろそろ回診の準備を
はじめるため、病棟医たちが集まる談話室に赴くところだったのだろう。
 「どうしたんだね」
 「あのう、ちょっと患者さんの様子がおかしいんです」
 うろたえている千沙子は、前後の見さかいもなく訴えた。
 「おかしいな………」
 黒田部長は、ベッドに近づき、患者の顔色をみながら気短な声をだした。
 それから、千沙子はじろりとみかえす。
 「きみが、ずっとついていたのかね」
 わかりきっていながら、いじのわるい口調でたしかめる。
 患者はすでに気息えんえんとしている。
 千沙子は、ことの重大さに気づいて、にわかに返事もできないありさまだった。
 「調節ミスだな。すぐに婦長を呼びたまえ。………いや、ちょっと待て」
 黒田の冷徹な視線が、肉感的な看護婦の張りつめた腰のあたりをねめまわし、
ふいにせばめられた。
 「そのまえに、調節を合わせるんだ。………わしの言う意味がわかるか」
 「はい」
 千沙子は、おびえながら点滴の早さを正常に戻そうとした。
 それが終わると、黒田は、きびしい表情で、ステーションに通じるベルを押し、
千沙子に言いわたした。
 「きみは大変なことをしでかしたんだぞ。あと数分おそかったら、患者の容態
は急変したかもしれん。担当看護婦は、きみじゃないんだろ。けしからん、どこ
へ行ったんだ。これが公になれば、懲戒免職ぐらいじゃすまん。業務上過失致死
となれば、莫大な賠償金をとられるぞ」
 「申しわけありません。わたしの不注意で………」
 「そうさ。きみのミスだよ。だが、あとはわしに任せておくんだな。なんとか
してみる。といって、これですべてが済んだわけじゃないぞ」
 まもなく病棟婦長や、相原由貴がかけつけ、病室があわただしくなった。
 黒田形成部長は、患者の容態の急変は一時的なもので、点滴ミスのせいだとは
言わなかった。
 千沙子は、黙々と立ち働いた。
 いちばん、おろおろしていたのは、准看護婦の由貴だった。
 「ごめんなさいね。千沙子さん、あなたに迷惑かけちゃって………」
 五年以上も、この病院で働いている由貴は、ほんとうの原因が調節ミスによる
とも知らず、恐縮しきって詫びた。
 「いいえ、わたしが………」
 千沙子は公平な気持ちで打ち明けようとしたが、形成外科部長の鋭い視線を感
じて、口をつぐんだ。
 準夜勤の交替時間になるまで、千沙子は緊張しきって働いた。
 午後四時半になると、病棟婦長が看護婦たちを集めて、準夜勤者への引き継ぎ
が行なわれ、千沙子もようやく解放された。
 「きょうは、ほんとうにすみませんでした」
 彼女があらためて、吉田総婦長の部屋にあやまりに行くと、
 「あなたの責任というわけじゃないわ。でも、これからは職務外のことは軽々
しく引きうけないことね」
 とたしなめられた。
 かわいそうに相原由貴は、始末書を提出させられ、譴責処分をうけた。
 千沙子は、よほど総婦長室に赴いて、患者の容態悪化の原因を打ち明けようと
思ったが、いざとなると、心の弱さがどうしてもためらわせてしまう。
 翌日は、彼女じしんが準夜勤なので、午前中は、ずっとベッドのなかで過ごし
た。
 明るい配色の寝室なのに、千沙子は一也のことを思うと、しみじみとさびしい
気分になった。
 彼は、もうこの部屋にやってこないのだろうか。
 ぷっつりと連絡がとだえ、一時の怒りにしては、あまりにも長すぎる。
 しかし、千沙子は出勤時間が近づくと、きっぱりと起きあがり、シャワーを浴
びてから部屋を出た。
 午後四時半。
 日勤看護婦からの引き継ぎが終わると、千沙子ははやくもチャートを抱えて、
患者の病室をみまわって歩かなければならない。
 主治医をはじめ、病棟医や研修医など、一団となって回診がはじまるのである。
 千沙子は、部屋番号とベッドと患者を、一々照会して、まちがいのないことを
たしかめた。
 ようやく回診が終わった。
 長方形の廊下をまわりきって、ほっとした千沙子は、ステーションのうしろに
ある控室に入ろうと、廊下を歩いてきた。
 そこは二、三脚の椅子と、両側に長椅子が置いてあるだけの窓もない狭い部屋
で、いわば看護婦の休憩室なのである。
 あと五メートルほどの廊下で、千沙子は、
 「おい、きみ」
 と、耳ざわりな低い声で呼びとめられた。
 ふりむくと、黒田形成外科部長が、太く濃い眉をそびやかして、じっと彼女を
見据えている。自分の欲しいものは何でも手に入れるぞ、という決意がうかがわ
れ、肩書きどおりのうぬぼれと、露骨な情欲がみなぎっている。
 千沙子は、本能的に相手がもとめているものを感じ、恐れた。
 「はい。この間はありがとうございました」
 彼女はうなだれ、それ以上、なんと言ってよいかわからない。
 黒田は、あたりに人がいないのをみすまして、すばやく耳打ちする。
 「点滴ミスを忘れちゃいないだろうな。牛乳を点滴されて死亡した患者の例も
ある。というだけで、わしが何を望んでいるか、賢明なきみにはわかるだろ。い
いかね、外科病棟のいちばん奥に、いつもは使わない特別手術室があるね」
 「はい。知っていますが、それが………」
 「しらばっくれるんじゃない。午後八時になったら、そこに入院患者用の備品
一式を持ってくるんだ。これが部屋の鍵だ。先に行って待ち、わしがノックした
ら内鍵をあけるんだ」
 形成外科部長は、ポケットから鍵束をとりだし、大きめな鍵をはずした。
 特別手術室の鍵を渡された千沙子は、ちょっとためらったが、黒田の表情に容
赦なさが感じられたので、つきかえすチャンスを失った。
 (でも、わたしさえ、しっかりしていれば、部長が何を望もうと、問題はない
わ。頼まれた備品一式をとどけさえすればいいのよ)
 まもなく千沙子は、洗面器、浣腸セット、ベッド・バン(おまる)、採尿バッ
グなどの必需品のほか、バスタオル、ハンドタオル、ウォッシュクロスなどを台
車にのせ、命じられた特別手術室に向かった。
 そこは貴賓用の手術室だが、支給係の看護助手が、まったく疑わずに交換シー
ツまで持たせてくれるので、彼女は困惑しきった。
 おそらく、黒田が手をまわしておいたのだろう。
 午後八時近くになって医局に戻った黒田部長は、その日のカルテや、患者の病
歴誌に目を通してから、しかめつらしい表情で立ちあがり、ふたたび人気のない
形成外科病棟の廊下を歩いていった。
 貴賓用の手術室には、ゴム製の手術台、ゴムベルト、それに肛内洗滌用ゴム・
チューブなどがそろっているはずだった。
 手術室の一隅には、四角いバスタブもある。VIPの術後の処置用に、特別に
つくらせたものらしい。
 黒田部長は、片手に黒いケースをさげていた。このなかには、ゴム製の手術衣
と、ボディスーツ、留置用カテーテル、剃毛用安全カミソリその他がぎっしりつ
まっている。
 彼は、これから起こるおぞましい快楽のかずかずを想像して、つい頬がほころ
んでくるのをとめようがなかった。


 すっかり観念しきった千沙子は、磨きぬかれたバスタブに、均整のとれたから
だを横たえていた。
 (とうとう、こんな羽目になってしまったわ。あのとき、好意だと思ったのが、
罠だったんだわ………)
 間近に、ゴムの手術衣に着がえた黒田が、情欲をむきだしに、舐めるような目
つきで待ちかまえているので、自分の部屋でのように、ゆっくり湯に浸っている
わけにはいかない。
 手術室のなかで、凝然と立ちすくむ千沙子をみるなり、黒田は言った。
 「きみは恋人と別れたそうだな。毎晩、スケベ虫にとりつかれて、よく眠れな
いんだろ」
 「そんなことありません」
 千沙子の顔に、動揺の色が浮かぶのをみて、黒田はぎらっと目を光らせた。
 思ったとおりである。
 点滴調節の単純ミスは、よほどぼんやりしないかぎり起こるはずがない。
 「かくしてもむだだ。勤務中も、スケベ虫が脳味噌にとりついて、あんなヘマ
をしでかしたんだろ。淫乱で、いやらしい看護婦め」
 黒田は、平然と非科学的なことを言いつのる。
 あっけにとられた千沙子は、言い返す言葉もない。
 「きみは、よほどアレが好きなんだな。いいじゃないか、わしのでかまらで試
してやる」
 千沙子は、さっと顔をあからめた。
 教養ゆたかな形成外科部長から、とつぜん、こんな卑猥な言葉が発せられるな
んて思いもよらなかった。
 「そんな………。あんまりですわ。あの日はたまたま気分がすぐれなくて……
…」
 「気分がすぐれなかったって? 生理のあとだったとでも言いたいんだろ。女
がいちばん、やりたくなる時期だな。きみの助平ったらしい放心のせいで、患者
がひとり死にかかったんだぞ。そのスケベ虫をひねりつぶしてやるから、さっさ
と裸になるんだ」
 「スケベ虫なんていません。あう、いや」
 千沙子は精一杯の抗議をしたが、白衣のうえから乳房をわしづかみにされると、
思わず喘ぎ声を洩らした。
 「さあ、なにもかもぬいで、すっかりみせてもらおうか。わしのもみせてやる
が、そのまえにからだをあたため、スケベ虫をふらふらにしてからボディ・スー
ツに着がえるんだ」
 (スケベ虫なんて、いるわけないわ)
 男性経験は一也ひとりだけの千沙子でも、黒田部長の狙いはわかっている。
 しかし、ボディ・スーツに着がえるとはどういうわけなのか。
 千沙子がためらっていると、黒田は白衣のボタンをひきちぎるようにはずして
ゆく。
 「だめです。そんなこと………」
 「さっさとしろ。ほんとは好きなくせに………。ぶちこまれたくて、うずうず
してるんだろ」
 欲情にかすれるささやきとともに、黒田の手は、早くもオフホワイトのブラジ
ャーのストラップにかかっている。
 「待って。自分でとります」
 白衣がぱらりと足もとにおち、恥じ入りながらブラジャーをはずす千沙子を、
じろりとみやる形成外科部長は、みるみる股間を昂ぶらせている。
 「なかなか、格好のいいバストだな。乳首の色つやもいい、ずいぶん男に吸わ
れたんだろ。つぎは下穿きをぜんぶとるんだ」
 手術室の内鍵はとりあげられ、もはや逃げだすすべはない。
 それに黒田は、年齢に似げなく筋肉を鍛えているので、どっちみち、力づくで
ぬがされてしまうだろう。
 「そんなにせかさなくとも、覚悟してますわ。先生って、卑劣で恥しらずな人
ね」
 「あの患者は、日ましに容態が悪くなってくる。執刀医は、手術は百パーセン
ト成功なのに、術後の経過がおかしいと疑ってる………」
 言いつのる黒田の口を封じるには、さっさとぬぐしかなかったのである。
 ………暖かいシャワーが湯気とともに勢いよくほとばしり、刻々とバスタブに
みちてくる。
 ここを出てからゴム製の手術台の上で、黒田に辱められるのは堪えがたいが、
点滴ミスをみのがしてもらうには、これしか方法がない、と自分に言い聞かせな
がら、すこしでも長く湯につかっていたいと思う。
 それでいながら、シャワーのしぶきで、やや縦長の恥毛のむらがりがゆらめき、
みぞからはみでる貝の剥き身のようなびらつきが、未知の肉筒にふさがれたがっ
てひくついている。
 バスタブから出ると、千沙子は、艶やかな裸身に、ラテックスのボディスーツ
をつけさせられた。
 なぜかお臍のあたりまで大きく、股間の部分がくりぬかれている。
 「ちょっとブランデーを飲まんかね」
 黒田部長は、淫らな責め具の入った黒革のケースからブランデーのミニチュア
を二瓶とりだすと、小さなグラスに注いだ。
 手術室で乾杯は妙なものだが、とくべつな嗜好をみたすため、黒田はブランデ
ーの小瓶をつねにケースに詰めているのである。
 「少なめにしてください。わたし、あまり飲めませんから………」
 千沙子は、どぎまぎしている。
 ここに連れこまれたときから、ある程度の覚悟はできていたが、相手の真意が
さっぱりわからない。
 (犯(や)るんなら、さっさとやればいいんだわ)
 千沙子は、チラと黒田をみあげた。
 (ヘンにカッコつけちゃったりして………)
 しかし、黒田は、ブランデーを嗅ぎながら、妖しくも淫靡なボディスーツにつ
つまれた看護婦をためつすがめつしている。
 千沙子の腰から足にかけての曲線はすばらしく、官能的なラテックス越しに、
むっちりした乳房のふくらみが盛りあがってみえる。
 「ゴムといっても、ぴったり吸いつくようで、着ごこちがいいだろ」
 この下に、花のつぼみのようにいろづく乳首、腰厚の双臀、栗色の腋毛(わき
げ)、くりぬいた穴の奥には、悩ましくよじれる肉びら、ヒクッヒクッと収縮性
に富む構造がかくれているかと思うと、黒田は一瞬、縦一直線のファスナーをひ
きおろしたい欲求に駆られた。
 「どうするんですか。もう、飲めませんわ」
 「待て、待て。ぐっと飲みほしてからだよ」
 千沙子が、いやいや飲み干すと、黒田は、ボディスーツをつけたまま、手術台
に腹這うように命じた。
 千沙子は、あおむけになるより、危険がすくないと思ったのか、むしろ安堵し
たようにしたがった。
 しかし、黒田は、背中の純潔にこそ、女性の魅力が宿っていると考える倒錯な
折檻マニアでもあったのだ。
 黒田が、きっちり固定するため、ゴムベルトに触れると、ハッと気づいた千沙
子は、
 「いやっ。そんなもので縛ったりしないで」
 と悲鳴をあげた。
 「じっとしてろ。いまにからだじゅうがむずがゆくなり、なにかをもとめずに
はいられなくなる………」
 むりやり、がっちりした両手で手術台に腹這いにおさえつけられる。
 「あうっ。先生、いやっ。乱暴はしないで………。ひどいわ。拘束帯を使うな
んて………」
 「すこしは反省するんだ。きみのせいで、あの患者は、明日をも知れん容態な
んだぞ。それとも、執刀医の手術がわるかったと言いたいのかね」
 黒田は、口をゆがめて、つめたく言い放った。しきりに喘ぎつづけていた千沙
子は、その一言で、ぐったりと無抵抗になる。
 形成外科部長は、順々にゴムベルトを固定しはじめる。はじめは両足のうら。
つぎにウエストのあたり、最後に背中の上部。終わると、右手で固定度をたしか
める。
 もういっぽうの手は、千沙子のキュートなシニョンヘアを、いとしげにまさぐ
りつづけている。制帽をかぶるため、たいていの看護婦は髪を短くしているが、
黒田は彼女のように長い髪を編んだほうが好きである。
 「だいぶ、素直になったな。ボディスーツをつけると、すごくいろっぽいよ」
 黒田がグイグイ、ベルトをしめあげると、ぷりっと盛りあがる双臀がふるいつ
きたい感じでおののき、すらりとした背中の線が、なんともいえず美しい。
 固くてこりこりしそうな乳首がラテックス越しに、ピクピクするのをみて、黒
田は股間がますます勃えたってくる。
 まるで生きたゴム人形を手術台に縛りつけたような感じである。
 黒田は、壁掛けの時計をみあげた。
 ひと晩じゅう楽しみたいが、午後十時過ぎには行かなければならないところが
あるので、そうもいかない。
 「どうなさるつもりなの。このまま、一時間我慢したら、ゆるしてくださるん
ですか」
 「さあ。それはどうかな」
 黒田には、この気をそそる看護婦が、ひどく怯えているのがわかった。
 「きみは、これを何に使うか知ってるだろ。ちょっと、いいことをしてやろう」
 黒田は、壁にかけられた洗滌用のゴム嚢から白色のチューブをとりだした。
 ゴム嚢は、氷枕に似た赤色のもので、チューブの先に肛門用嘴管がとりつけら
れている。
 (これを突っこんだら、かなりのショックをうけるぞ。反応がおもしろいな)
 「なにをお持ちになったの。へんなことはしないでください」
 腹這いの千沙子は、うしろを見ることができず、不安げな口調になった。
 「いいから、できるだけ力をぬいて、言われたとおりにするんだ」
 黒田は、ボディスーツの大きなくりぬき部分に手を突っこみ、秘密っぽい双臀
のはざまを、ぬちゃっとこじあけた。
 小暗い割線のすぼまりをひろげられると、千沙子は会陰部がかるく引きつり、
番(つが)いの肉びらがねたつくのを感じ、思わず、あらわな双臀をぐっと突き
だす。
 黒田は、一瞬の虚をついて、スルリと嘴管をさしこんだ。
 「ひっ。なにをなさるの。いやっ。ひどいことしないで」
 千沙子は泣き声をたてた。
 「なにを入れたの。先生、いやらしいことしないで………あうっ。おしりがへ
んになるう」
 触覚だけで、はっきりみえないだけに、千沙子は怯えきって、あられもない声
を張りあげる。
 「いくらわめいても、外までは聞こえない。心配はいらん、ただ洗ってやるだ
けだ。汚れているのをみられたら、恥ずかしいだろ、ン?」
 このあと、小型浣腸器を使っておなかをゆるくし、ゴム球浣腸器(エネマシリ
ンジ)で徹底的にひりださせてやろう。
 「もうけっこうよ。洗いすぎて、ひりひりするわ」
 「もうすこしのしんぼうだ。きれいに洗ったらベルトをといてやる。おや、だ
いぶ便秘してるようだな。どれどれ、括約筋をマッサージしてあげよう」
 「は、恥ずかしい。あうっ。そんなにいじりまわさないで」
 温水とともに、たくみに揉みほぐす指先の動きに、千沙子はいつしかわななき
ながら感じはじめている。
 (あうっ。もうだめ。いやらしいことをされているのに、こんなに気持ちがい
いなんて)
 からだの芯が徐々にとろけそうになり、彼女は思わず知らず、黒田の指先をし
めつけてしまう。
 (感じてるんだな。気分をだしてるじゃないか)
 黒田は、いそぎんちゃくのように吸いつく感触に、この看護婦が崩壊しはじめ
るのは、もはや時間の問題だと、高をくくりはじめている。
 「こんどはあおむけになってもらおう」
 ふと思いたって、黒田は、もっともらしい表情でベルトをほどきはじめた。浣
腸をはじめる前に、隆々たるかたまりになるほど、舐めずり含ませたかったので
ある。
 黒田は、楽々と千沙子をあおむけにしてから、ふたたび固定ベルトで自由を奪
った。
 それから手術台に這いのぼり、ズボンのファスナーを引きおろした。トランク
スをつけていないので、じゃりじゃりする剛毛のむらがりのなかから、野太くふ
くれあがった亀頭冠がおどりでる。
 (ひどいわ。露骨にみせつけるなんて………)
 黒田はそのまま、あきらかに看護婦に加えている辱めの一瞬一瞬を楽しみなが
ら、千沙子の顔におおいかぶさってゆく。
 「ほら、しゃぶるんだ。恋人にもしてやったことがあるんだろ」
 鼻孔のあたりに、威嚇するような亀頭冠が突きだされると、千沙子は、あまり
のなまぐささに、思わず息をつめた。
 「あうっ、だめ。わたしにはできません」
 「舌をだして、ぐるりと舐めまわせ。口もとをしめて、スポスポ吸いたててみ
ろ。ほーら。いまにも突っこんでもらいたくて、うずうずしてくるぞ」
 ずぶとい鰓(えら)くびから淫らな熱気が伝わるのを頬に感じて、千沙子のう
るみの涌が濃くなり、上べりの突起がピクリと引きつる。
 (黒田部長のものをしゃぶらされるなんて、夢にも思わなかった………)
 千沙子は、フーッと息をはきだし、仕方なしに唇をひらき、舌の先で、包皮小
帯を舐めまわした。
 「どこでおぼえたんだ。なかなか、うまいじゃないか」
 黒田は、まんざらでもなさそうにかるく呻いた。
 千沙子は、ぬらぬらした王冠部を頬ばらされ、すくなからず動揺していたが、
いじわるく引きぬかれそうになると、あわてて口もとをつぼめ、咥えこもうとす
る。
 相手を歓ばせたくない気持ちと、喉の奥まで引きこみたい欲望がせめぎあい、
彼女は口いっぱいに頬ばったまま、低くうめいた。
 千沙子は、自分が娼婦になりきってしまったように感じた。
 舌先の動きにつれて、なめらかな王冠部の鈴口から分泌液がねとねとにじみだ
している。
 「とろけるような舌さばきだな。そこ、もっと裏のあたり舐めずってくれ」
 とても素人とは思えぬ協力ぶりに、黒田は満足感が徐々に増してくる。
 医師と看護婦という職場だけの関係では、とうてい望めぬ淫らな行為が、いと
たやすげに行なわれているのだ。
 こんなに大胆にふるまうのは、かなり男ひでりにちがいない、と黒田はほくそ
えむ。
 「ちょっと待て。わしもおかえししてやらなくちゃあな」
 黒田は、持続させるため、左手でからだをささえ、右手の指先で、大きくくり
ぬかれたボディスーツのはざまをつまびいた。
 もじゃっとする陰毛のむらがりをかきわけると、ムッと熱い熱気が指先に感じ
られる。
 黒田の指が、ねたつきの光を放つよじれた肉びらをなぶりながら、とけくずれ
た割れ口の奥へ奥へとすすむと、千沙子は悩ましい呻きをあげ、喉を喘がせる。
 「すっかり熱くなってるな。今夜はたっぷり使ってやるぞ」
 黒田は、医師に似げなく卑猥な言葉をささやき、ついで鈎のかたちで、凹凸の
ある天井部分をまさぐると、千沙子のからだが切なげに突っぱる。
 (そこはだめ。感じちゃう。もう、我慢できないわ)
 ゴムベルトで拘束された千沙子ははげしくのたうち、満遍なく肉筒を舐めまわ
しながら、狭隘(きょうあい)な蜜の構造で、黒田の指先をしめつけようとする。
 「数の子天井をいじられるのが好きなんだな、このあばずれ看護婦が………。
さあ、返事をしないと、ぬいてしまうぞ」
 黒田は嵩にかかってすっとひきぬく。
 「あ、だめっ。ちょうだい。やめないで」
 千沙子は、感度をみぬかれたみじめさと、矛盾する歓びで、相手が卑劣な色魔
であることを忘れはじめている。
 「それなら、おしゃぶりが好きだと言ってみろ」
 「あうっ。好きよ。しゃぶるのが好き」
 ひと息ついて、千沙子はうめく。
 「こんな具合にか」
 言いざま、黒田は、無造作に喉ちんこをつらぬいた。
 あっというまに、肉筒が喉もとをすべりおちると、千沙子はぬらぬらした口腔
をすぼめ、とろけくずれる喉の奥にひきずりこむ。
 「こんなにぬらついてるなんて、きみも、かなり助平ったらしい女だな」
 千沙子の喉の筋肉がゆるんだり、収縮したりすると、黒田は、全身が蕩けるよ
うな感覚におそわれる。
 「おおっ、スケベで、いやらしい看護婦め。まるで動物の舌で舐めまわされて
るみたいだ。くそっ。いい、いい」
 黒田は大きく呻いた。
 もう両肢をささえていることもできない。
 こわばりの熱線にそって、何度も突きたてずにはいられない。
 その都度、彼の指先は、スポスポと、うるみをためた彼女の肉ひだのつらなり
を抽送する。
 千沙子の喉は、かぎりなくなめらかで、悩ましく、ヒタヒタとからみつく。
 (あうっ。先生、指だけで、いっちゃいそう………いいわ、もう、だめっ)
 千沙子は、黒田の指先から発する快感の波長で、いまにも気が遠くなりかかっ
ている。
 破廉恥で、底いじのわるい男のどこに、こんなにすばらしいテクニックがかく
されていたのか。
 はじめは一本。ついで二本、三本。ついに五本が束になって、気がそぞろにな
るくらい、うずうずと攻めこんでくる。
 黒田のたぐいまれな奔虐に、くたくたにされながら、千沙子は、なぜ一也がこ
んなふうにしてくれなかったのかしら、という思いをよぎらせた。
 「むっ。うぐっ」
 千沙子の喉の奥で、ふいにはりつめる感覚が起こった。
 おぞましい戦慄が、彼女のからだを突きあげる。
 黒田は、とめどなくふくれあがりながら、根もとが、真珠のようなつややかな
歯でくいしめられるのをおぼえた。
 形成外科部長は、いまにも気がいきそうになっている。
 そんな真似はしたくない。
 はやばやと満足しきった証拠を、せっかく手に入れたなまめかしい生贄にさら
したくない。
 口のなかで果てることを考えれば考えるほど、黒田はひきぬくことができなく
なった。
 ほんとうは、熱くしめつけ、うるみをしたたらせる肉洞の粘りのある畝(うね)
のなかでほとばしらせたかったのである。
 しかし、黒田は、ひとつの逃げ道を考えついた。
 一か八かの賭けだったが、彼は射精を役立たせる方法を選んだのである。
 (よし。それもおもしろかろう)
 黒田は、決心がつくと、思いきりズボズボとぬき差ししながら、同時に、五指
を茶筅(ちゃせん)状にして、たくみにぬるぬるした貝の身のようなやわひだを
もてあそんだ。
 (だめよ。だめだってばあ。あっ、いやよう、ひっ、いい)
 千沙子は、思いきり吸いたてる。放射状にひろがる快感の波が、彼女をひたす
ら駆りたてる。
 (このあばずれ看護婦め。むう。もう、だめだ、出ちまう)
 いきりたつ黒田の呻きとともに、ダクダクッと、噴出がはじまる。
 千沙子もまた、五指を埋めつくされ、痺れるような甘美な疼きに身をゆだねて
いる。
 「のみこむんじゃない。ぜんぶ、はきだすんだ。くそっ」
 黒田は、ひきぬこうとあせった。
 辛うじて、筒先をふりほどいたが、かなりの量が、熱いとろみとなって、彼女
の喉をかけくだった。
 黒田は、年齢に似げなくおびただしい量をボディスーツのうえにはじきだした。
 うすいラテックスの感触をとおして、白濁の温味(ぬくみ)が、千沙子の乳房
につたわる。
 永遠につづくかと思われる一瞬がすぎて、ついに噴出がやんだ。
 黒田は、ぐったりして、けだるげな千沙子をみおろした。
 彼女は、精液のなごりを唇にとどめ、かすかな不快と嫌悪をしめすかのように、
眉根を寄せて、目を閉じている。
 心ならずも気をいかされそうになったことを、彼女は意識し、感じているにち
がいない。
 「だらしない女だな。口のまわりに淫水をべとつかせて………おまけに大股び
らきときてる。すこしは恥ずかしくないのか」
 手足を拘束され、大の字にされている千沙子に、なにができるというのだろう
か。
 黒田は、尊大な態度で、ズボンのファスナーをひきあげると、手術台から降り
たった。
 「これでご満足でしょ。ベルトをほどいてください」
 千沙子は、うらめしげに皮肉ったが、彼は拘束を解こうとしなかった。
 手術台を斜めに作動させ、ラテックスの胸の谷間にたまった白濁をてのひらで
すくうと、大きくくりぬかれた部分に、もじゃっと生える陰毛のむらがりにべっ
とりとなすりつけた。
 「変わったシェービングクリームだろ。これで、すっかり剃りあげてやる」
 黒田は、気むずかしげな顔をしながら、ケースのなかから安全剃刀をとりだし、
ジョリ、ジョリ、と菱形の外側から剃りはじめる。
 「先生、やめてください。だいじな部分を剃りおとすなんて………。ひどいこ
としないで」
 異常事態に気づいた千沙子は、女のいのちの周辺を、むりにひきのばされ、昂
ぶった声をはりあげる。
 外科手術に慣れきった黒田には、耳たぶでもつまみあげるぐらいの軽い作業だ
ったが、千沙子にとっては、死ぬよりつらい辱めである。
 「先生はヘンタイだわ。いやだったら、もうやめて」
 「途中でやめたら、かえっておかしなかたちになるぞ。それもおもしろいが」
 「こんないたずらをするなんて、先生、ヒドイわ」
 千沙子はかすかに身じろぎ、はりつめた肉粒をなぶられるたびに、かなしげに
喘ぐ。
 「じっとしてろ。かわいいべろが傷つくぞ。ちょっと裏側をみせろ。ほう、ず
いぶんきれいな色をしてるな。なんて女っぽいつやをしてるんだろ」
 ジョリッ、と安全剃刀の刃があたるたびに、突きさすような汚辱をともなう快
美感が、千沙子の頭の芯までつたわってくる。
 「いいわ。どうせ、おもちゃにされたからだですもの。どうぞ見飽きるぐらい、
ごらんになったら………」
 千沙子は、半ば捨て鉢な口調で、黒田をなじり、かえってそそのかした。
 「まあ、まあ。やけになるんじゃない。これがわし流の懲戒なんだからな。き
みをやめさせるのは簡単だが、それじゃ天職の本分を認識させることにならんか
らな。医療にたずさわる者の重大な過失は、警官の殺人と同じく、罪が重いんだ
ぞ」
 剃りあげられてなめらかになった白桃のような部分は、男の精液の乾きととも
に、こわばった感触になっている。
 むりに押しひろげられたため、飴色に濡れ光る肉びらと肉びらのあわいが、ニ
ッと笑ったようにみえるのがおかしいのか、黒田は気むずかしい表情を、わずか
にほころばせる。
 「すこし、やすませてやろう。ところで、きみが持ってきたのはどんなものだ
ね」
 黒田は、ひと抱えの備品一式を手術室の予備台のうえにぶちまけた。
 「使えそうなのはおまる(ベッド・バン)と浣腸器ぐらいじゃないか。どれ、
ひとつ試してみよう」
 彼の右手に、小型浣腸器がにぎられているのを見た千沙子は、狼狽しきって、
 「あ、いやっ。それだけはゆるして。わたし、いやです」
 「ますます、おもしろいじゃないか」
 黒田の口調は、平然としている。
 彼は、ポリエチレン製の浣腸器の先端に穴をあけ、ピュッと出るのをためして
から、やおら、左手で千沙子のほのじろい太腿をこじあけにかかる。
 あおむけなので、臀裂はさぐりにくい。
 「待て、待て。腰の下に折り畳んだバスタオルを敷けば、注入しやすいだろ」
 ピーチカラーの先端が、小暗い割線のはざまをなぞって、ねっとり湿ったすぼ
まりに押しあてられると、
 「先生、やめてちょうだい。恥ずかしい」
 千沙子は、肛門をさぐる猛禽類のような黒田の目のかがやき、眉間から燃えた
つ欲情のほのお。分厚い上唇にかすかに筋をひく汗のしずくに抗しがたい被虐の
念を覚えた。
 「ほら。おなかの力をぬいてごらん。尻の穴がゆるむから………」
 黒田は、わざと野卑な言葉を発した。
 「ひっ。きついわ。いたっ。そっと入れてください。だめっ、いっぺんにしち
ゃあ」
 無慈悲な嘴管がさしこまれ、つめたい五〇パーセントグリセリン溶液が、一挙
に押しこまれると、千沙子は、鋭いメスで切り裂かれるような悲痛な声をあげた。
 深くさしこまれまいと、双臀をすぼめたのが、かえって食いしめることになっ
たのである。
 千沙子の哀願にもかかわらず、黒田は眉毛ひとつ動かさずに、指先に力をこめ、
ポリエチレンの浣腸器をにぎりつぶした。
 つめたい感触が、彼女の直腸内にひろがってゆく。
 しかも一本だけではない。
 二本目、三本目を注入され、千沙子はぶるぶるふるえた。
 看護婦として、患者に浣腸をすることはあっても、自分が使うことはほとんど
ない。
 「あうっ。おなかが張ってくるようだわ。こんな目にあわせるなんて、先生は
陰険な恥しらずよ………」
 「なんとでも言うがいい。これで終わったわけじゃないからな」
 黒田は、彼女の非難を無視して、ケースのなかから異様な形態のエネマシリン
ジをとりだした。つづいて一〇〇CC浣腸器をとりあげると、ノズルをひきだし、
本体を持って、バスタブに近づいた。
 すぐ側のスポンジマットには、洗面器がわりの溲瓶(しびん)が置いてある。
 黒田は、ズボンのファスナーを、また、ひきずりおろし、片手でぬったりとつ
かみだすと、溲瓶のなかに、しゃぽり、しゃぽり、と尿を排出した。
 それから、溲瓶の貯留液をエネマシリンジで吸いあげる。
 たっぷり液を納めた本体に、ふたたびノズルをさしこむと、嘴管からビーフ・
ティーのようなにおいと、色の飛沫がはじけとぶ。
 「これで、きみのおなかをいっぱいにしてやる。そこで、お互い、仲睦まじく
合流するってわけだ」
 黒田の動きを、むりな姿勢のまま、目で追っていた千沙子は、
 「きたない。おねがい、そんなことしないでください」
 と、涙声で哀願する。
 もはや、彼女の全面的屈服は、時間の問題だった。
 怯えと、吐き気で、千沙子は、あぶら汗がにじんでいる。
 黒田が、肛門粘膜を押しひろげて、ズブズブと注入しはじめると、
 「あうっ。たすけて。きたならしい真似はやめてください。むうっ。いやだっ
たら………」
 と、むせび泣く。
 「排出したばかりのおしっこは、きれいなものさ。わしは成人病とは無縁だか
らな」
 涙と鼻水で、くしゃくしゃの看護婦の表情を、黒田は小気味よさそうに眺めや
り、ぜんぶ注入し終わるまで、ノズルから手を離そうとはしなかった。
 「ひっ。洩れそう。いや、いやっ。だめよ、みないでください」
 あぶら汗をにじませながら千沙子が身悶えはじめたのは、それから数分もたた
なかった。
 その声は、悲痛さと淫靡な気配にくぐもり、ゆるやかにはじまる蠕動(せんど
う)は、彼女が声をあげるたびに、排泄の発作をはやめてゆく。
 「それじゃあ、おまる(ベッド・バン)か、おむつをあてなきゃならんな」
 「先生、はやく、ここからおろしてください。わたし、恥ずかしくて………。
ねえ、先生、ちゃんと抱いてください。こんなのいや」
 千沙子は支離滅裂に口ばしり、身をよじった。
 黒田は、彼女の狼狽に耳もかさず、さらにボディスーツのくりぬき部分を押し
ひろげ、「妊娠六カ月ぐらいの蛙腹になってる。どうだね、すこし、さすってや
ろうか」
 ぷっくらふくらんだ千沙子の下腹は、それだけでなまめかしく、とけきった肉
びらのあわいは、じっとりとうるんでいる。
 たえきれなくなった黒田は、生唾をのみこみながら、指先でまさぐってみる。
 「あうっ。だめ、おかしくなるう」
 もじもじする千沙子は、それに気をとられて、もはや両足を閉じようとしない。
 黒田は、いよいよエネマシリンジの威力をためすべきときがきたと思った。
 ごむ球のポンプ部分をたしかめてから、そろそろと沢のやわらかな肉ひだに近
づけてゆく。先端にはカテーテルがつけられている。
 そのまま、ずぶっとさしこみ、ポンプを押してゆくと、みえない空気の圧力で、
じわじわふくらんでゆく気配がする。
 「ひっ。なにをしてるの。へんだわ。先生、いやらしいことしないで………」
 千沙子が拗ねるように腰をゆさぶりたてるので、一瞬、エネマシリンジがはず
れかかる。
 ぷしゅっ、ぷしゅっ。
 「あうっ。やめて。わたしじゃありません。だめっ。こないで」
 「いや。いまのは、きみが洩らしたんだ。くさい、くさい、なんという恥しら
ず、しまりのない女だな」
 黒田は軽蔑したような口ぶりで、予備台のうえからおまるをとりあげ、
 「いや。これだけじゃあ、間にあわんかもしれんな」
 と、ケースのなかからゴム製おむつを引っぱりだした。ひろげると乳児用では
なく、老人向きの大型である。
 「おねがい。なんとかしてっ。もう、我慢できないわ。先生、おまるをあてて
ください」
 黒田は、聞こえぬふりをして近づいてゆく。
 (もっと苦しめ。わしは、きれいな女が髪をふりみだして、悩ましく悶えるの
をみるのが好きだ。身持ちのいい女が誇りを失って、ただの牝にもどるときこそ、
本来のすがたがあるんだからな。森高千沙子、きみこそ、わしがさがしもとめて
いた最高のコレクションだ。さあ、これから一つ一つ、徹底的にあらゆる愉楽を
教えこんでやるぞ)
 下腹部を黒田につよく押されて、千沙子は直腸の貯留物が、いちどきに奔馬の
ように跳ねまわるのが感じられた。
 「やだったら………。ひどいことしないで。先生、後生だから、おむつをあて
てください。でないと、あうっ、だめ、出るう」
 ここまでが千沙子の限界だった。
 ぶりぶりっという奇妙な音とともに、肛門のすぼまりがひらき、小暗い割線の
はざまから、堰を切ったように排泄がはじまった。
 「けつの締まりのわるい女だな。夕食はなにを食べたんだね。このあとかたづ
けはだれがするんだ。きたならしいいたずら女め」
 「ごめんなさい。でも、我慢しきれなくて………恥ずかしいわ」
 「きたない生き恥をさらしたら、もう、わしから逃げられんだろう。どんな淫
売だって、こんなにだらしなく、なにもかもいっしょくたにひりだしたりしない
からな」
 「ひどい。先生が、こんなふうにし向けたのよ。口惜しいわ」
 「お高くとまってるつもりの正看護婦でも、一皮むけばこんなものさ。これで
ウーマンリブだの、天職だのって図に乗るから、どんな男にだって、愛想をつか
されるんだぞ」
 すでに一時間近くも責めさいなまれ、千沙子は、完全に自制を失っている。
 「ええ、そうよ。わたしは、この病院でいちばんきたならしい女ですわ。さあ、
先生、どうにでもして………」
 黒田は冷たく含み笑った。
 鋭い光を放つ目が、倒錯的な情欲でギラギラしている。
 「いいだろ。はじめから、きみはそのつもりだったんだろうからな」
 千沙子は、うつろな目で弱々しくうなずいた。
 黒田は、部屋の隅に行ってズボンをぬぎすて、下半身丸はだかで、ゴムの手術
衣だけになった。
 手術台は、やや傾斜しているので、ぬき差しするには、まことに都合がいい。
 大がかりな形成外科手術のときは、もっと血だらけになるので、手術台や、床
のよごれはあまり気にならない。
 あとで、ホースで洗い流せばいい。
 「どうだね。すっかり、ひりだしたかい」
 (部長は、このまま挑(いど)みかかるつもりなんだわ)
 そう思うと、千沙子は、嫌悪感とうらはらな奇妙な期待がとつぜん湧き起こっ
てくる。
 (わたしの排泄物にまみれながら、いつも自信たっぷりで、傲慢そのものの男
が、ヒーヒーのたうちまわるんだわ)
 汚物まみれのみじめさのなかで、千沙子は異常に昂ぶり、腿のうらまでぬるぬ
るしたものが噴きこぼれてくる。
 「ほう。よく練れたらしいな。いいか、しっかり気を入れるんだぞ」
 欲情に濁った声が間近でする。
 黒田は、彼女の両膝を自由にひらかせるために、両足のゴムベルトをはずした。
 「先生、よごれきったわたしを抱いても、気持ちわるくないんですか」
 「これ以上、きみのみにくい姿をみることはないだろうからな」
 千沙子は、臀部の深い切れこみからはみだした汚物の残りが、タオルで拭きと
られ、うるみをしたたらせる秘裂のみなもとが、あられもなくむきだしにされる
のを知った。
 (あ、みられてる。いいわ、生き恥をかいたんだから………)
 ひらき直った気持ちになると、いっそう、うるみの湧出が濃くなるように思え
る。
 黒田は、よごれた沼のなかから、みずみずしい蓮のつぼみをつみとるように、
小指の先ほどの琥珀色の固いふくらみに触れて、指先でなぞりはじめている。
 (あうっ。そこはだめっ。いじらないで)
 ぴくっとし、子宮頸部のあたりに、熱いこぶのかたまりのようなものが盛りあ
がってくる。
 つぎの瞬間、黒田は弾みをつけて、亀頭冠をめりこませ、千沙子は完全につら
ぬかれた。
 「シクシクとくいしめる。けっこう、気分がでてるじゃないか」
 黒田は、あれほどもてあそばれながら、千沙子の通路が思いのほか、きついの
に満足したらしかった。
 千沙子は、くいしばった歯のあいだから、とどめようのない呻きを洩らしてい
る。
 これまでのふるまいにくらべて、黒田のぬき差しは、異様なほどやさしく、粘
っこい。
 「先生、憎らしいほど、じょうずなのね」
 時おり、昂ぶった声をあげる千沙子は、ここが医療の場で、人の生命を左右す
る厳粛な手術室であることも忘れはてている。
 しかし、黒田形成外科部長にとって、これはほんの序盤の玩弄にすぎない。
 彼の狙いは、もっとべつのところにあったのである。



          3 よっぽど飢えていたんだろ



 「ふふふ、きみは濡れやすいたちなんだな。もう、こんなに蕩けだしてるじゃ
ないか。欲しくてたまらんってさ」
 黒田は自分の言葉に興奮して、左手のなかにかくし持つスカーフをぎゅっとに
ぎりしめた。手の汗ですこし湿りはじめたが、ほそくながくて薄地のスカーフに
は小さな結び目が五つ、六つ、つくられている。
 熱く猛々しい感覚がおおぶりにうねるような反復をつづけ、じりじりと押し入
ると、
 「ああ………き、きついわ………」
 と、千沙子はかなしい声をはりあげた。
 黒田の右手がなまめかしいボディスーツのくりぬき部分から太腿のほうに這い
おりる。
 微妙な、蟻が伝いおちるような感触に、千沙子の腰のあたりがぴくりとふるえ
る。
 すばやく双臀のみぞに沿って指先をおろすと、あらわな素肌が粘液にまみれて
ネトネト感じられる。
 黒田は臀丘を右掌でつつみこむようにして、湿ったぬくみを淫らがましく揉ん
だりつねったりしながら、まともに抽送しつづけている。
 「ふんふん、におうぞ。くさいな。こんなにひりだして、けつの奥までさらけ
だすなんて、場末の淫売より、たちがわるいぞ」
 「ああ、やめて、あたしのせいじゃないわ、卑怯もの、みんな先生のせいよ」
 罠にかかった看護婦は追いつめられて身もだえし、汚辱に怯える目で黒田に唾
をはきかけた。
 「ふふふ、生娘みたいな真似をするんじゃない。こんなに練れて好きなくせに
………」
 ぐいぐい嵩にかかってかぶさってこられると、一瞬、千沙子は、あうっ、と呻
く。
 黒田は、むりにはだけられた千沙子の両腿のあいだでびくびくしており、もう
これ以上むだ口を利きたくはなかった。
 若い看護婦は、悪夢をみるような気持ちで特別手術室の天井をみつめている。
 こんなことが神聖な医療の場で起こるはずはない。黒田先生は狂っている。わ
たしがいったい何をしたというの?
 点滴調節のミスはたしかにみとめるわ。でも、それがどうしてこんなことにま
で………。
 しかし、もしあの重症患者が死にでもしたら………。
 そう思うと、千沙子は目の前がまっくらになるような気がして、ハッと目をひ
らいた。
 やはり一場の悪夢ではなかった。
 黒田はなおも淫猥な暴力で彼女をもてあそびつづけている。
 彼はほくそえみながら体勢をすこしずらし、左手からくりだしたスカーフの結
び目を、一つずつ千沙子の臀裂に押しこみはじめている。
 「いやいや、何をするの、やめてちょうだい。とても気分がわるいの」
 「そう暴れるんじゃない。あまりにおうんで、栓をかってやるんだ。それにし
ても、よく入るなんて、おかしいと思わんか。すこしは経験があるんだろ」
 「あうっ。やめて。そんなところ、いじられたことはないわ。先生は変態よ」
 まるで真珠の玉を押しこまれるようなむずがゆい痛覚に千沙子ははげしい狼狽
をしめし、引きつけを起こしたように首を左右にうちふった。
 すでに醜悪で大きなものをねじこまれ、ゆすりたてられるだけでもおぞましい
のに、これ以上の弄虐には耐えられそうもない。
 「おねがい、先生。たすけて、ねえ。はやく終わらせて………」
 彼女の切なげな啜り泣きに、黒田は聞く耳を持たなかった。
 彼はボディスーツのカップ部分に手をすべらせ、かすかにおののくふくらみを
わしづかみにし、果実の重みをはかるようにてのひらでゆさぶった。
 千沙子の唇に、いきなり男の舌が触れてくる。
 「うぐぐぐ、キスしないで」
 黒田の舌が痺れるほどつよく吸いあげるので、その都度、敏感な千沙子はある
種のうしろめたさと羞恥が増してくる。
 黒田は、時おり千沙子のえりあしに鼻を押しつけ、新鮮で、すこし濃い目の花
の香りをじっくりと楽しんだ。
 「こんなふうにこねまわされているのは、どんな気持ちだ」
 「あああ、とても、みじめだわ」
 やつぎばやの手管で千沙子は水を含んだ花弁のようにふくらみ、両脚をわなな
かせている。
 黒田はなおも舌と胸の愛撫をつづけ、千沙子はとどめようもない疼きと被虐的
な期待のうちに総身がしびれそうになる。
 その間隙をぬって彼は繰りだす。
 突きたてられ、ひきぬかれる感覚に千沙子はゆるみ、つぎに収縮する。と同時
に、ちょろちょろと失禁しはじめる。
 いまにもほとばしりそうになるのを彼女は懸命にこらえた。
 「おしっこを洩らしはじめたな。こんなになるなんて、よっぽど飢えていたん
だろ」
 口を離しながら黒田があざ笑うと、
 「う、うそよ。わたし、洩らしたりしません」
 若い看護婦は声をふりしぼって否定する。
 にもかかわらず、女っぽい呻き声をあげだす千沙子は、とどめようもない排泄
感と官能的な痒みに、眉をひそめ、鼻孔をふくらませて喘ぎ、まぎれもない困惑
の歓びをもつれさせている。
 「このすけべ女、そろそろ本気で楽しもう」
 黒田は荒っぽい口調でささやくと、体勢をととのえて彼女の腰を右手でかかえ
あげた。
 ふいに異様な感触が走った。
 黒田がさっとこぶつきのスカーフを引きぬいたからだ。
 彼女は括約筋をしめようとしたがむだだった。
 「あうっ、ひっ」
 閂(かんぬき)をはずされる感覚と激しく埋めこまれるのが同時だった。
 千沙子は一挙につらぬかれて、わけのわからぬ嬌声を張りあげた。
 「おねがい、やめてえ。だめっ、めちゃめちゃにしてえっ」
 「森高千沙子、これですっかり、わしのものになったな」
 とうとう、仕留めてやったぞ、という残忍な喜びが黒田形成外科部長の胸にこ
みあげてくる。
 彼は二度目の白濁思いきりぶちまける。
 千沙子は熱流がはじけとぶのを感じて、くり返し呻き声を洩らした。
 凹凸に富む肉ひだをうちたたく感覚がいつまでもやまぬように思われ、それが
さざ波のようにあふれかえっている。
 「あうっ、ひどいわ」
 千沙子は不本意に刺激される感覚を憎んだが、とうてい抗しがたい。
 彼女は拘束された両足を突っぱらせて、喘ぎに喘ぎ、堰が切れたようにがくり
と絶え入った。
 いたぶりは、これで終わったわけではない。
 手術台からおろされた千沙子はふたたびバスタブにはこびこまれ、ボディスー
ツごと洗い清められ、それからファスナーをはずされ、まる裸にされた。
 温かなシャワーが勢いよく降りかかる。
 黒田はハンドシャワーのノズルを自由にあやつって、羞恥の肉びらをいびるよ
うにほとばしらせる。
 まるで温水が男の怒張のように感じられ、我しらず欲情のめざめを強いられる。
 「もう、くたくたよ。先生、ゆるして」
 それが終わると、むりにキャップをかぶせられて、またしてもべつの手術台に
全裸で腹這いに固定された。
 黒田は責め具の入ったケースからくるくる巻きの黒革の鞭をとりだした。
 「きみの背中はまだバージンだろ。わしが最初に犯してやる」
 ヒューッ!
 と鞭ははげしい唸りを生じ、ひと鞭あてるたびにきゅっとひきしまった双臀に
赤い条痕が刻される。
 革鞭はほとんど臀裂近くに捲きこまれ、ゆるく手もとにひかれてつよく摩擦さ
れる。
 灼けつく感覚がしだいにむずがゆさに感じ、ひと鞭ごとに臀部ぜんたいがいけ
にえとなる観を呈し、極度の興奮で千沙子は、またもやじんわりとにじみだす。
 「ひっ。ゆるして。いやっ、もうやめて。先生の言うことは何でも聞くわ。だ
から、もう打つのはやめて。ああ、裂けてしまうわ」
 黒田の技巧的な鞭さばきで、すでに燃えるように熱くなっていた臀丘はさらに
凄艶な苦痛を煽りたてる。
 ようやく鞭の音が止んだと思うと、こんどは高々とかかげられた太腿のつけ根
に、革製のアタッチメントバイブレーターが装着される。
 「ああ、いや。やめて。そんなの、いやよ。ああっ、うううっ」
 背後から先端部分の小突起頭に割り裂かれ、黒田の操作で火のように抽送され
ると、千沙子は双臀をわななかせる。
 上べりの突起が微妙なバイブの震動で脈打ちはじめると、彼女は気が遠くなり
そうになった。
 千沙子は鋭い快感に声をはりあげたくなったが、黒田が図にのって繰りだすの
で息がつけない。
 「すごいがんばりようだな」
 彼があざ笑うのを夢うつつに感じ、千沙子は不覚にも伸縮自在のバイブに翻弄
され、なまめかしい女の径(みち)に、あいつぐ収縮が起こるのをとどめようが
なかった。
 「さあ、もっとくわえこめ」
 「もう、かんにんして………。たすけてちょうだい。どうにかなってしまいそ
う」
 千沙子はとどめなくあふれるうるみで、てらてらと光るバイブが存分に羞恥の
深みをえぐりあげるのをはっきりと感じた。
 無感動に筒先が繰りこまれ、彼女はまた呻いた。
 千沙子は、うるみひくつく環状の肉ひだを揉みぬく革のバイブに向かって、思
いきり腰を突きあげた。かつてない激しさで、放射状の快感が腹部に駆けあがっ
てくる。
 「あうっ、いきそう」
 千沙子は顔を紅潮させて、激しく身もだえる。
 濃厚な鞣(なめ)し革のにおいと、羞恥のはざまから湧きだす脂酸の汗のにお
いが、黒田の鼻孔にたちのぼってくる。
 名状しがたい絶頂感が千沙子の下腹部に渦巻き、そそりでた貝の剥き身のよう
なびらつきが小刻みにふるえはじめる。
 白い肌が汗できらめき、執拗な黒田の操作で、千沙子のからだは淫らな踊りを
おどる。
 ふいに、彼女は木の葉のようにふるえたかと思うと、ぐったり前のめりになっ
て甘美な屈服をしめし、きらめく目に涙をあふれさせた。
 ぐったり疲れきって、千沙子が手術室から解放されたのは午後十時すぎだった。
 ひっそりと人気のない形成外科病棟の廊下を、彼女は黒田とともに歩いていく。
 はためには医師と看護婦が談笑しながら医局に向かっているようにみえるが、
千沙子の白衣の裾のあたりからアタッチバイブのコードがはみでて、スイッチ部
分を黒田がにぎりしめている。
 黒田の操作ひとつで淫靡なバイブの動きは、千沙子の羞恥の襞をえぐりたてる
のである。
 ふたりは廊下をとおって、エレベーター近くの電話ボックスのそばにきた。
 なかに中年の看護婦がいて話に夢中になっている。
 エレベーターに乗りこむ。
 すぐ下の階で停まり、肥った看護婦が乗りこんできた。心臓外科の病棟の係で
二階のステーションに向かうところらしい。
 黒田部長に軽く目礼する。
 千沙子はぴったりエレベーターの壁に身をよせていたので、白いコードをみら
れずにすんだ。
 ただ、箱が動きだしたとき、瞬間的に黒田がバイブのスイッチを入れたので、
かすかな震動とともにえぐりたてられる感覚が起こり、千沙子は思わず悲鳴をあ
げそうになった。
 彼女は黒田から離れようとしたが、彼はゆるさない。
 「じっとしていろ。困るのはきみのほうだぞ」
 黒田が低い声でささやく。
 千沙子はふいに羞恥の極点が引きつれ、ぎゅっとしまり、きつく疼いているの
を感じた。
 彼女はもはや抵抗を装うことができなかった。
 エレベーターが停まり、肥った看護婦が先に出てゆくのを見て、彼女はほっと
した。
 黒田に二階の廊下を追いたてられてゆくと、ここには幾人かの看護婦たちがい
そがしげに、それでも足音を忍ばせてわき目もふらずに歩いている。
 黒田は彼女にささやいた。
 「いいか、今夜ですべてが終わったわけじゃないぞ。来週中に、きみの配置転
換を行うからな。こんどは特別個室の勤務になるはずだ。そのほうが、ちょっち
ゅう会えるようになるからな。それまでバイブははずすんじゃない」
 別れぎわに黒田は思いきりバイブを操作したので、彼女は甚だしい苦痛を感じ
た。
 「先生、やめてください、おねがい」
 千沙子は言葉でさからいながらも、苦痛がしだいに被虐的な歓びにかわってい
くのに自分でもふしぎな気がした。
 嵐にわななく白樺の葉むらのように茫然と立ちつくしていると、黒田がバイブ
のスイッチを、コードごと彼女の白衣のポケットに押しこんだ。


 仁愛総合病院の理事長の娘で、小児科の沢柳冴子は、その夜、高級アパートの
自室でいらいらしながら黒田の訪れを待っていた。
 彼がなぜ今夜こんなにおそくまで病院に残っているのかふしぎでならなかった。
 午後八時に勤務はあけるはずだから、むしろ自分より先に部屋の鍵をあけて待
っているべきなのである。
 ふたりの関係はすでに一年になんなんとしていた。このごろになって黒田が疲
れぎみなのを彼女は知っていた。
 かなりおそくなってから忍び足で入ってきた黒田は、
 「あ。やあ、冴子さん」
 と言って、彼女が寝椅子に掛けているのをみて驚いたように目をまるくした。
 「院長室でながいこと足どめくってね。おそくなってごめん。院長の話っての
は、まったく疲れるものさ」
 「そりゃそうでしょうね。だいたい、あなたはおそくまで働きすぎよ。ところ
で、どんなお話なの」
 「いや、それがね。宍戸周造氏の包茎(フィモシス)手術のことさ。前立腺肥
大の疑いはなくなったというのに、こんどは若い者には負けんぞというわけで、
この際、邪魔な包皮をきりとっちまおうってわけさ。施術は今週末で、その日の
うちに退院できるっていうのに、一週間は個室をとりたいっていうんだ」
 「パパの共同出資者だから仕方ないでしょ。それより、近く休暇をとって旅行
にでかけましょうよ」
 黒田は大きな生あくびをした。
 「ああ、それもいいだろう。でも、今夜はシャワーを浴びて眠るとしよう」
 冴子は、彼の背中に向かってペロリと舌をだした。
 思いのほか早く同意が得られたことにすっかり気をよくしている。
 彼女は、つねに女の魅力を最大限に発揮するタイプである。
 シャワーから彼がでてきたら、さっそく誘惑的にふるまってみよう。
 冴子はレースつきの黒いナイトガウンをそっととりだした。
 黒田が浴室からでてきたとき、ベッドに横たわっているつもりだった。
 新しいガウンにつつまれたわたしを見たら、元気になってくれるわ。
 彼女は、鏡に映るすらりとした自分の姿にほほえみかけた。
 とても魅惑的にみえる。スリムなタイプが好きな黒田は、たとえ疲れていても、
この誘惑に抗することはできないだろう。冴子の目はかがやいた。
 浴室でシャワーの栓が閉まる音が聞えたので、冴子はベッドにとびのり、枕を
背にあてて露骨に媚びるように足をすこしひろげてあおむけになった。
 「おや。もう、眠ったのかと思ったよ」
 髪をタオルで拭いながら寝室に入ってきた黒田が言う。
 冴子は相手が新しいガウンに気づいてくれないので、怒りがこみあげるのをお
ぼえた。
 (わたしたちの関係は、それほどだめになっているのかしら)
 黒田は背を向け、軽いためいきを洩らした。
 彼は冴子の刺激的なポーズに気づいている。だから、ためいきを洩らしたのだ。
 今夜は千沙子という餌にありついて、すっかり飽食しきっている。
 冴子はとても激しそうだ。なんとか彼女を傷つけずに無視する方法を考えねば
ならない。
 黒田はさっさとベッドの向こう側から入り、灯りを消した。
 ほんとうに疲れきっているようにふるまったら、彼女もあきらめるだろう。
 「ああ、くたくただよ」
 「ほんとうに疲れてるの、あなた」
 冴子はくるりとうつぶせになり、頬づえをついて聞いた。
 「新しいガウンにも気づいてくれなかったのね」
 冴子は拗ねるように聞く。
 「いや。とてもセクシーだよ。くたくたなんで、気づくのがこわいんだ」
 黒田は仕方なく手をのばして、むっちり盛りあがった冴子の乳房を撫でまわし
た。
 冴子は体を美しく保つためにレッスンを積んでおいてよかったと思う。
 すくなくとも同年輩の女性のようには肥満していない。はじめて黒田に抱かれ
たときと劣らず、いまも美しく官能的と信じている。冴子はセックスに関してあ
まり大胆ではなかったが、今夜は刺激的な行為に出ようと決めていた。
 彼女は、黒田の毛ぶかい股間に手をのばし、しなやかな指先で、ぐんにゃりと
したものを撫でまわした。
 「じょうずにやってあげるわ」
 冴子は、マッサージの要領でたくみにつつみこみ、すばやくしごきあげた。
 「ね、わかるでしょ。あなたは自分で思ってるほど疲れちゃいないのよ」
 冴子は成功に気をよくして、くすくす笑った。
 黒田は無言でうなずいた。
 彼は数時間前の千沙子の狂態を思いだしている。自然に冴子の掌のなかに昂ぶ
るものを突きたてた。
 「こんなに元気になったじゃないの」
 冴子はぽっと顔をあからめた。
 みぞからはみでた番(つが)いの肉びらが疼き、自らひくつくのを感じて、冴
子はためいきを洩らした。
 こんなあやしい気分になったのは久しぶりのことだった。
 (そうだわ、相手が疲れているときは、自分のほうが這いあがればいいんだわ)
 冴子が物もいわずにまたがってきて、ゆっくりと腰をおろすまで、そんな事態
を予測していなかった黒田は、驚きのあまり身じろぎひとつしなかった。
 「どうしたんだ。ぐちょぐちょじゃないか」
 冴子がこんなにうるおっているのは久しぶりだった。
 黒田は息がとまりそうな気持ちになった。
 いつもの数倍も熱く濡れていて、千沙子の軋むような感覚とは違った意味で甘
美である。
 「ああ、いい気持ちよ」
 冴子は腰をうねらせる。
 黒田はしめつけられ、まるで彼女のなかに幾層もの粒立ちがあり、やわやわと
吸いつき、奥ふかく咥えこむような感じだった。
 「こんなに燃えてるきみをみたことはない。さあ早く」
 彼女はなまめかしい笑いを洩らした。
 黒田が興奮しはじめた様子が手にとるようにわかる。
 だが、冴子はまだ完全に根もとまで収めさせたくはない。もっと、もっと、じ
らして楽しみたい。
 黒田はようやくエンジンがかかったらしく、下から激しく乳房を揉みあげてく
る。
 「いやあ、だめよ」
 冴子は呻き、すこし腰をおとしかける。すると、さらにすばらしい気分になっ
た。
 黒田はあせって突きあげようとするが、そうはさせじと腰を浮かせる。
 さざ波のようなひくつきがめくるめくおののきとなり、しまいには純粋な快感
の渦巻く波動にかわる。
 双臀をたかく持ちあげ持ちあげする冴子に翻弄されると、どこまでふかい快感
がつづくのか、黒田にはわからぬほどだった。
 冴子はさかりのついた娼婦のように痴語を口ばしり、黒田の力は、情熱の極み
に近づくにつれていっそう激しく脈打った。
 「ああっ、もうすこし待って。そのままにしてよ」
 冴子は抑えきれずにかなきり声をあげた。
 羞恥の極点が燃えつきてしまいそうな感じで、ひくひくする濁ったねばりがに
じみだしている。
 冴子は息をつめて、思いきりふかく沈みこんだ。
 信じがたいほどの快感が突きあげる。
 「おお、いまだ。いっちまう」
 黒田は叫び、なまめかしくねたつくうるみのルツボをふかぶかと突きあげた。
 「ああ、こんな感じ、はじめてだわ。なんてすばらしいの」
 「今夜のきみはすごいね」
 黒田も息をきらせていた。
 黒田が手をのばして、繊細な腕を撫でると、冴子はうれしそうににっこり笑っ
た。
 彼女は幸福のあまり目を閉じ、そのまま深くやすらかな眠りにおちいった。
 黒田もまたじっと目を閉じていたが、彼の脳裏に、ふっと宍戸の手術のことが
浮かんだ。
 秘密の遊び仲間の宍戸が、久しく包茎で悩んでいたとは知らなかった。
 理事長の親友というだけで豪華な特別個室に入れるのは、とかく非難があるか
もしれない。しかし、医療法人・仁愛総合病院の有力出資者たる彼はそれを望み、
黒田もそれを許可する立場になった。
 それにあの千沙子がいる。あの繊細で、セクシーな看護婦をみて、好色な宍戸
がどんな反応をみせるかと思うと、楽しくてならない。
 黒田はかたわらですやすやと眠る冴子の顔をそっとのぞきこんだ。
 美しい女だが目じりにひと筋ふた筋の皺がめだつ。
 だが、なんといっても理事長の娘だった。彼女のきげんを損じるのがどれほど
危険なことか、彼は以前、公立病院に勤めていた当時の経験からしてじゅうぶん
に知りすぎている。


 看護婦の日勤は、ふつうのOLに比べると、ずっと早くからはじまる。
 千沙子は軽い朝食をすませると、なじみぶかい病院への道のりを歩きだした。
 わずか二駅だから、かけだすこともない。ひところは、近くに住む看護主任の
車に乗せてもらったこともあるが、彼女が結婚して鎌倉に去ってからはまた地下
鉄通勤になっている。
 明るい病棟に着いて、夜勤からの引き継ぎをうけたのち、スタッフたちのうけ
持ち患者の割当てを行うことになっている。
 たまたまその日、千沙子はステーションで、カルテに記載された医師たちの指
示を病歴ファイルに転写したり、指示票の整理などで午前中を過ごすことになっ
た。
 このステーションはカウンターの前に机と椅子が置かれ、机の引きだしにはさ
まざまな伝票類が入っている。
 午前十時半になると、お茶の時間になった。
 日勤の看護婦たちが交代で三十分ぐらい休憩をとる時間で、殺風景な控え室の
つづき部屋でコーヒーや、紅茶、ミルク、ジュースなどを飲むことができる。
 「あら、千沙子。総婦長さんから電話するようにって、おことづけよ」
 と同僚が知らせにきた。
 千沙子はステーションに戻ると、すぐに電話をかけ返した。
 「森高千沙子さんね。きょうは病棟担当じゃないでしょ」
 「はい、書類の整理でずっとステーションにおります」
 「よかったわ。ところで、あさってから二、三日、特別個室担当に代ってほし
いの。患者さんはオーナーのひとり、宍戸周造さんよ」
 とつぜんのことで、千沙子はなんと答えていいかわからない。
 「どうしたの、これは院長じきじきの指名ですよ」
 「わかりました」
 「それでは二時半にわたしの部屋に来てください。詳しく話しますから」
 千沙子は、ふたたび病歴カードの整理に戻った。正午になって、食堂で昼食を
とってからエレベーターに乗ろうとすると、
 「ちょっと待ちたまえ」
 うしろから声がかかった。
 はっとしてふりむくと、案の定、黒田だった。
 彼は、廊下の隅に千沙子を呼び寄せると、小声で話しかけた。
 「午後二時までは病棟患者の午睡時間だな。これからすぐにリネン室に行きた
まえ。あそこは中央材料部の連中のほか、だれも入れんところだから。わしが責
任者から鍵をかりてきている。臨時に、ベッドの上下シーツと患者用リネン類を
とりだすという理由でね」
 彼はにやりと笑って、軽くウィンクした。
 あの部屋が、既婚の病棟医と看護婦の秘密のデイトに使われているという噂は
前にも聞いたことがある。
 中央材料部の責任者が鍵をかしたとすれば、やはりグルになっているのだろう
か。それとも、黒田におもねって情事の場所を提供しているのだろうか。
 そんな思惑と関係なく、結局、千沙子は数分後に、リネン室のうすぐらい棚の
かげで黒田と向きあっていた。
 この部屋にはシーツ、タオル類、毛布、ベッドカバー、枕カバー、顔拭きタオ
ル、患者用ガウン、看護婦予備着などが、それぞれに棚に所せましとびっしり積
み重ねられている。
 ふたりが向きあっている場所は、出入り口から死角になっていて、よほど奥ま
で入っていかなければみえない位置だった。
 黒田は待ちかねたように、けわしい渋面をつくってせきたてる。
 「早く、ここでぬぎたまえ」
 「えっ、なんですって」
 一瞬、千沙子は気が遠くなる思いだった。
 しかし、いったん言いだしたら後にひくような男ではない。
 黒田は手をのばして、彼女の白衣をぬがせようとする。
 「やめて、ここではいや。いつ、だれにみられるかわからないんですもの」
 黒田は、一瞬怒りをあらわにしたが、待てよ、と思う。
 彼女の言葉にも一理がある。
 「よし、それならじかにつけてるものをぬいでもらおうか」
 黒田は内心舌なめずりをしている。
 (どうせ、この女は自分から逃げられるはずはない)
 冴子になしえなかったひそかな願望を試みるには絶好の機会だった。
 「早くするんだ」
 (どんなに貞淑な女だって、最後には屈服してしまう)
 黒田の脳裏に、亡くなった妻の美奈子のおもかげがよぎった。
 「いいわ、わかったわ」
 千沙子は、みじめで、口惜しい気持ちになりながら、オフホワイトのパンスト
とショーツのふちに手をかける。
 「わしが手伝ってやろう」
 白衣の裾をたくしあげて、黒田の手が太腿のうえに這いあがったとき、千沙子
は狼狽しきって、喘ぎ声を洩らした。
 「けっこうです、自分でとるわ」
 千沙子は本能的にもがいたが、彼のほうが力がつよくどうしようもなかった。
 おそろしい虚脱感とともに、彼女は容赦なく下穿きが引きおろされるのを感じ
た。
 「よし、その床のうえに座れ」
 黒田は棚から一揃えの綿毛布をとりだすと、適当な大きさにひろげて床を敷い
た。
 くるりとむきだしになった千沙子の双臀をみつめ、むりに座らせる。
 「ああ、後生だから、やめて」
 羞じらいの涙を浮かべて千沙子はあえぐように言う。
 黒田は無造作に押し倒し、官能的な光沢を帯びた双臀をねちねちといびりはじ
める。
 「ああっ、恥ずかしいからやめてちょうだい」
 「これは序の口だ。きみがじっとしれいればもっといい思いができるぞ」
 黒田は、時おり指先を蟻の戸わたりあたりまで伸ばし、鈎のように曲げて、う
るみだした粘膜のあたりを軽くこすりあげる。
 「こいつはちょうどいい場所を知ってるぞ」
 黒田は、ヒューッと口笛を吹いて淫らがましく嗤った。
 「あうっ、だれかに聞かれるわ、おねがい、そこだけはやめて。ひどいわ」
 千沙子は目を閉じ、相手がなそうとしていることを考えまいと努めながら、弱
々しく抗(あらが)った。
 「今度は、あおむけになって股をひろげろよ」
 黒田はそそのかした。
 彼女はいやでたまらなかったが、抵抗してさらにいびられるのを恐れて、恥ず
かしさに呻きながらいいなりになる。
 「剃ってから幾日もたたないのに、もう生えはじめてる」
 黒田はかすかな陰毛の芽ばえを撫でまわし、貝の肉をゆるく合わせたようなび
らつきを指でなぞった。
 それから、白衣のポケットから愛用の太軸の万年筆をとりだすと、薄笑いを浮
べて、太いキャップの部分を、羞恥に濡れそぼつ肉びらのはざまにぐいと埋めこ
んだ。
 居丈高な万年筆は千沙子に微妙な反応を起こさせ、千沙子は、いつしか両脚を
もじもじとくねらせてしまう。
 「あう、あっ、なにを入れたの。固すぎて、けがをしそうだわ」
 千沙子はかぼそげな声をあげる。
 「そんなことはない。ぴったり合ってるぞ」
 眉をきゅっと寄せ、ひたすら喘ぎつづける千沙子に向かって、黒田はほくそえ
み、思いきって深く突きたてた。
 「かんにんして。きついわ。はやくぬいてちょうだい」
 「そのままでいるんだ。暴れたらまた押しこんでやるからな」
 黒田は威嚇した。
 「よし、ゆっくり食いしめてみろ、深呼吸する要領でな」
 耳もとの淫らなささやきに、千沙子は痺れたようにすくんだが、相手の命令口
調が少しずつ気にならなくなっている。
 千沙子がゆっくりしめつけると、うるみの湧出が活発になり、肉びらのねたつ
きが増してくるのが感じられる。
 「いいぞ。その調子だ」
 黒田が満足げにつぶやく。
 いまや、彼女は熱狂的に味わいはじめている。
 「あうっ、太くて固いわ。だめよう、いやらしいことする人ね」
 せわしなく、彼女の口からけもののような呻きが、洩れる。
 「きみはよほど、すけべなんだな。いつでも男が欲しいんだろ。女ってのは、
それだけで頭がいっぱいな生きものなんだ」
 淫らな言葉で侮辱されると、千沙子は急速に濡れそぼった。
 被虐的な肉体の欲望に火をつけられ、千沙子は淫らな喜びにあふれた呻き声を
何度も放ち、ついにむせび泣きながら、半ば本気で逃れようとしながら、不可避
な結末をめざしてかけのぼっていった。


 「さあ、いいですね。シャワーの時間は二十分ですよ。それから………」
 千沙子が患者の日課を説明しだすと、宍戸周造はうなずいてから首を左右にふ
った。
 きれいな看護婦だが、いささか理性的すぎて、黒田が話しかけていた獲物がほ
んとうに彼女なのか疑わしい思いである。
 宍戸は、入院中だけは時計に縛られるような生活はしたくもなかった。
 まだ四十代半ばの精力的な実業家の彼は、週末ごとに悪友たちと繰りだして、
あくどいあそびにうつつをぬかすことが多かった。
 久しぶりに規則正しい生活とやらをしているわけだが、電話、バスルーム、テ
レビつきの特別個室も退屈きわまりない。
 宍戸は、ふと彼女を困惑させることを思いついて、ひとりでくっくっと笑った。
 「さっぱりおしっこがでないんだけど、あんたのようなきれいな看護婦さんに
手伝ってもらったらでがよくなりそうだな」
 千沙子は自分がからかわれているのだと思って、冷淡な口調で言う。
 「宍戸さんは、もっと品のいい方だと伺っていましたけど………」
 「フフフフ、それじゃ、シャワーにしとこうかな」
 「さあ早く、脱衣して………」
 千沙子は、義務的に彼をベッドから引き起こして、浴室のほうに誘導した。
 宍戸はいかにも病人らしくぎこちない足どりで、ぴかぴかに磨かれてしみひと
つない浴室に入った。
 小物類はきちんと整理されている。
 「すべて規則にしたがって………」
 と繰りかえす千沙子の口調を思いだして、彼はシャワーのしぶきを浴びながら、
くっくっと含み笑う。
 (そう、すべて我々の規則にしたがって、腰がぬけるほどおまえをかわいがっ
てやるさ)
 宍戸はこれまで土曜の夜をセックスに割りあてていた。しかし、入院してから
は、まったくままにならない。
 理事長の側近といわれる形成外科部長の黒田伸孝から、
 「病院のなかにも、ぴちぴちした特別の子がいます。よりどりみどりですよ」
 といわれて、ずっと放っておいた包茎手術をうける気になったのである。
 じっさいには入院するほどおおげさな手術ではないのだが、完全看護の特別個
室を選んだものそうした意味合いがあった。
 宍戸はシャワーを早々にきりあげ、忍び足でベッドに戻ってきた。
 ちょうど千沙子がシーツをとりかえているところで、悩ましい腰の曲線をみつ
めて、彼の目はかがやいた。
 宍戸は素足の親指をうしろから白衣の裾にさしこみ、ぐりぐりっとまわしてみ
た。
 「あッ」
 ふいをつかれた千沙子は、あわててベッドに突っ伏した。
 「きみの名は、森高千沙子。黒田君から聞いたよ。詳しくは知らないが、数日
前に病棟で、重症患者が亡くなったんだってね。………これだけ言えばじゅうぶ
んだろ。さあ、ここにこないか」
 あまりのことに千沙子は絶句した。
 この患者が理事長の親友で有力出資者だということは総婦長からも聞いていた。
 人を冷笑するようなゆがんだ唇。
 「どうした、おどろいているようだね」
 宍戸は、すばやく、彼女を品さだめした。
 千沙子が自分好みの女かどうか、ぶしつけな目で全身を舐めまわすように見つ
めている。
 「そう固くなることはないだろ。さあ、ゆっくり話しあおうじゃないか。あっ、
ちょっと、そのテーブルから本をとってくれないか。うちの営業部長が持ってき
てくれたんだがね」
 それは『エロチック・アート』というクロンハウゼン博士編の美術書で、なん
となくへんな予感がしたので、千沙子は横を変いて手渡した。
 「なかをあけてごらん。ジョン・レノンがヨーコ・オノをおしゃぶりしてるス
ケッチも載ってるよ」
 千沙子はとりあわないようにつんと澄ましている。
 「そう拗ねなくたっていいだろ。きみがこの病院に勤めたければ、おれの言う
とおりにしたほうが身のためさ。こっちにくるんだ」
 宍戸は、腰のまわりをバスタオルでくるんだままベッドに腰をおろし、千沙子
の手を引っぱった。
 彼女は弱々しく抗ったが、すぐに気をとりなおして並んで座った。
 「ああ、いい匂いがする。おれはじつにチャーミングな看護婦さんに出会った
と思うよ」
 宍戸は、彼女の首すじを撫であげながらささやきかけた。
 彼の手は、白衣の胸をボタンをはずしはじめている。
 彼女はきたない虫をおっぱらうかのように、両手ではらいのける。
 「そんなにきどることはない。この個室に入る患者は、みんなきみと寝たがる
だろ」
 「まあ。ばかなことおっしゃらないで」
 誇りを傷つけられた看護婦は、怒りのあまり立ちあがろうとする。
 「アメリカの判例では、点滴ミスは殺人行為と同じだそうだ」
 宍戸はとどめをさすように言う。
 むろん口からでまかせだったが、千沙子はこの一言でしゅんとなった。
 「そうしたら、クビぐらいじゃすまん問題だって、黒田君が言ってたな」
 千沙子は、ふたたびベッドに腰をおろした。
 「すこし素直ないい子になったじゃないか」
 彼は自信たっぷりに千沙子の白衣をはだけて胸のふくらみをつかみだそうとす
る。
 しかし、オフホワイトのブラジャーが邪魔になるとみえ、いらだたしげにうし
ろを向かせる。
 ブラジャーのストラップを引きちぎるようにはずすとみごとな乳房がとびだし
た。
 「いい気持ちだろ。こうされるのが好きなんだろ」
 千沙子は、恋人だった一也が乳房を好んで愛撫するのをおぼえていた。
 だから、きらいではない。
 しかし、宍戸のように唐突なあつかましさで迫られるのは好きではない。
 宍戸は、乳首を愛撫するだけで、肉筒が脈打ちはじめると同時に、軽い痛みを
感じた。
 包帯がとれるのはあと一日だった。むりをして試してみたかったが、きりとっ
たあとが完全に癒着したかどうかが心配だった。
 「だれも来ないから、ぜんぶぬいでみせてくれないか。なにもしないさ。みる
だけなら、どうってことないだろ」
 千沙子はうらめしげに白衣をぬぎだした。
 パンティストッキングもとって、オフホワイトのショーツだけになった。
 「帽子はとらなくてもいい。カーテンを閉め、そばにこい」
 宍戸は駄々っ子のように命じ、彼女がしおしお近づくと、にやりとする。
 「さあ、ぐずぐずしないで、ここにあおむけになるんだ」
 千沙子は、すっかり観念しきっている。
 (すませるなら、さっさとすましたらいいわ)
 彼女はまだ高をくくっていた。手術したばかりの包帯にくるまれたものが使え
るはずはない。ファッションヘルスのまねごとをするつもりらしいが、黒田より
は御しやすい相手に思えた。
 宍戸が看護婦のショーツに手をかけると、千沙子は形ばかりの抵抗をしめした。
 「やめてちょうだい。おねがい」
 千沙子は、喘ぐように言って目を閉じる。
 宍戸はにわかに昂ぶってきて、加速度的に包帯がしめつけるのを感じた。
 硬くなったために痛覚がつよくなったのである。
 「さあ、さわってみたまえ」
 宍戸は、包帯ごと千沙子ににぎらせた。
 (これごと押しこむつもりなんだわ)
 彼女はぞっとした。
 「だめよ。いまは。せっかく治りかけているのに」
 彼女はおぞけをふるった。
 しかし、宍戸が手にしているのは、二個の小さなクリップだった。
 彼は、むりに色素の濃い大陰唇をこじあけると、飴色にねたねたと濡れ光る番
いの肉びらを指先で押しひらき、一個ずつクリップをとりつけた。
 「あっ、なにしてるの」
 千沙子は苦痛と怒りの悲鳴を放って、起きあがろうとする。
 宍戸は、いささかも手加減をしなかった。
 荒々しく鉤状の人さし指が突きすすみ、うるみのルツボに異様な感覚が押し入
ってくると、千沙子は唇をぎゅっとくいしばって耐えた。
 ゆさぶりたてられ、なめらかにされる疼きを訴える気力もなく、彼女は呻いて
いる。
 ぬるぬるする貝の身のような肉びらが二本の指に突きくずされて、とろけるよ
うな心地よさが走る。
 千沙子は背すじをそらせながら嗚咽をこらえた。
 「そうそう、その調子。もうちょっと腰を動かすんだ。気持ちよくなるからな」
 千沙子は思わぬ嬌声をあげた。
 防音設備のととのった特別個室では、だれも聞きつけるものはいない。
 「ひっ、いい気持ち。そんなにいじりまわされると、おかしくなるぅ」
 卑劣な手段でおとしいれるいやな男と思いながらも、緩急自在に刺激を加えら
れると、たくみな指づかいに、いつしかじっとりと濡れそぼってくる。
 「あうっ」
 千沙子は、ちょっと息をひき、腰をくねくねとうごかしはじめた。
 奥歯を噛んで耐えようとしても自然に応じてしまう。
 指先のドリルは、時おり上べりの突起をくすぐり、官能の芯をめらめらと燃え
さからせる。
 「ああああ。じれったいわ、もっと」
 彼女は、自分の大胆さに、頬をあからめた。
 だが、とめどもなく羞恥のみぞがうるみ、とば口に沿ってねっとり蜜がにじみ
だしている。
 千沙子の熱気を感じると、宍戸は勢いづいてますます粘っこく揉みたてる。
 宍戸は若い看護婦の口から小動物が鳴くような歓び洩れるのを知って、つぎの
行動に移った。
 宍戸は看護婦の両足を自分の両肩にかけた。
 こうすれば快感がふかまり、奥までつらぬけるというものである。
 千沙子は驚きの悲鳴をあげた。
 「どうするの。これ以上はむりよ、宍戸さん、やめて」
 「きみは、このままでいればいいんだ」
 宍戸の声にはうむを言わさぬひびきがあった。
 彼女は強いられて、まだわずかな不安はあったが、それでも、すすんで彼の両
肩にからませた。
 「こんな恰好するなんて、恥ずかしいわ」
 自分の足が宙でふるえているのを感じながら、千沙子は、ちょっぴり媚をにじ
ませてつぶやく。
 彼は、おそらく包帯をはずして、手術後の効果をたしかめるにちがいないと思
う。
 術後の回復は若さに応じてかなり差があると聞いている。だから、宍戸がその
気になれば試みることもできるのかもしれない。
 千沙子は、じゅうぶんにじらされつづけていた。
 いまはただ、太くて固くふくれあがったこわばりで、思いきりつらぬかれたい。
 彼の指戯はまだつづいている。
 高級ソープ仕込みの指さばきは、経験の浅い千沙子はほとんど完膚なきまでに
翻弄しつづけている。
 とろとろと左右にゆさぶりたてるかと思えば、さっと引きにかかる。
 たくみに天井部分の凹凸をこすられると、思わず息を引きとりそうな喘ぎが自
然に漏れてしまう。
 宍戸が肩でひと息入れるのが感じられた。千沙子はつぎの行為に協力するため、
うるみのルツボを思いきりあらわにした。ふいに彼はひざまずき、千沙子のあら
わな快楽源に舌を押しつけると、そこを素通りして、小暗い割線のはざまにぴた
りと舌先を合わせる。
 肛門を中心に舐めるように同心円を描きだした宍戸は、日ごろの紳士面をかな
ぐりすて、しきりに小さな穴をひらいたすぼまりを吸いたてる。
 驚きのあまり千沙子がいきむと、幾重もの菊ひだが外側にめくれ、薔薇窓のよ
うにわかれて、二つの小さな乳首のようになる。
 「あうっ、へんよ。おかしくなる」
 あまりにおぞましい快感のため、千沙子はむずがゆさと切なさで双臀をもじも
じうごめかせはじめる。
 すると、宍戸は、舌先で思いきり突きまくった。きつい菊ひだのあいだを、と
がった快楽の舌がつきすすんでゆくと、括約筋が痺れ、真上の羞恥の膣ひだがう
ごめき指先をじわッじわッとくいしめる。
 「おねがい。このままにしないで」
 千沙子は呻き、身悶える。
 宍戸は、ひそかに快哉を叫んだ。時間はたっぷりすぎるほどある。
 形成外科部長の贈りものは、まさに掘りだしものの一語につきた。
 彼と、この看護婦を共有することで、さらに多くの楽しみを享受できるだろう。
前も、うしろも、なまめかしく吸いつくようだ。
 宍戸は、舌と指でゆっくり弧を描きはじめている。
 同心円をなぞったり、時には突きたてたりする。
 その都度、千沙子は、「あううっ………」と唇をくいしばって呻く。
 彼女の心のなかで、奇妙な変化が起こりつつある。
 (もっとつよく………)
 と大声で叫びたい。
 知っているかぎりのきたならしい言葉をわめきちらして、自分を獣のようにお
としめ、これまでになく淫らな娼婦のようにせがみたかった。
 「あう。やだったらっ。あううっ。もうだめっ」
 宍戸はみるからに肉感的な看護婦が、支離滅裂の呻きを洩らすのを聞いて、激
しく昂ぶり、脈打った。
 宍戸は腰のバスタオルをせわしげにむしとり、包帯をはずしはじめた。
 もはや抑えることはできない。
 看護婦の官能的な鼻声を聞き、身も心も崩壊しはじめたのを感じるには、じつ
に小気味よい。
 千沙子の両足は、ガタがきたようにむなしく宙を蹴って、ふるえている。
 甘美な息づかいに啼泣がまじり、
 「どうだ、いいんだろ。君にいじられるのとどちらがいい」
 といじわるく聞いても、ただ首を打ちふるばかりだった。
 「あうっ、欲しいわ。もっと、欲しいの」
 千沙子は、時おり思いだしたようにぎゅっと足でしめつけて、宍戸の首を扼す
が、すぐに弛緩して、ガクガクと腰を打ちつけている。
 やがて、全身がはげしく打ちふるえ、最初の大きな衝撃波で、甘美な快感がい
っせいに蜂起した。
 「ああ、いい。いく。いっちゃう」
 宍戸は、左手で包帯を解きおわっていた。
 ガーゼの消毒液のにおいがただよってきたが、彼はむりに引きはがした。
 初陣にそなえる肉筒は、あかぐろく毒々しい王冠部をのぞかせ、はやくも分泌
液をにじませて、舌舐めずりをするかのようである。



        4 こんなに濡れて恥ずかしくないのか



 「よくみろ、傷つやけしないさ。黒田のよりかっこいいし、それに生きがいい
からきっと気にいるぞ」
 宍戸が、中腰になって根もとからふりたてると、まだ快感の稲妻からさめやら
ぬ彼女は、ふと怯えたようにみつめた。
 (まるでフランケンシュタインの怪物みたいだわ)
 軟膏でてらてらしているが、環状切開のあとが癒着しきってないので、毒々し
くみにくい筋目が浮いている。
 こんなものがめりめり押し入ってくるのかと思うと、千沙子は頭がくらくらす
るような思いだった。
 それでいて目を離すとことができない。
 恰幅のいい中年の偉丈夫の股間に、こんな醜悪なものが、と思うと彼女の好奇
心がじわじわとうごめきはじめている。
 宍戸は自信たっぷりに、うす笑いを浮かべている。
 若い看護婦の身うちにたぎる官能的な牝のにおいをかぎつけているのだろう。
 しどけなく両膝をひろげたままみあげている千沙子に気づくと、彼は両手で抱
き起こし、ベッドの頭板に寄りかからせた。
 おぞましい昂奮のあまり、千沙子の腋毛は湿り、麝香(じゃこう)のような匂
いをただよわせている。
 「さあ、もう一度、かわいいおちょぼ口をあけてもらおうか」
 宍戸の意図に気づいた看護婦は、カーテンの隙間からわずかにさしこむ光のな
かに浮きあがる怒張をおそろしげに見守った。
 「いやよ。だめ、近よらないで。むりよ、使えるはずがないわ。手術したばか
りじゃありませんか………」
 「だから試してみたいんだ。きみの甘ったるいべろでな。え、好きなんだろ、
このどでかいのが………」
 宍戸のがっしりした手が、若い看護婦の肩をゆさぶりたてた。
 キャップが頭板にあたって少しずつずれてくる。
 「離して、離してったら。もういいでしょ、さんざん、わたしをおもちゃにし
たんだから」
 「そうはいかないな。生娘のふりをするんじゃない。黒田君にもしてやったん
だろ、このすけべ看護婦。きみはその気になってるし、ほんとはおしゃぶりが大
好きなんだろ」
 「うそ、そんなことないわ。やめて。気持ちがわるいし、あなたをけがさせた
くないわ」
 「くわえたことがないなんて言わせないぞ。さっきは、あんなに欲しがってた
くせに、この淫乱看護婦め」
 宍戸がぐりぐりこすりつけようとすると、千沙子は大きくのけ反って息を喘が
せる。千沙子の怯えは、彼からみれば、むしろ楽しい刺激材料である。
 「やめてちょうだい、きたないわ」
 「とうとう本音を吐いたな。黒田のはきれいで、おれのはけがらわしいってわ
けか。そりゃ、食わずぎらいってものだ」
 宍戸はすっとしりぞいた。
 じつのところ、この一言で相手の防禦が弱くなったのを知っている。
 千沙子は、この病院の有力出資者を怒らせたくなかった。
 はっとする間もなく、目の前の十センチのところで、紫ずんであかぐろい怪物
のように静脈を浮きだたせた肉筒が迫ってくる。
 「いまさらいやとは言わさないぞ。前もうしろも、べとべとになるくらい、し
ゃぶってやったんだからな」
 宍戸がせせら笑うと、まる裸の看護婦は、きたならしい言葉をからだじゅうに
なすりつけられたような羞恥ですくみあがった。
 狼狽のあまり、千沙子が痺れたようになると、彼は膝でむきだしの双つの乳房
もろとも両腕を押さえつけ、充血した亀頭冠を繰りだし、歯を食いしばる彼女の
唇にこすりつけた。
 「いいか、ぬるぬるの扁桃腺をこじあけてやるぜ。ちょっと新鮮な空気を入れ
て、たっぷりしゃぶるんだな」
 宍戸は淫らに笑って、親指と人さし指で、看護婦の格好のいい鼻をぎゅっとつ
まみ、千沙子が息ぐるしさに声をあげるまで離そうとしない。
 「むううっ、あう………」
 千沙子が口をあけまいとするのを眺めて、宍戸は残忍に笑った。
 千沙子は、身ぶるいして口をぱっとあけ、空気を大きく吸いこんだ。
 目からは涙がにじみだしている。
 「はじめからこうすりゃ、手間がはぶけたのにな」
 宍戸は、あざわらって無慈悲にねじこみ、喉の奥ふかく突きたてた。
 ズブリと、根もとまで。
 縮れて量の多い剛毛が千沙子のなめらかな口辺にジャリジャリと当たり、つり
あがった陰のうごとしわしわした感触が淫らに頤(おとがい)をこする。
 千沙子は、美しい眉根を寄せて懸命にこらえている。
 「どうした、まずいっていうのか。気をつけて味わうんだ。噛みついたりした
ら、もっと奥までめりこませてやるぞ」
 男のものを含むのはきらいではない。しかし、強いられる嫌悪感が彼女を打ち
のめし、どうしてもついてゆけない。
 いつしか知らず知らずのうちに涙が頬を伝ってくる。
 「いいか。一回こっきりなのに、出しおしみをするな。看護婦のくせに、黒田
のけつの穴まで舐めさせられたんだろ、格好つけるな、もよおしてるのはわかっ
てるんだ。そろそろよくしまるつぼを使わしてもらうからな」
 頬を伝う千沙子の涙をみて、宍戸は昂奮し、乱暴に引きぬき、すんなりした彼
女の両足を引きずってベッドの中央に引きすえると、官能的な両膝のあいだに割
りこみ、ぐわっ、とこわばりを埋めこんだ。
 一瞬、引きつれる感覚があり、糸がぷっつり切れるような軽い痛みがはしった
が、宍戸はかまわずにぐっと腰を沈める。
 「あううっ」
 あまりの先太に、千沙子は、からだの芯までひびきわたるような呻き声を放っ
た。
 「くそっ、こんなに濡れて。恥ずかしくないのか」
 「あう、わたし。もう、だめだわ」
 下半身の動きに合わせて、宍戸はよくしなる舌をまるめ、千沙子の舌にからみ
つけ、口のなかから唾液がぬらぬらあふれだすほど抽送をする。
 舌を吸われてはっとするまもなく、淫らなひとひねりに、
 「うぐぐぐっ………」
 千沙子は、悲痛な呻きを洩らす。
 舌を吸われたまま腰をつよく引きつけられるので、舌の根がちぎれそうになる。
 ふりほどきたい一心でかえって深く侵入をゆるすかたちとなり、千沙子は無我
夢中で、えぐりたてられる感覚のなかに、切なげに上と下の二つの部分をしめた
り、ゆるめたりしながら喘ぎつづけている。
 精力的で、いやらしい性技にたけた宍戸は、いちいち完全に出しながら、心ゆ
くまで楽しもうとしている。
 「い、いやよ。もう、かんにんして」
 千沙子は息を喘がせ、途中で声をとぎらせてしまう。
 執拗にからむ相手の舌さばきに応じまいと思うが、ひと打ちひと打ち、亀頭冠
の力づよさに、刻一刻引きしぼられそうになる。
 ふいに、内部がなめらかになりすぎる感触が起こった。
 宍戸がせわしげにべとべとの舌をぬきだし、耳たぶや頬を接吻しながら口ばし
る。
 「ちくちょう、いいぞ。なんてきみはあったかいんだ。おお、まだだ。いや、
だめだ、蕩けちまう」
 上になった男のからだがはげしくひくつき、情熱的にぶちまけたかと思うと、
ぐーんと全身がのびきった。
 反射的に、千沙子も下からしがみつき、切ない呻きを洩らし、肩で息をつく。
 「なんてしめつけようだ。これで自分がどんなにすけべなのか、わかっただろ」
 あざけるようにうそぶく宍戸の言葉にも夢うつつで、千沙子はなおも猫のよう
に喉を鳴らしてしがみつき、
 「おねがい、離さないで。宍戸さん」
 と啜り泣く。
 邪慳に引きぬかれ、双臀を抱えおろされても、千沙子はまだベッドの端に腰が
ぬけたようにうずくまっていた。
 せきたてられるようにオフホワイトのショーツとパンティストッキング、白衣
を身につけ、入ってきたときとは打って変わって、千沙子は、しおしおと宍戸の
病室から出ていった。
 あまりにはげしくもてあそばれたので、千沙子は、がに股でそろりそろりと三
階の廊下を歩いていた。
 ステーションの奥の控え室はめずらしくがらんとしている。
 ちょうど、病棟患者の昼食の時間帯で、看護婦たちは調理室へ行き、配膳車を
待っているのだろう。
 千沙子は控え室の椅子に腰をおろした。
 なにか冷たい感触が太腿のつけ根あたりでする。
 椅子が濡れているのかと思って立ちあがると、ひやりとする感触はショーツの
なかからしみだしているようだった。
 あたりに人がいないので、千沙子は窓ぎわを向いて短い白衣の裾をもちあげて
調べてみた。
 太腿のつけ根のあたりのショーツの部分に、鮮血がにじみだしている。
 椅子に座ろうとした瞬間に立ちあがったためか、白衣にまではしみだしていな
い。
 さっき、ふいになめらかになったのは、宍戸の傷口がむりな抽送でぷっつり切
れて出血しはじめたのにちがいない。
 彼女はショーツをそっとまるめこみ、白い部分を羞恥のみぞにあてがって、き
れいに拭きとった。
 このショーツをどこに捨てるべきか。
 千沙子は途方にくれた。
 千沙子はステーションの棚からカルテを入れる袋を一枚取りおろした。
 淡いブルーのハトロン紙で、じょうぶそうだった。すばやくショーツを袋に入
れ、白衣に血がついていないことをたしかめてから、千沙子はステーションを出
た。
 彼女は廊下を小走りにすすみ、婦人用トイレをさがした。
 しかし、行きつかないうちに顔見知りの看護婦があらわれたので、いそいでエ
レベーターのところに行った。二階にもトイレがあることに気づいたのである。
 乗ってから2の数字を押したが、エレベーターは地階まで直行した。ドアがあ
いて千沙子はおそるおそる出たが、がらんとして誰も乗ってこなかった。
 ほっとしながら、彼女は婦人用トイレをさがした。
 この階は材料部が主に使い、担送車や、医療器具の倉庫のほか、霊安室や、ボ
イラー室、配電設備、排水設備などがある。ほとんどが無人か、ごく少数の職員
しかこの階にはいない。
 千沙子は、急ぎ足で婦人用トイレに向かった。
 立派は大病院であっても、この階の照明はいかにも暗く、名状しがたい臭気が
ただよっている。
 ところが、うすぐらい地階の通路の横にある婦人用トイレはあいにく清掃中だ
った。
 クリーム色の作業衣を着た掃除婦が濡れたモップで、タイル張りの床をのろの
ろとこすっている。
 入口で、たたずんで待ちくたびれた千沙子が、
 「まだ、だいぶかかるかしら。ちょっと使わしてもらいたいんだけど」
 と呼びかけても、相手は聞こえぬふりをして、黙々とバケツのなかにモップを
突っこんで、ふり向きもしない。
 千沙子はいらいらした。
 ショーツの捨て場に困っているだけでなく、白衣のすそのほうがスースーする
のだ。
 彼女はおしりをもじもじさせた。
 排尿感をもよおしてきたのだ。
 (困ったわ)
 我慢しきれなくなった若い看護婦は、なにか適当な場所はないかと急ぎ足で二
号ボイラーのほうに歩いていった。
 計器の安全装置や自動停止スイッチなどがひしめき合うボイラー室のなかは、
小さな電灯はついているもののうす暗かった。
 千沙子は配電盤のかげのほうに行って、くるりと双臀をまくってしゃがみこん
だ。
 シューッと温いものがほとばしり、彼女は汗ばんだ額をそっと拭った。
 それから、汚れたショーツを捨てるところはないかとあたりをみまわした。
 ようやく用をたしおわって立ちあがろうとすると、すぐ間近で口笛が鳴った。
 「おい、佐野。こんなところに看護婦がいるなんて、めっけものだぜ」
 カーキ色の制服を着た筋肉質で、刈りあげの若者が、もうひとりの相棒に話し
かけている。
 佐野と呼ばれる分厚い唇の若者は一八〇センチくらいの長身で、同じように<
東西空調サービス>のワッペンを胸ポケットにつけている。
 ポケットは小型ドライバーやペン型懐中電灯、それに検査時の欠陥状態を撮影
するポケットカメラなどでふくらんでいる。
 彼らは、貯蔵タンクからでている酸素のパイプラインを調べるために雇われた
アルバイト連中なのだが、たまたま、ボイラー室を通りぬけようとして、若い看
護婦の凝脂のようになめらかなむきだしの双臀を目にしたわけである。
 「塩沢、この女、なにもはいてないらしいぞ。こりゃ、かなり淫乱なスケかも
しれない。どうする」
 「みのがすって手はない。どうせ、けつまるだしのあばずれじゃないか。ちょ
いと、その奥でかわいがってやろうぜ」
 佐野はうなり声をあげて、千沙子にとびかかった。
 「な、なにするの、人を呼ぶわよ」
 「しずかにしろ。自分でその気になって、けつをまるだしにしてるのに、いま
さら、手こずらせるんじゃねえ」
 佐野は脅すつもりはなかったが、とっさの成りゆきでしかたがない。
 「ちょっとでも声をあげてみろ、おまえをぶっ殺すぞ」
 塩沢の威嚇も効果的だった。
 (本当に殺すつもりなんだわ)
 ふるえるからだに佐野の手がふれたとたん、千沙子は必死で逆らい、意識的に
両膝を閉じ合わせた。
 白衣の裾がめくれあがって、完全に無防備な看護婦をとらえた汗まみれの荒っ
ぽい若者は、絶好のチャンスにこおどりしていた。
 彼は千沙子のキャップをすっとばして難なくねじ伏せ、むさくるしい髭面で迫
って、唇を押しつける。それでも、千沙子は唾をはきかけ、抵抗しようと息をは
ずませた。
 しかし、佐野はひと跨ぎして相手を床に押しつけ、しなやかなからだを、がっ
ちりした胸で押さえつけ、むりやり千沙子の唇を割って、舌をさし入れようとす
る。
 千沙子はかたく目を閉じ、男の唇を噛み、目を引っかこうとした。
 「おもしれえ。もっと暴れろ。そのほうがよく練れて、気をやらせる手間がは
ぶけるってもんだ。これからたっぷりもてあそんで、とことんいかせてやる」
 佐野の腕力はつよく、千沙子はがっしり押さえこまれて身動きができなくなっ
た。
 ぐりぐりと腹部にこすりつけられる怒張の動きに、彼女の心のなかで狂おしい
驚愕がかけめぐる。
 宍戸周造にさんざんもてあそばれて、まだ一時間とたたないのに、またもやこ
んなことになるなんて。
 千沙子は、やけになって両手をふりまわし、佐野の顔に唾をはきかけた。
 「このあま、なめた真似しやがって。おつむをひやすには、仕置きが必要みた
いだな」
 佐野は両膝で、女を押さえつけたまま、ポケットからペン型懐中電灯をとりだ
し、ねっとりとした貝の肉のようなびらつきのなかにねじこませた。
 「あうっ、やめて。ひどいことしないで」
 「なに言ってやがる。看護婦ってのは、体温計でこうやって、ひとりで楽しむ
っていうじゃねえか。同じことをやってもらって、ありがたく思え」
 佐野は無慈悲に抽送した。
 まだ、ぬめりがたりないようだった。
 彼はペン型懐中電灯をぬきだして、パッとつけてみた。ライトの部分にかすか
に湿った痕跡がみとめられ、淡いまだらな模様になっている。
 「思ったより汁気たっぷりのスケだぜ。わかるか、こりゃあ、おまえのおつゆ
だぜ」
 つづいて佐野は、目じりに涙を浮かべる看護婦の臀裂をまさぐり、指で突つい
た。
 千沙子は、狼狽のあまり、
 「あっ、だめよ、そこはいやっ」
 と昂ぶった声を張りあげて身もだえする。
 「そうか、すぼまっているところをみると、ここはあまり使いこんでいないな。
恥ずかしいだろ、みず知らずの男にこんなとこ、いじられて」
 佐野はにたにた嗤いながら、セピア色のきつい通路に指をめりこませた。
 弾力のある筋肉が羞じらいながら指先を押しもどそうとする。
 「へ、なかなか、きつそうだぜ。おまえのでかたによっちゃあ、ここを徹底的
にいたぶってやるからな」
 彼は邪慳に臀裂をぜんぶの指で割りひらきながら、幾重もの襞のあいだに人さ
し指を押しこむ。
 薔薇窓が内側にすぼむと、奥は徐々にゆるくなり、やがてぬるりとした感触に
ゆきついて、すっぽり指先がしめつけられた。
 千沙子はとつぜんのことで、あ、ああっ、と身もだえするだけで驚きにほとん
ど声がでない。
 暴れれば暴れるほど男の指が深く食い入るので、観念したように双臀を佐野の
跳梁にまかせるほかない。
 「どうだ。これで気分がおちついただろ。ちょっとでも暴れたら、前もうしろ
もペンチでねじきってやるからな」
 その声は、ぞっとするほどの恐怖を感じさせる。
 千沙子は、啜り泣きながら痺れたようになり、蹴りつけるのをやめた。
 「これでよしと………。塩沢、楽しめそうだぞ」
 佐野は重くなった体のあいだに手をやり、ズボンのベルトをはずすと、どさっ、
と床に投げやった。
 と思うまもなく、彼の手が白衣越しに張りつめた乳房を揉みしだくのを知って、
若い看護婦は身を固くした。
 しかし、佐野の狙いはべつなところにあり、これは撹乱戦法なのである。
 両手で必死に胸をおおう看護婦のしぐさに乗じて、彼は千沙子の両膝のあいだ
に片手を割りこませ、むりにこじあけて逃げられないようにした。
 (くそっ。とことんやりまくるぞ)
 と心のなかでわめき、佐野はぞくぞくする昂奮を覚えた。
 よじれた肉びらに沿って指がずりあがり、上べりの肉粒に触れたとたん、千沙
子のからだに電撃がはしった。
 彼女は固く歯を食いしばり、湧きあがる淫らな呻きを噛み殺した。
 横でなにかが動く気配がしていきなり光があてられ、一瞬千沙子は目がくらん
だ。
 「暗すぎるからな。よくみせろ」
 塩沢が懐中電灯をさし向け、相棒が、動物のようにねたねたするびらつきを撫
でまわすのを光で追っている。
 千沙子は目を閉じたが、かすかな気配で目をあけると、下半身をまるだしにし
た男がふたり、自分の恥部を眺めまわしているのに気づいた。
 白衣とブラジャーをすっかりたくしあげられ、むっちりした乳房もさらけださ
れている。
 千沙子は弱々しく髪の毛をふり、みじめな気持ちで胸もとを喘がせた。
 「へええ、このあま。すっかり剃られちまってるぜ。こいつはおもしれえ、相
等など淫乱だ。もっと、よくみてみよう」
 塩沢は、なめらかな白桃のような部分に悩ましい亀裂がはしっているのをみて、
舌舐めずりした。
 「やめて。おねがい」
 「なにをおねがいするんだ」
 佐野はせせら笑った。
 なすすべもなく押しひしがれたからだのうえで、佐野が少しずつ身をずらすの
を感じて、千沙子は相手が異常な下心を持っているのを読みとった。
 ぶあつい唇の若者は両膝をつくと、ずんぐりした両手で、悩ましい太腿をこじ
あけ、かぐわしい割れ口に顔をうずめ、女の液をしゃぶりたてた。
 若い看護婦は、たえきれずに反撃に出た。
 相手を蹴りあげ、のけ反り、寄生虫のような淫らな舌先からのがれようとした
が、彼女が暴れたために、かえって佐野の運動場がひろがったようなものだった。
 佐野は遮二無二押さえこんで、旺盛な食欲で自分の唾液と千沙子の蜜液で顎を
べとべとにしている。
 佐野の啜る音があつかましくなると、屈辱の涙が千沙子の両頬にしたたり落ち
た。
 「ああ、ひどい。もう、やめて………」
 若い看護婦は怯えながら、相手が感じやすい肉のひものような突起を集中的に
なぶり、かるく歯をあてるのを感じた。
 彼女はからだをのけ反らせ、はっきり喜悦の声をあげた。
 (あうう。くやしいけど、いい気持ち。うっ。だめ)
 佐野の口のなかにとろりとあふれる感覚がひろがり、鼻孔のあたりに千沙子の
下腹部の熱感がおそってきた。
 分厚い唇の若者は、凱歌をあげながら、ぴりっとする女の分泌物を舐めとった。
 床のうえでは千沙子の両腕と足がぐったり伸びきり、甘い体臭を発しながらな
まめかしくも崩壊しきった姿をさらけだしている。
 「うまくしゃぶって気をいかせたな。おれはなにをやったらいいんだ。こうな
りゃ、べつの口はこっちのもんだぞ」
 塩沢は、看護婦に近づき、片手で髪の毛をひっつかみ、もういっぽうの手で種
馬のような怒張をつかんで、二、三度、はげしくしごきたてた。
 塩沢は腰をひねりながらかたちのいい頬にずぶとくふくれあがる亀頭冠を突き
たて、塩沢は唇といわず、鼻といわず、ねちねちとなすりつけ、閉じた目にひょ
いと押しつけたかと思うと、むりやり唇のなかに押しこんだ。
 「ゆっくり味わわせてやろう。おまえがどんなにこれが好きか、思い知らせて
やるからな。まず、でかまらにキスしてみろ」
 千沙子は催眠術にかけられたように、唇をあけ、しおからい先端に接吻をした。
 「舐めろ。舌の先できれいにめくりあげてな」
 「うぐぐぐっ、もう、やめて。わたしにはできないわ」
 千沙子は涙にかすむ目をこらして、深く息を吸いこみ、強いられるままに舌を
這わせ、なまぐさい分解臭を溶かしながら、反りかえるほど舐めまわした。
 「もっと口を大きくあけろ。もったいぶらずにしっかり吸いこむんだ」
 塩沢は看護婦のうなじをつかみ、饐(す)えた異臭が漂う部分に容赦なく引き
つけた。
 あまりの硬度に、千沙子はたじろいだが、毒々しい先端が歯をこじあけ、深く
押し入ってくると、息苦しさのあまり、うめき声を放った。
 「へえ、このあま、すっかりその気になってるぜ。一度にふたりも無理じゃな
さそうだ。佐野、いっしょに気を合わせてやってみよう」
 あざけるようにうそぶく塩沢の言葉に、すぐさま佐野は、千沙子の背後にまわ
って、むっちりした双臀を抱えあげる。
 むりな姿勢をとらされた千沙子は、臀裂から羞恥のみぞに向かって、いやらし
くこすりつけられると、全身が異様な戦慄でふるえる。
 「おれたちは、いま、まら兄弟になろうとしてるんだぜ、塩沢」
 汚辱感ですくみあがったからだに、佐野の手がかけられると、一瞬、千沙子は
舌の動きをとめた。
 「目をあけろ、しゃぶりながら四つん這いになって、手をつくんだ。佐野さま
に、きれいなけつをすっかりみせてもらおうじゃないか」
 佐野はねちねちともてあそんでから、うしろから二指をもぐりこませ、ゆっく
りと、すこし弛(ゆる)めの肉質をかきわける。
 「佐野、ぐずぐずせずに、はやく突っこめよ」
 根もとをしごきたてた塩沢は、荒っぽく体をずらし、口腔を犯す体勢をととの
えると、彼女の後頭部をかかえこむ。
 「あううっ………むうう」
 たまりかねて千沙子は叫んだ。
 佐野が淫らにひろげた舟状の割れ口を愛撫し、双臀をかかえたまま、ヌタリ、
ぐわっとおくりこむと、おぞましい大きさに千沙子は切なげに呻いた。
 「おお、こんなにきついしろものに、はじめてお目にかかったぜ」
 満足げな佐野の凱歌に千沙子の腰ははげしくうねった。
 このきちがいじみた男たちを一刻もはやくはてさせようと彼女は努めて呼応し、
いっそう刺激的にしゃぶりたてる。
 落花無惨に上と下を突きたてる動きは、柔媚な肉粒を揉みしだく指先とリズム
をあわせ、彼女をたえがたいほどにじらしつづける。
 佐野は無力な千沙子をとことんつまびこうと、手かげんしながらたくみにつけ
こんでくる。
 千沙子は、被虐的な期待のうちにほとんど腰をおとしかける。間隙をぬって佐
野は繰りだす。
 突きたてられ引きぬかれる感覚に千沙子はゆるみ、つぎに収縮する。
 最初の蕩けるうるおいが佐野の先端にからみついた。
 「気を入れはじめたらしいぞ。顔に似合わぬどすけべ看護婦だな。よっぽど飢
えてたんだ。上と下をいっしょに突っこまれて、白目をむきだしそうになってる
ぜ」
 (おお、いや、いや………)
 佐野の卑猥なあざけりと、つづいて起こった塩沢のほくそえみに、千沙子はな
おさら辱められたような気がする。
 彼女はなにも感じまいとするが、じらされた肉体は、ある一点に達するととめ
どもなくうるおいはじめている。
 (ううっ、くやしい………みじめだわ………)
 苦痛のほうがましだった。はやくとどめをさしてほしい。
 「佐野、そろそろ気を合わせて、ぶちまけようぜ」
 立て膝になって最後の助走に入りかけた塩沢が、たえがたくなり、ぬるりと口
からはずし、ねちっこくぬき差しする相棒に声をかける。
 束の間、千沙子は息をつき、深く空気を吸いこんだが、血気さかんな佐野は、
根気と熱気で彼女を圧迫しながら、なおもいたぶりつづけている。
 佐野は、人気のないボイラー室に迷いこんだ色っぽい看護婦を息もたえだえに
して、自分のほうから、もっと、もっと、とせがむようにし向けたかったのだ。
 「もう、だめ。くたくたよ。あうっ、そんなこと、いやっ」
 塩沢に頬を突かれながら千沙子は喘ぎ、つらそうに眉根を寄せ、佐野のじらす
指をもとめてのたうち、啜り泣きはじめた。
 彼女は双臀を突きだしながら内腿をこすり合わせ、ほてってめくれあがる放恣
な肉びらでつつみこもうとむなしくあがく。
 「このあま、ひとりで熱くなりやがって」
 千沙子の興奮が佐野に傾いたと知った塩沢は、怒りにまかせて彼女の髪の毛を
つかみ、唾液まみれの毒々しい先端を愛らしい目や鼻にこすりつける。
 あげくのはてに、ねっとりと艶を増す唇のなかにむりやりねじこむ。
 「うぐぐぐっ」
 彼女は噴出する塩沢の白濁を一滴残さずのみくだそうと喘ぎつづけ、肩で息を
つく。
 「あうう。かんにんして。おねがい、あなたもいって。いってちょうだい」
 千沙子はあられもなく号泣してうわずった声をあげ、双臀をなやましく打ちふ
った。
 佐野は思いきり腰を沈め、方向がさだまったとみるや、容赦なく腰を使った。
 千沙子の表情に、限界をこえた恍惚とも、弛緩ともつかぬ翳りが浮かび、ひと
突きごとに低いうめきをあげつつある。
 「うぐっ。むウ」
 よがり声をかみ殺す彼女の呻きにつられ、佐野は猛烈に憤きあげた。
 彼は深く深く打ちつづけ、千沙子の濡れそぼった襞は奥へ奥へと咥えこむよう
に蠕動し、収縮する。
 「どこもかしこも、蕩けてる。おお、いくっ」
 佐野が肉筒をぬきだしたとき、千沙子は、床にくずれおれ、ほとんど失神状態
だった。
 「佐野、この始末はどうつける」
 年下の塩沢は筋肉質だが、いささか頭の回転がにぶい。
 彼はひと月まえは鉛管工、三カ月まえは電気工事のアルバイトをして転々とわ
たり歩いてきている。
 ムショを出てから、かれこれ一年たつ。
 佐野も、塩沢もスポーツマンタイプだが、かなり陰湿な性格で、蛇のように執
念ぶかく、尖った目が変質的な光をやどしている。
 「このあま、サツに訴えるかもしれない。だからはやく………」
 塩沢はズボンのファスナーを引きあげ、すでに逃げ腰だった。
 「ずらかるまえに、することがあるんじゃないか」
 佐野は若いくせに悪知恵が働くほうだった。
 彼は、まだ失神から醒めぬ千沙子をごろりとあおむけにした。
 懐中電灯で顔を照らしだすと、きれいだが、官能のなごりをとどめるうつろな
表情があらわれた。
 「塩沢、名札をみろ、何て書いてある」
 「森高、って書いてある」
 「そうか。おまえならこれからどうする」
 塩沢の顔に生色がもどってきた。
 (こりゃおもしろいことになりそうだ)
 塩沢は、作業服のポケットから小型カメラをとりだし、まだ朦朧としている千
沙子に、できるだけ淫猥なポーズをとらせた。
 まず両脚を思いきりひろげ、大量の精液があふれでた状態のものを撮り、白桃
のように剃りあげられた丘のあたりまで粘液がぬめって光っているさまを何度も
撮影した。
 いずれも名札と顔がはっきりわかるように、ロングとアップを交互に繰りかえ
した。
 それから佐野がどてかいものをふりたて、まともに入りこんでいる格好を塩沢
に撮らせた。
 この猛々しい強姦魔は、カメラの小さなシャッターの音を聞いているうちに、
またもよおしはじめたのだった。
 そうとも知らず若い看護婦は、精も根もつきはてたように床のうえでへたばっ
ている。
 彼らは、あらゆる角度から写し終えると、千沙子を置きざりにして、そっとボ
イラー室からでていった。



        5 うしろににぎりこぶしを使ってやるぞ



 ようやく意識をとりもどした千沙子は、ふらつく足どりでボイラー室からしの
びでて、地下通路の横にある婦人用トイレにたどりついた。
 うすぐらい廊下にくらべてここは煌々と電灯がかがやき、無人なのにいかにも
暖かそうだった。掃除婦はすでにいない。
 (だれにもみられなかったかしら)
 彼女は大きな鏡のまえで吐息をつきながらみだれた髪をなでつけ、台においた
ナースキャップをとりあげてきちんとかぶり直した。
 それから白衣はよごれていないかと、自分の姿をためつすがめつする。
 それでも不安で、便器のある場所に入り、すっかりぬいでよごれ具合をたしか
めた。
 ボイラー室は整頓がゆきとどいているとみえ、塵らしいものも、白衣について
いないようだった。
 首のあたりまでずりあがったブラジャーを引きあげ白衣のボタンを直してから
便器に腰かけたが、みじめな淫情に破れた自分の姿を思いだすと、ついつい涙が
こみあげてくる。
 (わたし、ばかだったわ。あんなところでおしっこするなんて)
 まるで悪夢としかいいようのないできごとである。
 白昼、神聖な病院のなかで、こんな憂き目にあうなんて………。
 一也と別れてから、まだ一カ月とたっていないのに、ちょっとした心のゆるみ
から看護婦として致命的な点滴ミスを犯し、それから一連のおぞましい淫虐がは
じまった。
 病院をやめさせられたくないばかりに黒田形成外科部長の毒牙にかかり、涙も
乾かぬままに、理事長の親友で共同出資者とかいう宍戸につけ入られ、さらに淫
らで変質的な通り魔の二人組にいたぶられて女の誇りをふみにじられてしまうな
んて………。
 もう一也にだって会わせる顔がない。
 そう思うと、千沙子は便器に腰かけたまま啜り泣いた。
 肩をふるわせ、もはやどうにもならないという絶望感が増してくると、ふたた
び排尿感がこみあげ、箍がはずれたようにタラタラしたたらせてしまう。
 しばらく啜り泣いたあとで、彼女は、ふと現実の意識にもどって腕時計をみた。
 (たいへんだわ)
 昼食の時間がとうに過ぎている。
 千沙子は、気持ちをシャンとさせて立ちあがり、トイレを出ていそいでエレベ
ーターに乗りこんだ。
 三階のナースステーションを通りすぎて更衣室に入り、ロッカーから一度穿い
たことのあるショーツをとりだして身につけ、そ知らぬ顔でもどろうと廊下を歩
きはじめる。
 このショーツは出勤時に穿き替えたものだが、何もつけないよりはましである。
 「千沙子、病棟主任がさがしてたわ。どこへ行ってたの」
 顔見知りの同僚が声をかけた。
 部屋に入ると、主任が、
 「まあ、どうしたの。あなたの患者さんが出血してたいへんだったのよ。すぐ
交代の看護婦さんに行かせたけど、包帯をとってはいけないのに、むりして自分
ではがしたらしいのね。ほんとに世話のやける患者さんだわ」
 「そうですか。じゃ、わたしは行かなくてもいいんですね」
 「食事をすましてきたんなら、B病棟を見まわってちょうだい。あ、そうそう、
西山婦長からあとで医局のほうに来るようにって伝言があったわ。替わったばか
りなのにまた配置替えかしら。特別個室の患者さんは身勝手だから困るわね」
 半ば同情するような病棟主任の口調は、どうやら理事長の共同出資者のわがま
まを非難しているように思える。
 形成外科の医局に赴くと、西山婦長が言った。
 「あ、部長部屋に行ってちょうだい。患者さんの容態のことで聞きたいそうよ」
 千沙子は、回廊の少し手前にある黒田部長の部屋をノックした。
 ドアをあけるよりはやく、がっしりした体格の黒田がたってきて、
 「だれかにみられなかったか」
 「いいえ、西山婦長だけです」
 「西山くんならだいじょうぶ。彼女にはカルテの点検を命じておいたから、す
くなくとも一、二時間は席を離れることはない。さてと………」
 黒田はいやらしく笑うと、うしろ手でドアの鍵をかけ、千沙子の手をとってゆ
ったりしたソファに倒れこんだ。
 「あ、やめてください。先生、こんなところで」
 「なにを言うんだ。どうだね、宍戸さんの調子は。だいぶ、しつこくやられた
ようだな。せっかく癒着していたのに、ばかな人さ。さんざん好き勝手なことを
しおって。『出血がとまらないからなんとかしてくれ』って、電話をかけてきお
った。ちゃんと後始末をしてから、ナースステーションのベルを押せといってや
ったがね。きみはどこへ行ってたんだ。まさか、ものたりなくてオナってたんじ
ゃあるまいね」
 ねちねち問いつめられながら、白衣のうえから乳房をいじられ、千沙子はにわ
かに体が汗ばむのを感じた。
 「そ、そんなこと………」
 「いやわからんぞ。なにしろ、きみは濡れやすいたちだからな。宍戸にどんな
ふうにされたか、すっかり報告するんだ。プロ仕込みのすご腕だから、けつの穴
までしゃぶりつくされちまったんだろ」
 千沙子は顔をあからめて目を伏せた。
 彼女はそのとき、宍戸よりも地下室の二人組の弄虐を思いだして、秘密っぽい
ひだのつらなりが蕩けるようにうるみだしたのだった。
 「し、知らないわ」
 「知らないはずがあるか。正直に言わんと、また手術室に連れていって、腰が
ぬけるまでこねくりまわしてやるぞ。それとも、きみは病院をやめさせられたい
というのかね。さあ、言うんだ。このおっぱいを吸わせたんだろ」
 黒田は、白衣の胸をはだけて荒々しく揉みしだき、欲情にかられて鼻孔をひく
つかせる。
 「そ、そんなことしません」
 「うそをつくな。わしにも、『おっぱいを吸ってちょうだい』って言ってみろ。
さもないとにぎりこぶしを使ってやるぞ。それもきゅっとしまったうしろにな」
 千沙子はびくっとした。
 研修医や形成外科医の人たちが、裏ビデオの噂をしているのを聞いたことがあ
る。
 (フィスト・ファックなんかされたら死んでしまうわ)
 体温計や、浣腸器ですら、汚辱感をおぼえる臀裂に突っこまれたら悶絶してし
まうかもしれない。
 黒田は、魅力的な看護婦がひどく怯える横顔を興味ぶかそうにながめやった。
 もうひと押しである。
 「言いたくなければ、考えがある。きょうは千CC入りの大きな浣腸器で、た
っぷりグリセリン液を注入してやろう」
 「やめてください。そんなおそろしいこと」
 「それなら、はやく、おねだりするんだ。『わたしのおっぱいを吸ってちょう
だい』ってな」
 黒田は、自信たっぷりで傲慢に言い放った。
 この看護婦は手入らずの生娘のように何でも楽しめそうだった。
 彼の経験でも、あれほど弄虐を加えて、なおかつ興奮を新たにする女はそうめ
ったにあるものではなかった。
 「おっぱいを吸ってちょうだい」
 ついに観念した千沙子は、おずおずと、オフホワイトのブラジャーをはずし、
目をつぶったまま乳房を突きだした。
 黒田は目をほそめてみつめた。
 「おねがい、吸ってみて………」
 千沙子の声は湿りがちで、少女のような羞じらいをみせている。
 「やっと素直になったな」
 黒田はにやりと笑い、彼女が身を引く間もあらばこそ、白衣ごとぐいぐいと引
き寄せ、片方の乳首を、あやまたず分厚い唇にあてがった。
 いったんなまめかしく官能的な感触をおぼえると、彼は夢中でしゃぶりつき吸
いたてる。
 だれが入ってくるかもわからないのに騎虎の勢いだった。
 いやだと思っていても、黒田の激情的な愛撫に、千沙子は、嫌悪と興奮の入り
混じったうめき声を洩らしてしまう。
 情欲のかたまりとなって、ここを先途と舐めまわす黒田の舌は、つぎの獲物を
もとめて、もうひとつの乳首に吸いついた。
 「そんなにつよく吸わないで………。せっかちに。あうう。いい気持ち………」
 千沙子の声は低くしわがれている。
 黒田は、大きな熱い舌でひと舐めしてから乳首から離れた。
 「どうだ、クリトリスのほうまで熱くなってきただろ」
 黒田は皮肉たっぷりにうそぶく。
 しかし、その声も聞こえぬほど千沙子は、なまめかしい肉粒が疼きはじめてい
る。
 「こんどはわしを楽しませてくれ」
 黒田はしなやかな彼女の、手を引き寄せ、ズボンのまえにぴたりと押しつけた。
 「あ、いやっ」
 異様なほど大きく、しかも硬くなっている。
 「いいか、きみがすすんで、この邪魔っけな上衣をぬがせるんだ。ズボンもな。
早くしろ」
 千沙子は、怯えながらおずおずと白衣をぬがせてテーブルに乗せ、ズボンのフ
ァスナーをはずして引きずりおろした。
 「それから、これもぬがしてくれ」
 彼女は、言われるままに黒田のシャツをぬがせ、足もとのズボンに重ねて放り
投げた。
 「さあ、しゃぶってもらおうか。ゆっくりとな」
 黒田はソファのうえに大の字になった。
 トランクスのなかからふくれあがった肉筒がどぎつくそそりたつのがわかる。
 「ぐずぐずするな。好きなくせに、このあばずれが――。この前は上手に吸い
たてて、一滴あまさず舐めとったじゃないか」
 千沙子は、眉をひそめながらトランクスを引きおろした。
 「さあ、上手にむいてくれ」
 高圧的な声に千沙子は吐き気をおぼえながら股間に顔をうずめた。
 舌先で徐々にめくりあげると、粕のようなものが口中にひろがる。
 息の根がとまりそうな汚辱感に、彼女はかえって捨て鉢めいた熱意をしめし、
目を閉じたまま淫らに舐めまわした。
 「その調子、そう、そう」
 千沙子のねっとりした熱い舌が徐々に這いあがってゆくにつれて黒田は叫んだ。
 じゃりじゃりした毛ぶかい根もとをゆさぶられて、黒田は王冠部をぴくぴくさ
せ、ゆっくり起きあがって位置をずらし、看護婦を組み敷いて、きれいな顔に跨
がった。
 千佐子は蕩けるようなおぞましさに半ば忘我状態で目を閉じており、彼の動き
にあまり気づいていない。
 一分もたたないうちに彼は抽送を中断して、相手が目をあけるのを待った。
 「もっとつづけてほしいんでしょ」
 彼女は、やわらかなかすれ声で聞く。
 「そうとも。だが、きみもしゃぶってやらなきゃ不公平だろ」
 黒田が両膝をこじあけるのを感じて、彼女は、
 (ああ、いや、わたしはしてほしくない)
 と心のなかで叫んだ。
 しかし、相手は相舐めのかたちでのしかかっており、たちまちパンストのうえ
から、彼女のなまめかしい快楽源をねばっこい舌でついばみはじめた。
 「あうう。わたし、してほしくない………」
 千沙子は切なげな声で呻き、言葉とうらはらに微妙な快感にくすぐられて両膝
を突っぱらせた。
 数日まえに剃りあげられた羞恥のほとりは、まるでさざ波たつ肉色の海のよう
で、パンスト越しに濃厚な唾液でべとべとになっている。
 一瞬、動きをとめた黒田はぽこりとかたちのいい臍のあたりに口をうつし、鋭
い歯でパンストのチュールレースを食いちぎった。
 またたくまにナイロン・レーヨンの部分はよれよれになり、熱で縮んだように
小さくまるまってすんなりした足の先から押しのけられた。
 「よし、つづけるんだ。お返しにいい気持ちにさせてやるから、舌をやすめる
な」
 湿った肉のつぼみにじかに男の舌が触れたとき、千沙子はおぞましい快感で息
がつまったが、彼は巧みにぬらぬらするうるみを舐めとった。
 「あウウ………」
 身悶えしながら反射的に、千沙子は居丈高なほこ先をしゃぶりたてた。
 むり強いされればされるほど、彼女はえがたい屈辱のなかで濡れそぼってくる。
 泡だつふかみをえぐりたてられるたびに千沙子は、迫りくる罪の快楽にやまし
さと期待を持ちつづけた。
 「ずいぶん大きいんだな。きみのクリトリスは………」
 「ごめんなさい。わたし、ふつうより大きいんです」
 黒田がうまく操って小刻みに愛撫しだすと、あれほど彼をきらっていた千沙子
は別人のように喘ぎはじめた。
 心中ほくそえむ黒田は勃(お)えかかる肉芽を舌でころがし、そっと噛み、軽
く口に咥えた。この行為は千沙子の切ないうめきによって報われた。
 「ああ、だめ………いや、やめないで」
 彼女はあえぎ、唇を離して全身をうちふるわせる。
 引きつれてさざ波だつ肉びらのあわいから熱いうるみが放出する。
 千沙子は空気を吸いこもうとする口をあけ、たえきれずに叫んだ。
 「おねがい。舌で、もっと、深く突いてちょうだい」
 黒田は相手の口を封じるために両膝でバランスをとりながら、喉もとふかく突
きたて、同時に舌先をまるめて繰りかえし埋めこんだ。
 たちまち千沙子の押し殺したうめきが洩れ、甘美な粘液のみなもとをこねまわ
すたびに、ぬらぬらする喜悦の証(あかし)が、彼の舌の根もとにあふれてくる。
 千沙子のなかで黒田の舌は筋力を保ち、大波に引き寄せられるサーファーのよ
うな気分だった。
 「あううっ。いってしまう」
 肉体がうけ入れる荒々しい快楽を吸収しきれず完全なヒステリー状態に追いあ
げられた千沙子は、発作的にかんだかくくちばしった。
 全身を快感がつらぬくと、不覚にも黒田にしがみつき、啜り泣きだしたのであ
る。
 黒田のいたぶりはそれだけで終わったわけではない。
 例の手術室には連れていかれなかったものの、くたくたに疲れきっている千沙
子をひざまずかせて、剛毛だらけの臀部を突きだし、
 「このスケベ看護婦め。さあ、ゆっくりしゃぶりたててもらおうか。きっとい
い味がするぞ」
 ぐいと淫らに押しひろげて彼女の鼻の先にさらけだす。
 つられたようにみあげた千沙子は、あまりのことに身ぶるいしながら顔をそむ
ける。
 「なんだ。その顔は。早く舐めてみろ、きみがぴちゃぴちゃ音をたてるのが聞
きたいんだ。こんどはわしをいい気分にさせてくれ」
 横柄な声でいいつけ、その指先は彼が望むところをまともにさしている。
 「ああ、いや。ぜったいにいや」
 千沙子は屈辱感で色を失い、おぞましさに気を失いそうになった。
 「ふん、かまととぶるんじゃない。わしのけつの穴をきれいに掃除してくれた
ら、今日のところはゆるしてやろう。それとも手術室に行って、ゆっくり楽しみ
たいのか」
 黒田は臀丘を厚かましくさらけだしてなおも強要する。
 彼女は汚辱感で身ぶるいしてあとずさったが、相手にがっしりと肩をつかまれ
る。
 「離して。先生変態だわ。もうこれ以上、みじめな思いをさせないで」
 千沙子は必死で抗議したが、すでに蛇にみこまれた蛙と同じだった。
 「きみは、きっとこれが好きになるさ」
 「いや。とてもできないわ」
 千沙子の心臓はどきどきし、たえがたい不安とおぞましさで肌がじっとり汗ば
んでくる。
 「どうかな。きみにその気がないとは言わさんぞ」
 黒田は嵩にかかって、ねちねちからんでくる。
 「ぐずぐずしないで舌を使うんだ。さもないと、ケースに入っているギザギザ
つきでひと鞭あててやるぞ」
 おそろしい警告に、千沙子は、
 「おねがい。なんとか助けてちょうだい」
 とすがりついた。
 黒田は毛むくじゃらな臀列をひくひくと開閉し、時には力んで突起状にしてい
やらしく挑発する。
 「おっぱいのように吸い、きみの歯で噛んでもかまわんぞ」
 「なんて、けがらわしいことを。そんなこと、とてもできないわ」
 黒田に後頭部を押さえつけられ、拝跪(はいき)するかたちの看護婦は、つい
に屈服した。
 「いいわ。でも、先生がむりにやらせるのよ」
 褐色の剛毛が繊細な鼻と頬にこすれて、いきりたつ臀裂に優雅な唇が触れると
黒田は思いきり襞々をひろげる。
 むっとするドリアンのようなにおいが漂うと、彼女は汚辱感でそのまま息たえ
てしまいそうな気がする。
 「舌と唇を使って円を描くように舐めまわし、ふかくついばむんだ」
 彼女はやるせなさと口惜しさに身悶えしながら、キャラメルのようににちゃに
ちゃする部分に唇を押しつけた。
 「なかなかいいぞ。どんな味がする。え、猫っかぶりのいたずら女め」
 淫らがましく腰をゆすりたてながら、黒田は不本意ないけにえを存分にいじめ
つけるようにわざと臀裂をすぼめてみせる。
 その種のひとりよがりに彼女は狼狽をおぼえたが、身も心もどろどろに溶かさ
れたいまとなっては、一刻もはやく試練を切りあげたい。
 時がたつにつれて、千沙子の意識は、わずかに積極さをましてきた。
 口中にひろがる味覚はちりちりしたアルミ箔のほろ苦さを思わせる。
 いつしか彼女は、とろけるようなおぞましさの快感に没頭しはじめた。
 その姿を眺めやりながら、黒田は、つとテーブルに手をのばすと、オレンジ・
ジュースを飲みほしたコップのなかからプラスチック・ストローをつまみあげた。
 彼は千沙子に気づかれぬようにストローを咥えると、なまめかしい腋の下にそ
っと風を吹きこんだ。
 微妙な感覚に千沙子はかすかな喘ぎを洩らす。
 淫らな喜びが湿った腋毛から肌ぜんたいを疼かせ、彼女は小指の先ほどのふく
らみがぴくりと引きつるのを感じる。
 黒田は、なおも腋の下からうなじのあたりにストローを近づけ、フゥーと息を
吹きかけてくる。
 千沙子は、からだの疼くような快感が放射状にひろがるのをおぼえ、腰をもじ
もじさせた。
 「ふふふ、感じはじめたらしいな。こんどはわしのからだに這いのぼって、ゆ
っくり腰を沈めてみせてくれ」
 黒田はぐいと華奢な女を腹のうえに引きあげると、いきなり突きあげた。
 「あ、痛い。そこは、ちがうわ」
 わざと双臀のすぼまりに突っかけられ、千沙子は狼狽して昂ぶった声をあげる。
 「それならしっかりつかんで、まともに入れろ。きみの手でな」
 彼は、繊細な千沙子の手を、自らの毛ぶかい根もとにみちびいた。
 「ああっ、いや」
 彼女が羞恥と困惑でひるむと、ふたたびわざと突っかけてみせる。
 やむなく千沙子は手を持ちそえてズブリと、まともに引きこむ。
 思わず、
 「うっ」
 と環状の筋肉を収縮させるが、黒田にとっては蕩けるようななまめかしい感覚
である。
 黒田はかまわずに、ひと突き、ひと突き、みえないぬかるみの源泉をえぐりた
てる。
 「きついわ。もう少し、そっとして。おねがい、やすませて」
 千沙子はかなきり声をあげたが、結局は相手にせかされるまま、下半身をソフ
ァでのたうちまわらせることになる。
 「もうだめ。ゆるしてちょうだい」
 黒田は、容赦なく両手で看護婦を抱えあげ、ガクガクとゆすりたてる。
 悩ましく突きあげられて千沙子は眉を寄せ、下唇を食いしばっている。
 「いや、どんなにこれが好きか、思い知らせてやる」
 血気さかんな男の肉筒は飛び魚が跳ねまわるようで、その根気と熱気に彼女の
なまめかしい淵ははりさけんばかりになり、ある一点に達すると、とめどなくう
るおいはじめた。


 婦長の西山佳子は、長時間千沙子が黒田の部屋にいたことについて何の疑いも
持たないようだった。
 それもそのはず、西山は自分の美しさに絶対の自信を抱いていたからだ。
 彼女はもう若いとはいえなかったが、それでも病院では五指のうちに入る美貌
を誇っている。
 これまでにも言い寄る医師や管理職は数知れなかったが、黒田と断続的に肉体
関係を持つことで、彼女なりの誇りを保っていた。
 彼が理事長の側近であるかぎり、佳子は婦長の地位にとどまっていることがで
きる。
 ちょっぴりセクシーな千沙子などに目をくれるような黒田じゃない、というの
が彼女のぬきがたい確信だった。
 むしろ、野性的だが、どこか愁いのある千沙子に目をかけているくらいだった。
 女性本能で、佳子は若い看護婦が最近、恋人と別れたことを感じていた。でな
ければ、たびたびミスを犯すはずがない、と信じていた。
 だから、特別個室の勤務から解かれて、千沙子が形成外科にもどってきたとき、
病棟担当でなくナースステーション詰めに迎えてやったのである。
 「これから回診についてゆきますからね。あとはたのんだわよ」
 西山婦長の声に、千沙子ははっと我をとりもどした。
 いまごろ、別れた一也はどうしているだろうと、ふと思いに耽(ふけ)ってい
たからだった。


 引きしまった胸、健康的な手足、若々しい性の昂ぶり、どれひとつをとってみ
ても一也以上の伴侶がいようとは思えない。
 (それなのにささいなわがままから、彼を失ってしまったんだわ)
 千沙子は、できればもう一度一也に許しを乞いたいと思っていた。
 ふたりが折れ合うチャンスはあった。
 しかし、彼女の誇りがそれをゆるさなかった。
 誇り。そんなものは、とうの昔に踏みにじられてしまっている。
 彼女はこれから先、だれをたよって生きていったらいいのか、まったく見当が
つかなかった。
 そのとき、彼女は何かの気配に、ふっと顔をあげた。
 近ごろ、病院内を歩いていても、なぜかみえない視線を感ずることがあった。
 気のせいかもしれない、と思っても、心のわだかまりは消えなかった。
 (きっと疲れてるんだわ)
 千沙子は、そのわだかまりの中心が黒田部長であることをみとめたくなかった。
 今日は午前中に簡単な手術が二つほどあっただけで、午後五時になれば退社の
時間になる。
 (あと二時間もすれば解放されるんだわ)
 看護婦の出入りが頻繁になり、交替時間が近づきつつある。
 千沙子は、婦長からレントゲン室への伝言をたのまれ、エレベーターで二階に
降り、用事をすませてからふたたびエレベーターに乗りこんだ。
 あとは、このままロッカーにもどって着替えをすませればいい。
 しかし、エレベーターがあいたとたん千沙子は降りるまもなく、カーキ色の作
業服のふたりの男に立ちはだかれ、飛びだしナイフを脇腹に押しつけられてしま
った。
 彼女は恐怖のさけびをあげることもできず、たちまちがっちりした手で口を塞
がれた。エレベーターはそのまま屋上へと直行していく。
 「降りるんだ。おれたちをおぼえているだろ。ノーパンの看護婦さん」
 給水タンクのかげに千沙子を連れこんだ彼らは<東西空調サービス>のワッペ
ンを麗々しく胸ポケットにつけている。
 「丸三日さがしまわったぜ。おとなしくしてれば手荒な真似はしねえ。じつは、
あんたに買ってもらいたいものがあるんだ」
 髭面で分厚い唇の佐野がいった。
 彼は、下から吹きあげる風に白衣の裾を気にしている千沙子を、舌舐めずりす
るけもののような目でみつめている。
 尖った目に変質的な光をやどす塩沢は早くも股間を突っぱらせ、怯える看護婦
の腰のあたりに淫らな視線をはしらせている。
 「この封筒の中身だがね。百万円で引きとってもらいたいんだ」
 法外な金額にも驚いたが、中味をあけてみて、
 「まあ!」
 千沙子は、血の気がサーッと引くように喘いだ。
 一目で淫猥な写真だとわかったが、よもや自分が写されていようとは。
 どうみても二十枚以上はありそうだった。
 佐野がまともに入りこんでにやりと笑っているのや、気を失ってしゃぶられて
いる情景が次々に写されている。
 男たちの精液がいやらしく光り、臀裂に塩沢が突きたてている姿もあった。
 「え、どうなんだ。おれたちを忘れちゃいないだろ」
 もう逃げはしないと思ったのか、ナイフを引っこめた塩沢は、指先でぴんと千
沙子の乳首のあたりをはじいた。
 白衣のうえからでもぴくりとする。
 彼女は刺激的な写真をみせられているうち、おそろしく淫らだと思いながらも、
いつしか、みえない肉粒がひくひくし、さざ波のように疼きはじめた。
 「ひ、ひどい」
 若い看護婦はうめき、足を組み替えた。
 たっているだけで下腹部がほてり、濡れそぼってきそうだった。
 おぞましく屈辱的な写真をみせられただけで、なぜこんなに興奮するのか自分
でもわからない。
 千沙子はこの場からにげだしたいと願ったが、塩沢と佐野がそれをゆるすわけ
はない。
 塩沢ははやくも白衣を引きちぎられて狂乱する女の姿を思い描いて、ズボンの
なかで分泌液をしたたらせはじめている。
 「百万円なんて、とてもだせないわ」
 「そのくらいはだせるだろ。あんたじゃなくても、その、代ってだしてくれる
ヤツがいるだろ」
 佐野は、狡猾そうににやりと笑った。
 「大股びらきで気前のいい看護婦さんだもの。うけとるまで、おれたちは離れ
ねえぜ。サツにたれこんでもいいが、その前にこの写真が病院じゅうにばらまか
れちまうってことを忘れるな」
 居丈高におどす佐野の尻馬にのって、塩沢が言いつのる。
 「いますぐに出せねえんなら、静かなところに行って談合しようじゃねえか」
 「そうだな、手荒な真似はしたくないから、ちょっとつきあってもらおうか」
 千沙子の手からひょいと写真をとりあげた佐野は、妙な愛想笑いを浮かべて彼
女をうながした。
 エレベーターに乗ってからも、彼女はにげだすチャンスはないかと思ったが、
いまわしい写真を撮られている以上、ネガごととりかえさなければどうしようも
ない。彼らに従うほかはなかった。
 彼らが降りたった四階は産婦人科フロアで、医局や診察室、手術室、それに出
産のための準備室、陣痛室、分娩室、回復室などの他、病棟がひしめいている。
 酸素パイプラインの点検の作業服の男たちと、白衣の看護婦が同じ廊下を歩い
ていても、だれもあやしむ者はない。
 病院のなかではみ慣れた光景だからである。
 佐野は回廊を曲った最初の右手の第三手術室のドアをそっとあけてみた。
 数時間まえまで使われていたらしく、部屋の片隅に内診台が置かれ、壁のそば
にスチールパイプの担架があり、そこからガラス製イリルガートルとゴム嚢が吊
りさげられている。
 離れたテーブルのうえには、ペリカンと呼ばれるクスコー(膣鏡)やヘーガル
鉗子、導尿用ネラトンカテーテル、子宮洗滌器、指サック、アヌス用特殊嘴管等
が清潔な光沢を放っている。
 「ちょうどいい。その内診台のうえに寝てもらおうじゃないか」
 「いやよ。どうするつもりなの」
 千沙子は激しくあらがった。
 「ちょっと診察してやるだけさ。へんな真似はしない。おれたちは、あんたの
アソコをゆっくりみたいだけなんだ。それ以上は何もしない。はっきり約束する。
さあ、下着をとって、内診台にあがれよ」
 彼らはいやがる千沙子をむりやり追いあげると、固定ベルトを両手と腹部にか
け、両足をつかんで、思いきりひろげ、支脚器のうえに乗せた。
 「あっ、痛いわ。こわいから気をつけて」
 「痛くはしない。さて、なかをよく覗くにはどれがいいかな」
 塩沢が器械皿のうえをカチャカチャかきまわすと、その音に恐怖を感じて千沙
子が叫んだ。
 「だめよ、そんなものを使わないで。いや、いや、早くおろしてちょうだい」
 「こんなのはどうだい」
 塩沢がグロテスクなジモン氏子宮鏡を目の前でちらちらさせると、千沙子は昂
ぶった声をはりあげて身悶えした。
 金属独特の冷たさが凶器のように感じられる。
 佐野が面白がって尿道洗滌器やS字導尿カテーテルをみせつけると、そのたび
に千沙子は泣き声をたてる。
 いつのまにか塩沢と佐野は、ズボンの前立てをあけ、いつでもぶちこめるよう
に居丈高な怒張をふりたてている。
 視界の一部に毒々しい突端がうつったとき、
 (あうっ、約束がちがうわ)
 千沙子は思わず絶叫したくなった。
 考えてみればただみせただけで彼らが治まるとも思えなかった。
 彼女は佐野が怪物のように静脈を浮きださせた肉筒を、あらわな太腿にぐりぐ
り押しつけてきたとき、思わず悲鳴をあげた。
 同時に、顔のうえに影がよぎったかと思うと、塩沢が彼女の顔にまたがり、ま
ともにジヤリジャリする剛毛を押しつけ頤に根もとと陰のうがあたるほど、ぐい
と喉をひきよせられた。
 「待て待て。こいつでなかをしらべてやろう」
 怒張をふりたてながら器械皿に近づいた佐野は、金属製の膣鏡をとりあげ、ペ
リカンの嘴のようにいやらしく開閉しながら、千沙子の開脚された間に入りこま
せ、羞恥で濡れてゆるゆるになった肉ひだをこじあけはじめる。
 塩沢はただのならず者だが、佐野は狡知にたけたサディストなのである。
 「みろよ。もう、こんなにべとべとになってやがる。おまえはやっぱり汁気た
っぷりな、ど淫乱だな」
 陰湿にせばめた目で狼狽する看護婦をみすえながら、佐野は膣鏡をいやらしく
操作する。
 いっぽう、筋肉質の塩沢は、肉筒をむりやり口にねじこみ、喉ちんこを突き、
千沙子の唇がはれあがってズキズキするほど抜き差ししている。
 千沙子は恥骨にあたる金属の衝撃を感じた。
 内診台に乗せられてあられもなく両股をひらかされるだけでも耐えがたい羞恥
なのに、冷たくて硬い器具で二段がまえの凹凸に富む肉の畝を突かれ、突きが激
しくなるたびに、彼女は微妙なひくつきをおぼえる。
 彼女の喉のほうまで、塩沢の怒張がめりこむたびに、息苦しさが増し、同時に
子宮が引きつれるのを感じる。
 千沙子は喉を鳴らしながら、脅迫者から逃げきれなかった不幸を悔んだ。
 「このあま、つぼのなかにも指と舌をもってやがるぜ」
 千沙子のなまめかしい喰いしめに、佐野は毒々しい笑いを洩らした。
 その声に呼応して塩沢がひと突きしたとたん、しっくりした彼女の口蓋にうち
あたり熱い噴射のひと噴きが湧きおこった。
 彼女は男たちの暴虐をとめたかったが、がっちりと拘束されて制することがで
きない。
 羞恥と憤辱の涙が目にあふれ頬を濡らしたとたん、塩沢の熱い噴出が口のなか
に流れこむのを感じた。
 千沙子は狂ったように塩沢を吸いつづけ、どろりとした白濁を喉の奥ふかくの
みこみながら、欲求不満のひくつきにむなしくのたうつ。
 塩沢が離れても佐野はわるがしこい策士のように膣鏡でなぶりつづけている。
 千沙子はついに頭をのけ反らせてかなきり声を放った。
 「ほ、ほしいわ、いますぐ………」
 千沙子は甘えているのでも手管を弄しているのでもなかった。
 彼女の身動きならぬからだはガクガクと内診台をゆさぶり、伸びきった筋肉の
痛みはたえがたいほどだったが、ねばねば光る番(つが)いの肉びらは、まるで、
残酷な神に捧げられる異教の乙女のようにさらしものにされている。
 「佐野。ほんもので突きまくってやれ」
 塩沢の思嗾(しそう)に千沙子は身ぶるいした。
 佐野にわが身を供して犯してくれとせがむのはなんという恥知らずだろう。
 しかし、ここまできてはもう引きかえせなかった。
 おどされようと脅されまいと、彼女は充血し、鋼鉄のようにたくましい怒張を
うけ入れなければならない。
 千沙子のうるんだような切なくうわずった顔をみつめながら、佐野は分厚い唇
を舐めまわした。
 「犯(や)ってもいいんだな」
 彼の目は情欲でぎらつき、とことんまで獲物を追いつめたときのかちどきをあ
げていた。
 「え、ええ」
 生き恥をかくふがいなさに、どうにでもなれという居直りを加えて、とろけう
るむルツボに火をつけられた千沙子は、啜り泣きながら応じた。
 佐野の重い体がセメント袋のようにのしかかってくると、とらわれの看護婦は
観念しきったように目を閉じた。
 ヌタリ、ぐわっと押しこまれ、千沙子は大きな声をあげた。
 あまりの太さに恐れをなしたのだ。
 だが、彼女の抵抗は一瞬のものだった。
 彼女は安堵のうめきを洩らして、全身をぶるぶるふるわせた。
 「もっとつよく。もっといじめて」
 千沙子は自分でも何をいっているのかわからなかった。
 佐野は勝ち誇ったようにひと突きひと突き丹念に楽しんでいる。
 しかし、うわべは彼女をいかせることに没頭しているかのようにみえるが、彼
は器械皿のうえに奇妙なゴム球があるのを思いだしていた。
 あれはたしかコルポイリンテルというんだったっけ。
 すると彼の最初の情婦だった多美子の顔が浮かんだ。
 多美子は準看護婦で、あのゴム球でオナニーしてみせたことがあった。
 多美子はスタイル抜群で、きれいな澄んだ目の女だったが、東北なまりがつよ
くて、無口だった。
 それがかえって佐野の性感を刺激し、数カ月ほど一緒に暮らしたことがある。
 彼女は病院から使用ずみのコルポを持ち帰って、酒に酔った佐野が用をなさな
くなると、自らベッドにあおむけになって、みるからにいやらしい形のゴム球を
柔媚なほこらに押しこんで、
 「ねえ、あんた、みてよ。みてよ」
 とひくひくふくらませて、しだいにつのる熱い芳香と果汁をあふれさせるのだ
った。
 ――佐野は、いまそのときの光景を思いだしている。



         6 わたし、いま、とても欲しいの



 佐野は螺旋状にゆすりたてながら千沙子のなまめかしい双臀をつかみ、むりに
腰をあげさせた。
 若い看護婦はすっかり観念しきっている。
 彼は横目でコルポイリンテルをにらみながら、うるみはじめた羞恥のみなもと
を思いのままにゆさぶりたてている。
 「塩沢、そのゴム球をとって、ちょっと空気でふくらませてくれ。大きめの浣
腸器をはめこんで、ポンプで押すんだ。あまりふくらませるな、楽しみがすくな
くなるから」
 筋肉質の塩沢は、看護婦の口のなかに思いきり精液をぶちまけて、いったんは
ズボンのファスナーを引きあげたものの、みなぎる若さで、また、もよおしはじ
めている。
 彼は、内診台の頭部にまわり、嗤いながら、浣腸器の嘴管をさしこんだゴム球
の管で、千沙子の頬をくたくたとなぶった。
 「あっ、だめ。どうする気なの。こわいから、やめて」
 千沙子は、うろたえきって、昂ぶった声をはりあげる。
 「こいつはおもしれえ。どんどんふくらんでくるぜ」
 「ふざけるのはやめて、そのくらいにしておけ。入らなくなっちまうからな。
さあ、こっちによこせ」
 ひと突き、ひと突き、楽しんでいた佐野は、思いきりよく引くと、すばやくコ
ルポを鉗子にはさんで右手に持ち替え、もういっぽうの手を天鵞絨(ビロード)
のようになめらかな彼女の内腿に這わせ、両足のつけ根のねっとりと濡れそぼっ
たあたりに近づけた。
 指先が、剃りあとから生えだした繊毛をかすめて悩ましいとば口をさぐりあて
ると、ふいにとろりとする感触があった。
 「あ、だめ、いたずらはいや」
 支脚器をゆすって、千沙子は身もだえするが、佐野は、いじわるく鉗子ごとコ
ルポを押しこんでゆく。
 すこし厚めのゴム風船のふくらみをじかに感じると、反射的に彼女はなめらか
な挑みをくりかえして、ヌメヌメと押しもどそうとする。
 かまわずに佐野は、浣腸器のポンプを押しつづけた。
 みるみる内部でふくらむゴム球の張力は、痛いようなかゆいような戦慄を引き
起こす。
 「あふっ。おかしくなる。やめて。はやくとってちょうだい」
 千沙子は、恐れとおぞましい興奮のあまり、引きつった声をはりあげる。
 「よく言うよ。おまえたち看護婦は、これが好きじゃないってのか。手伝って
やるからゆっくり楽しむんだな」
 佐野のあざけりも、たくみなポンプの操作に、しだいに声をうわずらせる彼女
はほとんど聞こえない。
 「あううっ………」
 千沙子はまたうめいた。
 なにが起こっているのかわからないが、押しひろげられたり、ゆるめられたり
する間隔が全域におよび、彼女が食いしめるたびに、高潮のように波が湧きたっ
た。
 塩沢が手をこまねているはずはない。
 彼は、千沙子の白衣をはだけて、胸のふくらみをつかみだそうとしたが、ボタ
ンをはずさなければならぬと悟ると、ポケットからナイフをとりだしてまえあて
のボタンを切りとった。
 それからオフホワイトのブラジャーのストラップを切りほどくと、みごとには
りつめた乳房がとびだした。
 「こいつはすげえ、なんて乳首をしてるんだ」
 塩沢は彼女のふるえる乳首にすばやく舌を突きたて舐めまわし、天鵞絨のよう
になめらかな隆起に頬ずりする。
 その間も、佐野はゴム球で溶けきった肉びらのあわいをこねくりまわし、つぎ
つぎに粘りのある蜜を噴きださせている。
 「おまえがこんなに具合がよさそうだったとはこの間は思わなかったぜ。あと
でたっぷり味わってやるからな」
 佐野は自分の行為がよくみえるように身をひくと、鉗子を使って、とめどもな
くうるみだしている羞恥のみぞをぐいっと押しひろげる。
 「むう」
 千沙子は喘ぎ、唇を噛みしめた。
 塩沢がべとべとの舌でべつの乳首に吸いつくと、彼女は激しい汚辱感で、うっ
とり背を反りかえらせる。
 「おねがい。もっとやさしく吸って」
 なまあたたかな塩沢の唾液が、乳暈にしたたりおちてくると、千沙子はすすん
で乳首をあらゆる方向に動かした。
 ザラザラした舌で突かれるたびに、彼女は、
 「あうっ、いやいや」
 と困惑した快感の入り交じるうめきをたてた。
 佐野は、看護婦が息もたえだえに喘ぎながら淫らな快楽に引きこまれつつある
のをみぬいていた。
 気をそそられて、佐野のポンプを押す手に力がこもる。
 目盛りがじりっじりっとあがる。
 「ううううっ、きついわ。どうして」
 千沙子の背は大きく反りかえり、なめらかな太腿が、鉗子をにぎる佐野の手を
しめつける。
 内腿がひくひく痙攣しはじめている。
 「おかしくなりそう。もうがまんできないわ。おねがい、なんとかしてっ」
 千沙子はふいに口ばしった。
 じらされためしべは花のつぼみのようにふくらみ、いまにも爆(は)ぜそうに
なっている。
 「はっきり言えよ。どうしてもらいたいんだ。おれたちは鈍いんでな」
 佐野はにやりと塩沢に笑いかけた。
 乳首を執拗に舐めまわしていた塩沢の舌は、唾液の糸を引きながら、いまは栗
色の腋毛をピチャピチャ弄んでいる。
 「ああ、気分がおかしくなりそう」
 佐野は、彼女がわけのわからぬうめきを発しはじめるのを聞き、にわかに欲情
が湧き起こるのを感じた。
 これ以上ながく持ちそうもなかった。彼は、足で塩沢を軽く蹴って少し離れる
ように目顔で合図した。
 佐野がゆっくり鉗子ごとコルポを引きぬくと、真珠色の濡れたかがやきが、ゴ
ム球の全面をおおっているのが目についた。
 「あああーっ」
 野太くふくれあがった亀頭冠でつらぬかれると、千沙子は安堵と快感のかなき
り声をあげた。
 辛うじて吸いこむようにひきしぼってこらえているのに、奥ふかく突きたてら
れてはたまらない。
 彼女がとめどもなくうけ身になるのを知ると、佐野は猛然と攻めはじめる。
 彼は激しく脈打ち、ふれあうたびに千沙子の両脚がぎゅッとしめつけてくる。
 引きぬくたびに、熱い上げ潮がかかり、満遍なくしめつけられ獣脂のようにつ
るつるしてくる。
 「いい、いい。もっとつよくしてっ」
 激しく呼応する千沙子を仕留めるべく、佐野は最後の助走に入った。
 スチール製の内診台の黒いシートのうえで、若い看護婦は背を弓のように反り
かえらせている。
 「あうっ、もうだめ。い、いきそう」
 千沙子はふいにするどい悲鳴をあげた。
 「いくわ。あああっ」
 彼女の下腹部がひくつき、悩ましい熱気が放射状にあふれてくるのがわかった。
 同時に激しい収縮が、みえない肉ひだぜんたいを打ちたたく。
 「おおっ。いいぞ。蕩けちまいそうだ」
 思いきりのけ反ると、佐野は加速度的に突きたてダイナマイトのように爆ぜた。
 「いいわあ。いい気持ちよ。もっとちょうだい」
 だが、甘美な余韻を楽しもうとする千沙子の心に、冷水を浴びせるようにひび
いたのは塩沢の声だった。
 「女なんてだらしのないものだな。身持ちのいい看護婦さんよ。おおっぴらに
よがり泣きをして恥ずかしくねえのか」
 「まあいいさ、塩沢。話はまだ終わっちゃいねえ。おまえにも、あとでおすそ
わけしてやる」
 かたちのいい額にうっすり汗を浮かべ、かすかに息をはずませている千沙子を
しりめに佐野はふてぶてしく嗤った。
 「そうだとも。おい、百万円を帳消しにしたわけじゃないぜ。おれたちは狙っ
たえものは逃がさねえって主義だからな」
 ふたたび千沙子の胸のなかを暗い雲がおおいはじめる。
 彼女は、むざむざならず者たちの毒牙にかかったことを恥じたが、金策のあて
はまったくなかった。
 「そんな大金、とても都合できないわ」
 彼女はしだいに顔が引きつってくるのをおぼえ、深い慚愧の念で、思わず固定
ベルトをはげしくゆすった。
 「あんたたちはけだものよ。よわい女をこんな目にあわせるなんて」
 「いつもこんなふうに吸われるのが好きなくせに。みろよ、こんなしる気たっ
ぷりで、ベトベトになってるぜ」
 佐野がちょいと突くと、千沙子は狼狽しきって昂ぶった声をあげる。
 「佐野、こんな格好じゃ、話し合いもできねえ。おろしてやろうじゃないか」
 塩沢の提案に、佐野は、分厚い唇をゆがめてうなずいた。
 固定ベルトを解かれて抱えおろされた千沙子は、腰から下のけだるさをたえて
辛うじて立ちすくんだが、ピンでとめたキャップがかしいでいるのに気づいて、
うろたえ気味に手を頭にやった。
 「あんたが払えねえってのなら、いつもたよりにしてるパトロンてやつにだし
てもらったらどうだ」
 「パトロンなんていないわ」
 千沙子の脳裏にかつての恋人、一也のおもかげが浮かんだが、未練を断ち切る
ように首を横にふった。
 「パトロンじゃなくても、相談する相手ぐらいいるだろ。たとえば上司とか、
婦長さんとか………」
 若い看護婦の脳裏に西山婦長の顔がちらついたが、とてもこんな恥ずかしい相
談に乗ってくれるような女性ではないと思う。
 同僚の博子、美幸、洋子、だれひとりとして彼女のピンチを救ってくれそうも
ない。
 千沙子はあおざめた表情で、再度、首を横にふった。
 「ちえっ、話のわかるやつはいねえのか。たとえば病院長とか。なんなら、直
接、この写真を送りつけてやってもいいんだぜ」
 そんなことされたら、それこそたいへんである。
 進退きわまった千沙子は必死にこのピンチを救ってくれそうな相手を思い浮か
べようとした。
 一人だけいた。
 もともと彼女がこうした災難にみまわれるきっかけを作ったのは、冷徹で偏執
的な黒田形成外科部長なのだ。
 「どうやら思いだしたらしいな。さあ、ここに呼びだしてもらおうか」
 佐野が顎をしゃくって、部屋の片隅の電話をさした。
 「そんなことできないわ。いますぐといっても」
 「いや、すぐだ。おれたちは急ぐんでね。病院じゅうに写真をばらまかれるの
がいやなら、言うとおりにするんだ」
 千沙子の思いはめまぐるしくとびまわった。
 ひょっとしたら、あのずるがしこい黒田がうまくやってくれるかもしれない。
 わたしを手もなく毒牙にかけ、平然と玩弄しつづけるほどの男だもの。尊大で、
威圧的な男には、それなりの狡知が働くかもしれない。
 目には目を、の譬が千沙子を元気づけた。
 「ひとりだけいるわ。でも、その人がここにくるとは思えない」
 「男だろ。金策をたのんだら、だれがこんなところにのこのこやってくるもの
か。いいか。甘い声で呼びだすんだ」
 佐野はひとすじの可能性を逃すまいと、飛びだしナイフをとりだし、シャッと
威嚇するように刃先を突きつけた。
 塩沢は彼女の首を押さえてむりやり電話のそばに連れてゆき、佐野もナイフの
腹をなぶりながら近づいてゆく。
 千沙子はあきらめたように、黒田部長のいる形成外科室の直通ダイヤルをまわ
しはじめた。
 「もしもし。どなた………」
 電話の声は意外に近かった。
 黒田だった。
 彼の声は不審げだったが、千沙子だと気づくと、たちまち情欲の入り混じった
低いしわがれ声にかわった。
 「森高くんかね。どこにいる。どうしたんだ」
 「わたし、いま、とても欲しいの」
 蕩けるような感覚に引きずりこもうとする口調だった。
 黒田は思わず生唾をのみこんだ。こんな思いは耐えて久しくない。
 彼は、ふと十数年まえ、千葉の公立病院で嘱託(しょくたく)医だったころの
記憶を思いだした。
 当時、新妻の美奈子は初々しく官能的で、よく病院に電話がかかってきたもの
だ。
 彼の帰りを待つ美奈子の口ぐせは、
 「いま、とても欲しいの」
 だった。
 ああ、美奈子。
 「わかった。どこにいるのか、教えてくれ」
 千沙子は白衣の脇ばらを佐野のナイフでチクチク突かれながら、しどろもどろ
に、それでもせいいっぱいなまめかしい声で居場所をしめした。
 「四階の産婦人科フロアの第三手術室だね。おどろいたな、きみには。ほんと
にその部屋はからっぽなのか」
 黒田は、くどく念を押した。
 「ええ、そう、でも先生、声が変みたい、気分がすぐれないの」
 「いや。そんなことはない。いますぐ行くからな」
 黒田は浮き浮きした気分になった。
 夕刻のひとときの情事は、けっこうなレクリエーションになりそうである。
 彼は受話器をおくと、千沙子の恍惚のやわひだ、繊細な構造がしどけなくくず
れおれ、たえ得ぬごとく屈服してゆくさまを思いめぐらせて、自然に股間が勃(
お)えたってくるのを感じた。
 黒田が四階の回廊を曲って、最初の右の部屋のドアを低くノックしたのは、そ
れから十分たらずのことだが、とらわれの看護婦にとっては、一時間とも二時間
とも思えるほどの待ち遠しさだった。
 それは佐野や塩沢にとっても同じことで、いわば賭けみたいなものだったから
である。
 この間、ショーツをぬがされたままの千沙子は、ずっと怯えつづけだった。
 「え、どうなんだ。ここにやってくるやつは、おまえの色男なんだろ。そいつ
にもこのおっぱいをしゃぶらせたんだろ。パトロンだな」
 好奇心のつよい塩沢は、人さし指で固くはりつめた千沙子の乳首をグリグリ揉
みたてる。
 「そ、そんなんじゃないわ」
 「へ、おかしいじゃないか。パトロンじゃなければ、相思相愛の仲だってのか」
 (ちがう、あたたたちと同じように、その男もわたしを脅迫して、むりにから
だを奪ったのよ)
 彼女が無言の行をつづけるので、業をにやした塩沢は、
 「はっきり言え。おれは絶対、おまえたちの関係をたしかめてやるからな。こ
こにある器具を使ってでも白状させてやる」
 彼は、器械皿のうえのヘーガル鉗子や、アヌス用特殊嘴管をカチャカチャいわ
せて、いまにも千沙子を羞恥責めにする気配をみせた。
 「ああっ、やめて、そんなもの使わないで」
 彼女は、思わず昂ぶった声になり、身もだえする。
 「待てよ。塩沢。おまえのようにせっかちじゃ話にもならねえ。こいつらの関
係がわかれば、新しい金づるになるかもしれねえんだぜ」
 「それもそうだな」
 塩沢は合点がいったように応じた。
 「さあ、しゃべってもらおうか。ここにやってくるのは、おまえの何なんだ。
まさか、ただの上司じゃないよな。まだ明るいうちから、『わたし、いまとても
欲しいのよ』、なんて甘ったれやがって、病院のなかで、いつもつるんでやがる
んだろ」
 「もっとやさしく聞かなきゃだめだ。この女だって、好きでやらしてるわけじ
ゃないだろ。きっと深い事情があるにちがいない。それを聞かせてもらおうじゃ
ないか」
 千沙子は一言も話すまいと思ったが、佐野のたくみな誘導と、塩沢の執拗な脅
しで、ついに、
 「わかったは。あの人は………」
 こうして、黒田との関係をあらかた吐かされ、いまはもう逆らう気力もなく、
床にべったり座りこんで、ときどき嗚咽を洩らすばかりだった。
 低いノックの音に、佐野と塩沢はさっと緊張した。
 ドアの両側のかげで、それぞれナイフを擬したふたりは、目顔で千沙子にあけ
るように合図した。
 内鍵がはずされ白衣の黒田が入ってくると、たちまち塩沢が羽交じめにして、
喉もとにナイフの切先を突きつけた。
 佐野もナイフで胸を突ついた。
 形成外科の尊大なボスは、持ち前の負けん気でふたりを一喝した。
 「きみたちは何者だ。だれの許可をうけてこんなところに入りこんでる。人を
呼んですぐにつまみだしてやる」
 「さあ、それはどうかな。黒田先生」
 佐野はこばかにしたようにうそぶく。
 黒田は一瞬のうちにこの場の雰囲気を読みとった。
 「千沙子、きみは」
 「いいえ、わたしじゃないわ。むりにおどされたのよ」
 「きみたちは、彼女に何をしたんだ」
 がっしりした体格の黒田は、一歩もひくまいと思って、荒々しく叱りつけた。
 「みればわかるだろ。あんたのかわいこちゃんをちょっと楽しませてもらった
のさ。それに、こんな写真を買いとってもらおうと思って、ここに呼んだんだ」
 テーブルのうえにばらまかれた写真は、いずれも千沙子の痴態を生々しく撮っ
た淫猥きわまりないものばかりだった。
 「これがわしとどういう関係があるんだ」
 「しらばっくれるなよ。いいか。あんたも同じ穴のムジナってわけ。百万円の
肩がわりを断れば、この女とあんたとのことを、病院じゅうに洗いざらい触(ふ)
れまわっちまうぜ」
 法外な金額にも驚いたが、どうやら行きずりのならず者らしい。
 こういう連中は短兵急に何をしでかすかわかったものじゃない。ここはひとま
ず穏便に運ぶのが最良だろう。
 黒田は、冷たい目をじろりと光らせて、意識的なポーズをとりながら、
 「わかった。話し合おうじゃないか。それにしても百万円は高い。せめて、半
分で手を打たんか」
 「さすが大病院の部長さんはものわかりがいい。なんなら言い値でのんでやっ
てもいい。ただし、一つ条件がある」
 どうなることかと心配そうに見守っていた千沙子は、黒田と佐野のやりとりを
聞きながら状況が好転しつつあるような気がして、ほっとした。
 何としても、このいまわしい写真をネガごと取りかえさなくては。
 「なんだね。その条件というのは」
 黒田の声もおだやかになってきた。
 半分の金額ならなんとかなりそうだった。
 こうして恩を売っておけば、千沙子が離れていくこともないだろう。
 「おれたちはムショ暮しがながかったもんで、他人の覗きを楽しんだことがな
いんでね」
 「それならストリップ劇場か、覗き部屋にでも行けばいいじゃないか」
 「おれは、あんたたちのを見たいんだ。なあ、塩沢」
 佐野は、光った目に変質的な急をやどしながら、狡猾そうに仲間をかえりみた。
 「そうとも、格安でひきとらせてやるんだ。それくらいのサービスしてもらわ
なくちゃあ」
 度しがたい激怒がこみあげてきたが、黒田はあくまでそ知らぬ顔でやりすごす
べく、
 「こんな場所ではその気になれんよ」
 と、苦笑でまぎらそうとする。
 「あんたはいつでもその気になってるさ」
 佐野は執拗に言いつのった。
 千沙子は奇妙な疼きに身ぶるいした。黒田のそそり勃(だ)つ肉筒がみりみり
押しいってくるさまを想像して、ふたたび羞恥の肉の畝がくるみはじめている。
 黒田信孝は、口をへの字に結んで、気むずかしげな表情になった。
 どうしても思いだしたくない情景がとつぜんよみがえってきたからだ。
 ああ、かわいそうな美奈子。
 彼はいつも胸もとを切なそうに喘がせた今は亡き妻を思いだし、きらめく快楽
の色や無垢のかがやきで育まれた天使のような表情が、一瞬のうちに、貪欲な毛
虫にむしばまれた秋海棠にかわるのをみたように思った。
 「いやならいいんだ。そのかわり、あんたたち、生きてこの部屋からでていけ
ると思うな」
 佐野のいらだちはもっともだった。
 看護婦たちの交替時間にはあと一時間ほどあるが、その時刻をすぎれば、この
部屋をみまわりにくるのは目にみえている。
 そのまえに何とかしなくてはというあせりが、つい語気を荒くさせるのだ。


 黒田はこうした情景が、美奈子の死とある一点で重なり合うのを思いだしてい
た。
 大輪の蘭のように眠る美奈子の寝乱れ姿をみて、危険を承知で闖入した不良少
年たちがロープで彼女を縛りあげて床にころがしたのは、彼が嘱託医の生活から
解放されて、久しぶりに家路をたどる最中だった。
 全裸にされなかったのは、それで手間どると暴れると思ったからだろう。どう
せ薄いネグリジェだったから官能的な優雅さは透けてみえる。
 若妻の美奈子は、たかだかと双臀をかかげられ、不良少年たちにがっしり押さ
えこまれた。
 ひとりが革手袋をしたままの指先を、ぐりぐりとよじれた肉びらのはざまにね
じこんできて荒々しく左右にゆさぶりたてる。
 「うぐぐぐ………。ああ、やめて」
 彼女は、べつのひとりに髪の毛をつかまれ、ごつんごつんと床に額を打ちつけ
られ、ほとんど無抵抗になった。
 美奈子がもはや抗う気力をなくしたとみるや、彼らは快哉を叫びながら三人が
かりでベッドのうえにかつぎあげた。
 「ロープをといて、ゆっくり楽しもうぜ」
 ひとりがにやりと笑う。
 「待てよ。気絶しちゃったんじゃないか」
 「そんなことはない。ほら、このとおり食いしめたままだぜ」
 革手袋の少年がほくそえむ。
 ふいに少年の指が引きぬかれ、ずほっと湿った音がした。
 美奈子の肌に戦慄が走り、低く呻いた。
 なすすべもなく彼女はじっと横たわり、ロープを解かれるのを待つのみだった。
 あっという間に、若妻は、あおむけにされ、革手袋をはずした少年がはじめに
のしかかり、理不尽なほこ先が羞恥のはざまを執拗にさぐりあて、つと押し入る
のが感じられた。
 「しっかり押さえつけてろよ、武正。おれが突きまくるからな」
 彼は怯えきった美奈子の両肩をつかんだ。
 「あうっ、いやっ………」
 武正がまたもや彼女の髪の毛をわしづかみにして、グイとねじ曲げる。
 汗のしたたる顔がにやりと彼女をみおろした。
 三人目の少年は少し離れて、この情景をじっとみつめている。
 「さあ昭一が突きはじめるぞ。早く一発かませろ。そのあとはおれの番だ」
 美奈子の捲き毛を引き据えながら、がっしりした体格の武正が荒い息づかいを
してる。
 彼女はむりやりねじこまれるのを感じ、必死で閉じ合わせようとするが、昭一
の力にはかなわなかった。
 美しい若妻は、また長く低く呻きをあげ、下肢をふるわせた。
 屈辱と恐怖でみえない蜜層をひくつかせながら、彼女はコンクリートの塊の感
覚が、じりじりと押し入るのを感じていた。
 「あううっ………ああ、うううう………」
 上から昭一がまともに突きたてると、彼女はますますかんだかく叫び、その声
は四囲の壁に反響したが、だれも聞きつける者はいない。
 「きついぞ、この女。うぐぐ。ものすごくきついぜ」
 昭一は、一回、一回、的確に出し入れしながら、いけにえの若妻に、両股をゆ
るめるように言いつづける。
 「昭一、もっと左右にゆさぶりたててみろ」
 武正がそそのかした。
 美奈子が、またもや悲鳴を放った。
 ジーンズのファスナーをあけてつかみだした武正が、強引にしゃぶらせるのを
避けるため、首をねじまげようとして、髪の毛の痛みを感じたからだ。
 「うぐぐっ。やめて。ね、たすけてちょうだい。ほんとに気分がわるいの」
 昭一はやめる気はなかった。
 彼はやっとゆるむ甘美な感覚を味わいはじめたばかりで、生温かな柔媚な粘膜
に咥えこまれる快感を楽しもうとしている。
 「すこし濡れてきたみたいだぞ」
 彼はひとりごちて数秒ほど動きをとめ、大きく息を吸いこんだ。
 「おまえがすんだら、おれの出番だ」
 武正はギラギラする目で、人妻の白い裸身をねめまわす。
 昭一は、蜜柑のやわらかな袋のようにひくひくと押しつつむ感覚に気をよくし、
なまめかしい双臀を撫でまわした。
 「はやくすませて。なかがひりひりして、とても痛いわ」
 美奈子は啜り泣きはじめた。
 「ひりひりするって、どこがだい」
 昭一はいきりたってますます奥ふかく突きたて、彼女はできるだけ腰を浮かせ
て、わずかに抵抗した。
 これが深い侵入を困難にする唯一の方法だと思ったからだ。
 「え、どこがひりひりするか、はっきり言ってみろ」
 業をにやした昭一はいきなりどなりつけ、彼女の臀部を何度も殴りつけた。
 白い皮膚が赤まだらになって、ついに長く赤いひとすじが糸を引いた。
 「いたい。言うからやめて」
 美奈子は凄まじ打擲(ちょうちゃく)にたえきれず、啜り泣いた。
 彼はなおも打ちつづける。
 そのうちに痛みの感覚はほてるように変わり、羞恥の深みや臀裂にまでひろが
ってゆく。
 奇妙なことだが、美しい女は打たれることに快感の疼きをおぼえ、すすんで双
臀をもたげはじめた。
 「さあ、言え、どこがひりひりするんだ」
 せきたてられ、美奈子はついに卑語を口ばしり、ついで号泣しはじめた。
 なんて恥ずかしい、夫の黒田にすら発したことのない言葉を、こんな見も知ら
ずの非行少年たちに言わされるなんて………。
 瞬間的に、若い人妻はみえない筋肉がゆるむのを感じた。
 とろりとうるむ感覚がつづく。
 昭一はこのときとばかり突き入れ、毒々しい鰓くびをザクリザクリとぬき差し
する。
 美しい捲き毛の女は官能的な唇をあけ、なやましい息づかいをしながら叫ぶこ
ともできず、無慈悲な少年の下でのたうちまわっている。
 「こんなきついしろものに、はじめておめにかかったぜ」
 少年のようなつぶらな目をした人妻は、きちがいじみた昭一が一刻もはやく果
てるように努めて呼応した。
 勝ち誇ったように昭一がぶちまけて、女のからだから離れるやいなや、こんど
は何の前ぶれもなく、武正が彼女を組み敷いて魚雷のように打ちこんだ。
 ふたたび美奈子の顔は紅潮しはじめ、息を喘がせる。
 一気に奥ふかくうずめこみ、武正はそのまま華奢な女の腰をかかえあげ、ぐる
ぐると円を描いた。
 まるで大きなスプーンで彼女のなかをかきまわしているようだった。
 美奈子はうるみきった蜜層がふたたびはりつめ、ひたひたとからみつくのを感
じた。
 「そう、その調子だぜ」
 武正はゆっくり調子をつけて突きはじめる。
 突いてはぬき、ぬいては突いて、彼は腰をひねって攻めつづける。
 美奈子は心ならずも自分が応じつつあるのを感じた。
 彼女は腰で反対方向に円をえがき、羞恥のはざまへの摩擦を増大させた。
 「あううう。あああ」
 自分を犯す男に対して美奈子は阻むすべはなかった。
 美奈子は目を閉じてできるだけ現実から遠ざかろうとした。
 「いいぞ、むちむちしたおっぱいだ」
 武正がいやらしくささやきかける。
 彼女は両わき腹に沿って撫でおろされるのを感じ、おぞましさのあまり啜り泣
く。
 ことさらにやさしく愛撫し、自分が彼女を完全に支配している事実を思い知ら
そうとしているのがたまらない。
 「すっかり熱くなっているのに、この女、やせ我慢してるぞ」
 彼は指先をむっちりした乳首に這いあがらせ、ゆたかなふくらみを揉みしだい
た。
 「いつまでもじっとしてはいられないさ。いまにしがみつかせてやる」
 武正はふいに彼女の乳首をひねり、相手が傷ついた仔犬のような悲鳴をあげる
まで激しくつねりあげた。
 同時に陰のうをなまめかしい蟻の戸わたりに打ちつけ、猛然とゆさぶりたてる。
 「あああっ。もうだめ。ゆるしてちょうだい」
 美奈子は泣きじゃくり、体じゅうの汗が腰に伝いおちるのを感じた。
 「やっちまえ、突きまくってやれ、そう、その調子………」
 三人目の少年が淫らなピストン運動に気をそそられて、ジーンズのファスナー
を引きおろして怒張をつかみだした。
 「この女、興奮してるぞ。おまえの根もとがぬるぬるになってる」
 言いおわらぬうちに、彼は目前の光景に刺激されてひくひくする自分の鰓くび
をしごきだした。
 武正の両手が彼女の双臀をちょっと持ちあげて、毒々しい亀頭冠が荒々しくえ
ぐりたてたとき、美奈子はひそかにおぞましい喜びを感じた。
 「ああああ。いい、いい。もう、だめっ」
 「そうそう、奥さん、その調子………」
 突かれ突かれて、また突かれ、その間隔がしだいに縮まってくる。
 美奈子は最初の大きな絶頂が迫るのを感じて、息をつまらせながら泣きじゃく
る。
 そのときだった。帰宅した黒田が寝室の入口で棒立ちになったのは――。
 おぞましく突き立てられてまるごと含まされ、甘美な屈服の前ぶれの泣き声を
あげはじめる美奈子………。
 ――身の毛のよだつ記憶であるにもかかわらず、異様な昂ぶりに憑かれて黒田
の血はにえたぎっている。
 トランクスにかくされた亀頭からは少しずつぬらつきがにじみだしているが、
こんな小僧っ子たちのまえで見世物にされるのはなんとしても癪だった。


 「大病院の部長さんなら、いいかげん、思いきりよく協力したらどうだ。痛い
目にあわぬうちに、おっぱじめたほうがいいぜ。それとも、あんた、どでかいや
つを伊達(だて)にぶらげてるのか」
 佐野の挑発に堪忍袋の緒を切らせた黒田が躍りかかろうとすると、一瞬速く佐
野の飛びだしナイフが機先を制した。
 「ものわかりのわるい先生だぜ。塩沢、ちったあ目がさめるように、二、三発、
正気づけてやりな」
 とつぜん塩沢が跳びかかって黒田を床に叩きつけ、顔や胸を猛烈に殴りつけは
じめた。
 引きしまった風貌の形成外科部長は、がっしりした体格ながら四十代後半だか
ら、とうてい若いならず者の敵ではない。
 たちまち、黒田は、ぼろきれのようにくずれおれて床にうずくまった。
 塩沢はなおもゴツンゴツンと頭を打ちつけている。
 「もうやめとけ、塩沢。おれたちは殺(バラ)しにきたんじゃねえぜ。なあ、
わかっただろ、先生。いつまでも強情張ってると、あんたのどでかいものをえぐ
りとってやるぜ」
 佐野はせせら笑った。
 塩沢がナイフをちらつかせたので、千沙子は血の気を失った顔で必死に泣きつ
いた。
 「やるわ。あなたたちにみせればいいんでしょ。だから、もう、ひどいことし
ないで」
 「おまえは承知でも、そっちの先生はどうなんだ。塩沢、面倒くせえから、ト
ランクスを引き裂いちまえ」
 黒田は承諾のしるしにうなずいたが、肩で息をしている。
 ハンサムで、自信たっぷりな男が、こんなあわれな姿を千沙子にみせるのはは
じめてだった。
 あちこち蹴られてあざだらけだったが、無念そうに怒りを抑えている表情は、
なぜかあわれっぽく感じられる。
 「なんだ、うらめしそうなつらをして。とても、すぐにその気にはなれないら
しいな。どうだい、塩沢。この先生に白衣の天使のひとさえずりをご披露してや
らねえか」
 「おれもいま、そう思ってたところさ」
 塩沢に床のまんなかに引きすえられて、本格的に千沙子はもがきだしたが、相
手が彼女の手首を腰のくびれた部分にねじあげたので抗うことができない。
 「ちょっと待て、塩沢。この先生にもゆっくり椅子で見物させてやりたいから、
作業バッグからコードを出してくれ」
 塩沢は電源接続用のコードをとりだすと、ペンチでソケット部分を切りすて、
まだふらふらする黒田を腰かけさせてから、椅子ごとコードでぐるぐる縛りあげ
る。
 その間佐野はずっとナイフをちらつかせていたが、もう抵抗できないとみさだ
めてから、ようやくポケットにしまいこんだ。
 「さあ、ど淫乱の看護婦さん、いとしの先生のまえでご開帳といこうぜ」
 千沙子の心境は複雑だった。
 むりじいの情婦にされているが、黒田はほんとうの意味では恋人ではない。
 それどころか、憎むべき変質者、彼女を堕落させる陵辱の張本人なのである。
 「おまえがまるだしでボイラー室なんかにしゃがんでなけりゃ、こんな目にあ
わずにすんだのさ」
 黒田によくみえるように、塩沢は慣れた手つきで、毒々しい亀頭冠をむりやり
優雅な口に押しこもうとするが、千沙子はきゅっと口をむすんでまともに入れさ
せない。
 そのじつ、千沙子は複数の男たちにみられているという意識で妙に心が昂ぶり、
いつしかねっとりした粘りをあふれださせている。
 塩沢がグリグリと魅力的な唇をこすりたてるたびに、千沙子の体温は燃えるよ
うに熱くなってゆく。
 佐野がそろそろ近づいてきて、彼女の内腿に触れようとしている。
 「おい、いまにあんたにもサービスさせてやるからな」
 若い看護婦がままにならぬのに業をにやした塩沢は、あきらめたように立ちあ
がり、シャッとナイフの刃先をだし、何とかコードをゆるめようと必死な黒田の
足もとすれすれに、グサリと投げつけた。
 床に突きささる切先をみつめ、黒田は、
 「彼らは本気だぞ。へたな抵抗はするんじゃない」
 と、千沙子を諭した。
 佐野は、千沙子をうむを言わさず突きたおし、蜂蜜色のつけ根を高々と掲げさ
せる。
 ぬらぬらする肉びらを人さし指でこじあけ、裏がわのあたりまでくまなくいじ
りまわし、悩ましい突起を撫であげる。
 「あうっ、そこはだめ」
 佐野の指先は、淫らにうるむつぼみに一瞬の戦慄をおくりこむ。
 千沙子が助けをもとめて、黒田のほうをみると、椅子に縛られたまま、ズボン
の前をつっぱらせている。
 千沙子は、佐野の指先がぬるりとする熱いものをからめとりながら、Gスポッ
トをさぐりあてたのを感じた。名状しがたい感覚に、ヒクヒクと引きつれる。軽
く突かれると、たまらずにのけぞった。
 佐野は、すばやく臀裂に中指を近づけ、無造作にズブリと突っこむ。
 頭のなかに光がとびちり、若い看護婦は甘い苦痛のうめきをあげたが、それは
ただ、黒田の情欲と興奮をかきたてたにすぎなかった。
 ふしくれだった指で小刻みにこねくりまわしていた佐野が、くすり指を重ねて
えぐりたてると、いつしか箍(たが)がゆるみはじめ、かすかな熱気と湿潤の気
配から、彼女がもの狂わしい衝動にとらわれているのがわかる。
 「ああ、こんなことされるなんて。わたし、つらいわ」
 彼女にとってこの痛覚のおぞましさは、いつかのこぶつきのスカーフの場合と
似ている。
 なまめかしい食いしめを指先に感じて、佐野は根もとを怪物のようにそそりた
てている。
 「佐野、なにか匂ってくるぞ。この女、けつの奥から洩らしてるんじゃないか」
 手持ちぶさたな塩沢は、わざとらしく鼻を押さえてみる。
 「よせ、これ以上、彼女を辱めるな」
 黒田は欲望で狂いそうになり、思わずわめきたてた。
 かぐわしく、みずみずしい部分に蛭のような佐野の舌が吸いつくのを見ると、
居てもたってもいられない。
 その様子をしりめに、佐野はどうしても徹底的にやってやるぞ、と決心した。
 塩沢に首根っこを押さえられて、つぎに黒田が目にしたのは、千沙子と佐野が
頭と足を互いちがいに床のうえでのた打っている情景だった。
 「ねえ。まだなの。わたし、口と舌が疲れちゃったわ」
 愛をねだるときのようななまめかしい音声が、黒田の視線を釘づけにする。
 彼の顔は妬ましさと怒りであおじろく変わっている。
 「ゆっくり楽しもうぜ」
 佐野は、沸きたつ感覚と押しとどめるよう横柄に答える。
 すっぽりと千沙子は咥えこみ、佐野は感じやすい亀頭冠に湿った唇の熱気をお
ぼえた。
 官能的な舌先が、ゆっくり同心円を描きはじめる。
 なまめかしい肉粒がピクリと引きつれ、千沙子はぐっと腰をせりあげる。
 千沙子は相手の塩からさを味わい、ますます熱心に舌を動かしているようにみ
える。
 佐野は腰にいっそう力をみなぎらせ、ぐいぐいと千沙子の顔にめりこませてい
る。
 「う、ううう………」
 生温かくぴりりとした苦味が、佐野の舌にじんわりとひろがる。
 彼女もまた口いっぱいにほおばったまま、悩ましげに鼻孔をひろげて、最後の
追いこみにかかっている。
 ふいに佐野が真顔になり、どばっとほとばしらせた。
 おびただしい熱液が口いっぱいにとびちったのをおぼえたとき、千沙子は呻き
声をあげた。
 痺れるような充足のひとときが過ぎたとき、千沙子は新たな試練にさらされる
ことになった。
 さっきからじりじりしていた塩沢が、ズボンから居丈高なものをつかみだし、
呆けたようなうつろな表情を浮かべる彼女の頭部にまわり、やにわに両膝をひろ
げてまたがった。
 ぐっと腰を沈めると、若い看護婦は、触れるのを恐れるかのように口を閉じて
避けつづける。
 ままならぬとみるや、塩沢はむりに含ませようとして、かたちのいい鼻の穴の
あたりに執拗にこすりつける。
 芋虫のような塩沢の指で唇をこじあけられると、息をつまらせた千沙子は、
 「もう、くたくたよ。すこし、やすませて………」
 と切なく哀願する。
 しかし、塩沢は容赦しなかった。
 美しい看護婦が苦しめば苦しむほど、彼の情欲はもりあがってくる。
 「くそっ、顔に似合わぬズベ公のくせに、なにをいまさら………」
 塩沢が罵り、卑猥な言葉をささやくと、観念したように千沙子は唇をひらき、
饐(す)えた異臭の漂う根もとのあたりまでヌルリと入りこませる。
 彼女が舌の根が痛くなるほど舐めまわし、ぬるぬるとおおいをかけると、塩沢
はこおどりしながら奥へ奥へと、なめらかな粘膜に沿って送りこんでゆき、先端
が扁桃腺にあたると奇妙な疼きをおぼえた。
 「わるかねえぜ、息をつまらせてやるからな」
 千沙子の頬がふくらんだりすぼんだりするたびに、椅子に縛られた男は口惜し
げに体をゆすった。
 彼は一語も発しないが、目をぎらぎらさせているので環状の激変がわかる。
 ふとみえない視線を感じて千沙子は椅子のほうをふりかえり、怯えたように動
きを止めた。
 (ああ、黒田先生、みないでちょうだい。憎まないでちょうだい。だって、し
かたがないじゃないの)
 千沙子は、ふっと動きを止めた。
 「どうした、休まずにつづけろ」
 塩沢は圧倒的に優位に立ったと信じきっている。
 「わたし、できないわ。あの人がみていると………」
 千沙子はとぎれとぎれに哀願する。
 それこそが佐野の思うつぼだった。
 「おまえが何をされているか、あいつに言ってやれ」
 佐野がそそのかした。
 「おねがい。あの人に目かくしをして………」
 塩沢が、何ごとか彼女にささやく。
 「ああ、いやいや、いまはいやよ」
 塩沢は哀願を無視してぬるりと引きぬき、代わりに分厚い唇で、花びらのよう
な女の唇を舐めまわした。
 「もっと舌をだしてみろ」
 くぐもった声で塩沢が強制する。
 接吻しようぜ、と彼がささやいたとき、それだけが千沙子の誇りを守る最後の
砦と思っていたので、激しく拒否したのだった。
 だが、こうしてぴったりと唇を重ね合って、粘っこく舌と舌を吸い合ってしま
った以上、もう別れた恋人一也にも、だれにも会わす顔がなかった。
 黒田の怒張に目を留めた佐野は、やっとふたりをからませる時期がきたと判断
した。
 「先生、いよいよ、あんたの出番だぜ」
 それは発情期の虎を檻から放つようなものかもしれない。
 しかし、佐野の目は、ぬけめなく作業バッグのなかの小型カメラのふくらみを
一瞥していたのだった。



         7 けつの毛まで濡れてるじゃないか



 千沙子から離れた佐野の狙いは、百万円の取引をより完璧なものにすべく、小
型カメラを使って、これからはじまる黒田と看護婦の痴態をばっちり収めておく
ことだった。
 ことをうまくはこぶには相手に気づかれてはまずい。
 「塩沢、ねちっこく接吻してやれ。先生がもっとみたいらしい」
 「やめろ。わしはこれ以上みたくない」
 いらだつ黒田の呻きを聞くと、塩沢はますます図に乗って粘っこく千沙子の舌
を吸いたてる。
 すこしざらつく舌の感触がからみつくと、きれいな看護婦は、ううっと顔をし
かめる。
 ふたたび内腿の奥がとろりとうるむのを感じ、耳が熱くなり、塩沢に抱きあげ
られると、ぐったり上半身をあずけた。
 膝のうえにかかえあげられながら、筋肉質の若者は、いったん分厚い唇を話す
と、煙草のヤニがまじる口臭をはきかけ、ふたたび唇を押しつけ、どろりとした
唾をひとかたまり吐き入れた。
 悪寒が走るほどの汚辱にもかかわらず、千沙子は反射的にそれをのみこんだ。
 妙に温かでなまぐささの残る唾液が喉を伝いおちる間もあらばこそ、塩沢は彼
女の舌を吸いあげ、舌と舌とをからみ合わせる。
 まるで熟した果実の味覚を楽しむようなしつこい接吻に、
 「うぐぐぐっ………」
 と千沙子は、双臀をもじもじさせた。
 「あんたの彼女は、けっこう好きものだぜ」
 佐野は、挑発するようにせせら笑う。
 「やめろ。もう見たくないって言っただろ」
 黒田は発情しきった牡虎のように歯がみして唸った。
 彼は狂おしい目つきをそむけたが、おどろくほど異様な昂ぶりをしめしている
のをかくすことができない。
 「あんなに気持ちよがっているとこをみせつけちゃ、目の毒だな」
 椅子に縛られている男のそばに近づいた佐野は、床に突きささったナイフを引
きぬき、黒田の白衣を引き寄せてたくみに切り裂いていった。
 みるみる目かくしにするくらいの長さに切りとられてゆく。
 「望みどおり、みなくてもすむようにしてやるぜ」
 いかにも同情するふりをして佐野は椅子のうしろにまわり、白衣の切れ端で黒
田に目かくしをする。
 黒田は腹だたしげに目を閉じて、なすがままに任せている。
 (負け犬のくせに、えらそうな態度をとりやがって)
 髭面の佐野は、作業ズボンをずりあげてホックをかけながら黒田をみおろした。
 つぎにベルトをとりあげ、二、三度、素ぶりをくれてから、縛られた男の足も
とすれすれにぴしっぴしっと床を打ち叩く。
 気配で、恐怖を感じた黒田は、椅子ごと身をずらそうと、罠にかかった獣のよ
うにとび跳ねた。
 「あんたのセガレが窮屈がってるから、すこし風にあててやろうじゃねえか」
 うす嗤いを浮かべながら、佐野はしきりに身をよじる黒田の股間に近づき、ズ
ボンのファスナーをすばやく引きさげ、トランクスのボタンをはずして乱暴につ
かみだした。
 「な、なにをする」
 「でかまらがみたがってうずうずしてるぜ。よかったら、目かくしもとってや
ろうか」
 「わしは、そんなけがらわしいものはみたくない」
 虚をつかれて黒田はすっかり気が動転してしまっている。
 気配でしかわからないが、すぐ目の前で、千沙子がならず者に粘っこく唇を吸
われ、ムチムチする乳房を揉みしだかれ、うわずった声をあげている。
 「あ、いや。だめだったら、そこは」
 塩沢の執拗な愛撫に千沙子は悩ましい反応をみせだし、節くれだった指が双臀
のはざまに降りてゆくのをかえって助けるかたちになっている。
 ならず者の指先は、粘っこく臀裂をふさぐかと思えば遠ざかり、また攻めこん
で、ぬちゃっとなめらかになるまでやめようとはしない。
 「へっ、やせ我慢するなよ。へっぽこ先生、みたくないって言いながら、勃(
お)ったててりゃ世話ないぜ。なんだ、こぎたねえ涙まで浮かべて欲しがってる
じゃねえか。それでも、おんた、人命をあずかる神聖なお医者様かよ」
 黒田は怪しい不安を感じはじめた。
 ならず者たちはいったい何をもとめているのだろう。
 百万円を値切った代償がこれだとはとうてい思えない。
 そのとき、黒田はかすかにきなくさい臭いが漂ってくるのを鼻孔で感じた。
 それは千沙子のやわ肌にこすれあう汗まみれの塩沢の作業服から発したのかも
しれない。
 それにしても何かが変だった。
 佐野もまたすこし前からこの部屋の灯りが消えたのに気づいていた。
 バッグのなかのカメラをとりだしても、ストロボをたく時間が必要だな、と思
っていたのだった。
 部屋のなかはまだ飴色の明るさで、それと気づかぬほどだったが、灯りが消え
たのは停電のためか、だれかが電源のスイッチを切ったのかはっきりわからない。
 四階の回廊を曲ってすぐ右手のこの手術室は、今日はもう使われることはない
だろう。
 黒田の根もとは、変質的なならず者にしごきたてられると、ひくひくとせりあ
がってくるような感じがした。
 黒田は佐野が快感を引きだしてくれるのを知って、めかくしのなかで目を閉じ、
両膝の緊張をといた。
 髭づらの若者は容赦なくあしらった。
 つよく弱く、まるでバターのついたスポンジの鞘(さや)でペーパーナイフを
磨きたてるように、ねんごろに幾度となくぬきあげる。
 黒田にははじめての体験である。
 それだけに狡猾な佐野に虚を衝かれ、思わず呻きを発してしまう。
 相手がかすかに鼻孔をふくらますのを知って、佐野は、もっと思い知らせてや
るぞ、と勇みたった。
 彼は両掌を添えて、やや吊りあがり気味の陰のうをやわやわと握りはじめた。
 時には、疎毛を手の甲で軽くこすりあげた。と、みるまに肉筒がいのちをみな
ぎらせて反応をしめしはじめる。
 筋肉質の塩沢は、若い看護婦を横抱きにして片足をかかえあげ、ねちねちと臀
裂をいびりつづけている。
 左右の肉ひだに打ちつけながら指先をすすめると、柔媚ですこし突きでた瘤の
ようなものにあたる。
 千沙子は眉をひそめて激しく喘いだ。
 手もとに引きつけられて、彼女の下半身はほとんどくの字のまま大きく割り裂
かれている。
 「おねがい。もう、ゆるしてちょうだい」
 千沙子は切なげにうったえる。
 内部はたとえようもなくうるおってあでやかに思われる。
 塩沢は、柔媚な瘤のようなものをこねまわしていったん指をひきぬいた。
 かすかに異臭がたちのぼり、くちゃりと黄褐色のかたまりが付着している。
 「へえ、こんなきれいな顔をしていても、ひりだすものは、おれたちのと同じ
だな。におうぜ。におうぜ」
 塩沢は、指先を千沙子の白衣のすそになすりつけた。
 彼女は、羞恥とみじめさのあまり声もでない。
 どちらを攻めるべきか、ならず者は考えあぐねたが、やはりきつい通路をえら
んだ。
 千沙子は苦痛の呻きをあげたが、それはかえって塩沢の情欲を燃えあがらせた
だけだった。
 白衣を完全にめくりあげられ、激しく突きあげられてむせび泣く看護婦の姿は、
彼にとって最高にエロチックな眺めだった。
 「じっとしてろ。いいか、すぐにすむからな」
 ひと突きごとにきつい感じがゆるんでくるのを知って、千沙子は背骨に走る信
じがたい感覚に身をゆだねた。
 「あ、ああっ。変よ、変になるう」
 千沙子は、きれぎれにかほそい声をふりしぼって泣きじゃくったが、しだいに
焦点があわなくなってきている。
 彼女ががくがく腰をふるわせるたびに、塩沢の快感はたかまった。
 「きつい、きついわ。………ゆるして」
 「いいぞ。なんてえしめつけようだ」
 塩沢は小躍りしながら奥へ奥へと突きあげてゆき、むず痒いような臀裂の翳っ
た根もとが触れたとき、やっと停止した。
 千沙子のからだの重さは感じなかった。
 彼女は押しつぶしたような呻き声をあげ、両手で塩沢の安ポマードのにおう頭
をかかえこんだ。
 嗜虐的な快感で塩沢は螺旋状にえぐりたてる。
 思いきり彼女の腰を引きつけ、もっと深く迎え入れるようにさせた。
 千沙子は低く呻きつづけている。
 筋肉質のならず者が最後の助走に入ると、
 「いやっ、すこしやすませて。あうっ、だめだったら」
 ひくひくとまとわりつき、ついに我慢できぬほどの快感に声を軋ませ、塩沢の
精液が堰をきってほどばしると、千沙子は収縮した。
 うつぶしてかじりつくかたちの千沙子は、おぞましい白濁が直腸にまでとびち
っているのを感じ、けいれんしながら息を喘がせ、そのまま床にくずれおちた。
 「佐野、気がいっちまったぜ、この女」
 「いいから、そのままにしてろ」
 狂熱的に昂ぶらせていた黒田は、ふいに中断されて、びっくりしたように勃(
お)ったったままだった。
 「塩沢、こっちにきて先生のコードを解いてやれ。といっても、ベルトでうし
ろ手に縛っておけよ」
 千沙子は、くたくたに疲れきって、息をあえがせている。
 半ばうつぶしているので犯された臀裂とよじれたかたちでうるむ肉びらがまる
みえになっている。
 「先生よう。始末におえねえでっかいのをぶちこむ生(い)きのいいつぼが目
の前にあるぜ」
 佐野は、筋肉質の仲間にそれとなく目顔で合図しながら、作業バッグのほうに
近づいた。
 そろそろと小型カメラをとりだす。
 ベルトで黒田のうしろ手を縛り直した塩沢は、邪慳に床の中央に引きたててい
った。
 むろん目かくしはしたままである。
 「いいか、ちょっとでも変な真似をしたら、そのどでかいものをえぐりとって
やるぜ」
 おかしなことに、これほど屈辱的な仕打ちをうけても、黒田の勃起は昂ぶるば
かりだった。
 佐野に玩弄された王冠部の鈴口からぬらめきがにじみだし、静脈の浮きだす肉
筒ぜんたいがあかぐろく照り映えている。
 「そろそろ、ふたりでおっぱじめてもらうぜ。そっちの女もおつゆたっぷりで、
お待ちかねだからな」
 塩沢は、千沙子のなまめかしい双臀を、ぬちゃっと片手でこじあけ、ヒクヒク
とこねまわした。
 甘美な湧出で蕩けうるむ番(つが)いの肉びらが愛らしいべろをむきだしにす
るさまは、すごくエロチックである。
 「だめっ、やめてちょうだい」
 目に羞じらいの色を浮かべて、千沙子はさからった。
 「さんざんよがり泣きして、そんなせりふを聞く耳を持たねえ。ぐずぐずせず
にからんでもらうぜ。塩沢、かまわねえから、こっちへ連れてこい」
 佐野は、作業服の胸ポケットに小型カメラをしまいこむと、床の中央に座らさ
れている黒田をあおむけに引き倒した。
 「な、何をする。乱暴はやめろ」
 ぶざまにひっくりかえった黒田は、うしろ手に縛られているため起きあがるこ
とができず、かえって体の重みでみじめな恰好をさらした。
 白衣の切れはしで目かくしされているので、はっきりはわからないが、
 「おねがい。それだけはやめて。とても恥ずかしいわ」
 切迫した千沙子の哀願を聞くと、どうやら、アヌス用嘴管らしきものを使って、
潤滑ワセリンを羞恥のほころびにぬりこめているらしい。
 黒田はふたたび身を起こそうとしたが、肩を佐野に押さえこまれていて、身動
きできない。
 「たのむ。離してくれ」
 「このままでからんでもらうさ。だいぶ磨きをかけてやったから、いつでも役
にたちそうだな」
 佐野は、赤児をあやすように、年長の男のズボンのファスナーをすっかり引き
おろしてしまう。
 抵抗しようにも、ひとたびしごきたてられた負い目が、黒田に被虐的な感慨を
強いる。
 佐野につかみあげられ、示威的に千沙子のほうにふりたてられただけで、紫ず
んでふくらんだ亀頭冠は透明な液をにじませている。
 部屋のなかのきなくさいにおいは、前よりも濃くなっている。
 気のせいか、室内の温度がたかまり四方の壁があたたかく感じられる。
 暖房で部屋が乾燥しすぎているせいかもしれない。
 「いつもやっているように、おれたちにみせてくれ」
 佐野の口調には、うむをいわせぬひびきがあった。
 黒田のひろげた両足の間にひざまずかされた看護婦は、何を強いられているの
かわかった。
 威嚇する種馬のようなこわばりに恐れをなして、千沙子があとずさりすると、
塩沢が彼女のうなじを押さえて制した。
 若い看護婦は仕方なく、なめらかで、鋼鉄のような固い根もとをにぎりしめた。
 「はじめろ。かわいいべろをたっぷり使ってな」
 と佐野。
 一瞬ためらってから、千沙子は羞恥にほてる頬をさしだし、形のいい唇を思い
きりあけた。
 ふるえながらゆっくり舌を動かすと、黒田の下半身がぴくりと引きしまるのが
感じられた。
 「その調子だ。なかなかうまいぞ。おれたちのときより、気が入ってるぞ」
 佐野が満足げにつぶやく。
 「よう先生、なんとか言ったらどうだ。看護婦さんにしゃぶられている気持ち
はどんな具合だ」
 塩沢がひやかすのが聞こえぬくらい黒田は、内心はげしい喜びのうめきをあげ
ている。
 微妙にとろけるような感覚が、はりつめた肉筒をますますふくれあがらせる。
 彼は、もうじっとあおむいていることができなくなった。
 腰の筋肉が、はじめはゆっくりと、ついでにますますつよく突っぱりはじめる。
 ほこ先の激しく疼く感覚がたえがたくなると、黒田のうなり声と喘ぎは露骨に
なる。
 「大病院の部長さんも、こうなったら、だらしがないもんだな。みろよ、この
よがり具合を」
 試みに佐野は、黒田の肩から手を離した。
 目かくししているので、表情はわからないが、尊大で高圧的な外科部長の音声
が粘るような甘さを帯びはじめている。
 佐野は、にやりとしてその場を離れ、よく撮れる角度から小型カメラをかまえ、
カシャッ、カシャッ、と連続的に淫らなポーズを撮影した。
 その音も聞こえぬほど、黒田はあからさまな欲情に酔い痴れている。
 千沙子は、いま愛撫しているのはまったく見ず知らずの中年男だと思いこもう
としていた。
 そうすると、若い看護婦は、ふいに濡れそぼった。
 塩沢にむりやりぬりこめられたワセリンが溶けて、ある種の痒みをおぼえはじ
めたからかもしれない。露をふくんだつぼみが倍以上にふくれあがるのを感じる。
 「ふーむ。ふーむ」
 彼女は、つのる快感に口いっぱいに頬ばっているのをつい忘れがちになる。
 なまめかしい唾液がとめどなくあふれだし、せわしなくけものような声が洩れ
る。
 「いいぞ。そろそろ、ほんものを使ってもらおうか」
 とつぜん、塩沢が看護婦のうなじをぎゅっとわしづかみにした。
 むりにとっぱずされた黒田のほこ先は、熱くむなしくふるいたった。
 「おねがい。やめさせないで」
 「へっ、こんなに好き者だなんて、おれたちは知らなかったぜ」
 塩沢は、いまいましげにののしった。
 「だから、本格的につながってもらおうってんだ」
 と、佐野。
 「どれどれ、おれがたしかめてやる」
 塩沢の右手が、若い看護婦の羞恥のほころびに触れ、蜜のように蕩けながら繰
りかえししめつける感覚を指先でかるくなぶりはじめる。
 「いやよ。そんないたずらはやめて………」
 かるいジャブをおくりこむと、すこし弛(ゆる)めの肉の畝がとろとろとうる
みだしている。
 塩沢は、かまわず二本の指でえぐりたて、淫らなささやきをつづけた。
 「ひとりで熱くなりやがって。ワセリンのせいで、すっかり痒くなったんだろ。
けつの毛まで濡れてるじゃないか」
 「いやっ。さわらないで。そんなことないわ」
 「やせ我慢はからだに毒だぜ。先生もお待ちかねだから、お互い、ほてりをさ
ましっこしたらどうだ」
 佐野があざ笑いながら半畳を入れる。
 黒田は、いやまさる情欲に、日ごろの傲慢ぶりがすっかり影をひそめ、渇望の
思いにかられて肉筒を屹立させている。
 「身持ちのいい看護婦さんよ、あんたはそこで、ちょっとの間、きれいな足を
ひろげてしゃがみこめばいいんだ」
 佐野の声には、うむをいわせぬ調子があり、千沙子はたえがたい痒みで思わず
黒田のほうににじり寄り、数インチほど腰を浮かせ、ねっとり光を放つ亀頭冠の
猛々しさをみおろした。
 「じらさずに、早く往生しろ」
 「いや、みないで。おねがい」
 千沙子は顔をそむけたが、言葉とはうらはらにもどかしげに腰をゆすっている。
 「もったいぶらずに、早く腰を沈めろ」
 塩沢がせきたてる。
 「ああ、どうしよう。あなたたちがむりにさせるのよ」
 「このあばずれめ。どっちみち、させずにおくものか」
 千沙子がめくるめく思いで、ズブリと腰を沈めると、息苦しいほどの硬度で黒
田が突きあげてくるのが分った。
 「おおっ、千沙子。なんて、きみはなめらかで、蕩けるようなんだ」
 黒田の呻きに、
 「あううっ、おねがい。もっと、つよく」
 とどめをさされる快感のあまり、千沙子は、もっとつよく、もっと奥で感じよ
うと身悶えし、ついに、うっうっ、と低い地声をあげだしている。
 黒田の、千の触手でしめつけられる快感を、できるだけ持続しようと、腰の筋
肉を引きつらせる。
 「まだだ、ゆっくり楽しもう。おおっもう、だめだ」
 「先生、あうっ、いやっ。だめ、おねがい。いって。いってちょうだい」
 千沙子のよがり泣きにつれて黒田は腰を浮かせ、一挙におのれを解き放った。
 最初の熱液がはげしく噴きだし、みえない襞の四方にとびちると、千沙子も官
能的なけいれんを起し、うわごとのように喘ぎつづけたかと思うと、がっくりお
ちいった――。
 この間じゅう、佐野は、うす笑いを浮かべながら、あらゆる角度からふたりの
淫猥なポーズを撮りつづけていた。
 小さなカメラのシャッター音に、最初に気づいたのは黒田だった。
 「くそっ、きみたちはなんてことをするんだ。卑怯だぞ」
 「なにをいまさら、乗せられたあんたたちがばかなんだ。ばっちり撮ってやっ
たからな。これなら五百万円でも安いぜ」
 佐野はあざ笑って、まだ腰をふらつかせて起きあがれずにいる黒田を足蹴にす
る。
 「パーティはこれでおひらきさ。ネガが欲しけりゃ、あらためて相談に乗るぜ。
もっともキャッシュじゃなけりゃあ、うけつけねえけどな。そこの看護婦さんよ、
開帳しっぱなしだと風邪ひくから、いいかげんに穿いたらどうだい。話はそれか
らさ」
 勝ち誇ったように佐野が、千沙子のショーツと、パンストを放ってやった。
 そのとき、塩沢が、
 「どうも変だぜ。こげくさいにおいがしないか。それに――。なにか廊下の足
音が騒々しくはないか」
 「気のせいさ。みんなでお熱くなったから、そんな気がするんだ。そうだろ、
先生、あんたの手もほどいてやるから、あきらめて交渉再開といこうぜ」
 佐野は、黒田を引き起し、後手に縛ったベルトをといてやった。
 むろん抵抗されたときの用心に、飛びだしナイフを突きつけたままの姿勢でだ
った。
 「佐野、やっぱりおかしいぜ。廊下を人が駆けだしてゆく音がするぞ」
 そのころには、すでに煙のにおいが室内にしみこんできた。
 塩沢が、内側から細目に手術室のドアをあけると、たちまちパァーッと熱煙が
吹きこんできた。
 「火事だぞ。佐野、逃げろ」
 間近に炎の迫る気配があり、熱煙で眉を焼かれた塩沢があわててにげもどって
きた。
 すでに煙は廊下づたいに各室をおそいはじめている。
 四階の産婦人科は、医局や診察室、手術室などがつづいているが、ほとんど診
療が終わっていた。
 しかし、出産のための準備室、陣痛室、分娩室、回復室のほか病棟がひしめい
ている。
 出火の原因は不明だが、出産のための準備室のあたりから火がでたらしい。
 担当の看護婦が三十分ほどでかけた間に、室内は手のつけられない状態になっ
ていたのである。
 ひょっとすると入院患者の覚悟の自殺だったのかもしれない。
 いずれにせよ、中から鍵が閉められていて、火勢がはげしくて手のほどこしよ
うがない。
 それでも大半の患者は、病院側の誘導で緊急避難をすることができた。
 いま廊下を走っているのは、逃げおくれた人々ばかりだった。
 時をうつさず、炎が天井や床のうえを舐めつくしている。
 こうなっては、恐喝どころではない。
 佐野と塩沢は、黒田たちをおきざりにして、あわてて廊下にとびだした。
 ドッと煙が流れこんでくる。視界は二メートルもない。
 「逃げろ、塩沢」
 佐野は脱兎のごとく走りだしたが、この階の構造をよく知らないので、回廊を
逆の方向に駆けだしていて、数メートルもすすまぬうちに、ボワーッ、ブスッ、
ブスッ、と燃えあがる建材から発した有毒ガスのために、ぱたりと倒れ伏してし
まう。
 つづく塩沢も、立ったまま駆けだしたので、たちまち充満する煙幕のなかに顔
を突っこんでばったり倒れた。
 「千沙子、ドアを閉めろ」
 目かくしをはずしながら、黒田は叫ぶ。
 彼は、とっさに洗面台の蛇口をひねって放水した。
 よかった。水がまだでる。
 彼は、器械皿の横にたたまれて置かれてあるタオルを数枚、水にひたして看護
婦に手渡した。
 「先生、どうしましょう」
 おろおろする彼女を叱咤して、黒田は相手を床に這わせた。
 「ぜったい、起きあがっちゃだめだぞ。濡れタオルを鼻と口にあてろ。目を閉
じて、手さぐりで左側の廊下をすすめ。すぐ横手に非常口がある。わしのあとに
つづいてこい」
 ズボンを穿いたために、黒田の行動は迅速だった。
 精液まみれのファスナーを引きあげて、彼は手さぐりで手術室を脱出した。
 間一髪だった。
 彼らがよろめきでた直後、ごおーッという火炎もろとも、隔壁が燃えおちて、
室内は火の海と化したからだった。
 ようやく非常口にたどりついたものの、火災発生とともに熱風が吹きあがって
きて、とても降りられたものではない。
 「先生、もうだめだわ」
 千沙子は泣き声をたてた。
 彼女はショーツはつけたものの、猛煙で白衣がどす黒くなっている。廊下を這
いずりすすんだのでオフホワイトのパンティストッキングや、あわててかきあわ
せた同色のブラジャーまでがびりびりに引き裂けている。
 「おちつけ。エレベーターがまだ動くかもしれんぞ」
 千沙子は、いやいやをするように首を横にふった。
 とてもそこまでたどりつけそうもない。
 「しっかりしろ。このままでは焼け死んでしまうぞ」
 黒田は、いつもの横柄で傲慢な口調に返っていた。
 若い看護婦がまだためらっていると、いきなり、ぴしゃりと横面をひっぱたい
た。
 それで、彼女は、ハッと気をとり直したのだった。
 冷静さをとりもどした黒田は、足が地につかない様子の千沙子を引きずるよう
にして、エレベーターのところまで這っていった。
 エレベーターのなかにも煙がたちこめていたが、熱気は感じられない。
 急いでボタンを押す。
 よかった。エレベーターは動きだした。
 1の数字を押したが、かごはそのまま地階まで直行していった。
 濡れタオルと機転がふたりのいのちを救ったのである。
 ドアがあいて、かびくさい臭気がただよってきたが、それでも冷ややかで、こ
れまでの地獄を思うと気持ちよかった。
 「あがらなくちゃならないわ」
 千沙子は、うすぐらい地階の通路にたたずんで黒田をふりかえった。
 暗がりのなかで男の目がじっと彼女をみつめている。
 それは恐怖と屈辱を駆けぬけてきた灼けつくような目だった。
 「あ、先生。いや、だめよ」
 若い看護婦は、にわかに羞恥にめざめたかのように汚れた白衣の裾を引きさげ
ようとした。
 黒田の唇は、軽いやけどで引きつり、食いしばった歯が、あたりの暗がりにぞ
っとするほど白くきらりとのぞいている。
 口のはしにわずかばかりの唾液がたまっている。
 「いけないわ、こんなところで。それも、こんなときに………」
 千沙子は、四十代後半のがっしりした体格を目で追った。
 (この人が、わたしを猛火から助けだしてくれたんだわ)
 感謝の思いが浮かんだが、そうした状況をつくりだした遠因も、つまるところ、
この男が引き起こしたのである。
 どっちつかずのあいまいな感情のたゆたいのまま、千沙子は、ふと相手の股間
に目をとめた。
 異様にそそり勃(た)つズボンのふくらみをみとめたとき、彼女は危うく気が
遠くなりそうになった。
 「どうした、いやとはいわさんぞ」
 千沙子の心は、旋風のようにうずまいた。彼女もまた、熱風を駆けぬけて、太
腿のあいだにねばねば光るオアシスを蔵する生身の女なのだった。
 つのる羞恥のなかで千沙子は、相手がもとめているものを直感的に悟った。
 「ここじゃいやっ。ちゃんと愛してください」
 千沙子は、ここまで来たからには、黒田は、もう彼女を離さないだろうと思う。
 いかに抗ったとしても、結局、たくましい怒張をうけ入れさせられることにな
る。
 ならず者に呼応した罪ぶかさを詫びようとは思わないが、黒田は、彼なりに情
欲の鉄槌をたたきこまずにはいないだろう。
 彼女は、せめてかりそめの聖壇をしつらえたかった。
 (やっぱり、ここにきてしまったわ)
 と千沙子は思う。
 計器の安全装置や自動停止スイッチなどがひしめく二号ボイラー室のうすくら
がりのなかで、彼女は黒田と向きあっていた。
 相手は一言も発しなかったが、顔がすべてを物語っている。
 暗がりに目が慣れると、しだいに相手の様子がみえてくる。
 たちまち、がっしりした手が汚れた彼女の白衣を引きはがしにかかる。
 よれよれのパンティストッキングも同色のブラジャーもすべて引きはがされた。
 いまやショーツひとつだけで、暗がりのなかでみごとな乳房がほのじろく盛り
あがり、荒い息づかいにつれて波打っている。
 「なんというおっぱいなんだ。ここもあいつらに吸わせたのか」
 黒田は、ふいに歯がかちあうほど乳房に噛みついた。
 激痛のあまり、彼女は悲鳴をあげたが、つぎの瞬間、舌先で乳首を舐めまわさ
れると、千沙子の狼狽はもはやとどめようがなくなった。
 「ゆるして。仕方がなかったのよ」
 若い看護婦は、声をふりしぼって否定する。
 彼女は、相手の怒りをなだめるように、いつしか目を閉じて、弓なりに羞恥の
つぼみを押しつけるように腰をひねりだした。
 黒田はいきなりたちあがるとベルトを引きぬいた。
 ズボンを腰までずりおろすと、猛々しくそそりたつ怒張がとびだしてきた。
 野太くふくれあがった亀頭冠は、これまで目にした黒田の勃起のなかで、もっ
とも大きく、千沙子は怯えきって声がでなかった。
 「これが好きなんだろ」
 その声は、痛痕に近い。
 そのとき、黒田は、不良少年たちにたかだかと双臀をかかげられ、三箇所の肉
のほこらを蹂躙されて、必死に呼応する美しい捲き毛の妻、美奈子のことを思い
浮かべていたにちがいない。
 千沙子は、茫然として彼が示威的にふりたてるのを見守るばかり。
 返事がないのにいらだって、黒田は彼女の頬を殴りつけた。
 怒りにまかせて、なまめかしい太腿のあたりを蹴りつける。
 「どうだと聞いてるんだ。これが気に入ったか」
 「ええ、気にいったわ」
 「こいつをしゃぶりたいのか、淫売め。こいつを喉に押しこんでもらいたいの
か」
 千沙子は、うなずいた。
 そうすれば、男の怒りが鎮まるのではとはかない望みをかけたのである。
 すると、黒田はいきなり彼女のうなじを押さえ、てかてかする亀頭冠を激しく
おどらせ、あっという間に口のなかにめりこませてきた。
 とてもいちどきには含みきれない。
 だが、彼はあきらめなかった。
 ぐいぐいとせめたてる感覚に、若い看護婦はゆるみ、ついに被虐的な快感のう
ちに腰をおとしかけた。
 彼女にとって、それは急激にたかまる奇妙なオーガズムだった。黒田が左右に
ゆさぶりたてるたびに、彼女は粘り気に富んだ喉ちんこがかきまわされるような
気がした。
 黒田のたくみなひとひねりに、彼女は半ば失神状態に陥って低い呻きをあげた。
 薄れゆく意識のなかで、おぞましい快美感がたかまり、彼女は小刻みにひくつ
きはじめる。
 この反応は、黒田を最高に興奮させる。彼は、千沙子を気づかせるために、左
右の頬を、かるく平手打ちした。
 千沙子は朦朧としながら、意識の水面に浮かびあがってきた。
 それから激しくむせて、また無意識に啜りはじめようとする。
 黒田はその動きを止めた。
 「待て。すこし休ませてやろう。顔がまっさおだぞ」
 「わたし、いままで、どこに行ってたのかしら………」
 「わからんのか。すこしじっとしていろ。これから、あいつらに汚された場所
をきよめてやる」
 とつぜん、黒田は看護婦を床の上に押し倒した。
 双臀をたかだかとかかげながら、官能的な女の両膝の間に割りこみ、ねちゃっ
とする番(つが)いの肉びらを、ほこ先でこじあけ、とば口を、ぬるり、ざらり
とこすりあげる。
 「先生、そんなにじらさないで………。わたし、ちゃんと気を入れるから、は
めてっ」
 ぐわっ、と肉筒がめりこむと、千沙子は甘い泣き声をたてた。
 異様なほど大きな硬度が、無駄なく責めたててくる。
 (なんて太くて、固いのかしら)
 せりあがるたびにまき起こる熱い摩擦。
 それはふさがれるというより量的な実感だった。
 「どうだ、感じるか。あいつらとどうちがう。答えてくれ」
 「あ、あン。とても切ないわ。先生のいじわる。そんなこと、言わせないで」
 「いや、はっきり答えるんだ。どっちがいい」
 黒田は淫らにささやきつづけ、そのたびに、彼女は切れぎれに啜り泣く。
 ふいに千沙子はうるおいはじめた。
 軋むような感覚がなくなり、どこまで深い快感がつづくのか、千沙子には見当
がつかない。
 黒田は撓みもせず、硬度も失わず、ゆるゆると出入りするさまを誇らしげにみ
おろしている。
 「先生。いい気持ちよ、とても、いいの」
 千沙子は、完全にうけ身になって、黒田に向かって弱々しくほほえみかけた。
 「きみは蕩けてしまいそうだ。あいつらなんか、もうどうでもいい。これから、
すべてがはじまるんだよ」
 千沙子は、あきらかに歓びふるえている。
 奇妙にも黒田への憎しみはうすらぎはじめている。
 最初のぬらめきが黒田の根もとにからみついた。
 「あうっ、わたし、もう、たえられないわ。先生、しっかり抱きしめて。あな
たをじかに感じたいのよ」
 「わしもだ。身勝手だが、一緒に暮らさないか。きちんとして………もう、絶
対に千沙子、おまえを離したくない。いつまでもわしのそばにいてくれ」
 依然として尊大さを失っていなかったが、これこそ黒田の内なる声だった。
 看護婦の森高千沙子は、遠くをみつめながら、目前にしかみえない男の胸にす
がりついて、しばしゆられていようと思う………。



    _____________________________
   |                            |
   |          グリーンドア文庫          |
   |   ――――――――――――――――――――――   |
   |    ・看護婦の秘蜜・                |
   |                著者 影村 英生    |
   |   ――――――――――――――――――――――   |
   |                            |
   |  初 版 発 行   1990年12月30日       |
   |  発 行 所   株式会社 勁文社          |
   |          住所 東京都中野区本町3-32-15    |
   |          電話 (03)3372-5021         |
   |                            |
   |  制 作 日   1996年12月16日       |
   |  制 作 所   株式会社フジオンラインシステム   |
   |          住所 東京都豊島区東池袋2-62-8   |
   |          電話 (03)3590-3103         |
   |                            |
   |     本書の無断複写・複製・転載を禁じます。     |
   |                            |
   |                ISBN4-7669-1321-3    |
   |                            |
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兄嫁 輪姦す



       

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   *  ・       兄嫁 輪姦す        ・  *
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   ◆  §                     §  ◆
   *  ・        影村 英生        ・  *
   ◆  §                     §  ◆
   *  ・                     ・  *
   ◆  §    《 グリーンドア 文 庫 》   §  ◆
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   ◆   ∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞   ◆
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           ・∞・∞・∞・∞・∞・∞・
          §             §
          ・    目   次    ・
          §             §
           ・∞・∞・∞・∞・∞・∞・





    第一章 欲しいんだろ、奥さん?・・・・・・・・・・・59行
    第二章 義姉さん、いいんだろ?・・・・・・・・・・579行
    第三章 ねえ、気持ちいいでしょ?・・・・・・・・・997行
    第四章 濡れてるぜ、お嬢さん・・・・・・・・・・1314行
    第五章 お兄ちゃん、見ないで……・・・・・・・・1803行
    第六章 こっちの穴は処女だろ?・・・・・・・・・2470行
    第七章 犯(や)って、わたしを犯して・・・・・・2913行
    第八章 息子のもしゃぶってやれよ・・・・・・・・3348行





∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・




          第一章 欲しいんだろ、奥さん?



 夜おそく、田園調布駅をおりた立花美絵子は、道路の両側に建ちならぶ豪邸の
鬱蒼とした庭木のつらなりと、大きな街路樹が投げかける暗い影を、ちらりとす
かしみた。
 その影のなかに、なにがひそんでいるかしれたものではない。しかし、古い公
園につきあたって、わきの坂を下るのが、もっとも近道だった。
 (車が故障しなければ……)
 つい、ぐちりたくなるが、彼女は思いきって、いそぎ足で歩きはじめた。
 美絵子は、渋谷に本社を置く老舗の菓子メーカー、ショコラの若い女社長であ
る。はなやかな顔だちだが、目の下にかすかな愁いがある。
 ふつうなら、とうに帰宅している時刻なのに、夫が亡くなってから、株の買い
占めや乗っ取り工作がはげしくなり、きょうは緊急重役会議がおそくまで続いた
のだった。
 彼女は、タクシーよりも電車を使うほどのしっかりした女性だが、それでも、
こんな時間にひっそりした街路を歩くのは、きみがわるい。
 これまで人っ子ひとりみないし、巡回の警官とも出会わない。
 (悲鳴をあげたところで、だれも来てくれないわ……)
 そう思うと、どきっとして、美絵子は足を早め、なにか別のことを考えようと
つとめた。
 きょうは、午前十時にムトー製菓の社長、武藤弘正をたずね、はじめて会談し
たのだった。武藤は大量に株を買い占め、ショコラの筆頭株主になった人物であ
る。
 美絵子は、総務部長の清水と、高田、山村両弁護士をともなって、一時間ほど
話し合ったが、目が鋭く冷徹な武藤は、とりあえず役員派遣を主張して譲らない。
 「武藤さん……。わたくしの父をご存じでしたわね……」
 美絵子の一言は、強気な武藤の胸をチクリと刺したらしい。彼がこんにちある
のは、美絵子の亡父、木下昭五郎のおかげである。
 「そりゃあ、もう……」
 精悍な額に、かすかに汗がにじむ。
 「当方はただ、株主を尊重していただきたいと申しあげたかっただけでして…
…」
 武藤の腹心、馬洗(もうらい)が口をそえる。
 「それなら、正式文書でお申し入れになったら……。よく検討してご返事いた
しますわ」
 ピシャリと決めつけて、会談を終えたものの、筆頭株主の誇りを傷つけただけ
に、これからの出かたが気になる。
 しかし、先(さき)んずれば人を制する。今夜の重役会議で副社長の曽我から
提議された第三者割当増資で、ひょっとしたら急場を切りぬけられるかもしれな
い。
 美絵子の表情は、フッと明るくなり、ハイヒールの音がひときわ高くなった。
 ところが、そのとき、なにか別の足音が、つかず離れず、つづいているように
思えた。
 ひとりきりだと確かめるために、一瞬、たちどまってみる。歩みをとめても、
足音がきこえるのを知って、彼女は思わず身ぶるいした。
 だれかに尾(つ)けられているのだ。振り返って、ひそかに近づく者の顔をみ
たいが、恐ろしくてとてもできない。美絵子は半ばかけだした。
 ハイヒールの音が、暗渠(あんきょ)のようなコンクリートの下り坂に反響す
る。足音がしだいに迫ってくる。いまや怯えきった美絵子は、公園沿いの暗闇を
小走りにかけおりてゆく。
 坂道の排水孔の鉄ぶたに踵をつまずかせて、前のめりになったとき、彼女は悲
鳴をあげた。
 華奢な肩のあたりに、ガシッと置かれた手を感じたとき、美絵子は息がつまる
ほどだった。
 顔をあげると、大学生風の胸板の厚そうな若者が、せせら笑っているのが見え
た。
 「さあ、バッグの中味をあげる……。ぜんぶ取っていいわ……。警察にはしゃ
べらないから……」
 美絵子はかなきり声をあげた。
 「わかってる……。だがな、いただくのはそれだけじゃない」
 いかつい若者は、ドスをきかせた声でおどし、淫猥な表情を浮かべた。
 「やめて……。お金はぜんぶあげる……。乱暴しないで……」
 彼女は、大急ぎでバッグを相手にさしだした。
 学生っぽい男は、バッグに手をつっこみ、ひっかきまわしながら、財布や、金
目のものをさがしている。
 逃げだすなら、いまだ。たぶん、財布の中味を確かめている間に逃げきれるだ
ろう。
 美絵子は、靴を脱ぎすてたまま、声をかぎりに悲鳴をあげながら、坂道をころ
げおちるように走りだした。
 だが、万事休す。すぐ後から殺気だった足音が追ってくる。肩ごしに振りむく
と、歯をむきだした若者が、いまにもつかみかかろうとしている。
 逃げなきゃあ――。出し抜いたんだから、なにをされるかわかったものではな
い。
 美絵子は、方向を換えて、必死に公園の植え込みにかけこみ、息を殺して、ま
っくらな園内をやみくもに走りまくる。いまは行き止まりでなければいいが、と
祈るばかりだった。
 「おい、強巻(こわまき)。早くとっつかまえろ。そっちに行ったぞ、おーい
……」
 追っ手が叫ぶのがきこえた。
 「任しとけよ、銛夫(もりお)……」
 噴水のつきあたりの暗闇をかけながら、別の声が応じる。
 「みんなでつかまえるんだ。ちょっと向(む)こっ気(き)のつよいオンナだ
ぜ……」
 植え込みを走りぬけながら、銛夫がわめく。
 しだいに池のほとりに追いつめられ、美絵子は怯えきった雌(めす)ウサギの
ように闇を見据えた。
 (なんてこと……。ひとりだけじゃない……。ほかにも居るんだわ……)
 もう行き場がない。あとずさりも、前を突っきることもできない。
 人影が暗がりで動くのがみえたが、明かりのなかに踏みだしてくるまで、どん
な連中かわからない。ラフな恰好らしいが、暴走族ならオートバイがあるはずだ
から、やはり不良学生であろう。もうひとりは、樹のかげにひそみ、足もとはみ
えるが、顔はまったくわからない。
 ジリジリと左右から詰め寄ってくる銛夫と強巻の顔には、うぬぼれと欲情がに
じんでいる。美絵子は思わず視線をおとした。あちこち破れた男たちのジーンズ
には、股間のふくらみがやけにめだつ。
 斜め横から、いかつい銛夫がにじり寄る。
 「池にハマリたくなかったら、動くんじゃない……」
 うなじに息がかかるほど近づく。
 恐ろしくて、彼女は一瞬、痺れたようになった。ハッと気をとり直し、逃げよ
うとするが、すばやく羽交(はが)いじめにされていた。
 美絵子は気を失いかけた。
 「まったく、てこずらせやがって……。きつい一発ぶちこんでやる」
 彼女の襟(えり)もとをつかんで、強巻がいきまいた。おぼろな公園の外灯に、
虎魚(おこぜ)のように額と頬骨が張りだした彼の顔が浮かんで見える。
 「こいつのおま×こをめためたにするのも面白いな。おあつらえむきに、きっ
とヌルヌルになってるはずさ……」
 美絵子の頬をつつきながら、銛夫がうそぶく。
 「おねがい、たすけて……。もう、お金はあげたでしょ。ひどいことしないで
……」
 悲痛な声で、彼女はたのんだ。
 「金はもらったが、もっと他のものが欲しいんだよ。なあ、みんな……」
 銛夫が嗤(わら)うと、思いがけなく残忍そうな表情がむきだしになった。
 「ここでやっちまおう。なあ、いいだろ……」
 美絵子の胸のふくらみを荒々しく揉みしだきながら、強巻がうめく。
 「待てよ。それじゃあ、約束がちがうって、あいつから言われそうだぜ」
 銛夫は、樹のかげの人影にむかって、顎をしゃくった。
 「やっぱ、車に乗せちまえ……。強巻、目かくしをして、ハンカチを口に詰め、
猿ぐつわをかませろ。両手をしばるのを忘れるな……」
 美絵子は、ふたりに手とり足とりされて、公園沿いに用意された車に拉致され
た。彼女の視界がさえぎられると、樹のかげにかくれていた仲間も、大急きで運
転席にのりこみ、ハンドルをにぎった。
 「ほんとに、おまえんとこでいいんだな……」
 と銛夫。
 運転席の若者は、振り向いて、指でOKサインをしめし、猛スピードで走りだ
した。
 傲慢と小心がないまぜとなった目付きのほかは、ウルトラハードのムースでツ
ンツンに髪を立てたハンサムである。
 目かくしをされているので、いったい、どのあたりを走っているのかわからな
いが、美絵子には、一定の方向を堂々めぐりしているようにも思われた。
 「着いたぜ……。降りろ……」
 そこはどうやら駐車場の一角らしかった。
 「こっちに来い……。逃げようなんて気を起こすな」
 銛夫に小突(こづ)かれて、美絵子は玄関ポーチのほうにひきたてられてゆく。
 みるからに立派なセキュリティ・マンションで、ツンツンに髪を立てた若者が、
ナンバー・プレートのボタンを押すと、音もなく内側のドアがひらく。
 エレベーターで、七階にのぼり、彼女は、すぐ横の一室に連れこまれた。
 「だれにもみられなかっただろうな……」
 と銛夫。
 「だいじょうぶ。さあ、こっちだ……。スプリングのきいたベッドがある」
 強巻が目を光らせる。
 寝室に追いたてられる美絵子は、息ぐるしさのあまり、鼻孔をふくらませた。
チェストのわきを通りぬけるとき、スパイスとアニマルの精悍な香りが、わずか
に鼻を摶(う)ったが、すぐに運転席の男の髪の匂いと同じだと気づいた。しか
し、かつて、どこかで嗅いだことがあるような気がする。
 ベッドの端にむりやり座らされ、左右から強巻と銛夫にまとわりつかれた美絵
子は、必死にふりほどこうとするが、両手首を縛られて、声も出せず、
 「うぐぐぐぐ……」
 とうめくばかりだった。
 「みればみるほど、上品な奥さんだぜ。ピチピチしたからだをしてる。オネェ
さま、もうグッショリ濡れてるんじゃないの」
 立ちあがって身をかがめた強巻が、汗ばむてのひらで、パンストごしにしなや
かな彼女の足を撫であげる。
 「へえ、ストッキングまで湿ってら。なんだ、ちびってるのか……」
 マムシのような指先がスカートをめくり、ショーツの合わせ目をこじあけてく
ると、美絵子は思わずわなないた。
 (やめて……。そんなことしないで……)
 淫らな動きが、肉ひだのうるみをつのらせたが、その感覚には快感めいたもの、
夫に愛撫されたときの興奮以上のものがあった。
 美絵子は、夫の幸彦を不慮の事故で亡くしてから、ずっと男性に触れたことは
なかった。かつては夜ごと彼に愛されていただけに、この半年間は毎日が拷問の
ようだった。
 「強巻、猿ぐつわをとってやれ。ここなら大声をあげても、だれもこないから
な。目かくしもとってやろうか……」
 銛夫がツンツン・ヘアの若者に同意をもとめると、彼は、目かくしははずすな、
という素振りをしめした。
 猿ぐつわをはずされると、美絵子は弱々しげに息を吸いこんだ。とても、わめ
く元気はない。どうしたら、ここから逃げだせるだろうか。
 「そろそろ、オネエさまをねんねさせて、腰がぬけるほど、輪姦(まわ)して
やろうぜ。ほら、さわってみろよ。こんなにタってきた……」
 ジーンズのファスナーをおろした強巻は、くわっとつかみだして、むりやり美
絵子ににぎらせる。
 手首を縛られているので、とっさにはなすことができない。
 「でかすぎて、つかみきれないだろ?」
 あわてて彼女はふりもいだが、みえないながらも、おぞましい量感に恐れをな
した。
 その大きくてかたい肉茎が、ミリミリッと押し入ってくるかと思うと、彼女は
ふるえた。
 「乱暴しないで……」
 美絵子は哀願した。
 「このことはだれにも話さないわ。おねがい、あなたたちの欲しいものは、な
んでもあげるから、辱めるのだけはやめて……。おねがいよ……」
 「辱めるのはやめてってか。それより他に、あんたとなにをしようってのさ、
おネェさまぁ」
 強巻は、彼女を押し倒し、がっしりした両手でスカートのベルトをはずし、ペ
チコートごと一気にひきおろした。
 「やめて……。いやッ。だめーッ」
 美絵子は、必死に助けをもとめた。
 彼らの動きにはむだがなく、美絵子への配慮や、憐れみはみじんもない。
 怯えきった三十四歳の未亡人は、強巻の肉塊が足のほうから突きあげてくるの
を感じた。彼らと揉みあっているうちに、パンティストッキングも、ガードルも、
飾りつきのショーツまでも剥ぎとられていた。
 「なんてすべすべして、やわらかなあんよなんだろ……」
 美絵子は、じかに強巻の熱さが触れ、長くてかたい肉茎が、なめらかな両腿を
こすり、しだいに大きくなるのを感じた。
 「なよなよして、ふるいつきたいくらいだ……」
 強巻は、彼女の内腿に亀頭を押しつけ、グングン大きくしてゆく。
 (あああ……。もう、だめだわ……)
 美絵子は目かくしのなかで目を閉じ、避けがたい苦痛にそなえて覚悟した。
 「ちょっと待てよ、強巻……」
 リーダー格の銛夫が、押し殺すような声を出した。
 彼女は、からみついていた強巻が、ふいにひきはなされるのを感じた。
 (あの声は、はじめの男のようだわ……。とめてくれる気なのかしら。かわい
そうに思って、見逃してくれるのかも知れない……)
 「きたならしいけつをどけろよ。おまえ、いつまでたっても、女の扱いがへた
だな……」
 銛夫は、不満そうな強巻にむかって言う。
 「なあ、あんた、いいとこの奥さんだろ。つまり、レディってわけだよね……」
 ぬけぬけと、銛夫が聞く。
 美絵子は力なくうなずく。
 「そうだと思った。スーツの好みや、触ったときのあんたのしぐさでわかった。
きたならしいものに触れたような顔をして……。金持ち女ってのは、みんなそう
さ……」
 彼はニヤリとして、美絵子のなめらかな頬をつついた。
 「おねがい、たすけて……。あの子に、これ以上なにもさせないでちょうだい
……。ねえ……」
 美絵子は哀願した。
 「なにもさせないでって、たとえば?」
 しらじらしく、銛夫はとぼける。
 「あの子にさせないで……。わたしに……」
 彼女は、恥ずかしさに頬をあからめて、身もだえした。
 「あんたに突っこませないでってことかい……」
 美絵子は、わずかにうなずいた。
 「いいとも、奥さん。どでかいやつを、ちっちゃなあんたのつぼに突っこませ
たりはしないよ。ルールはオレがつくる……。つまり、まっさきにオレが嵌めて
やるよ……」
 すさまじく勃起させながら、銛夫がわめいた。
 「はやいとこ、やっちまえよ。オレ、ガマンできねぇよ」
 強巻がほざく。
 「まかしとけ。いいか、このかたはいいとこの奥さんだ。レディには、それな
りの礼儀をつくさなくちゃあ……。そうだろ、え?」
 美絵子は、さからわないほうがいいと思い、また、うなずいた。彼がみんなを
押さえつけてるんだわ、言われたとおりにしなくちゃあ……。
 「あんた、アレをするのが好きかい……」
 やわらかな彼女の頬をてのひらで撫でながら、銛夫が聞く。
 美絵子はかぶりを振ったが、さからう態度はみせないほうがいいと思い、とっ
さにうなずいた。
 「奥さん、なにをするのが好きなんだよ……」
 強巻が聞く。
 「さあ、なにが好きなのか、はっきり言えよ」
 彼は、すんなりした美絵子の喉をかるくしめあげながら、かすれた声を出した。
 「おねがい、やめて……。そんなこと、わたしに言わせないで……」
 怯え、うろたえて彼女はくちごもる。
 「言うんだよ。いやらしい言葉を使ってみなよ。駅のトイレに落書きされてる
のを見たことがあるだろ……」
 口をゆがめて、銛夫が言いはなつ。
 「さあ、なにが好きなのか、はっきり言うんだ。あんた、でっかいのが好きな
んだろ、え?」
 美絵子はうなずいた。
 「そうか、でっかいのが好きなんだな……。オレたちはみんな、でっかいのを
ぶらさげてるぜ」
 強巻がにじり寄って、しごきたてながらうそぶく。
 「どでかいサオが好き、って言ってみな」
 「ええ……。わたし……。大きいサオが好き……。大きなほうが好き……」
 「そうか、あんた、それからなにをしたいんだ」
 「わたし……。サオに……。さわりたいの……」
 あえぐように彼女が答えると、三人はいっせいにいやらしく笑いだした。
 「それから……、わたし……、サオにキスしたい。それから、かたくしてあげ
たい……。しゃぶって……」
 彼らの言いなりに、うんと露骨な言葉をしゃべったほうがいいと思い、美絵子
は胸をドキドキさせながら答えた。
 「聞いたかよ、サオをしゃぶりたいってさ。きっと、いい喉ちんこしてるぞ。
奥さん、オレのをしゃぶりたいか」
 と銛夫。
 「ええ……、わたし、あなたにしてあげる……。どうしてもしなきゃいけない
んだったら……。でも、おねがい……、乱暴はしないで……」
 すすり泣きながら、美絵子は答える。
 「サオをしゃぶるほかに、なにをしてもらいたいんだ……」
 銛夫の横から、強巻が聞く。
 「決まってるじゃないか。え、入れてもらいたいんだよな、ケガをしないよう
にさ……」
 と銛夫。
 「おねがいって言いなよ。たのまれれば、オレたちはやさしいんだ……。あん
ただって、すてきな夜を過ごしたいだろ。オレたちはイカせるのがうまいんだよ。
それとも、つめたくなって、ほっぽりだされたいのか……」
 美絵子は、もはや選択の余地がないのを悟った。
 「いやっ……。おねがい。手荒なことはしないで……。わたし、言われたとお
り、なんでもするわ……。抵抗したり、声をだしたりしないって約束する……。
だから、おねがい。いじめたりしないで」
 銛夫に胸のふくらみを揉みあげられながら、彼女はあえぎつづける。
 「いいとも。オレたちのいうとおりにすれば、手荒な真似はしないよ。なあ、
そうだろ」
 彼は、すこし離れて美絵子をみつめているツンツン・ヘアの若者に問いかける。
 「いやがったりしたら、ぶちのめしてやる。からだじゅう、あざだらけになり
たくないだろうが……」
 と強巻。
 美絵子は弱々しくうなずき、ぐったりと銛夫にもたれかかった。
 彼の両手が、ダブル前でソフトフィットしたジャケットのボタンをはずし、キ
ャミソールの脇からブラジャーをこじあけ、乳首のいただきを揉みしだくのが感
じられる。
 「手首のひもを解(と)いてやるから、自分で、すっかり脱げよ……」
 と銛夫。
 強巻は、またもや、しごきたてたが、ツンツン・ヘアの若者は、冷笑するよう
に唇をゆがめ、淫猥な表情で美絵子をみつめている。
 美絵子は身ぶるいした。言われたとおりにしなければならない。
 彼女は痛む手首をさすりながら、ためらいがちにジャケットを脱ぎはじめた。
 「オバンにしちゃあ、かっこいいボディをしているぜ」
 彼女が逃げだす気配をみせたらなぐりつけようと、強巻が身がまえている。
 「へえ、先っちょをピクンとさせてるよ。けっこう好(す)きものなんじゃな
いの」
 「ブラジャーをとれ。オレたちは、あんたのオッパイをみたいんだ……」
 プツンとはずれるまで、ブラジャーをひっぱられている間じゅう、美絵子は、
パッドがかすかに肌をうずかせるのを感じた。
 なまめかしくふくらんだ乳房がむきだしになる。その女っぽさも、いまでは人
目にさらされたくなかった。
 美絵子は、薄いキャミソール一枚で、はだかにされ、途方にくれたような気分
で立ちつくしていた。この恥ずかしさも困惑も、彼らに好き勝手になぶりものに
されるときの気持ちにくらべたら、なにほどのこともない。
 「そいつも脱げよ。さっさと……」
 ストラップに指をかけ、ちょっとひきずりおろし、彼女の胸のふくらみがチラ
ッとみえるようしながら、銛夫が言う。
 命じられたとおり、美絵子はキャミソールを下にずらしていき、足もとに脱ぎ
おとした。かつて経験したことのない、このうえなく奇妙な感覚に秘肉の深みを
ひきつらせたまま、彼女はわななきながら立ちすくんだ。
 (ああ、みられている……)
 まるで、彼らの手荒なあしらいが、彼女を変えてしまったかのようだった。
 まったく生まれたままの裸身をさらしているうちに、ゆっくりと、だが確実に
たかまってくるその感覚を払いのけようと、美絵子は必死になった。
 女の操を守るためには、命をすてても拒みとおさなくては、と自らに言い聞か
せたが、つのる被虐めいた期待感をどうすることもできない。
 「だいじなところを拝ませてよ、奥さん……」
 かたちよくくびれた腰に手をあてがって、銛夫がうわずった声をだす。
 ふたたび、ベッドの縁に座らされ、目の前にひざまずいた銛夫が、ゆたかな恥
毛をかきわけ、感じやすい膣のとっかかりをむきだしにするまで、そうながくは
かからなかった。
 (ひ、ひどいことするのね……)
 恐れと奇妙な昂ぶりで、美絵子のからだはふるえた。彼女はいまや全裸で、ま
ったく無防備だった。
 「いやらしいびらびらが出ているよ」
 と銛夫。
 「そこんとこにぶちこみたくなったな……。奥さんもほしいんだろ……」
 強巻は、またもや、無理につかませた。
 ヌラヌラと脈打つものに触れたとたん、美絵子は、からだの芯がキュッと縮ま
った。
 (めちゃめちゃにされてしまうわ……)
 子どもの腕ほどの太さで、とてもおさめきれそうにない。
 「もっと、オッたててやりなよ……」
 銛夫がそそのかすと、強巻は立ちあがって激しくしごきあげた。美絵子の唇の
あたりをピタピタたたくと、ほこ先から水晶のように澄んだ液がひとしずく、ほ
とばしった。
 「こいつが好きなんだろ……。え、オネエさま……。あんたら、いいとこの奥
さんは、みんな、どでかいのが好きなのさ……」
 美絵子は顔をそむけようとしたが、ここで怒らせてはならないと思った。彼女
はみとめたくなかったが、時がたつと、悍馬(かんば)のようにいきりたち、精
液たっぷりに思えるほこ先をいとおしむ気持ちが徐々にわき起こってきた。
 「オレのをつかんでみたいだろ……」
 立ちあがった銛夫は、ヌッタリとつかみだし、美絵子の顔が自分の股間にくる
ように、あおむかせた。
 「ええ……」
 彼女は辛うじて答えた。
 「さわりたい……。あなたのにさわりたいわ……」
 「いいとも。拝ませてやる……。さあ、起きあがって、ひざまずけよ……」
 「やめて……。ダメ……。ね、大きすぎるんでしょ……。こわいわ……」
 こんなにも淫らに、しゃぶりたいと望んでいるにもかかわらず、美絵子は哀れ
っぽくつぶやいた。
 銛夫は、彼女を無理やりひざまずかせた。
 美絵子は、顔をそむけようとしたが、彼は、艶やかな頬を両手ではさみ、肉茎
のほうにむかせた。すくなくとも二十センチ近くはあろう。
 「ゆっくりしゃぶってくれよ、奥さん……」
 銛夫が言う。
 「たっぷり吸ってもらうよ……。噛みついたら、どうなるかわかるだろ……」
 一瞬、美絵子はさからったが、むだだった。
 銛夫は、彼女の顔を、むりやり勃(お)えきった股間に近づけた。
 チラッと触れただけで、猛々しくそそりたち、ピクピクと脈打つものを目のあ
たりにするような思いだった。
 「しっかり、両手でつかんでみるんだ……」
 欲情にかすれる声で、銛夫がおどす。
 美絵子は、他のふたりが左右からにじり寄ってくる気配を感じとった。
 彼らが、じりじりと迫り、それぞれ、かたく張りつめた肉茎から熱気を発して
いるのが感じられるほどだ。
 恥ずかしさと恐れにもかかわらず、美絵子の肉ひだのとっかかりは疼きどおし
だった。こんなにも間近に、彼らの怒張に迫られるのは、へんな気持ちだった。
秘密っぽい下べりがとろけそうだ。
 進退きわまった美絵子は、とり乱しそうになったが、その感情さえ、なんとな
く刺激的なのだ。
 ふるえる指先で、銛夫の亀頭をまさぐるうちに、彼女の快楽源は、しだいに熱
く濡れそぼってくる。
 「たっぷりしゃぶりたいのかな、奥さん……」
 仲間に目くばせしながら、銛夫が聞く。
 「突っこんでもらいたいんだろ?」
 横から強巻が口をだす。
 「こいつをなかに入れてもらいたいんだろ?」
 と銛夫。
 美絵子は弱々しくうなずいた。
 「あんた、結婚してるのか……」
 しらじらしく銛夫がたずねる。
 「いまは……、ちがうわ」
 なぜ本当のことを言ってしまったのか、自分でもわからぬままに、美絵子は答
えた。
 「それじゃあ、いろんなやつと楽しんだだろ、え?」
 ゆたかな髪を手で押さえつけながら、銛夫が聞く。
 彼女は、おずおずとかぶりを振った。
 「わたしの夫は……、亡くなったのよ……。車の事故で……」
 美絵子は涙ぐんだ。
 「いつのことだい……」
 しらじらしく銛夫がたずねる。彼の亀頭は、すでに先走りの精を洩らしはじめ
ている。
 「半年まえ……」
 彼女はすすり泣いた。
 「へえ、それっきり、男に抱かれたことはないのか……」
 と強巻がいう。
 「もったいない……。半年もやってないなんて、それじゃあ、ほしいだろ……」
 銛夫がささやく。
 「ああン……。あ……。わたしには、できないわ……」
 美絵子はあえいだ。
 「できないだって? いますぐ、たっぷりしゃぶらせてやるさ。あんたがほし
がってるものをね。この淫乱め……。いつもほしがってたやつをくれてやる……。
くそっ、あんたはよく締まるつぼを持ってるにちがいない……。半年もくわえた
ことがないって?」
 銛夫がせせら笑った。股間の毛深い巣のなかで、陰嚢が揺れ動いている。
 「でかいのがほしいか……」
 露骨に強巻がたずねる。
 「え……。ええ……」
 こわごわ獣のぬくもりをまさぐる美絵子は、小声でうなずいた。
 「あんた、子どもはいるんだろ……」
 と銛夫。
 「三人よ……」
 彼女は答えた。
 「息子もいるんだろ……。あんた、そのガキに突っこんでもらいたいんだろ…
…」
 銛夫がいじわるく言う。
 「いいえ……。そんなこと……。わたし、そんなこと……」
 と美絵子。十五歳の息子、晶彦に対して、これまでずっと抑えてきた奇妙な感
情が疼くのをおぼえ、ハッと頬をあからめる。
 「どうかな、奥さん……。あんたは息子のものをつかみ、しゃぶり、突っこん
でもらいたいのさ。母親ってのは、そういうものさ……。息子に対して言葉には
ださないが、心のなかでは、そう思ってるのさ。オレのにさわって、そんなに熱
くなってるのが、何よりの証拠じゃないか。オレたちは若いし、あんたは活きの
いいしろものに熱くなってるんだ……」
 と銛夫。
 彼のほこ先は、燃えたぎっている。
 「どう。そのとおりだろ。やりたくて、うずうずして眠れない夜があったんだ
ろ……」
 半むくれの包皮をゆすって、銛夫が聞く。
 「わたし……。よくわからないわ……。わたし……」
 美絵子はくちごもった。
 「さあ、しゃぶってくれよ。そうしたら、あんたがどんなに熱くて活きのいい
しろものが好きか、わかるってものさ……」
 かすれた声で、銛夫がせかした。
 肉茎がそりかえっている。
 美絵子は、おずおずとほこ先をまさぐった。彼女は、幸彦のものを口に含んだ
ときのことを思いだした。でも、あのときは、いとしさのあまりだった。いまは
まったく状況がちがうが、奇妙なことに肉の疼きは同じものだった。
 「根もとのほうに、しごきおろすんだ……」
 銛夫が無理強いをする。
 美絵子は、太くて、かたい肉茎をまさぐりおろした。根もとに近づくにつれ、
すさまじく勃起し、名状しがたい熱感がてのひらに伝わってくるのを感じる。
 (す、すごい……。やけどしそうだわ……)
 半年以上も、性のまじわりを断っていたので、男のものがどんなに熱くて、活
き活きしているか、ほとんど忘れてしまったのだ。
 銛夫は、彼女のうなじを押さえ、じりじりとひき寄せる。尿と垢の残りかすが
まじりあう饐(す)えた異臭が、ムッと鼻を衝く。
 あたたかく濡れた舌をさしのべて、鈴口を舐めずると、相手が腿をひきつらせ
るのを感じた。
 「もっと口をあけて、まるごと、しゃぶってくれよ……」
 銛夫がおどした。
 言われたとおり、美絵子は、かたちのいい口をできるだけ大きくあけて、王冠
部ぜんたいをスッポリ頬ばった。
 包皮をめくりあげ、なまなましいみぞを舌先でひとめぐりし、先端から裏側ま
で舐めまわす。
 美絵子は、久しくくわえたことがなかったので、たちまち激しく興奮した。
 「へえ……。彼女、サオしゃぶりが本当に好きだぞ……」
 銛夫がしわがれ声をだした。
 「舌の這わせかたがハンパじゃない……」
 それは嘘ではなかった。
 美絵子は、おしゃぶりが大好きだった。含むとはちきれそうになり、精をした
たらせるような肉具の味わいが好きだった。
 口のなかで脈うっているのが夫のものであったなら、あるいはこんなひどい状
態で突っこまれるのでなかったらよかったのに。そうなら有頂天にさせてあげら
れるのに――。
 「もっと舐めまわせ。もっと……。その喉にぶちまけてやる……。もっと……」
 無理やり喉の奥まで押しこまれて、美絵子は、あまりの大きさに、うっと呻き
そうになった。
 (ひ、ひどい……。こんな目にあわせるなんて……)
 やっと息をつきながら、ふたたびしゃぶりつづける。肉具に慣れるだけのゆと
りを与える優しさがあったなら、と思うが、銛夫は容赦しない。
 「ゼリーみたいに、なめらかな喉ちんこだ……」
 銛夫は性急にゆり動かし、なまめかしい喉の奥を突いたり、ひいたりしつづけ
る。
 すさまじく勃起した肉茎で、前後に突きくずされると、美絵子は、身をふるわ
せた。
 (く、くるしい……。窒息させるつもりなんだわ……)
 目かくしをされているだけに、彼女は、獣脂のようにてらてらする亀頭が、異
様に張りつめるのがこわくてならなかった。
 「彼女、フーゾクよりもうまいぜ……。やっぱ、おまえのカンがあたってたな」
 銛夫は、ツンツン・ヘアの若者をかえりみた。なまめかしい口腔をかきまわさ
れるたびに、美絵子は両頬をふくらませ、よくそろった歯に、鰓(えら)くびが
当たるのを感じた。
 こんなに荒々しく挑まれるのは口惜しかったが、美絵子は、そのさなかに喜び
を感じた。彼女のからだをつきぬけるおぞましい快感の戦慄には、恐れと性的興
奮が入りまじっていた。
 きれいな顔を辱められているうちに、銛夫の毛深い睾丸が頬に当たるのを感じ
る。まるで、血走った亀頭の熱気が、喉を焼きこがすようだ。いきりたつ相手が、
喉の奥にぶちまけ、あつい精液でみたすのは、間近だろうと思った。
 「銛夫、おまえばかりいい思いをするなよ」
 激しくしごきたてながら、強巻がぼやく。
 「スポスポ吸いたてるんだ……。もうすぐ、でちゃう……。先っぽを……。根
もとをシコシコしごけ……」
 肉茎が、ふいに張りつめた。
 充血しきったほこ先が、口のなかでピクッとしたかと思うと、一気に噴きあげ
る。
 銛夫の腰がそりかえり、根もとごと口腔に押し入ってくるのが感じられた。
 (ああッ、息がつまる……)
 精液がほとばしったとき、美絵子はからだを折りまげた。白濁が激しい勢いで
喉を流れくだり、なんども射精するのがわかった。
 「うまいぞ……。奥さん……」
 遂情(ついじょう)で太くなっただみ声で、銛夫がうめく。
 「あんた、お上品な顔のわりには、淫乱だな……。強巻、おまえの出番だ……」
 彼はあとずさり、年上の女の口から、まだ萎えきっていない肉茎を、スポンと
ひきぬいた。
 「任せておけよ。彼女、しゃぶるのが本当に好きそうだぞ……」
 毒々しく血管が浮きだした怒張を濡れた唇に突っこもうと、強巻が応じる。
 目かくしのまま、美絵子は目をしばたたかせた。彼女の肉ひだのすぼまりが、
とろけるように熱くなっている。
 この半年来、経験し得なかったほどの官能のたかまりがはじまっている。
 美絵子は、最初の試練が過ぎ去ったのを感じた。




         第二章 義姉さん、いいんだろ?



 強巻が亀頭を押しつけると、美絵子は、いやだと思いながら、それをしゃぶり、
口のなかでもてあそびたいという願望に憑かれ、舌先をチョロリとだした。
 「はじめてもらおうか、奥さん……」
 強巻がいきまいた。
 「まだ、ふたり残っている……。いっしょにおしゃぶりしてやれよ……」
 完全に満足しきっていない銛夫は、またもやしごきたてながら、彼女をせかせ
た。
 「ああ、ダメ……。わたしには……、できないわ……。そんなこと、とてもで
きない……」
 美絵子はあえいだ。
 「なぜだ……あんたにゃ、まずすぎるってのか、奥さん……」
 強巻があざける。
 「大きすぎるの……。無理よ……。いっしょになんて……」
 美絵子はあらがったが、その声は心なしかうるんでいる。
 先走りの精を洩らす亀頭を、なめらかな頬に押しつけながら、強巻がせせら笑
う。
 「さあ、オレたちのを早くしゃぶれ。それとも、きれいな顔をめためたにして
ほしいのか……」
 強巻がおどす。
 ツンツン・ヘアの若者も、ズボンのファスナーをあけ、毒々しい肉の柱をつか
みだし、ぶよぶよしたものを彼女の唇の間に押しこもうとしている。
 二つのスポンジ状の熱いかたまりが、なまぐさい男のにおいを発するのを知っ
て、美絵子は、怯えながらうなずいた。
 「わ、わかったわ……。でも、やさしくしてね……」
 しなければどうなるか、その結果をおそれたばかりでなく、彼女にも心の昂ぶ
りがあったからだった。
 美絵子は、ふたりをひき寄せたが、太くて長いため、それぞれ片手をのばして
も、途中までしかつつみきれなかった。彼女は、ヌラヌラする亀頭を手でしごき、
ふたりの根もとを得も言われぬ快感で疼かせてやった。
 「さあ、はじめろ。もっといい気持ちにさせてくれ……」
 強巻がきしむような声で言う。
 ツンツン・ヘアの若者は、息をはずませるだけで、一言も発しない。
 美絵子は、しごきたてるだけで射精させ、おしゃぶりをせずにすませたいと思
った。しかし、強巻が彼女の思惑をみすかして手をはらったので、間一髪で思い
とどまった。
 「よう、奥さん。……なにをしてるんだよ。ほしいんだろう? はじめろよ、
早く……」
 淫らがましく腰を突きだして、強巻がせきたてる。
 「たっぷりとな……。あんたの喉を使うんだよ……」
 美絵子は観念した。彼女はかたちのいい口を思いきりあけ、きれいな唇をふた
りのまえりさらした。目かくしされているので、ひどくエロティックだった。
 なまめかしく伸び縮みする唇の輪が、ふたりの亀頭をからめとり、ユルユルと
覆(おお)いをかけるまで、彼ははゆっくり時間をかけさせた。
 「そう……。その調子だ……」
 強巻が動きはじめる。
 「そう、そう……。あんたは上物(じょうもの)にであったんだ……」
 ふたりは、求心円を描きながらしきりにこねまわしはじめた。前後に突き、ひ
きぬいたり、ねじこんだりする。激しく動く二つの熱い感覚は、彼女を信じがた
いほど興奮させる。
 美絵子は、われしらず濡れそぼってくるのを、必死に自制しようとするが、い
まとなってはそれも叶わない。
 (ああン、だめよ……。そんなにかきまわさないで……)
 無理強いされながら、こんなふうに応じるのが悪いことだと知りながら、彼女
は昂ぶってくる。
 「奥さん、喉の奥にがっぽりくわえこめよ……。タマタマもいじってくれ……」
 彼女の欲情は、ヒクヒクと疼いている。いっそ、ひと思いに受け入れたい。
 「もっと、つよく……」
 強巻がうめく。
 スポスポと出し入れしながら、彼は傘のように張りだした鰓(えら)くびが、
真珠のような白い歯に当たって、かすかにこすれるのを感じた。
 「銛夫、みろよ。うわばみみたいだ……。二ついっしょに入っちまってる……」
 彼らは、無抵抗な年上の女に対する情欲にいきりたっていた。目をギラギラさ
せて、絹のようになめらかな女の顔をみつめている。こんなふうに燃えあがり、
経験ゆたかな女が相手だと、あの手この手の楽しみも考えることができる。
 「サイコウだ。こんなに吸いっぷりのいい女がいるんなんて……」
 と強巻。
 「いいかげんにしろよ。まだホンバンてわけじゃないんだぞ……。もう、オレ
は待ちきれない」
 銛夫が毒づいた。彼が入れたがっているのはあきらかだった。
 美絵子は、ふたりの亀頭がやわらかな喉の奥にぶちあたり、きついひと突きご
とに息がつまりそうになるのを感じた。きれいな顔を激しく攻めたてて、彼女が
どんなにあえいでも、彼らは、いっこうに意に介さないようだった。
 ふたりの思いはただひとつ、彼女をいたぶりつくすことだった。美絵子は彼ら
の力にへとへとになり、なすがままにされていたが、いずれにせよ、信じがたい
ほどのたかまりをおぼえていた。
 「いい、いい……。彼女、口のなかに締まりのいいつぼを持っているみたいだ
……」
 とめどない疼きに、美絵子も応じはじめた。突きをくれる腰にあわせて、髪を
ゆさぶり、スポリスポリと吸いたてる。こわばりが喉の奥にとびこんでくるたび
に、彼女は息苦しさにあえいだが、どうやら息がつまらずにすんだ。彼らのあつ
くたぎる精液が、いまにも噴きだしそうになっているのを、彼女は感じた。
 「へえ……。むきになって吸いたててるみたいだ。ああ、たまらねえ……。先
っぽからとろけちまいそうだよ、もう……」
 強巻が声をかすれさせる。ツンツン・ヘアの若者も、情熱的に集中しはじめる。
 「めためたにしちまえ、強巻。おまえがどんなふうにやるか、奥さんに教えて
やれ」
 待ちきれずに、自分の腹にピタピタ打ちつけていた銛夫がせっついた。
 「いまだ……。おおおっ、いっちまう……」
 強巻が一声うめく。
 ツンツン・ヘアの若者も無言で応じて、ふたりいっしょに勢いよく精液をおく
りこんだ。
 美絵子は、うっと息がつまりそうになり、おびただしく白濁が流れこんできた
とき、ふたりの鰓くびが、ピクピクと痙攣(けいれん)するのを感じた。熱くて、
どろりとしたものは、口蓋にとびちり、粘ったスープのように、彼女の喉になだ
れおちる。
 (すごい量だわ……これで、彼らは満足してくれたかしら……)
 美絵子は、肩で息をつき、やっとのみ下すことができた。
 興奮さめやらぬふたりは、射精したあとも、なお、彼女の吸いこむ唇のなかで、
やわらかくなってゆく肉茎をゆっくりと動かしていた。
 ついに彼らが湿った音とともにひきぬくと、美絵子は、舌で自分の唇のまわり
を舐めとった。
 「あんた、それが好きなんだろ?」
 射精した快感で、まだ息をはずませながら、強巻が聞く。
 「言ってみろ……。おしゃぶりが好きなんだろ?」
 「わたし……。たぶん、そうだと思うわ……」
 なるべく早く答えて、あとは黙っていようと、美絵子は思った。
 「オレたちのこれを、あんたがすっかり気に入ると思ってたよ……」
 岩のようにかたいほこ先で、彼女の頬をピタピタたたきながら、銛夫がのりだ
してきた。
 「オレたちは、こいつを一日じゅうふりまわしていられるんだ。あんたの腰が
ぬけるまで、突っこんでやれるんだよ。奥さん……」
 銛夫がほざく。
 「そうしてもらいたいか、奥さん?」
 強巻が下卑た嗤いを浮かべた。
 美絵子は、自分がひそかにもとめているのに気づきながら、この感情をぜった
いに知られてはならないと、イヤイヤするように首を振った。
 不良学生の三人に犯されると思っただけで、彼女の秘唇はあやしくおののいて
いる。彼らのいたぶりはこれが最後ではなく、おぞましい情欲がみたされるまで、
さらにもてあそばれるだろう。
 「あんたももよおしてるんだろ。奥さん……」
 悩ましくも、粘りのつよそうな蜜ひだにスッポリのめりこみたそうな肉茎をし
ごいて、銛夫が聞く。
 「どうなんだ……。もう、その気になってるんだろ」
 容赦なく彼が問いつめる。
 「ええ……。そう……。そうよ……」
 威嚇にこらえきれなくなって、美絵子はおどおど答えた。
 「わたし……。自分でなにを言っているのか、よくわからないの……」
 恥じ入る気持ちに衝きあげられ、彼女は声をあえがせた。
 「へっ。きどった女ってのは、そんなものさ……。抱かれたいのに、そうみと
めるのをこわがっているんだ」
 と強巻。
 「ようし、わかった。奥さん、ほしがっているものをくれてやろうじゃないか
……」
 銛夫が決めつけた。
 「一晩じゅうぬきさししてやるよ。気が遠くなるまでな……」
 強巻がほえた。
 「いやらしいびらびらが、あつく濡れちゃってるんだろうが」
 すんなりした美絵子の両腿のつけ根を撫であげながら、銛夫が聞く。
 美絵子は、弱々しくうなずいた。
 彼女は、ベッドの端で、膝を折りまげて座っていた。彼らの目に思いがけぬほ
ど濃い恥毛が映った。あきらかに年上の女の感度をみぬいたようだった。
 (早くもおそくも、どっちみち同じことだわ……。連中が、かわるがわる、わ
たしのからだをたしかめるのは……)
 「とっくり拝ませてもらいたいな……」
 銛夫がいじわるそうに言う。
 美絵子は立ちあがるのを拒んだが、銛夫にあっけなく両腕をつかまれ、むりや
り座らせられた。目かくしされているので、どうしようもない。
 三人ががりで大股びらきにされながら、彼女は恐ろしさと異様な興奮に、身ぶ
るいした。
 「いいとこの奥さんのあそこは、まだみたことない……。どんなになっている
のか、楽しみだ」
 美絵子の前にひざまずいた銛夫は、その両膝に手を置き、ぐいと左右にこじあ
けた。他のふたりが、まじまじとみつめる気配がする。
 押しひらかれるにつれて、美絵子は下腹部がかるくひきつるのを感じた。秘密
っぽい快楽源があつくなっているのを、はっきり知られたのがわかった。下べり
のすぼまりがほぐれて、蜜がにじみだしている。
 「みろよ。こんなにきれいな色をしてる……」
 銛夫がひやかした。
 美絵子は足を閉じようとしたが、むだだった。彼らにさからうには、あまりに
相手の力がつよかった。
 「たまんねえぜ……。おつゆたっぷりだ。あんた、まだこってり使いこんでな
いな……。奥さん、宝の持ちぐされってもんだぜ。きょうは、たっぷり使ってや
る……」
 美絵子の内腿を撫であげながら、銛夫が言う。
 ほかのふたりも膝をつき、淫らがましくむきだしになった彼女のお・ん・なの
部分をのぞきこもうと、首をのばした。
 強巻が押しひろげているうちに、銛夫がいやらしくまさぐった。
 「ヌルヌルしたものをだしている……」
 むりやり気をそそられた美絵子は、もはや足を閉じてかくそうともしない。
 (わたしは、なにもみずにすむんだわ……。それなら……)
 捨て鉢めいた感情がわきおこり、彼女はもじもじしながら、いつしか両腿をゆ
るめ、彼らに、ハッと息をのませた。
 美絵子は、彼らと同じくらい、淫らな気分になりつつあった。
 銛夫の指先で、ヌラヌラする対(つい)の肉びらをまさぐられると、彼女は異
様な快感に腰をふるわせた。
 「もう、とろとろじゃないか……」
 指先を鈎(かぎ)状にして、深奥をたぐる銛夫は、かすかな泡だちを付着させ
て、あざわらう。
 「そ、そんな……」
 つよく打ち消そうとしたものの、美絵子は、もう半年以上も火をともされたこ
とがなかったし、ましてや貞淑な人妻を狂おしくさせるこの種の技巧にであった
のは、あとにもさきにもない。
 「こいつは、きつい……」
 淫らな腔腸(こうちょう)動物のように収縮する感覚に、指先をくわえこまれ
るのを感じながら、銛夫が言う。
 「ビンビンしたものをくわえてもらったら、たまらないぞ……」
 「どんな気分だ、奥さん……。あんたのつぼをいじくりまわしてるやつの指が
好きか……」
 ふっさりと濃い恥毛のしげみに指をからませながら、強巻が聞く。
 「ええ……。好きよ……。そう、そうよ……。わたし……。これが好き……」
 欲望をあらわにして、美絵子はあえぐように答える。
 「指を二本突っこんでやる……。どうだ、三本にしたら……」
 銛夫は、じわじわと増やして、ぜんぶの指がねっとりと潤む秘裂に埋まるまで、
さしこんでゆく。
 「ああン……。痛くしないで……。おねがい……。いやあ……。わ、わたし、
これが好きよ。やさしく、かきまわしてちょうだい……」
 美絵子は歯のこすれあうような声をだした。蜜壺は熱気で、むんむんしている。
 銛夫は、緩急自在に、いかにも巧みにふるまっている。ゆっくりうごめかした
り、頃あいをみて、激しく攻めあげたりする。しばらく肉ひだをならすと、拳を
使った。グリグリひねりながら、指関節が鋭敏な粘膜に当たるようにする。
 (あああ……。おかしくなりそう……)
 愛液があふれ、銛夫の手首につたいおちる。
 ほかのふたりも、美絵子のからだをくまなく撫でまわす。強巻は恥毛を指にか
らませながら陰阜を撫でさする。ツンツン・ヘアの若者は、胸のふくらみに触れ、
乳首をつまんではもてあそぶ。興奮のあまり、指先がブルブルふるえている。時
おり、しっとりとなめらかな腹部にてのひらを這わせては、声にならぬためいき
を洩らしている。
 「もう、入れてもいいみたいだ……どうする……」
 指をひきぬきながら、銛夫が声をかける。
 「オレからためしてやる」
 強巻がすすんで、その姿勢をとろうとする。
 「どすけべ。おれが一番のりだよ」
 銛夫がどなりつけ、強巻を押しのけた。
 「わかったよ。でも、二番手はオレだぜ……」
 と強巻。
 「それでいいのか?」
 銛夫が、ツンツン・ヘアの若者をかえりみた。言われた相手は、不満げに口を
閉じたままだった。
 「オレが二番目に、この女をとっつかまえたんだ。文句はないだろ……」
 強巻はゆずろうとしなかった。
 「いや、おまえは三番手だ。がたがた言うな……」
 銛夫が順番を決めた。
 「おねがい……。はやくして。ああン、だれでもいいわ。ほしいの……。ああ
ン、なんとかして……」
 美絵子は、歯のこすれあうような声で、矛盾だらけのわけのわからぬ悲鳴をあ
げた。
 銛夫は、太くてかたい亀頭で数回突きをくれてから、ねっとり濡れそぼった美
絵子にのしかかった。
 「あううう……。もう……」
 大きくて、かたい亀頭冠が、クリームのようにとろけた割れ目をこじあけて押
し入ってきたとき、美絵子は思わずうめき声を洩らした。
 「か、かんにんして……。つ、つらいわ……」
 勃(お)えかえって脈うつ肉茎が秘孔をふさぎ、ミリッと重圧がかかる。彼女
は、それが奔馬のように跳ねまわり、あつく激しく抽送されるのを、狂おしく望
んだ。
 「ああン……。わたしを犯(や)って……。もっと、つよく……。わたしをめ
ちゃめちゃにして……」
 彼女は声をふりしぼった。
 その悲痛なよろこびに刺激されて興奮した銛夫は、勢いよく抜いたり、入れた
りしはじめた。そのたびに、めくれかえったびらつきに締めつけられるような気
がする。まるで千の唇にくわえこまれるようだ。
 「いいぞ……。おおお……。思ったより狭いんだな……。もっと腰を浮かせろ
……」
 美絵子の蜜壺は、ここを先途と燃えさかっている。荒ぶる肉筒の摩擦は、彼女
の快楽源を熔鉱炉に変え、襞のあわいのうるみは、めくるめく泡だちと化してい
る。
 「オレがいただいているあいだ、だれか乳首を舐めてやれよ……」
 おたけびで早鐘をうつ心臓をかかえて、銛夫がわめく。
 「おねがい……。だれか、わたしのお乳を吸って……。そうされるのが好き…
…。わたしをなぶってちょうだい……」
 やけただれるような情火のなかで、彼女はうめいた。
 ツンツン・ヘアの若者は、勃起した彼女の乳首に唇を押し当て、情熱的に吸い
はじめた。たくみに乳房を揉みしだかれて、美絵子はうずうずした気分になり、
一回、一回、勢いよく没入する肉茎をくいしめ、子宮頸部のあたりまで衝撃と疼
きを走らせた。
 「ほしいわ……。されながら、しゃぶるのが好き……。おねがい、だれかしゃ
ぶらせて……」
 放恣な欲望に身をゆだねきって、彼女はさけんだ。
 「そうこなくっちゃあ。オレのは張りきってる。なんて、いろっぽいおちょぼ
口なんだろ……」
 彼女の顔のうえで、悩ましい唇に怒張を突っこみ腰を使いながら、強巻が言う。
 「ずいぶん、なめらかになってる……。奥さん、感じてるんだな……」
 彼が突いたり、ぬいたりしつづけると、美絵子はくるしげにあえいだ。銛夫も、
獣のように突きおくりする。
 (あああ……。上も、下も、いま、自由にされてるんだわ……)
 美絵子のからだに、ふるえと衝撃が走った。
 「銛夫、いいかげんに代わってやれ。それが約束だよ……」
 と強巻。
 「くそっ。もうすこしでイきそうだってのに……。まあ、楽しみはあとにする
か……。さあ、やれよ。オネェさま、もう、ぐしょぐしょだぞ……」
 しぶしぶ銛夫はひきぬき、わきに退いた。
 さっきから情欲に目を血走らせたツンツン・ヘアの若者は、猛然と美絵子の腰
をひきつけると、狙いをさだめて、まともにヌルリと嵌(は)めこみ、奥まで一
突きにつらぬいた。
 (あううう……。き、きくわァ……)
 美絵子は箍(たが)がはずれたようになり、無意識に相手にしがみつき、背中
をかきむしった。
 異様なやさしさで頬ずさりされながら、8の字に腰をひねられると、うわぞり
の筒先が螺旋状にねじあげられるのを感じる。そのたびに、秘密っぽい肉の突起
がくすぐられ、ほこらのとば口が狂おしく燃えさかり、またたくまにのぼりつめ
そうだ。
 「いい気持ちだろ……。そんなにいいのか……。ほら、ここならどうだ……」
 ツンツン・ヘアの若者が、はじめて声を出し、彼女の唇を吸いたてると、きち
がいじみた激しさで攻めたててくる。
 (どこかで聞いたことのあるような声だわ……)
 と思いながらも、美絵子は、ううっと息がつまって背をのけぞらせる。
 「そ、そこ……。もっとつよく突いてちょうだい……。いい、いいの……」
 きれぎれのうめきのなかで、彼女は積極的な鼻声をたてた。
 ものぐるわしい摩擦感で、美絵子の秘蜜はあふれにあふれ、ヌラヌラと臀裂を
つたい、激しい官能の波は、放射状に拡散し、肛門がヒクヒク収縮した。
 「強巻、目かくしをとってやれよ。こんなによがっているんなら、顔をみたい
だろ……」
 きらめくような登頂の嵐が吹きあがってきたとき、美絵子は喜びの声をあげよ
うとした。甘美な快感の波がつぎつぎに押し寄せ、いつ目かくしがゆるんだのか
わからないほどだった。
 若者は、嵩にかかった傲慢さで、次々にむきを換え、位置を換え、勢いよく突
いており、彼女を刻々と煽りたて、最後のとどめを刺そうとしている。
 「おお、いきそうだ……。どうだ……。無理にやられてるのは、どんな気持ち
だ。え、言ってみろよ、ネ・エ・さ・ん……。くやしいのか……。それとも……」
 美絵子は、あたまのなかまでかきまわされているような気分で、しとどにゆる
み、顔をしかめている。
 「ああン……。いいのよ、いい……」
 若者がまた突き、彼女はうめいた。
 「もう、我慢できない……。いきそうだ。ネ・エ・さ・ん、目をあけろ……。
おお、いくう……」
 若者は声をきしらせ、一挙に爆(は)ぜた。つづけざまに痙攣が走って、炸裂
する。筒先を衝撃が走りぬけ、胃袋がギュッと締まる。
 「わたしも……。い、いく……。いい気持ちよ、いい気持ち……」
 美絵子は、おぞましい精液を噴射され、火花がとびちるような感覚の波に押し
ひしがれ、恍惚としながら目をあけた。
 目の前に、若者の顔が迫っている。
 「あッ、あなたは……。烈彦(れつひこ)さん……」
 彼女は狼狽しきって、思わず相手を突きはなそうとした。
 亡き夫の弟、烈彦ではないか。
 「どうして、あなたが……。ひ、ひどい……。は、はなして……」
 美絵子は突きのけようとするが、ドロリと精液が臀裂につたわり、烈彦は、な
おも小気味よげに、狭い構造のなかでピクピクさせている。
 「ひどいもなにも、あんなに喜んでたくせに……。ネエさんが、こんなに感じ
やすいなんて、ちっとも知らなかった……」
 「な、なんてこというの。あなたは義理でも、おとうとでしょ……」
 「だから、なんだってんだ……。一度やらせておきながら、なにをいまさら…
…」
 烈彦は、せせら笑って、グイグイゆり動かした。
 くやしい、と思いながらも、美絵子は、争う力がぬけてしまう。
 彼女はすすり泣きながら、つい応じてしまう。
 「兄貴が生きていたころから、一度はやりたいと思ってたんだ。女社長だなん
て、ガラにもない……。ネエさんは、男に抱かれるのが、いちばん好きなんだろ。
もう、こうなったら、オレの言うとおりにするんだな……」
 烈彦は、勝ち誇った表情で、ヌルリヌルリと大腰を使い、無理やり唇を吸いた
て、あつい精液を、最後の一滴までしぼりだした。
 (なにもかも罠なんだわ……。わたしをこんな目にあわせるなんて……)
 義弟の悪辣さにすすり泣きながらも、美絵子の膣ひだはなおも収縮し、まるで
淫らな腔腸動物のように、べとべとの精液をヒクヒクとからめとっている。
 「約束ははたしたぞ……。こんどはオレの番だ」
 銛夫が獣脂のようにてらてらする亀頭をふりたて、烈彦を押しのけた。
 美絵子は、なすすべもなく、じっと身をすくめている。ひとまわりも年下の義
弟に汚されてしまった以上、いまさら取り返しがつかない。へたに騒ぎたてても、
どうなるものでもない。
 「じっとしてろ……。ほかのやつがぶちまけたところに突っこむのは、あまり
好きじゃないが、これもなりゆきだな……」
 美絵子は、目の前で銛夫がふりたてる肉筒をみつめ、おどろきのあまり、息を
つめた。毛ぶかい根もとからくびれた王冠部のみぞにかけて淫靡な血管が浮きだ
し、てかてかした光端の裂け目から、さきほどの精がにじみだしている。
 (こんなに大きかったのかしら……。こわい、けがをしそう……)
 ズルリ、ザラリとこすりつけると、銛夫はわざと狙いをはずして、会陰部に突
きたてた。
 「そ、そこじゃないわ。や、やめて……」
 美絵子がひるむと、
 「それなら、自分でつかんで、しっかり入れろ……」
 銛夫がほくそえむ。
 やむなく、彼女は指先をのばし、まともにひきこんだ。
 「あううう……」
 すさまじく脈うつ怒張が、処を得てのめりこむと、美絵子は殉教者さながらに
うめいた。
 銛夫は、きちがいじみた激しさで突きあげてくる。あつく濡れた肉ひだに、ど
ろりとした烈彦の精のなごりが、いやらしく湿った音をたてている。
 「こんなにとろとろに練れてるなんて……。強巻、おまえのときは、すこし拭
きとったほうがいいぞ……」
 剛毛におおわれた銛夫の腹筋が、たくましく打ちつけると、美絵子はあやしい
戦慄が走るのをとどめることができない。
 銛夫はとどめをさすまで、執拗に彼女を攻めさいなんだ。烈彦と強巻は、なま
めかしくも、典雅にのたうつ女体をとりかこみ、なめらかなやわ肌に肉茎をこす
りつけ、むきだしの乳首をかい撫でたり、かすかに麝香(じゃこう)のにおいを
放つ液の下にねっとり接吻したりした。
 彼らの舌は、美絵子のとろける肉体を舐めまわし、からだじゅうを這いまわる。
 「おおッ……。でちゃう……。すっかりでちゃう……」
 銛夫が快感のおたけびをあげた。
 彼は射精しつくすと、美絵子のわきに倒れこんだ。
 「烈彦……。あこがれのネエさんをちょっと借りるぜ……」
 虎魚(おこぜ)のように頬骨の張った強巻をみると、彼女はチラと眉をひそめ
たが、ぐわっと埋めこまれると、ズンと背すじに戦慄が走った。
 「待って……待ってよ……。すこしやすませて……」
 かまわずに、ズルリ、ザラリとぬきあげる。むずがゆいようなほこ先のうごめ
きに、美絵子の腰が、不本意にくねってしまう。
 「ハァーッ……。ああン、か、かゆいわ……。どうしたのかしら……。い、い
やッ……。そんなにしちゃあ……」
 息をひくようなあえぎが彼女の口から洩れ、両手をワナワナとふるわせる。指
先がギュッとてのひらをにぎりしめる。
 「ネエさん……。武藤社長の言うとおりにしたほうがいい……。オレが話をつ
けてやるから……」
 烈彦はせせら笑いを浮かべたが、美絵子の耳には、もう、なにも聞こえない。
 「そんなことより、今夜はとことん楽しもうぜ……」
 銛夫がうそぶいた。
 彼女は、わが身にふりかかりつつあることを、まだ、はっきりとは理解してい
なかった。信じがたいほどの肉の昂ぶり、荒々しいいとなみしか念頭になかった。
彼らによって、絶えて久しい快感がよみがえってくるのが、おぼろけに感じられ
る。
 (あのひとを失って、りっぱな未亡人を押しとおそうとすることが、あまりに
も不自然だったんだわ……)
 美絵子は、自分がひたすら性の喜びを望む気持ちを抑えてきたこと、そのため、
欲望が心の奥にわだかまっていたことに気づいた。
 (もっと、めちゃめちゃにして……。なにもかも忘れさせて……)
 彼女は、いまや、彼らが自分を思うさまもてあそんでくれることを、心の底か
ら望んだ。このようにしどけなく、とろけるような情欲にひたりきるなんて、恥
ずべきことと思いながらも、自分を抑えることはできなかった。
 「ネエさん……。いいんだな……。これからもとっついてやるからな……」
 ツンツン・ヘアの烈彦は、美絵子の秘部の匂いを嗅ぎながら、たくみに舐めあ
げてゆく。
 「もっと舐めてやるよ……。こうされるのが好きなんだろ……」
 「ああン、へんな気持ちになりそうだわ……。そんなにされると……」
 彼女は心ぼそげにうったえたが、肉のびらつきをねっとり舐められると、おぞ
ましさとうらはらに、いつしか悩ましい突起がかたくなってくる。
 かわるがわるぬきさしされ、美絵子の艶やかな肉層は、すでに蜜があふれ、な
まめかしくとろけきっているにもかかわらず、まだものたりなかった。
 烈彦のマンションのベッドのうえで、彼らともつれ、まぐわいながら、美絵子
はなおももとめつづけている。
 「すごい乱れようだな。みろよ、こんなにどろどろになってる……」
 リーダー格の銛夫がせせら笑う。
 いまや、彼女は欲情に燃えるあばずれであり、烈彦たちにそのことを知られ、
思うさまなぐさまれていることを、はっきりと自覚したのだった。




         第三章 ねえ、気持ちいいでしょ?



 「忘れものはないのね、晶彦……」
 美絵子は、ステーション・ワゴンのなかからさけんだ。
 「なにがあるかわからないから、ぜんぶ用意しなくちゃ……」
 「持ってきたよ、ママ……」
 ガレージから大型ライトをとりだしながら、十五歳の息子が言った。
 「自然観察や、昆虫採取の道具は持っていくの、亜衣子?」
 車の奥に積みあげた備品の山をチラッとみて、彼女は十四歳の娘に聞いた。
 「亜衣子ったら、殺虫瓶や吸虫管を幾つも積みこんだのよ……」
 と、十五歳の玻瑠子が言った。彼女は晶彦と二卵性双生児で、ふたりとも高校
生だった。
 「ほんと言うと、あたし、晶彦と亜衣子があのいやらしい昆虫を採取するの見
たくないわ……」
 と玻瑠子。
 「それなら、休みの間じゅう、花でも摘んでりゃいいじゃない」
 亜衣子がひやかすように言った。
 美絵子は子どもたちのじゃれあいには慣れていたので、知らん顔をきめこんで
いた。
 子どもたちは、あきらかに降ってわいたような別荘行きにはしゃいでいた。女
社長として忙しい母親が、シーズンの半ばをすぎてから、八ヶ岳にでかけようと
言いだすのはめずらしいことだった。
 しかし、美絵子にとって別荘にでかけるのは、単なる骨やすめ以上のものだっ
た。
 彼女は、義弟の烈彦や不良学生にたらい回しにされて、もの狂おしく、異常な
セックスの一夜をすごしたばかりだった。
 (あの連中は、けだものだわ……)
 恨めしさもつのるが、彼女のうちなる女の本能をめざめさせた一夜――。
 荒々しい突き入れがかきたてるおぞましい感覚に、ついに屈服し、受け入れた
とはいえ、彼女は容赦なく犯されたのであり、その試練はむざんな影響をおよぼ
していた。
 (まるで地獄だったわ……)
 かすり傷と痣をつくっただけだが、彼らはえぐりたてるたびに、激しく執拗に、
変態的にむさぼったのだった。
 (あんたみたいに具合のいい人妻は、みたことがないぜ……)
 彼らは、何時間ももてあそんだあとで、やっと美絵子を帰らせてくれたのだっ
た。おそらく、ある時点から彼女が積極的に腰をうごめかせたせいかもしれない。
 (ネエさん、これで終わったと思うなよ……。オレが呼んだら、いつでも、相
手をしてくれよな……)
 義弟の烈彦は、別れぎわに、無理やり彼女を騎乗位にさせ、
 (もっと、けつをふりたてろ……。なんて締まり具合がいいんだ……。このつ
ぎは、けつの穴にぶちこんでやるからな……)
 とおどした。
 三流大学に在籍しているが、一見、しょうゆ顔の超ハンサムボーイの烈彦は、
気ままなマンション暮らしで、ショコラ会長の親のスネをかじっている。
 美絵子にとって、舅(しゅうと)にあたる彦兵衛は、長男の幸彦が亡くなると
嫁の彼女を社長にすえ、自分は会長として後見役をつとめている。
 烈彦が、いつ、どのようにしてムトー製菓と関わりを持つようになったかわか
らないが、こんどのことは、ぜったいにいやがらせだった。
 (兄嫁に、あんなことをするなんて……)
 美絵子が、この衝撃と屈辱から立ち直るのは、生やさしいことではなかった。
あれから一週間というもの、どの物かげにひそむ人影をみても、いつ襲われ、拉
致され、また犯されるのではないかと気が気ではなかった。といって、彼らを訴
えることもできない。新聞ダネにでもなったら、それこそ、ショコラを乗っ取ろ
うとする武藤一派の思うツボだった。
 「しばらく休暇をとって、リフレッシュしてくるわ……」
 彼女は、信頼できる副社長の曽我と常務の高山に後事を託し、実家の木下家を
継いでいる兄に、
 「このところ、疲れ気味なの……。どうしたらいいかしら……」
 と相談した。
 「別荘にでも行って、子どもたちと気晴らしでもしたら……。よかったら、和
貴子もいっしょに連れて行けばいい」
 和貴子は、彼女の末妹で、二十三歳になったばかり。最近、文壇の圏外で評判
になった美貌の新進作家である。
 美絵子は喜んで、兄のすすめに従った。
 「おねえさん、準備完了よ……」
 明るい和貴子の声に、彼女はハッとわれに返った。
 運転席の和貴子の、眉が濃くあざやかな顔だちは、姉に似ている。年齢よりも、
見かけはグッと若く、あどけなさと大人っぽさのアンバランスな魅力がある。
 総勢五人。
 田園調布から八ヶ岳の麓の別荘まで、夕方に出発しても、中央高速をとおって、
二時間ちょっとの道のりだった。
 「そろそろ、ナデシコやキキョウが咲きはじめるわね」
 と美絵子。
 「ウサギやリスがまだ居るっていうけど、ほんとうかしら……」
 玻瑠子が聞く。
 栗色のロング・ヘア、母親似の大きな目をした美少女である。ふっくら盛りあ
がった胸のあたりが、匂いたつように初々しい。
 「野鳥も、まだたくさんいるんでしょう。このあいだお友だちが、あんまり啼
(な)き声が聞えないよって言ってたけど……」
 と次女の亜衣子。色白で、人形のような透明感のある典型的なシャンプー少女
である。「ママ、別荘に着くまで、すこしやすんだら……。ぼくがついてるから、
だいじょうぶだよ……」
 と晶彦。
 (心づよいことを言ってくれるわ……)
 世話のかかる子ども連れだと、しんからのんびりはできまいが、かえって楽し
い時間が過ごせるかもしれない、と美絵子は思う。
 ステーション・ワゴンが、森につづくほのぐらい小径(こみち)にさしかかる
まで、短いようで長い時間だった。
 「わー、グリム童話の世界に入ってゆくみたいだわ……」
 と亜衣子。
 子どもたちは、闇が深くなるにつれて、気持ちがはずんでくるらしかった。
 美絵子は、あたりをつつむ平穏と静けさが、痛んだ神経をなだめる作用がある
のをみとめざるを得なかった。
 光でさえ、ひややかに落ちついてみえる。空気はさわやかで、ひんやりして、
いい匂いがする。
 「あと、どのくらいで別荘に着くの、ママ?」
 窓から顔をだし、前方の道をみわたしながら、亜衣子がたずねた。
 「もう、すぐよ。右手にシーダーハウスがみえたら、落葉林のあいだをぬける
の……。その先の丘の上よ。毎年来てるのに、ちっともおぼえないのね……」
 輪姦の記憶をふりはらうように、美絵子は答えた。
 「ちょっとおそいんじゃない……」
 と和貴子。
 「去年、パパとでかけたキャンプのときみたいに、ひどいことにならないかし
ら。あたし、藪蚊にさんざん刺されたのよ。それに、おそろしい蜘蛛がどこにで
もいるんですもの……」
 と亜衣子。
 (そうだったわ……。去年は、あの人はとても元気だったのに……)
 フッと胸をつかれたが、美絵子は感傷をたちきるように言った。
 「亜衣子、あのときはテントのなかだったでしょ。別荘ならだいじょうぶ。そ
れに必要なものは、ぜんぶ揃っているわ。留守中の管理は、地元の知り合いが定
期パトロールをやってくれてるし……。まあ、ちょっとぐらい埃をかぶっている
かもしれないけど、みんなでお掃除を手伝ってね……」
 「すぐ食べられるものを、たくさん持ってくればよかったなあ。おなかがペコ
ペコだよ……」
 と晶彦。
 「なに言ってるの……。まだ、二時間ぐらいしかたってないのに……」
 と美絵子。
 「きっと、さわやかな高原の空気のせいよ……」
 和貴子が笑った。
 「あたしたち、インスタント食品をいっぱい持ってきたもン」
 と亜衣子。
 「そうよ。お兄ちゃんと亜衣子は、たくさん食べるもの……」
 玻瑠子がいたずらっぽく笑う。
 「ほら、あそこだよ、ママ……」
 晶彦が、木の間がくれに、がっしりした屋根をのぞかせる高床式のログハウス
を指さして言う。
 すぐ下に清流をひかえた丘の頂に、立花家の別荘があった。そこから麓に下る
小径がみえる。車がとおれるようになっているが、別荘の裏手の森は、いまにも
開発地帯を埋めつくしそうなたたずまいだった。
 美絵子は、一年も来ないうちに、あたり一帯の荒涼として人気ないさまにおど
ろいた。彼女の一家は文明から離れさって、完全に孤立したようだった。
 体じゅうに、なぜか、ふるえが走った。なんともいえぬ感情。おそらくは、い
いしれぬ戦慄からくるふるえだったのだろう。
 「さあ、ぜんぶ、荷物をおろしてね……」
 「わあ、リビングがずいぶん広くなったみたいだね……」
 と晶彦。
 「来たばかりでなにもないから、そう思うのよ……。すぐにちらかってしまう
んだから……」
 美絵子は、ここでの生活に慣れるのは、さほど困難でないのを知った。
 たしかに、毎日の生活は快適だった。
 和貴子や子どもたちは、山菜摘みや昆虫採取、森歩きなどをしながら、一日じ
ゅう遊びまわっていた。


 美絵子は、高床のバルコニーの椅子に腰かけ、子どもたちのことを考えていた。
 彼らは、あっというまに大きくなってしまったと思う。そして、すでに異性に
関心をしめすようになっている。晶彦は、まだおしりがあおいのに、クラスの女
の子をぞろぞろとひき連れている。
 (無理もないわ。あの子は、とても魅力的なんですもの……)
 と思う。
 彼女は目を閉じて、晶彦の裸体を想像し、裸だけでなく、性的に興奮したさま
を思い描いた。
 ひきしまった胸、彫り刻まれたような若々しい肌、長くてたくましい足、すこ
やかな腹部……。そして、なによりも刺激的な、大きな健康的な肉茎が目に浮か
ぶ。
 美絵子は、息子の肉具がみるみるこわばってくるさまを想像した。彼がベッド
のかたわらに立ち、長くて大きな筒先をしだいにふくらませていくさまが目に浮
かんだ。そのこわばりは、開け放たれた寝室の窓からさしこむ朝の光のなかで、
つやつやとかがやいている。彼女が見守るなかで、かたくなった亀頭の割れ目か
ら、水晶のように透きとおった液がひとしずく滲みだす。
 晶彦をセックスの対象として考えたことは、これまでに一度もなかった。なぜ、
急にそんなことを考えたのか、われながら解しかねたが、不良学生たちとの荒々
しい強姦の体験に関係があるのではないかと思えてくる。
 彼らのおぞましい肉茎にえぐりたてられながら、自らも達してしまったことを、
美絵子はみとめざるを得ない。その体験を思いだすたびに、彼女の膣ひだは、欲
情に濡れてくる。
 (ああ……。無理やり、ぬきさしされて……)
 いまも、若い息子のことを考えると、美絵子のひめやかな肉ひだは、おなじ欲
情にあつくなってくる。
 (あの子は、よその男の子よりも、はるかにやさしく、好ましいわ……)
 ひょっとしたら、晶彦は、もう童貞じゃないかもしれない。いまの男の子は早
熟だっていうから――。さりとて、女の子との性体験が多いとも思えなかった。
 いや、女の子たちが晶彦を追いかけまわすところをみると、あの子は、案外、
彼女たちを手なずける方法を、すっかりおぼえたのかもしれない。
 息子が完全に勃起して、亀頭から精を洩らすさまを想像しているうちに、美絵
子は、心の底から彼をもとめているのに気づいた。
 (あの子のおちんちんにさわってみたい……。このてのひらで、そっとつつみ
こみ、ゆっくりしごきたててやりたいわ……)
 (ママ、ママ……)
 (いいのよ……。じっとして。そっとむいてあげる……)
 なめらかな亀頭に唇を押し当て、含み、あつく濡れた喉の奥にくわえこみたい。
 美絵子は、奇妙な興奮に身ぶるいした。十五歳の息子に寄せるかくも淫らな感
情をひどく恥じたが、欲望はあいかわらず押さえることはできなかった。
 (あの子は、とても若くて、ハンサムだわ……。それに……)
 と美絵子は思う。
 (不良学生たちにめざめさせられたあつい肉のよろこびを、あの子なら、きっ
とみたしてくれる……。自分で産んだ子なんだもの……)
 彼女は、自分が息子を誘惑して、腕のなかにかきいだくさまを想像した。
 セックスの夢想のなかで、美絵子は手をのばし、晶彦の大きくそりかえった肉
茎のヌラヌラする王冠部のみぞに触れる。ほてった指をみぞに沿って這わせてや
ると、亀頭ぜんたいがかたくなり、ピクピクと脈うつのが感じられる。ぬるぬる
の縫い目のあたりを親指でそっとさすり感じやすい鈴口をくすぐっては、若々し
い肉体をふるえさせてやりたい。
 (ほら。いい気持ちでしょ……。いいのよ、もっと大きくしても……)
 美絵子はあおむき、新鮮で、すがすがしい息子の笑みにうっとりする。重たげ
で、なまなましい陰嚢をこのてのひらでつつみ、根もとがたくましくたぎってく
るまでもてあそんでやる。睾丸のぬくもりがつたわり、てのひらをとろかし、花
芯のずいにまでおよんでくる。
 (さあ、いらっしゃい……。もっと、よくしてあげる……)
 想像のなかで、息子のまえにひざまずいていると、亀頭からひとしずくずつ精
がしたたってくるように感じられ、美絵子は思わず舌を突きだす。
 水晶のように透明な液が舌の先にたまり、とろりと口に入るのが感じられる。
大きくてかたい彼の王冠部に舌を這わせてやると、それはいきりたち、ますます
激しく脈うつ。
 (待って……。じれないで……)
 彼女は思いきり口をあけて、そそりたつほこ先を含んでやる。濡れた包皮をあ
げさげし、たっぷりと快感を与えてやる。ヌラヌラする鰓くびをしゃぶりながら、
美絵子は湿ったピチャピチャいう音が、あたりの空気をみたしていくのを聞いた
ようにさえ思う。
 (ずいぶん、かたくなったのね。パパそっくりよ……)
 口のなかで、息子の肉塊が、ぐんぐん張りつめ、口腔をふさがれるような感じ
がする。ぶりぶりするほこ先が、彼女の頬をふくらませ、スポスポと吸ったり、
はなしたりすると、かたい肉筒が歯にこすれるような気がする。
 淫らな思いに憑かれた母親は、いつしか下べりの肉ひだがとろけるようになり、
よこしまな蜜液が、じとっとにじみだすのを感じた。あきらかに甘美な感覚がわ
きだし、ついぞ味わったことのない快感がじわじわとみちあふれてくる。
 (ああン……。もっと、もっとよ……)
 このうえは、なんとしても、秘めやかな吸盤でくわえこみ、奥深くで力づよく
脈うつのを感じたい。その欲望がいかにおぞましいかは百も承知だが、自分では
どうすることもできない。荒々しい想像が、彼女を押し流した。
 「かわいい晶彦……。わたしを犯(や)って……。おねがい、あなたのママに
突っこんで……」
 淫らな白昼夢のなかで、美絵子は低くうめいた。
 ハンサムな息子がベッドにそっともぐりこんできたとき、彼女は掛布がかすか
に動くのを感じた。あらわな乳房に晶彦の手を感じ、その指先がぽっちり固くな
った房首をなぞっていき、ひそかにまさぐる動きが下腹部を這っていく。
 (ああン……。もっと下よ……。早く……)
 息子の指先が、太腿のあいだの陰毛に触れたとき、美絵子はおののいた。
 なめらかなつけ根のあたりをまさぐられると、放逸な母親は二枚の肉びらがヒ
クヒク疼くのをおぼえた。指が触れるたびに、ちいさな肉粒が勃えかえり、ズブ
リとたしかな感覚を得たとき、彼女は思わず喜びのすすり泣きをあげた。
 いじりまわされる感覚は、かつて夢想したものとはかなり異なっていた。信じ
がたいほど、おぞましくも甘美な知覚だった。
 「そこを舐めて……。晶彦、そこに顔を押しつけて、舐めまわしてちょうだい
……。ほしいの……。ママのおま×こにキスして……。かわいい子、あなたがで
てきたところよ……。やさしく舐めまわして……」
 ひとけないバルコニーで、美絵子はさけんだ。
 それは無理にめざめさせられたあとの欲求不満からくる淫夢にすぎなかったが、
その効果はなまなましかった。
 美絵子の羞恥のほころびは、麝香とヴァニラのにおいで湿り、ショーツにまで
およんでいた。乳首はツンとたち、欲情している。
 (ああン……。もう……)
 彼女はスカートの下に手をもぐらせ、つぎの行為に移った。
 ショーツのわきから指をさしこみ、ねっとりした膣ひだをもてあそぶ。
 (いい……。いいわ……)
 狂おしい感覚が、美絵子をみたした。
 バルコニーのわきからそよ風が吹きぬけると、森のざわめきが起こり、周囲の
自然の静寂がいっそうつよく感じられる。
 彼女を刺激したのは、別荘の静けさと、心にめくるめく荒々しい性夢だった。
 とろりと蜜がにじむびらつきを息子に舐められていると想像しているうちに、
淫らな母親は激しくみだれてきた。いま触れているのは晶彦の唇と舌だと思いこ
みながら、指を動かすにつれて、うるおいが湧きだす。
 (ああン……。かわいい子……。あなたの舌をもっとだして……。もっと奥に
突っこんで……。感じたいわ……。ずいぶん待ったのよ……)
 その日の午後おそく、和貴子と三人の子どもたちが、ピクニックにうってつけ
の場所をさがしに森の奥にでかけたことを、美絵子は知っていた。
 だから、こんなに信じがたいほど興奮しているあいだに、ショーツを脱ぎおろ
し、恥ずかしい部分をいじくりまわしてもだいじょうぶ、と美絵子は思った。
 子どもたちは、いつでもはしゃぎまわって帰ってくるのだから、と彼女は考え
た。あの子たちに、こんな恰好をみられるまえに、きっと声が聞こえるはずだも
の。
 興奮しきった美絵子は、もじもじとショーツを脱ぎ、くるぶしまでずりおろし
た。たぎりたつ肉ひだのとっかかりをまさぐり、かるくこすると、ふいに快美感
がからだじゅうを走った。
 彼女は、息子への情欲に憑かれ、ますます狂おしく乱れてゆく。
 「ああン……。すてき……。舌をのばしてペロペロ舐めるあなたが好き……」
 美絵子は、晶彦が勃えかえった肉粒を舌でころがし、余勢をかって、ヌラヌラ
するほころびをこじあけ、しだいに深く押し入ってくるのを感じた・BR>  (ねえ、どうするの……。いいのよ、もう入れて……。ああン、入れてちょう
だい……)
 彼女は、刻々とむきだしの情欲におぼれてゆく。
 「あうっ……。お、大きいわ……。そっとして……。ねえ、そっと……」
 とどめをさされ、飛び魚のように肉茎がはねまわるのを感知して、美絵子は低
くくちばしりはじめた。
 「いいわ、晶彦……。もっと動かしてちょうだい……。うんと激しく……。も
っと……」
 じっさい、そこに息子が居るかのように、彼女はわれを忘れてくちばしった。
 つぎの瞬間、美絵子はかたく目を閉じた。下べりの筋肉をギュッと締めつけ、
相手がなおも猛りはやるのを迎えうつかたちだった。
 いっぽう、彼女の手は、濡れた肉ひだを小刻みにゆすりたてる。指先がぜんぶ
埋もれてしまうまで、いっぽん、またいっぽんとほころびに突っこんでゆく。い
まや、スカートはまくれあがり、片手ごと、彼女とともにうごめいている。
 「犯(や)って……。坊や……。わたしをかきまわして……。いいのよ……。
出したり、入れたりしてちょうだい……。おお、めちゃめちゃにつっこんで……。
こうされるのをずいぶん待ってたわ……。やりたいの……。とても、やりたいの
……」
 美絵子はうめき声をあげた。
 飽くなき情欲が燃えあがって、手を動かすにつれ、蜜がとめどなくあふれだす。
指の関節が悩ましい肉芽にあたるのが感じられた。いまにも達するほど、自らを
追いつめているあいだ、彼女のからだは小刻みにふるえつづけた。
 「ああン……。もっと犯って……。いいわ……。晶彦。ママをひねくりまわし
て……。ああッ、なんて大きいの……。もっと、かきまわして……。わたしをイ
かせてちょうだい……。あああ……。感じるわ……」
 美絵子は歯がこすれあうような声をだし、瞼のうらで星がチカチカするほど、
ぎゅっと目をつぶった。
 不良学生たちに、マンションで強姦されたときの記憶が心にひらめいた。えぐ
りたてる肉茎と、ふくらみきった亀頭が脳裡をかすめる。どろりとした精液が、
一糸まとわぬ自分の乳房にふりかかるさまが浮かんだ。彼女は、膣ひだと口のな
かに、スポスポはねる鰓くびを感じ、のたうつからだに、それらがはじけるのを
感じた。
 「そうよ……。わたしを犯って……。みんなでめちゃめちにして……。うんと
やりたいの……。みんなで、わたしを犯って……。若い子がいいの……。あなた
たちにひどい目にあわされたいの……」
 美絵子はくちばしった。
 「おお、いいとも……。あんたの望みどおりにしてやるよ。ネエさん……」
 彼女は思いがけない返事を聞いた。
 ぎょっとして、欲情でうるんだ視線で、声のするほうをみすえた。
 目の前に、義弟の烈彦が立ちはだかり、左右にふたりのみ知らぬ若者が腕組み
をして、にたにたといやらしい笑いを浮かべている。
 「烈彦さん……。どうして、ここに……」
 美絵子は、恐怖のさけびをあげかけたが、たちまちがっちりした手で口をふさ
がれ、悲鳴はくぐもった声に変わった。




          第四章 濡れてるぜ、お嬢さん



 そのころ、別荘から離れた森の奥でも、思いもよらぬ光景がくりひろげられて
いた。ゆったりとした森のそよぎとはうらはらに、そこには異様な緊迫した空気
が張りつめている。
 「ぐずぐずしないでその樹に寄りかかるんだ……。かわいこちゃん……」
 目つきのするどい総会屋くずれの四人連れが、じりじりと立花家の子どもたち
と、和貴子を追いつめている。そのうちのひとりは、みるからに荒っぽそうなス
キンヘッドの三十男だった。
 玻瑠子は、しらがまじりのもみあげの長い老人に、ブラウスをビリッとひき裂
かれ、クヌギの樹の幹にグイグイ押しつけられている。
 「おとなしくしたほうが、身のためだぞ……」
 頬に傷のある中年男が猟銃で子どもたちを威嚇し、あとのふたりはロープを持
ったり、腰にぶらさげたりしている。こんなところに野生動物は、いそうもない。
 「やめろよ。その手をはなせ……」
 気丈な晶彦が、妹の危機をすくおうと、もみあげの長い老人につめ寄った。
 「堰八(せきや)、この坊や、おまえ好みだぜ……」
 老人がスキンヘッドの男に言う。
 「そうだな……。坊や、黙ってみてな……。さもないと、背骨をへし折るぞ…
…」
 スキンヘッドの堰八は、晶彦の肩をわしづかみにし、淫らがましく、美少年の
腰から臀部のあたりに目を走らせた。年のころは三十五、六歳。尖(とが)った
目がギラギラしている。
 「やめてちょうだい……。この子たちにさわらないで……」
 むっちりした胸のふくらみをあえがせて、若い叔母の和貴子が必死に抗議する。
 「おい、おまえたち……。立花んとこのガキどもだろ……」
 銃で晶彦をおどしている中年男がどなった。
 「これがどういうものか知ってるだろう。おもちゃじゃない。片っぱしからふ
っとばすこともできるんだ……。坊や、よくおぼえておけ……」
 頬傷のある男は、ニヤリと笑ったが、その声には容赦ないひびきがあった。
 「言うとおりにしていれば、みんな助かるんだ……。わかったな……」
 そのとき、四人目の大男の両腕がサッとのびて、怯えてあとずさる和貴子と亜
衣子をとらえ、せせら笑った。三十歳前後で、大雑把な顔のつくりだが、目だけ
は蛇のような変質的な光をたたえている。
 「はなしてよ……。いまにママがさがしにくるわ。あたしたちのことを心配し
て……」
 汗くさい体臭を発する大男の腕から逃がれようともがきながら、亜衣子が泣き
声をたてる。サラサラしたロングヘアが揺れ、肌理(きめ)のこまかい頬が恐怖
にひきつれている。
 「まあ、そんなにわめくな。おまえのおふくろも、こってりかわいがられてい
るところさ、オレたちの仲間にな……。別荘で、いまごろヒーヒーのたうちまわ
っているだろうぜ……」
 玻瑠子の胸のふくらみを揉みしだきながら、もみあげの長い男が仲間を見返し
て、意味ありげににたつく。
 「なにがほしいんだ」
 銃を突きつけられながら、晶彦が怒りと口惜しさのまじった声をだした。
 「さあね……。まず、かわいこちゃんの風とおしをよくしてやろうってとこか
な……」
 「なんのことだ!?」
 晶彦は気丈にどなった。
 「オレたちも、東京から来たんだ。おまえたちを尾(つ)けてな。しかし、毎
日おまえたちを見張ってるのも、つらいもんだぜ……。それで、みんな興奮して
うずうずしちゃってよ。さあ、これでわかっただろ……」
 ふるえる玻瑠子の喉を、ザラザラする指でさすりながら、しつこそうな中年男
がスゴ味をきかせる。
 「ママには、手をださせないわ」
 両手をねじられながら、亜衣子が大男に唾をはきかけ、たちまち足を蹴とばさ
れる。
 「ママのほうが我慢できねえだろうぜ。あいつらにかかっちゃ、こってりぐら
いじゃすまねえ……。なにしろ特大の玉入りだからな……」
 晶彦の肩を押さえていたスキンヘッドの男が、やっと手をはなし、腰に吊った
ロープをしごいた。
 「あいつらって、だれのこと……?」
 和貴子が怯えきって聞く。
 「あんたが知ってるやつも入ってるかもな……。ショコラの社長さんは、どう
やらスキモノらしいぜ。なあ権竜(けんりゅう)……」
 玻瑠子を樹の幹に押しつけている老人が、頬傷のある男に話しかけ、グッと腰
をおとすと、ズボン越しに勃(お)えたったものを、グリグリ彼女のジーンズに
こすりつける。
 「いまごろは、よがり泣きしてるかも……。成海さん、やけるだろ……」
 岩瀬権竜は、にが笑いを浮かべた。
 「西村の野郎、五つも玉を入れてやがるからな。手かげんしないと、使いもの
にならなくなっちまうぜ」
 大雑把な顔のつくりの男がぐちる。
 「まあ、そう言うな、錠二。もっとピチピチしたのが、目のまえにいるじゃね
えか……」
 スキンヘッドの男がうそぶく。
 「おまえたち、金がほしいのか」
 晶彦が聞いた。
 「いや、オレたちがほしいのは、熱く濡れた味のいいシロモノさ……。かわい
こちゃんがきれいな足のつけ根にくっつけているようなやつよ……。おまえたち
だって、だれもいないこんな森のなかで、ちったぁ、おかしな気分になってきた
だろ。え、そこのお嬢さん、おまえだって、いま、ここにボーイフレンドがいた
らいいと思ってるんじゃないのか?」
 と権竜が言う。
 「ボーイフレンドなんかいないわ」
 和貴子は怯えながら、うそをついた。
 「そんなはずはないだろう。もう何度も指でくじってもらったって顔をしてる
ぜ……」
 「叔母さんに、そんな口のききかたをするな」
 怒りにかられて、晶彦がさけんだ。
 「ひっこんでろ。このひよっこ……」
 スキンヘッドの堰八が、晶彦を突きとばした。
 「権竜、あっちの樹に、ガキどもをふん縛っとけ。オレは、このかわいこちゃ
んと話したいんだ……」
 「さあ、こい……。ガキども……」
 権竜が銃でおどしながら、晶彦と亜衣子を近くのクヌギの樹のほうに追いたて
てゆく。錠二がロープを持ち、たちまち少年と少女を樹の幹に縛りつけてしまう。
 見張りの権竜を残して、錠二がもどってくる、ヒグマのような轡田(くつわだ)
成海が、怯えきった玻瑠子のからだをいやらしく撫でまわして、値ぶみしている
ところだった。
 (久しぶりに、バージンの味が楽しめるぞ……)
 ブラウスがやぶれて、女子高生らしいブラジャーがはみでている。彼女の胸を
撫でまわすと、肌のぬくもりが成海の手をつたわって、そのまま、まっすぐ毛深
い睾丸に達するように思われる。
 「かわいこちゃん……。ほんとに、おまえはべっぴんさんだなあ……」
 成海が、顎ひげをブラジャー越しにこすりつけるので、乳首がチクチクする。
 (痛い、痛いわ……)
 玻瑠子は泣きたくなったが、ここで弱味をみせたら、つぎになにをされるかわ
からない、と懸命におぞましい辱めをこらえている。
 「ちょっと年はくってるが、まだまだ若いもんには負けやせん。ほら、舌をだ
してごらん。キスしてやる……」
 総会屋くずれの会社ゴロ、轡田成海は、玻瑠子が顔をそむけるのもかまわず、
首すじをゆっくり吸いあげ、樹の幹に寄りかからせたまま、すんなりした腰を両
手で愛撫しつづけている。
 「成海さん、オレにもおすそわけをたのむぜ……」
 離れたところから権竜がどなった。こんどの仕事では、轡田の指図にしたがっ
ているが、もともとは一匹狼である。スケのことまでひとりじめにされてはたま
らない、というのが彼の本音だった。
 「ダンナは、しつっこいからな。いつ終わることやら……」
 すぐそばで、和貴子を抱きすくめた錠二と堰八が、ニタニタと嗤(わら)って
いる。
 「わかった、権竜。おまえは、しばらくガキどもを見張ってくれ……。ぶちか
ますタマは、たっぷりあるんだからな……」
 「ようし。じたばたしたって、こいつらはどうしようもないさ……」
 「はなせ。はなせったら」
 「おねえちゃんをいじめないでよ」
 クヌギの幹に縛りつけられた晶彦と亜衣子は、言葉にならないののしりをくり
かえしたが、もはや、なんの役にもたたなかった。
 「やめて。やめてったら……。この汚らしいけだもの……」
 成海にジーンズをひきずりおろされ、ショーツのわきから湿った部分をごつい
指でこじあけられそうになったとき、玻瑠子は思わずさけんだ。
 「ふふっ。それはおまえのことだ。けだものより、もっと自分がいやらしいっ
てことが、いまにわかる……」
 成海は、口に唾をためながら、玻瑠子の太腿をねちねち撫でまわしている。
 「いやッ……。いやよ……」
 彼女は身をよじったが、ショーツひとつでは、たいした効果はなかった。
 成海の毛深い手の甲が、みずみずしい足のつけ根の熱い部分に、じりじりと這
い寄ってくる。
 じつのところ、玻瑠子は級友の男の子にさわられたことがあったが、こんなに
汚らしくてザラザラした感触ではなかった。彼女は、ボーイフレンドのてのひら
が、いつも足のつけ根すれすれに近づくまで、ここちよく感じたものだった。
 しかし、いまや成海の手の動きが、たいせつな恥ずかしい場所を狙っているの
に気づいて、彼女は恐怖におののいた。
 老人といっても、頑丈な体格の大男をはねつけることなど思いもよらなかった
し、しかも、ほかに三人もいるのだ。
 玻瑠子は、もしも自分が激しく抵抗したら、叔母や兄妹が痛めつけられるので
はないか、と恐れた。だからすすり泣きはじめたが、できるだけ声を殺し、激し
く暴れはしなかった。
 「ずいぶん、しなやかなからだをしているな。おじょうちゃん、いくつになる?」
 玻瑠子のショーツを、ゆっくりとひきおろしながら、成海がしわがれ声で聞く。
 「…………」
 彼女は答えなかった。いやらしい指先が、秘密っぽいくさむらに、寸刻みに近
づくのを知って、じっと息をつめた。
 その間に、和貴子のほうにも、異変が起こっていた。男ごころをそそる新進女
流作家は、錠二と堰八にひきたてられて、べつの樹の幹に押しつけられていた。
 「ひとでなし! この悪党!」
 和貴子は、力のおよぶかぎり抵抗し、かなきり声をあげた。気の短い錠二は、
つづけざまに、彼女の頬を張りとばした。
 「さからっちゃダメだ。叔母さん。やつらのいうとおりにしないと、あぶない
……」
 晶彦が必死にさけんだ。
 「そのとおりさ。坊や、どうしたら身のためか、きどりやのお嬢さんに教えて
やりな……」
 錠二がだみ声でわめく。
 「ほんとにオレたちはついてるぜ。こんな上品で、きれいな女が手に入るなん
て……」
 堰八は、ほくほく顔で、和貴子が身につけているものを、荒々しく脱がせはじ
める。
 「あせるな。みんなにたっぷり楽しい思いをさせてくれるとさ……。え、そう
だろ……」
 と錠二。
 「おまえは、いくつになるんだ……」
 少し離れた場所で晶彦と亜衣子を見張っていた権竜が、妹のほうに聞く。この
一角は、いたって見通しがいい。
 「十四歳よ」
 「ほほう、中学生か。みんな、きょうは、とびきりピチピチした若鮎をごちそ
うになれるな……」
 「そうとも。岩瀬のダンナ……。こっちもちょっぴり食ってみたいだろ」
 と錠二。
 「聞いただろう。おまえはいくつになるんだ?」
 成海が、しつこく玻瑠子に聞く。
 「十五歳よ……」
 彼女は、両腿をがっしりとつかむ老人の手を感じた。あれほど厭(いや)だっ
たてのひらの感覚が、いつしか甘美なものに変わっている。それは級友の男の子
にさわられたときの感じとまったく違う。圧倒的で力づよく、そのくせ、奇妙な
ほどやさしくねっとりしているのだ。
 スケベで、いやらしいと思いながらも、恐怖と名状しがたい興奮の入りまじっ
た感覚は、玻瑠子をいくらかぼうっとさせ、沈んでゆくような快さが、からだの
中心をふわっと浮きあがらせる。
 相手は、みるからにあから顔で、しらがまじりのもみあげと顎ひげを、しきり
に頬や首すじに押しつけ、何度も、何度も、
 「おまえ、アレが好きなんだろ……」
 と、くぐもったしわがれ声で囁く。
 それすらも、いまは、なぜかとろとろと、弱火(とろび)にあぶられるような
快感に、変わっている。しかし、言葉だけは、
 「イヤッ……きらい……。わたし、だいきらい……。そんなこと……」
 とつぶやいている。
 「そんなことって、どんなことだね……」
 「知らない……。イヤッ……」
 「ふふふ。いまに好きになる。いまに忘れられなくしてやる……」
 老人のスポーツシャツから野獣の熱気が放射され、玻瑠子のからだにしみこん
でくるような気がする。
 級友の哲也が彼女にさわるときのように、この老人も興奮しているが、さりと
て彼女の同意をもとめているようでもない。
 「やめて……。やめてちょうだい……。おねがい……」
 玻瑠子はすすり泣いたが、轡田成海は、ものも言わずに、ショーツのうえから
撫でまわし、自分もズボンを脱ぎだした。
 「待ってろよ。いまによくしてやる。さあ、おとなしく……」
 老人は、彼女がすすんで破れたブラウスをはずすまで、おどしたり、すかした
りする。
 やがて、魔法にかかったように、玻瑠子が身につけているものを脱ぎすてると、
成海は、それを錠二のほうに投げやった。
 ところが、錠二と堰八は、和貴子のてごわい抵抗にあって、押さえつけるのに、
せいいっぱいのありさまなのだ。
 「みんな。このかわいこちゃん、中学生にしちゃあ、けっこう女っぽい匂いが
するぜ……」
 すこし離れたところで、岩瀬権竜が、亜衣子のかすかな腋臭(わきが)の匂い
をかぎながら言う。
 「ほんものを拝めるまで、匂いだけで我慢してろ……」
 成海がどなった。
 いまや、玻瑠子は、ブラジャーとショーツだけで、ふるえながら樹の幹に背を
もたれさせている。老人の執拗な愛撫で、スニーカーは脱がされ、どこかに蹴と
ばされていた。
 (は、恥ずかしいわ……。こんな恰好をみられるなんて……)
 玻瑠子は、世界じゅうの男たちにみつめられているような気がした。
 晶彦と亜衣子が、彼女のすがたをみまいと顔をそむけているのはわかったが、
ならず者たちは、獣欲をむきだしにして、いっせいにみつめているような気がす
る。
 「ほら、そいつもとるんだ……」
 成海がブラジャーのストラップをひっぱると、プツンと切れ、こりっと張りつ
めた乳房が勢いよくとびだした。
 玻瑠子の悲鳴を聞きつけた和貴子は、
 (あああ……。わたし、もうだめだわ……)
 と観念して、一瞬、ふたりの男にあらがうのをやめた。
 「かわいいおっぱいしてやがる……」
 成海は、自分の手でむきだしにした乳房を眺めてうなった。ツンと乳首が張り
つめている。
 「ン……。このちっちゃな乳首を、だれかに吸われたことがあるか」
 むきだしの乳首に、ヒルのような唇を押しつけられたとき、玻瑠子は痺れるよ
うな気分になった。
 「だまってるところをみると、いい気持ちなんだな」
 はなしたり、触れたり、成海は、たくみに舌を移動させ、とろけるようにやさ
しいリズムで、こりっと張りつめた周辺を刺激する。
 (ああン……。へんな気持ち……)
 なまあたたかなべとつく舌先で、乳首を舐めまわされると、いやいやながら、
玻瑠子はいつしか応じはじめ、老人の押しつける舌のあいだで疼き、かたくなる。
 成海の歯が敏感な部分をかるくなぶり、舌をクルクルまるくして這いまわらせ
ると、かすかなふるえが全身に走るのが感じられた。
 成海の股間が勃起して、しらがまじりの顎ひげをサンド・ペーパーのようにこ
すりつけるので、玻瑠子の秘部の下べりがしだいにうるんでくる。
 「こんなにおいしい乳首を吸ったのははじめてだ。かわいこちゃん……」
 玻瑠子が顔をそむけたとたん、いやらしい歯ぐきをむきだした成海の口臭がに
おい、すぐに、かたくて小さな先端を吸いはじめ、その湿った音が低く流れだし
た。
 (ああ……。イヤ……。こんな人に吸われるなんて……)
 成海の唾液が乳房を濡らしはじめる。
 玻瑠子は、成海に無理やりめざめさせられた、狂おしい感覚をふりはらおうと
必死だったが、もはやどうにもならない。彼女は心ならずも熱く濡れそぼってい
くのを悟った。
 いっぽう、知的な薄化粧の和貴子も、ただではすまなかった。
 「くそっ……。じたばたするなって……」
 変質的な目の光をやどす錠二は、二つ三つ、和貴子を張りとばした。彼女がひ
るむあいだに、スキンヘッドの堰八が、一つずつ身につけているものをはぎとろ
うとしていた。
 「そんなにあばれると、けつの穴にぶちこんでやるぞ……」
 錠二は、ズボン越しに昂ぶったものを、和貴子の内腿にこすりつけてくる。
 「やめて……。あたし、したくない……。気持ちがわるいの……」
 和貴子は弱々しくあらがったが、彼らはつよすぎたし、どんなに嫌われようと、
望むものを手に入れるまでは、決してやめようとしないだろうと思った。
 「いいから、やらせろよ。へるもんじゃあるまいし……」
 錠二は、欲望をむきだして迫ってくる。
 和貴子は、かぎられた性体験しかもっていなかったが、バージンではなかった。
先輩の作家と既に三回ほど交渉があり、セックスの快感がどういうものかも知っ
ていた。
 彼女は、愛されながらこわばりを肉のほこらにおさめることや、王冠部のみぞ
まで舐めまわすことを好んでいたが、このように樹の幹に押しつけられて、饐(
す)えたにおいのする男たちに、無理強いされるのはいやだった。
 ただ、これから子どもたちや、姉の美絵子の身に起こりそうな不吉な予感に怯
え、できることなら穏便に、金銭で解決できないかと思う。
 「待って……。待ってよ……。いくらお金をあげたら、あなたたちの気がすむ
の……」
 和貴子は、スキンヘッドの男の股間がテント張りになっているのをみて、おど
ろきのあまり目をみはった。
 「オレたちは二重どりするほど、ワルじゃねえ。堰八、しっかり押さえてろ。
こんどはオレが脱がせてやる……」
 錠二は腰をふりたてながら、和貴子のストラップレスタイプのブラジャーをと
りはずそうとする。彼は、ズボンのふくらみの先がほとんど湿ってくるまで、彼
女の太腿のあいだをゆすりあげた。
 「こんなにタってきた。どうしてくれる……」
 変質的な男がチェックのシャツを脱ぎすて、ズボンのファスナーをひきおろす
のを、和貴子は恐怖のうちに見守った。
 「ほら、よくみろよ……」
 胸毛の濃い錠二が、ブルンとつかみだしたとき、彼女は、あまりのすさまじさ
に、あえぎと困惑のまなざしをむけた。
 まるで野球のバットのようだった。
 「こいつが好きだろ、お嬢さん……」
 横から、堰八がせせら笑う。その余裕ぶりに、彼がもっと大きな肉具をかくし
ているのは、あきらかだった。
 「錠二、彼女はそいつが気に入ったらしい。目つきをみれば、すぐにわかるさ」
 和貴子は、変質的な男が力づよくしごきたてるのをみないわけにはいかなかっ
た。彼女は、欲情に猛りくるうふたりが、つぎになにをしようとしているかがわ
かった。
 「これをなんとかしてくれないか。手はじめに、お上品な口を使ってもらおう
か……」
 このおどしが、近くの晶彦に聞えないはずはない。
 「やめてくれ。そんなことをさせるな。ぼくのだいじな叔母さんなんだから…
…」
 晶彦は、声をふりしぼってたのんだ。
 「うるせえお坊ちゃまだな。いやならみるな。それとも、おまえが代わりにな
るってのか……」
 この言葉を聞いて、兄弟を見張っていた権竜が大きくうなずいた。
 「そりゃあ、いい考えだな、堰八――」
 眉のうすい三白眼の男は、クリッとした晶彦の臀部に目を光らせた。
 はじめて美少年をみたときから、彼はじわじわと股間がふくらんでくるのを意
識したのだ。この子をしゃぶりたい。そして、しゃぶらせたい。権竜は、かくれ
た臀丘のはざまにあるかたいつぼみの閉じ目をこじあけ、みなぎる肉筒を一気に
沈みこませたい、と思った。
 「ひよっこは、すこし馴らしてやらんとな……」
 権竜はズボンのベルトをぬきとった。それを鞭がわりに、ぴゅーッと宙にふり、
さらに晶彦の肩をよこなぐりに打ちすえた。
 「錠二、早いとこ、こましかたを教えてやれ。どうだ、おまえもみるか……」
 晶彦は怒りに燃えて、なりゆきをみつめていた。みまいと思っても、つい目が
いってしまう。彼がちらっと亜衣子のほうをみやると、彼女もまた、兄をみかえ
した。ふたりは同時に間がわるそうに相手をみつめあった。
 「え、どうした……。おや、おまえ、タッてきたんじゃないのか。いろけづい
ちゃってよ」
 眉のうすい権竜は、四十男のあつかましさで、晶彦のズボンをひきおろしはじ
める。
 「やめろ。なにをするんだ」
 ブリーフもひきおろし、下半身をまるだしにされると、もはやまぎれもなかっ
た。
 「なかなか、りっぱじゃないか」
 権竜は淫らな笑いを浮かべた。
 それから、晶彦を縛ったまま横向きにさせると、銃の先で、グイと、尻たぼを
つついた。
 「もっと足をひらけよ。いやなら、そっちのかわいこちゃんにしてもいいんだ
ぜ……」
 かもしかのような少年の両足を蹴とばすと、晶彦は仕方なくしたがった。
 「おまえ、はじめてだろ。ちょっと痛むかもしれないぞ……」
 権竜は、がっしりと後頭部を押さえて前のめりにさせると、ベルトで後手に縛
り、つぎに汚れたハンカチを晶彦の口に突っこんだ。はきだそうとするが、いっ
ぱいにほおばらされたので、声がだせない。
 「もみもみしてやるから、息をぬくんだ……」
 まむしの頭のような指を臀裂に吸いつかせると、小刻みにズブズブといびりた
てる。
 「うぐぐぐ……」
 秘密っぽい肉ひだがめくりかえって、指先をヒクヒク食いしめる。権竜は、左
手でズボンのファスナーをひきおろすと、すさまじい怒張に素振りをくれ、思い
きりつよく突きだした。
 「息をぬけ……、押しもどすと、けがをするぞ……」
 権竜がうわずった声をあげる。
 苦痛が晶彦の背骨をつらぬき、骨組織がグシャグシャになるかと思われるほど
だった。
 あまりの激痛に、少年は身をよじって、樹の幹に顔をうつぶしたが、これだけ
で終わったわけではない。
 同じ樹の幹に縛られている亜衣子に、兄の晶彦のくぐもった呻きが聞こえない
わけはなかった。
 彼女は、かくもおぞましい凌辱を加える中年男にはげしい憎しみをおぼえたが、
身近で男の動物的な喘ぎと、兄のすすり泣きを聞くうちに、下腹部ぜんたいが、
なぜか熱くなってくるのを抑えることができなかった。
 近くの樹の幹では、成海が、玻瑠子の乳首を吸ったり、かるく噛んだりして、
彼女をその気にさせようとしているし、錠二と堰八は、和貴子をしたがわせよう
として嗜虐的な愛撫をくりかえしている。
 晶彦は、いまや自分の欲望に火をつけられ、興奮のあまり、透明な液が先端に
にじんでくるのをとどめようがない。
 「上品なおちょぼ口を使えばいいんだ……」
 錠二は、卑猥な腰つきで、ヌラヌラとしごきたててみせるが、和貴子は、呆然
と声もでない。
 これでは埓(らち)があかぬとみるや、堰八とふたりで彼女を地面に突き倒し
た。そこは草の絨毯のようになっている。
 「はなして……。あたしにさわらないで……。そんなものみせないで……」
 ロマンの香りゆたかな作品で知られる新進女流作家は、両膝をついたまま、目
の前にそそりたつ肉茎から、あわてて目をそらせた。
 ふいに毒々しい肉茎が頬にこすりつけられたとき、和貴子は焼けつくような熱
気を感じて、あとずさった。ぜんたいに淫靡な血管が浮きだし、てかてかして先
走りの精をにじませている。
 「お嬢さん……。もう、これ以上待てねえぜ……」
 錠二がおどした。
 「言うとおりにしたほうが、みんなのためだ……」
 堰八の警告に、和貴子はいやいや口をあけ、腐蝕性のつよいにおいを避けなが
ら頬ばった。微妙な王冠部のみぞの感覚が、ひそかに官能をゆさぶる。
 (こんなけがらわしい真似をさせられて……)
 和貴子は、神経質そうに鈴口をすすった。鉄分をふくむ塩からい味は奇妙だっ
たが、かならずしも不快ではなかった。
 まばたきしながら、彼女は懇願するように上目づかいで相手をみた。
 「もっと深く……。もったいぶらずに根もとまで舐めおろせ……」
 毒きのこをふりたてながら、錠二はいきまいた。がっちりしたてのひらで和貴
子の首根っこをひき寄せると、彼女は、
 「ウグッ……」
 と息がつまりそうになる。
 「このあま、くるしがってるぜ……」
 と堰八。
 「そのうち慣れるさ。女ってのは、だれでも、オレみたいにでっかいのをしゃ
ぶるのが好きなんだ……」
 ふくれあがった亀頭で、悩ましい喉ちんこを突きながら、錠二がうそぶく。
 彼は、毛むくじゃらな臀部の筋肉をたくみに伸縮させながら、和貴子に深々と
めりこませてゆく。
 「うぐぐ……。うぐぐぐ……」
 わが身になにが起こったのか信じられぬまま、和貴子はすすり泣くことすらで
きない。
 錠二は、出したり、入れたりしながら、しだいに射精に近づいてゆく。
 彼女は、数回ほど、男友だちを口でイかせたことがあったので、あのドロリと
したものが、どのくらい口のなかに流しこまれるかを知っていた。
 もしも、この男が、あれ以上におびただしい量で喉をふさいだら、溺れ死んで
しまうだろう、と思う。
 「オレとかわれよ、錠二……」
 堰八が横からすり寄って、和貴子の頬をピタピタとたたく。
 「お嬢さんに、オレのもしゃぶってもらうんだ」
 「そうくると思ってた。時間はたっぷりあるんだ、さあ、やれよ」
 錠二は、スポンという音をたてて、ひきぬいた。和貴子は深く息を吸いこんだ
が、目をあけて、新手の怪物めいた大きさに、あやうく気を失いそうになった。
 これが男性のものか。まさか、そんなはずはない。しかし、それは真実だった。
 つぎの瞬間、堰八の激しい突きにあい、和貴子はへなへなとなった。しかし、
新手の大男はいささかの容赦もしなかった。彼女はとつぜん意味もなく、やさし
かった義兄を思いだした。
 彼らは、いずれも義兄と同じくらいの年齢のものばかりだった。
 「しっかり吸え。あんたが楽しんでるのがわかるように、音をたてろ……」
 和貴子は、喉の奥をゴボゴボいわせながら、おぞましい肉筒を吸いつづけ、し
ゃぶりつづけた。堰八は、しだいに深く突きはじめ、しばしば彼女を絶え入らせ
る。
 ズボリズボリと突き入れるたびに、和貴子のあごのあたりに、針金のようにか
たい陰嚢の縮れ毛がふれる。
 「タマタマもいじってくれ、お嬢さん……。そう、その調子……」
 スキンヘッドの男が声をきしませる。
 怯えきった新進女流作家は、熱くて重たげな陰嚢を両手で受けとめ、かるくに
ぎりしめるようにしながら、親指と人さし指で、毛深い袋の皮を、やわやわとさ
すった。
 「なかなか、のみこみがいいぞ……」
 堰八は、満足そうにうめいた。
 錠二は、彼女の下半身にまとわりついて、ショーツの隙間から指をさしこんで、
いたずらをはじめている。
 そのとき、
 「おねがい……。やめて……」
 近くの樹の幹に寄りかからされた玻瑠子がかんだかい声をあげた。成海が、い
よいよ本性を発揮しだしたからだった。
 「いいから、じっとしてるんだ。ほら、その気になってきたじゃないか、かわ
いこちゃん……」
 かたちのいい玻瑠子のへそに、蛭のような老人の口が吸いつくと、彼女のから
だは、恐れと奇妙な疼きにふるえた。
 「どこまでしたら、気がすむの。エッチ、スケベ……」
 轡田成海の舐めかたは執拗だった。
 こんなにかわいい令嬢を相手にできるなんて、二度とやってこない機会だった。
 (馬洗(もうらい)専務は、けがをさせない程度にいたぶってくれって言って
たが、こんなに美人ぞろいの一家だなんて、ちっとも知らなかった。これなら、
手べんとうさげても、助(すけ)っ人(と)をしたくなる……)
 いまや、成海の唇は、玻瑠子のむきだしの秘部ぜんたいを舐めており、彼女を
狂おしい感覚にまきこんでゆく。淫らな舌がちっちゃなへそを舐め、時には、く
ぼみのなかに達し、彼女を疼かせた。
 (あああ……ダメ……)
 成海の指先が、ねっとりした肉びらにふれるまで、永い時間はかからなかった。
 淫らな動きをとめようと玻瑠子が手でどけると、後ろ手に押さえつけられる。
じりじりとショーツをさげられ、足のほうにひきおろされるのを感じたとき、玻
瑠子は声をあえがせた。いまや、彼女は生まれたままの裸身で、男の力のまえに
はなすすべもない。
 (どうやら、濡れてきたな……)
 成海が、彼女の両腿のつけ根に指を這わせ、下べりのすぼまりを撫でさすると、
羞恥と恐れで緊張するのがわかった。
 「すっかりその気になったようだな。うんといいものを、そこにぶちこんでも
らいたいだろ……」
 興奮した成海は、返事を待たずに、ごついてのひらで玻瑠子のほころびをゆす
った。とたんに秘肉がつよく収縮して、てのひらに吸いついた。
 「よし、よし、そんなにほしいのかい……」
 成海は、なまめかしい感覚がてのひらでとろけ、とめどなくうるんでくるのを
知った。
 「そら、こうしてやる……」
 成海は、指を使いはじめて、玻瑠子がまぎれもない歓びのあえぎを洩らすまで、
秘密っぽいびらつきをもてあそんだ。
 「あうン……。いや、いや……」
 玻瑠子は刺激される感覚を憎んだが、とうてい抗しがたかった。
 その感覚は、嫌悪のさなかですら、とてもすばらしかった。うるおいの源(み
なもと)はじりじりと熱くなり、それをとどめるものは、この世になにひとつな
かった。
 成海は、彼女の肉びらが、指のまわりでとけ、とめどなくとろけているのを感
じた。
 「あつくなってきたな。かわいこちゃん……」
 彼は、指をぬいて、あふれでた蜜液を舐めた。舌舐めずりしてかがみこみ、や
にわに顔をうずめる。
 小さな肉粒に吸いつかれたとき、玻瑠子は、恐れと興奮でおののいた。
 「その樹に寄りかかって、おまえも楽しみな……」
 成海は、しわがれ声をだした。
 ヌルヌル濡れたほころびを舐めはじめると、玻瑠子の花芯は、抑えがたくひき
つれる。成海の舌がかたくなり、しだいに激しく突きをくりかえすと、彼女は、
ザラザラした顎ひげが、太腿のあいだにこすれるのを感じた。




         第五章 お兄ちゃん、見ないで……



 森のしげみの草地のあたりには、だれをも興奮させる舌の音がピチャピチャと
みなぎっている。
 銃をひろいあげた岩瀬権竜は、ふたたび精力をとりもどし、自分が女になって
しまったかのような晶彦は、苦痛のうちにも、屈服させられた歓びを、かすかに
反芻(はんすう)しているようだった。
 妹の亜衣子は、かすかなあえぎを洩らしはじめる玻瑠子の姿をみつめたまま、
奇妙な期待と興奮にかられるのをしりぞけることができなかった。
 「おまえも、おかしくなっただろうが……」
 ファスナーをひきあげようともせずに、権竜が聞いた。彼は無雑作に、亜衣子
のジーンズを、ショーツごとひきおろした。
 「ほう、りっぱなおとなじゃないか。こんなにいやらしく生えちゃってる……」
 和貴子も、玻瑠子も、無理にめざめさせられ、男たちとせめぎあっていたので、
この声は耳に入らなかった。
 「お嬢さん、舌をやすめるんじゃない」
 と堰八。
 錠二は、指を二本にして、えぐりたてている。
 「そろそろ入れてもらいたいか、かわいこちゃん……」
 成海のしわがれ声が、異様なやさしさを帯びて、玻瑠子の耳にひびく。はじめ
は用心したものの、彼女の抵抗が弱まったとみるや、図々しく舌をさしこみ、唾
だらけの口で、かわいい唇をまるごとしゃぶりまわしている。
 「ああン……。やめて……。おねがい、あたし、こんなことしたくない……。
気分がわるいの……。はなして……」
 玻瑠子は、あわれっぽくたのんだ。
 「できるとも……。いや、おまえは、したいと思ってる……」
 興奮の極に達した成海は、無理やり彼女を樹の幹からはなし、草地に押し倒し
た。
 「すいつくようなからだをしてるのに、ぶりっこぶって……」
 成海は、逃れるすべのない玻瑠子にのしかかり、せわしげにズボンとトランク
スを脱ぎすて、すんなりのびきった両足のあいだに割りこんだ。
 そのとき、玻瑠子は、樹に縛りつけられながら、じっと彼女をみつめている晶
彦に気づいた。
 (は、恥ずかしいわ……)
 双生児の妹をおそった最初の感情は、それだった。
 (ああっ……。お兄ちゃん、あたしをみないで……)
 玻瑠子は目をそらした。しかし、晶彦はみつめている。
 彼女はあさましい恰好を、なんとしても晶彦や亜衣子にみられたくなかった。
 「おねがい……。あたしをみないで……。イヤッ……。いやよう……」
 玻瑠子はかぼそい悲鳴をあげたが、いきりたつ成海にとっては逆効果でしかな
かった。
 「そうか、みられるのが恥かしいのか……。おい、お坊ちゃん、よくみておく
んだ……」
 彼は、小気味よげにわめいた。
 「いやだったら……。みせないで……。おねがいよ……」
 玻瑠子はすすり泣いた。
 (お兄ちゃん、なぜみるの……。亜衣子も……)
 彼女は、思いがけぬほどの力で抵抗した。それは成海の嗜虐性に火をそそぐ結
果となった。
 晶彦は、スケベな女の子をみるような視線で、玻瑠子をみつめつづけた。あき
らかに、彼もおかしくなっているのだ。
 「ほんとはみられたいくせに。ぶりっこめ……」
 彼女がいやがればいやがるほど、成海は、自分の力のまえに屈服してゆく少女
の姿をみせたがった。玻瑠子の一瞬の隙をねらって腰をひき、力まかせにぐわっ
と突っこんだ。
 「いたーッ、う、ううう……」
 名状しがたい悲鳴とともに、玻瑠子はからだをつっぱらせた。異様に大きな硬
度が、ミリミリッと押し入り、一度ももてあそばれたことのない狭い構造が容赦
なく摩擦される。
 「たすけて……。ひ、ひどい……」
 こんな感覚ははじめてだった。
 玻瑠子は、腰をすぼめて肉茎を遠ざけようとしたが、むなしかった。彼女がき
つく締めつければ締めつけるほど、成海はますます楽しんでいるようだった。
 「ちったあ、腰をふったらどうだい、かわいこちゃん……」
 ヌメヌメしながらきっちり締まる秘奥(ひおう)で、鰓の張ったほこ先を動か
しながら成海が言う。
 彼は大腰に出し入れして、玻瑠子をいやがうえにも熱くさせてゆく。たくみな
動きにあやつられて、いつしか彼女はあえぎ、うめき、その声は男をますます煽
りたてるようだった。
 (みも知らぬ男に、こんなにされるなんて……)
 玻瑠子は、じっと横になっていたかったが、いまや、燃えさかる炎のように、
めらめらと煽られ、みえない襞(ひだ)々がゆるんでうるおうのも感じないわけ
にはいかない。
 いっぽう和貴子にも、最大の危機がおとずれていた。錠二と堰八は、彼女を全
裸にして、完全に抵抗をうばってから、
 「四つん這いになれよ、お嬢さん……」
 とおどした。
 和貴子は、さきほど堰八が噴きあげた精のなごりを口もとにしたたらせて、言
われたとおりのかたちになった。
 腰を浮かせてしおしお待つと、錠二がうしろから手をのばして、むきだしの陰
毛を手の甲で撫であげる。
 かすかな戦標をおぼえて、わずかに秘裂がうるむ。ヌラヌラとまさぐられる。
 「おあつらえむきにあつくなってるな」
 錠二はぬきだして、蜜液にまみれた指先をしゃぶった。
 「うめえ。そのうえ、とろとろしてる……。受け入れ体勢じゅうぶんだな……。
どうだい、突っこんでもらいたかったら、自分のほうからおねだりしてみろよ」
 和貴子は答えなかった。
 彼女は目を閉じたままで、喉をヒクヒクさせている。
 変質的な錠二は、和貴子の返事を待たなかった。彼は背後からのしかかり、弱
腰をかかえあげて、ふくれあがった亀頭をじりりと埋めこみ、ぬったりと左右に
ゆり動かした。
 甘美なしめつけが、千もの襞(ひだ)々から湧き起こる。
 彼女は、きれいな顔をゆがめてこらえたが、ほとんど無意識のままで受け入れ
ているようにみえる。
 しかし、和貴子はあえいでいた。
 錠二は、呼吸するかのように伸び縮みする感覚を楽しみ、根もとから熱源が沸
きたっているのを感じた。
 「お嬢さん。はじめてじゃないな……。何人ぐらい、やらせたんだ……」
 激しく突きをくわされるたびに、和貴子の張りつめた乳首がふるえる。岩のよ
うにかたい肉茎で、激しく、早く連打されるあいだ、ほの白い裸身は、前へ後ろ
へとゆれ動いた。
 「感じてるんだろ。声をだしてみろ……」
 錠二がむきになって螺族状にえぐりたてたとき、和貴子は思わず悲鳴をあげた。
 「いやッ……。いやよう……。おなかまで突きぬけちゃう……」
 うつくしい頬に、おくれ毛がおちかかる。
 うら若い叔母の悲鳴がつよくなったり、弱くなったりするのが、晶彦と亜衣子
にも聞こえた。玻瑠子に気をとられていた晶彦は、叔母のうめきよりも妹のほう
が気にかかる。
 和貴子をさいなみながら、錠二は紡錘形の双つの乳房をひねって、興奮でうず
かせた。
 「こんどは、オレにもサービスしろよ……」
 和貴子のまえにすすんだ堰八は、肉筒をつかんで、精を洩らす紫ずんだほこ先
を、なまめかしい唇に突きつけた。
 (さからっても、むだだわ……)
 彼女は舌を突きだし、ヌラヌラする先端にそっと触れた。
 「口をひらいて、喉の奥まで、すっぽりと吸いこめよ……」
 催眠術にかけられたように、和貴子は、あかぐろい先端をくわえこみ、筒先か
ら根もとまでを吸ったり、舐めたりした。
 いっぽう、三白眼の岩瀬権竜は、いささか欲求不満だった。晶彦の肛裂を犯し
たものの、欲情が完全にふっきれたわけではない。彼の脳裡に、なまめかしくも
成熟した美絵子が、別荘で仲間たちになぐさまれている光景が浮かんだ。
 (ちくしょう……。あの優雅な女社長のなかにぶちまけてやりたい……。オレ
だけが、とんだ貧乏クジだぜ……)
 権竜は、ふと思いついて、亜衣子に目をとめた。アイドル歌手みたいにはなや
かな顔だちで、サラサラした栗色の髪が頬にかかっている。
 「そうだ。おまえがいたんだっけ……」
 三白眼の男は、美絵子に似た容貌の美少女をしげしげとみつめた。
 怒りに燃える亜衣子の横顔をみると、権竜はかえって欲情が疼いてくる。この
子を舐めまわしてやったら、どんな表情をするだろうかと思う。
 しかし、亜衣子は権竜をにらんでいたのではなかった。成海の肩ごしにみえる
玻瑠子の優雅でしなやかなからだが、ヒグマのような巨根に翻弄されながら、刻
一刻とのぼりつめそうな気配をみせつつあるのが、どうしてもゆるせないのだ。
 亜衣子の下べりの粘膜はいつしかうるんでいた。
 かすかな風のそよぎをむきだしの下腹部におぼえると、三白眼の中年男が、に
やりとして、彼女の両腿をこじあけている。
 「なにをするの……。エッチ。さわらないで……」
 「じっとしてろ。さわぐと、そいつみたいに口にハンカチを突っこむぞ……」
 晶彦は、口惜しそうにハンカチをはきだそうとしている。唾液で濡れた一端が
はみでている。もうすこしで、声がだせそうだった。
 亜衣子は声をのんだ。
 ショーツは、すでに足もとにおとされ、がっしりした両手で両膝が押しわけら
れた。
 「年のわりに毛深いな……。おふくろ似なのか……」
 権竜は、初々しい繊毛を指で押しわけ、悩ましい恥辱のふくらみをあらわにし
た。ニッとほほえむような薄い肉のよじれを、かるくつまみあげる。
 「いやらしいうぶ毛がはえてる……」
 眉のうすい権竜は、楕円状の対称的な肉びらに唇を寄せ、いきなりはさみこん
で舐めまわした。
 「ひいーッ……。き、気持ちがわるい……。やめてよ、へんたい……」
 舌を使って、鶏のトサカのような柔襞をめくりあげるのは、いい気持ちだった。
バージンらしい新鮮ななまぐささと、甘美の味わいに、権竜はしばらく熱中した。
 「やめろ。なにをするんだ……」
 ようやくハンカチをはきだした晶彦が気づいて、怒声をはなった。
 「こわい、こわいわ……」
 亜衣子は狼狽して、身もだえたが、権竜は蛭のように吸いついてはなれなかっ
た。
 近くの草地では、玻瑠子が快感にたえきれず、身をよじっている。彼女も、亜
衣子の身にどんなことが起こりつつあるのか、わずかな視界のすみでとらえてい
た。
 (どうか、こっちをみないで……。こんなにおかしな気持ちにさせられるなん
て……。は、恥ずかしい……)
 玻瑠子は、兄と妹のことが気になって、どうしても成海のぬきさしにのりきれ
ないのだ。
 「いいんだろ……。声をだせよ……、ン……」
 成海は、それでもきつい感じがすこしずつほどけて、いまでは持続的に官能的
なゆるみをともないつつあるのを悟った。
 もう一息だ。
 成海は、玻瑠子のひくつきを期待したが、彼女はかたちのいい眉をしかめ、鼻
のあたまにうっすら汗を浮かべ、たえつづけている。
 成海はその原因が、晶彦にあることに、やっと気づいた。
 「かわいこちゃん、あいつが気になるんだな……。え、そうだろ。あいつがに
らんでる。いやらしい妹だってな……。あれは憎んでる目だ」
 効果てきめんだった。
 玻瑠子は怯えたように、腰をふるのをやめた。
 (ああッ……。お兄ちゃん、みないで……。そんなに憎まないで……)
 彼女は、ぐったりして、目を閉じた。
 成海は圧倒的な優位に立った。
 「まだみてる。あいつがみてる……。さあ、おまえはやられてる。このオレに
な……。かわいこちゃん、だれにやられてるのか言ってみろよ」
 「いやッ……。ああ、イヤ……。お兄ちゃん、こっちをみないで……」
 「いや、みてる……。なんて、いやらしい、スケベな妹だろうってな。もっと
みせてやれ。ほら、こんなふうに……」
 成海は、ますます興奮して、肉茎に重心をかけ、最後のとどめを刺そうといき
りたった。
 「みないで……。おねがい……。あたしをべつのところに連れてって……」
 玻瑠子の哀願を無視して、成海は桜桃(ゆすらうめ)のような唇を分厚い口で
おおい、舌からませ、吸いたてながらからかった。
 「おまえがどんなに気持ちよがってるか、あいつに言ってやれ。さあ、早く…
…」
 「ああン……。いや……ひ、ひどい……」
 成海は、なにごとかを玻瑠子にささやいた。はっきりと、彼女の羞恥を突きく
ずす言葉だった。
 彼女の誇りはそれまでだった。つぎの瞬間、玻瑠子はふいに声をあげた。
 「ええ、そう……。あたし、いま、知らないおじさんにされてるの……。お兄
ちゃん、あたし感じちゃったの……」
 成海は、唸りながら、どろりとぶちまけた。あとからあとから爆ぜてくる。
 玻瑠子は泣き声をたてて、轡田成海にしがみついた。
 「もっと……。もっと、やって……。あうッ、たまんないわ……」
 まぎれもない玻瑠子の歓びの声が、楽しい成海のうめきともつれあった。
 その声が、権竜に辞めずられている亜衣子の耳にとどいたとき、彼女もまた、
ほとびたように、とろりと秘液を男の口中にあびせかけた。
 錠二と堰八にさいなまれている和貴子にも、最後の瞬間が近づいている。
 悩ましい二つの部分を責めあげられ、彼女は狂おしい快美感のうちに、ほとん
ど気を失いそうだった。
 錠二が秘肉のすぼまりを捏(こね)あげ、ピチャピチャと小猫が水をのむよう
な音をたてさせる。堪八は醜悪な肉塊をスポスポと、官能的な口腔にぬきさしす
る。
 二か所の摩擦がはげしくなるにつれ、和貴子はますますあつくなってゆく。錠
二はなおも激しく、容赦なく攻めたてる。
 (ああン……。あつい……。あつくなってる……。もう……かんにんして……)
 和貴子は、オーガズムの波が押し寄せるのを感じた。
 「締めつけろ、もっときつく……。くわえこめ……。うっ、うっ……」
 錠二はうめき、股間の吊鐘(つりがね)をひき締めた。
 「喉ちんこをふるわせろ。もっと奥に吸いこめ……。い、いくぞ……。もう、
だめだ……。いっちゃう……」
 スキンヘッドの堪八はわめいて、なまめかしい喉の奥にぶちまけた。
 和貴子は、とつぜん、肉の閂(かんぬき)をはずされ、火花がとびちるような
感覚の波に押しひしがれた。熱い精液が、二か所の粘膜の内壁にとびちっている
のだ。
 和貴子は、熱液が魂におよぶかのような感覚にみまわれ、激流のなかで息がつ
まりそうになった。
 女高生の玻瑠子も、成海がぬきとると、息をあえがせて草地にくずおれた。
 「成海のダンナ。イっちまったのか、その子も……」
 唾液にまみれた精のなごりをうちふって、堪八がひやかした。
 「ほっといてくれ。……まだまだ、やる気じゅうぶんさ」
 彼は、自信ありげにうそぶいた。
 「オレも、その子にぶちこみたくなった」
 と堪八。
 「それもいいが、ひとまず別荘に行って、こいつらのおふくろがどうなってる
か、みてやろうじゃないか……。あいつらに輪姦(まわ)されすぎて、こわれち
ゃったら元も子もなくなるからな……」
 「それもそうだな……」
 錠二が、未練がましく和貴子を抱き起こした。彼女は、腰がぬけたようになっ
て、肩で息をついている。
 「具合のよさそうなツボを持ってる雌ギツネをいただこうってわけか。どうだ
い、成海さん、満足したか」
 と岩瀬権竜。
 「かわいこちゃんに、すっかり詰めてやったぜ」
 成海が答える。
 「みんな、急ごう。ズボンをはくのを忘れるな……」
 権竜は、口のあたりににじむ亜衣子の秘液のなごりを舌で舐めとりながら、ロ
ープをほどきだした。甘美な粘糸が顎につたわっている。
 彼らは、あわただしく身じたくをした。
 和貴子と玻瑠子姉妹は、下着をつけさせて、とたのんだが、連中はそれをゆる
さなかった。
 「よう、お嬢ちゃんたち。オレたちといっしょのあいだは、なにも身につける
な。生まれたまんまのはだかをすっかりみせたんだから、いまさら、気どるんじ
ゃない……」
 成海はせせら笑いながら、玻瑠子を押しやった。
 「おまえも、ズボンを脱いだまま歩くんだ。そうすりゃ、逃げだそうなんて気
は起きないだろう」
 権竜が、晶彦に言う。
 立花家の子どもたちと和貴子は、しおしおと森のなかを歩きだした。権竜は、
ときどき、子どもたちのむきだしの臀部を銃でこづき、仲間たちの卑猥な笑いを
誘った。
 子どもたちは、時おり視線をかわしあった。しかし、だれの目にも逃亡の計画
をほのめかすものをみいだすことはできなかった。
 玻瑠子は晶彦の視線をおそれ、かすかに頬を薔薇色に染めたが、そこには、い
ままでにみられぬ一抹のなまめかしさがただよっているのだった。


 別荘のバルコニーの椅子で、淫らな夢に酔い痴れていた美絵子は、あられもな
い姿のまま、リビングにひっぱりこまれた。
 「おねがいだからやめて……。一度にみんなのをしゃぶるなんて、とてもでき
ないわ……」
 美絵子は、烈彦とふたりの若者が、ふくませようとして突きだした肉茎をみつ
めながら、哀願した。
 「できるさ。ネエさん、あのときは、すごく元気だったじゃないか……」
 義弟の烈彦は、ツンツン・ヘアをさかだてながら、うそぶいた。
 根は臆病な彼は、赤信号みんなで渡ればこわくないの心境で、会社ゴロの下っ
端の若者をひきつれて、のりこんできたのだった。
 ムトー製菓の馬洗専務からは、期限つきで美絵子を説得するように頼まれてい
る。会社合併がうまくいったら、烈彦の地位は保証するといわれているだけに、
どんなことをしても、彼女を従わせなければならない。
 この前は、学校仲間と美絵子をいたぶったが、どうやら別荘にでかけたらしい
という情報を得て、西村、鳴鬼(なるおに)のふたりと、精悍な猟犬を連れてき
たのだった。
 「奥さん、あばれてもむだだよ。グルリとひとまわりすれば、ちょっとはおち
つくぜ……」
 齧歯(げっし)類のような顔をした鳴鬼がおどした。
 彼らは、美絵子の着ているものをひきちぎり、三人がかりで彼女の乳房を舐め
たり、噛んだり、すでに熱くなっている肉びらのあわいに触れたりしていたのだ。
 「烈彦さん……。こんなことをして、どんな得があるの……。仮にも、わたし
は兄嫁よ。あなたまでいっしょになるなんて……」
 「こいつらはオレが連れてきたんだ。ひとりじゃ、ネエさんがものたりないだ
ろうと思ってさ……」
 育ちがよくてハンサムなのに、いっぱしのワルを気どった口調になる。
 美絵子は、わが身にふりかかったことをにわかに信じがたかった。夜ふけの古
い公園でおそわれ、義弟のマンションで起こった不良学生たちとのおぞましい体
験が再現されているような感じだった。
 「いつまでも甘ったれてると、犬をけしかけるぞ」
 サングラスをかけた西村が、酷薄そうな口をゆがめた。
 そそのかされた猟犬は、硬い尾をふりたて、彼女の悩ましい裸身に、鼻づらを
こすりつけはじめる。
 「ひいーッ……。やめて……。烈彦さん、とめて……」
 美絵子は、憎んでもあまりある義弟につい助けをもとめて、途中からがっしり
した西村の手で口をふさがれてしまう。
 「奥さん。いくらさわいだってむだだといっただろう。ここらは禁猟区だから、
オレたちのほかは、だれもやってこない……」
 鳴鬼が、ヒヒヒヒッ、と笑った。
 美絵子ははじめ、乱暴されないうちに逃げだす方法がみつかるかもしれないと
空頼みして、力のかぎり抵抗したが、結局おとなしくして、あまりさからわない
ほうが安全だと悟った。
 それに、妹の和貴子や、子どもたちが聞きつけるかもしれないと思うと、恐ろ
しさと恥ずかしさで、とても悲鳴をあげることはできない。
 それに、彼らは猟銃を持ち、猟犬までひきつれている。
 (あの子たちじゃ、とてもかないっこないわ……)
 できれば、みんなが帰ってくるまでに、この連中に立ち去ってほしい。
 「へへっ……。おとなしくなったらしいぜ。これじゃ面白くないな。烈彦さん、
おしゃぶりのまえに、景気づけにちょっとうたってもらおうか……」
 小柄のくせに怒り肩の西村が言う。
 「どうやって……」
 と烈彦。
 彼は、あこがれの兄嫁を淫らに責めさいなむ期待で、内心ほくほくしている。
 「奥さん、こっちに来な。ぐずぐずしてると、犬に突っこませるぞ」
 西村は、美絵子を寝椅子のほうに追いたてると、はすかいに四つん這いにさせ
て、むきだしの臀部をふりたてさせた。ゆたかなししむらのあいだにうす紫のす
じがひとつ、そして薔薇色のこまやかなひだが、なまめかしい肌をわけあってい
る。
 西村はてのひらをこすりあわせてから、パッとひろげ、唾で湿りをくれて再び
こすりあわせ、右のてのひらにハアッと息をふきかけ、力いっぱいに美絵子の双
臀をたたいた。
 「い、痛ッ! なにをするの!」
 美絵子は寝椅子に顔を押しつけて、歯をくいしばった。
 (く、口惜しいわ……。こんな会社ゴロの手先におしりを打たれるなんて……)
 「女社長をお仕置きするなんてはじめてだが、たたきがいがあるぜ……」
 西村は息をつかせず、右に、左に、正確に尻たぼをねらって打ちすえる。素手
とはいいながら、彼の責めは的確だった。
 美絵子は言葉にならぬ悲鳴をあげ、じっさいの痛み以上に、恐ろしさで目に涙
がにじんだ。
 「こうすれば、よく練れるだろ……。ちょっとでも動くと、恥骨にひびが入る
ぞ……」
 西村はたくみにあしらい、ひと打ちごとに美絵子の内腿をゆるめてゆく。ゆた
かなししむらは、葦(あし)の葉のようにふるえ、ふくらはぎから太腿へとくり
かえし打ちすえられるたびに、彼女はみじめにすすり泣いた。
 「もっといい声で鳴いてみろよ」
 と鳴鬼がはやしたてた。
 「ネエさん……。こんなに泣きじょうずだなんて、ちっとも知らなかった。こ
れじゃあ、兄貴もベッドのなかで大喜びだっただろうな……」
 従順で、ひっこみ思案だった義弟の仮面をかなぐりすてて、烈彦は、小気味よ
げに兄嫁をみおろしている。
 美絵子は、痛みと屈辱のあまり、寝椅子からずりおちそうになるが、鳴鬼がグ
イとひき起こす。
 打たれるたびに彼女はせりあがり、ある種の快感をともなって、膝(ひざ)が
しらで自分の胴を締めつけるかたちになる。
 「さあ、どこまでたえられるかな。烈彦さん、これからがみものだ……」
 西村はあくまでも冷徹で、いささかの容赦もなかった。彼は、怪我をさせたり
しなければどんなにいたぶってもいい、と轡田から言われていたのだ。
 「ひ、ひどいことをするのね。あなたたち、人間じゃないわ……」
 美絵子はむせび泣きながら、苦痛が時として、ある種の疼きをともなって、快
い痙攣となる一瞬があり、ひどく狼狽した。
 むずがゆい責め苦のうちに、われしらず内腿をゆるめ、ハッとして膝がしらを
閉じようと、かえって彼らに媚びるような恰好で、悩ましい臀裂をひろげてしま
う。
 「う、ううッ……。もう、かんにんして。これ以上つづいたら、気がへんにな
ってしまう……」
 美絵子が息もたえだえにうめくと、今度は鳴鬼がズボンのベルトをひきぬき、
西村に代わって、ピシッ、ピシッ、と打ちはじめた。背は低いが怒り肩の彼は、
なかなか力がつよい。
 「烈彦さん……。こっちのほうがよくききますよ。おネエさんは、そろそろ音
(ね)をあげますぜ……」
 官能的なししむらは、たちまちみみずばれになり、鳴鬼のめった打ちにつれて、
彼女は、
 「ううっ……。ひ、そこが裂けてしまう……」
 きれぎれに声をあえがせる。
 みるみるうちに、むっちりと、まろやかなししむらに血のすじが走り、そこか
ら小さな紅玉(ルビー)のようなしずくが沸々と噴きだす。痛みは、すでに疼き
としか感じられない。
 「もったいない……。こんなにきれいなものがにじむなんて……」
 珠のような血のしずくをみると、鳴鬼はベルトをふるう手をとめて、やにわに
かがみこみ、爬虫類のような舌を突きだして、ハァハァいいながら舐めはじめた。
 (ああ、いやらしい……。わたし、いま舐められているんだわ……)
 なまあたたかく、つよく吸いあげられるたびに、美絵子は、羞恥の下べりがす
こしずつうるんでくるのを感じはじめた。
 「烈彦さん、そろそろはじめましょう。こんどはさからったりしねえぜ……」
 ししむらを薔薇色に染めた美絵子が、ぐったり前にくずおれたのをみると、た
まらなくなった西村が、ひき起こしながら言う。彼は、さっきから昂ぶった鰓く
びをもてあまして、じりじりしていたのだった。
 彼らは、美絵子をソファに寄りかからせると、大きくてかたい肉茎を根もとか
らそそりたたせて、とりかこんだ。それぞれふくらみきった亀頭を、彼女の頬や
唇にこすりつけながら、思い思いにふくませてやろうと、大張りきりなのだ。
 「いやらしい真似をしないで……」
 辛うじて、彼女は顔をあげた。
 しかし、前の体験から、結局は彼らの言いなりにならざるを得ないだろうと観
念した。助けを呼ぼうにも、森閑としたこのあたりにはだれもいない。彼らが、
肉具をふくませたがっているのはわかったが、どうやら一度にぜんぶを望んでい
るらしく、美絵子にはとても不可能なことのように思われる。
 「あなたたち、本気で一度にやってもらいたいと思ってるの……。わたしには
……、できないわ」
 美絵子は、こめかみに髪のほつれをまつわりつかせたまま、心ぼそげな表情を
浮かべた。
 「いや、できるさ。あんたは、活きのいいでかまらがほしくてたまらないんだ。
オレたちは、さっきバルコニーで、犯(や)って、犯(や)ってってうめいてい
たのを聞いたんだ。若いこがいいってな……」
 と西村。
 「オレたちは、みんな若い……。そんなにもよおしてんなら、ぜんぶをしゃぶ
らなくちゃあ……」
 「そうとも。こっちをみろ、え、ネエさん。こいつをしゃぶったら、晶彦のこ
となんか、いっぺんに忘れちまうぜ」
 義弟の烈彦が、これみよがしにふりたてて、美絵子の頬にグリグリとこすりつ
ける。
 「ほら、でかいだろ。こいつを味わったら、とうぶんはほしくなくなるぜ……。
それとも、あんたの息子のふにゃまらをしゃぶってやるか……」
 鳴鬼が、怯えきった彼女の唇に押しつける。
 「いやッ……。そんなこと、わたし……、しないわ……」
 美絵子は泣き声をたて、その目に涙があふれた。
 「ふざけるな。オレたちは見張ってたんだ。あんたはいじりながら、息子の名
を呼んでたじゃないか。それとも、奥さん、あれは夢だったとでもいうのかよ…
…」
 興奮した鳴鬼がいきまく。
 「いいか……。おとといからみはってたんだが、やっとバルコニーで、女社長
さんが大股びらきをしてるのをみたってわけさ。まさか、あんなにすげえなんて
……」
 と西村がサングラスをゆする。
 「それで、えらく興奮しちまったんだよ……。ひとりになるのを待ってたんで、
好都合だったがね。いまごろは、あんたの子どもたちも、森で仲間にとっつかま
ってる。素直に、烈彦さんの言うことを聞いてりゃいいのさ……」
 鳴鬼が、毒々しく充血しきったものを唇にこすりつける。
 「というわけで、もう、どこにも逃げられっこないのさ……」
 残忍な笑みを浮かべた西村が、四つも玉を埋めこんだ肉筒を自慢げにふりたて
る。
 「あの子たちになにかしたの? そんなこと、嘘よね。まだ、ほんの子どもな
んだから……」
 美絵子はあえぐように聞いた。
 「ふん。はっきり言ってやるが、連中はいまごろ、そっくり頂いちまってるぜ
……」
 西村は下卑た笑いを洩らした。
 「そんなはずないわ……。ひどすぎる……。そんなことって……」
 美絵子は、会社ゴロの手におちた和貴子や子どもたちの安否を気づかって、か
なきり声をあげた。
 「だまれ。奥さん、そんなにわるいもんでもないぜ。あんたの娘さんたちは怪
我なんてしない。つまり……、その……、連中に、ちょいとばかり痛めつけられ
るかもしれないが……。なに、じきに慣れる。いや、やみつきになるかもしれね
えな……」
 と西村。
 彼女が起きあがろうとしたので、鳴鬼がグイと押さえつける。よろけて、あお
むけになった美絵子は、思わず両膝をすぼめようとして、唇が無防備になる。そ
の隙をついて、鳴鬼の肉筒が、ヌルリと侵入してくる。
 「うぐぐぐ……」
 美絵子は息をつめたが、噛みきることはできなかった。
 「さあ、はじめろ。まごまごすると、連中が子どもたちを連れてきて、もっと
ひどいことをするぞ」
 西村がぐっと腰をおとし、気味のわるい亀頭を鼻の先に押しつける。義弟の烈
彦は、うすら笑いを浮かべて、乳房のあたりにヌッタリなすりつけた。美絵子の
からだが、きゅっとこわばった。
 その瞬間、鳴鬼のほこ先が不気味にふくらみ、口のなかにめりこんできた。ふ
くまないかぎり窒息してしまいそうだった。美絵子は唇をOの字にして、尿と恥
垢の残滓がまじりあって強烈ににおう王冠部を、喉の奥までのみこんだ。
 「そう、その調子……。どんな味がする?」
 鳴鬼は、強靱な腰をつきだしながら、しゃがれ声で聞く。
 美絵子の舌は無意識に動きだし、ヌラヌラした先走りの精をからめとった。時
おり、チリチリする塩からさを感じる。
 「もっと大きく口をあけないと、息がつまるぞ」
 と鳴鬼。
 美絵子は息ぐるしさにあえいだ。
 齧歯(げっし)類のような顔に似合わず、異様にふくらみきった肉筒は、はげ
しく喉ちんこを突き、ひきぬくたびに、美絵子のきれいな歯並びが泡だった。
 (はやく、終わって……。ああッ……。は、はきけがするわ……)
 西村は、にじみだす精で彼女の頬をヌラヌラにさせている。グロテスクにふく
れた玉入りの部分が、グリグリと当たる。
 「オレのもちょっとかわいがってくれよ、奥さん……」
 だみ声をだしながら、西村は醜悪な鰓くびを横から埋めこもうとするが、獣脂
のようにつるつるする鳴鬼のほこ先が邪魔をして思うにまかせない。
 「くそっ。もっと大きくあけないと、裂けちまうぞ……」
 ひき裂かれる、という恐怖が、美絵子をいっそう無抵抗にさせる。西村は玉入
りの部分をグリグリとゆすった。鳴鬼も、たがいのほこ先が快美の中心をもとめ
てせめぎあうのを感じた。
 「西村、手かげんしないと、ほんとに裂けちゃうぜ。それとも、おまえ……」
 サングラスをかけっぱなしの男は、ただおどかしただけだった。
 烈彦は、すっと離れた。
 彼は、ふたりが美絵子の喉にぶちまけたあと、ゆっくり兄嫁を楽しむつもりだ
った。いままで高嶺(たかね)の花とばかり思っていた美絵子が、劣情にやぶれ
て、悩ましい女の性(さが)をあらわにするのを見るのは小気味いい。
 (女社長といったって、しょせんはなびく女……。とことん仕こめば、ずっと
オレのおもちゃになるかもしれない……)
 烈彦は、むかい合わせのソファに座って、じっくり見守ることにした。
 おぞましい二つの肉筒に突きを入れられるたびに、美絵子は息ぐるしさにあえ
いでいる。口のなかで、時おり、傘のように張りだした部分がこすれあう。
 「おどろいたな。ほんとに入っちまうなんて……」
 「アソコだって同じさ。無理をすればいくつも詰めこめる……」
 西村と鳴鬼は、根もとまで押しこんでしまうと、ひどく窮屈な姿勢で、できる
かぎり臀筋を屈伸させ、突きをくれはじめた。
 ふたりが頂上に近づくにつれ、美絵子は新しい不安に怯えだした。
 奔馬のように跳ねまわったあげく同時に射精したら、わたしは窒息してしまう
のではなかろうか。
 (ぜんぶなんて、とてものみ下せないわ……。せめて、ひとりずつなら……)
 そこで、つとめて彼らを刺激すまいとするが、その気配を知った西村は、むり
やり美絵子の顔がたえず毛深い股間にむくように、からだをねじった。
 「くそっ。こいつはすげえ……。もっとくわえこめよ。もうすぐ、イきそうだ
……」
 激しく抜きさししながら鳴鬼がうめく。
 「おれもだ……。もうすこし我慢しろ、鳴鬼……」
 逃れるすべのない美絵子の口腔にめりこませながら、西村もあえぐ。
 「そろって、ぶちまけようぜ……」
 ふたりはペースをゆるめた。できるだけながく楽しもうというのだ。
 美絵子は目をかたく閉じていた。なにもみたくなかった。しかし、頭のなかに
は光がとびかっている。息ぐるしいが、誇らかにうごめき、飛び魚のように跳ね
る感覚は、おぞましいが、なぜか甘美だった。
 (ああ……。堕(お)ちてしまったわ。あなた、ゆるして……)
 亡くなった幸彦を思うと、彼女はどうしてよいかわからない。いっそ、会社を
手離してしまえば、とも考えるが、これまた幸彦の最後の言葉を思うと、それも
できない。
 「よし。いいぞ……」
 西村が、鳴鬼の背中をドンとたたいたのを合図に、ふたりは彼女の口腔に激し
く突きを入れはじめ、
 「うッ……、いまだ……」
 「おおーッ……。いいぞ……」
 思いきり、腰を突っぱらせたかと思うと、熱くドロリとした大量の精液が、い
ちどに彼女の喉を流れ下った。
 美絵子はせきこみ、吐きもどしながら、必死になってふたりが噴射した精を、
一滴あまさずのみつくそうとした。ゴボゴボとむせながらやっと吸いつくすと、
彼らは満足げにひきぬいた。
 深く息を吸いこむ。精のなごりが美絵子の両頬をしたたり、頤(あご)のほう
へと糸をひいている。
 彼女は、両手で唇をぬぐおうとしたが、ふたりはゆるさなかった。
 「待てよ、奥さん。オレたちは、あんたがすっかり舐めとるのをみたいんだよ
……」
 西村はいやらしく笑った。
 美絵子は、仕方なく唇のまわりを舌で舐めまわした。ふたりは、顔をみ合わせ
て笑い、彼女にむかって、根もとごとふりたて、亀頭から精液のしずくをとばし
た。
 彼女は、これで連中が満足してくれればいい、子どもたちに危害を加えないで
くれればいい、と願った。しかし、ぜんぶが終わったとは、なぜか思えない。
 「これでわかっただろ、オレたちってものが。奥さん、なかなか、しゃぶりっ
ぷりがいいぜ。そんなに怯えてなけりゃもっとうまいんだろ?」
 西村が、指で彼女の頬をつついたが、残忍そうな目は、まだ情欲でギラギラし
ている。
 美絵子は、自分をみおろすふたりの顔を正視する勇気もなく、ウェーブのきい
た髪をなびかせて、弱々しくうなずいた。
 「これだけよくしてくれたんだから、オレたちも、なにかお返しをしなくちゃ
あ……。ネエさんだって、いい気持ちにしてもらいたいだろ……」
 烈彦が口をひらいた。ハンサムだが目が変質的な光を帯びている。
 ハッとして目をあけた美絵子は、一瞬、義弟のたくらみがわからなかった。
 まだ終わっていない。さっきのは、ほんの序の口だったと気づいたとたん、美
絵子の顔はこわばった。
 「ネエさんて、意外とこわがりやなんだな……。血はつながってなくても、オ
レは弟だよ」
 美絵子は、烈彦が近づいてきたとき、やさしつあつかってくれるように願った。
この前のときのように荒々しく犯されるのは、もうたくさんだった。
 「さあ、立ちあがって、こっちの椅子に腰かけて、膝をひろげてくれないか…
…」
 口調はやさしげだが、有無(うむ)を言わせぬひびきがあった。
 「烈彦さん……。これ以上ひどいことをしないで。訴えれば、あなたたち、み
んな刑務所行きよ……」
 美絵子は、口惜しそうに言いつのった。
 「さあ、どうかな。ネエさんは訴えないさ……。恥をかくのは、あんただから
な。血圧の高いオヤジを心配させたくないだろ。オレは平気だぜ……」
 彼女は、唇をかんだ。
 (どこまでくさりはててるの……。エゴイストで、恥しらずで陰険で、どすけ
べのいやなやつ……)
 「早くしろよ。オレたちに手間をとらせるな……」
 もはや選択の余地はないんだわ、と悟ると、美絵子はやっと立ちあがり、厚く
詰めものをした椅子のところまで歩いてゆき、言われたとおり腰をおろしたが、
両足を神経質に閉じあわせたままだった。
 「もっと楽にしてよ。ずいぶん他人行儀じゃないか。あれほど燃えたのを忘れ
たのかい。はらわたのなかまでかきまわされちゃって。一度でも、義理の弟と不
倫したら、もう実家にだって戻れないだろ。あんなにオレの淫水をしぼりとった
のに……」
 美絵子の心に、スリルへの奇妙な期待が、とつぜん湧き起こってきた。
 目をあけて床をみつめる。それから、すこしふるえながら顔をあげた。
 みじめにうちのめされていたが、彼女は異常なほど昂ぶっていた。強姦されて
から、義弟の顔をはっきり眺めるチャンスにめぐまれたのは、いまがはじめてだ
った。
 烈彦はすらりと均整のとれた体つきで、男性にしては甘い顔だちで、品もいい。
突っぱった口調でおどしても、どこか育ちのよさが垣間みられる。こんなに不愉
快な状況でなければ、いちがいにはねつけたりしなくともよいほどの魅力がある
ように思われた。
 それだけに、烈彦が兄嫁の人格を無視し、セックスの奴隷のように屈伏させよ
うとする行為が、なんとも腹だたしかった。
 「烈彦さん……。あなただけはイヤ。そちらのふたりに抱かれても、あなただ
けはおことわりだわ。卑怯もの……」
 「なんとでもいえ。あんただって、みえっぱりの淫乱じゃないか。オレは、し
たいだけする性質(たち)でね……」
 烈彦は、西村と鳴鬼にめくばせした。どんなことをしても、犯(や)るつもり
だった。
 ふたりは、用意してきたロープで、美絵子の両腕を後ろにねじあげ、手首をか
たく縛りあげた。
 「なにをするのよ。こんなことをしても、わたしはおことわりだわ……」
 「ネエさん、興奮するなって。一度やらしたら何度でも同じことだろ。兄貴を
思いださせてやるよ……。オレだってもうすこし年をとれば、あいつと生き写し
だぜ」
 背の高い烈彦は、怪物的なもののもちぬしで、その大きさをひけらかすように
立ちはだかっている。彼は兄嫁にみられているのを知って、急激に勃起してきた。
彼女の反応をひそかに楽しんでいる。
 全裸で後ろ手に縛られ、ソファに座らされていても、美絵子は負けたくはなか
った。みたくはなかったが、はっきりみとどけて、あざわらってやろうと思う。
 烈彦は、自信たっぷりにふりたててから、ジーンズを脱ぎおとした。
 王冠部のくびれや色つやからみて、烈彦の性体験がゆたかなのは、あきらかだ
った。手慣れた段どりから察すると、輪姦は、美絵子がはじめてではないらしい。
 「ネエさん、このあいだは、ほんのごあいさつだったが、きょうは腰がぬける
ほどぬきさししてやる……」
 もはや、彼の良心に訴えてもむだだ、と美絵子は悟った。言い返せば、よけい
にいたぶりがつづくだけだろう。たぶん義弟に対抗して危機をくぐりぬけるには、
いっそ大胆にふるまうのがいちばんだ。
 そう思えば思うほど、美絵子のからだは切ない疼きでうるんでくる。
 「オレのからだは、兄貴よりも若くて、鍛えてるから、ポンコツ車に轢(ひ)
かれて死ぬほど、やわじゃないぜ……」
 烈彦はジーンズだけではなく、靴も脱ぎ、シャツもかなぐりすてて、生まれた
ままの素裸で、兄嫁の前に立った。たしかに健康美が感じられる。
 「烈彦さん、ボディビルでもやってるのか……」
 うらやましげに鳴鬼が言う。小柄な彼は、怒り肩で腕力はつよいが、ジムに通
うほどの余裕はなく、ずっと轡田の輩下になっている。
 美絵子の目はキラキラ輝き、義弟の男らしい完璧さを眺め楽しむ余裕さえ感じ
られるほどだった。
 「奥さん、烈彦さんが好きみたいな顔をしてるぜ。タイプなんだろ。オレたち
は、あとでかまわない。遠慮しないで、おっぱじめろよ……」
 からかうような口調で、西村が言う。サングラスをかけていても、人の表情が
読めるらしい。
 美絵子は、神経質そうな作り笑いをして、顔を横にふった。
 「どうしてなんだ。あんたにぴったりだぜ」
 鳴鬼が、烈彦に迎合するように口をはさむ。
 烈彦は、ゆっくりしごきたてる。信じがたいほど猛々しい怒張が目の前に突き
だされ、美絵子はおどろきのあまり、口を半ばひらいた。
 ぜんたいに淫靡な血管が浮きだし、獣脂でみがきあげたような、てかてかする
亀頭の先端から、透明な精がにじみだしている。
 (こんなにすごかったのかしら。信じられない……。あのやせっぽちで、ひよ
わな中学生だった烈彦さんが……)
 ひとまわりも年の差があり、まだ子どもだとばかり思っていた義弟が、いつの
まにか男っぽくなり、こんなワルさをするほどたくましく、なまぐさくなってい
たなんて……。
 マンションでのときは、あっけなくほとばしらせた烈彦だが、きょうは威風堂
々としている。
 「それじゃあ、オレみたいのがタイプなのか」
 と鳴鬼。
 「ええ、そうよ……」
 美絵子は、心にもない嘘をついた。こうすれば、烈彦の自尊心はひとたまりも
ないだろう。
 「おもしろいな、ネエさんがチビが好きだなんて、悪趣味だけど、まあ、いい
か。鳴鬼、オレはあとでもいいんだぜ……。あとで使えるように、だいじにあつ
かってやれ」
 烈彦は、勝ち誇った表情で、リビングをゆっくり歩きまわった。
 どうせ、おそかれ、早かれ、あんたはオレに犯られちまうんだ。彼の表情には、
うぬぼれと、変質的な欲情がうずまいている。
 「オレは、どうだ?」
 とサングラスの西村。
 「おまえは、玉を入れてるから最後だ。ぶかぶかにされたらだいなしだからな。
え、奥さん、いいだろ」
 極度にいきおいづいた鳴鬼は、自慢げにふりたてる。流線形で恰好はいいが、
ぜんたいにあかぐろい血管が浮きだし、いかにもおそろしげだった。
 (醜くて、いやしいものにも、それなりの……)
 美絵子はゆっくりとうなずいた。
 それを一督すると、烈彦は小用をたすようなそぶりで、リビングを出てゆく。
 (やっぱり、みていられないんだわ……)
 美絵子は、ちょっぴり復讐してやったような気持ちになった。
 「さあ。オレ、あんたをたっぷり楽しませてやる。でっかくて、よくしなるし
ろものだから、きっと気に入るぜ……」
 「わかってるわ……。さっき味わったばかりよ……」
 鳴鬼は、うす笑いを浮かべながら、美絵子の両膝をひらかせ、ぬめらかで、ヒ
クヒクする肉びらに押し当てた。ねじまがった鰓くびがヌラヌラと、やわひだの
とっかかりをかきわける。
 「あ……。ちょっと待って……。これじゃあ手が痛くて、とてもたえられそう
もないわ。ロープをほどいてちょうだい。そうすれば、あなたたちに抱きつくこ
とができるわ。ねえ、そっちのあなたもてつだってよ……。あとで楽しませてあ
げるから……」
 鳴鬼と西村は、たがいに顔をみ合わせた。淫らな期待が、ふたりの表情をゆる
ませている。
 美絵子は、ひょっとしたら、彼らをあざむいて逃げおおせられるかもしれない、
と思った。
 (ロープが解けたら、裸で一目散に逃げだそう……。森は深いけど、シーダー
ハウスのところまで行けば、なんとかなる。でも、子どもたちが戻ってきたら…
…。いや、わたしがだれかに知らせたと思って、彼らは大急ぎで退散するだろう
……)
 美絵子の思考は、めまぐるしく動いた。




          第六章 こっちの穴は処女だろ?



 「おまえたち、なにをやっているんだ。そんなことしたら、おいしい餌にあり
つけないぞ……」
 美絵子の縛(いましめ)をときはじめたふたりに向かって、烈彦の声がひびい
た。
 みると、彼は手に体温計を持っている。きのう、ちょっと熱っぽかった亜衣子
のために、母親が計ってやり、そのまま寝室のベッドのうえに忘れていたものだ
った。
 彼にどやされて、すぐロープをほどくのをやめたのは西村だった。鳴鬼は未練
げに美絵子のまえにひざまずき、ふっさりした恥毛をかきわけ、秘肉の合わせ目
をのぞきこんだ。
 (ああン……。また、みられてる……)
 美絵子は、じっとみつめられると、うるみのつよいつけ根の奥がとろりととけ
だすように思われた。鳴鬼がそこに顔をうずめ、とめどなくあふれる部分を舐め
まわし、入れたがっているのを知っていたからだった。
 「どいてみろ。女ってのは、こんなふうにあつかうんだ……」
 鳴鬼をおしのけた烈彦の手が、美絵子の秘裂にのび、敏感な肉粒のいただきと
よじれたつぼみの襞(ひだ)を指先でなぞりはじめた。やせ我慢ができず、毒喰
らわば皿までの心境である。
 美絵子の肉芽にかるい電撃が走った。その余波は、子宮頸部の入口にまでおよ
んだ。
 「ダメ……。いやだったら……」
 烈彦の摩擦から逃れようと、からだをくねらせるが、意志とはうらはらに、微
妙な肉ひだは収縮して、かえってまとわりついてしまう。
 「いそぎんちゃくのように、からみついてくる……」
 烈彦は、秘密っぽい通路がきついのに満足したらしかった。指先でかるく突い
たり、なぞったりするたびに、美絵子の欲情はうわずり、こころもち背をそらせ、
腰をつきだすようにする。
 (いいわ……。思いっきり、生き恥をかいてあげる……。さあ……)
 しかし、烈彦がもとめていたのは、そこではなかった。彼は、ふいに美絵子を
椅子からひき起こすと、横向きにしてお尻の穴に体温計をじりっと押しこんだ。
 「いや……。やめてッ……。なにをするの烈彦さん……」
 ユルユルと体温計を抽送されるたびに、美絵子は、男に触れられたことのない
場所を犯されるおどろきと恥ずかしさで呻きつづける。
 「ネエさん。ここは、兄貴にはめられたことはないんだろ……」
 烈彦は、全神経を体温計に集中させて、ゆるやかにぬきあげ、すばやくジャブ
をくりだした。
 「ひいーッ……。つ、突かないで……。そこじゃないわ。だめよ……」
 異様な衝撃で、一挙に誇りをくだかれた美絵子は、もはやとめどがない。義弟
のいたぶりになびいて、しだいに淫らがましく腰をうごめかしてゆく。
 「兄嫁ぶっても、だらしがないもんだな。ほら、これなら、どうだ……」
 「く、口惜しいわ……。あなたにこんなにされて……」
 美絵子は、からだをよじらせ、息をあえがせ、恐ろしくも決定的な崩壊にむか
って、臀裂を締めたり、ゆるめたりしている。
 「すごいけつの穴だな……。まるで、いそぎんちゃくみたいに吸いついたり、
はなれたりしている」
 鳴鬼が唸り声をあげた。彼はそそりたてたまま、痴呆のように、この場のなり
ゆきをみつめている。
 サングラスの西村も、爆ぜるような勃起をもてあましていた。彼は、無意識に
ポケットから飛びだしナイフをとりだし、手のなかでぶらぶらさせている。
 ふいに、たえきれなくなった西村は、薔薇色に染まった美絵子の尻たぼに顔を
伏せ、ヌラヌラと舐めずった。
 烈彦が、体温計をわざと蟻の戸わたりから、羞恥のうるみにすべらせる。
 「ああン……。そ、そこよ……。もっと……」
 たかぶった美絵子は、太い地声で自分が命じているのを聞いた。とろけた飴(
あめ)のような分泌液をからませた体温計が、蜂蜜いろのみぞをつきたて、彼女
を快感でふるわせる。
 (よがり声をあげちゃって……)
 知らぬまに、西村は飛びだしナイフをチャッとあけた。その切っ先で、スッと
臀部をひと撫でする。血が線状ににじみだす。
 男たちは、血をみるとますます欲情をつのらせた。
 「入れやすい恰好になるんだ……」
 烈彦にせかされるままに、美絵子は椅子にふかぶかと座り直して、両膝を大き
くひろげた。
 狂おしき感覚を押しとどめるものは、なにひとつない。はねつけなければなら
ないと知りながら、彼女はもはや羞恥すらおぼえることができなかった。
 烈彦は、乱れに乱れる兄嫁の疼きを昂ぶらせ、じりじりと追いあげてゆく。
 美絵子はうるおい、しとどに熱くなり、両足はつっぱり、男の肩にあたっては
また大きく横にひろがる。
 「そろそろはじめよう……」
 鳴鬼が待ちきれずにしごきたてる。
 「おれからはじめるぞ」
 西村がナイフを投げ捨てた。
 「待てよ。オレだってことを忘れてるのか」
 烈彦が体温計をぬきとって、仲間をねめまわした。ツンツン・ヘアがさかだち、
目がギラギラと燃えている。もし、妨げる者がいれば、だれであれ許さないだろ
う。
 「ああン……。おねがい……。だれでもいいわ……。はやくして……」
 美絵子は、自分でなにを言っているのかわからないほど、とりみだしている。
 西村と鳴鬼は、渋々、烈彦にゆずった。彼は、ふたりに、
 「あそこの床に寝かせるんだ」
 と命じた。
 美絵子は、よろめきながら暖炉のまえのやわらかな絨毯のうえにあおむけにな
り、蜂蜜色の肉びらをヌラッとひろげた。
 烈彦のかたい肉筒が、濡れたほころびに押し入ってきたとき、美絵子は、絶え
入るような呻きを洩らした。
 なんとも名状しがたいおぞましくも甘美な感覚だった。
 彼が、うるんだ下べりを押しひろげ、荒々しい動きで跳ねまわると、快感のあ
まり死んでしまうのではないかと思われた。
 「ああン……。犯(や)って……。わたしをめちゃめちゃにして……。いいの、
いいのよ……。もっと奥で感じたいの……」
 美絵子は、顳(こめ)かみにあおい静脈を浮かべて、悩ましくすすり泣いた。
 「ううッ……。ネエさんのはいい。どんなに具合がいいか、こいつらに教えて
やりたいぜ」
 美絵子の秘裂は快感に疼き、ひきつれる。ひと突きごとに、甘美な渦がひろが
り、子宮頸部を異様にあつくする。
 (なんてすごいのかしら……。ああン、いや、いや……。あ、あなた、ゆるし
て……)
 一秒ごとに、ますますかたく、ふくれあがるように感じる。美絵子は、亡き夫
に詫びながら、肉の愉楽に溺(おぼ)れてゆく。
 「たまらない……。ネエさん、あんたの熱くて、ちっちゃなおま×このなかに、
ぜんぶ、ぶちまけてやる」
 若々しく、たくましい股間で、思いきり陰嚢をひき締めながら、烈彦がうめく。
 彼が最後の激しい突きをくれたとき、美絵子は、秘裂の下べりが収縮するのを
おぼえた。
 「おおおッ……。イ、イっちまう……」
 みえない膣ひだに熱い精がはじけとぶのを感じ、美絵子は、
 「うううッ……ン、もう……」
 とうめき声を洩らした。
 襞々にはじける感覚は、いつまでも止まぬように思われる。それはせせらぎと
なり、収縮する狭い構造を、すわすわとやわらかくするかのようだった。


 「嵌(は)められて、気がイくのがどのくらい好きか教えてくれよ」
 美絵子の横に膝をつき、半ばやけっぱちな口調で、鳴鬼が聞く。
 「とても好きよ……。とても……」
 われを忘れて、彼女はあえぎながら答える。鳴鬼は、なまなましく女っぽい匂
いを嗅ぎながら、仲間に言う。
 「すっかり、その気になってるぜ……。西村、役にたつようにしてもらえよ…
…」
 「よし……。たっぷりとな……。一気にぶちまけられるように、しっかり頼む
ぜ」
 西村が、玉を埋めこんで醜くふしくれだった肉塊を突きだす。彼女はかたちの
いい唇を思いきりひらき、喉の奥深くくわえこみ、根もとを脈うたせてやった。
 「へえ、上品な奥さんが、あばずれみたいにあつくなってるぜ」
 齧歯類のような反(そ)っ歯をむきだしながら、鳴鬼がわらう。彼の指先は、
美絵子の悩ましげな肉びらをえぐりたてている。
 刻一刻、果汁の粘糸がつたわり、淫らなあえぎとともに、濡れためしべがひく
つく。
 「奥さん、上になってくれよ。うまく腰をおとすんだ……」
 絨毯にあおむけになった鳴鬼にひきあげられ、激しく突きあげられる。鰓くび
のまわりに、粘液が光っている。
 「おおっ……。いいぞ。ぜんぶ入っちまった。そんなに締めつけるなって……」
 鳴鬼は、たくみに突きあげ、美絵子は、西村の肉具を頬ばったまま、きれぎれ
にすすり泣いた。
 二個所の粘膜を刺激されて、美絵子は快美のあまり、気が遠くなりそうだった。
鳴鬼は、一回、一回、的確にずりあげる。美絵子は子宮頸部の奥から、こぶのよ
うなものがもりあがるのを感じた。
 ひと突きごとに、鳴鬼はいちだんと深く突きあげる。
 (イクのは、もうすぐだわ……)
 と、彼女は思う。
 このままもっとつづけたいが、西村がせかせている。口のなかで終わりたくな
いのだ。
 「ぐっと腰を沈めるんだ、奥さん……。こってりして、熱いやつをぶちまけて
やる。おおおお……」
 鳴鬼がうめいて最後に突きあげ、弓なりに反ったとき、美絵子はみえない肉ひ
だが収縮するのを感じた。熱流がはじけとび、内部はどろどろにとろけて、なお
も蠕動をくりかえしている。
 「こんどはオレの番だ。早くひっこぬけ……」
 スポッとひきぬき、肉柱をそそりたてて西村がうめく。
 「待てよ。おまえのために、この女をその気にさせてやったんだぜ。二、三回
かきまわすだけで、すぐイッちまうぜ」
 捨てぜりふをはいて、鳴鬼がはなれた。
 汚された大輪の薔薇のように、ぐったりと絨毯にくずおれている美絵子をみつ
めて、西村が言った。
 「ちょっと手伝ってくれよ、鳴鬼……」
 「どうするんだ……」
 「あのテーブルを持ってきてくれ……」
 西村が指さしたほうには、バルコニー用の荒削りなテーブルがある。だいぶ前
に、彼女の夫、幸彦がつくった手製のもので、四人掛けぐらいの大きさである。
 「それをどうするんだよ」
 寝椅子に座って、興味深そうにみていた烈彦が聞く。彼は、これから先、兄嫁
がどんなふうにいたぶられるのか、小気味がよくてしかたがない。
 「テーブルをひっくりかえして、毛布を二、三枚敷くんだ。わかるだろ……」
 「そうか。もっとロープがいるな……」
 西村の意図をのみこんだ鳴鬼は、調子づいた声をだす。
 (おもしろい見世物がはじまるぞ……)
 「なにをするの。ねえ、これ以上、いじめないで……。わたし、なんでもする
から、へんなことはしないでちょうだい……」
 美絵子は狼狽しきって、起きあがろうとする。
 (すべて、武藤の指図なんだわ……)
 彼女の脳裡には、ショコラを乗っとろうとするムトー製菓の社長の顔が浮かん
だ。しかし、その証拠はない。烈彦が一枚噛んでいるだけに、年老いた彦兵衛の
ことも気がかりだった。
 「こっちにくるんだ……」
 西村が荒々しく、美絵子をひきたてる。ロープのはしをひかれて、彼女はよろ
よろと、テーブルのところまで追いたてられた。
 「かわいそうに。ほどいてやるからな……」
 鳴鬼が上半身を緊縛していたロープをほどき、ついで、後ろ手縛りもはずした。
両手首はすでに知覚を失っていて、ロープをとかれると、血液が少しずつ循環し
はじめ、チクチクと痛みがもどってきた。両肩や胸のあたりにもロープがくいこ
んだあとが、赤い条痕となっている。
 「そこにあおむけになるんだ」
 西村が容赦なく突きはなす。
 「ひどいことはしないで……」
 美絵子は哀願したが、たちまち、両手足をテーブルの四脚に固定されてしまう。
 「こうなったら、覚悟を決めるんだな……」
 西村と鳴鬼の苛酷ないたぶりがはじまった。
 両足首とロープを結ぶテーブルの脚が、滑車の役をはたし、ギリギリとひきし
ぼるたびに、たえがたい痛苦が下半身におよんでくる。両手首も同じだった。
 「ひいーッ。い、痛いわ……。やめて……。ああーッ……」
 美絵子は絶叫した。万力で締めつけられるような痛覚が、彼女を恐怖のふちに
つきおとした。
 痛めつけられ、苛(さいな)まれてゆくうちに、美絵子は半ば意識を失ってい
た。すると、西村が頬をピタピタたたく。
 何度目かの失神のさなかに、美絵子は下腹部に異様な重さを感じた。
 ハッとすると、西村が深々とねじこみ、腰を使って、彼女の上べりの陰唇のふ
くらみをこすり、小さく円形を描いてはうごめきつづけている。
 「ああン……。ダメよ……。イヤ……。紐をほどいて……」
 西村はいちだんと激しく攻めたて、歯ぎしりする。
 美絵子の顔は凄艶なほどで、唇は痺れきって、うつろにひらいている。切なげ
にうるむ目だけが、あわれみをもとめているが、男はいっこう意に介そうとしな
い。
 「おおおッ……。イ、いくぞ。いまだ、グッと締めつけろ」
 美絵子の蟻の戸わたりに、西村の睾丸(こうがん)がうちあたる。彼女は官能
の疼きにうめいた。
 「おおっ……。いまだ……」
 かたい肉筒から精をほとばしらせ、西村が吠える。おびただしく熱液が流れこ
む。
 美絵子は、いつ烈彦に代わったかもわからなかった。恥知らずな義弟は、他の
ふたりよりも執拗にえぐりつづけ、彼女がうつろにわななくまでやめようとしな
い。ふしぎなことに、美絵子は、いつしか自分がおぞましい歓びにひたりつつあ
るのに気づいた。
 肉体はものうく、鈍痛が両手両足をおおっているにもかかわらず、烈彦が射精
したとき、美絵子は二度目のエクスタシーにほとびた。
 「もう、勝手に……。勝手に……」
 彼女はうわごとのようにあえぎつづける。その熱気にあおられたように、鳴鬼
がふたたび、ズブリととどめの一発をぶちこむ。
 いまや、美絵子は、恐怖も忘れはて、つかのまの情欲にわが身をゆだねきる一
匹の牝獣にすぎなかった。彼らも酔い痴れたように夢中になっていたので、その
とき、リビングのドアがあいて、全裸の子どもたちに銃をつきつけた仲間たちが
入ってきたのも気づかぬほどだった。


 「想像どおり、あんたたちは、うまく雌ギツネをとっちめたようだな」
 ヒグマのような成海は、しらがまじりの顎ひげを撫でて、ニタニタとわらいだ
した。
 夢うつつに目をあけた美絵子は、かわいい子どもたちと、妹の和貴子が素っ裸
にされているのを見たとたん、森のなかでなにが起こったかを、おぼろげに感知
した。
 和貴子と、玻瑠子が荒々しく犯されたことは、彼女たちの腿からしたたり、す
でに乾きつつある白濁のなごりで、はっきりとみることができる。玻瑠子のふく
らはぎからは、破瓜(はか)の血がかすかに糸をひいている。
 (ひ、ひとでなし……)
 美絵子は身もだえたが、はらわたのなかまでおくりこまれているので、どうす
ることもできない。
 仲間にみられていることを意識すると、鳴鬼は、なおも奔馬のように美絵子を
煽りたて、加速度的に精をはじきだした。三度目なので量はすくないが、毒々し
いほこ先はピクンピクンとひきつっている。
 強引に唇を吸い、乳房を揉みたてる西村は、美絵子が絶頂をきわめると、興奮
のあまり、つよく舌先で、悩ましい口腔を舐めずりまわした。
 「へええ。うまくやったらしいな……」
 成海は、烈彦と仲間をみやった。
 「そりゃあもう……。みんなで、いただいちまったぜ」
 鳴鬼は、自分の手並を印象づけようと、得意になってまくしたてる。
 「ところで、オヤジさんたちは、どうだったんですか」
 西村が卑猥な身ぶりをする。
 「みりゃあわかるだろ。オレたちが何をしてたと思う……」
 だみ声で成海は答えて、ニヤリと笑う。
 成海は、あおむけにされた美絵子を眺めながら、
 「さあ、女社長さんのつらが拝めるように放してやれ……」
 という。
 西村と鳴鬼が、彼女の両手足のロープをほどきはじめた。けぶったようにいろ
づく女体には、凌辱のなごりが歴然としている。秘密っぽいとば口は蜜まみれで、
恥毛の茂みにまでなまなましい精がとびちっている。
 眉のうすい権竜が、ぐったりした美絵子を引き起こす。
 「ママ、だいじょうぶなの?」
 会社ゴロたちをかきわけて、晶彦がさけぶ。
 「だいじょうぶよ。なんでもないわ……」
 気をとり直し、不安を押し殺した声で美絵子は答えた。
 「坊や。だれもママをひどい目にあわせやしなかったってよ……」
 成海がうすら笑いを浮かべた。
 美絵子は、両手足がズキズキ痛むのも忘れて、子どもたちのほうにかけより、
ふたりの娘をひしと抱きしめた。
 彼らは、しばらく家族が慰めあうままにさせておいた。
 「お嬢ちゃんたち、ママは思ってたより美人だな……。こうして、間近で見る
のははじめてだが……」
 成海は、早くもズボンをふくらませて、左手でゆっくり揉みたてながら言う。
 成海が、美絵子に近づき、がっちりした手でむきだしの乳首をわしづかみにし
たとき、彼女は激しく振りはらった。
 「やめて、やめてちょうだい……。子どもたちの前で、そんなこと……」
 しかし、成海は、うろたえる女社長への欲情で沸きたっている。彼は平然と見
据え、髪のほつれとかたちのよい耳たぶのあたりに、動物的な息を吹きつけた。
 「この連中をさんざん楽しませたくせに、いまさら気どってもはじまらないぜ」
 「いや、いやッ。そんなことさせるものですか、けがらわしい。ああッ、うむ
……。うぐ……」
 美絵子がさからったのは、ほんのわずかだった。
 たちまち、斧のようにがっしりした成海に抱きすくめられ、手足をばたばたさ
せた。
 「さわっただけで、とろけてしまいそうだな」
 成海は、両腕で彼女のわき腹をガッチリはさみ、蛙のように分厚い唇を美絵子
の唇に押しつけ、強引に舌でこじあけ、息がつまりそうなほど吸いたてる。
 「うううッ……」
 美絵子は、顔をしかめて舌の侵入を拒んだが、五十男特有のおぞましい口臭を
かがされたとたん、にわかに抵抗がにぶった。
 人間は、みかけは頑丈そうでも、しょせん、年齢にはかてない。轡田成海も例
外ではなかった。若者をしのぐ精力をもてあましているようにみえても、肉体の
内部から徐々に腐臭がたちのぼっているのだ。
 しかし、美絵子は、この老醜の迫力に、被虐めいた恐怖と興奮を感じつつある。
 「その調子だぜ、オヤジさん……」
 成海が頬ずりしながら、とめどなく美絵子を舐めつづけるのをみて、鳴鬼がは
やしたてた。彼女はすでに目を閉じて、懸命におぞましい恥辱をこらえている。
成海の舌先は淫らにうごめき、柔媚な口腔から喉ちんこのあたりまでかきまわし、
そのたびに美絵子はくるしげに喘いた。
 「感じを出せよ。ほら、舌をだして……」
 痺れたように、彼女はいいなりになる。
 美絵子はおずおずと舌をさしだし、成海にからめとられる。裏がわを舐めずら
れると、彼女の下腹部にかすかな戦慄がよぎった。湿った疼きが羞恥の肉粒をゆ
すり、いつしかうるおいを帯び、甘美な感覚にかわりつつあるようだった。
 「もっと気をあわせるんだ」
 成海がだみ声でささやき、骨もくだけよとばかり美絵子を抱きしめる。彼女は
思わず息がつまった。
 「やめろ。やめるんだ」
 はじめは茫然とみつめていた晶彦が、勢いこんでとびだしたが、たちまち、ス
キンヘッドの堰八に平手打ちをくらって、床に横転してしまう。
 少女たちは悲鳴をあげ、美絵子もさけぼうとしたが、あまりにつよく成海に舌
を吸いたてられているので、声がでない。
 成海はすんなりした美絵子の腰を両手で撫でつづけ、数多くの女をたぶらかし
た男の手慣れた愛撫で、彼女をたかぶらせてゆく。
 うむをいわせぬ力づよさで、しかも奇妙なほど優しく、ねっとりした成海の両
手と唇が、みえない内部の腔腸動物をよびさます狂おしい感覚を、美絵子はしり
ぞけようと必死だったが、どうすることもできなかった。
 がっちりした筋肉質の毛深い肉体が、彼女のうえにのしかかってきた。ほてっ
てザラザラした毛ずねが、彼女の両膝をこじあける気配がわかる。
 かたくなってゆく乳首に、成海の針金のような胸毛がこすりつけられ、そのた
めに全身が疼きだすのを、美絵子は感じる。
 「毛ぶかい女はスケベだというが、あんたもそうなんだろう」
 じっとりと濡れそぼった恥毛のしげみを、成海のてのひらでつつみこまれたと
き、美絵子は不覚にも、悦びのあえぎを洩らした。このいまわしい情景を子ども
たちにみられるのを怖れているくせに、彼女はしだいに興奮してゆくのをとどめ
得ない。
 「やめろ。ママにへんなことをするな」
 堰八に首ねっこを押さえつけられた晶彦が、床のうえでじだんだを踏んだ。彼
は、怒りとかなしみで泣き声をたてた。
 「やめて……。ねえ、ママにひどいことをしないで……」
 亜衣子も泣きじゃくりながら、ゴロツキどもに哀願した。
 「烈彦さん、どうしてとめないの? おネエさんが、こんな目にあってるのに
……。第一、どうしてあなたがここにいるの、説明してちょうだい」
 あられもないわが身をもかえりみず、和貴子は、義理の弟にくってかかった。
 「そうよ、どうして、こんなところにいるの? まさか、この連中を連れてき
たんじゃないでしょう」
 全裸を恥じながら、玻瑠子も言いつのる。
 「いまにわかるさ……」
 烈彦は、ジロリと子どもたちをみつめながら言う。
 「そうとも。オレたちには、だいじなお役目があるんだ。知りたいか、お嬢ち
ゃん」
 岩瀬権竜が、三白眼を亜衣子に向け、いじわるそうにニヤリと笑う。
 彼女は怯えながら、頬をかすかに染めた。森のなかで権竜に犯されかかった亜
衣子は、男と女のからみに無関心ではいられなくなっている。権竜にねめまわさ
れると、それだけでからだじゅうが痺れ、凌辱の戦慄が螺旋状によみがえってく
る。
 「なあ、このガキどもはふんじばったほうがいいんじゃねえか……」
 裏の納屋に行っていた錠二が、リビングに戻ってきた。みると、手に数本のロ
ープがにぎられている。
 「こいつらは、お呼びじゃないらしいからな」
 錠二は、晶彦と亜衣子が邪魔っけで、残りの三人の女をぜんぶもてあそぶつも
りでいる。
 「そうでもないさ。そのガキどもは、権竜さんをけっこう楽しませたらしいぜ
……」
 と、筋肉隆々たる堰八がまぜかえした。変質的な西村と鳴鬼は、あらためて、
ふたりの子どもを見直した。
 みればみるほど、晶彦は少女にもみちがえるような顔だちをしている。亜衣子
も初々しい美少女だった。すんなりとかもしかのようにのびきったふたりの肢体
は、たしかに倒錯的な欲情をそそるものがあった。
 「そうか。おもしろいな……。おまえら、こっちにくるんだ……」
 西村は、亜衣子の臀部に変質的な視線を走らせながら、ロープの先でこづいた。
 堰八にひきずり起こされた晶彦は、執念ぶかそうな鳴鬼の手にわたった。
 晶彦と亜衣子は、みんなからひき離され、べつの部屋に連れこまれた。そこも
洋間で、右側に高目の物入れ棚があり、手製の木梯子が無雑作にたてかけられて
いた。前に、子どもたちが遊ぶのに使ったらしい毛布が二枚まるめられて片隅に
置かれている。
 「こっちにくるんだ」
 鳴鬼が邪険にふたりをこづく。西村は例によって飛びだしナイフをひけらかし、
光る刃のはらを指先で撫でまわしている。
 「どんなふうにふんじばって、料理してやろうか……」
 と鳴鬼。
 「時間はたっぷりある。みんなでじっくり楽しむつもりらしいからな……。成
海のオヤジだけじゃない、あとの連中も、あの女社長をみる目つきが変わってき
た。女どもがこってりかわいがられているあいだ、オレたちも、こっちで磨きを
かけさせてもらおうぜ」
 「ぼくたちにさわるな」
 晶彦が気丈にさけんだ。しかし、鳴鬼は容赦なく少年を後ろ手縛りにし、部屋
にあった布切れで猿ぐつわをかませた。
 「こうしておけば、ひよっこもさわぎたてずにすむだろう」
 亜衣子は逃げだそうとしたが、西村が喉もとにナイフをつきつけているので、
どうすることもできない。それに彼女は、ほとんど裸同然なのだ。
 晶彦は毛布をひろげたうえに座らされ、足首をそれぞれロープで縛りつけられ
た。
 「まあ、じっとしてな。こっちのお嬢ちゃんをたっぷり可愛がってやるからよ」
 亜衣子は雛鳥のようにふるえている。背たけこそ、すんなり伸びきっているも
のの、荒っぽい男たちに対する恐怖は本能的といってもよかった。それで、晶彦
が縛りあげられるとき、彼女はなすすべもなかった。
 「お嬢ちゃんはなんてえ名前だ」
 西村が、彼女の頤(あご)を左手で撫でまわしながら聞く。
 亜衣子は返事をしなかった。いや、恐ろしさで声もでない。彼女は半分気を失
いかけている。
 「くそっ。四つん這いになって、けつを高くあげろ」
 変質的な西村は、催眠術にかけられたように、いうとおりになる亜衣子の恰好
を小気味よげにみつめた。
 晶彦を部屋のすみに転がした鳴鬼は、
 「こりゃあいい。すっぽんぽんで新体操をはじめるみたいだぜ」
 と、ほくそえむ。
 「ふん縛らなくても、言うことを聞きそうだな。そのほうがおもしろい……」
 西村は、鳴鬼にむかい、片目をつぶって合図してから、亜衣子を点検しはじめ
た。
 ひきしまって繊細な両足、くりっとした腰の曲線。つややかにかがやく双臀に、
あどけなさと大人になりかかるアンバランスな魅力があり、そのなだらかにおち
かかる谷間に、初々しい肉のつぼみがほころんでいる。
 「いまにも、すいつきそうだぞ」
 下卑た笑いを浮かべた西村は、ローズピンクの閉じ目に、いきなり指をつっこ
んだ。森のなかでの権竜の唾液のなごりがぬめって、亜衣子が、
 「あああッ……」
 と声をあげたので、西村は、ありあわせの布切れを彼女の口につっこんだ。
 「もっとゆるめなくちゃあ。ついでに掃除してやろう……」
 西村は、軽いノリで指をさしこみ、左右にゆさぶりをかけたが、半ば気が遠く
なった亜衣子は、なにが起こったか、よくわからないらしい。
 「きれいなものだ。なにもついてこない……」
 「そんなはずはないだろう」
 鳴鬼が代わった。
 彼のやりかたは執拗をきわめた。
 痛覚をよびさまされ、亜衣子は眉をひそめて激しくあえいだ。しかし、抵抗は
しなかった。
 「みろよ、このとおりだ」
 スポッと、鳴鬼は指をひきぬいた。
 わずかに湯気がたちのぼる。鳴鬼は、指先を西村にかざしてから、自分の鼻に
近づけた。かすかに異臭がたちのぼり、クチャッとした黄褐色のかたまりが付着
している。
 「坊や、そんな目つきでみるなったら……」
 鳴鬼は、その指先を、かたわらで呻いている晶彦の頬になすりつけた。
 「初ものは、オレに任せろ」
 いいざま、西村は無造作に亜衣子のお尻の穴にうずめこんだ。
 あっというまにのめりこむと、彼女は苦痛と恐怖で、ぬめぬめと臀裂をゆるめ、
へたへたと前のめりになりそうだった。
 悩ましい括約筋が収縮したり、ゆるんだりすると、西村は名状しがたい快感で、
筒先がとろけるような知覚をおぼえた。
 「はじめてだってのに、こんなに物おぼえのいい子はいねえや」
 亜衣子は、本能的に、これ以上傷つけられたくないと思っただけだった。息を
ぬいてさからわずにいると、ただ鈍いうねりが押しよせ、みちあふれてくる。痛
覚は、むしろしりぞくときに起こった。
 (は、早くすませて……。いっしょにうんちが出そうだわ……)
 嗜虐的な快感で、西村は遮二無二ぬきさしする。彼は、亜衣子の腰をかかえこ
み、もっと深く迎え入れるようにさせた。
 美少女は、低く呻きつづけている。
 西村が螺旋状におくりこむと、ヒクヒクまとわりつき、締めつけ、彼はたえき
れぬ快感で、声をきしらせ、一挙に爆ぜた。
 うつぶしたかたちの亜衣子は、熱い液体がお尻をつらぬいて、とびちっている
のを感じ、激流がみえない通路になだれこみ、そこから火花がはじけるような感
覚をおぼえ、ヒクヒク疼攣しながら、息をあえがせ、虚脱したようにくずれおち
た。




        第七章 犯(や)って、わたしを犯して



 リビングでは、成海に毒々しい亀頭をこすりつけられた美絵子が、官能の疼き
にたえかねている。
 「感じてるんだろ……。遠慮しないで、声を出せよ」
 「ひ、ひとでなし」
 「なんとでもいえ。これなら、どうだ……」
 くわっと張りだした王冠部で、湿潤のはざまをくじられる感覚は、おぞましく
も、たとえようもなく甘美だった。
 「ああン……。そんな……」
 ズブリと弾みがついてのめりこむと、美絵子は思わずのけぞってしまう。
 成海は、なまめかしい粘膜がからみつくのを知りながら、わざとひきあげる。
 「あ、イヤ……。待って……」
 「ほら、これならどうだ」
 「ンもう……。ひ、ひどい……」
 成海は、ふさぐかと思えばひきぬき、また根もとまで埋めこんで、美絵子に不
覚の秘液をしたたらせる。
 かたわらで、じりじりしながら権竜が待つあいだ、烈彦は、立ちすくんで肩を
寄せあう和貴子と、玻瑠子をじっとみつめた。
 若い叔父の露骨な視線を感じた玻瑠子は、できるだけ膝を閉じあわせて、みら
れまいとしたが、どうしても無理だった。
 それどころか、なかなかのハンサムで、雄々しい肉茎をかくそうともしない烈
彦のほうに、つい目がいってしまう。恥ずかしくてうつむくが、どうしても上目
づかいになる。
 それは、和貴子にとっても同じだった。みえっぱりで、陰湿だと思っていた義
弟が、けっこう男っぽく、魅力的なのが意外だった。
 太くて長い肉筒をとりかこんで、あたりはジャングルのように密生している。
なんと威圧的で、しかも刺激的な眺めだろう。
 烈彦は、ゆっくり玻瑠子に近づいた。
 「そんな顔をするなよ。すべて、おまえのママのせいだ。こんなことをするつ
もりはなかったけど……。みろよ、けっこう楽しんでるじゃないか……」
 目の前で、美しい母親が、しだいに女性のつつしみを忘れてゆくさまをみるの
は、玻瑠子にとっては辛いことだった。
 しかし、いつしか自分たちも同調して、知らず知らずのうちに、烈彦の思うつ
ぼにはまりつつあった。
 「もっとよくみせてごらん。すてきだよ。熟れるまえの桃の実みたいなおっぱ
いだ」
 烈彦は、弾むような玻瑠子の乳房に指を這わせている。乳首がかたくなってつ
んと突きだすまでかわるがわるつまみあげては、やさしく撫でさする。
 彼の股間の昂ぶりが、ツンツンと玻瑠子のおへそにあたるのが感じられる。
 (ああ……。へんな気持ちだわ……)
 身内なのに、こんな間近に迫られると複雑な気分になる。森のなかでいやいや
犯されたのとちがって、懇ろに愛撫されると、なにもかも任せてしまいたいよう
な気になってくる。
 玻瑠子の乳首をかたくさせると、烈彦は、和貴子のほうに手をのばした。
 彼女が、一、二篇書いただけで、マスコミの脚光を浴びた女流作家ということ
は知っていたが、じっさいの男性経験はさほど多いとは思えなかった。
 「あんたとこんなことになるなんて、夢にも思わなかったぜ。和貴子さん」
 「あたしだって。あなたが、こんなワルだなんて……」
 烈彦は、かがみこんで和貴子の乳首を舐めずり、彼女の奥拠が疼き、痺れてく
るまで、くりかえし乳首を中心に吸いつづける。時には、ハァッと、なまあたた
かな息をふきかけるので、和貴子も、いつしかうるおいはじめる。
 「ふたりとも、とてもきれいだ。まえから、こんなことをしてみたかったんだ
……」
 烈彦は、ふたりのなめらかなわき腹を撫でさすり、徐々に、陰裂を盛りあげて
いる茂みにまで指先をのばしてゆく。
 彼の両手の指先は、ふいにすこしよじれた肉唇のはざまにさしこまれ、ぴっち
りした熱感をおぼえる。和貴子のびらつきはゆたかで、ねっとり。玻瑠子のは、
繊細で、なめらかである。
 「はじめてじゃないな……。森のなかでやられたんだろう」
 玻瑠子は思わず膝をあわせようとするが、烈彦の指のうごきにたぐりよせられ、
ひめやかに薫湯があふれだす。
 彼の肉茎は、岩ほどにかたくなり、しなやかな玻瑠子の腹部でおどりはねた。
 「いい気持ちにさせてあげよう……」
 烈彦は、ハンサムな顔に卑猥な表情を浮かべ、どちらへともなくささやいた。
 キラキラした目のかがやきから、ふたりがその気になっているのを、烈彦は読
みとった。
 リビングの中央では、成海が美絵子の乳首をくわえ、激しく抜き身を突きあげ、
深く浅く、じらすように羞恥の肉ひだをこねまわす。
 ほかの連中は、まわりでいやらしく嗤(わら)いながら、はやしたてたり、肉
茎をしごきあげたりしている。
 その間に、烈彦はふたりを隅のほうに誘い、威圧的な肉筒をそそりたててあぐ
らをかき、両脇に座るように手招きした。
 「ふたりとも、ほんとは森のなかでされたようなことが好きなんだろう」
 烈彦は、うす笑いしながら、左右をかえりみた。
 「あの連中、とても乱暴だったのよ」
 と玻瑠子が言う。
 「こわかったわ……。まるで、けだもの……」
 と和貴子。
 「オレはあの連中とはちがう……」
 烈彦は、いかにも親身にふるまおうと、おだやかに言った。
 「でも、いっしょに、ママに乱暴したじゃない……」
 さげすむように玻瑠子が言う。
 「いや、乱暴したわけじゃないさ。つまり、オネエさんは、ずっと男なしで過
ごしてきて、欲求不満だったってわけ……」
 烈彦は、学校の教師のように、教えさとすような口調になった。
 「ママがあんなふうにされるのを喜んでるって言いたいの?」
 おどろいたように玻瑠子が聞き返した。
 「そうさ。そのとおり……」
 「でも、どうしてなの……」
 「たぶん、きみたちと同じさ」
 と烈彦は言い、若々しくハンサムな顔に卑猥な笑いを浮かべた。
 「あの連中にされたことを、あたしたちが喜んでるなんて、だれが言ったの?」
 和貴子が憤慨していきまいた。
 「まあいい。論より証拠……。ふたりともアレが好きなことくらい、オレは知
ってるよ。女の子はだれでもやってもらうのが好きなんだ……」
 獣脂でみがきあげたような亀頭をふりたてながら、烈彦は玻瑠子の目をまっす
ぐ覗きこんだ。
 「あたし……、あたしにはわからないわ」
 「いいからオレに任せろよ。とびきりいい気持ちにしてやるからさ。おまえの
ママにも、いい思いをさせてやったんだ」
 烈彦は、くすくす笑いながら、岩のようにかたい肉筒をしごきあげた。
 「こいつをどう思う? 入れてもらいたいだろう」
 彼が、醜怪だが、魅力的な一物をひけらかすのを目のあたりにして、ふたりは
同じように頬をあからめた。
 「ほら、あんたのママだって、あんなに楽しんでる……」
 彼の言葉がただしいとは認めたくなかったが、いくらかは認めざるを得ない。
 「はっきり決めろよ。ほかの連中はこんな聞きかたはしないぞ。あいつらは、
まったく見境(みさかい)がつかないんだから……」
 和貴子と玻瑠子は、目くばせをし、たがいにうなずきあった。烈彦にはこの態
度が、どうせなら彼に抱かれるのを望んでいるように思われる。
 やさしい口説きがだめなら、力づくでも押さえこもうという魂胆だったのだ。
 「こんなこと、ほんとは好きじゃないけど、あたしたちをいじめないって、約
束してくれるなら……」
 「いいとも。いじめたりはしない……。ぜったいに」
 烈彦のふくらんだ亀頭は興奮がたかまるにつれ、ふたたび透明な精を洩らしは
じめている。
 「それから、ママをひどくいじめないって約束してくれる?」
 「わかった。オレたちは、すぐにひきあげる」
 「あの……。あたしたち、みんながみてるところでしなくちゃいけないの……」
 と和貴子。
 「お望みなら、ベッドルームに行ったっていいんだぜ」
 「そう……。それなら、恥ずかしい思いをしないですむわ」
 和貴子は作り笑いを浮かべ、ヒグマのような五十男に抜きさしされて、きれぎ
れに呻く美絵子の快絶の表情に目を走らせた。
 烈彦は、ふたりを奥のベッドルームに連れこんだ。
 「そうと決まったら、ちょっとだけこいつをしゃぶってくれないか……」
 かすれた声で烈彦が言い、ヌラヌラする肉茎のかたい根もとに、玻瑠子の手を
さわらせる。
 「あたし……、あたし、知らない……」
 美少女はたよりなげにつぶやいたが、彼はつよく励ましながら、初々しく愛ら
しい顔を自分の股間にみちびいた。
 彼女は、ほんの一瞬、ためらっただけだった。
 玻瑠子は、かたちのいい口をあけ、亀頭にすばやく唇を押しつけた。彼女の舌
がヌラヌラする先端を舐めまわし、塩辛い滲出液の味を知るまでに、たいして手
間どらなかった。
 「うん、いいぞ……。のみこみがはやい。先っちょをもうちょっと舐めろ。は
じめてにしちゃあ、たいしたお手並みだ……。和貴子さん、あんたもよくみろ」
 玻瑠子は、ヘルメットのようにかたい王冠部のみぞに、熱心に舌をからみつか
せる。亀頭の割れ目に舌をすばやく打ちつけて、肉筒がひとりでにピクピク跳ね
まわるように仕向ける。
 「そう……。そこ……。裏がわの鰓(えら)のところを、もっと舐めて……」
 早くも精がにじみでてくる。彼女はしずかにすすりつづけ、ピチャピチャとの
み下す。まるごと、喉の奥にくわえこんでしまいたいほど、いとしさが増してく
る。
 「和貴子さん、あんたもやってみないか。この子みたいに、すぐ上手になるぜ」
 「いいわ……。でも、あたしに手荒な真似はしないでね……」
 ひたむきに肉茎を舐めずる玻瑠子のきれいなうなじをみつめながら、和貴子は
答えた。
 烈彦は、美少女の顔をあげさせ、一つ年上の義姉のために空けてやった。
 和貴子は、あかぐろくふくらみきった肉筒を根もとまで舐めおろし、いっそう
硬くさせた。それから、もしゃもしゃする剛毛の茂みに情熱的な舌をからませた。
 「そこ、感じるよ……」
 和貴子は、根もとから舐めあげ、王冠部のみぞのあたりをかるく噛み、フルー
トを奏でるように技巧的に唇を動かした。
 「そう、その調子……」
 烈彦の興奮はたかまり、二つの睾丸は、いまにも袋を破らんばかりにひきつれ
る。
 「こんどは、あたしの番……」
 玻瑠子がキラキラ目をかがやかせて、挑(いど)むように言う。
 すっかりうわずっている烈彦は、和貴子の顔をかるく押しのけ、代わってやれ
と目で合図した。
 玻瑠子は、脈うつ肉筒にしゃぶりつき、喉の奥深く呑みこんだ。烈彦は、腰を
使って彼女の顔に深く突き入れたくなる衝動をこらえた。
 そのとき、
 「おい、オレたちにも、ちょっくらやらせてくれねえか……」
 ドスの利いた低い声を、彼女たちは聞きつけた。
 みあげると、西村と鳴鬼が、毒々しく血管が浮きだした怒張をそびやかせて、
立ちはだかっている。
 彼らの顔には、下卑たニタニタ笑い、淫らな期待をそのままあらわすうすら笑
いが浮かんでいる。彼らはいままで、さんざん亜衣子をもてあそんできたのだっ
た。
 亜衣子が気絶するほどお尻の穴を犯し、しつこく口腔をえぐりたて、白濁をの
みくだすのを、残忍な喜びでみとどけたのである。
 あまりの辛さに、立花家の兄妹は、最後にはむせび泣いた。変質的な西村たち
は、ふたりを部屋に閉じこめたまま、新しいスリルをもとめて、ベッドルームに
押しかけてきたのだった。
 「オレのでかまらはこのとおりピンピンしてる。いつでも、はじきだせるぜ…
…。烈彦さん、両手に花ってのはないぜ」
 西村は、左手で、根もとからしごきたて、右手をサングラスの縁(ふち)にか
けた。
 和貴子と玻瑠子は、身をすくめている。
 鳴鬼がつめより、玻瑠子を抱きすくめる。
 彼女は、ヒイーッ、とさけび、烈彦の腕にすがりついた。
 「やめて……。おねがいだからやめてちょうだい……」
 和貴子が、キッとして、鳴鬼を見据える。
 「あたしたちに乱暴しないで……。烈彦さん、おねがい……。この人たちにさ
わらせないで。なんでもするけど、この人たちは、ぜったいにイヤッ」
 「聞いたか。彼女たち、いやだってさ……」
 傍目にも怯えきったふたりを抱きかかえて、烈彦がやにさがって言う。
 「それじゃあ約束がちがうぜ」
 西村が文句を言う。
「いまさら引き下がることはできないぜ」
 鳴鬼があざわらう。
 「なんだって、オレにさからうのか?」
 体面を傷つけられた烈彦は、ムッとして、彼らをにらみつけた。
 ベッドルームの気配を、いち早く知ったのは、頬に傷跡のある岩瀬権竜だった。
 「どうしたんだ、いったい?」
 「このあおっちろいのが、ひとりじめしようってんだよ」
 欲情に、目をぎらぎらさせて、鳴鬼がいきまく。
 「そうか。まあ頭をひやして、こっちに来な……」
 権竜は、三人をなだめながら、部屋のそとに連れていった。
 そこで、ひとしきり声を荒げたり、ひそめたりして、あれこれ相談していたが、
最後にはヒソヒソ声になった。
 和貴子と玻瑠子は、裸のまま、声もなく寄り添って、ベッドにうずくまってい
る。
 「とにかく、それがもめごとのタネってわけだな……」
 権竜が年長らしく、にらみをきかす。
 「なんでもいいから犯(こま)しちゃえって、オヤジさんに言われたけど、ち
ょっと話がちがうようだからよ」
 鳴鬼は、反(そ)っ歯をむきだして、ぶつぶつ言う。
 権竜は、ニヤリとして自分の股間の怒張をしめした。
 「みんな、甘すぎやしねえか……。この玉入りのでかまらだって、娘っ子には
まりたがって、ウズウズしてるんだ。それを若い者に先にゆずってやろうっての
に……。みろよ、あの子たち、すっかり恐がってるじゃねえか」
 権竜は、烈彦をたしなめた。
 「わかったよ。ここはみんなに協力してもらわなくちゃあな。オレが最初に地
ならししてやろうと思っただけさ……」
 烈彦の弁解に、権竜はうなずいた。


 「それもそうだな。じゅうぶん耕されないと、味もよくなかろうさ。なあ、お
まえたち……」
 「いいだろう。烈彦さん、だがな、オレたちの取り分があるってこと忘れるん
じゃないぜ」
 西村は渋々とみとめた。
 権竜は、彼らをうながして、美絵子が悶えているリビングへ行った。
 いまや、美しい未亡人のからだは、絨毯のうえに押しひろげられ、ねっとりと
悩ましい膣ひだのとっかかりに、成海の顔が深々と埋められている。ぬきさしを
ひと休みして、舌と唇を使って、美絵子を刻々と追いつめる。
 「ああン……。いいの、いいのよ……。もう声がでそう……」
 五十男のザラザラする熱い舌を突き入れられるたびに、欲情した女は、まぎれ
もない悦びに、喉を鳴らしている。
 絶え間ない成海の舌戯は、美絵子をほとんどたえがたいほどに狂おしく刺激し、
なまめかしい腹部は、快感のあえぎとともに大きく波打つ。
 「女社長さんが、オレたちを立たせてくれそうだぜ。おしっこくさい娘っ子は、
あいつに任せて、ここ一番がんばろう……」
 美絵子の吸いつくようなやわ肌と身悶えをみおろしながら、西村が言う。
 「年よりがすませるまで、もう少し待ちな。オレのあとは、錠二と堰八がウズ
ウズしてるんだ。おまえたち、いっぺんはぶちこんだんだろうが」
 二番手を待ちかねる権竜が、眉のうすいあから顔をギラギラさせてあたりをね
めつけた。


 「話はついた。心配しなくてもいい……」
 ベッドルームにもどった烈彦は、玻瑠子のほうに手をさしだした。
 「おねがいだから、やさしくしてね……」
 可憐な美少女は、つよく手をにぎられて甘える。
 烈彦に誘われて、凄まじい勃起をつかまされた和貴子は、ひき起こされたはず
みに、ぎゅっと王冠のみぞのあたりをにぎりしめた。
 「たまらないな、そんなにされると」
 繊細でつめたい指ににぎりしめられたとき、烈彦は快感と圧力で、低い呻き声
をたてた。
 おどろいて和貴子がはなすと、肉筒がひきしまった彼の腹部にぴんと跳ねかえ
った。
 「ずいぶん元気だろう」
 烈彦は得意げに言う。
 「あんたたち、ベッドにあおむけになって、ちょっとのあいだ、きれいな足を
ひろげてくれないか……」
 和貴子と玻瑠子は、彼に気づかれぬように妙な目くばせをし、ほほえみながら
あおむけになった。それから興奮した男のために両足をひろげ、黒みがかった栗
色の陰毛をかすかにそよがせた。
 「ふたりとも、ずいぶん毛深いな……」
 烈彦は、どちらからはじめようかと思い、和貴子のほのぐろい太腿に触れた。
 羞恥のほころびを割って、うっすらとぬめりをたたえた蜂蜜色のみぞをむきだ
しにする。木蓮とあんずがまじったようなかぐわしい匂いがただよってくる。
 「両手を腰の下に当ててごらん。それから、ちょっとりきんで……」
 股間を勃起させたままひざまずいた烈彦は、ハンサムな顔を、和貴子のむきだ
しの秘裂に押しつけると、何かをさがす仔猫のように、くんくんと悩ましい匂い
を嗅ぎとった。
 興奮した烈彦は、熱い果肉の上べりや、薫香を発する秘孔にくちづけたりして、
和貴子をあえがせるべく、ねっとりとふくみはじめた。彼はこりっとする肉粒を
吸いたて、時おり、舌先でおぎなった。
 (ああン……。烈彦さんて、うまいのね……)
 ピチャピチャ湿った音をたて、しだいに速く、つよく弱く舐めずると、和貴子
は息をあえがせはじめる。
 烈彦は、絹のようになめらかな和貴子の片足をもちあげて、玻瑠子の足のうえ
に置いた。こうすると、なまめかしく狭い構造が、いくらかあきらかになる。
 彼は、ふたりのふくらはぎと内腿を同時にまさぐり、彼女たちの秘唇を期待と
興奮で疼かせた。
 「ねえ、どうするの……。おかしな気分になってきたわ……」
 「あ、あたしも……。ひッ……。そんなところを……」
 烈彦が、玻瑠子の陰裂にすいつくまで、さほど永くはかからなかった。彼は、
和貴子に対するときと同じような熱心さで、やわやわした貝の肉のような部分を
舐めあげ、可憐なびらつきを舌の先でころがす・BR>  「ンもう……。いやだったら……」
 玻瑠子がじれたような声をはなつ。
 「うっ……。吸いつくなって……」
 ぬめらかな熱い反応に舌をくわえこまれて、烈彦はほくほくする。
 「すごいな……。ほんとにこれが好きみたいだ……」
 目を充血させ、でれでれした笑いが自然に浮かんでくる。
 「ほんとにそうね……。玻瑠子、とても感じてるみたい……」
 和貴子は、意味あ閧ーにほほえみ、すんなりした足をさらにひろげると、すこ
しよじれたローズピンクの肉びらを、いっそう押しひろげた。
 「そうだ。ひとつ頼みがある。それがなにかわかるか? オレがいつもみたい
と思ってたものさ……」
 彼は、軽く口笛を吹きながら、彼女たちの淫らで神秘的な器官をみつめて、く
ちごもった。
 「みたいって、何をなの……」
 和貴子は、わざとらしく笑った。
 烈彦はべとべとに濡れた口のあたりを手でぬぐって、ベッドのうえに起きあが
った。
 「オレは前から、女同士のアレをみたかったのさ……」
 烈彦はふたりにウィンクした。和貴子と玻瑠子は、思わず顔をみあわせた。
 「ふたりで……。いま、ここでやるの?」
 「そう、ふたりでさ……。あんたたち、やったことがあるんだろ」
 興味しんしんで、烈彦が聞く。
 「まさか……。そんなこと……」
 すこし震えながら和貴子が答えた。玻瑠子もビクビクしている様子がわかる。
 「西村と鳴鬼がみちゃったんだよ。あんたたちが楽しんでるとこをな……。こ
こに着いたときから、ずっと見張っていたんだから」
 「うそ、うそよ……。イヤ、だめ……。本気じゃないんでしょ。そんなことで
きないわ……」
 「オレもたしかめたいんだ、あんたたちがおま×こをくっつけてよがり声をあ
げるとこをな……」
 「あたし、ぜったいにしてないわ。やるもんですか、そんなこと……」
 玻瑠子は言いつのったが、烈彦に射すくめられると、頬をあからめてうつむい
てしまう。
 「やったほうがいいと思うぜ……」
 烈彦は、しだいに本性をあらわし、目をぎらつかせて、玻瑠子をこづいた。
 「そんなことさせるなんて、けだものだわ……」
 玻瑠子は、嫌悪とさげすみのあまり、烈彦の手をはらいのけた。
 「和貴子さん、この子を説得したほうがいい。でないと、あいつらを呼んで、
腰がぬけるほどいたぶってやる……」
 「わかったわ。でも、ちょっと相談させてちょうだい……」
 和貴子は答え、玻瑠子に耳うちしようとする。
 「そんなこと知ったことか。逃げるつもりだな……」
 「逃げだせるわけがないでしょ。烈彦さんは、大きくて強いんだから……」
 義弟をなだめるように、毒々しくふくらんだ肉茎を、そっと撫でる。
 「いいだろう。変な気を起こすんじゃないぜ」
 烈彦は渋々承知した。
 和貴子は、玻瑠子を部屋の片すみに連れてゆき、ヒソヒソと耳うちした。
 内緒話は、彼にはほとんど聞きとれなかったが、やりとりは短かった。会話は
唐突に終わり、彼女たちは手をとりあいながら、なんらかの同意に達したかのよ
うな表情で、ベッドに戻ってきた。
 「さあ、いいわ……。あなたの言うとおりにするわ。でも、このことはぜった
いにだれにも言わないでね。あたしたち、恥ずかしくて死んでしまいたいくらい
なんだから……」
 和貴子は、つとめて明るくふるまっている。玻瑠子は、まだ割りきれないのか、
いくらかしょんぼりしている。
 「いいとも。はじめろよ。遠慮はいらない……」
 和貴子と玻瑠子は、しなやかで伸びきった裸体を、おぞましい身内の男の視線
にさらしながらベッドに横たわり、すんなりと恰好のいい足をからませ、両手を
たがいの背中に巻きつけ、あらわな乳房をふれあわせながら、そろそろと唇をあ
わせた。
 むっちりした和貴子の胸乳と、みずみずしい玻瑠子の乳首がこすれあい、ふた
りは、いまや抗いがたい歓びに、喘ぎ声を洩らしはじめている。
 若い叔母のしなやかな指先が、微妙に恥毛のしげみをなぶっては、フッとすべ
りおり、ふたたび恥丘をゆるやかに愛撫すると、玻瑠子は、かすかに悩ましい肉
粒がうるむのを感じた。
 「慣れてるじゃないか。いつからなんだ? そんなふうになったのは……」
 「ねえ、感じるでしょ……。どこなの……」
 男がみたがっているものを、本能的にふたりは知っているかのようだった。
 玻瑠子は、こりっとする乳房を突きだし、叔母の舌先が、野イチゴ色に淡く色
づくつぼみに触れやすいようにする。
 「そこ、そこよ……。もっと……」
 和貴子が、姪の乳首を吸ったり、かるく噛んだりすると、玻瑠子はお返しに相
手の背中に軽く爪をたてる。美しいうなじから背すじにそって、玻瑠子の指先が、
小さな妖精のように這いおり、またも這いあがってゆく。
 「いいわ……。あたし、こんな感じはじめて……」
 和貴子は、うっとりとささやく。彼女はあきらかにみられているのを意識して
いる。
 ふたりは、きれぎれに小さな悦びの声をあげながら、情熱的に身もだえ、興奮
しきった烈彦のために、息ぐるしくも、刺激的な戯たわむれをくりひろげた。
 彼女たちの濡れた唇は、互いのからだのうえにうねり、すばやい舌先は、獲物
をねらう火トカゲのように、なまめかしいやわ肌を舐めあう。
 「そろそろ、お得意のところをみせろ……」
 獣脂でみがいたようにてらてらする亀頭を毒々しくふくらませながら、烈彦が
うながす。
 和貴子と玻瑠子は、言われるままに、両足を交叉させ、触れあわせる。
 (ああン……。ちょっぴり、感じそう……)
 湧きあがる快感のさざなみが下腹部を疼かせるので、和貴子は切なくなった。
足をからませあい、腰をひきつけたりゆるめたりしながら、悩ましくうごめきあ
う。
 優雅なふたつの蓮の花びらが、みえない朝露をにじませるような官能的なふた
りの動きに、烈彦はしきりに喉のかわきをおぼえた。
 「なかなかいい……。それから、どうするんだ……」
 彼は威嚇的にふりたてたが、その声は早くもうわずっている。
 みられることで気をそそられたふたりは、くねくねとからだをずらせて、互い
ちがいになると、まともに息をあえがせながら、こすりつけはじめた。なまなま
しいヨーグルトの匂いと、したたる果蜜が、彼女たちを秘めやかな感情の渦に溺
れさせるのをたすけている。
 (だめよ……。本気になっちゃいけないわ……)
 玻瑠子の舌は、薫香を発する和貴子の肉びらを舐め、かたちのいい鼻が、若い
叔母の燃えたつ肉粒をゆすりたてる。半ばひらいた唇が、うるみだした膣粘膜を
すすり、互いのからだがひくつき、低いうめき声をあげる。
 (ああン、もっと……。もっと、深く……)
 和貴子の子宮頸部からこぶのようなものが盛りあがり、疼きを超える快感が小
刻みにまき起こってくる。
 烈彦は、猫が水をのむような舌の音や、激しいあえぎに耳を傾けていたが、つ
いに我慢ができなくなった。彼の忍耐は、ふたりが互いの肉芽を舌のあいだには
さんで往復させたとき、極限に達した。
 「もういい。こんどはオレの番だ……。よくみえるように、もっとひろげろ…
…」
 彼女たちは、狂おしくわれを忘れていたので、体位をほどくのをいやがってい
るようだった。烈彦は、匙(さじ)を二枚重ねたのような恰好で抱きつき、ふた
りのやわ肌に肉茎をこすりつけた。ヌタリと押しつけられた和貴子は、男の猛々
しさを意識せずにはいられない。
 「だれから先にする……」
 烈彦はふくらみきった毒きのこを、若い義姉の太腿に激しくこすりつけた。
 「あたしからよ……。だって、年上なんですもの。あたし、欲しくってたまら
ないの……。はやく、あたしをふさいでちょうだい……」
 玻瑠子からはなれると、和貴子はあおむけになって、よじれた肉びらをひろげ、
切なげにあえぐ。
 烈彦は、興奮した義姉にのしかかり、長くてかたい肉茎を、ヒクヒクする秘孔
に押しこんだ。猛然とくりだし、激しく腰を使う。和貴子は快感のあまり、ヌル
ヌルする肉筒を深くくわえこんだ。締めつけようとうめく。
 烈彦が同心円を描いて、刺激するにしたがい、彼女は気が遠くなり、思うさま
糸をたぐられ、ヌラヌラとにじみでてくるのがわかった。
 「玻瑠子、後ろにまわって、タマタマを舐めてくれ。きっと楽しいぞ……」
 烈彦がそそのかす。
 すでにその気の玻瑠子は、すすんで烈彦の後ろにまわり、気負って和貴子を突
く精液をみなぎらせた睾丸を舐めた。彼女は、毛深い袋を舐めずり、情熱的な舌
にたぐられて、肉の分鋼がかすかに戦慄する。
 「そうだ。たっぷり舐めあげろ……。その調子、まるごとしゃぶれ……。おま
えがピチャピチャ音をたてるのを聞きたいんだ。オレをいい気持ちにさせろ……」
 烈彦がうめく。
 玻瑠子は、陰嚢を一度に口にほおばり、そっと吸った。彼女は、疎らに毛の生
えた皺(しわ)の部分を吸ったり噛んだりしながら、卵形の睾丸に舌を這わせた。
 「そうそう……。いいぞ……。え、和貴子さん、あんたも感じてるんだろ、ほ
ら」
 烈彦は、角度を変えながら、情け容赦なく和貴子を攻めたてた。
 「なんとか答えろよ。もっと、くわえこめ。いいぞ……。あんたのおま×こを
ザーメンでいっぱいにしてやる」
 彼は、きしみ声でわめく。
 「ええ、いいわ……。もっと、やって……」
 和貴子はしなやかにうけとめ、急激にもりあがる興奮のきざしをみせる。烈彦
は、螺旋状にきつい肉洞をえぐりたてる電気ドリルだった。
 欲情の熱気のさなかで、彼らがせめぎあうあいだ、ベッドはきしみどおしだっ
た。烈彦は、ふたりにかきたてられて、とろけるような快感にわれを忘れていた
ので、彼女たちのあいだでかわされた謎めいた目くばせに気づかなかった。
 和貴子と玻瑠子は、セックスの快感を楽しんでいたけれども、その心のうちに
は、奔放な反応以外のなにかが隠されていたのだった。




         第八章 息子のもしゃぶってやれよ



 べつの洋間のなかで、晶彦はようやく手首のロープをほどき終わったところだ
った。
 「亜衣子、だいじょうぶか。ちくしょう、なんてひどい奴らだ」
 彼は、ぐったりうつぶしている亜衣子に声をかけた。美少女は、お尻をつらぬ
かれたときの灼熱感を思いだして、またすすり泣いた。
 「いいかい、だれにも言うんじゃない。みんな、忘れるんだ……」
 晶彦になぐさめられて、亜衣子は、いっそう泣きじゃくった。彼女が泣いたの
は、口惜しさとともに直腸が悩ましく収縮し、ひきつるような快感のさざなみが
押し寄せ、西村の射精につられて、思わず女っぽい反応をしめしてしまったから
だった。お兄ちゃんは、それを間近で見ていたにちがいない。そう思うと、彼女
は恥ずかしくて、顔があげられない。
 「亜衣子、しっかりするんだ……。ロープを解いたら、ここから逃げだそう」
 「でも、ママや、和貴子叔母ちゃん、お姉ちゃんはどうするの? あいつら、
もっとひどいことをするかもしれないわ……」
 「よし……。やっぱり、たすけださなくちゃあ」
 ふたりは、懸命にロープをほどきだした。
 そのとき、戸口に人影が立った。
 「こんなことだろうと思ったぜ」
 にたつきながら、銃をかまえて入ってきたのは、みるからに変質的な錠二だっ
た。彼は、そのままこっちに来な、というように顎で命じた。
 ふたりは、銃の怖さに立ちすくんだまま、両手を上にあげた。
 「たいして痛めつけられなかったらしいな。まあ、いい……。おもしろいもの
をみせてやるから、ついてくるんだ……」
 すっぱだかのふたりは、おどおどしながら洋間から出てきた。
 一歩、リビングに足を踏みいれた兄妹は、美しい母親のかんだかい嬌声に、思
わず釘づけになった。
 「ああ……。ちょうだい……。もう我慢できない……。もっと埋めて……。あ
あ、もっと強く……」
 美絵子は、成海の臀部をひきつけては、淫らにうねり悶えている。
 「オヤジさん、音(ね)をあげだしてるぜ。そろそろ往生させてやったらどう
だい……」
 半ばやけ気味に、堰八がどなった。
 成海は、まるで牝馬をのりこなすみたいに、美絵子の両肩をつかんで拍車をか
けている。出没する毒々しい鰓くびが、粘液まみれの薄い肉のよじれを、ピチャ
ピチャはみださせる。
 「いや、まだまだ。女社長さんは、久しぶりのごちそうでご堪能らしいからな
……」
 成海は強気だが、それでも老いの疲れか、額に汗をにじませ、時おり、うっす
らと脂肪のぬめりをたたえた肌のうえに、ぽとり、ぽとりとしたたらせる。
 「いいわ……。そう、そこよ……」
 ヒグマのような五十男は、美絵子の反応の激しさに、横目で、得意げに仲間を
みまわした。
 「ンもう……。あああ、どうしよう……」
 美絵子が絶叫する。
 成海は、ふいに真顔になった。最後の追いこみにかかった。勢いづき、かけあ
がり、爆(は)ぜるようになるまで彼女を御しつづける。
 「おおッ……。いく、いく……。くそっ。出ちゃう……」
 ダクッ、ダクッとぶちまけると、成海は伸びきった方向に沿って、あとからあ
とからおくりこんだ。
 (あああッ……。とうとう……)
 毛むくじゃらで獰猛な男のからだがひきつるのを感じて、美絵子は、汚辱に身
をふるわせた。とろけそうなからだの芯に、粘液が飛びちっているのをおぼえた
とき、彼女は切ないうめきをあげた。沸(わ)きたつ感覚と、まるで竜巻のよう
な絶頂感につられて、彼女の随意筋は極度に張りつめ、ゆるんだ。
 美絵子は、なんどもなんども気をやった。
 疲れるようなひとときが過ぎるやいなや、彼女は、五十男が身を起こし、まだ
かたい肉茎をひきぬくのを感じた。
 「さあ、いいぜ。権竜のダンナ」
 成海は立ちあがり、眉のうすい男を、彼女のほうに押しやった。
 むっとする権竜の体臭が鼻をついたとき、美絵子は声も出ないほど、はげしい
嫌悪をおぼえた。
 「みろよ。おまえたちのママは、相当の好きものだぜ……」
 子どもたちを近づけて、錠二はせせら笑った。もう彼は、たかをくくって、銃
をかまえてはいない。晶彦と亜衣子も、すっかりあきらめきって、息をのまれた
ように見守っているばかりだった。
 「やめて……。やめてちょうだい。この子たちに、こんなところをみせないで。
おねがい……」
 美絵子は、かなきり声をあげた。
 「もう、おそいよ。すっかりみちまったんだからな」
 錠二が、とどめをさすようにどなりかえした。
 「それに、この子達は人質さ」
 舌舐めずりをしながら、成海がひやかした。それから卑猥な身ぶりをして、権
竜を押しやった。
 岩瀬権竜は、シャツをぬぎ捨てた。
 権竜は、みるからに淫らな、突きでた下腹をさらけだして、彼女の顔に近づけ、
右に左に避けるのを追いすがって、図々しくも、玉入りの肉茎を頬になすりつけ
た。
 おぞましい粒々が、グリグリと当たる。
 「あばずれめ。こいつをよく味わってもらうぜ……」
 美絵子はギュッと口を閉じたが、権竜はてらてらさせ、尿と恥垢にまみれた臭
気を突きつける。
 「うめえぜ……。いっぺん味わったら忘れられないぞ」
 「いやっ……。あなたなんかに、だれが……」
 美絵子は激しく抗った。
 「よう、奥さん。すなおに言うことを聞いたほうが、身のためだぜ。じゃない
と、お子さんたちがひどいことになっちまう……」
 成海のおどしに、美絵子は、ハッとした。和貴子と玻瑠子の姿はみえないが、
晶彦と亜衣子は、怯えと好奇のまじった目で、母親をみつめている。
 「わかったわ。でも、子どもたちには手を出さないでちょうだい……」
 美絵子はつぶやいた。そして、おそるおそる、権竜の亀頭を舌の先でからめと
ろうとする。
 「おっと、だれが、しゃぶってもいいって言った……」
 権竜は、彼女の顔のうえで、なおもひねりをきかせながら、ふいに身をしりぞ
けた。
 「やっぱり、お嬢ちゃんのほうがいいな。ひよっこをひねりながらってのは、
ひどくいいそうだ。そのほうが手間もかからんし……」
 「あ、待って……。子どもたちには手を出さないで……」
 美絵子は、必死に哀願する。
 「わたし……。なんでもしますわ……」
 彼女は、権竜にしがみついた。
 「ふん……。すべため。おねがいしますって言ってみろ」
 「おねがいします、わたしにやさしくしてちょうだい……」
 「それじゃあ、四つん這いになって、けつを高く持ちあげてもらおう……」
 嵩(かさ)にかかった権竜は、美絵子をうつぶせにし、いきなり素手で、ぴし
ゃりぴしゃり、とたたきはじめた。
 「ああッ……。い、痛っ……。ゆるして……」
 岩瀬権竜は、感じやすいところを狙って、的確に内腿をうってくる。
 妖しい尻責めに、いつしか美絵子の悲鳴はくぐもって、仙骨(せんこつ)部の
くぼみがうねりだし、たえきれぬあえぎを洩らしはじめた。
 もはや、彼女の意識のなかには、子どもたちの存在はなくなりつつある。
 「もう、かんにんして……。どんなことでも言うとおりになるから、うつのは
やめて」
 「このあばずれ。女社長ってのは、けつをいびられるのが好きなんだろ。さあ、
たのめよ。もっといびってくださいってな……」
 権竜は打つ手をやすめて、時おり、いやらしく双臀を揉みしくだく。なまめか
しい肛裂に指先をさしこむ。
 「どうだ、ここに入れられたいんだろ……。奥さん、これが好きなんだろう」
 自分の声に刺激されて、権竜は、せかせかとしごきたてた。
 「くそっ。いやなら、入れられないようにけつの穴を閉めろ……」
 あぶらぎった男は、凄まじい恕張をふるって、猛然とくりだした。
 「ひいーッ……」
 思わぬ場所に突き入れられるのを感じたとき、美絵子は気を失いそうになった。
 迎えうつたびに、美絵子は狂おしい欲情にかりたてられ、快楽の糸をひきたぐ
られる。こんな経験は、烈彦とのとき以来だった。
 (もう、だめ……。お尻の穴までかきまわされて……。けがれてしまったわ…
…)
 おぞましい快感と疼きにひき裂かれながら、美絵子はひたすら目を閉じて、痺
れるような甘美な痛覚に身をゆだねている。
 「なんて具合がいいんだ……。すっかりスケベしちゃってる……」
 あぶらぎった権竜は、いまや完全に彼女をものにしている。彼は好みのリズム
で、ぬめらかに抽送しつづける。美絵子は、その動きにあやつられ、身も、心も、
不本意な悦楽の坩堝(るつぼ)に浸っている。
 「あああッ……。もう、ダメ……。い、いくわッ……、またイクッ……」
 美絵子は、はやくも登頂した。つづけざまに二度もオーガズムを味わったのは、
久しぶりだった。
 しかし、わずか数回しめつけただけで、権竜はふたたびつらぬいてくる。彼は
執拗をきわめ、彼女の身も心もとろかさずにはゆかない。
 なまめかしい褶壁がゆるんで、ヌラヌラとした滑液がにじみだす。それが何で
あるのか、彼女にもわからない。
 ふいに、
 「おお、もう我慢できん。くそっ、いっちまう……」
 と、権竜がうなった。
 まるで万力でしめつけられ、千の濡れたてのひらで、肉筒をしぼりとられるよ
うな感覚が走る。
 権竜の王冠部がかたく張りつめ、堰をきって白濁がほとばしる。
 「ひいーッ……。もう、勝手に、勝手に……」
 美絵子は、意味不明の言葉をくちばしった。あぶらぎった男は、後ろから彼女
をかかえこんだまま、倒れこむ。
 あとからあとから、白濁がしたたっている。中年男にしては、めずらしい量だ
った。
 「もう、ダメ……。このままにして……」
 美絵子は、がくりと首をかたむけて哀願する。
 「もういいだろう。こんどはオレの番だ……」
 錠二が権竜を抱きおこして、美絵子からはなそうとする。
 「オレはどうなる……」
 と堰八。
 「こいつがすむまで待ってるんだな……」
 成海がいやらしく笑った。
 「ちぇっ、オレの番がくるまでに、このあまの腰がぬけちまうぜ」
 「あせるなよ。女社長さんは一晩じゅうだって熱くなってられるさ。不死身の
女だからな……」
 成海がなだめた。
 絨毯のうえには、錠二に触れるか触れぬぐらいの愛撫を加えられただけで、ま
ともにつらぬかれた美絵子が、はやくもうわずった声をあげている。
 「おねがい……。おま×こをかきまわして……。もっと欲しいの」
 息も絶え絶えに美絵子は、区別なしに受け入れる気分になっていた。
 とめどなくあふれだし、もはや収拾がつかない。彼女の内腿は、ゆれうごくた
びに濡れ光り、自分でも何を言っているのかわからない。
 「聞いたか。おまえたち……」
 成海は、晶彦と亜衣子を眺めやりながら、せせら笑った。
 「よせっ。もう、ママにかまうな」
 晶彦は、くやしそうに抗議した。
 「ママをゆるして……。あたしたちにかまわないで……」
 亜衣子も哀願する。
 「うるさいガキどもだな。堰八、もういっぺん、ふん縛っちまえ……」
 たちまち、ふたりは椅子に縛りつけられてしまう。
 「ママは、まったくスケべだぜ……」
 と権竜があざわらう。
 晶彦は茫然とし、それをみとめるのがいやだったが、美絵子は、突かれるたび
に、最後のひと突きまで味わいつくそうとするかのように、全身を突っぱらせて
いる。
 「ほら、だいぶゆるんできたぜ。どうだ、大きいだろ。かたいだろ……。はっ
きり言ってみろよ」
 錠二は、彼女に白濁をぶちまけるまで、徹底的に責めぬいている。
 「大きくて、かたいわ……。ああン……。やめないで……」
 美絵子は、かすかに鼻孔を膨らませ、快感にあえぎつづけ、動物的な力でくり
だしてくる錠二に呼応して、キチキチと歯を鳴らした。彼女は、これほど多くの
矛盾した感情に心をうばわれたことはなかった。
 錠二が精液をはじきとばし、堰八が遮二無二押しかぶさって、噴出させると、
成海は西村と鳴鬼をうながした。
 そのとき、岩瀬権竜が、ふと晶彦をみやり、ゲラゲラ笑いだした。
 「成海のダンナ、あれを見ろよ。あんなに突っぱらかして……」
 成海は、はっきりたしかめてから、美絵子のほうにむき直った。
 「お上品な奥さん……。あの子がやりたがってるけど、さて、どうするね?」
 「こいつはおもしろい。つながらせてやろうぜ……」
 とサングラスの西村がそそのかす。
 美絵子は、そっとうす目をあけて、晶彦をみやった。彼は、岩のようにかたい
肉茎を膝からそそりたてている。
 (ああ、晶彦……。なんてことなの……)
 彼女は、自分がゴロツキたちに犯されるのをみる興奮に、わが子がこらえきれ
なかったのだと悟った。
 晶彦は、しきりに身をよじって、勃起を恥じらっている。
 「どうだね……。いっそ、息子のをくわえてみたら……」
 美絵子は、はげしくかぶりをふった。
 「おい、坊や。おまえも、おこぼれにあずかりたいんだろ?。どうした、恥ず
かしいのか、そんなにおったててよ。ほしけりゃ、はっきり言ってみな」
 と成海が言う。
 「だけど……。ぼくにはできない……。ママだもの……」
 晶彦が、おどおどと返事をする。
 彼は急激な状況の変化に、すっかり性欲にめざめてしまったのだ。
 「かまうもんか。いいか、オレたちは変わったものを見たくてたまらないんだ。
そう考えただけでもウズウズするぜ」
 成海は、早くも目をギラギラさせて、美絵子に近づくと、すんなりした頤(お
とがい)をうわむかせた。
 「あっちへ行って、ひよっこと鳴きくらべしちゃあどうだね?」
 美絵子はさからったが、むだだった。
 男たちは、彼女をたちあがらせると、晶彦と亜衣子が、並んで縛られている椅
子のところまで引きたててゆく。
 「さあ、たっぷり、しゃぶってやれ。こんなにたててるのに、かわいそうじゃ
ねぇか……」
 彼らは、むりやり美絵子をひざまずかせ、その美しい顔を、もぞもぞする晶彦
の股間に押しつけた。
 「いやよ……。ダメ……。こんなこと……」
 彼女がはなれようとすると、サングラスの西村が、グイと首すじをつかんだ。
 「だまれ。自分じゃあ、やりたくってたまらないくせに。いいか、奥さん、あ
んたがベランダで、ひとりでいじくりまわしてる最中に、このガキの名を呼んで
たのを、オレたちが知らないとでも思ってるのか」
 西村はいきまいた。
 「でも……、あのときは……。ただ想像していただけよ……」
 美絵子は、秘密をみつけられた少女のように声が小さくなったが、その目はつ
いつい晶彦の昂ぶりにむけられてしまう。
 「だから、その夢をかなけてやろうってわけさ。さあ、息子を元気にさせてや
れよ。そのおちょぼ口と、舌でな……。そうすりゃ、あんたも幸せいっぱいって
もんさ……」
 晶彦は、美絵子の唇が股間に押しつけられるたびに、せいいっぱい抗議の悲鳴
をあげようとした。しかし、半むくれの肉茎は、反射的に吸いよせられてしまう。
 「ママは、おまえをほしがってるぜ……。“ああ、晶彦、わたしのなかで動か
してちょうだい”ってな。嘘だと思ったら、はっきり聞いてみろよ」
 晶彦がもじもじするのを楽しみながら、西村がそそのかした。
 「ねえ、ママ……。ほんとなの?」
 不安そうな声で、晶彦がたずねる。
 美絵子は答えようがない。彼女はぎゅっと唇をむすんだ。
 「ねえ、ほんとにそうなの?。ぼくがほしいって……」
 晶彦は、いいしれぬ欲情をたぎらせながら、かすれ声でくりかえした。
 「だめ、だめよ……。そんなこと嘘だわ……」
 彼女は、あえいだ。
 「ちゃんと返事してやれよ。いいか、奥さん、あんたはこの子をしゃぶりたい
んだろう。正直に答えな……。オレたちは、いずれ退散する。そうなりゃ、あん
たたちはここだけの秘密を守れるってわけだ……」
 成海は、おどしたり、すかしたりした。
 ついに美絵子は、先走りの精を洩らしつづける晶彦をみつめながら、弱々しく
言った。
 「ええ、わたし、ほしいわ……。とても……。でも、恥ずかしいわ……」
 彼女はすすり泣いた。
 「めそめそしてないで、あとをつづけろ……」
 と成海。
 「どうだ……。おまえは、いやだなんて言わないだろ?」
 と西村。
 「じゃあ、ほんとなんだね……」
 晶彦は、美絵子の顔をのぞきこんだ。
 彼女は誘惑に抗しきれず、うなずいた。もはや、美絵子は彼の同意を乞うばか
りだった。
 (この子は、わたしをどう思っているのかしら……。こんな恥ずかしい目にあ
わされたんだもの、きっと軽蔑してるわ……)
 「オレたちはどこかへ行っちまうんだ。たっぷりかわいがって、いい思いをさ
せてやれよ」
 権竜がそそのかす。
 美絵子は、目の前の若々しい果実に手をのばした。思いきって指先で触れる。
ひどく感じやすいとみえて、電撃のようにふるえた。小さいとき、いっしょにお
風呂に入って、洗ってやったことがあるんだわ――。そっと撫でると、指先が疼
いた。
 晶彦は、先端から水晶のように透明な精をしたたらせている。
 (まあ、もう、こんなに……)
 ギラギラした男たちの視線を意識しながら美絵子は思いきって舌をさしだした。
 彼女は生まれてはじめて、晶彦を味わったのだ。
 舌で包皮をめくりあげる。
 (じっとしてるのよ……。ママがうまくむいてあげる……)
 舌の先に粕のようなものが付着する。ヴァニラとおしっこのなごりがまじった
悩ましい男のにおいだった。


 いっぽう、和貴子と玻瑠子を思うさまもてあそんだ烈彦は、さすがに数ラウン
ドの疲れがでて、ベッドでうとうとと眠りだした。
 和貴子が、姪に目くばせして、ベッドから降りたとうとすると、
 「どこへ行く……」
 と、ものうい烈彦の声がする。
 「おしっこよ」
 肉体をゆるした者の気やすさで答えると、彼はむっくりと起きあがった。
 「それなら、ここでしたらいい……」
 烈彦は、玻瑠子に花瓶を持ってこさせると、花となかの水を窓から捨てさせ、
和貴子をベッドのなかで中腰にさせて、放尿するさまを、ものうげにみつめた。
 「ふうん……。おしっこをするとき、ヒューッってひらくんだな……」
 烈彦の眠気はふたたびはじまっている。彼は横になったまま、玻瑠子の唇と舌
を使わせて勃起させようとしたが、いつまでもよみがえってこない。
 ついに、泥のように眠ってしまう。
 (早く、なんとかしなくちゃあ……)
 和貴子は、玻瑠子にもう一度目くばせをした。
 そのころ、リビングでは美絵子と晶彦が、男たちの興奮に拍車をかける役割を
演じさせられていた。
 「どんな気分がする? でも、ママの口にぶちまけるんじゃないぜ。もっと楽
しい場所を知ってるだろう」
 美絵子の後ろに立って、だらりとした肉茎を彼女の肩にのせながら、成海が言
う。
 「ママ……。もう、やめて……」
 晶彦は快感のあまり、息がつまりそうだった。熱心に口を動かす彼女を知りな
がら、彼の心は、相反する感情とたたかっている。
 (こんなことをしちゃあ、いけない……)
 それをこんなに楽しむなんて、どんなにいけないことか。しかし、すっぽりめ
くれあがった亀頭をめぐる狂おしい感覚に抗することはできなかった。
 (すてきよ……、晶彦。なんてたくましいの……)
 美絵子は狂熱的に味わいはじめた。
 晶彦は、いまにも爆ぜそうな気がした。鰓くびのみぞのまわりを舐めまわされ
ると、反射的に腰を突きだしてしまう。
 (いいのよ、出しても……。ぜんぶ、のみこんであげる……。さあ……)
 ほとばしりが間近い。
 「もう、だめだ……。ママ、いくよ……」
 ついに若々しい果実が張りつめ、ピューッピューッと、新鮮な果汁がほとばし
った。美絵子は、晶彦がこれほどすぐれた硬度をたもつとは思ってもいなかった。
それは凜々しく脈うち、激しくほとばしらせる。美絵子は、精液の量のおびただ
しさに、ほとんど溺死せんばかりの衝撃をうけた。
 「いい……。ママ、とてもいい……」
 美絵子の喉ちんこをふるわせながら、晶彦がうめいた。
 「そうとも。これからは病みつきになるぜ……」
 岩瀬権竜がせせら笑った。
 美絵子は、ふと肩ごしに、なまぐさい粘液にまみれた肉茎が突きだされるのに
気づいた。ヒグマのような成海が、またもや、勃起させている。
 いや、権竜も、錠二も、堰八も、さらに西村や鳴鬼までも、いっせいにふりた
てて、美絵子に迫っている。
 もしも、そのとき、猟銃の撃鉄のカチッという音が、男たちをギョッとさせな
かったら、彼らは望みをとげていただろう。
 室内の者すべてが、いっせいに戸口をみた。
 和貴子と玻瑠子が、ドアのそばに立っている。ふたりの手には、彼らが入口の
壁にたてかけておいた重い猟銃がにぎられ、成海と権竜を狙っている。
 「じょうだんだと思ったら、動いてみなさいよ」
 ふたりの指は、ひき金にかかっていた。
 本気なのだと知ったとたん、彼らの顔がいっせいにあおざめた。
 「お、おろせ……。その銃はおもちゃじゃないんだぞ……」
 成海がどなった。
 「ママを離さないと、弾がとびだすわよ」
 いまにも発射する気配をみせて、和貴子がさけびたてた。
 「待てよ。さあ、こっちに渡しな……」
 権竜が猫撫で声をだして、一歩近づこうとする。
 「頭をぶちぬくわよ」
 玻瑠子がひややかに言った。
 「オヤジさん、言うとおりにしたほうがいい」
 股間のものを縮みあがらせて、西村が言った。
 「そうだ。はやく、言うとおりにしたほうがいい……」
 鳴鬼も、肝をつぶしながら言った。
 「お兄ちゃんたちのロープもほどいて」
 と玻瑠子。声はやさしげだが、本気で撃つ気になっているのはあきらかだ。
 彼らは、言われたとおり、晶彦たちのロープを神経質にほどきだした。なにも
しない者は、両手を上にあげているしかない。
 晶彦は自由になると、ふたりのそばにかけよって、玻瑠子から銃をうけとり、
すっかり恐れをなした男たちに突きつけた。
 「撃つな。たのむ……。わるかった、ほんとうに……」
 成海が命乞いをした。
 「ねえ、どうしよう……。このけだものたちを射殺すべきだと思う?」
 晶彦は美絵子にたずねた。
 「そうね……。もう、強そうにみえないわね……」
 「さあ、あんたたち、けだものらしく、まっ裸で四つん這いで消えるといいわ。
ぐずぐずしてると、ほんとうにぶっぱなしかねない雰囲気だった。全裸となって、
へたへたと両肢をつき、四つん這いで、別荘から出ていった。
 彼らが一目散に森のなかにとびこんでゆくと、美絵子は、その頭上に一発ぶっ
ぱなした。男たちは反撃するどころか、あわてふためいて、野茨の茂みに逃げこ
んだ。
 「あいつらがなにをしゃべろうと、わたしたちがしっかりしてればなにも起こ
らないわ……」
 立花家の人々は、しっかり抱きあい、これまでの恐怖を忘れ去ろうとした。し
かし、どうしても忘れ得ぬこともあった。
 美絵子は、晶彦をふくんだ嬉しさを忘れられなかったし、晶彦も同じ思いだっ
た。和貴子と玻瑠子は、強いられた抱擁のなかに、新しい歓びをみいだしている。
 「わたしたちは自由なのよ……。さあ、晶彦、いらっしゃい……」
 美絵子と晶彦が、禁じられた歓びをもとめはじめると、たちまちリビングには、
小さなためいきと、欲情のうめきがみちみちてくる。
 彼らは互いのからだのいたるところに愛撫の手をのばし、とめどなく刺激しあ
った。少年のほこ先はそそりたち、蜂蜜色のみぞは濡れそぼち、それぞれが、め
くるめく陶酔に向かって、もつれ、撫でまわし、舐め、昂ぶってゆく。
 美絵子は思った。
 (この森のなかでのささやかな休暇は、生涯で最高のすばらしい経験になりそ
うだわ……)



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   |                            |
   |         グリーンドア 文 庫         |
   |   ――――――――――――――――――――――   |
   |    ・兄嫁 輪姦す・                |
   |                著者 影村 英生    |
   |   ――――――――――――――――――――――   |
   |                            |
   |   初 版 発 行 1989年10月30日      |
   |   発  行  所 株式会社 勁文社         |
   |           住所 東京都中野区本町3-32-15   |
   |           電話 (03)3372-5021        |
   |                            |
   |   制  作  日 1997年 8月26日      |
   |   制  作  所 株式会社フジオンラインシステム  |
   |           住所 東京都豊島区東池袋2-62-8  |
   |           電話 (03)3590-3103        |
   |                            |
   |      本書の無断複写・複製・転載を禁じます。   |
   |                            |
   |                 ISBN4-7669-1059-1   |
   |                            |
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若妻飼育室


   ◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆*◆
   *                           *
   ◆   ∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞   ◆
   *  ・                     ・  *
   ◆  §                     §  ◆
   *  ・      若 妻 飼 育 室      ・  *
   ◆  §                     §  ◆
   *  ・     ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆     ・  *
   ◆  §                     §  ◆
   *  ・                     ・  *
   ◆  §                     §  ◆
   *    ・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・    *
   ◆  ☆                        ◆
   * ☆☆☆                       *
   ◆  ☆ ・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・    ◆
   *                        ・  *
   ◆  §                     §  ◆
   *  ・                     ・  *
   ◆  §                     §  ◆
   *  ・       影 村 英 生       ・  *
   ◆  §                     §  ◆
   *  ・                     ・  *
   ◆  §    《 グリーンドア 文 庫 》   §  ◆
   *  ・                     ・  *
   ◆   ∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞   ◆
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           ・∞・∞・∞・∞・∞・∞・
          §              §
          ・    目    次    ・
          §              §
           ・∞・∞・∞・∞・∞・∞・


     第1章 そんないたずらしないで・・・・・・・・・50行
     第2章 匂いなんて嗅がないで・・・・・・・・・537行
     第3章 叔父さま、イってください・・・・・・1030行
     第4章 けつの穴は処女ってわけか・・・・・・1561行
     第5章 はい、おしりを捧げます・・・・・・・2207行
     第6章 かわいい口で飲んでおくれ・・・・・・2827行
     第7章 もっと喉ちんこを震わせろ・・・・・・3437行


∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・∞・



          第1章 そんないたずらしないで


 麻生晋治(あそうしんじ)は、サイドテーブルにグラスを置き、パジャマに着がえはじめた。
 ほほえみながら祐美子(ゆみこ)が近づき、軽く彼の内腿にふれてくる。
 こんなことって、何日ぶりだろう。
 晋治は、縞柄のブリーフを引きおろした。
 「固くなったよ。しゃぶってくれないか」
 「せっかちはいや。ずっと待ってたんだから………。あなた、爪は切ったの。先にベッドに入って」
 彼が枕をふくらませるのを見やりながら、ピンクのキャミソールとフレアパンティだけの祐美子は、捲き毛にブラシをかけ、腋毛と太腿のあたりをかぐわしくしようと、香水スプレーを持ち、廊下を渡り、トイレットに行った。
 悩ましい匂いをただよわせ、ベッドに引きこまれるつもりで戻ってきた彼女は、思いもかけず、受話器をにぎったまま考えこむ晋治の姿を見て、漠然とした不安をおぼえた。
 「どうしたの、あなた」
 きっと、こってりした食事で胸やけがしたんだわ、と彼女は思いこもうとした。
 ちょっと味が濃かったもの。
 「うん。どうも………。ゆっくりしていられないんだ」
 「ゆっくりして、いられないって?」
 祐美子は、くぎりながら繰り返した。彼女はつのる不安で、夫の顔を見つめた。
 「電話は、一起(いっき)叔父さんからだよ。シャワーを浴びて、すぐにでかけなくちゃあ。会社で待ってるって言うんだ」
 「でも、今夜は一緒に過ごすという約束でしたわ」
 祐美子は、つい口調がとがって、高くなった。
 晋治は、一瞬目を閉じ、首を横に振った。
 「たのむよ、今夜だけだ。あしたの晩はかならず帰る」
 晋治は、妻の肩に手をかけて説得しようとした。だが、祐美子は振りはらった。
 「今夜だけですって。さんざん、ひとりきりにしておいて………。これを見て。あなたのためにオーブンを使い慣れないせいで、やけどまでしたのよ。わたしや、晋也(しんや)のことなど、どうでもいいんでしょ」
 彼女は、包帯した指を突きつけた。しかし、夫の顔に苦痛の色が浮かぶと、哀願口調になった。
 「ねえ、槐島(かいじま)さんに、行かれないって電話してちょうだい。どうしても、今夜はそばに居てほしいの」
 祐美子の脳裡に、染みの浮いた額を光らせた、なぜか親しみを持てない闇金融の大物の顔が浮かんだ。
 「そんな無理を言ったって」
 「ぜったい、いやよ。それにあの人だって、誕生日ってことは知っているはずでしょ。それをわざわざ………。いやな性格だわ」
 「あの人は、きみにとっても昔なじみじゃないか。いつも優しくしてくれるのに、そんな言いかたはひどいよ」
 みじめさと傷つけられた思いがこみあげ、祐美子は言いつのることができなかった。まえにも、このことでやりあったことがある。
 彼女は、パジャマをぬぎすてた晋治が、ブリーフひとつで浴室に向かってゆくのを見送った。
 彼がシャワーの栓をひねり、カーテンをひく音が聞こえると、祐美子は必死で啜り泣きをこらえた。
 (わたしのことなんか、どうでもいいのね)
 彼女はダブル・ベッドにあお向けになり、胸ぞこからこみあげる恨めしさに呻いた。
 ああ、こんな大きな家に住みながら、わたしを暖めてくれる人がいないなんて。この数週間というもの、落ちついて夫と語りあったことがない。
 (槐島さんがいけないんだわ)
 祐美子は、縁戚つづきの金融業者が、このところ頻繁に夫と同行して、証券取引所の幹部や、大口投資家のところに出向いているのを知っていた。
 彼の近ごろの様子から、舅(しゅうと)亡きあとの証券会社の経営が、一時ほど上向きでないのを、うすうす気づいていた。
 (でも、ビジネスの心配を、家庭にまで持ちこむことはないわ)
 と彼女は思う。
 ふと祐美子は、幼いころ、成城の自宅で、ママの芙貴子(ふきこ)に面罵されている槐島を目撃したのを思いだした。
 あのころ、彼は四十そこそこだったはずである。いまも面変わりしないところを見ると、
 (老(ふ)けて見えるたちなんだわ)
 と思う。
 実家の葩沢(はいざわ)家の羽振りがよく、ママも元気なころで、よく家に出入りしていたのである。
 しかし、祐美子は、卑屈さと傲慢の入りまじった槐島の性格が、どうも好きになれなかった。
 目上にへつらい、使用人には尊大にふるまう人、という印象しかない。
 ある夕べ、祐美子が自分の部屋にいると、窓から見える中庭の大きな樹の下から、切迫する槐島の声が聞こえたのだった。
 「いいじゃありませんか、一度くらい」
 「ばかにしないで。だれがあなたなんかと」
 部屋の灯りを消して、庭先をうかがうと、おし殺したようなママの叱声が聞こえてくる。
 カーテンのかげにかくれて見つめると、ほのじろい宵闇の根株に槐島がひざまずいて、ママの足を撫でさすっているではないか。
 祐美子は、胸がどきどきして窓辺から離れ、その秘密をずっといやらしい悪夢として記憶してきたが、だれにも話したことはない。
 しかし、その槐島から電話があったことで、なぜか異様な昴ぶりが起こり、彼女の血はたぎっていた。
 今夜はどうしても、夫がほしい。
 祐美子は、疼きに堪えかねて、肉びらの下べりがとろけだしたのを感じる。
 もう、自分ではどうすることもできない。
 激しく、自堕落な想像が、彼女の理性をおし流してゆく。
 (あなた、早く来て………。時間はあるわ、いますぐ入れてちょうだい)
 シャワーの音がやみ、長身で、色のあさぐろい晋治が、大きなタオルで体を拭き拭き、浴室から出てきた。
 「あなた………。すぐに服を着ないで。ちょっと、ここに来て」
 祐美子のささやきは、挑(いど)むようにハスキーになっている。
 「うむ」
 晋治は、デジタル時計にちらっと目を走らせた。
 「ここに来て………。あなた」
 衝動的に彼女は身をくねらせ、しなやかな足をしどけなくずらした、うしろに手をやり、ブラジャーの留め金をはずし、網目のカップをゆっくりとはずす。
 たちまち、はじけるような紡錘型の乳房が躍りだし、艶やかな乳首が、彼のまえにさらけだされた。
 「おねがい、ちょっとだけ」
 祐美子は、フレアパンティをずりおろすと、あおむけになって、なまめかしい内腿をおしひろげる。濃い陰毛のむらがりをわけ、あらわな秘孔をのぞかせる。左右対称にそろった膣前庭である。
 「だめだよ、時間がない。あした帰ってきたら、二日間ぶっとおしに気持ちよくさせてあげる。もう、でかけなくちゃあ」
 いつもは、取り澄まして羞恥心のつよい妻が、大胆にふるまうのを見て、晋治は息をつめたが、首を横に振った。
 「ねえ、ちょっとだけでいいわ。おねがい」
 「遅れると、一起叔父さんがいらいらするぞ」
 彼は困ったようにベッドの端に腰かけたが、視線をなまめかしい女体から離すことができなかった。
 「なにも言わないで」
 祐美子は手をのばし、夫のタオルをむしりとった。男らしくひきしまった胸、たくましい腹筋。彼女は、晋治の肉茎がみるみるそそりたつのを見ると、たくみに両掌でからみとった。
 やわやわと揉みしだく感触に、彼は快感のあまり呻いた。いまや、奔馬のような勢いになりつつある。
 「だめだ、会社に行かなくちゃあ………。やめるんだ、祐美子」
 晋治は、異様なほどの硬度を保ちながら、申しわけみたいに身を引き離そうとする。彼女の脳裡に、いささか癇癖のつよそうな槐島の顔が浮かんだが、夫の昴まりにつれて、すぐに消えた。
 (ああ、いますぐ、ふさいで!)
 晋治は、胸もとを切なそうに喘がせる彼女を撫でまわし、なまなましく濡れ光る上べりの突起部分をなぶっては、眉をしかめて快楽に堪える表情を見て、うずうずした。
 「そ、そんな………。いたずらしないで」
 羞恥とあやしい被虐感にしびれているにもかかわらず、祐美子の頬のほてりは、いっそう悩ましい。
 晋治は、つと身をかがめる。
 「だめ。そこはいや。あなた、舌でなんかいや」
 祐美子は喘ぎながら、夫の舌の侵入をさまたげようとする。
 いつでも、そうだった。こうした事態になると、彼女は必死に股をすぼめようとするのだった。
 「キスするなら、ちゃんとしてね」
 晋治は逆らわなかった。
 じっさいには淫らで、官能的な妻が、なぜ、身も心もとろけるような舐淫を避けるのかわからなかった。
 彼は、ゆっくり祐美子の舌を吸いあげた。
 結婚するまえ、他の女たちは喜んで啜らせてくれたので、同じことを妻にも求めようとしただけだった。
 晋治は、いつの日か、とがった舌でかわいい妻の臍(へそ)を舐め、時には、肉びらのとば口を万遍なくからめとって、喘ぎを洩らさせ、とろとろにくずれとろかしてやりたいと思う。
 そうした喜びは、現実には一度もなかったし、これからも起こりそうにない。何年にもわたって、愛のいとなみは聖なる儀式になっていたからである。
 彼は、どうしても、この不満を解き放つことができない。
 「どうなさったの、あなた」
 祐美子は、たおやかなからだをくねらせて、しがみついてくる。しなやかな足をからめ、彼女なりに、まぎれもなく喜びの喘ぎを洩らしはじめている。
 晋治は、すり寄ってくる妻の睫毛(まつげ)に接吻した。
 「きみが、どんな女か、って考えていたところだよ」
 祐美子はたぐりよせられ、温かな秘液が放射状にみち溢れてくるのがわかった。
 「そう。わたしと晋也にとって、あなたはとても必要なの、ほんとに」
 「わかってるさ」
 彼は、自ら納得するように答えたが、心は少しずつ、会社に向かって走りだしている。
 祐美子を抱き、唇を強く押しこむ。
 彼女はからだぜんたいを緊張させ、量感のある臀部をうねらせる。夫がのしかかると、熱く脈打つ亀頭冠をにぎりしめ、自ら溶(と)けた飴(あめ)のような感触のはざまにみちびきながら、思いきり両膝をひらいた。
 「さあ、早く」
 ピクピクひくつくようなうねりを感じ、晋治は、激しく熱い期待に潤む肉のみぞに、根もとまで、グイと一気に突きすすめた。
 「いいわあ、すごく大きく感じる。ずいぶん固いのね」
 にごった呻きを発して、祐美子は、夫の脛筋に鼻をすり寄せた。
 石鹸の残り香がする。
 晋治は、今夜にかぎって妻が娼婦のようにしがみついてくるのにおどろいた。彼女の性急な喘ぎが理解できない。
 見えない肉路が蠕動(ぜんどう)し、彼女は腔腸動物のようにまつわりつき、蜜のようになめらかにゆきわたり、声をおさえてすすり泣く。
 (もう、でかけなくちゃあ)
 晋治は、けりをつけようと、深く、速く動き、断続的に声をしぼったが、祐美子は快楽をできるだけ引きのばしたい。
 「いや。おねがい、まだよ。あなた、まだだめ」
 晋治はこらえきれなくなっている。彼女は深く深く感じようと、くわえこみにかかった。
 「ううっ、いく、いっちゃう」
 祐美子に濃厚な接吻を浴びせながら、彼は激しく動き、熟れた果実がはじけて汁がとびちるように、精をほとばしらせた。
 「あつい、まあっ、あついわ」
 彼女は、反射的に悩ましく吸引する。
 「だめよ、あなた。おいていかないで」
 祐美子は、肉びらの下べりを密着させて、より深くくわえこんだが、むなしいと知ると、喉を震わせて啜り泣いた。
 「このままにしておかないで。おねがい」
 もう遅い。
 晋治は射精して、すでに醒めた世界に戻っていた。彼は時計に目を走らせ、急いで会社に駆けつけないと、せっかくの取引が反古(ほご)になると思い、わけの分からぬ言葉を口走った。
 「困るんだ。もう少ししたら………。いや、少しやすめば大丈夫だ。でも、ぼやぼやしてはいられない」
 わたしを、用ずみのティッシュ・ペーパーみたいに思っているんだわ、と感じると、祐美子はいらだった。
 「これじゃ不公平よ。もう一度、ちゃんと愛して………。でないと、おかしくなりそう。放っておくなら、わたしにも考えがあるわ」
 「なんてことをいうんだ。そんな口をきくの聞いたことなかったぞ」
 晋治は、淫らな連想にひるんで、声を荒げた。
 一呼吸おいて、おだやかに彼は言った。
 「ねえ、機嫌をなおして、行ってらっしゃいって言ってくれないか」
 祐美子は、羞恥のはざまから精液がにじみでて、腿のあたりまで伝わるのを知り、夫が自分にしめした関心の唯一の証拠に眉をひそめた。
 だが、こんな夜ふけにでかける急用とは、いったい何なのか。
 ひょっとして、隠れて情事を楽しんでいるのかも………。そうなら、わたしだって覚悟がある。
 「祐美子、どうしたんだ」
 夫の声に、彼女はひややかに現実にひき戻された。
 「大丈夫よ。心配しないで………。おあいこですものね」
 祐美子は、皮肉っぽくつけたした。
 このあてこすりに、きっとなった晋治は、姿見にうつる妻の表情をにらみつけた。
 なぜ、こんなにからむのか。
 創業者の父親が亡くなってから、ここにきて経営はにっちもさっちもいかなくなっている。とはいえ、彼はまだ投げだす気になっていない。
 まあ、ビジネスのことはいい。だが、どうして男として軽蔑するのだろう。
 「あまり、ぼくを苦しめないでくれよ」
 祐美子は、下唇をかんでうつむいた。
 夫の誕生日をだいなしにしてしまったという悔いに責められて、あわてて言いつくろった。
 「ごめんなさい。これじゃまるで聞きわけのない子どもね。でも、晋也とふたりきりだと心ぼそくて………。実家の父を呼ぶわけにもいかないし………」
 「胡桃山さんや、明子さんがいるじゃないか」
 「でも、あの人たちは使用人。なんの相談ができるというの。おまけに、あなたのおとうさんが亡くなってから、つめたいのよ」
 「そんなこと、気にするな。すぐに帰ってくるから」
 晋治は、ちょっと溜息をもらしたが、すぐにネクタイを結び、書斎に入っていった。
 彼が引き返すと、祐美子が薬箱を棚のうえにもどしているのが目に入った。
 「また薬をのんでいるのか」
 「そんなに怒らないでちょうだい。やさしかったあなたのおとうさんのことを思うと、つい悲しくて」
 祐美子はものうげに言い返した。
 「坂東先生が、よく眠れるようにって処方してくださったの」
 いくらか疼きをおぼえながら、彼女は紙包みの薬をのみくだした。
 「眠れないからって、常用していると、からだによくないぞ」
 と晋治。
 「心配してくださらなくてもいいわ。いらいらの原因はわかっているんだから。さあ、早くでかけなさいな。槐島さんがじりじりして、また電話してこないうちに」
 手早く化粧着をはおって、夫を送りだすと、祐美子は、そっと子ども部屋をのぞきこんだ。
 三歳の晋也は、すやすやと眠っている。
 祐美子は、寝室にもどり、乱れたベッドにもぐりこみ、
 (なにも淋しいことはない。欲求不満じゃないわ)
 と、自分に言い聞かせ、掛布を顔のうえまで引きあげた。
 日本橋の会社に向かう晋治の車の後方に、とつぜん、大型トラックが姿をあらわした。
 かなりのスピードで追いついてきたかと思うと、ものすごい排気ガスをふきあげながら、轟音をたてて追い越した。
 わざと強引に割り込んできた感じだった。
 晋治は頭にきた。
 (こんなとき、いっしょにドライブなんかしていられるか)
 とっさに彼は、アクセルを踏み、思いきって追い越し車線に出た。
 すると、トラックもハンドルを切って、また前方に出ようとする。
 (急いでなけりゃ、相手にしてやってもいいんだが)
 晋治は、いらいらする気分をむりにおさえて、またもとの車線にもどった。
 こんどは、トラックも前に出ようとしない。
 スピードをあげた彼の車が、大型トラックと並びそうになる。
 そのとき、車の鼻先めがけて、トラックが斜行した。
 ハッとした晋治は、思いきってブレーキを踏みこみ、ハンドルを切った。
 辛うじて衝突はまぬがれたが、彼の車は激しくスピンした。
 タイヤが不快に軋む音がして、恐怖のあまり、彼は声がでない。まるでスローモーションの悪夢を見ているようだった。
 一瞬、突きあげるような衝撃が背中に起こった。
 万力で骨を引きちぎられるような激痛とともに、真っ赤な感覚が彼をおそった。
 (どうしたんだ。いったい、なにが起こったんだ………)
 晋治は、大声で叫んだつもりだったが、はげしい嘔吐感と、ガードレールが迫ってくるのを感じ、ぐわっと視界がかすみ、意識がふいに薄れていった。


 老秘書の胡桃山が寝室のベルを押すと、
 「なんのご用かしら」
 祐美子の声が聞こえる。
 「槐島さまがお見えです」
 不機嫌そうにドアをあけた彼女は、腰のあたりまでスリットのあるピンクの化粧着をはおり、透きとおった生地を、ほそい指先でおさえている。
 顔を引きつらせた胡桃山のうしろに、こわばった表情の槐島一起が立っている。
 「たいへんなことが起こった。なかに入れてもらえんかね」
 槐島の口調は、ふつうではない。
 亡くなった舅の晋輔の腹ちがいの弟で、祐美子の記憶にまちがいなければ、ことし五十六歳のはずである。
 ポマードで塗りかためた髪と、粘つくような目は、二十年まえとほとんど変わらない。
 これまでにも、身内の集まりで何度も会ったことがあるが、彼女はつとめて口をきかないようにしていた。一つには亡くなったママとの記憶が重なるからだった。
 槐島は辣腕家で、頬は削いだようにけわしい。闇金融の大物だが、およそ一片の同情心も期待できない人物と噂され、一度手に入れたものは、決して放そうとしないといわれている。
 ただ、祐美子だけは、幼いころからかわいがり、彼女のほうで、その奇妙なやさしさを避けていたのである。
 「でも、ここは………」
 祐美子は、槐島の非礼をとがめるように見返した。たとえ、夫の叔父であろうとも、寝室のなかに入れることはできない。
 「なにを言ってる。晋治くんが交通事故で………」
 最後まで言い終わらぬうちに、祐美子のからだはぐらりと揺れた。
 胡桃山が半ば放心したような彼女を支えると、槐島は、すばやく華奢なからだのなまめかしい輪郭を眺めまわした。
 透きとおった化粧着のために、かたちのいい乳房のふくらみと、艶やかな肉桂色の乳首が浮きあがり、フレアパンティを透かして、菱形の陰毛のむらがりが感じられる。
 槐島の視線は、上から下までなめるようにへめぐったが、うわべは渋面をつくっている。
 祐美子は、きれいにマニキュアした指先をだらりと垂らしたままである。
 「気絶したようだね。ベッドに運んであげたまえ」
 槐島は、老秘書に向かって、高圧的に命じた。
 「ショックが大きすぎたんじゃありませんか。段階的にお話になったほうがよかったのでは………」
 「こんなおおごとに、悠長なことを言ってられるかね。こちらにも、事故の電話が入ったんだろ。なぜ、すぐに伝えない」
 「現場をたしかめてからと思って、いま、かけつけるところだったんです………。それが秘書のつとめですから。もし人ちがいだったら、奥さまに余計な心配をかけることに………」
 「なにをばかな………。晋治くんに決まっとるじゃないか」
 槐島は、悩ましい雰囲気の寝室をぐるりと見まわした。籐椅子(とういす)や、しゃれた化粧鏡、化粧台、化粧用腰かけ、香水スプレー、香水瓶………。壁には、額縁入りの絵が飾られ、カーペットの上に、豪華な長絨毯が敷かれている。
 槐島の目は最後に、衣裳戸棚近くの贅沢そうな引き出し付きのダブル・ベッドに釘づけになった。
 祐美子のからだをベッドに横たえた胡桃山は、殊勝げに羽根枕をふくらませている。
 「まだ、気がつかんのかね」
 槐島は、彼女の張りつめた乳房のかたちを、下腹部の翳りを楽しんだにもかかわらず、にが虫をかみつぶしたような顔をして立っている。
 しどけなく開いた衿もとと、素肌同然の化粧着。後ろ向きの祐美子は、両足をだらりとさせ、老秘書のなすがままに任せている。化粧着の裾がめくれて、フレアパンティがのぞき、量感のある臀部が揺れている。
 (くそっ。もうすこしで、おしりの穴が丸見えになるのに)
 槐島は、事故を嘆くよりも先に、この双臀をおしわけ、みずみずしそうな蓮のつぼみにいきなり突きたてたい衝動にかられ、われ知らず拳をにぎりしめた。
 しかし、晋治は即死したわけではなかった。
 ただ、事故のさい、ひどいことになった下半身骨折の手術を行ったとき、脳の低酸素血症を起こして、完全な植物人間になってしまったのである。
 一種の脳死に近い状態で、彼は生きながら昏睡状態をつづけ、ほとんど再起不能といわれながら、麻生証券幹部の努力や、槐島一起の奔走で、設備のととのった集中監視病院に収容されることになった。


 舅の追憶と、夫の病状を憂いつづけながらふた月がすぎたころ、祐美子のもとに、槐島の秘書から電話がかかってきた。
 今後のことを、いろいろ相談したいというのである。
 経営については、役員合議制がとられるので当面の心配はない。相談というのは、たぶん麻生家の暮らし向きのことだろう。
 祐美子の父親は、晋治の奇禍におどろいて、すぐに駆けつけたが、このところ会社が業績不振で、大口融資依頼に忙しく、ずっとつききりというわけにはいかない。
 それに、妻の芙貴子を失ってから後添いをもらい、義母といっても、祐美子と年齢が近いこともあって、あまりしっくりした関係ではない。
 「あした十時に、会長が事務所でお会いしたいそうで」
 祐美子は、どう答えたらいいのか分からなかった。
 ほとんど係累のない麻生家の後見人といっても、彼女には、遠い存在の人物である。しかし、いま、否応なしに関わりを持たざるを得なくなっている。
 「槐島さんが、わたしに、なんのご用かしら」
 「会長にお聞きください。お会いになれば分かるでしょう」
 秘書の口調には、祐美子の世間知らずをあてこするようなひびきがあった。
 「わかりました。かならず参りますわ」
 その夜、祐美子は翌日婚家の縁つづきに当たる金融業者を訪れるのが気がかりで、なかなか眠りにつけなかった。
 槐島ファイナンスは、日比谷のビル街のなかにあった、このあたりは、新しい高層ビルと、戦前からの堅牢なビルがひしめきあっている。
 午前十時になると、祐美子は、がっしりとしているが、いささか時代色をしのばせるビルの一つに入ってゆき、エレベーターで八階まで昇っていった。この建物は、戦火をまぬがれ、終戦後は、一時、米軍に接収されていたのである。
 (どんな話をしようというのかしら)
 名刺に記された部屋番号のベルを押しながら、祐美子は、胸がどきどきした。
 洗練されたものごしの女性秘書がドアをあける。
 「麻生さまですね。どうぞこちらに。先生がお待ちかねですわ」
 室内は、右側が書類棚で、ずらりとファイルされた顧客名簿や、六法全書、担保物件の整理名札がつけられている。
 左側には、それぞれ仕切られた応接間が三つほどある。
 奥まった部屋が執務するところで、壁に沿って事務机が並び、すこし離れた場所に秘書机。窓ぎわに、大きなマホガニーの机が据えられ、そこから槐島が立ちあがった。
 「やあ、いらっしゃい。きょうは、みんな出払っていてね。そうだ、こちらの部屋がいい」
 彼が、応接間の一つを指さしたとき、祐美子は、なぜか、いやな予感をおぼえた。
 (密談するほどの重要な話なのだろうか)
 「あ、芦沢くん。お茶をだしたら、でかけてもいいよ。きょうは早めに回ってもらわなくちゃあ」
 槐島に押されるように、手前の応接間に入った祐美子は、ぶしつけに見つめる相手の視線を感じて、身をかたくした。
 「よく来てくれたね。晋治くんは、ほんとうにお気の毒だった。麻生家はまったくツイてない。よくよく運が悪いんだね」
 槐島には独特の雰囲気があり、彼女は相手のかさかさした唇と、爬虫類のような目を見たとたん、両膝から力がぬけるのを感じた。
 「このたびは、いろいろお世話になりまして………」
 「いや、そんなに気がねすることはない。身内じゃないか。まあ、そこに座りなさい」
 彼はとってつけたような笑いを浮かべた。
 頬はわずかにほころんだが、目は笑っていない。これがせいいっぱいのお愛想なのだろう。
 こざっぱりと刈りこんだ口髭がめだつが、額のあたりがなぜかいやらしい。
 「晋輔さんはいいひとだった。それに晋治くんも。一日も早く退院できるように祈っているよ」
 実の兄のことを、いまだに晋輔さんと呼ぶ。妾腹の弟ゆえのひがみだろうか。
 祐美子は、できるだけ背すじをのばして向き合った。
 「ありがとうございます。わたしも義父(ちち)が大好きでしたわ」
 彼女は、槐島が、会いにくるように、と言ったのは、単に同情をしめすためだったのかとも思う。
 「晋治くんが入院して、あんたと晋也ちゃんが残されたということについて、私は責任を感じている。なんといっても、親族は他におらんのだから」
 槐島が一膝のりだしてきたとき、祐美子は耳にした言葉を信じかねた。
 これまで、彼は一度もそんなそぶりをみせたことはない。舅からも、槐島は金儲けにしか関心のない、ひどく冷酷な男だとしか聞いていなかった。
 晋治が経営にあくせくしているときでも、株や債券のあっせんこそすれ、決して融資に応じようとしなかったのである。
 「ぜひ、あんたの力になりたい。どうか、いやだと言わないでもらいたい」
 一言一言、話すたびに、槐島ののどぼとけがひくひく動く。
 「なにをしてくださるつもりですの」
 祐美子は、幼いころ、実家の広々とした庭先で、彼から可愛いぬいぐるみをもらったことを思いだした。彼女にだけ、贈りものを持ってきたのだ。
 槐島が帰ったあとで、母の芙貴子がまるで汚らわしいものでも見るように、それを片づけさせたことをおぼえている。
 「あんたはとてもきれいで、聡明だが、まだそれを伸ばす機会に恵まれていない、と私は思うね。証券会社の経営は、女手ではとうてい無理だよ。たとえ、晋治くんが退院できても、まず復帰することはできまい。そこでだ、晋也ちゃんが大きくなるまで、全面的に補佐してあげよう」
 祐美子は、はっとしたように、相手を見つめた。
 「お気持ちは、ありがたく頂戴しておきますわ。でも、わたし、時機を見て会社のほうに出ようと思いますの。役員のみなさんも、そう期待していますし、いまは女性の時代ですもの。見よう見まねで………」
 「いや、それはあさはかと言うものだよ。役員たちも、ほんとうは、それを望んでおらんさ、債券売買や、投信販売は、ベテランだって見込みちがいってことがある。それをど素人のあんたが………」
 言われてみれば、一理はある。
 「では、どうすればいいとおっしゃるの」
 「わしだって、援助や人助けは、信念にもとる。あんただって、そんなことは心ぐるしかろう。そこでだ、あんたに働いてもらって、サラリーをはらう。それなら、おたがい納得がゆくじゃないか」
 「どんなお仕事ですの」
 「なあに、たいしたことはない。ここには、さまざまなお得意が見える。政界のお歴々や、あっと思う財閥のおえらがた、総合商社の経営者、とても考えられんだろうが、一皮むけば、みんな金融地獄であっぷあっぷしている。しかし、このお歴々は、いずれも億単位の金を動かすだいじなお客さまだ」
 「それが、わたしと何の関係がありますの」
 「まあ、話を聞きなさい。私は、この隣の部屋で、こうしたお客さまをしばしばもてなしている。これからもパーティがつづく。そのお手伝いをしてもらいたいんだ」
 「そんな晴れがましいこと、わたし、できませんわ」
 「あんたは、座っているだけでも、花だよ。こまかいことは、べつの者にやらせる。ただ、にこやかに接待してくれればいい。なあに、すぐなれる。私の人脈には、オモテもウラもあるが、招待するのは、政財界の大物ばかり。あの人たちの面識を得るのは、麻生家の将来にとっても、ぜったいプラスだと思う」
 「とつぜん、そんなお話をうかがっても」
 「あんたは晋也ちゃんや、晋治くんのためにも、これから、いろいろなことを学ばねばならん。会社なんて退屈なところに行かんでもよい。あんたに来てもらったら、ここのパーティも、ずっと楽しいものになるだろう。じっさい、今週の金曜には、内輪の集まりがあるんだ。それまでに………」
 なにがなにやら、彼女の頭は混乱してきた。
 祐美子は、槐島の気がおかしくなったのではないかと思う。
 彼女は、喋りまくる相手の口(くち)のまわりに、唾が気泡のように付いているのに気づいた。
 「あんたが小さなころから、私は好きだった。こんなことを言うと、おどろくかもしれんが、眺めるたびに、いつも胸の奥が熱くなったものさ。それは、あんたも同じはずだ。おたがい、匂いをかぎつける同類みたいなものさ。そう、あんたを見るたびに血が昴ぶってくる。だから、芙貴子さんや、晋治くんは、わしを避けたんだ」
 「なにをおっしゃっているのか、よく分からないわ。わたしにはパーティのホステスなんてつとまらないわ。せいぜい、メイドがいいところですわ、だから………」
 祐美子は、せいいっぱいの皮肉のつもりだった。
 「いや、いや。私のほかにあんたが頼るところはない。晋也ちゃんもだ。胡桃山から聞いているところでは、晋治くんの入院費は、かなりかさんでいるそうじゃないか。それに、晋輔さんの遺産を整理してみたら、負債のほうが増えつつある。あの邸も、いずれ人手に渡ることになる。嘘だと思ったら、その書類を見せてあげてもいいが………。つまり、あんたたちは無一文どころか、借金で首がまわらないほどなんだ。それを、なんとかしてあげようというんだ。あんたの優雅さ、愛らしさの代償としてな」
 「ありがとうございます。でも………」
 祐美子は、ほとんど答えることができず、喘ぐように言った。
 彼女は、偽善的な槐島に対して、悲痛な怒りをおぼえたが、同時に、罠にはめられつつあるのをおぼろげに感じた。
 といって、相手の申し出を、きっぱり断ったら、これから先、どうしたらいいのか。
 とくに、長びく晋治の症状を思うと、祐美子は、ついうなだれてしまう。
 (いいわ。どんなことがあっても、わたしさえしっかりしていれば………)
 「これで決まったね。有利な条件で買い手がつくまで、あの邸はこれまでどおりにしておく。会社のことは、胡桃山に任せておけばいい。むろん、晋也ちゃんには、お手伝いをつけておく。ただし、あんたは、ここを生活の場と思ってもらわなくちゃあ困る。仕事はじめは、金曜日から。私の期待にこたえてくれるのを願っているよ」
 槐島ファイナンスを辞しながら、祐美子はぼうっとして、わが身にふりかかった運命の激変を信じることができなかった。
 幼かったころ、ママの芙貴子が読み聞かせてくれた残酷なお伽話を思い出した。そのなかのできごとが、じっさいに起こりつつある。
 (あなた、わたしを守って………)
 祐美子は、病床の夫に祈る気持ちだった。


             第2章 匂いなんて嗅がないで

 約束の日。
 槐島(かいじま)のお抱え運転手、草野が車で迎えにきた。三十前後だが、どことなく脂(あぶら)っこい体つきをしている。
 祐美子は、前と同じビルの駐車場でおろされ、一緒にエレベーターで八階に昇った。
 槐島ファイナンスの名刺が見えたが、草野はそれを無視するように、隣の部屋のブザーを押す。
 「あら。社長は、いま、急用で外出されたばかりよ」
 背の高い中年の女性が顔をのぞかせた。彫りが深く、知的な顔だちをしている。
 「梶原さん、なにも聞いてないの。こちら、麻生さんの奥さまだけど。まあ、いいか。おれは、社長からお連れするようにって言われただけだから」
 草野は、祐美子を部屋にいざなうと、すぐに出てゆく。
 「あ、奥さま。どうぞこちらへ。わたし、家政婦の梶原喜与子です」
 「はじめまして、祐美子です。きょうはパーティのお手伝いをたのまれて………」
 「パーティ? さようでございますか。うっかりしておりまして」
 喜与子は、ほほえみを絶やさないが、パーティ準備どころか、彼女が来るのも知らなかったらしい。
 「内輪の集まりだとおっしゃってたけど、何人ぐらい、お見えになるのかしら」
 「さあ、社長はせっかちなかただから、いつも突然のお話で………」
 祐美子が見まわすと、サロン風のつくりだが、リビングのようでもある。梶原がパーティや、秘密の取引に使っているというが、彼女には、なんとなく生活のにおいが感じられる。
 スペースはかなり広く、奥まった両側に、がっしりした装飾扉が見える。その左扉は社長室につながり、右扉は槐島のプライベートルームになっている。
 祐美子は、時計を見た。
 約束の時間を五分ほど過ぎている。
 電話が鳴った。
 「あ、社長………はあ、麻生さまはお見えになっております。パーティとか。どんな準備をしておいたらよろしいので………。え………。え………。というと、ずっとお待ちいただくので………はあ、きちんとお世話致しますわ」
 パーティは、ちょっと遅くなるが、祐美子に帰らずに待つように、という。
 「また、出直して参りますわ」
 「困ります。かならず待って頂くようにって………。それまで、わたしがお相手しますから」
 どうやら、喜与子は住みこみらしい。
 しかし、夜が更けても、槐島は帰ってこない。
 祐美子が立ちあがろうとすると、
 「奥さま。遅くなったら、おやすみになるようにって、社長がおっしゃってました」
 喜与子は、オートロックのプライベートルームの扉をあけ、なかに招じ入れようとする。
 すぐ目についたのは、豪箸なカバーが掛けられたダブルベッドである。はなやかな化粧台、香水瓶、粉おしろい、マニキュアセット、ドライヤーなどが置かれている。
 どうみても、男性の寝室とは思えぬ雰囲気である。ベッドの脇には、ブティックなどにみられる足付きの大きな姿見や、キャビネットに、衣裳戸棚があり、籐椅子まで整っている。
 ただ、頭板の本棚に、携帯用のカセットレコーダーが置かれているのが、なぜか奇妙だった。
 「やっぱり、サロンで待っていますわ。ソファのほうがくつろげるから」
 と祐美子。
 「さようですか。では、ご用がありましたらお呼びくださいな」
 喜与子は、むり強いせず、自分の部屋に引きとった。
 残された祐美子は、ソファにもたれ、
 (パーティだというのに、なんの用意もない。来客の数もわからないなんて………)
 疑惑のたかまりが、しだいに募(つの)ってくる。
 座ったまま、彼女がうとうとしはじめたころ、
 「やあ、すまんね。融資先の物件のことで、ちょっと手ちがいがあって………」
 言わでものいいわけをしながら、槐島は、尊大な顔にむりに笑みを浮かべ、サロンに入ってきた。
 サルコのロングコートをまとった彼は、ヘリンボーン柄と、カシミアのマフラーが冴え、まるで銀灰色の狼のようだった。
 「パーティは、どうなりますの」
 祐美子はかすかな戦慄をおぼえながら、単刀直入にたずねた。中止なら、すぐにでも辞するつもりだった。
 「待ちなさい。とても、きれいだよ。さあ、座って………。これから、ふたりだけのパーティをはじめるからね」
 祐美子はあきれて、返事もできない。内輪の集まりとは聞いたが、ふたりきりだなんて………。
 「おどろいたようだね、でも、これが仕事はじめだ。わしを客と思って、くつろいだ雰囲気をつくってもらいたい。そうだ、とっておきのワインがある。おーい、梶原さん」
 槐島は家政婦を呼びたて、目くばせしてワインを持ってこさせると、ゆっくり啜りながら、祐美子を見やった。
 彼女は、仕方なく、ひと口飲んだが、ちょとにがい感じがする。急いで、オードブルのハムを食べたが、気のせいかもしれない。
 まもなく、エスカルゴのブルゴーニュ風が出る。帆立貝のグラタンが出る。といっても、いずれも缶詰ものを電子レンジにかけただけのものだが、けっこう美味である。
 「さてと、すこしは慣れただろ。わしは、どんなことでも気にしない性分なんだ。だから、おまえにもそう望んでいる。じっさい、おまえの上品さといったら………」
 いきなり、おまえ呼ばわりをするので、祐美子が皮肉っぽく、
 「ありがとうございます、槐島さん」
 と言ったとたん、彼の目に怒りがひらめいた。
 「さんづけはやめないか。わしをご主人さまと呼びたまえ。以前とはちがうんだぞ。いつまでも麻生家の令夫人だと思ってもらっちゃ困る。はじめから、その点をはっきりさせておくからな」
 祐美子は茫然とした。
 なんという豹変ぶり。
 彼女は生れてはじめての屈辱に、顔があおざめた。
 槐島は、その表情を気持ちよさそうに眺めながら、つと立ちあがると、テーブルに置かれたアタッシュケースから一揃いの服をとりだした。
 「おまえの心得ちがいを直すには、やはりこれを着てもらわなくちゃならんな。さっさとそんな服はぬいでしまうんだ。下着だけはゆるしてやる。さあ、早くしたまえ」
 槐島が手にしているのは、粗末なメイド服だった。原宿あたりのアンチックの店で買い求めさせたのであろう。時代おくれの色調で、エプロンまでついている。
 祐美子は反発して立ちあがった。
 「いやです。叔父さまはなぜ、わたしを侮辱するの。身内で、後見人なのに………。こんなひどいことってないわ」
 「まだ、そんなこと言ってるのか。この気どりやが………。自分をなにさまだと思ってるんだ。そんなにたてつくんなら、晋治も、晋也も面倒見てやらんぞ。メイドが相応(ふさわし)いって言ったのは、だれなんだ。この服を着るのがいやなら、勝手にするんだな。おまえのような世間知らずが生きていける世界をさがしてみろ」
 晋治の名前が出たとたん、祐美子は胸をつかれた。集中監視病院で昏睡状態の彼。
 (かわいそうなあなた………)
 祐美子はうなだれて、目をつむった。


 「よく似合うじゃないか。さあ、ここにきて座れ………」
 ガウンに着がえた槐島は、ベッドの端に気持ちよさそうに腰かけ、寝室の入り口でもじもじする祐美子に声をかけた。
 「いつまでも立ちつづけてると、冷えこんでおしっこをちびりたくなるぞ」
 その声は容赦なく、しかも含み笑っている。
 「でも、そこは………」
 「ベッドだから、いやなのか。いいじゃないか、話をするぐらい」
 祐美子はあきらめて、扉を閉めてからベッドに近づいた。
 メイドの恰好になっても、天性の優雅さは変わらない。
 槐島に引き寄せられて、祐美子は隣に座ったが、顔をのぞきこまれたとき、相手の表情のなかに、いやらしい欲情と、けものの熱気がよぎるのを感じた。
 「こんなに間近で見るのは、何度目かな。女の魅力が溢れてる。きっと、きれいなからだをしてるな。前から一度、見たいと思ってたんだ。それにおまえ………。アレが好きなんだろ」
 いきなり、どぎつく言われたので、思わず祐美子は身を縮めてしまう。
 二十六歳になれば、男の寝室に入る意味がわからぬ年齢ではない。しかし、彼女は迂闊だった。
 せいぜい、後見人の力を誇示したいのと、叔父でありながら、辛腹のために軽んじられたしっぺ返しに、厭味を述べたてて満足するだけだと思っていたのだ。
 「恥ずかしがらなくてもいい。いまに好きになるさ。おまえは燃えるたちだね。そうだろ」
 槐島は、口髭をザラザラと彼女の頬や首すじに押しつけ、くぐもった声で聞く。
 「あっ、そんな………」
 祐美子は、けがらわしさと羞恥のあまり、耳をおおいたかった。
 「ほら、感じてるじゃないか。この部屋はなにをするところか知ってるだろ」
 「し、知りません。あ、さわっちゃいや」
 槐島の手が肉腿にふれて、奇妙にやさしく、ねっとりと撫でまわしはじめると、嫌悪と恐れをおぼえながら、なぜか、なにもかも任せてしまいたいような感覚が疼いてくる。
 「さあ、言ってごらん。わたしは燃えるたちですってな。晋治のことがかわいそうだと思うなら、そのくらい何でもないじゃないか」
 気味の悪い槐島は、じわりじわりと両腿のつけ根のほうに撫であげてくる。
 「ああっ、そこはいやっ。やめて、叔父さま。だめよ」
 「ご主人さまというんだ。どうだ、燃えるたちなんだろ」
 「はあーッ、そうよ………おねがい、ゆるして」
 祐美子は、もじもじと双臀をうごめかせながらうなずく。
 「おまえ、毛ぶかそうだね。こんなほうまで生えてる」
 槐島のいたぶりが、しだいに執拗になり、むりにフレアパンティをこじあけるたびに、彼女は腰を浮かせて、賢明に攻撃をのがれようとする。
 「冗談はやめて………。そんないやらしいことはやめて」
 「いじられるのがいやなら、キスをしてごらん。処女でもあるまいし、いつもやってるだろ」
 顔島は、厚かましく口臭のただよう唇を、祐美子に近づけた。
 「そんな、恥ずかしいこと」
 彼女は眉をひそめながら、唇を固く閉じて横を向く。
 「気どるんじゃない、すべたが………。口を吸われるだけで、晋治の治療費がたすかるというのに………」
 槐島は、むりやり向き直らせ、左手で祐美子のきらめく髪の毛に指をすべりこませ、掻い撫でながら、がっしり抱えこんで引き寄せる。
 「だめ。いやよ、離して………」
 槐島のパジャマがはだけ、年に似あわない胸毛が、祐美子のてのひらにふれるのがわかる。
 「いいじゃないか。どうせ、男の寝室に入りこんだ人妻だ。キスだけですむなら、ましというものさ。それとも、へんな評判がたってもいいのかね」
 猫撫で声で接吻を強(し)いるが、耳ざわりなだみ声のため、まるで発情期のどら猫のようである。
 「あうっ、だめッ」
 むりに舌先で舐めまわされると、祐美子はぎゅっと唇をむすんで、息をとめた。
 「ほら、ちょっと唇をゆるめてごらん。花のつぼみみたいに、ぷっくらして、きれいなかたちをしてるよ」
 歯の浮くような殺し文句と、威圧する口調に、祐美子は痺れたように無抵抗になる。
 「晋也も、かわいい盛りだし………。新しい服を買ってやらんとな」
 それほど窮しているわけではないが、幼子にかこつけられると、彼女は上半身をぐったりと槐島にあずけたまま、無意識のうちにぴったりと唇をあわせてしまう。
 「舌を出してごらん、はやく」
 呪文にかけられたように、祐美子のなまめかしい舌が、チロリと出る。
 すかさず、槐島の湿っぽい舌がからみつく。
 (あ、好きでもない人に、口を吸われるんだわ………)
 ねばった舌の腹が、まともにぬらぬらと這いまわると、祐美子は耐えがたい嫌悪に喘ぎながら、つつーッと涙が頬を伝いおちるのを感じた。
 「どうだ、いい気持ちだろ。口を吸われると、しものほうも濡れてくるんだな。ほら、こんなににじんでる」
 槐島は、右手をフレアパンティの縫い目から引きぬいて、しばらく温(ぬく)みと乳酸をともなうあえかな匂いを嗅ぎわけようとする。彼女は、その下にショーツをつけていたが、自分でも恥ずかしいほど潤みだしている。
 「この分だと、おっぱいも勃(た)ってるだろ。エプロンが邪魔だな」
 こんどはエプロンの紐をとき、メイド服のボタンをはずしだす。
 槐島の指の動きはゆるやかで、いとおしむように楽しげだった。
 「あっ、いやです、そんな………」
 祐美子は狼狽し、激しく身を揉んで抗った。
 「じっとしてろ。もっと、いい気持ちにさせてやる」
 槐島の脳慄には、以前ならとても不可能な、麻生家の令夫人をなぶり、もてあそび、屈服させる手はずが異様にふくらみつつあった。
 「ああっ、もう、やめて」
 「こわがることはない。このまま、じっとしてるんだ。おお、なんて、やわらかなからだをしてるんだろ」
 エプロンもろとも、メイド服をぬがせると、槐島は、たぐい稀なしなやかな肉体に目を凝らした。
 チャームグレーのキャミソールにつつまれた紡錘形の乳房、ほそいウェスト、張りつめた腿、太腿から踵にかけてしだいにすんなり細くなってゆく両足、すべてが好ましい。
 「よく見せてくれ。年増も捨てがたいが、若い人妻はみるからにムチムチしてていい。晋治とは、あれっきり、ごぶさただろ。からだが疼いてたまらんだろ」
 「そ、そんなことないわ………」
 「やせがまんするな。ほら、こんなに腋の下が汗ばんでる。ふん、ふん、いっぺん、ここの匂いを嗅ぎたかったんだ」
 槐島は、祐美子の姿態から繊細で気品のある陶磁器を連想し、それをひとり占めにし、目でいつくしみたいと、気と肉を昴ぶらせた。
 彼は、ふっさりとした腋毛を舐めまわして、悩ましいジャスミンの香りを嗅ぎとった。
 「あ、いや………。は、恥ずかしい」
 愁いをふくみながら、祐美子が観念しきって堪えるのを見て、槐島は肉茎を昴ぶらせたが、彼女に家族を救うために身を任せるのだという理由を与えるのは、好むところではない。
 「ブラジャーはつけてないね。はじめからいじってもらいたかったんだな。よしよし。こわがらないで、あまり神経質にならんようにな」
 槐島の顔に、傲慢な喜びがじんわりと浮かんだ。
 (まあ、あわてることはない)
 レースつきのキャミソールの吊紐(ストラップ)をはずし、彼の指先が、蕾(つぼみ)のような乳首にふれると、祐美子のからだはふるえはじめた。
 「ああっ、いや。やめて。そこにさわらないで、叔父さま………」
 その声には、嫌悪と哀願がふくまれていたが、槐島はおかまいなく、さらに強く乳房ぜんたいを押したり、撫でまわしたりした。
 (やっと、叔父さまって呼んだな。それなりの敬意を払う気になったわけか………)
 いやいやさわられているうちに、祐美子のからだは、ひとりでにうねり、左右にゆれ、乳房が固くなり、自然につきだすようになった。
 (あああ、へんになりそう)
 思いもかけぬ感覚が湧き起こり、とめどなく疼いてくる。
 「これがきらいじゃなさそうだな」
 槐島は、しわがれ声でささやき、ますます乳首をいびりはじめる。
 その刺激が緩急自在に加えられるたびに、祐美子はわれしらず、全身をよじって、
 「はあーッ、やめて………。だめ」
 と眉をしかめる。
 (ひ、ひどい………。ひとの弱みにつけこんで………)
 祐美子は、羞恥に身の縮む思いだが、たくみな男の指づかいに、じっとり秘裂のほうまで濡れそぼってくるのを感じた。
 (いけないことだわ。こんなに感じるなんて………)
 はるか年長の、父親ぐらいの年齢の男に乳房をまさぐられただけで、おぞましい快感をおぼえるわが身がなさけない。
 「感じてるんだろ。おまえ。もっといい気持ちにさせてやる」
 槐島は、そろそろとキャミソールの裾をめくりあげ、フレアパンティに手をかけた。ホックをはずす。
 「武装堅固だな。ショーツをつけているのか。さあ、ぬがせてあげよう。すっかり見せるんだ」
 絹のような光沢の下着が中途でひっかかって、かすかに斬むような、エロチックな音をたてると、槐島は、ひどくそそられた。
 「いやっ。やめて、それだけはかんにんして」
 祐美子は泣きそうな、くぐもった声になった。
 「もう、おそい。こうなったら、すっかり任せるんだ」
 フレアパンティとショーツが足もとにぬぎおとされ、槐島が、しっとりした太腿をこじあけようとすると、祐美子は必死に抗った。
 陰阜のふくらみと、陰毛のむらがりが、槐島の指先に感じられる。
 「ずいぶん毛深いな。ほら、膝をゆるめてごらん」
 彼はなだめにかかるが、祐美子は羞恥の喘ぎを洩らしつづけ、決して、それ以上すすめさせない。
 業をにやした槐島は、力づくで押しひろげようとするが、手ごわい抵抗にあって、ついに怒りを爆発させた。
 「それなら、晋治も晋也、どうなってもいいというんだな。わしが手を引いたらどんなことになるかわかってるのか。つけあがるのも、いいかげんにしろ」
 ばしっ、と祐美子は頬を打たれた。
 生まれてから一度も暴力をふるわれたことのない彼女は、それだけで竦(すく)みあがってしまう。
 ばしっ、ばしっ。
 槐島は、さらに頬を打った。
 「いたいっ、いたいわ。叔父さま、ゆるして」
 「くそっ、このすべた。言うことが聞けんなら、こうしてやる」
 彼は、ガウンの帯(ベルト)をとくと、祐美子の顔にぐるぐる巻きつけて目かくしをした。
 このころには、すでに彼女もあきらめきって、顔を力なくのけぞらせ、なすがままに任せている。
 「こうすれば、もう恥ずかしがることはない。なにも見えんし、なにをされているのかわからんのだからな。おお、なんていい感じなんだろ。おまえだって、ずいぶん、ごぶさたのはずじゃないのか」
 槐島のしわがれ声がふいに低くなって、祐美子にささやきかける。
 彼は陰毛のむらがりをかきわけて、ぬめった肉びらの下べりを撫であげた。淵のあたりはすでに潤んで、槐島はさらに膣ひだのはざまに指をすすめた。
 「いや。叔父さま、やめて」
 「いまさら、やめてはないだろ」
 祐美子がまぎれもなく歓びの喘ぎを洩らしはじめるまで、指の動きをとめる気はない。
 「だって………。うっ、だめっ」
 「だめじゃないだろう。もっとって言うんだ」
 槐島の指先が、時おり、艶やかな肉粒に当たるたびに、祐美子は、しだいにたぐり寄せられるような気がする。
 目かくしされたことで、彼女の羞恥心は弱まったが、その分だけ感覚が研ぎすまされてくるのがわかる。
 「しっとりして、蜜をためた花のようなからだだな。ふふ、おまえ、これが好きなんだろ」
 「いや。そ、そんなことないわ。ああ、おねがい、もうやめて」
 槐島は、なまめかしいとば口を揉みくちゃにしながら、ズブリ、と二指をさしこんだ。
 「ふふふふ、こんなによく入るなんて、おかしいと思わんかね。おまえが、いちばん、よく知ってるだろ」
 よく入る、と言われて、祐美子はうろたえた。
 彼女が秘密の楽しみにふけりだしたのは、晋治が療養しはじめてから、ひと月ほど過ぎたころだった。
 いけないと思いながらも、ベッドに入って目をとじると、赤い絨毯を敷きつめた床のうえで、決まって腹の突きでた禿頭の老人に蛙のように吸いつかれ、舌でやさしく舐めあげられる妄想に囚われ、気づいてみると、いつも自分の指先で無意識にぬきさししているのだった。
 「し、知らないわ。へんなこと言わないで………」
 「すごく濡れてる。おつゆが多いんだね」
 ぬるぬるしたものが溢れ、槐島の指先にまとわりついてくる。
 祐美子の抵抗が弱まったとみるや、槐島は自由自在にふるまいはじめた。
 それから指を引きぬき、太腿をじわじわといびりだす。両腿のつけ根を懇(ねんご)ろに揉みしだかれると、祐美子のからだは、じれたようにうねりだす。
 「ああン、イヤッ。きらいよ、叔父さまなんて………。いや、いやらしいひと………」
 槐島は、祐美が感じはじめたことに大いに気をよくした。
 「もっと、いやらしいことをしてやるからな」
 あたたかくて張りのある、すんなりした太腿をもてあそびながら、槐島は舌なめずりして、彼女の秘唇のはざまに顔をうずめた。
 乳酸と麝香がまざりあったような芳香が鼻についたとき、槐島は喜びのあまり、目をほそめた。
 (いや。匂いなんて嗅がないで………)
 祐美子は狼狽したが、かえって匂いが濃くなったようである。
 槐島が舌をさしこむ。
 きわめてたくみに、はじめはゆっくりと。
 鱈子(たらこ)のような舌が、秘密っぽいすぼまりをひらいて、奥深くさしこまれると、祐美子は反射的にからだを引きつらせた。
 「ゆるして………。そんなに奥まで入れないで」
 すっと舌を引きぬいて、槐島がささやく。
 「それなら、あお向けになって、よく見せてごらん。なに、見るだけだ。へるもんじゃあるまいし………。出し惜しみするほど、うぶなわけじゃあるまい」
 祐美子のからだは、瞬間的にこわばった。
 槐島の容赦ない言葉が、彼女を傷つけたからだった。
 祐美子はなにも見えなかったが、目かくしのなかで、じっと目をひらいていた。
 「思ったとおり、すいつくようなかたちをしてる。けっこう、気分、だしてるじゃないか。いやらしいね。こんなにヒクヒクしてる。さあ、目かくしをとってやろう」
 その声を聞いた瞬間、祐美子は目を固く閉じた。
 あお向けにされた祐美子の裸身は、キャミソールが乳房のうえまでまくりあげられているので、一層なまめかしい。ストレッチゴムが胸の隆起を締めつけ、肩紐(ストラップ)がはずれかかっている。
 「なんだ、目をつぶってるのか。ほら、よく見てごらん」
 「いやです。なにも見たくないわ」
 祐美子は、顔をサッとそむける。腕をくの字にまげているので、濃い腋毛がはみだしている。
 目かくしをとられた彼女は、かたちのいい臍をひくひくさせ、槐島が顔を伏せると、ゆたかな陰毛がそよぐ。
 臍子の下半身は、起伏と曲線に富み、胴がくっきりとくびれ、腰まわりの量感がゆたかである。
 「こんどは、指もいっしょに入れてやろう。ほら、じっとしてるんだ」
 槐島の舌が、熱くいざなうような肉びらの上べりを舐めまわし、時おり、人さし指と中指が、左右をゆすりながら秘胴に出し入れされる。
 「あっ。むうッ、いや、いやっ」
 粘りのあるやわ襞が、見えない腔腸動物のように、彼の指をくい締めてくる。
 「これなら、もう一本ぐらい入るな」
 たくみに翻弄され、祐美子は、わるがしこい後見人に呼応するわが身がうらめしい。
 「うっ。そこはだめ」
 槐島の指が、感じやすい肉の突起をよぎると、彼女は、
 「ひいーッ」
 と、背をそり返らせる。
 「感じるのか、そんなに。毛ぶかい女は、匂いが強いっていうが、ほんとだな」
 一瞬、指をひきぬこうとすると、収縮が増してくる。
 (つらいわ。こんな目にあうなんて)
 祐美子は、自分の淫らさを恥じて、声をおし殺す。負けまいと思っても、嗚咽をうわまわる快感が、良心をおし流してしまう。
 (舐めて、かきまわして、体がとろけるほど………)
 槐島は、左右対称にかたちよく整った腔前庭を舌で舐めずり、人さし指と中指をねじりこませた。
 はじめザラザラしていた舌先は、いまやヌルヌルになり、なめらかにこすりたて、狂おしく祐美子をおいあげてゆく。
 「うっ、いや。あああっ」
 ついに、微妙な肉茎がコリコリに勃起し、彼女が戦慓的なかなきり声をあげると、有頂天になった槐島は、
 「待て、待て。もっといい気持ちにさせてやる。イクんじゃない。いま、入れてやるからな」
 と、怒張に邪魔されながら、ブリーフをぬぎおとす。
 「ぐっしょりじゃないか。ほら、わしのからだを見せてやる。おまえなら、きっと気に入るぞ。若い者に負けやせん。さあ」
 「見たくないわ。もう、やめて。くたくたですわ」
 祐美子は、泣きはらした顔をそむける。
 良家の令夫人にとって、あいつぐ辱めは、死ぬより辛かったにちがいない。夫の事故が起きなければ、けがらわしい秘めごとも知らず、レジャーを楽しんで一日を過ごす身なのである。
 それが、悪どい後見人の奸策に陥ちて、誇りも羞恥もずたずたに引き裂かれ、いまや最後の砦すら攻めおとされようとしている。
 「心配するな。おまえがじゅうぶん、熟(う)れきってないのは分かってる。晋治のでくのぼうじゃ仕方がないさ。わしのは並はずれで、はじめは痛むだろうが、だんだんに慣れるさ。じっとそのまま、あお向けになってればいい。ただ、でかくなったところをよく見て、心の準備をするんだ。でないと、痛みが長びくかもしれんぞ」
 祐美子は、うつろな思いで、槐島がガウンをぬぎすて、年に似合わぬ引きしまった全裸をさらすのを見つめた。
 下腹部にむらがる剛毛と、毒々しく血管が浮き出た肉茎を見ると、彼女の胸は、さすがにどきどきしはじめた。
 のがれられぬ運命とは思いながらも、このいやらしい男に、もっとも大事なものをムザムザ奪われるのかと思うと、祐美子はかなしみをおぼえた。
 (こんなとき、あの松下さんがいたら………)
 祐美子は、反射的に、夫の親友、松下幸一のことを思い出した。しかし、彼はカナダに行ったきりである。
 (あの人に求められたのなら)
 彼女は、松下になら、からだをあげても、すこしも惜しくない、と思う。
 しかし、永いこと偽善的にふるまい、縁戚なるがゆえに舅に引きたてられて、ひとかどの金融業者となり、今日の財を築きながら、恩人の死後、本家の嫁も辱めようとする男にだけは、ぜったいに犯されたくない。
 「おまえが、どんなにわしを嫌(きら)ってるか、よく知ってる。だが、どうすることもできんさ。麻生家の連中は、わしからみれば、無能力者の集まりだからな」
 「どうしても思いどおりにするとおっしゃるなら、さっきみたいに、目かくししてください」
 祐美子は、おくれ毛をかきあげながら、すがりつくように言った。
 「なにをばかな。抱かれるのを光栄に思わなくちゃならんぞ。わしがその気になれば、おまえなど、運転手の草野にくれてやってもいいんだ。あいつはばかでかいから、ずいぶんつらい思いをするぞ」
 「ああ、そんなこと、聞きたくないわ。ね、おねがい、もう、ゆるして」
 「おまえの出方しだいで、一度ですむことも、二度、三度、繰り返さなければならん。自分から抱いてくださいませと頼めば、つらい思いをしないですむ。それも、ご主人さま、どうぞ、というんだ。さあ、時間がないぞ」
 槐島は、淫靡な血管の浮く半包皮を剥き、ふくれあがった亀頭を隠(かく)そうともせず、祐美子の返事をうながした。
 彼女はうらめしそうな瞳を向けたが、のがれる道はないと知ると、ひきつった頬をかすかにあからめ、
 「ご、ご主人さま、どうぞ、抱いてくださいませ」
 と言い終えて、唇を強く噛みしめた。
 槐島は、勝ち誇ったような表情で、しばらくじらすように羞恥の肉ひだをもてあそんでいたが、やがて体勢をととのえると、目をつむった祐美子の顔を見おろしながら、
 「いつまで、そのおすまし顔がつづくかな。はめられて裂けそうだったら、息をぬくんだ。ずっと楽になる」
 きわめて慎重に、蜂蜜色の肉びらをヌラッとひろげ、ゆっくりとつらぬいた。
 「き、きついわ。そっとして………。あああっ」
 かたくて太い肉筒が、濡れたほころびに、ミリミリッと押しこまれると、祐美子は、絶え入るような呻きを洩らした。
 「じっとしてろ。根もとまで入っちまうまで。おお、なんて、ひくひくするんだろ。さあ、完全にわしのものになるんだ」
 「あ、あなたは悪党だわ。こんなひどい目にあわせるなんて………。ああっ、いやっ」
 祐美子は、眉をしかめ、ずりあがるようにからだをよじった。
 「もう、はめられちまってるんだ。いっしょに楽しむ気になったらどうだ。この気どりやめ」
 年に似合わず、槐島は容赦なく杭(くい)を打ちこんでくる。鍛えぬいているだけに、すさまじい硬度とふくらみを保ち、祐美子の両臀をがっしりつかんで、直線的に攻めたてるかと思えば、ふいに旋回して、彼女の虚をつく。
 「うううっ、ゆ、ゆるして………。くるしい、おねがい、おねがい、やさしくして」
 祐美子の悲痛な叫びが寝室にこだまするが、だれも来てはくれない。家政婦の梶原も、姿を見せない。
 「動くんじゃない。ほら、これならどうだ」
 目じりから流れるひとすじの涙を、分厚い唇で舐めとりながら、槐島はじりじりと追いあげてゆく。
 (ああっ、口髭がチクチクする。おなかがあつい、へ、へんな気持ち………)
 なんとも、おぞましく甘美な感覚である。剛毛におおわれた槐島の腹筋と、異様に大きな陰嚢(いんのう)が、強く、弱く、せめぎあうと、祐美子は、あやしい愉悦が走るのをとどめることができない。
 「叔父さま、すこし、休ませて………。もう、ゆるして。あ、またっ、そこはイヤッ」
 槐島が、根もとをゆり動かして、潤んだ下べりを押しひろげると、彼女は快感のあまり、気が遠くなりそうになる。
 「待て、待て。おまえのちっちゃなおまんこが、こんなに具合がいいなんて………。子どものときから、ずっとこの機会を待っていたんだ。どっぷり、ぶちまけてやる。いやなら、入れられないように締めつけろ」
 恥知らずの後見人は、なおも、持続して猛威をふるい、祐美子を刻々と追いあげ、最後のとどめをさそうとしている。
 「ああん。もう、だめ。いいの、よくなってきたわ。くやしい。でも、いい気持ち。ああっやめないで………。おねがい、もっと」
 執拗なぬきさしのむごたらしさが、ふいに祐美子の箍(たが)をはずさせた。
 「あああっ、イイ、いい気持ち………。イく、イきそうよ」
 槐島が唇を合わせると、彼女は夢中で吸い返した。
 「わしの唾をのみこむんだ、ほら」
 熟年特有のおぞましい口臭もろとも、どろりと唾液を流しこまれると、祐美子は、夢うつつにのみくだした。
 「おお、よく締まる。うっ、うっ、もう我慢できん。イク、イッちまう」
 槐島はどぎつくわめくと、声を軋らせ、積年の白濁を、麻生令夫人の蜜壺に、加速度的に注ぎこんだ。
 「ああっ、いやっ、外に出して………。やめてえ、おねがい………。あっ、あつい、感じるわぁ、イックゥ」
 心ならずも、祐美子はしがみつき、子宮頚部にまで精液がとびちると、激しい呻きを洩らし、ぐったり背をのびきらせた。
 「なんだ、このくらいでイッちまうなんて、だらしのない女だな。そんなによかったか。これからは、ずっと、ここに居るんだ。わしがじっくり仕込んでやるからな。さて、シャワーでも浴びてくるか」
 なんと言われても、祐美子は、みだれた呼吸をととのえるのがせいいっぱいだった。
 「もう、ゆるしてくださるんでしょ。これだけ自由になさったんだから、家に帰らせて………」
 「わしが飽きたらな。あした、胡桃山に電話して、仕事の都合で、四、五日帰れないといえ。晋也にはお手伝いがついてるんだろ。使用人たちがうまくやってくれるさ」
 祐美子は、不安に怯える目で、槐島を見つめた。秘孔がゆるみ、溢れでる感覚がある。蟻の戸わたりから臀裂にかけて、とろりと精が流れ出たのである。


          第3章 叔父さま、イッてください


 積年の思いを晴らすと、槐島一起は、そそくさと浴室に立ち去った。
 (ああ、けがされてしまったんだわ。だいじな操を………)
 残された祐美子は、傷つき、恥じ入って、罪の床となったベッドのうえで、さめざめと泣きくずれた。
 (わたしの夢は、あとかたもなく潰えてしまったわ………)
 思春期に達してからの彼女は、自分を与えて悔いのない青年の出現を待ちつづけていた。その青年、晋治と恋におち、彼が生涯にただひとりの男性で、ずっと貞節を守りとおすつもりだった。
 だが、すべての願いは、永久に消えてしまった。
 老獪で、烈しい気性の槐島は、半ば合意のかたちで、性的に祐美子を所有したのであり、そう考えると、彼女は死にたくなるほど恥ずかしかった。
 (犯されたって、パパに訴え、告訴してやるわ………)
 だが、よくよく考えて、祐美子は、そんなことはできないと悟った。
 たとえ、欺(だま)されたとしても、誘拐という状態には、ほど遠いし、第一、槐島は麻生家の後見人で、すべてをにぎっているのだ。
 この寝室に入ったこと自体、かりに法廷で争ったとしても、強姦罪が容易に成立しにくいことを、幾つかの事例で知っている。
 (どっちみち、わたしには選択の余地がないんだわ)
 むしろ、槐島の勢力圏にとどまれば、なんでも望みを叶えてくれるかもしれず、こうなっては彼の情欲にしたがうしかどうしようもない。
 しかし、つづく二日間というもの、槐島は、まったく姿を見せなかった。
 祐美子の出方を見ていたのかもしれない。
 訴えられる危険性が去ったと知ると、翌日の昼すぎ、槐島はなにくわぬ顔をしてやってきた。
 「どうかね。アソコは痛むか。あんまり締めつけがはげしいので、閂(かんぬき)がはずれたかと思ってな。血色はいいようだな。わしの精を吸いとったんだから、当然だろうけど」
 この二日間の彼女の様子を伝えたのは、家政婦の梶原らしい。
 邸にも、実家にも帰れず、他に頼る者もなく、晋也のことが気がかりで、いらいらしながらTVをみていた祐美子を、欲求不満と思って、槐島に告げたのであろう。
 「そんな。わたし、叔父さまに負けましたわ。これまで逆らったこと、ゆるしてくださいな」
 自分を陵辱した憎らしい男でも、いったんからだをゆるした女の弱さから、拗(す)ねて甘えるように、祐美子は、銀座に連れていってくれるようにせがんだ。
 なにか、晋也のための買い物をして、宅急便でとどけてやりたい。
 吝嗇(けち)な槐島にしては珍しく、
 「心からわしのものになるなら、ショッピングをしてから、芝居を見に連れていってやろう」
 と言う。
 祐美子は、晋也のプレゼントを考えていただけだが、槐島の機嫌をそこねるのを恐れて、黙ってうなずいた。
 ふたりは、草野の運転する車に乗ってデパートに行き、新しい衣裳や、晋也のものを買い、国立劇場の歌舞伎を見に行った。
 この日、彼に強いられて買ったもののなかには、悪趣味な安衣裳や、水商売風のドレス、大胆でセクシーなランジェリーや、ファンデーション、アンダーウェアなどがふくまれていた。
 芝居は、『法界坊』で、破戒坊主が商家の娘に横恋慕したり、野分姫に懸想(けそう)して、意に従わぬ姫を殺すという話だが、こっけいなせりふが多く、笑いの中にどすぐろい人間の執念があらわれるブラック・ユーモア劇である。
 「どうだ、面白かっただろ。予約の切符が手に入ったので、一緒にみようと思ってたんだ。わしは死んでも、亡霊なぞはならん。どこまでもとっついてやるからな」
 国立劇場からの帰り道、車のなかで槐島は、祐美子の手をずっとにぎり締めた。
 「叔父さま、放して」
 彼女は、声をひそめた。
 よそ目には、仲のよさそうなカップルに見えるが、犯されて間もない祐美子にとっては、この行為がどんな意味を持つのか、わかりすぎるくらいだった。
 「いいじゃないか、とって食うわけじゃなし………」
 ぎゅっとにぎられれば、にぎられるほど、彼女には、槐島がいかに情欲を燃やしているかがわかる。
 「あ、なにをするんですの」
 三宅坂から内堀通りにさしかかったとき、やにわに槐島は手をのばして、祐美子のふくらはぎをつかんだ。ナイロンストッキングのうえからでも、いやらしく揉みしだくのがわかる。
 「やめて。人前なのに」
 「気にするな。わかりゃせんよ」
 バックミラーに映るふたりの不自然な恰好が、草野運転手にわからぬはずはない。
 恥知らずの後見人の指先に力がこもり、じっと目をのぞきこんでくる相手を、彼女は怯えながら見返した。
 「気持ちを楽にしろ。ちょっとしたお遊びじゃないか。わしを、いつでも喜ばせろと言っただろ」
 繊細な祐美子の手首が強引に引き寄せられ、いきなり、なまあたたかく、ぐんにゃりした肉筒をつかまされた。
 「あ、だめ。そんな」
 いつのまにか、槐島のズボンのファスナーが引きおろされ、つづいて、彼女は吐き気をもよおすような行為を強いられたのだった。
 「草野を気にするんじゃない。早くはじめろ」
 祐美子は、観念して目をつむった。
 彼女は、かたちのいい唇をOの字状にひらき、こわごわ頬ばった。腐蝕性のつよいにおいが、ツンと鼻をつく。
 (みじめだわ。こんなけがらわしい真似をさせられて)
 祐美子は、神経質そうに鈴口を啜り、槐島に強いられるまま、舌先で亀頭冠のみぞを舐めまわした。
 「いいぞ。安淫売みたいで。もったいぶらず、すっぽり、くわえこんでみろ」
 祐美子は、額に汗をにじませ、髪の毛のほつれが、べったり頬にはりつくほど励みだした。
 「のどちんこをゆすれ。どうだ、でかくなっただろ」
 槐島は、だしたり、入れたりしながら、彼女をあしらっていたが、とつぜん、ほとばしりそうになると、ふいに祐美子の首根っこを引きあげた。
 「はやく部屋にもどろう。草野の口から杏子(きょうこ)に知れるとまずい」
 杏子は、槐島の妻である。
 すでに数年まえから別居同様だが、なかなか強い性格の女である。
 家政婦の梶原の話では、槐島の女癖の悪さはたいへんなもので、妻に対して不貞であるだけでなく、魅力的な若い女たちと手あたりしだいに性関係を持っていることを、暗に避難していた。
 ファイナンスの女性秘書も、ひところ、性の玩具として囲われていたという。
 (わたしには、もう逃げ場がないのに、この人は奥さんを気にしたりして)
 別居妻をおそれながら、車のなかで恥ずかしい行為を求めてくる老醜の無神経さに、祐美子はひどく傷つけられた。
 部屋に帰り、寝室に入ると、すぐに槐島は、祐美子の背後から抱きすくめ、右手でスカートをまくりあげ、パンストごしに臀裂をなぞった。
 「はやく、はだかになるんだ。もう、待ちきれんぞ」
 ベッドに入ると、槐島は、せっかちに彼女の下肢を割りひらいた。
 「だめよ。ちょっと、待って」
 祐美子は被虐的な興奮におののいたが、はじめて犯されたときほど怯えてはいなかった。
 槐島の指は、すぐに快楽の割れ口をまさぐった。すこしよじれた小陰唇のびらつきを責めなぞりながら。
 「おい、口を吸ってやろう」
 と言う。
 祐美子が仕方なしに唇を近づけると、待ちかねたようにねちっこく吸いたてる。
 「うぐぐぐぐ。く、くるしいわ。息ができない。うっ、うっ」
 きれいに刈りこんだ槐島の口髭が、チクチクして頬に痛い。
 嵩にかかった彼は、指を膣口から引きぬくと、陰毛のしげみや、小さくて深い臍(へそ)、ツンととがる乳首に、順々にふれながら、そのたびに、
 「これは、だれのものだね」
 と聞く。
 「ご主人さまのもの」
 と言わなければ、執拗にいじめられるので、祐美子は泣きたいような気持ちで答えるが、
 (ああ、いつまで玩具にすればすむのかしら………)
 と考えると、なんともつらく、みじめな心地になる。
 「どうだ、心から抱かれる気分になったかね。おまえはもう、わしのものだ。ぜったいに離さんからな」
 槐島は、彼女の唇をねちねちとなぶりまわし、舌と舌をからめ、一方的に興奮して、息をつかせぬほど吸いたて、同時に、秘唇のびらつきを指で懇(ねんご)ろになぶりつづける。
 「うっ、うっ………。ひっ、だめ」
 祐美子は、息ぐるしさと、名状しがたい快感に身をよじった。
 せめて、やさしくあつかってくれるのなら、おそらく情熱の帯電体と化しつつある全身に快い官能の波がおし寄せようものを、槐島はやに臭い口臭をはきちらし、威圧的にふるまうだけなので、彼女はおぞましい恥辱をこらえるのがせいいっぱいだった。
 すると、槐島は両膝立ちとなり、なまめかしく潤みきった割れ口を亀頭でさぐり当てる。じわりとあてがって腰を引くと、グッと狙いをさだめる。
 「ほんものの男ってのがどんなものか、おまえにたっぷりと教えてやる」
 爆(は)ぜるような肉筒のひと突きに、祐美子は、
 「あうっ、いきなりだなんて、ひどい」
 ごぼっ、ごぼっ、とつよい衝撃に、思わず肩で息をつく。
 「はあん、叔父さま、かたすぎるわ、こわさないで………」
 と喘ぐ。
 「すごいだろ。腰をぬかさんようにな」
 槐島は、こんなにも凄まじく、すばやい突きができるのを誇りながら、図にのって彼女を痛めつける。
 祐美子は、いまにも張り裂けそうな恐れをおぼえたが、それでも、ひっきりなしに耳もとで、
 「なんて、おまえのおまんこはきついんだろ。キュッキュッと締めつける」
 どぎつくささやかれると、祐美子はしだいに潤みはじめ、
 「い、いじわる。そんなこと言わないで」
 にごった声を洩らし、泣き声まじりになる。
 「恥ずかしくないのか。こんな年寄りになぐさまれて………。淫乱なんだな。おまえは」
 「ひ、ひどいこと言うのね。あ、そこ、もっと………」
 ガクガクふるえながら、ひとひねりごとに悩ましい随意筋がゆるむのがわかる。
 槐島はちょっと動きをとめ、背骨に走る快感に身をゆだねた。
 こんなに締まり具合がよく、すわすわとゆるむ女に出会ったのははじめてである。
 「もっと股を締めろ。そのほうがはやく気がいく。終わらせたかったら、言うとおりにするんだ」
 槐島は軽く引きぬいてから、また、突きあげる。
 とろけきった秘裂は、湿った音をたて、祐美子はどうすることもできず、男の胸にしがみついた。
 「そんなにいいのか、麻生家の奥さん」
 「きらい。あなたなんかに、こんなことをされて、くやしいわ。ああ、けだもの、けだもの。いい、いい気持ちよ。もっとやって」
 槐島の背に爪を立てながら、祐美子は呻いた。
 彼もまた、終わりに近づきつつあった。
 槐島は中腰になって、ぬきさしのたびに、乳酸をふくむ花蜜の香りがただよってくるのを、じっくり楽しんだ。
 容赦なく肉筒が繰りだされる。強く、弱く、時にはスッと引きぬいて、彼女をじらし、またたくまに水をふくむ花弁のようにふくらませ、両腿をわななかせる。
 「ああっ、もう、だめ。叔父さま、いって、いってください。わたし、いきそう」
 祐美子は、くっ、くっ、と腰を突きあげ、がくっと顔を横にした。
 「すごく、あつくなってる。いい気持ちなんだな。もっとやってもらいたいのか」
 「もっとやって。祐美子、とてもいい気持ちよ。やめないで………。ぜんぶ、うずめて」
 官能的なかゆみがせめぎ、祐美子の目じりから、涙がひとすじ頬を伝う。
 「おお、いい、いきそうだ。祐美子、いく、いくっ」
 「わたしもよ。いっしょに、い、いくわ。離さないで………とろけるッ」
 槐島が勢いよく白濁をほとばしらせると、祐美子は閂をはずされ、ひいーッと、裸身をわななかせ、瞬間的に失神した。
 「どうした、これくらいで。わしは満足しないぞ。まだまだ続くぞ」
 槐島はせせら笑って、彼女のからだから引きぬくと、まだ猛りたつものを見おろした。
 精はしたたっているが、すぐにでももう一度できそうだった。
 ただ、この蠱惑(こわく)的で、気品のある人妻を、これから何度さいなむことができるだろうかと思うと、すこし不安でもあり、また、もっと傲慢にもなれそうだった。
 「おまえだって、もっと欲しいんだろ」
 槐島に口を吸われて、祐美子は気をとりもどした。
 「や、やめてちょうだい。後見人だなんて、あなたはただの変態よ。二重人格で、陰険で、最低だわ」
 「このすべた、言葉づかいに気をつけろ」
 槐島の手が、白桃のように両臀の丸みをつかむ。
 ぐりぐりと揉みしだく。
 「あああ、いまのはウソ。恥ずかしかったの」
 鈍い痛みに、祐美子はからだをすぼめ、かなしい叫びをあげた。
 「おまえはいい女だよ。だが、甘えるんじゃない。もう、わしの女なんだからな、なんでも言うとおりにするんだ」
 槐島が邪慳に引き起こすと、祐美子の内部にとろりと溢れでる感覚があった。
 内腿を伝うなまぬるい精液の粘りは、ひとときの快楽のなごりを思いださせ、祐美子はいっそう羞じらう。
 槐島の指がのび、洋梨のような乳房をつかむ。
 「あ。またなの」
 息をのんで、彼女は身じろぎ、張りつめた隆起をなぶられるたびに喘ぐ。
 「ふふふ、なんてきれいなお乳なんだ」
 じわじわ揉みしだかれ、爪をたてて軽くこすられ、ほのかに色づく乳暈(にゅううん)のあたりを、幾度もやわやわゆすられると、おぞましさとけだるい快感がせめぎ合い、祐美子はしだいに気が遠くなってくる。
 「待て、待て。おまえは、もっと教育してやらねばならんな」
 槐島はつぶやき、ベッドの下から一束のロープをとりだすと、怪訝(けげん)そうな祐美子の背後にまわった。
 「な、なにをするの。また舐めるつもり」
 「見ればわかるだろ。素直に手をうしろにまわすんだ」
 「わたしを縛るの。いやよ、そんなこと」
 「いいか、わしに逆らうと、晋治が療養しつづけることができなくなるんだぞ」
 祐美子は、観念したように目をつむった。
 あやしい蛇のようにロープが躍って、繊細な手首にからみつく。
 むっちりした胸乳のあたりまで、きつく緊(し)めあげられ、祐美子は、むりに座り直させられた。
 「麻生家の奥さん、いま、どんな気持ちだね」
 槐島があざわらう。
 「恥ずかしいわ。縛られるなんて。どうするつもりなの」
 「まだ、序の口さ。おまえにぜひともしてもらいたいことがあるんだ、この間のようにな」
 あかぐろい亀頭をむきだしにした彼は、示威的に根もとから振りたてながら、祐美子の注意をむりに向けさせた。
 彼女は、槐島がベッドに長々と寝そべるのを見守るしかない。
 「なにをぐずぐずしてる。さあ、はじめろ」
 槐島は、ゆっくり肉筒を指さしながら、彼女に愛撫するように命じた。
 「そ、それはもういや。ぜったいにいやよ」
 祐美子は羞じらい、拗ねた。
 「いやもないもんだ、いっぺんしときながら。おまえイったんだろ。すけべなくせに」
 「ああっ、それを言わないで」
 「よくわかってないようだな。おまえには躾(しつけ)が必要なんだ。あらゆる方法でわしを喜ばせることを学ばねばならん。すぐにはじめろ」
 祐美子は嗚咽して、かすかにかぶりを横に振った。縄目をかけられた姿が痛々しい。
 槐島は、冷酷に待ちつづけた。
 もう、暴力をふるったりはしない。
 それでは楽しみがうすくなるというものだ。
 彼は、祐美子の母である肉感的な芙貴子に言い寄って、侮辱されながら、はねつけられた日の情景を思いだした。
 あのとき、驕慢な芙貴子は、「恥を知りなさい」と言い放った。「自分をわきまえることね」とも。そのくせ、槐島の知り合いの誰かれとなく、身を任せている。
 その“無情の美女”の令嬢に、いま、わしの精液を、吸って吸って、吸いつくさせようとしているのだ。しかも、彼女のほうからすすんで奉仕するのだ。
 槐島は、罠にはまった祐美子が、やがて優雅な唇をOのかたちにひらき、淫靡な精液にまみれながら息をつまらせ、泣きくずれながら屈服してゆく光景を思い描いた。
 「まだ、その気になれんと見えるな。それでは、ちょっとばかり練習してもらおうか」
 つと身を起こした槐島は、ナイト・テーブルの抽(ひき)出しから、てかてか光るものをとりだした。
 「これが何かわかるか」
 彼はいじわるそうに、目の前でしごいてみせる。
 祐美子を見つめる槐島の目は、欲情と期待のため、充血しはじめている。
 「し、知らないわ」
 祐美子は、顔をあかくした。
 「これはバリ島みやげでな。タイラク・タイラカン・アレムというんだ。ワックス製だが、効き目はじゅうぶん。さんざん、あちらの踊り子をよがり泣きさせたものさ」
 「それをどうするんですの」
 「何も怖いことはない。これをしゃぶってごらん。おまえは舌の使いかたをおぼえなくちゃならん」
 槐島は、祐美子の目に浮かぶ恐怖の色を読みとったように言う。
 「そ、そんなことできないわ。いやっ、叔父さまは、さんざん、わたしをひどい目にあわせたじゃないの。もう、ゆるして」
 「ご主人さまって呼ぶんだ」
 槐島の怒声がとんだ。
 その激しさは、たちまち、祐美子を居すくませた。
 「ご主人さま、おねがい、もう、かんにんして」
 「なにごとも、慣れがかんじんだ。いやなら、わしが躾けてやる」
 槐島は両手をのばして、きらめく祐美子の髪の毛をわしづかみにした。
 強く引っぱられるほど、彼女は激しい苦痛を味わった。
 「い、痛いわ。おねがい、いじめないで」
 (うっかり手を出してしまった。暴力はやめよう………)
 「それでは、言うとおりにするんだな」
 槐島は、反省して、手を離した。
 異様にてらてらするタイラクが口もとに近づけられると、祐美子は威圧的なかたちに、恐れと苦痛を感じた。
 「大きすぎて、とてもむりよ。わたし、はきけがしそうだわ」
 「なにを言ってる。これがぜんぶ、おまえのおまんこに入っちまうんだぞ」
 「おねがい、そんなことしないで。きょうはくたくたですわ。ちゃんと言われたとおりにしますから、これ以上、入れたりしないで」
 「はじめは横笛を吹くように、ゆっくり脇から舌をからませるんだ。そうそう、知るべきことはみんな教えてやるぞ」
 たくみに偽茎をくりだす槐島の動きにつれて、はじめはいやいや左右に避けようとしていた祐美子も、むりやり唇をこじあけられると、ついに観念しきって舌でつつみこみ、やがてクネクネとつとめはじめた。
 「よし、よし。これをわしだと思って精をだすんだ、つぎにそなえてな」
 ほくそえみながら、槐島は、左手をのばして、そっと枕もとのベルを押した。
 「こ、こうすればいいのね」
 無慈悲な言葉を聞いて、祐美子は異様な予感に心が昴ぶってくる。
 彼が、これだけで放してくれるとは思えない。
 やがて、思うがままにもてあそばれ、汚辱のほとばしりを喉の奥ぶかくのみこまされるのかと思うと、胸がさけるような気がする。
 「なかなかうまくなった。いやらしい恰好だな。よだれをたらして………。え、舐め子ちゃん」
 そのとき、寝室の扉がしのびやかに叩かれた。
 ここは完全なシークレット・ルームのはずである。ここを訪れるのは、家政婦の梶原以外にはない。
 おかしいのは、槐島がうす笑いを浮かべながら、タイラクをあやつりつづけていることだった。彼の左手は、すばやくオートロックのキーを押している。
 (誰なのかしら)
 うしろ手縛りで裸身をさらしている祐美子は、なすすべもなく居すくんでいたが、カチリと把手をまわして入ってきたのは、お抱え運転手の草野だった。
 がさつな顔だちが、どこか色男ぶっている。
 「社長、ひと責め終わりましたか」
 ハッと身を硬くする祐美子を制して、槐島は、
 「これから、わしの獲物をじっくり見せてやる。まあ、責め具合を聞いてくれ」
 と言う。
 草野は、にやりと笑うと、ふたりの脇をとおり、祐美子の頬を指でちょっとつつき、ベッドをまわって、カセットレコーダーに近づいた。
 早送りで巻き戻す。
 草野の動きを見つめる祐美子は、これまでの会話や、行為のすべてがテープに吹きこまれていることに気づき、半狂乱となった。
 「卑怯だわ。いったい、どういうことなの。こんなにわたしを辱めながら」
 「妙な真似をさせないためさ。もし、訴えたりしたら、このテープを公開してやるからな。あのよがり泣きじゃあ、強姦にはならんだろ」
 草野がテープの再生をはじめると、きれぎれに祐美子の痴声が聞こえてくる。
 「とめて。これ以上、わたしをみじめにしないで。聞きたくないわ」
 「よし、とめろ。草野、遠慮はいらんぞ。きさまもここにきて、一緒に楽しめ」
 祐美子に気づかれぬように新しいテープを仕掛けると、草野は平気な顔をして、彼女に近づいてくる。
 これまでにも、こうした状況に居あわせたことがあるのだろう。
 「いや。そばに来ないで。わたし、この人に見られるの、きらいよ」
 祐美子は、このお抱え運転手が麻生家に迎えにきたときから、どことなく得体の知れない男だと思っている。
 「いまさら上品ぶるんじゃないぜ、奥さん。いまに、そのムチムチしたおしりの、きゅっとすぼまった穴に特製の蝋燭をつっこんで、たっぷり可愛いがってやるからな」
 「草野、そういきりたつんじゃない。ご婦人にはやさしくしてあげろと、いつも言ってるだろ」
 ちっ、と舌打ちした運転手は、祐美子の髪の毛にごつい指先をからませ、いらだたしげに引っぱった。
 「い、痛いわ。なにをするの」
 祐美子は声を喘がせる。
 彼女は、ふたりを嫌えば嫌うほど、彼らの罠にはまってゆくのを感じた。
 「舌を休めるんじゃない。おろそかにしてると、草野のでかまらをくらわせるぞ」
 槐島がねちねちした口調で脅す。
 祐美は、草野に髪をつかまれたまま、槐島がくり出すグロテスクな偽茎を、まともにくわえこむかたちになった。
 「あ、待って。くるしいわ」
 「このあま、自分をなに様だと思ってる。おまえがツンと澄まして車に乗り込んできたときから、いつか、おれの前に這いつくばらして、気どったけつの穴を思うぞんぶん、いびってやろうと決めてたのさ。ねえ、社長、そっちのほうはまだ手入らずなんでしょう」
 「そうとも、草野。おまえが杏子のスパイとわかったときから、固く約束したじゃないか。だが、勝手な真似はゆるさんぞ。もし、わしのゆるしもなく手を出したら、どういうことになるかわかってるだろ。いまは、わしに協力して、このなまいきな奥さんを徹底的に仕込むんだ」
 「わかってますよ。さあ、奥さん、ぱっくり口をあけて、まるごと啜りこむようにするんだ。そうすりゃあ、社長もお嬉びになる」
 「うぐぐぐ………。く、くるしい。すこし、休ませて」
 なめらかな項(うなじ)を前後にゆすられて、祐美子は吐き気を感じた。
 彼女は肩で息をつき、憐れみを乞うように、槐島にうったえた。
 「ちょっと待て、草野」
 槐島は不快な口臭をまきちらしながら、運転手を制した。
 祐美子は、涙のなごりをとどめた顔で、天井を見あげていた。唇のまわりには、タイラクを舐めずった透明な唾液がしたたっている。
 それを見ると、槐島は、にわかに強い欲情をおぼえた。
 彼は、ふいに祐美子をベッドに押したおすと、
 「おい、おいしそうな口菓子をたべてやるぞ」
 ざらざらした舌で吸いたて、舐めずりはじめた。
 爬虫類のようななまぐさい口臭。
 「ううっ」
 祐美子は喘ぎ、つらそうに眉根を寄せる。
 その間に、草野は膝がしらで、彼女の片方の太腿をおさえつけ、指をさしこんで、ねちねち臀裂と、秘部をなぶりはじめる。
 (あうう。たすけて。ああっ、おかしくなりそう)
 祐美子は、かぼそい泣き声をたてた。
 「もっと、舌をだしてみろ。おまえの唾をぜんぶ吸いとってやる。一滴あまさずな。甘くておいしいぞ」
 草野のいたぶりは、執拗をきわめている。人さし指をよじれた肉びらの下べりにくぐらせ、中指を肛門にねじこませる。
 (ひいーッ………。いやっ、そこは)
 頭のなかに光がとびちり、祐美子は甘い苦痛のうめきをあげたが、それはただ、槐島の情欲と興奮をかきたてたにすぎない。
 ふしくれだった指で、小刻みにこねくりまわしていた草野は、見えない薄い粘膜を、肉部ですりあわせると、いつしか彼女の箍がゆるみ、かすかな熱気と湿潤の気配から、祐美子がもの狂わしくなっているのがわかった。
 「社長、この分じゃあ、気絶するかも知れませんぜ」
 ふたりがかりでなぶりつづけられ、祐美子はくたくたに疲れきっていた。
 とくに、草野は第一関節をたくみに使い、途中から祐美子は、
 「おかしくなるう、おかしくなるう」
 と、うわずった声をあげはじめた。
 夢うつつに、彼女は、この獣のような男たちにこたえはじめていたが、厚かましい草野の指が、つと、ふくらんだ肉芽にふれたとき、祐美子がほとんど惚けたようなうつろな表情を浮かべてるのに、彼らは気づいた。
 「すこし、休ませよう」
 槐島が言った。
 祐美子は、じっとりと額に汗を浮かべながら、放心しきって横たわっている。
 しばらくすると、思いだしたように、彼女は啜り泣いた。
 「なぜなの。なぜ、わたしをこんな目にあわせるの」
 「おまえがすまし屋のいいとこの奥さんだからさ。おれをまるっきり無視しやがって。虫けらみたいに思ってるんだろ。その根性をからだで叩き直してやるのさ」
 「わたしが、あなたに何をしたっていうの」
 草野は答えずに、せせら笑う。
 かわって、槐島が答える。
 「なにもせんさ。だが、おまえは色っぽい。あの芙貴子よりな。わしを振りとおしたおまえのママよりもだ。だから、おまえは母親のつぐないをしなくちゃならん。かわいい、花のようなからだでな」
 「社長、はじめましょう」
 なまじ同情して損をしたというような口調で、草野がうながす。
 色男ぶる運転手は、なんとしても、この手で上流夫人のむっちりした肛裂をおしひろげ、初花を散らしたかった。
 どうやら、槐島には、肛交の趣味はないらしい。
 草野の欲情は、無防備に薦骨(せんこつ)部のくぼみをさらしている祐美子を見つめているうちに、さらにつのった。
 「よし。こんどは練習の成果をしっかり見せてもらおう」
 と槐島。
 祐美子は、あきらめきった様子で引き起こされ、容赦なく、ふくらみきった肉茎を突きだされた。
 「いやとは言わせんぞ。さっきの容量で、じっくり締めてみろ」
 おどろきのあまり、祐美子は目をみひらいた。
 毒々しく淫靡な血管が浮きだし、てかてかとあかぐろく光る王冠部の鈴口から、ねっとり精がにじみだしている。
 こんなに太くて、大きなものにえぐりたてられていたのかと思うと、祐美子はかすかにおののいた。
 「ぐずぐずすると、草野のでかまらをしゃぶらせるぞ」
 ふくらみきって紫ずんだ亀頭が迫り、容赦なくふくまされた。
 祐美子は、後ろ手縛りの不自由な恰好で、ベッドに棒立ちの槐島の股間に顔を寄せた。
 (はやく、終わらせて)
 祐美子は、ぬめぬめする亀頭みぞを舌でからめとり、しずかに分泌液のしずくを吸いあげた。亀頭のうらがわにぐるりと舌を這わせ、できるだけ根もとまで舐めおろした。
 「いいぞ。おまえ、ゆっくりやってくれ。そう、そう、まるで濡れた天鷲絨(ビロード)で、ねっとりこすりまわされるみたいだ」
 槐島のしわがれ声が、低く、うたっているような調子だった。
 「社長、この女、けっこう気分だしてますぜ」
 草野が、またもや、背後から抱きかかえ、ねちねちと乳房をいびっている。
 すっと離れ、双臀をおしあけようとするので、祐美子は思わず中腰になる。
 (いやらしいことしないで)
 声をだそうにもぐぐいぐい突きあげられので、息苦しさが先立つ。
 「まだ、まだ。もっとつづけろ。だいぶ、慣れてきたようだな」
 顔をあげようとするたびに、槐島が威嚇する。
 いま脅したかと思うと、つぎの瞬間には異様なやさしさをしめす後見人のいじ悪さは、彼女をほとんど惑乱させている。
 祐美子は、口のなかの肉筒が、かたく膨張しきって、熱くなるのを感じた。
 もうすぐ、ほとばしらせるだろう。
 彼女はのみくだすのはおぞましかったが、槐島を激怒させるのは、もっと恐ろしかった。もし、最後のひとしずくまで啜りこまなかったら、きっとひどい仕置きをするだろう。
 「喉の奥まで、がっぽり吸いこめ。このすまし屋の淫売め。もうすぐ、もうすぐ、いっちまう」
 槐島の声が切迫した。
 祐美子の舌が、自然に強くからみつく。
 草野が、彼女の陰毛をむらがりを撫でさすっている。
 祐美子は、的確に突きあげてくる肉筒を、柔媚な唇と舌でくいとめた。
 だくっ、だくっ、とほとばしらせると同時に、槐島はひきつけたようにそり返り、うなり声をあげた。
 「すっかりのみくだせ。途中でやめるな、一滴もこぼさずにな。喉ちんこからはらわたまで犯してやる」
 槐島は興奮のあまり、祐美子の髪の毛を引き寄せ、なおも口腔をえぐりたてようと背をそらせ、勢いあまって草野を蹴とばした。
 まともに突かれて、運転手はベッドから落ちかかった。
 祐美子は息をつまらせながら、必死にのみつくそうとし、ほとんどをのみくだした。
 「うまくなった。コツがわかってきたんだな。ふふふ、ほんとうに、おまえは舐め子ちゃんだ。それをいつも忘れないようにしろ」
 おさまらないのは草野だった。
 彼は未練がましく祐美子にまとわりつこうとしたが、槐島の厳しい視線に出会うと、すごすご引きさがらざるを得なかった。


 ふたりが前後して寝室から出ていったあと、祐美子は長いことうつぶして歔(な)いていた。
 いつになったら、この部屋から出られるのか予想もつかない。槐島は、このまま監禁するつもりなのだろうか。
 しばらくすると、家政婦の梶原が無表情な顔で入ってきて、トレイごとジュース入りのコップをさしだした。
 「あ、ありがとう」
 祐美子はものうげにジュースをのみほし、ふたたび、くずおれるようにうつぶした。
 「かわいそうな奥さま」
 梶原喜与子は同情する様子で、ぐったりした裸身をかかえ起こしたが、その顔は興奮したようにあかくなっていた。
 そして、祐美子がほとんど反応をしめさないのをよいことに、丸っこい指先で、艶やかに潤む乳首を、ちょっとつまんだ。
 祐美子が、泥のように寝入ったのは、その晩だけだった。
 おそらく、あのジュースのなかに睡眠薬が入っていたのだろう。
 (あ、いつのまに………)
 祐美子がようやく眠りからさめたとき、ショーツとネグリジェをつけているのに気づき、家政婦の好意を感謝したが、ふと乳房の下に濃いキスマークを発見して、なにか言い知れぬ恐怖を感じた。
 それは接吻というより、あきらかに咬んだ痕(あと)のように思われる。
 少なくとも、槐島がつけたものではない。
 その日から、すこしずつ、寝室の模様が変わりはじめた。
 祐美子は軟禁状態で、自宅に自由に電話もかけられる。
 「あ、明子さん。わたしだけど、晋也はさびしがっていないかしら。ちょっと電話に出して」
 まもなく、かわいい晋也の声がする。
 「もしもし。ママ、いつ帰ってくるの」
 「お仕事がすんだらね。もうすぐよ。お利口にして待ってるわね。おみやげ、たくさん買ってゆくからね」
 老秘書の胡桃山が電話口に出た。
 「病院のほうからは、べつに連絡はございません。私と、秘書課の清水、それに総務課の児玉で交代で面会に行っておりますので、ご気づかいなく………。槐島さまのお話では会社の再建もうまくいっているようで、………」
 「そう。わたしが留守にしていて、何かとたいへんでしょうけど、よろしくおねがいね」
 「はい、わかりました。あ、それから、槐島ファイナンスから真船さんとおっしゃるかたが見えて、こまかい事務的なお手伝いをしてくださるとかで」
 槐島のさしがねにちがいないが、単なる好意とは思えない。
 昼間のうちに、祐美子がいるサロンに、高価そうな油絵や、中国風の衝立(ついたて)、新しい化粧鏡と化粧用腰掛けなどが運ばれてきた。
 寝室の古いものは、すべて入れかえられ、贅沢なアクセサリーが運びこまれる。
 華麗な化粧台の上には、仏蘭西香水やら、凝った指輪立て、パフ、コンパクト、スプレーの類(たぐい)まで、ずらりに新品が揃えられた。すべて、槐島の見立てで、家政婦の梶原がしつらえたものばかりである。
 「やあ、退屈しなかったかね。し残したビジネスがあるので、おまえの相手は、あしたということになるな」
 槐島が終わってきたものの、すぐに社長室に姿を消した。
 祐美子は、幽囚の身をかこちながら、この奸悪な辣腕家の日常生活をひそかに観察しはじめた。
 どうやら彼は、ある特別な計画を抱いているらしい。
 槐島は、短い出張にでかけたかと思うと、あわただしく帰ってくる。
 むろん、祐美子に執着しているためだろうが、彼の真の狙いは、いったい何なのだろうか。


          第4章 けつの穴は処女ってわけか


 「一度、家に帰って、晋也の顔を見てきてもいいぞ」
 珍しく機嫌のいい槐島が言った。
 「わしも一緒に行ってやろう。そのまま帰ってこないともかぎらんからな」
 祐美子は、槐島とともに、草野が運転する車で、成城の麻生家に向かった。
 パパが入院して、ママの忙しさを聞かされている晋也は、お手伝いの明子と無心に遊んでいた。
 「明子さん、ごくろうさま。晋也ちゃん、お利口にしていたわね。ほら、ディズニーのレーザーディスクのおみやげよ」
 「ママ、ありがとう。きのう、鎌倉のおじいちゃんが来たよ」
 祐美子の実家の父、典明が心配して訪ねてきたらしい。
 夕方まで楽しいひとときが過ぎると、
 「祐美子さん、そろそろ、でかけないと」
 槐島が、やんわりと言う。
 「そ、そうですわね。晋也ちゃん、ママ、またお仕事があるから、胡桃山さんや、明子さんのいうこと、よく聞いてちょうだいね」
 「わかった。はやく帰ってきてね」
 あどけない晋也は、にこにこしている。
 すっかりお手伝いの明子になついているようだった。
 帰途、祐美子の心は、久ぶりにわが子にあえた嬉しさで、いくらかはずんでいる。
 「どうだね。一度出直して、たまには外で食事でもするか」
 槐島がささやく。
 「ええ、いいわ。叔父さま」
 ふたりは赤坂に出て、贅沢なディナーをとり、槐島が行きつけのナイトクラブで踊った。ロマンチックな楽団の演奏は、その腕に抱かれて踊っている相手が、彼以外のだれかであったら、祐美子の胸に夢みる感情がめばえただろう。
 「ほら、若い客がおまえを見てるぞ」
 彼女は、槐島に強く抱き締められると、思わず悲鳴をあげて逃げだしたくなった。
 なぜなら、きなびやかなナイトドレスの下は、ショーツすら穿くのを許されていなかったからだ。
 「ごめんなさい。慣れないので、ステップをまちがえそうで」
 祐美子はきれいに化粧しており、いかにも清楚で、優雅な雰囲気は、会員制クラブの常連客の目を惹いた。
 ホテルバーや、ディスコ、ダンスクラブとちがって、さすがに若者の姿は少ない。
 遊び慣れた中年客が、ちらっと、熱い視線を送ってくる。
 なかにはダンスを申しこむ紳士もいたが、そのたびに、槐島がたくみにさまたげる。
 そのくせ、彼女が紳士連のあつい注目を集めているのを知って、大いに虚栄心を満足させているのだ。
 はなやいだクラブの雰囲気に、祐美子はわずかに頬を染め、甘いカクテルをのみほした。
 「おかわりは、どうかな」
 槐島がボーイを呼んだ。
 新しいカクテルがくると、祐美子はちょっと考え、すぐにぐいっとのみほす。
 「だいじょうぶか。おまえ。けっこう強いんだな」
 「平気よ。叔父さま………。こんな目にあわせて………。ひどい人………。もっと、のませてくださらない」
 「酔ったのか、おまえ」
 「平気よ。もっと、のみたいわ。このカクテル、おいしいわね」
 (ふん。やけになっているな。よし、いっそ、もっと羽目をはずさせてやろう)
 槐島は、にんまりすると、強いカクテルをボーイに注文して、祐美子にすすめた。


 「さあ、手を貸してやろう。酔ったようだから)
 「酔ってなんかいませんよーだ。だいじょうぶですったら」
 ナイトクラブを出た祐美子は、槐島に抱きかかえられるように車に乗せられ、軟禁状態で起き伏している日比谷のビルに戻った。
 エレベーターで、ファイナンスのある階まで昇るあいだ、さっそく槐島は花のような祐美子の唇を吸いにかかり、運転手の草野は、ひそかに彼女の臀裂をさぐりあて、ねちねちと淫らな指をすすめた。
 「あアァ、こんなところでよしてください。人が入ってきたら、どうするの。いやっ」
 祐美子は、すこし酔いがまわったことを自覚した。
 めざす階で降りて、ふらりと歩きだすと、みがきぬかれた廊下が、目のまえに大きく迫ってくるように感じる。
 背すじをのばして、しゃんとしているようでも、まっすぐに歩けない。
 「いまにもハイヒールがぬげそうで、見ちゃいられないな。女の酔っぱらいって、だらしがないな」
 「いや。なかなか、色っぽいぞ」
 祐美子は、両側から抱えあげられるように、部屋に入った。
 「梶原くん。のみすぎたようだから、酔いざましにクリーム・スープをつくってもらえんかね」
 槐島は、ネクタイをはずしながら、家政婦の梶原にたのんだ。
 そのときだけ、削いだようにけわしい顔が、すこしほころぶ。
 しかし、草野が寝室からなかなかでてゆかないのをみると、するどい一瞥をくれた。
 「まだ、なにか用かね」
 「え、きょうはお呼びじゃないんですか」
 「きさま。礼儀をわきまえろ。気が向いたら呼ぶかもしれんが、いまはいい」
 草野は、内心不服だったが。そそくさと部屋をでていった。
 「奥さま、あたたかなスープですよ。さあ、ひといきに召しあがれ」
 と家政婦の梶原。
 酔いざましに効くと聞かされた祐美子は、おいしそうな湯気をたてるスープを、ゆっくりと味わった。
 「とても、おいしいわ」
 「そうでしょうとも」
 梶原がうなずく。
 なんとことはない。ホテル調整の缶詰スープをあたためただけである。
 「ゆっくり、くつろごうじゃないか」
 槐島の声に、家政婦はでてゆく。
 「どうだ。こんなに元気だぞ」
 彼女は、矍鑠(かくしゃく)たる体躯を誇示するように、次々に身につけていたものをぬぎすてる。
 祐美子は、ふたりの関係が深まるにつれ、槐島がいちだんと断固たる態度をとりだしたのを感じつつある。
 一日ごとに、威圧的な存在になりつつある。
 はじめは犯されて、むりに従わされたのだが、彼女は、時には、やさしく愛されたいとねがった。
 しかし、それもまったくの夢想にすぎないと悟ったとき、彼はにくむべき狼なのだと思った。
 (毎晩、狼に抱かれて眠っているんだわ)
 銀灰色の髪をした狼は、肉茎を誇示して、のろのろとドレスをぬぐ祐美子を見おろしていた。
 「早くしろ。一晩じゅう、こうしてはいられないぞ。いま、すぐにだ」
 槐島は、気障(きざ)に刈りこんだ髭を、いらいらと撫でまわした。
 「ゆるして、今夜はいや。このまま眠らせて」
 ネグリジェを身につけながら、祐美子は反撥した。
 酔いが彼女を大胆にさせたのかもしれない。
 「このままじゃ、いやらしいおまんこがほてって、眠れないだろ」
 「あなたは下司で、うすぎたない男だわ。むかしは、ぺこぺこして、親切ぶったりして………。それがなによ、夫が事故を起こして寝たきりになったら、手のひらを返すように威張りだして。そのうえ、むかし、ママにふられた腹いせに、私をこんなひどい目にあわせたりして………」
 「ほほう、たいそうな口をたたくじゃないか。最後までつっぱっていられるかな」
 槐島の顔は、憤怒のあまり、かえって、あおじろくなった。
 それからベッドの端に腰かけ、毒々しく血管の浮きだした肉茎をじっと見つめた。
 「なまいきな女め、きょうは抱いてやらんぞ。おまえがどんな身の上か思い知らせてやる。ここにきて口をあけろ。徹底的に仕こみ直してやる。いやだといっても、ねじこんでやる。おまえに選ぶ権利はないんだ」
 怒りのあまり、指の節をぼきぼき鳴らした。
 「いいか。手はじめに草野にくれてやる。あいつはさんざん楽しんでから、仲間に分け与えるだろう。おまえは、みんなに輪姦(まわ)されて、なぐさまれるんだ。それが麻生夫人のなれのはてというわけだ」
 槐島の口調には、冗談を言っている様子はなかった。
 祐美子は、自分がどこかのガレージで輪姦され、血まみれになって転がっている姿を想像した。
 「おねがい。乱暴はしないで」
 彼女は怯えたような声をだした。
 「わしはしたいようにする。だれの指示も受けん。おまえが助かる道はただひとつ。わしにひざまずくことだ」
 槐島は笑った。
 祐美子の屈服は、時間の問題だった。
 血の気をうしなって、立ちすくんだ彼女は、かすかな吐き気を感じた。
 「わ、わかりました」
 祐美子は、唇をこわばらせながら、槐島の足もとにひざまずいた。
 勃(お)えかえって脈打つ肉茎が迫ってくると、祐美子は怯えたように目をつむった。
 それでも彼女は、かろうじて両手で亀頭冠をとらえた。
 「待て、待て。そのまえにしてもらうことがある。この靴下をぬがせてくれ」
 祐美子が、彼の靴下をぬがせると、ツンと鼻を衝く臭いがただよった。おしゃれなくせに、見えない部分は不精なせいだ。
 皮革の匂いと、汗と脂肪がとけあって発する硫化水素のような匂いである。
 その匂いに刺激されたわけではないが、祐美子のおなかがごろごろと鳴りだした。
 「どうした。いやな顔をしたりして。さあ、そのかわいい口で、足の指一本、一本を舐めまわしてくれ。わしがいいと言うまでな」
 あまりの屈辱に、彼女は気が遠くなるような思いだった。
 「いまさらいやとは言わせんぞ。早くやれ」
 あぶら汗をにじませながら、祐美子がようやく槐島の足のうらまで舐め終わったころ、彼女の腸は耐えきれないほど蠕動(ぜんどう)しはじめた。
 ゆるやかにはじまった蠕動は、しだいに排泄の衝動を強めてゆく。
 「あ、ああっ、おなかが張ってくるしいわ」
 祐美子はおしりをもじもじさせて、なんとかこらえようと、息をつめた。
 「こんどは口をあけろ。おまえはなにもしなくていい。そう、このなまいきな女め、おまえの口に、突っこんでやる」
 槐島は、ふくらみきった肉筒をブリッと突きだし、優雅な彼女の唇を割って、おぞましい衝撃を与えた。
 (うぐぐ………。ふ、太すぎるわ)
 こぼっ、こぼっ、と奔馬のように跳ねまわり、祐美子はうめき声を洩らした。
 いやらしい抜きさしが激しくなるにつれ、槐島の顔にうす笑いがひろがってゆく。
 この麻生家の後見人にとって、令夫人を完膚(かんぷ)なきまでに陵辱するのは、ひとつの大きな賭けだった。
 彼女の身も心も、わしのものにしなければならない。
 一歩、一歩、あらゆる辱めを与え、すべての羞恥心を崩して無抵抗にするのみか、すすんで、わしの意を迎えるようにさせなくてはならぬ。
 その執拗ないたぶりは、祐美子をほとんど圧倒し、彼女は息たえだえに喘いでいる。
 そして、激しい腸の蠕動。
 「く、くるしい。叔父さま、は、早くすませて」
 祐美子がうめく。
 「お高くとまった淫売め。おまえはいま、分家すじの、うす汚いくそじじいになぐさまれてるんだぞ。さあ、言ってみろ、ご主人さま、ゆるしてってな」
 「ああっ、もうだめ、たすけて。うっ、うっ、ゆ、ゆるして………。ご主人さま」
 「とうとう言ったな、このすべため」
 槐島のののしりと同時に、堰を切ったように、祐美子の排泄がはじまった。
 もう、とどめようがない。
 はじけとんだ黄金色の粘液が、みるみるシーツを染め、おびただしい汚臭をともなって、豪奢な長絨毯のうえに溢れだした。
 「は、恥ずかしい。み、見ないで」
 「くそっ、いっちまう。もっと深く頬張れ、おおっ、いくっ」
 引きぬくが早いが、槐島は、精のほとばしりをまともに、祐美子の顔面に浴びせかけた。
 ぴゅっ、ぴゅっ、と、鼻や、まぶたにとびちる。目もあけられない彼女は、それでも双臀をゆすって、信じられないほど噴きだす汚物を見せまいとネグリジェの裾でおおった。
 それを眺めやる槐島は、長い靴べらをとって、その先で汚物をとろとろとかきまわしながら、
 「ずいぶん、ぶちまけたものだな。わしの一回の量よりも多いな」
 いじ悪くからかう。
 祐美子は、自分の排泄物に顔を伏せたまま、ううう、うっ、と咽び泣く。
 その嗚咽を聞きながら、槐島の顔に、誇らしさがはじめて浮かんだ。
 「わしのような愛人を持つとは、おまえは幸福者(しあわせもの)だ。どんなときでも見捨てたりはしない。おまえも、わしが必要なことをみとめるだろう」
 「お、叔父さまが、そうおっしゃるなら」
 死にたいような気持ちで、祐美子は答えた。
 「わしがそう言ってるんだ。おまえは、なびく女なんだろ」
 「たぶん、そうですわ」
 「よし、よし。だいぶ、すなおになったな」
 槐島は、とってつけたように祐美子の髪を撫でさすったが、はやくも、次のたくらみが生れつつあった。
 「こんなにたれながしたら、あそこの毛まで汚れちまっただろ。ちょっと見せてごらん」
 彼は、汚物にまみれた絨毯のむらがりをまさぐろうとする。さらに悩ましくよじれた肉びらをめくろうと、手をのばすと、祐美子は中腰になった。
 「いやなのか。それなら、汚れちまったネグリジェをぬいで、からだを洗ってこい」
 槐島からゆるしを得た祐美子は、転ぶように浴室に走った。
 排泄物にまみれたネグリジェをぬぎすて、シャワーをふり注ぐ。ショーツも汚れている。粘液のしみがなかなかとれない。
 浴槽に湯をみたし、からだを深く沈ませながら、祐美子は何度もしゃくりあげ、啜り泣いた。
 (わたしだけが、なぜ、こんな目にあわなきゃならないの。ああ、あなた、はやく治ってちょうだい)
 泣きはれた顔を拭き、祐美子は、大きなバスタオルにからだをつつんで、寝室にもどった、とりあえず、身につけるものは、これしかない。
 長絨毯には、まだ排泄物のなごりが感じられたが、シーツはきれいにとりかえられている。
 おそらく、家政婦を呼んだのだろう。
 つよい香水がまかれたらしく、ベッドは麝香めいた香りでみたされている。
 「そのままで、ベッドにこい。食べあわせが悪かったのかな」
 衣裳戸棚から、新しいネグリジェをとりだそうとする祐美子を、槐島がとめた。
 「ああっ、ちょっと、ちょっと待って。まだ、おなかがごろごろする」
 祐美子は、あわててトイレに走った。
 華やかな便器にすわって、しぼりとるように最初の排泄をすませたとき、さっきのスープのなかに、あきらかに即効性の下剤がまぜられていたことに気づいた。
 (家政婦のしわざだわ)
 祐美子の臀裂は、何度も繰り返し、ロールペーパーを使ったので、ひりひりし、あかく爛れたようになった。
 ベッドにもどった祐美子のあかい陰花に向かって、槐島の舌が這う。
 「力をぬけ。ほう、いぼ痔かとおもったら、りきみすぎただけだな。じっとしてろ。痛みをなだめてやるからな」
 祐美子は、疼きと快感がかわるがわる訪れるのを知った。
 「ごめんなさい。そこ、汚いでしょ。叔父さま、もうやめて」
 彼女が息をつめると、四つのちいさな薔薇窓が、槐島に啜りたてられて、恥ずかしげに外側にめくれ出る。
 「生きものみたいに、からみつこうとする。けつの穴って、生きてるんだな」
 彼は、祐美子の反応が気に入った。
 人さし指で、あかく腫れた部分をまさぐる。
 「ふふふ。ここにはめられると、どんな気持ちになるのかな」
 槐島は、余裕をもって、またもや、ねっとりと臀裂を舐めずった。
 「そ、そんな………」
 なまめかしい柔ひだにかるく歯をたてられ、祐美子は、ブルッと身をふるわせる。
 「感じるんだな。こりゃ、わしがうかつだった。よしよし、どこまで入るか、たしかめてやろう」
 左右の菊ひだをゆすぶりながら、指先をそろそろとすすめると、ぬらぬらする瘤のようなものに当たる。
 「あうう、つらい。変態だわ、こんなことするなんて」
 ねちねちと、いびりたてられ、祐美子は断続的に苦痛の波を呼び起こされる。
 「ほら、ずぶずぶと入ってゆく。これなら、わしのでかまらもおさめられるだろ」
 「ひ、人でなし。いやらしい真似はやめて」
 祐美子は、眉をひそめる。
 「つべこべ言うな。いやがらずにはめさせろ。おまえのおまんこより締めつけるぞ」
 「お、鬼だわ、叔父さまは。そんなことして何がおもしろいの」
 「ご主人さまって呼ぶんだ。そうだな、おまえがいやがるから、よけいにやってみたいのさ」
 「夫にも、そんなことさせたことがないわ」
 「すると、けつの穴は処女ってわけか。じたばたするな。すぐに入っちまう」
 祐美子はおびえきって、ヒステリックに叫んだ。
 「やめてちょうだい。おねがい」
 槐島は、力まかせに彼女の太腿をつかむ。
 つぎの瞬間、祐美子の太腿は肩車にかけられた。
 「じっとしていろ。根もとまで入るまで動くんじゃない。けがをするからな」
 異様な衝撃を肛裂に感じたとき、祐美子はくぐもった驚愕のうめきを洩らした。
 「あうっ、へんになるう。そっとして、ああっ、いやっ」
 ひと押しごとに、きつい感じがゆるむのを知って、槐島は、
 「おっ、きつい。待ってろ。まだまだ入るぞ」
 「お、叔父さま。ひどい、おしりが裂けちゃう。もう、やめて」
 「ご主人さまと言え。でないと、尾てい骨をへし折るぞ」
 「ご、ご主人さま。ゆるして。おねがい、ちゃんと愛して」
 夫にもゆるしたことのない部分を、無惨にも割り裂かれているかと思うと、祐美子はかなしい叫びを放った。
 「ほら、根もとまで入ってゆく」
 槐島は、おたけびをあげながら、悩ましくも、きつい閂(かんぬき)を突きくずし、強く、熱い肉胴をおくりこんだ。
 「あああっ、ゆるして………。もう、だめっ」
 祐美子は直腸を、やすやすと蹂躙(じゅうりん)され、縦横にゆさぶりたてられながら、背骨に走る信じがたい感覚に身をゆだねた。
 「なんて締まりがいいけつの穴なんだ。うまく草野の先を越してやった。あいつが狙うのもむりはない。もっと、くわえこめ」
 ぬめぬめと肉茎を締めつける肛裂は、たとえようもなく潤みきってあでやかである。全体にゆるみがくるのは、分泌物のなごりのせいであろう。
 「はあーッ、ご主人さま。すこし、休ませて………。わたし、疲れましたわ」
 「まだまだ、どうだ。痛みはおさまっただろ。どうってことはない。わしのでかまらよりすごく大ぐそをたれるんだからな」
 「い、言わないで………。は、恥ずかしい」
 時に野蛮に、時に執拗に、胃を突きあげられるようにえぐりあげ、槐島が一気にほとばしらせると、祐美子は失神した。
 「妖しい尻躍りのおぞましい疼きに堪えきれなかったのだろう。
 「どうだ、なにごとも行うはやすしさ。けつの穴をもっと鍛えれば、なま卵などおしつぶすのは朝めし前になるぞ」
 槐島が引きぬいても、祐美子の臀裂は、なおも痙攣に似たふるえをつづけている。
 「目をさませ。まだ、終わっちゃいない」
 いかつい指が、ねちねちと肉びらのよじれた紐のような部分をいびりはじめると、それに気づいて、祐美子はうめいた。
 「ま、またなの………。もう、ゆるして」
 槐島は、まだ責め足りないらしい。
 祐美子が、はっきり思い知らされたのは、この強欲で好色な後見人が、まぎれもなく牡だということだった。
 彼は、祐美子に贅沢三昧をさせ、その代償に、徹底的に言いなりになる女、いわば隷従し、いじめられて快感をおぼえる女に仕立てあげようとしているのだ。
 「もう、ご満足でしょ。わたし、降参しましたわ。だから、もうゆるして」
 「なにを言う。ちゃんと愛してって頼んだのはだれだね」
 「でも、叔父さま、いったんでしょ。おしりが濡れて、流れているわ」
 眉をしかめて哀願する祐美子の臀部をたたき、
 「あれは、ほんの景気づけさ。年をとると、小出しする癖がついてな。ほら、まだこんなに元気だぞ」
 「いやっ。もう、これ以上入れないで」
 「四つん這いになれ、めす犬みたいに這いつくばるんだ。ほら、こんなにおまんこが濡れている。匂いが強くなって。おまえ、その気になってるんだろ」
 「そ、そんなことないわ」
 「うしろから入れてやる。おまえ、発情してるんだろ」
 祐美子は、牡犬にいどまれるように、たかだかと臀部をかかげ、
 「恥ずかしいわ。こんな真似をさせられるなんて。ちょっとだけよ」
 と歔(な)く。
 「おまえのちょっとは、もっとっていうことだろ」
 祐美子は、すべてが厭わしく、なにも聞きたくなかった。
 なのに、この屈辱が、ある種の戦慄と快感をともなうのを感じて、胸をつかれた。
 (きっと、わたしには、ママゆずりの淫蕩な血が流れているんだわ)
 わずか半年まえまで、テニスコートで風のように舞って、スポーツを楽しんでいたわたしは、どこに行ってしまったのだろう。
 祐美子は、あまりの運命の急転に、いま起こりつつある現実が、にわかに信じがたい。
 「けつをもっとあげろ。とろとろに熱くなってるじゃないか。おまえ、好きなんだろ」
 槐島は、勃えきった亀頭冠を、悩ましい膣のとば口に、ずるり、ざらりとこすりあげる。
 「ああン、いたずらしちゃあ、いやっ」
 「入れてもらいたいのか。こんなにおつゆがにじんでる。スケベなんだなあ、おまえって」
 充血しきったあかぐろい肉筒をじりっと固定させ、中腰の槐島は、彼女におおいかぶさるかたちで、腰をひく。
 ぶすっと弾みをつけて押しこみ、毒々しい肉筒が完全におさまるまで、いやらしく腰を使った。
 「あひいッ。しつこくしないで。は、はやくいって………。また、おかしくなりそう。あ、あついわ」
 「いやらしいびらびらが、まとわりついている。どうだ、亭主にささげたおまんこを、何度も奪(うば)われる気持ちは………。それに、けつの穴までやられちまったんだぞ」
 「ああ、くやしい。なんて、腹黒い人なの。負けたくない。みじめだわ」
 祐美子は、あさましく双臀をうごめかせながら、悲痛な声をふりしぼった。
 粘りの強い膣ひだが、槐島を締めつけ、ヒクヒクとひくつくと、彼は、たちまち機関車のように荒い息づかいとなり、
 「おおっ、どこもかしこもとろけてる。なめらかすぎて、先っぽがかゆい。い、いきそうだ。いっちまう」
 馥郁(ふくいく)たる祐美子のシャンプーの残り香を嗅ぎながら、激しく果てた。もう、ほとばしるものは残されていない。気力だけで、槐島は注ぎこんだつもりなのだ。
 「すっかり、ぶちまけてやった。すごくいい気分だ。おまえは、もう、どこにもやらんぞ。その気になれば、感じることができるじゃないか」
 槐島は、家政婦の部屋に通じるベルを押した。
 すぐに梶原喜与子が入ってきた。
 知的で、洗練された感じの家政婦は、いかにもおどろいた表情で、
 「あら。なにか臭いますわね。おや、こんなところに染みが………。くさい。どなたが粗相したんですの」
 と、すまして言う。
 「わしじゃないとしたら、あとはだれかな」
 「旦那さま、これは、汚したご当人に掃除してもらうのが、順序でございますわね」
 「そういえば、そうだな。彼女に例の服を持ってきてやってくれ」
 「そうおっしゃるだろうと思って、ほら、ここに」
 家政婦の喜与子は、うす笑いを浮かべながら、粗末なメイド服を、ベッドの祐美子に向かって投げた。
 「奥さま、いつまでも、そんなみっともない姿をしてらっしゃるなんて、そうとう、恥知らずですわねえ。さっさと、ご自分で汚した絨毯をお拭きあそばせ。さあ、ここに洗剤も、雑巾も用意してありますわよ」
 いじの悪い喜与子に追いたてられるように、ベッドから這いおりた祐美子は、粗末な服に着がえて、慣れぬ床掃除をはじめなければならなかった。
 「ほら。そこにも黄色いかたまりがこびりついていますよ。ほんとうに、役たたずだったらありゃしない」
 喜与子は、びしびしと命令をくだした。槐島の性格をよく見ぬいたうえでのへつらいである。
 しかも、浴室に入っていって、丸められた汚物まみれのネグリジェまでさがしだしてきて、これみよがしにつまみあげた。
 「まだ、染みがとれないわ。このネグリジェは、シルク・サテンでお高いんですからね。それをこんなにするなんて、奥さまはいくつにおなりなんですの。きっと、旦那さまに夢中になって、ついお洩らしになったんでしょうけど」
 と、ふくみ笑う。
 「こんどは、おしりの栓をしなくっちゃあな」
 槐島は、ベッドで一服しながら、さきほどの情熱をまるで忘れてしまったかのように、とぼけている。
 (ふたりして、笑いものにしてるんだわ)
 祐美子は、涙をこらえながら、すこしずつ絨毯の汚れを拭きとっていたが、どうしようもなくかなしくなり、床に拳を打ちつけて、うっ、うっ、と咽び泣きはじめた。
 「まあ、いやですねえ。ご自分でひりだしたものを始末するのに、いちいちヒステリーを起こしたりするんだから。これが立派なご身分の奥さまだなんて、だれが信じますかしら」
 針をふくんだ喜与子の言葉も、みじめな境遇に突きおとされた祐美子にとって、ごく些細な試練のひとつかもしれない。
 「まあ、そのくらいでよかろう。梶原くんも手伝っておやり。わしは、これから代官山のほうに帰るから。このところ、杏子がうるさいんでな」
 久しぶりに雨が降った。
 有楽町から丸の内にかけての高層ビル街は、煙ったように濡れなずんで、ものうげなスフィンクスの群れのようである。
 その一角のがっしりしたビルの八階。
 一歩踏みこめば、あやしくも豪奢な寝室サロンの入り口で、ベルが鳴った。
 怯えたように、ベッドのなかで、身を縮める祐美子。
 能面の悪尉(あくじょう)のような槐島が、彼女の臀裂をいびりたて、執拗にもてあそんでから、二日間が過ぎようとしている。
 祐美子の柔媚な排孔は、まだあかく腫れていて、かすかに血のしずくをにじませている。
 あのあと、
 (いたい、いたいわ)
 と、彼女は何度、声をしのばせて啜り泣いたことか。
 しゃがみこんで、鏡で局所を見ることはできなかったが、おそらく柘榴(ざくろ)のように、あちこちはじけているにちがいない。
 あのとき、槐島が出てゆくと、家政婦の喜与子は、うってかわったように猫撫で声になり、まめまめしく手当してくれたが、はじめに消毒液をひたしたガーゼで、傷ついた肛門を拭くときの手つきが、いかにも淫らがましかった。
 「奥さまは、まだ、しあわせ。どんなにつらい思いをしても、愛されているのだから。このあたしにくらべたら」
 炎症をしずめる座薬をねちねちと挿入しながら、喜与子が顔をあかくさせ、舌を寄せてきたのを感じて、祐美子は、
 ぶるるっ、
 とおしりをふるわせた。
 はじめてのアナル経験で、軽いヒステリーを起こしている彼女に、喜与子は精神安定剤をのむようにすすめたが、いつかの夜のように寝入っている間にキスマークをつけられるのを恐れて、頑(かたくな)に拒んだのだった。
 祐美子は、この淫靡な寝室に軟禁されているうちに、時間の感覚がうすれてゆくような気がした。
 枕もとのベルを押せば、すぐに喜与子がくるだろうが、彼女はできるだけ、底意地の悪い家政婦にあいたくなかった。
 扉をノックしても、祐美子があけようとしないので、オートロックのキーで入ってきたのは、せかせかした足どりの槐島だった。
 「どうだね、具合はよくなったか」
 うしろにはお抱え運転手の草野と、もうひとりの連れがいる。
 九十キロ以上はあろうか。見るからに脂ぎって、額をてかてか光らせた恰幅のいい大男である。この男が中国人なのは、切り裂いたような目と、独特の鼻梁(びりょう)をみれば、一目瞭然だった。
 「若い奥さん、この人なのか」
 大男は、ネグリジェの上にガウンをはおった祐美子を見て、細い目をさらに細くして意味もなく笑ったが、彼女は、中国人が抱えている木彫りの朱箱に目をとめた。
 「こちらは、評判の中国鍼の陳先生だよ。おまえが臥(ふ)せっていると聞いて、むりにきていただいたんだ。どんな痛みでも、たちどころにとめてくれるそうだ」
 「わたし、どこも悪くありませんわ」
 祐美子は、怯えたように答えた。
 この無慈悲で禿鷹のような、奸佞(かんねい)な後見人が何かをたくらんでいることくらい、彼女にはおぼろげにわかる。
 「社長、奥さまには、真っ赤な蝋燭のほうがきくと思いますがね」
 草野は猪首を振って、ヒヒヒッと嗤った。
 タキシードにブラックタイをつけた槐島は、パーティの帰りと見えて、少し足どりがふらついている。
 せかせか動くわりには、かなり酩酊していると見えて、目が充血し、酒くさい息を吐いている。
 その間に、サイドテーブルに近づいた鍼灸師は、朱箱を置き、蓋をあけて大小さまざまな専門鍼をとりだした。
 「まず、腎兪(じんゆ)と大腸兪(だいちょうゆ)、それに臀部の秩辺部に打とう」
 脂ぎった鍼灸師は、呪文のようにツボをつぶやいた。
 「ガウンをぬぐんだ」
 槐島が言うと、
 彼は神経質に、室内を行きつもどりつした。
 「いや、いやよ」
 祐美子はさからった。
 「わしの言うことが聞けんのか」
 槐島はしわがれ声で迫った。
 「おまえは晋治のことも、晋也のこともどうなってもいいというんだな。それにテープのことも」
 祐美子は観念して目を閉じた。
 しかし、襲ってくる言い知れぬ不安のために、思わず口走った。
 「こわいのよ。こんなにたくさんの鍼をどうするんですの」
 「刺すのさ。おまえの太腿に、お乳に、おしりにな」
 「いや、いやっ。叔父さま、おねがい、なんでも言うことを聞きますわ。でも、鍼を打つのだけはやめて」
 「こわいのか、よしよし、それじゃあ落ちつくように、わしが口を吸ってやろう」
 やにわに槐島は、祐美子を抱き寄せ、繊細な頤(おとがい)をあお向かせて、爬虫類のように粘っこい舌で唇を吸いたてた。
 「あうっ、う、うむむ………」
 祐美子は、切なそうに眉根を寄せてのがれようとするが、相手は嵩にかかって離そうとしない。
 草野は心得きって、彼女のショーツをぬがせにかかる。ネグリジェは、すでにめくりあげられ、練り絹のようにしっとりとした腰をおおっているのは、チャームピンクのレースつきショーツだけである。
 (いやっ。だれなの、ぬがせないで)
 祐美子は必死で、見えない手をはねのけようとするが、男の力は強い。
 槐島はおぞましい口臭をふきかけながら、業をにやして、とろとろする唾液を、ぐちゃりと祐美子の口のなかに吐き入れる。
 「いいか、おまえは、わしの女なんだぞ。ひといきにのみこめ、一滴ものこさずにな」
 「うううっ。むりよ、とても、だめ」
 「いいや、おまえはこれが好きなはずだ。この間は、もっと濃いやつをぜんぶのみこんだじゃないか」
 「あああ、かなしいわ」
 すっかり剥きだしにされた艶やかな臀丘を見て、鍼灸師は情欲をそそられたらしい。
 「はやくね」
 手真似で、草野に、ベッドに横たえるように指図する。
 槐島も気づき、祐美子を抱き締めたまま、ぐいぐい押していって、ベッドの端に座らせようとする。
 「どこも悪くない。鍼はいやよ」
 祐美子は、海老のようにはねてのがれようとする。
 「若い奥さん、だいじょうぶ。痛くない。じっとしていれば、すぐ終わる」
 扁平な顔に愛想笑いを浮かべ、九十キロの巨体は、膝がしらでぐっと彼女の腰骨のあたりを押さえつけ、粘り絹のような太腿を割った。
 気品のある祐美子のからだが、切なそうに息づくと、たちまち、プツリ、プツリ、と五寸鍼が刺された。
 鍼は太腿の段の膝うらの委中など、ツボを的確におさえ、さらに細い長鍼が排孔のまじかを打つ。
 祐美子は、刺されるまえから啜り泣いていたが、七本目の鍼を打たれると、微妙な、疼くような感覚におそわれた。
 (ああ、なんだか、まわりがあたたかくなって、むずがゆいような感じだわ)
 痺れるような快美感に、陰毛のむらがりがそよぐ。
 痛覚よりも、痒感に近い。
 とろけるような波長が、おのずからわき起こってくる。
 蜜壺のうるみとともに、あんずのような馥郁たる香りが、鍼を打ちつづける鍼灸師の鼻孔を衝く。
 「槐島さん、よく効(き)くでしょうが」
 脂ぎった中国人は得意気だった。
 祐美子の目は、うわずったようにうつろで、大きく開股された臀裂のあたりが、ヒクヒクと反応を見せはじめている。
 「社長、蝋燭を使わせてくださいよ」
 中国鍼をすっかりぬきさったあとで、草野がたまりかねたように、毒々しく真っ赤な人参のような装飾用キャンドルをしごきたてる。
 しかし、酔ってはいても、槐島は、自分の権利を徹底的に主張する男だった。
 「待て。それでは楽しみが少ない。貞淑ぶって、気どった淫売は、もっと躾けなければならんからな」
 槐島がベルを押す。
 メイドルームから梶原喜与子が、転ぶように寝室に入ってきた。
 「なにか、ご用ですの、旦那さま」
 知的だが、陰湿な喜与子は、さいぜんから胸をわくわくさせながら、自分の出番を待っていたのである。
 喜与子は、あらかじめ役割を心得きっているようだった。
 「まあ、たいへん。鍼を打たれただけで、気絶するなんて」
 槐島に命じられるまでもなく、祐美子に気つけ薬を嗅がせ、やっと正気づかせた。
 しかし、祐美子を待ち受けていたのは、残酷な後見人の一声だった。
 「ひざまずいて、わしのでかまらに舌をからませるんだ。このあいだの成果を、みんなに見てもらうためにな」
 おのれの優越感を誇示するように、槐島は両手をさしのべ、尊大な様子でベッドに腰かけ、そのまま、背のびするようにあお向けになった。
 「おい。いやなのか。それなら、こっちにも考えがあるぞ」
 祐美子は、おずおずとベッドから降りたち、槐島の股間にひざまずいた。
 「ズボンのファスナーを引きおろしてくれ。ひっかからないように、つまみだせ。それからどうするかは、知っているだろ」
 もはや選択の余地はない、と思うと、彼女はきみの悪い爬虫類にふれるみたいに、こわごわとつかみだした。
 運転手の草野は、こんなときでも、どこか気品に溢れ、取り澄ました表情の祐美子に、不埒な欲情を昴ぶらせている。
 「ほら、舌でからめとって、しっかりくわえこむんだ」
 淫靡な亀頭冠がてらてらと充血し、鈴口から精がにじんでいる。なまぐさい分解臭がただよう。
 「ゆるして。き、汚いわ」
 「ほら、しゃぶれったら」
 槐島は、両手で祐美子の髪をわしづかみにし、彼女は、みんなに見られるのを意識して、みじめさと羞恥で顔をあからめた。
 「汚かったら、きれに舐めまわすんだ。あのタイラクの使いかたを思いだしてな」
 節くれだった槐島の指先が、栗色の髪から背のほうにまわり、ぐいぐい締めつける。
 「い、いたい。だめ。くさいからいやなの」
 「喉ちんこまでくわえこめば、臭いはしなくなるさ」
 すんなりした祐美子の背すじは、絶えざる指の拷問で、点々と赤みを帯びてくる。
 「こ、こうすればいいのね」
 彼女は、ねばねばする分泌液をたぐって、いきりたつ肉筒の血管に舌をまきつけ、淫らな弾力にひしがれている。
 「もっと舌をなめらかに動かせ。休むんじゃない」
 節くれだった指先が、ぐりぐりと祐美子の双臀を揉みしだきはじめる。
 「みんなに、もっとよく見えるように、臀(しり)を振りたてるんだ」
 槐島は、ねちねちと容赦なく、露をふくんだ海藻のように臀裂をいびりたてる。
 (ああ、いや。そこをさわっちゃあ)
 祐美子は、かすかな痛覚を感じたが、気をそらせようと、賢明に舌を動かした。
 「草野、蝋燭を近づけろ。だが、手荒な真似はゆるさんぞ」
 待ちかねたように、草野が装飾用の赤いキャンドルの先に、火をともした。
 「もっと、けつを高くかかげるんだ。でないと、やけどするぞ」
 元のほうを、腫れて潤んだ排孔に埋めると、草野はキャンドルがぬけないように、手でささえている。
 「ひ、ひどいことするのね。わたしを見世物にして」
 祐美子は、思わず舌を離して泣き声をたてた。
 「とうとう仕留めてやったぞ。どうだ、つらいだろ、奥さま」
 「ああっ、あなたみたいな不潔な野蛮人にこんなことをされて、くやしいわ」
 草野の手さばきにつれて、真っ赤な蝋液がぽとりぽとりと臀裂の周辺に伝い落ちる。
 「すごいわ。血がたれてるみたいね」
 と家政婦の喜与子。
 毒々しい鶏冠状の凝固物が、点々と増えたが、祐美子はほとんど熱さを感じない。ただ、草野に、強く埋めこまれたときだけ、悲痛な声をあげた。
 「もう、いやだったら………。この人でなし」
 嫌悪と哀願の悲鳴を聞くと、槐島が叱りつけた。
 「思いあがった声をだすな、いいか、麻生家のお上品ぶりは、ここじゃあ通用せん」
 彼はぐりぐりとねじこみ、祐美子はじゃりじゃりとした剛毛で鼻をふさがれ、喉ちんこをひくつかせて、酸欠状態からのがれようとする。
 「草野、どんなふうに見える。わしは強いか、みんな遠慮なく覗いてくれ」
 槐島は無慈悲に肉筒をぬきさし、おのれの言葉に刺激されて、堪えがたい快感のうちにちびった。
 まだ、ぜんぶはぶちまけたくない。
 彼は、余力をたしかめるようにしごきたてたが、祐美子は、酒くさい匂いと野卑な身ぶりをしめして、彼女を笑いものにする男を憎んだ。
 「あなたは、変態だわ。みんなに見せつけるなんて」
 槐島はそれには答えず、人さし指をのばし、キャンドルを引きぬいた臀裂をめくるようになぶりだした。
 「ふふふ。おまえはおもちゃで、みんなの淫売なんだ。もっと奉仕しなけりゃならん。こうして、けつのなかまで自由にされるのは、どんな気持ちがする」
 ようやく指を引きぬいて、彼はうしろを振り返った。
 槐島の視線は、いかにも物欲しげな草野をとおりこして、悠然たる中国人鍼灸師のまえでとまった。
 それだけでじゅうぶんだった。
 彼の意を察した布袋(ほてい)腹の大男は、のっそりと祐美子に近づき、おもむろに穿いているものをすぎ捨てた。
 脂ぎった顔に似合わず、両の脛(すね)は引き締まっていて、しかも毛深かった。
 彼女は、巨体の饐(す)えた体臭を嗅(か)がされた瞬間、気絶しそうなおぞましさをおぼえ、かぼそい悲鳴をあげた。
 「叔父さま、やめさせて。わたし、気分が悪いの」
 鍼灸師は、がっしりした両手で、彼女の内腿を押しひらき、あっという間に、ねっとりした舌先を蛭のように吸いつかせた。
 「我慢すれば、すぐにとろけるような気分になる。陳先生に逆らわんほうがいいぞ」
 むれたゴムのようなポマードの臭いが、祐美子の鼻を衝く。
 にもかかわらず、下腹部は痺れたようで、とろとろ弱火であぶられるような微妙なむず痒さが、じわじわと溢れてくる。
 押しては引き、引いては軽く歯を当てられ、祐美子はその都度、腰を浮かせて、名伏しがたい感覚に翻弄されはじめている。
 「どうだ、お高い麻生家の奥さん。おまえ、舐められるのが好きで、好きでたまらないんだろ」
 彼女の耳もとで、槐島がささやきかける。
 祐美子は、股をすぼめてのがれようとするがむなしかった。
 (あああ、どうしたのかしら、こんなに感じるなんて)
 しだいに煽りたてられ、いまは堪えきれぬほどの羞恥のあえぎを洩らしはじめている。
 「言ってみろ。わたしは舐められるのが好きですってな」
 と槐島。
 祐美子は、眉をしかめ、目を閉じたまま、
 「………わ、わかりました。わたし、舐められるのが好きなんです」
 消え入るように答え、啜り泣いた。
 「よし。それでいいんだ」
 槐島は、きらめく髪の毛を愛撫し、しつこい鍼灸師のえりがみをつかんで、祐美子から引きはがした。


          第5章 はい、おしりを捧げます


 ある夕べ。
 きちんとネクタイを締め、スーツを着こんだ草野の運転する車が、西麻布のとあるレストランのまえでとまった。
 降りたったのは、ダークスーツに渋いネクタイをつけた槐島と、はなやかなカクテルドレスをまとった祐美子、それにシックな服装の喜与子である。
 「きょうは、好きなものをご馳走するぞ。草野、ウエイティングルームで待ってるから、おくれんようにな」
 日ごろ、吝嗇な闇金融のオニしては、珍しいことだった。
 車を駐車場に入れて、草野がレストランに姿をあらわすと、物静かなウエイターが四人を奥まったテーブルに案内する。
 個室風だが、優雅なパリの雰囲気があり、大きな円卓には、真珠色の光沢をはなつテーブルクロスが掛けられている。
 宵の口のせいか、まだ予約客はひとりも見えない。
 このレストランは、どうやら、槐島が融資に関わっている店らしい。
 「あと一時間ぐらいは、貸切(かしき)りみたいなものさ」
 槐島は、つねになく上機嫌である。
 祐美子は少しやつれて、かえって優艶さを増し、日に日に隷従の生活に馴らされつつあるようだった。
 「一応、コースでたのんでおいたが、ア・ラ・カルトは自由だよ。さあ、メニューを見たまえ」
 マスターはなぜか挨拶にこないが、まず型どおりのオードブルが運ばれてきた。
 キャビア、シュリンプ、フォアグラなどをあしらったカナッペのほか、新鮮なオイスターの粒が大きい。フランスワインは白である。
 「乾杯といこう。いつも、ご苦労さん。さあ、遠慮なくやってくれ。どうだね、祐美子、この店の感じは………。ミシュランで三つ星の出店だが、客を選びすぎるのが難でね」
 「すてきですわ、叔父さま」
 祐美子は、臆(おく)したように答える。
 麻生家の先代が元気だったころ、彼女は家族でよくディナーにでかけたが、槐島の毒牙に陥ちてからは、数回の外出しかしていなかった。しかもいまははなやかなドレスはまとっていても、その下にはショーツすら穿くのをゆるされていない。
 (吝嗇(けち)で、強欲の叔父が、なぜ)
 祐美子は、部屋を出るときから、槐島が何かたくらんでいるのを感じている。だからといって、どうなるものでもない。
 考えてみると、このレストランは、どことなくおかしな感じだった。
 正装したウエイターは五人もいるのに、決してテーブルに近づいてこない。
 そのうち、予約客が一組あらわれたが、彼らはずっと離れた席に座り、男ばかりのディナーのようだった。
 テーブルクロスは、たっぷりと大きく、床すれすれに垂れさがっている。
 (い、いやらしいわ)
 槐島の右手が、テーブルの下から、そっと伸びてくる。
 祐美子の左側に槐島が座り、右側に草野がいる。向かいあわせなのは喜与子だった。
 円卓だから当然なことだが、祐美子はなんとなくまわりが気になっている。
 ふだん高級レストランに行きつけてない喜与子は、このときとばかり、オイスターにレモン汁をかけ、フォークで気どってひとのみにしている。
 「社長、さすが本場のワインはちがいますな」
 草野は紳士ぶって、落ちつきはらっているが、隙あらば槐島に気づかれぬように、祐美子のおしりをいびりたがっているようだった。
 槐島が、カウンターに屯(たむろ)しているウエイターに向かって指を鳴らすと、まもなく、見るからに大きなスープ・チュリーンが運ばれてきた。
 ウエイターひとりでは、とても持ちきれぬような器に、澄んだコンソメスープがなみなみとみたされている。
 「そこに置きたまえ。サービスはこちらでやるから」
 ウエイターを去らせた槐島は、自分から左回りに、喜与子、草野の順に、それぞれレドルで一、二杯をめいめいのスープ皿にとりわけさせた。
 祐美子も、レドルをつかもうとすると、
 「お待ち。おまえはおなかがすいてるだろうから、とくにたっぷり飲ませてあげよう」
 槐島はうす笑いを浮かべ、草野に向かって顎をしゃくった。
 万事心得きった表情で、猪首の運転手は席を立ち、両手でスープ・チュリーンを持ちあげ、垂れ幕のようなテーブルクロスをめくりあげている喜与子の側に行く。
 「こぼさないように、その下に置け」
 槐島がテーブルの真下を指す。
 祐美子は、唇をかみしめて、うなだれたままだった。
 彼女は、今朝から一度も食事を与えられていなかった。
 草野たちは、香りのいいコンソメスープをわざとふうふうしながら、おいしそうに啜っている。マナーを無視するのも、何か魂胆があってのことだろう。
 祐美子は、生唾(なまつば)を思わずのみこんだ。
 オードブルをとろうとすると、その都度、槐島に制される。
 「スープが欲しいんだろ。あまりワインをのまないじゃないか。こういう店では、年代ものに敬意を表すべきだと、麻生家では教えなかったのかな」
 いじ悪く槐島は言い、椅子からのりだすようにして、そっと祐美子の細腰を抱きかかえた。
 「どうだね。テーブルの下に這いつくばって、スープをのんでみては」
 「いいえ、おなかはすいてませんわ」
 「ほう、やせ我慢する気か。わしが、どうしてものめと言ったら………」
 「そんな………あさましい真似はできませんわ」
 「奥さまは、旦那さまのめす犬じゃありませんの、さっさとおやりになったら」
 喜与子が、知的な目もとをゆるめてあざ笑った。
 「いまさら気どることはないさ。鍼灸(はり)師にしゃぶりたてられて、気をやった奥さまだからな。はらわたの奥まで舐めずりまわされちまったくせに、恰好つけるのはよせよ」
 自分のものにできなかった腹いせで、草野はづけづけと言う。
 「ドレスが汚れるから、おしりをまくってテーブルの下で四つん這いになり、スープがさめないうちにすっかりのみほすんだ」
 槐島は、右手をのばして祐美子の髪の毛をつかみ、左手でテーブルクロスをめくって追いこんだ。
 (犬みたいな真似をさせないで………)
 祐美子は悲鳴をあげようとしたが、この光景に気づいているはずのウエイターたちは、遠くでそ知らぬ顔をしているのである。


 育ちがよく気品のある祐美子は、いまや、双臀をうごめかせ、ピチャピチャとあさましく音をたてながら、コンソメスープを啜っている。
 犬這いのほのじろく、なまめかしい姿態は、槐島の屈折した劣情に、より拍車をかける。
 「草野、もっとおいしくのめるように、味つけをしてやらんかね」
 槐島がなにを考えているのか、えげつない運転手はすぐわかった。
 「こんなものでも、いいですかい」
 草野は、片方の靴をぬぎ、皮革の臭いと足指の汗と脂がしみこんだ靴下を引きおろそうとする。
 「いいとも。そのままズブリとな。ぎとぎとした移り香が、スープの味をぐっと引きたてるだろうさ」
 草野は、脂臭にまみれた靴下ぐるみの爪先を、ずぶずぶスープ・チュリーンのなかにつけこんだ。
 祐美子は、
 「ああっ、汚い。かなしいわ」
 と、息を喘がせながら、スープを啜りつづける。あまりの空腹で、口にするものなら何でもよかった。
 「ちょっとした温浴の気分だぜ」
 草野は、踵までつかって、ぱしゃぱしゃスープをかきまわした。
 その度に、硫化水素のような臭(にお)いが徐々にとけこみ、なんとも名伏しがたい味覚となって、祐美子をくるしめる。
 とはいえ、どんな悪臭でも、時がたつと、しだいになじんでくる。
 「上品ぶった奥さまも、こうなったはごみためをあさるめす犬とかわりないな。ほら、靴下ごと、おれの足の指を一本、一本、しゃぶりつくせよ。さもないと、こんどはポタージュに変えるぞ」
 「くやしいわ。み、みじめだわ」
 祐美子は、ひいーッ、と声を放って歔(すすりな)いた。
 中腰になった槐島は、彼女の双臀をおったてるようにして、両腿のつけ根に指をさし入れ、悩ましい陰毛のむらがりをわけて秘裂をさぐった。
 「声をだすな。なんだ、じっとり潤んでるじゃないか」
 腫れぼったく疼くその部分は、すでに蜜をにじませ、槐島は膝を使って、さらに祐美子の両腿をひらかせ、ズブリと指を膣粘膜の深みにすすめた。
 「こんなにからみついてくる。おまえ、こんなところでもよおしてるのか」
 「し、知りません」
 祐美子秘裂は、ひそかな疼きを槐島に悟られ、いっそう羞(は)じらって、ひくりと収縮した。
 (くそっ。楽しみを独り占めしやがって)
 槐島の憑かれたような粘膜いびりを横目にしながら、草野は舌打ちしたい気持ちだったが、なにしろ、片足をスープ・チュリーンにつけているので、自由に身動きができない。
 いっぽう、向かいあわせの喜与子は、おおっぴらにテーブルの下をのぞきこみ、無遠慮に祐美子の胸もとに手をさしこみ、紡錘形のなまめかしい乳房をにぎり締め、ねちねちと乳首をいびっている。
 「おさねがこんなにふくらんで、ピクピクしている」
 槐島は、雛のくちばしのような小突起を指の腹でころがし、ねばねばする膣前庭全体をなぶりまわす。
 「あああっ、もうだめ。い、いや。くうっ。いたずらしないで」
 みだらな花芯責めに、しだいに祐美子の喘ぎはくぐもり、ついに薦骨部(せんこつぶ)のくぼみがうねりだし、苦痛とも愉悦ともつかぬ感覚がせめぎあい、スープを啜る舌の動きがにぶくなる。
 「はあーッ、つらいわ。叔父さま、わたし、参りそう」
 そのとき、ふいに槐島の指の動きがとまった。
 カーペットを踏む足音と花ずれが、かすかに聞こえてくる。
 犬のように這った恰好のまま、祐美子がテーブルクロスの隙間から眺めてみると、新しい予約客があらわれ、近くの席についたところだった。
 家族らしく、かなり裕福そうな若夫婦と子どもの三人連れである。
 「ぼく、エスカルゴと鴨のローストがいい」
 「まあ、伸夫ったら、いまからグルメぶっちゃって」
 ややかん高い女性の声を聞いたとき、息がとまるほど驚いた。
 横浜の名門女子高でクラスメイトだった、富山登見子の声だったからだ。
 老秘書の胡桃山からの伝言では、たしか先週あたりに、お見舞いの電話があったはずだった。
 高校時代の登見子は、やせっぽちで、いくじのない少女だったが、祐美子にお熱をあげているのは、クラスじゅうに知れわたっていた。
 それだけに祐美子が卒業し、東京の男女共学の大学にすすんだとき、もっとも悲しんだのは登見子だった。
 しかし祐美子よりも結婚が早かった彼女は、異性を知ってからは正常な性意識をもつようになり、祐美子が麻生家に嫁いだとき、大喜びで祝電を打ってきたほどだった。
 その親友が、いま、同じレストランにいる。祐美子はなつかしさで、
 (登見子さん!)
 と呼びかけたかったが、すぐにわが身をかえりみた。
 (恥ずかしい!)
 こんな犬のような恰好で、陰湿な辱めを受けている姿を、級友にさらしたくはなかった。
 「どうしたんだね、おまえ」
 めざとい槐島は、彼女の様子にすぐ気づいた。
 どうやら、こんどの客たちは、祐美子の知り合いらしい。
 (どうしてやろうか)
 槐島は危険を感じたが、それ以上に嗜虐的な思いに駆られた。
 もし、祐美子の醜態を、彼らに見せつけてやったら、どんな結果になるだろうか。
 それに、彼女が急に消沈したそぶりに変わったのもゆるせない。
 「おまえ、あの連中を知ってるんだろ。男のほうか、それとも」
 槐島は、しわがれ声でささやいた。
 「どっちにしても、おもしろいな。いっそ、そのままの恰好で紹介してやろうじゃないか」
 槐島は、ぴしっと祐美子の臀部をたたいた。
 それから羞恥と恐れで緊張している膣ひだを指でまさぐり、Gスポットのあたりをなぶるように押し揉みする。
 「おねがい、絶対にそんなことしないで………」
 「お体裁ぶるのか。こんなになってても」
 「叔父さまの言うとおりにしますわ。だから、これ以上、恥をかかせないで」
 「それじゃあ、感度のいいとこをしめしてみろ。ちょっぴり、声をあげてな」
 槐島は、祐美子が完全に突きくずされて切ない喘ぎを洩らすまで、執拗になぶるつもりで、悩ましい深奥部に二指を使った。
 「ああン、いい気持ちよ、叔父さま」
 「もっと変わったことを言えよ。おまんこがとろけそうとか」
 草野と喜与子は、神妙な表情で、苦笑をこらえている。
 「あうっ、祐美子、もうだめっ、とろけちゃう」
 彼女は、埋もれ火のような性感に火をつけられ、見えない炎がめらめら燃え、あつい蜜がとろりと溢れでるのを感じた。
 「この姿をあの夫婦ものが見たら、何と言うか。ためしてみようじゃないか」
 「叔父さま、おねがい、やめて」
 「それなら………」
 槐島は淫らがましく、なにごとかをささやいた。
 祐美子の誇りはそれまでだった。彼女はふいに濡れそぼった。
 「ええ、いいわ。それでゆるしてくださるんなら」
 「なんて可愛い花の蜜のようなからだなんだろ。おまえ、ぜったいに逃げようなんて思うなよ」


 レストランでの一件は、槐島にとって一つの賭けだった。
 もし、あのとき、祐美子が登見子たちに助けをもとめたら、この禿鷹のような辣腕家も法の網に怯えなければならなかっただろう。
 麻生家の令夫人がそれをしなかったのは、彼女の被虐性の血のせいだ、と槐島は思いたかった。
 それは祐美子の母、芙貴子に思いをかけたときから、彼が念じつづけてきたことだった。
 あの誇り高い葩沢芙貴子のかわりに、その娘を徹底的に仕込んでやりたい。
 二日後の午後おそく。
 槐島は、いささか酩酊して祐美子の部屋を訪れた。
 取引の場では、一滴のアルコールも口にせぬ槐島は、一面、きわめて小心な性格である。狡猾かと思えば、臆病。傲慢かと思えば、自分のためなら、どんなにも卑屈にふるまえる人間である。
 祐美子といるとき、酔うことは珍しくないが、時間が早すぎるように思えた。
 案の定、槐島は、細長がい包みをかかえており、祐美子は、その中身がひどく気になる。
 「叔父さま。なにが入ってますの」
 「ご主人さまと呼ぶんだ。質問はいっさいゆるさんからな」
 槐島は、些細なことで、急に威丈高になる。
 「おまえには問いかける権利など、ありはせん。わしが話したいときだけ、答えてやる。あとは知りたがるな」
 祐美子の気持ちは沈んだ。
 理不尽な後見人との秘密の生活は、ますます堪えがたいものになっている。
 槐島を知れば知るほど、淫らな肉の結びつきが忌(いま)わしく感じられる。
 (ああ、あなた、どうして事故など起こしちゃったのよ。はやく癒(なお)って)
 祐美子の思いは、やさしかった夫にもどり、さらに、どんな場合にも毅然として、しかも社交的だったママをなつかしんだ。
 「なんだ、その恰好は………。早く着ているものをぬぐんだ。部屋にいるときは、いつもネグリジェだけにしろと言っただろ。色気のないズボンなど穿きおって………。なんだ、下着もつけてるのか。武装堅固か、貞淑ぶって………。どうせ、ぬがされちまうのに」
 この老人からは、およそ同情心は期待できない。
 祐美子は、捨て鉢な気分になって拒みたかったが、どうせ結果は知れている。
 「早くせんか、おまえのおまんこが夜泣きしてただろうが」
 槐島は、荒々しく彼女のからだに手をかけてくる。
 「さわらないで。自分でぬぎますわ」
 それがせいいっぱいの抵抗だった。
 祐美子がセーターをぬぎ、パンツのベルトをはずすと、槐島は、せかせかと上衣をぬぎ、ネクタイをはずしはじめた。
 「ブラジャーも、パンティもとるんだ」
 ふたりがすっかり生まれたばかりの姿になると、槐島は、手みやげの包みをあけた。
 なかには、見るからにおぞましい黒色の鞭がおさめられていた。
 「こいつは高かったんだぞ。バークレイの鞭といってな、貴重な骨董品だ。うれしいだろ、これでかわいがってもらえるんだから」
 槐島はみがきぬかれた鞭をつかむと、淫靡な笑いを洩らし、五、六回、宙で鳴らした。
 そのしぐさは子どもじみていた。
 より早く鞭を鳴らすごとに、祐美子は怯えてきた。
 槐島は、同情ぶかい男でも、すばらしい男性でもないが、これまで暴力で傷つけるほど加虐的ではなかったはずだった。
 ところが、さらに数回、鞭をふるうと、異様な興奮状態で、彼女をねめまわした。
 目の前で、ヒューッと、鞭が鳴った。
 「おねがいだから、乱暴しないでちょうだい」
 祐美子は哀願した。
 「叔父さまのために、つとめてきたはずよ。なんでも言うことを聞いてるのに、まだ、わたしをいじめる気なんですの」
 「ご主人さまって、呼べったら。くそ忌々しい泣きごとはやめろ」
 槐島は、いらだっていた。
 「そんなたわごとはたくさんだ。一度でもおまえは、すすんで身を任せたことがあるか。きょうこそ、この鞭で徹底的にしごいてやる。いつでも、おまえのほうから求めるようになるまでな。さあ、うしろ向きになって立ってろ」
 ぴしっ。
 槐島が、むっちりした臀部に、軋むような衝撃を走らせたとき、祐美子は、顔から血の気が引いてゆくのをおぼえた。
 「ひいーッ。いたいわ。何するの、やめてください」
 毒蛇のようにおぞましく鞭が肌にくいこんだとき、祐美子はあさましく身をくねらせた。この責め苦を逃れるすべはない。
 「もっと泣いてみろ。反抗すると、よけい痛い思いをするぞ。立ってるのがつらけりゃあ、ベッドのふちによりかかって、けつをあげろ。そのほうが楽だぞ」
 祐美子は転ぶように走って、ベッドのふちにすがりついた。
 「ご、ご主人さま。ひどいことしないで。おしりを捧げますわ。だから、やさしくして」
 彼女は打たれるまえから、うめいて腰をよじった。
 (わたしは奴隷なんだわ。仕方がないのよ、あなた………)
 「すなおにしていれば、手かげんしてやるぞ、ほら」
 ぴしりっ、ぴしりっ、
 一撃ごとに鞭がしなって、きりっと熱い衝撃が走り、みるみる双臀の一部が裂け、幾すじもの血のしずくがにじみだす。
 打ち据えられた箇所は、灼けるように疼く。
 「ああっ、また。なんて下劣なの。このままでは死んでしまうわ」
 祐美子は、恐怖のあまり、泣き声をたてた。
 打たれぬうちから、気品ある腰をうごめかせ、かえって挑発的な悩ましさを引き起こすのである。
 「ほんとうは、こうされるのが好きなんだろ。おまえは、完回に支配されたがっている。自分では、むりやりだから仕方がない、って思いこみながら………。すべため、おまえには考える権利もない。ただ、わしを喜ばせればいい。その証拠を見せるんだ」
 鞭を脇にうち捨てると、槐島はがばとしがみつき、指先でぐりぐりと臀裂をもてあそんだ。
 いつもならうめき声をたてるのだが、唸りを生ずる鞭の恐ろしさが先立って、彼女はほっとする思いだった。
 なまめかしい喰い締めを指先に感じ、槐島は、根もとが怪物のようにそそりたち、亀頭冠がひくつくのをおぼえた。
 「濡れてきたな、ここが」
 「う、嘘よ。そんな」
 槐島は、次の行為にうつる潮どきだと判断した。
 「口紅はどこだ。きょうは、きれいに尻化粧してやる。おまえの大事なところは、わしの宝ものだからな」
 槐島は、贅沢な化粧台の抽斗から、ディオールのスティックをとりだした。一本五、六千円もするパステルカラーの口紅には、香料が混じっていて、祐美子の臀裂に美しく化粧がほどこされてゆくにしたがい、ローズ系の気高い香りがただよってくる。
 「これでよし。ベッドにのぼって四つん這いになれ。鞭の効果をためしてやるからな」
 「おしりのまわりがズキズキして、裂けるみたい。きちんと抱いてください、ご主人さま」
 「いや、こっちのほうがいい」
 祐美子をうつぶせにし、臀部をたかだかとかかげさせた槐島は、両手でなまめかしい太桃をおしひらくと、思いきりぎゅっとにぎり締めた。
 またしても、祐美子は痛みをおぼえたが、苦痛を言いたてようとはしなかった。
 尻化粧を眺めながら、鰓の張ったほこ先をぬらぬら臀裂で遊ばせる。
 「楽にしてろ。はじめてじゃないんだから」
 ぬったりと左右にゆすり動かす。
 「いやだと言っても、ゆるしてくれないのね」
 昴ぶった亀頭冠が、じわじわと狭隘(きょうあい)な通路におし入ると、
 「だめっ。つよく動かさないで。き、きついわ。むりにしないで」
 「おまえは運のいい女だ。わしみたいな情夫に恵まれたとはな。こんなにねじこむのがうまい男は、めったにいないぞ」
 槐島は、猫撫で声をだし、きっちりした内部で呼吸するかのように、王冠部を伸び縮みさせた。
 「こ、腰がぬけそうですわ」
 祐美子のからだが小刻みにふるえはじめると、尊大な後見人は、口髭で背すじを愛撫し、両手をまわして、胸乳を揉みしだく。
 すわすわとにぎり締めるほど、槐島は熱いほとばしりの期待に、緊張感がたかまった。
 「おお、気がいっちまいそうだ。もっと締めつけろ」
 「いや。抑えて。もう………。だめよ。強くしないで。ひ、ひどいわ」
 最後の急ピッチに、祐美子は激しく泣きじゃくった。
 「そんなに突きあげると、ウンチがもどってきそう」
 「これか。突っかえるのは。だいぶ、溜めこんでるな、恥知らずめ」
 意味もなくののしられて、祐美子は、いまにも気がいきそうになった。
 「しようがないお嬢ちゃんだ。ほら、ぶっとい浣腸だよ」
 槐島は、締まる感覚に、ますます昴り、奥へ奥へとつきすすむ。
 「もう、だめ。わたし、どうにかなってしまう。あ、あついわ。あうう、いっくう」
 「いくじがないな。まだ、これからだというのに。おお、なんて締めつけようだ。わしも………」
 槐島は堪えきれずに、狭隘な肉路に精を激しく射こんだ。
 へとへとに打ちのめされて、祐美子がズキズキする痛みに気づいたのは、やっと引きぬかれてからだった。
 膣痙攣を起こしたかのように、しばらくは肉茎をくいしめたまま放そうとしなかったらしい。
 「人妻なのに、あばずれみたいに気をやりおって………」
 後見人のあざけりを耳にしながら、祐美子は肩で呼吸をし、うつぶしたまま顔をあげようとしない。
 槐島がベルを押すと、例によって家政婦の喜与子がタオルを持って入ってくる。
 「旦那さま、ご注文のスペイン・プロープがとどきました。おためしになりますか」
 恥知らずのインテリ家政婦は、タオルを一緒に、見るからにグロテスクな電動式張り型をちらつかせた。
 外国製で『ナーサ』の名称でマニアに愛用されているもので、タイラクを比べると、メカニックなだけに、効果抜群だといわれている。
 「ひと休みしてから、それを使ってみよう。梶原さん、あんたは、なかなか役だつ人のようだな」
 「ありがとうございます。これというのも、こんどの奥さまがとてもお美しいからですわ。ところで、女性というものは、嬉しすぎると、そら涙を流したり、気絶したりするものですから、ご注意あそばせ。わたしは、そんな奥さまがいとしいのですわ」
 「ほう、まだ、責め足りんというのかね」
 「これをお使いになるまえに、奥さまのコンディションをととのえておあげにならなくちゃあ」
 喜与子の提案は、祐美子の排泄衝動を逆手にとったらいかが、というのだった。
 水分をどんどん摂らせて、そのあと電動式張り型で膀胱を刺激したら、絶体絶命、みじめな屈服を露呈することになるだろう。
 「そこで、奥さまの潜在意識を引きずりだして、確認させれば、もっと従順な性格におなりになりますわ」
 「たしかに、ためすだけの価値はありそうだね」
 槐島は、ベッドにぐったりと打ち臥している祐美子の裸体を眺めおろした。
 そのころ、彼女はおぞましい夢を見つづけていた。
 次々に水晶のような透明な液が、目の前にしたたり落ちてきて、彼女は思わず舌を突きだしてしまう。
 ところが舌にふれたとたん、それは粘った汚辱のゼリーとなり、肝油のように苦く、とうていのみくだせそうもない。
 いっぽう、じわじわと狂おしい感覚が羞恥の極点からわき起こり、肩から首、首から後頭部に向かって、まるで胃検査のバリウム溶液のように、少しずつ固まってゆく。それが喉をみたし、口腔いっぱいに溢れ、息もできず、身動きもままならなくなってくる………。
 「こいつめが、いつまでも狸寝入りをしおって………」
 祐美子が息ぐるしさにめざめると、いつのまにか、槐島の怒張が口のなかにめりこんでいる。
 前ぶれもなく扁桃腺を不意打ちしたので、祐美子は、悪夢の感覚に怯えて、意識をとりもどしたのである。
 (またなの。いつまで苛むつもりかしら。ああっ、かなしいわ。こんな悪党に玩具(おもちゃ)にされて)
 口腔を荒々しく辱められるたびに、祐美子は被虐的な感情が疼いてくる。
 そのとき、秘唇にかすかな違和感をおぼえた。陰毛のむらがりがかきあげられ。敏感な小突起を温かく湿った舌先が舐めあげている。
 家政婦の喜与子が淫靡なおしゃぶりをしかけているのである。
 (な、なにをするの。女同士なのに、いやらしい真似をしないで)
 祐美子は口走ったつもりだが、醜怪な肉茎にふさがれているので、まったく言葉にならない。
 「いいか。わし専用の淫売になるんだ。一日も早く麻生家の令夫人だということを忘れてな」
 槐島は年に似あわず、容赦なく抜き出ししながら、時として奥深く突きたてようとする。
 「女の生きる道は、服従。そう服従のみが婦徳の鑑(かがみ)だ。わしが立派に仕こんでやる」
 槐島の言いぐさは、いつも同じだった。
 この男は、いったい何を人生の支えにして、永い歳月を過ごしてきたのだろうか。
 祐美子は、抽送の息ぐるしさのなかで、頑に目をつぶり、削いだように険しい老醜の顔を思い浮かべた。
 彼に、愛情はあるのだろうか。
 ひとつだけたしかなのは、槐島一起は、一度手に入れたものは、決して手放そうとしない人間だということだった。
 「旦那さま、すっかり用意ができましたよ」
 異様にうきうきとした喜与子の声が、祐美子に新たな不安をかきたてる。
 槐島がこわばりを引きぬいて、麻生夫人をベッドに引きすえると、祐美子は声を殺してむせび泣いた。
 手を変え品を変えての淫ら責めで、彼女は疲れきって、軽いヒステリー症状を起こしかけている。
 「まだわかっておらんようだな。自分ではみとめたがってないが、おまえは、ほんとうはこんなことが好きなんだ」
 「そ、そんなことありませんわ。あなたのひとりよがりよ」
 祐美子は放心したように、ぺたりとすわりこんだが、それでも、涙に濡れた顔をあげて、せいいっぱい反抗した。
 「あなただと………。まあ、叔父さまよりはよかろう、いまに、ご主人さまが習慣になるまでは。わしとひとりよがりかどうか、こんどはこれを使わせてもらうことにしよう」
 槐島は、欲情に血走った目を光らせ、醜怪なスペイン・プロープをとりあげ、スイッチを押した。たちまち、
 ジジジジーッ、と威圧する音をたてて、毒蛇が鎌首をもたげるように、いやらしくうごめきはじめる。
 「ああっ、いやっ。そんなのきらいよ。入れちゃいや。早くしまって………見たくもないわ」
 祐美子はヒステリックに泣きじゃくり、怯えたように顔をおおってしまう。
 「そんな聞きわけのないことをおっしゃるものじゃありませんよ。旦那さまが、せっかく親切にしてくださるんだから、感謝しませんとね」
 妙な薄笑いを浮かべてなだめる喜与子は、これから起こることを期待してか、妙に顔をあからめている。
 「とてもむりよ。この前で、もうこりごり。電動だと、なおさら、そんなものを入れられたら、わたし、怪我をしてしまう」
 「ふふふ、何か勘ちがいしているようだね。これを使うのは、いつも、大きなものをひりだしてる場所なんだ。そこなら堪えられぬことはあるまい。梶原さん、彼女を浴室に連れていって、よく練れるように、じっくり洗ってもらいたい。マッサージの要領でな」
 興味津々の喜与子に肩を抱かれ、祐美子はうなだれて、浴室に向かった。
 みがきあげた洋装に座らされると、喜与子は温度を調節して、温かいシャワーを祐美子に浴びせはじめた。
 もてあそばれたからだに湯しぶきはここちよかったが、乳房や、濡れそぼつ陰毛まで、家政婦になぶられるのは堪えがたかった。
 「いいわ。自分で洗うから。あ、そこ、さわらないで」
 「いいえ。旦那さまのいいつけですから。わたしだって、こんなことをするのは」
 ほんとうは嫌なのだ、という表情を浮かべながら、喜与子の指先は執拗だった。
 ねちねちと、両腿のつけ根をつまむように石鹸の泡をなすりつけ、たくみに肛門に指を近づけてゆく。
 「奥さま、もっと前かがみになって、おしりを突きださないと、きれいに洗えませんよ。だいぶ炎症を起こしているようだから、あとで座薬をお入れしますからね」
 「も、もう、けっこうよ」
 はれたおしりを、ねっとり撫でられると、祐美子は困惑と嫌悪のあまり、思わず腰を浮かせ気味にする。
 その虚に乗じて、泡だらけの家政婦の人さし指と中指が、ぬるりと入ってくる。
 (あっ、ああっ)
 淫らな喜与子の指の動きにつれて、祐美子はしだいに汚辱の快感に打ち負けそうになり、ハッとして向こうに押しやる。
 「なによ、これくらい、いいじゃないの。はじめておしりにさわられるわけじゃあるまいし。もっと太くて、いやらしいものをのみこんだくせに。いまに、もっと、もっとって、ねだるようにしてあげますからね」
 喜与子は、祐美子だけに聞こえるように、小声で毒づいた。それから、
 「さあ、奥さま。傷のお手当を致しましょう」
 いかにも仕事熱心らしく、鏡棚に置いた座薬を取りだし、うむをいわせず、柔媚な排孔におしこんだ。
 「あっ、冷たいわ。自分で入れますから」
 この座薬は、見た目はよく似ているが、ほとんど反対の効用を持つものである。
 そうとも知らぬ祐美子は、瞬間的な清涼感が快かった。
 「わたしの仕事を邪魔をしないで。旦那さまに雇われてるんですから」
 声をとがらせる喜与子は、やがて、この媚薬がじわじわと効きだして、はげしい痒感におそわれる人妻が、もどかしげに腰を振りたてるさまを想像すると、得もいわれぬ恍惚感を覚えた。
 催淫剤の効き目はいちじるしい。
 祐美子は、家政婦が誤って揉みほぐすように、会陰から肉びらの下べりをいびりたてているうちに、あやしい感覚が疼きだし、
 「ひっ。だ、だめよ、そこはいやっ」
 浴槽のふちにつかまりながら、息づかいを昴ぶらせる。
 「まあ、おかわいそうに、そんなに痛むの。それとも、奥さまは感じやすい体質なのかもしれないわね」
 喜与子は、嵩にかかって、ずけずけ言う。
 「そ、そんなんじゃないわ」
 祐美子は堪えようとするが、つい呻きが洩れてしまう。
 「やせ我慢は、おからだに毒ですよ」
 喜与子は大胆になって、背後からおおいかぶさり、指を引きぬくと、ふいにかがみこんで肛門を唇で舐めずり、舌先をとがらせて、強く押しこんだ。
 「あむう、エッチ。いやだったら」
 祐美子はショックを受けて、からだを毬(まり)のように縮めた。
 「どうした、まだなのかね」
 寝室から待ちくたびれたような槐島の声が聞こえる。
 「はい、ただいま」
 喜与子は、にわかにとりつくろって返事をした。
 癇癖の強い槐島が、ベッドに越しかけて、じりじりしている様子が手にとるようにわかった。
 「さ、奥さま、早く」
 浴室からおしだされた祐美子は、足もとがおぼつかない。
 かいがいしく彼女のからだをタオルで拭く喜与子は、情火のなごりで、まだ顔がほてっている。
 「待たせるじゃないか。ベッドにあがれ。四つん這いになって、けつをあげろ。検査してやる」
 言われるままに、祐美子は高々と双臀をかかげた。
 槐島はうしろから鼻を近づけ、犬のように臀裂を嗅ぎまわっている。
 「すっかり、きれいになったようだな。新規まきなおしというわけだ。おまえはまだ、男にかしずくことの意味がわかっとらん。この器具がどんな影響を与えるか、ためしてみるのも一興だろう」
 槐島は、たっぷりゼリーを塗りつけると、すぐにスイッチを入れ、弱のほうに切り換えた。
 蚊の鳴くようなメカの音が聞こえはじめる。
 できればストレートな方法で淫具を突きたててやりたかった。が、それでは楽しみが少ない。いま欲しいものを、すっかり手に入れてしまうと、あとは惰性になってしまう。祐美子を、ぜったい逃さぬようにするには、じっくりからだで教えこむことである。
 かつて葩沢芙貴子(はいざわふきこ)にはねつけられた槐島は、その令嬢を完膚なまでに蹂躙し、犯しつくすという妄執にとらわれている。
 「力をぬいて、できるだけ息をゆっくり、長く吐くんだ」
 バイブレーターが、優美に潤んだ排孔をきりさくようにねじこまれたとき、祐美子は、
 「ううっ………」
 と眉をしかめた。
 「ひ、ひどいことするのね。こんなことをして恥じないなんて、あなたは最低の下司だわ」
 槐島にとって、彼女のののしりは、快い音楽である。
 (もっと憎め。そのほうが、いかされたときの快感が深いぞ)
 彼は、右に左に、たくみに淫具をあやつった。
 「梶原さん、ちょっと代わってくれんかね」
 しばしば淫具を締めつけるような反応をしめす祐美子の喘ぎを見ているうちに、槐島は堪えきれぬほどの昴ぶりをおぼえてきたのだろう。
 「ようございますとも。でも、旦那さまも、罪なかた、まだ若いわたしにこんなことをさせるなんて」
 喜与子は、インテリっぽくほほえんで、“弱”から“強”に切り換え、瞬間的に、祐美子にかな切り声をあげさせる。
 「ああン、人でなし。いや、強くしちゃあ。あう、き、気持ちいい。だめ、いやだったら」
 槐島は、根もとからしごきあげ、獣脂のようにてらてらする亀頭冠を、祐美子にむりやりふくませる。
 「やめて。あなたも汚いわ。さっきもしてあげたのに」
 「年をとると、接して洩らさず。小出しにしてるから、何度でも勃(た)つんだ。いいから、わしを楽しませろ」
 「どこまでやったら気がすむの。わたしは女よ。玩具じゃないわ」
 「そんなことを言える立場か。そうだ、晋治くんが近く再手術を受けることになったそうだ。またまた、出費だ。麻生家は、いつまでたってもわしらに迷惑ばかりかけおる」
 祐美子は嗚咽しながら、なまめかしい舌を動かした。少しでも休むと、槐島は髪の毛を引きすえる。
 そのたびに、彼女はのけぞったが、その苦しみの表情を見ているだけで、彼は小気味よさを感じ、いちじるしく威力を増してくる。
 しかも、家政婦がたくみに、祐美子の臀裂を責めたてている。
 「感じはじめたらしいな。舌をからめて、すっぱ、すっぱ、吸いたてろ。こんどは、さっきより多くでそうだぞ。一滴あまさず飲みこむんだ。わしがいいというまでな」
 堪えきれなくなった槐島は、年に似あわぬ濃厚な体液をほとばしらせた。しかし、あとがつづかない。
 「待ってろ。もっとつづくぞ」
 槐島は、膀胱に力を入れた。射精のあとはたいてい尿意が起こってくる。年をとってくるとなおさらだった。彼は、
 ピュッ、ピュッ、
 とちびり、繰り返し悩ましい口腔に注ぎこんだ。一瞬、家政婦の手もとが引かれる。玩具を締めつける祐美子の収縮が強くなったからである。
 小水とも知らず、最後の一滴まで啜りこんだ祐美子は、ほっと息をつき、打ちのめされたように、からだを伸びきらせた。
 喜与子は、もっとつづけたかったが、槐島の表情のうちに、なにかいわれのない不快さが浮かんでいるのを見ると、分相応に、そっと持ち場を離れた。
 槐島の不機嫌さは、肩で呼吸する祐美子にもわかった。彼女をひき起こし、目をつりあげてねめつけたからだった。
 「この淫売。わしは、いつも麻生家に一目置いてたんだ。それなのに、おまえは堕落しきった人妻で、淫売以下の乞食淫売だ」
 「く、くやしいわ。こんな目にあわせたのは、だれなの。あなたこそ、根っからの悪党で、どうしようもないエロじじいだわ」
 「そうだとも、わしはそれをみとめてる。だが、なぜ、おまえは気をいかせるんだ。ほんとうは憎んでいながら、家のため、わしの言いなりになってるつもりか。じつに不純だ。汚らしい牝犬め」
 槐島は怒りを制しかねて、祐美子を殴りつけた。彼女はベッドの端まですっとばされ、鳴き声をたてた。
 「親にもぶたれたことがないのに、うす汚いあなたなんかに暴力をふるわれるいわれはないわ」
 「くそっ。いつもよがり泣きをするくせに」
 癇癪をつのらせた槐島は、力まかせに祐美子の喉を締めつけようとする。
 「人殺し」
 祐美子はかなきり声をあげて、ベッドからとびおり、あとずさりした。
 「叔父さま、わたしが悪かったわ。ゆるして。これ以上、ぶたないで」
 祐美子は、家政婦のうしろにかくれようとしたが、気の回る喜与子は、槐島の目に浮かぶ複雑な嗜虐性を察して、とっさに加担することに決めたのだった。
 「奥さま、いけませんわ。こんなにお世話になっていながら、心から愛されようと思わないなんて、ばち当たりもいいところですわ」
 「そのとおり、おまえは生きるに置しない、女のくずだ」
 槐島は、芝居がかってわめいた。
 「ぜんぜん生きるに置しない。なにひとつ与えようとしないんだからな。つまり、心の問題を言ってるんだ」
 「あんまりだわ。こんな目にあわせておきながら。わたしをここから出して。胡桃山さんを呼んでちょうだい。あの人に家のことを聞けば、なにもかもはっきりするわ」
 祐美子は、ぽろぽろ涙をこぼしながら、なおもつかみかかる槐島から逃れようと、必死に抵抗した。
 しかし、喜与子までも槐島の味方をして、彼女を手とり足とりして浴室に連れていこうとするので、本能的な恐怖をおぼえた。彼らは、つぎにシャワー責めをたくらんでいるのだ。
 「いやよ。ぜったいにいや。家に帰して」
 祐美子は引きずられながら、サイド・テーブルにペーパーナイフがあるのに気づき、瞬間的につかんで、槐島の腹に突きさした。
 刺しどころがわるかったのか、一言も発せずに槐島は床にくずおれ、それを見て祐美子はヒステリックに泣きだした。
 「まあ、たいへん。どうしましょ」
 こうなると、家政婦の喜与子は、海千山千である。
 槐島はぴくりともせずに、床に倒れ伏しているが、喜与子はす早くひざまずき、脈をとった。
 年齢のせいでショックを受けているものの、傷は思ったより浅そうである。
 第一、あまり出血もないし、ほんのかすり傷のようだった。
 しかし、こずるい家政婦は、この際、祐美子をこっぴどく懲(こ)らしめてやろうと思う。
 「奥さま、あなたは人殺しをなすったんですよ」
 その一言で、祐美子は気を失った。


          第6章 かわいい口で飲んでおくれ


 祐美子が失神からさめたとき、あたりの情景がいつもとちがうのに気づいた。
 部屋の様子は同じでも、首輪と、両の足首が鎖でつながれており、鎖の先はベッドの脚にくくりつけられている。
 「社長、目がさめたようですぜ」
 それは草野運転手の声だった。
 「すてきなネグリジェをお召しになってるのも気づかないようね」
 と喜与子の声。
 いつの間にか、ネグリジェに着がえさせられている。しかも、乳房とデルタ部分だけが完全にくりぬいてあって、彼女はつねに恥ずかしい姿をさらしていなければならない。
 「奥さまは、運のいいかたですよ。ふつうなら傷害罪でおおごとになるとこを、いっさい不問にするとおっしゃるんだから」
 「だが、ひととおり仕置きはさせてもらうからな。じゃあ、社長、いいですね」
 ベッドの頭板にもたれて、腹部を包帯で巻かれた槐島がいる。
 「向こうみずな女には、相応の詫びを入れてもらい、もっとすなおになってもらわなけりゃあ」
 槐島は、ちょっと言いかけたが、痛みのためか、すぐに渋面にもどった。
 「な、なにをするつもりなの。ほどいて、この鎖を。それに首輪も」
 徐々に状況がつかめるようになると、祐美子は泣き声になって、首輪をとろうとする。が、身動きするたびに、かえって刺すように痛くなる。
 「まあ、興奮するな。そんな目にあうのも自業自得だ。梶原さん、気つけにワインを一杯、この女に運んでくださらんか」
 「とっておきのホーガン・ラビットがございます。ちょっと甘口ですが、なめらかな口あたりですよ。さあ、グッとお飲みあそばせ」
 喜与子は、よく冷えたワインを持ってくると、ホイルを取り、栓ぬきの錐をねじこみ、ポンと引きぬいた。
 草野は、グラスがわりに銅製の大型漏斗をもちだしてくる。槐島にたのまれて、SMショップから買ってきたものである。むかし、アメリカ南北戦争のころ、この漏斗を使って奴隷女を責めたことがあるらしく、その模造品なのだ。
 大型漏斗とワインのボトルが運ばれると、
 「そんなに飲めないわ。絶対、いや。む、むりだわ」
 祐美子は必死に拒む。
 草野は容赦なかった。
 いきなり、彼女のうしろ髪を引っぱり、顔をあお向けにして大漏斗を口にくわえさせる。
 いやがって、祐美子が暴れると、喜与子は用意した洗濯バサミで鼻をつまんだ。
 なにしろ、鎖と首輪でつながれているので、祐美子の抵抗といっても、たかが知れている。
 「う、ぐぐぐっ………。ぷッ」
 たちまち、喉もと深く注ぎこまれ、二、三度むせたが、さすが若さであろうか、どうやらゴボゴボと飲みおわったようだった。
 「どうだ、すこしは正気づいて、これからすなおな気持ちになれそうかな」
 「社長、もう一本飲ませちゃあ。ワインは健康のもと、不眠症に効くそうだから、奥さまも、いまの境遇に悩まずにすむってもんじゃありませんか」
 「口がすぎる。それじゃあ、わしがいじめすぎるってことになるぞ。まあ、よかろう」
 二本目のボトルが運ばれた。
 祐美子はアペリティフや、デザートにワインを飲んだことはあるが、こんな大量はとうてい考えられない。
 「うぷぷぷ。く、くるしいわ。やめて、もう飲めない、たすけて」
 むりやり飲まされても、すぐダラダラとこぼしてしまう。
 祐美子の目がとろんとしてくる。
 アルコール度が強くなくとも、慣れないと、急速に酔いがまわってくる。
 彼女は、かすかな戦慄をおぼえながら、あたりを見まわした。
 「飼犬に手をかまれたとは、このことだな。薄情もの、いま、どんな気持ちだね」
 顔をしかめて、槐島が聞く。
 祐美子は、しだいに深まる酔いのため、額のあたりが汗で潤んでいる。とくに首輪をつけられた顎(あご)のあたりが汗ばんで息ぐるしい。
 しかし、女囚服に似たストライプのネグリジェをつけていても、夜光珠のような雰囲気の人妻は、槐島の情欲をかきたててやまないものがある。
 「はあーッ。喉が渇いたわ。叔父さま、お水をください」
 祐美子は、やるせなげなためいきを洩らして哀願する。飲み疲れて、何度も小さな生あくびをしだしている。
 「それじゃあ、酔いざましに、わしがおいしいスープを恵んでやろう」
 槐島は傷む傷口をおさえるようにしながら、ベッドから降り、祐美子に近づいた。
 「特製だからな。香草の匂いがするぞ」
 髪の毛をつかんで、むりに引き起こすと、蛞蝓(なめくじ)のような唇をおしつけ、たっぷり唾液をおくりこむ。
 いつもの祐美子なら、いやいやながら目をつぶって飲みこむのだが、きょうばかりは我慢できない。
 老人特有のメタンガスのような口臭に、思わず、
 「ぷっぷぷぷ。き、汚いわ。けだもの、変態」
 と吐きだしてしまったのだ。
 「とんでもないことをする奥さまだ。社長、きびしくお仕置きしなくちゃあ」
 運転手の草野がいきりたつ。
 インテリぶって気どっている家政婦は、これから何がはじまるかと、胸をわくわくさせて見守っている。
 「それじゃあ、とっておきのビーフ・ティーを恵んでやろう。といっても、この部屋では、たっぷりごちそうできん。浴室でふるまってやろう」
 槐島の口調はおだやかだった。
 傷を負わされた後見人は、内心、激怒しているにちがいない。それが異様なやさしさをしめすのだから、祐美子は、ひどく不吉な予感がする。
 逆らっても、どうなるものでもない。
 祐美子は、首輪と足の鎖をとかれ、かわりにうしろ手に革のハンドカフを掛けられ、浴室に運ばれた。
 「草野、浴槽に蓋をして、わしを、その上にあげてくれ。よし。もう一度、牝犬に漏斗をくわえさせろ」
 槐島の意図を悟って、祐美子は恐怖の色を浮かべた。
 「どうするつもりなの。悪い冗談はやめてください。ベッドに連れていって。おっしゃるとおりにするわ。おしりだって捧げますわ」
 彼女の狼狽ぶりを知って、槐島は、圧倒的に力がみなぎるのを感じた。
 さあ、これまで辛抱していた甲斐があったというものだ。
 じつは、祐美子が意識をとりもどす前から、彼は尿意をこらえていたのだった。
 「こわがることはない。手かげんしてやるからな」
 年をとると、必然的に前立腺の傷害が起こり、膀胱がゆるみがちなものだが、槐島はじっと堪えつづけていたのだった。
 しかし、祐美子にとっては、悪夢のような汚辱の現実だった。
 化粧を落としても、気品となまめかしさの匂う麻生夫人には、舌をかみきって死にたいほどの地獄の責苦である。
 だが、晋治や、かわいい晋也のことを思うと、彼女の決意はにぶった。
 「いいな。豆を煮だしたようなにおいがするが、栄養分はあるぞ」
 甲斐は、はじめはチョロチョロと、ささやかに放出した。
 反射的に、祐美子は息をつめる。
 「さあ、おまえ、かわいい口で飲んでおくれ」
 うす黄色のカクテルのような小水が、堰をきったように漏斗に注ぎこまれ、祐美子はむせて吐いた。
 また飲みこむ、しかし、きらきら泡を光らせるものの、豆を煮だしたような、むれた臭いに耐えきれず何度も吐きもどしてしまう。
 脳がかきむしられるように苦しい。
 嘔吐しながら、祐美子は、ぽろぽろと涙を流した。
 (あなた、どうして、わたしたちを置いて生ける屍になってしまったの!)
 さわやかで、石鹸の匂いのするような晋治との恋。華燭の宴。やがて、かわいい晋也が生まれ、ずっと順風満帆の生活がつづくはずだったのに。
 それが、いま後見人をよそおった残酷な義理の叔父のために、この背徳の部屋に囲われ、愛人とも奴隷ともつかぬ境遇に落とされて、いま、小水をむりやり飲みこまされている。
 (堕(お)ちてしまったわ!)
 祐美子は、悲痛な自責とともに、なぜ最初に槐島の罠を見抜けなかったかと、強く悔まれてならない。
 おぞましいビーフ・ティーはしばしば泡だち、濁ったしぶきが彼女のまつげにまでかかった。
 祐美子は、これほど辱められながら、一面、絶望的なほど激しい昴ぶりをおぼえる自分に、解きがたい矛盾を感じていた。


 それからの数日間、槐島は、部屋に姿をあらわさなかった。
 ファイナンスの仕事が忙しいのかもしれない。社長室で飴(あめ)と鞭(むち)の言辞を弄して、陰惨な目を光らせている姿が浮かぶ。この頑固な扉の向こうに、せかせかと忙しげな肉欲の権化(ごんげ)がいると思うと、祐美子の胸はかすかに疼く。
 一度は草野に送られて、麻生家に戻り、老秘書の胡桃山から留守中のできごとを聞き、令夫人の秩序を失わぬようにつとめたが、夕刻になると、運転手にせきたてられて、しおしおと背徳の部屋にもどらなければならなかった。
 喜与子の話では、槐島は軽いと思われた腹の傷がはかばかしくなく、さりとて、いまさら医者にも行けず、すっかり弱気になっているとか。
 (でも、わかるもんですか。怪物みたいな変態じじいだから)
 祐美子は、見えない槐島に向かって毒づいた。奸智にたけた後見人のこと、つぎにどんな手で、彼女をいたぶろうとしているのか、予測もつかない。
 はたして、椿事はすぐに起こった。
 その日、祐美子が眠っているうちに、家政婦の喜与子が急用で、うっかりキーロックをしないで外出してしまったのだった。
 もし、このとき、祐美子が目をさましていたら、こんなおぞましい災厄にあわずにすんだかもしれない。
 麻生祐美子は、昏々と眠っていた。
 そのとき、メイド・ルームのベルを押したが、なんの応答もないので、部屋に入ってきたのは、精悍な運転手の草野だった。
 (なんだ、家政婦のやつ、ロックもしないで出かけたのか)
 草野は、寝室のドアが閉まっていないのに気づき、おそるおそる入っていき、花のように眠る、優雅な令夫人の姿を見いだしたのだった。
 (ふるいつきたくなるような寝すがただな。気をそそられるぜ)
 危険は承知のうえだったが、千載一遇のチャンスだった。
 猪首で、筋肉質の運転手は、遠慮なく闖入した。
 すばやく、ものにしてしまえばいい。
 つのる情欲をはらしたかったし、一度、そうなってしまえば、女なんて弱いものだという気がある。犯された女は、自ら口を封じるものと思い込んでいる。
 草野は、いきなり馬乗りになって、祐美子の首を締めつけた。
 何度も締めたり、ゆるめたりしていると、彼女はほとんど無抵抗になった。
 じつは、こんなことをしなくとも、祐美子は夢うつつで、朦朧(もうろう)としていたから逃れようもなかったのである。
 「四つん這いになって、両手をつくんだ。翼をひろげた孔雀みたいにな。締まりのいいけつの穴をそっくり見せてもらおうじゃないか」
 われながら洒落(しゃれ)たせりふだと思いながら、草野は、祐美子のショーツを器用に切り裂いて、たちまち臀部を丸だしにしてしまう。
 「ネグリジェは、自分でぬぐんだな。いやなら、びりびりにしてやる」
 どうせ、槐島社長は一週間ぐらいは、ここには来ない。それまでに代わりの下着を仕入れておけば、なんとかごまかせる。
 草野は、お抱え運転手だけに、槐島の性格やスケジュールは、じゅうぶん知りぬいている。
 むっちりした双臀をおしわけ、気をそそるおちょぼ口のような臀裂を、ねちねちいびっているうち、狂おしい興奮の波が、草野を駆りたてる。
 「なんて、色っぽいけつの穴なんだ。社長にはめられても、もう、バージンみたいにきつく閉まってる。はじめから気づいてたんだ。あんたはここが感じやすいってな。ずっと狙ってたんだぜ。ほんとに果報は寝て待てだなあ」
 祐美子は答えずに、必死に嗚咽をこらえていた。
 この男にだけは触られたくない。
 とりかえしのつかない汚辱感で、祐美子は顔から血の気が引いてゆくのがわかる。
 (くやしいわ。こんな男に)
 彼女は半ばうつろな目で、投げだされた枕とシーツを見つめていた。
 ぷっくらふくらんだ菊ひだは、なまめかしい肉色の宝石のようだった。
 「おれの、ぶっといのを入れてもらいたいだろ。けつのまわりに、うぶ毛がはえてるじゃないか。深窓の令夫人がさ、こんなに毛深いなんて、恥ずかしくないか」
 草野は、臀裂に顔を伏せて、ペロペロと舌で舐めまわした。
 「あうっ、いや。なにをするの、き、汚いわ」
 「いまさら、すぼめるなったら。気持ちがいいくせに」
 祐美子は、膿(う)んだ箇所を針でつかれるような快感で、腰のあたりがとろけそうになり、薔薇窓がひくついた。
 「いや、そこは………。ひっ、突かないで」
 「そんなにけつを振るなったら。取りすました顔をしてるくせに、ほんとにスケベなんだから」
 媚肛を舐めまわす幾らかざらついた舌の感触に、祐美子は、頑に身動きをすまいと思う。
 (しとやかぶっても、こんなにひくつかせてる。待ってろよ、奥の奥まで突いてやるからな)
 運転手は、すわすわ吸いつく緊張感に、いっそう自信を深めた。
 舌のかわりに、指先をすすめると、少し突きでた瘤のようなものに当たる。
 ネチャネチャこねまわして、指を引きぬくと、かすかな異臭がたちのぼり、クチャリと黄褐色のかたまりが付着する。
 「くせえな。こりゃあ、あんたのウンコだぜ。お上品ぶっても、ひりだすものは、おれと同じじゃねえか」
 祐美子は、くいしばった歯のあいだから、とどめようのない呻きを洩らした。
 草野は、なかなか入ってこない。
 (さっさと、すませたらいいんだわ)
 祐美子は捨て鉢めいた気持ちになり、殺意に似た強い憎しみが湧きつつあった。
 彼女が草野を毛ぎらいするのは、卑屈さと、うぬぼれがないまぜになった一種独特の性格のためだった。
 強いものにへつらい、弱いものを容赦なくいじめにかかる。それにいい男ぶって、心がにやけているのである。
 「おっ、こっちのほうも、なにか臭うな。裾わきがってのか、くさい、くさい。でも、おれはそのほうが好きなんだ」
 草野は、祐美子の陰毛のむらがりをおしわけ、すこしよじれた小陰唇のびらつきを、懇ろに指弄する。
 「い、いつまで辱めれば、気がすむの。い、いやらしいことしないで」
 うっ、と彼女は眉をしかめ、ひとりでに腰がくねったが、猪首のきざな男が急所を突いてくると、これまでに知らなかったような快感が起こるのにおどろいた。
 鉤のように二指を使ってのすばやく刺すような突き、時にザラついた天井部分のこそぐり、指を鳴らしてのねじこみに、祐美子の感覚は自然に反応させられてしまう。
 槐島とのちがいは、変化球の持久力ということだろう。
 やがて、疼き昴ぶるうしろの花弁に、太い中指がすべりこんできたとき、祐美子は恐怖に心も萎えながら、目を閉じた。
 「もう、気分をだしてるじゃないか」
 締まる感覚を知って、草野はほくそえむ。
 運転手はすばやくズボンのファスナーをはずし、燃えたぎった肉茎をつかみだした。
 「待ってろよ。けつの穴にはめこんでやるからな」
 草野は包皮はをめくりあげ、唾をたっぷり王冠部にぬりつけると、こともなげに肛裂に埋めこんだ。
 「むっ、あうっ」
 ゼリーを使われたわけでもないのに、祐美子はふいに濡れた。
 分泌液の潤みではないなめらかさと、小気味よい抜きさしで、彼女は、あっという間に達してしまいそうだった。
 「い、いやよ。待って。ねえ、つらいわ」
 「じたばたするなって、もう、けつの穴にはめられちゃってんだ。すこしは楽しむ気分になれよ」
 「あうっ。かげんして。あまり動かさないで」
 草野はかまわずに、直腸に当たるほど深く送りこむ。
 「あんた、いま、なにをされてるんだい。おれに………」
 「い、言わないで」
 「おおっ、このあま、なんて締まるんだ、かわいいっ」
 運転手は、肛道のなかで、つづけざまに白濁をほとばしらせた。
 祐美子は、瞬間的に、その率直さに、喜びを感じた。
 しかし、満足しきって引きぬくと、草野はまた、下司っぽく、嫌味(いやみ)な男にもどった。
 「やっと仕留めてやったぞ。どうだ、けつをぬかれて、気持ちよかっただろ」
 つかのま、祐美子は地獄の日々を忘れたのに。草野の思いやりのなさは、彼女の心を現実に引きもどした。
 「ひどい人ね。みじめだわ。あなたなんかと」
 祐美子は、目を閉じたまま、つぶやいた。
 草野は、彼女のなまなましい膣前庭に指をさしこみ、蜜の潤みを掬いとったが、すぐに嗅ごうとしなかった。
 なにか、いとおしいものを見るように、切実な表情をしている。
 ふっと目をあけた祐美子は、けげんそうに、
 (どうしたの?)
 と聞こうとしたが、言葉に出さなかった。
 野卑な運転手がつけこんだ点はゆるせないが、一途なひたむきさを、あながち責める気持ちになれない。
 「また来るからな。だれにも言うんじゃないぞ」
 草野は、疲れて声も出ない祐美子の花のような唇を吸った。
 彼女はからだの力をぬいて吸うにまかせたが、なぜか不快ではなかった。
 それどころか、あれほどきらいぬいていた運転手が、オスの情熱をもって、抜きさしにはげんだことで、ある種の幸福感につつまれている自分を見いだしておどろいたのだった。
 犯されるという行為は変わらないのに、なぜ、犯されたあとの感情が、槐島の場合と異なるのだろうか。
 翌日は、何ごともなく過ぎた。
 一度だけ、喜与子に入浴させられるとき、草野に吸われたキスマークのあとが見つかりそうになった。
 家政婦は、実際は知っていた。
 なぜなら、喜与子は、それを黙認するかわりに、むっちりした祐美子の臀部を平手打ちにしたからである。
 「いいわね。なんでも、わたしに打ちあけるのよ」
 言葉遣(づか)いまで変わって、喜与子はおおっぴらに舌をさしこんできた。
 例のバイブも使いたかったらしいが、祐美子が泣きじゃくったので、人参(にんじん)で長いこともてあそんだ。
 「奥さま、もっとみじめな目にあわせてあげましょうか」
 「もう、ゆるして」
 「それなら、わたしのこと、好きだと言ってごらん」
 「す、好きよ」
 「キスマークの相手が誰なのか、そんなことはどうでもいい。でも、わたしにも同じことをさせるのよ。いやなら、旦那さまにいいつけましょうかね」
 喜与子は、キスマークのうえを石鹸でこすって、嫌味を言う。
 このごろは、いっしょに入浴する習慣がついている。しかも、寝室にいるとき、ときどき、首輪を足の鎖をかけようとするのだ。
 「こんなことしたくないけど、旦那さまのお言いつけですからね」
 何度も、家政婦は言い張った。
 ほんとうかもしれないし、嘘かもしれない。
 いずれにせよ、図に乗った喜与子は、しだいに女主人みたいな顔をしはじめて、時には平気でベッドに腰かけて、肩が痛むから、揉んでほしいとか、お腹が張って苦しいから、さすってくれとか、できるだけ、自分のからだをさわらせたがるのだった。
 運転手の草野は、あれからもやってきたが、家政婦のまえでは、絶対に変な真似はしない。喜与子も、運転手のまえでは、祐美子にいやらしい真似はしないが、どうやら、お互いに槐島にいいつけられるのが恐いらしかった。
 草野は、むしろ家政婦の機嫌をとるようにしており、きょうの午後も、ショート・ケーキを差し入れしたりしている。
 その晩のこと。
 しんと静まり返った寝室のなかに誰かが入ってくる気配がして、祐美子が起きあがろうとすると、
 「しいーっ。そのまま、暗くしておくんだ」
 草野の声だった。
 運転手は、くらがりですっかり服をぬいでしまうと、祐美子の足の鎖を用心深く避けながら、ネグリジェをうまく剥ぎとった。
 「きょうは首輪をつけてないんだな。すんなりした喉くびにさわらせてくれ」
 草野の手はせわしなく動き、いつくしむように喉くびからうなじにまわり、髪の毛をさぐり当て、捧げもつように懇ろに愛撫する。
 ただ触れるだけでなく、祐美子の髪の匂いが、たまらなく彼を興奮させるらしい。
 「おまえは、蜂蜜みたいにいい匂いがする。芳(こうば)しくて、なよやかで」
 草野は、祐美子の髪の毛を幾束にも分けたり、手綱のようにといて首に巻きつけたり、いとしげに嗅ぎ楽しんでいる。
 ほとんど異性と会う自由のない彼女にとって、草野だけがわずかにオスの感触をもたらしてくれる存在である。
 ベッドのなかの運転手は、おし殺した声で、ほとんど命令口調だった。
 「欲しいんだろ。足をひらいて、もっとよく見せろよ」
 「こ、こうなの」
 言われるままに、祐美子が足をひろげると、草野は手をのばして、しっとりして、かたちのいい太腿をとらえた。じりじりとこすりあげながら腿のつけ根に達し、やにわに顔をうずめて、鼻孔をふくらませ、恥毛のむらがりを嗅ぎとっている。
 「ハーブみたいな、ドライフラワーみたいな匂いがする。いや、木蓮の花の匂いかな」
 草野は悩ましい茂みに舌の這わせると、秘唇を素どおりして、左腿を舐めおろしてゆく。じわじわと舐め終わると、つぎは右腿というように、軽い息をふきかけながら舌先をおしつけたり、離したりして、祐美子をじらす。
 「あうっ。もっと上を………。や、やめないで」
 じらされて、祐美子がひくっ、と腰を引きつらせるさまが、まことに小気味よい。
 彼女は、わが身の反応がはがゆく、なさけない。
 草野は、槐島と同じ穴のむじなである。しかも、主人の留守に、つけこんできた男なのだ。
 「そろそろ、しゃぶらせてくれよ。おまんこのなかに舌を突っこんだら、あんたがどんなふうになるか、ためしてみたいんだ。といっても、気にするな。あんたには逃げることができないんだから」
 「そ、そうよね、なんでも思いどおりにされるしかないんだから」
 祐美子は、拗ねるようにつぶやいた。
 じつのところ彼女は、運転手を満足させられるかどうか不安だった。
 槐島に責め苛まれ、祐美子は、自分のからだは、彼らの憎しみの対象なのだ、と思いこみはじめている。しかも、喜与子のような女性からも迫害の対象となる。
 「あんたのからだは、きれいで、かわいい。きめこまやかで、まるで天鷲絨(ビロード)みたいだぜ」
 これが草野のせいいっぱいの賛辞だとしても、恥じる必要はない。
 祐美子がぐっしょり濡れているとわかったのは、両腿から会陰部をこじあけ、肉びらの下べりに指が触れたとき、とろりと潤みが溢れたからである。
 「あんたは、むりにされるのが好きなんだろ。みとめたがらないが、きっとそうさ」
 「ち、ちがうわ。わたし、こんなことしたくない」
 祐美子は否定したが、草野の左手の指の股に乳首をはさみつけられ、やわやわと揉みしだかれると、いつしか切なげにいやいやをする。
 そのとき、彼女の足首に鎖がからまって、カチャリと金属的な音を発した。
 はっ、と草野が離れる。
 「梶原のおばん、起きてこないかな」
 「どうかしら。でも、いつものことだから」
 考えてみれば、そのとおりだった。
 しかも、草野は、きょう買ったショート・ケーキに睡眠薬をまぜておいたのだから、家政婦がまず起きだしてくる気づかいはない。
 「ああっ、だめ。もう、堪えられない」
 祐美子は、相手にもてあそばれていると知りながら、つい上体を反らせてしまう。
 「あ、草野さん、あなたの舌で突かれるのが好きよ、とても上手だわ」
 泣くような声をあげて、彼女ははじめて、この猪首の運転手を固有名詞で呼んだのだった。
 筋肉の層を積みあげたような草野は、じらすように舌を繰りだしては、ねたねたする肉びらのよじれを突き、的確に追いあげてゆく。
 彼は一息ついた。
 「おれをきらってるんだろ。ゴキブリでも見るみたいに、そばにいるだけで吐き気をもよおすって顔をしてたじゃないか。だから、おれも」
 「ひ、ひどいことはしないで。わたし、もう参りそう」
 こんな卑しい男に、手もなくあしらわれるのはなさけないが、どうしようもなく女の芽が勃起してくるのだ。
 「あう、また。いいわ、そこ」
 「どうしてなのかわかるか」
 草野は、すっと舌を離して上目づかいにささやきかける。
 「知らないわ、どうして」
 「あんたがいいとこの奥さまで、おれがしがない運転手だからさ」
 「ちがうわ、草野さん。あなたがひたむきだからよ。それで捲きこまれてしまうんだわ」
 「じゃあ、思ってるとおりにしていいんだな」
 草野は、うわぞりの筒先で、とけくずれた秘唇のすぼまりをなぞりまわし、狙いをさだめて、ヌルリと嵌めこみ、根もとまでグッグッと突き入れる。
 「うっ、き、きついわ。すごい、太くて、硬いわ、は、恥ずかしい。そ、そっとして」
 「いやらしくつながってるのが、わかるか。あんた、まともに入れられてるんだぞ」
 秘密っぽい貝の身の部分を揉みぬかれると、祐美子は無意識にしがみつき、足首の鎖をカシャ、カシャと鳴らし、積極的な鼻声をたてはじめる。
 「もっと、よくしてやる。なんて具合がいいんだろ」
 草野は、抜きさしを早めた。
 互いの密着部分がこすれない、粘っこく、いやらしい音をたてはじめる。
 「あああっ、いい、いいわ」
 草野が腰をたたきこむ。
 「ああっ、き、きそう。あ、また、くる」
 「おれもだ、いっしょに」
 どくどくと、草野は放ちはじめた。
 「あっ、なかに出しちゃだめ。もう」
 祐美子は間歇的に収縮し、ひいーッと百舌(もず)のような声を放った。


 「もう、そのぐらいにしておくんだな」
 枕もとのナイトスタンドが、ぱちりとついた。
 目の前に傲然と立ちはだかっているのは、この部屋のあるじ、槐島一起だった。
 うしろに控えているのは、例の九十キロからの巨漢、中国鍼灸師と、腕っぷしの強そうなボディガード風の男、そして、および腰で顔だけのぞかせる家政婦の喜与子だった。
 「せっかくの楽しみを邪魔したようだな。女に手をだしたら、どんなことになるか、こいつが教えてくれるだろ」
 槐島が手にしているのは、ぶきみな二本の鞭である。
 ひとつは九尾の猫といわれる柄の先が九つに分かれているもの、もうひとつはピアノ線をよりあわせて作った独特の房鞭である。
 色を失った草野は、ほとんどふるえがとまらなくなっている。
 逃げようとしても、屈強な連中が控えているのでは、まったくどうしようもない。
 「いったい、どういうつもりなのか、とっくり聞かせてもらおう」
 槐島は、侮蔑の表情もあらわに、祐美子のほうに近づいてゆく。
 「社長、ゆるしてくれ。おれはただ、このあまに誘われただけなんだ」
 丸腰で、肉茎の萎えた草野は、まったくいくじがない。槐島の性格を知っているだけに、すっかり血の気を失って、おろおろしている。
 「信頼をうらぎったんだから。その償いはしてもらうぞ」
 槐島は、猫が鼠をもてあそぶように、九尾鞭で、ひきしまった草野の肩のあたりに軽くひと鞭くれた。
 それから、ピアノ線の房鞭を、中国人鍼灸師に手渡した。
 すぐ、やれ、
 という合図なのである。
 脂ぎった鍼灸師は、無造作にピアノ鞭を、草野の背中に炸裂させた。
 「ぎゃあーっ」
 激痛を逃れようと、運転手は海老のように身を縮めたが、二打ち、三打ちで、みみず腫れの皮膚がやぶれ、みるみる鮮血がふきだし、たちまち牛の生肉のような色に変わった。
 「社長、たすけてくれ。こ、殺されちまう」
 「出すぎた真似をしおって。かまわん、性根を叩き直してやってくれ」
 びしっ、と気合いを入れて、鍼灸師が打つ。
 草野は猪首を振って呻き声をたて、できるだけ苦痛を少なくしようと、毬(まり)のように身を縮める。
 祐美子は、血の気を失った表情で、この光景を見つめていた。痛ましくて目をそむけようとするが、草野の女々しい弁明が、苦い澱(おり)のように心に沈み、徐々に憎しみが増してくる。
 彼女は、足首の鎖をかちゃりと引かれて、よろめいた。
 ベッドのふちに腰をおろした槐島がひっぱったのである。
 「どうだね、おまえ。色男が痛い目にあってるのを見てる気分は」
 「色男なんかじゃないわ」
 草野も、ただの色魔だったんだわ。自分より強い者にはすぐに怯えきって、なにひとつ手出しができないんだから。
 「ほほう。そうかな。さっきまで、あなたの舌で突かれるのが好きよ、なんて言ってたのは、どこのだれかな」
 槐島の口調は、にわかに陶酔的になってきた。抑え切れぬ怒りのため、きれいに刈りこんだ口髭がピリピリふるえている。
 「いいか、深窓の令夫人ぶっても、淫乱なおまえはどんな下卑た男にも、すぐ身をまかせるんだ。野良犬みたいなこんな草野にもな。この男は、わしに拾われるまで、サラ金地獄で逃げまわっていただらしのない男なんだぞ。そんなやつに抱かれおって、おまえには誇りというものがないのか」
 罵りながら、ざらざらした槐島の指は、祐美子の臀裂をいびりはじめている。
 ぐいと肛道に突っこむ。頭のなかに光がとびちり、彼女はおぞましい快美のうめきをあげた。
 「けつの穴まで、あいつの淫水がぬらついてるぞ。この売女(ばいた)が」
 祐美子は唇をかみしめて、槐島の行為と罵しりの二重の恥辱に堪えた。
 床のうえでは、続けざまの激烈な鞭打ちで、草野が顔をおおったまま、怯えて跳びはねている。いまや、運転手の背中は、はじけた柘榴のようで、血まみれになり、ほとんど気を失いかけている。
 「しぶといやつだな。すこし、休ませてやろう。反省の時間を与えてやらなきゃあな」
 中国人鍼灸師は、扁平な顔をぶきみにうなずかせた。剃刀で横に切り裂いたような両眼がするどい。その目は、ねちねちと祐美子をいびりつづける槐島の指戯を追っている。
 鍼灸師の視線が、ちらっと、テーブルに置かれた朱彫りの箱に走る。
 大小さまざまな鍼で、いずれ、この上品そうな女を徹底的に責めあげなくてはなるまい。運がよければ、いっぺんぐらい、おまんこさせてもらえるかもしれない。
 草野は、気息奄々だった。
 それでも、この場から逃げだすことばかり考えている。
 すでに背から腰にかけて、ねっとり血のあぶらが噴き、無惨で、異様な雰囲気をただよわせている。
 「こんどは、わしが代ってやろう」
 祐美子から離れた槐島は、九尾鞭を宙でしごいた。この鞭は、内革を天鷲絨でくるんであり、痛みはすくないが、しだいにむず痒い感覚を増してくるのが特徴である。
 「恩知らずめ。四つん這いになって、けつを高く持ちあげろ。ぐずぐずするな」
 槐島の顔に、うす笑いがひろがっている。
 胸毛のあたりまで鮮血にまみれた草野は、怯えながら従った。
 しゅーッ、しゅーッ、
 しなやかに、猛々しく九尾鞭が、草野の双臀を襲い、毒蛇のように巻きつく。
 「た、たすけてくれ、社長。なんでもするから、かんべんしてくれ」
 草野は、あやしく身悶えする。
 彼を襲ったのは、激痛ではなく、奇妙なむず痒さだった。ひと打ちごとに、快い刺激を誘う。この鞭をふるう槐島は、さすがにこの道の熟練者だった。
 草野のこわばりが、みるみるはちきれるようになったのを、いちはやく気づいたのは、家政婦の喜与子だった。
 彼女は、たくましい男が血だらけになって、すさまじく勃起させるのを見て、からだの芯がひきつれ、肉びらの縮れが潤み、とろりとあたたかい液を湧きださせた。
 槐島は打っては休み、休んでは鞭打ち、草野を限界ぎりぎりに追いこんでから、ふいに九尾鞭を投げすてた。
 血だらけの運転手は、いまやとどめようもない疼きの快感で、噴きあげる寸前だった。
 槐島が一歩すすみでた。
 「この出すぎ者め。また、突っぱらせおって」
 彼は、革靴で思いきり、草野の股間をふみにじった。
 「ぎゃーッ」
 不意をつかれた運転手は、股間をかかえてのたうちまわる。
 額にあぶら汗を浮かべて、苦しがる。
 「こいつを連れてゆけ。どうするか、わかってるだろうな」
 ボディガードと鍼灸師が、草野を連れ去ると、槐島は、異様なほど優しく、祐美子に近づいた。
 「何もかも知っとる。おまえのあやまちじゃないとな。だが、手ごめにせよ、あんな男に抱かれたと知ったら、亡くなった芙貴子さんは、何と思うかな。女というものは操を持たねばならん。いまのところ、おまえがつくさなければならんのは、このわしだけだ。そうすれば晋治は治療を続けられるし、麻生家もどうやら体面を保つことができる。いいか、おまえが、こうした憂き目を見るのも、心からわしになびく気持ちが足りんからだ」
 「そんな、叔父さまに、すべてを捧げてるじゃありませんか」
 「ほう、そうかな。それなら………。や、だいぶ汚れているな。きれいに拭きとってやろう。梶原さん、拭き綿と消毒液をもってきれくれないか。あいつにぐちゃぐちゃにされたところをいじるのはごめんだからな」
 喜与子が蓋つきボールを持ってくると、槐島は拭き綿を指先に捲いて、膣前庭をおしひらく。なまなましい秘裂の上位に、錐で孔をあけたような尿道口が見える。
 そのまわりを拭き綿で、ねっとり拭きとる。ぷりぷりした肉びらがしなしなとよじれる。
 「ねばねばが混じりあって、どっちのかわからん。いっそ、こってり、しぼりだす必要がありそうだな。梶原さん、なにか適当なものがないかな」
 「ございますわ。冷蔵庫にスイートコーンが………。あれを電子レンジであたためれば、すぐお使いになれますわ」
 喜与子は浮き浮きした声で答える。
 やっと自分の出番がまわってきたのだ。
 家政婦は、去り際に、祐美子にささやいた。
 「奥さまはいいわね。まだ、なぶられ足りないみたいで」
 喜与子が持ってきたのは、ピーターコーンと呼ばれる粒皮のやわらかなとうもろこしである。
 これで責められるのだと直感すると、祐美子は、激しい嫌悪をおぼえた。
 「やめて。そんなものは使わないで。ね、叔父さま、なんでもおっしゃるとおりにしますから、これ以上、さらしものにしないで」
 それに答えず、槐島はとうもろこしを受けとり、
 「つやつやして、粒ぞろいだな。先っぽの毛がちょっと残ってるのもいい」
 槐島は、分泌のなごりをとどめるトバ口を、執拗にぬめらせ、とうもろこしをゆるゆると送りこんだ。
 「ああっ、むごすぎるわ。叔父さまは、人でなしだわ」
 「おまえにふさわしいだろ」
 槐島は残酷にゆさぶった。
 「これがいやなら、コーン・パイプを入れてやってもいいぞ。どっちにしても同じことだがね」
 「い、痛いわ。かたすぎて、ひりひりするわ。おねがい、もうゆるして」
 「もっと、みじめな思いをさせてやる。芙貴子のかわりにな」
 ああ、ママ。
 あなたは、この男に、いったい何をしたの。なぜ、わたしは苛まれなくちゃならないの。
 「つ、つらいわ。とうもろこしにいかされるなんて」
 「ね、楽しみましょうよ、奥さま」
 芙貴子は淫らに笑いかけて、槐島から見えない部分をなぶりはじめる。
 インテリぶった家政婦は、あきらかに発情して、顔をまだらにしている。
 「お、叔父さま。ちゃんと愛してくださいな、なんだか、へんになりそう」
 祐美子は、きれぎれの声をあげる。
 「いま、甘やかしたら、また、わしから離れていってしまう。このつらさをしっかりおぼえておくんだ」
 とうもろこしはなまあたたかくなり、乳酸をふくむ蜜にまみれて、くたくたになっている。
 「旦那さま。まだ、奥さまは夕食を召し上がっていらっしゃらないし、とうもろこしは栄養があるそうですから、ここらで、そろそろひとくち………」
 喜与子の、悪知恵ははてしがない。
 「よかろう。それでは」
 不意に違和感が起こり、祐美子は引きぬかれて苦痛を感じた。
 「い、いやっ、こんな汚いもの。やめてちょうだい」
 むりやり口におしこまれて、祐美子は喘いだ。
 「汚いだなんて。奥さま、そりゃあ、ないわねえ。どうでも召し上がっていただくわ」
 喜与子は、槐島の意を察して、ますます威丈高になる。
 「いやなら、さっきのふたりに、このつづきをまかせてもいいんだぞ」
 槐島は脅すようにささやく。
 あの気味の悪い連中にもてあそばれるくらいなら、とうもろこしを食べるほうが、まだましだった。
 嗚咽しながら、祐美子が咀嚼(そしゃく)してのみくだすと、とうもろこしは思ったより甘かった。
 喜与子は、祐美子の横顔を盗み見て、ゾクゾクするほどの快感を味わっている。
 「ねえ、唇にさわらせてよ」
 家政婦は上気しきって、指先をのばし、かたちのいい唇に触れるふりをして、口のなかをいじりまわした。
 真珠のような歯でかみくだかれたとうもろこしの粒々から、わずかな気泡が生じている。
 「このつぎは、きゅうりを使ったらいかが、旦那さま」
 迎合的な口調で、喜与子がそそのかす。
 槐島は苦笑した。彼はもっとべつな方法を考えていたのだ。
 なにかを思いついて、急に邪慳な口調になった。
 「こんな淫乱に、きゅうりなんてもったいない。自分たちの淫水をドレッシングにして、とうもろこしを食べるくらいだから、みんなの食べ残しを、ぜんぶつめこんでやったらいい」
 「ひ、ひどいこと言うのね。かなしいわ、なぜ、わたしばかりいじめるの」
 「いじめるだって。いつも、楽しませてあげてるのに。わたしが代りたいくらいだわ」
 喜与子が口をとがらせる。
 「こんどは、わしがひりだしたものを食べさせてやろうか」
 「いやっ。聞きたくないわ。人でなしの言うことなんか」
 祐美子は、次々におぞましいたくらみが繰りだされるのを知って、ヒステリックになった。
 できることなら、耳をふさいでしまいたい。しかし、聞こえぬふりをしたら、きっと悪どい行為に出るにちがいない。
 「死んでしまいたいわ」
 祐美子は、ぽつりと言った。
 「死んでも、わしは悲しまんさ。ただ、晋治と晋也が困るだけだろ」
 槐島の言葉は、祐美子の気をとりなおさせた。
 そう、夫と子どものために、生きてゆかなくちゃならないんだわ。
 「わしは、陰気な女がきらいでね。すすんで応じるくらいでないと、気に入らない性分だよ」
 「わ、わかりましたわ。叔父さま」
 祐美子は、萎える気持ちをはげまして、媚びるように槐島を見つめた。
 「それなら、どうしたらいいのか、おわかりですわね」
 家政婦が、ねちねちとからむ。
 「ええ。ご主人さま、このおしりをもう一度、捧げますわ。お好きなだけ、なぶってくださいな」


          第7章 もっと喉ちんこを震わせろ


 この日以後、草野は、まったく姿をあらわさなくなった。
 喜与子の話では、あれから彼は、芝浦の古い倉庫に連れてゆかれ、からっぽのタンクに押しこまれ、何度も外側を棒で叩かれ、あけがたには神経障害を起こして、救急病院に収容されたという。
 「なんて恐ろしいことをするの。あの人は鬼だわ」
 「旦那さまが悪いんじゃないわ。連中が、ちょっとやりすぎたのよ」
 草野が、朝早く、芝浦の橋のうえでふらふらしているのを発見されたとき、警察ではただの酔っぱらいとまちがえたらしい。
 完全に精神に異常を来しているため、身もとがわかった時点で、深く調査もされず、病院に送りこまれたらしい。
 槐島にとって、草野に身寄りがなかったことが大いに幸いしたのである。
 ある日の夕刻。
 またしても上機嫌な槐島は、新しいお抱え運転手をともなって、秘密の部屋にあらわれた。
 バーコード・ハゲで、ぶあつい胸の中堂という五十男である。主人のいうことなら、即座に隷従するタイプらしい。
 家政婦は、中堂のような体型の男には、ほとんど関心をしめさない。
 しかし、祐美子は、女の直感で、ゴリラのような運転手が本能的に彼女を獲物と見なしているのがわかった。
 (危険な男だわ。見るからに脂ぎって、腰が強そうで!)
 と思う。 ひどく調子がよさそうで、残忍な性格をかくした中堂、それが槐島の新しい運転手なのだった。
 「このところ、忙しくてかまってやれなかったが、今夜は気晴らしにパーティに連れていってあげよう。並のとはちがうぞ。政財界のVIPが集まる仮装パーティだからな。おまえは白雪姫の扮装がいいだろ。東劇の衣裳部から借りだしてやったからな。主催は、財界切っての芸術パトロン、鼓征十郎だぞ。そうそう、マスクも忘れずにな。わしだって、たまには自慢したいのさ」
 やがて、夜会服にシルクハットをかぶった槐島にともなわれて、とある宏大な建物の前に降りたった。
 金満日本の驕りのように、このところ、贅沢なレトロ趣味がはやっているとは聞いたが、このパーティは、鹿鳴館のおもかげを再現して、明治人の心意気にあやかろうというわけらしい。
 「なんだか、物々しい雰囲気ですわね」
 重い扉を押して、なかに入ると、黒づくめの案内係が、二階の会場へとみちびいてゆく。
 紳士淑女は、全員すでにマスクをつけているので、どこのだれともわからない。
 「わしについてこい。離れるんじゃないぞ。口をきくんじゃない。名乗ってもいかん」
 しかし、白雪姫のすがたから、若い女性であるのは、だれの目にもあきらかで、会場の上流夫人や、紳士たちの間から、軽いざわめきが起こった。
 なかには、なんとかダンスを申し込もうと祐美子に近づいてくる者もいる。しかし、槐島は、その都度、にこやかにさえぎって、彼女を独占してしまうのである。
 「どうだ、盛大だろ。このなかの幾人かは、わしの前で土下座した連中ばかりさ。政治は金がかかるし事業も資金繰りがくるしい」
 槐島はしきりに、小声で、人脈をひけらかすが、相手は、たかが金貸し、ぐらいに思っているのかもしれない。
 強欲な後見人の意外に無邪気な一面を知って、祐美子は、すこし、くつろいだ気分になれそうだった。
 さまざまなご馳走が並べられ、ダンス・ミュージックと人々のさざめきのうちに、夜はふけてゆく。
 槐島は、主催者に挨拶(あいさつ)にいくと言って離れたが、三十分ほどすると、祐美子のそばにもどってきた。
 やがて尿意をもよおした祐美子は、
 「叔父さま、わたし、ちょっと………」
 と会釈して、化粧室に向かおうとする。
 「待て、待て。レディは、特別貴賓用のトイレに、エスコートの男性といっしょに入るきまりになってるんだ」
 槐島は、会場のまうしろにあるひときわ豪華な化粧室へと、彼女をともなった。
 「さあ、このボックスにいっしょに入れ」
 うむをいわせぬ強い口調で、祐美子はおしこまれた。
 そこは有料トイレのように優美で、麗々しい雰囲気があり、かぐわしいヘリオトロープ・ローションの香りがただよっている。
 真ん中に大理石を用いた便座があり、まわりの壁も、すばらしく豪奢である。
 ただ奇妙なのは、便座に腰かけると、真ん前、つまり仕切りの中央に丸い穴があけられていることだった。
 「叔父さま、ここはへんですわ。隣からのぞかれるんじゃないかしら」
 「だまって。下着を引きおろして、用をたすんだ」
 槐島は、ちょっと顔をしかめて、威圧するような声でささやいた。鼻のあたまに、かすかに汗をにじませている。
 (これがうまくいけば、わしの株は確実にあがるんだ。麻生証券の令夫人などと、だれも気づくまい)
 槐島は自分の計画が着々と実現に向かっていることに満足しきっていた。
 (やっぱり、おかしいわ。なにか仕掛けがあるんだわ)
 祐美子は、ようやく、この化粧室の異常さに気づいた。
 しかし、いまさら、どうなるものでもない。ここで叫びたてても、自分の恥になるばかりだ。
 財政会のなかには、義父の友人で、麻生家邸に招いた人たちもいるにちがいない。マスクをとれば、わたしがだれなのか、わかる者もいよう。もし、おおごとになって、一切が明るみに出たとしても、いったんけがされた貞操は、もとにもどるものではない。
 「叔父さま、離れていてくださいな。ずっと我慢していたので、無作法な音をたてるかもしれないわ」
 あきらめきった祐美子は、パンストとショーツをぬぎおろし、便座に腰をおろすと、なまめかしい花の器官から、琥珀のおしっこをほとばしらせた。
 「ずいぶん、はげしいね。その音を聞くと、ほら、このとおり勃起してくるよ」
 槐島は、なまめかしいほとばしりに、目を細めて聞き入っていたが、祐美子が立ちあがろうとすると、ズボンのファスナーを引いてつかみだし、便座に自分が座り、膝のうえに彼女を腰かけさせた。
 「こんなところで、いやですわ。だれがくるかわからないのに」
 祐美子は、少し抗(あらが)ったが、強い力でむきだしの双臀を引きすえられると、頬をあからめて、腰を沈めた。
 「だいじょうぶさ。使用中になってるから、だれも入ってはこない」
 ずぶり、じんわりぬかるむ祐美子のトバ口に亀頭冠を突きあげ、一気に根もとまでうずめこむ。
 「お、叔父さま。お、大きすぎるわ。ねえ、かげんして。あっ、あっ、腰を浮かせて、強すぎるのよ」
 「いいから、顔をまっすぐあげて、前方をしっかり見るんだ。そこから突きだされてくるものをおろそかにすると、わしがゆるさんからな」
 待つ間もなく、仕切り壁の向こうから、あかぐろく毒々しい肉筒が突きだされる。
 根もとのまわりが、しらがまじりのところを見ると、かなりの年輩らしい。
 しかし威丈高なこわばりである。紫づいた血管が浮きだし、全体がぎとぎとして、いやらしい。
 「どうした、咥えないのか。ほら、こうしてやる」
 内部の柔肉を捏(こ)ねあげられ、ぐわっと環状帯をゆさぶられると、祐美子は、思わず、おぞましいこわばりをふくみこんでしまう。
 「むっ」
 仕切り壁の向こうで、切迫した声が洩れる。かなりの老人らしいが、これだけ鍛えあげているのは、ただものではない。
 亀頭冠のみぞと、鈴口をじっくり味わうが久しぶりなので、まことにこころもとない。
 「喉ちんこをふるわせろ。この人がだれなのか知ったら、おまえはおどろくぞ」
 槐島が、耳もとでささやく。
 (こんな恥ずかしい真似をさせられるなんて)
 祐美子は、後見人を恨(うら)んだが、どこのだれとも知れぬ男性の怒張を、むりに受けいれさせられるのは刺激的だった。
 (わたし、いま、知らない人のモノをしゃぶらせられてるんだわ)
 という思いが、祐美子を絶望的にし、また、淫らに鼓舞する。
 「むう、くっ」
 醜怪な肉筒がぐんぐんせりだして、だくっ、だくっ、と精をほとばしらせる。
 そそくさと引きぬかれたかと思うと、また、新たな怒張が突きだされる。
 (べつの人だわ。何人、待ちかまえてるのかしら)
 祐美子は、一瞬、ためらったが、すばやくくわえこむ。
 毒きのこのように傘の張ったほこ先が、しなるように突きだされ、彼女の口腔に、どろりと精をぶちまける。
 「ほら、三人目だ。色つやだけで、だれだかわかるかな。選挙地盤が大揺れしている代議士といえば、だいたい察しがつくだろ」
 いたずらに長大な肉具が、螺旋状にねじこまれてくる。壁穴からのひとひねりで、祐美子は、喉ちんこをえぐられ、息もつけない。
 (もう、だめ。すごいわ、おかしくなりそう………)
 前門の虎に後門の狼。
 槐島のたくみな抜きさしに煽(あお)られると、祐美子は、しだいに被虐的な汚辱に馴らされてくる。
 見えないVIPの精液が炸裂する。
 祐美子の口腔は、次々に繰りだされる肉筒と、射精にだらしなくゆるみ、頤(おとがい)から白濁がこぼれ落ちる。
 しかし、槐島ははきだすのをゆるさない。
 「つ、つらいわ。あと、どのくらい続くの。なぜ、わたし、ひとりだけが」
 「おまえは半ダースだけさ。あとは、べつのレディがお越しになる。いまの政治と経済をささえる要人、高官ばかりだぞ。しっかり、はげめ」
 「とても、それまで堪えきれそうもないわ」
 祐美子は訴えた。
 「いいや。おまえは、男なしには一日も生きていられぬ女なんだ。それをよく頭にたたきこんでおけ。芙貴子のように思いあがった女になりたくなかったらな。ほら、もっと早く、深く吸いこめ。今夜の客は、祝儀をうんとはずんでくれるぞ。上品ぶった淫売め、特別報奨金をはずむぞ。こんなに、とろとろになっている。おまえは………」
 槐島は、語尾をことさら低くくぐもらせて、淫猥にささやきつづける。
 (ああっ、奥がたまらないわ。あつい、そんなに腰を使わないで)
 祐美子は、にわかにとろけて潤むのを感じた。にじみだす感覚が、ねたねたと槐島の陰嚢に打ちつけられる。
 「もう、とけくずれのぬかるみみたいになってるぞ」
 彼女の内部に収縮のうねりが加わると、槐島は満足げに、悩ましい双臀をかかえあげる。ねちゃっと淫靡な音がする。
 壁穴の肉筒が、びゅっとほとばしらせ、満足しきって、しりぞくと、槐島は、祐美子の顔を向きかえらせる。
 なまなましい白濁のなごりが、鼻孔や、頬のあたりまでとびちっている。かたちのいい唇はぬるぬるで、朝粥(あさがゆ)をぶちまけられたようである。
 「汚らしいあばずれめ。どっぷりのみこんで、さぞ満足だろ」
 「ひ、ひどい。叔父さまがむりにさせたのに………」
 「これが、おまえの本性なんだ。おしゃぶり好きのむっつりスケベ………」
 祐美子の限界はそこまでだった。
 ふいに箍(たが)がゆるみ、快美な潮が、毒々しい亀頭冠にからみついた。
 「ええ、そうよ。こうされるのが好きなんだわ、わたし………。ねえ、叔父さま、口を吸って。いきそう」
 祐美子は息を喘がせ、からだをよじった。
 「いってもいいぞ。わしもだ」
 槐島は、好きなように腰を振らせ、こらえにこらえていた精を放った。
 「あうっ、腰がぬけそう」
 祐美子は白目をむきだし、声もなく絶え入って、後見人の腰からずるずるとくずれおちた。
 槐島のズボンは、祐美子の蜜のしたたりで、わずかに湿った。


 それからあとのことは、祐美子には、まったく記憶がない。
 こうして寝室の天井を見つめていると、パーティからの時間の流れが、ぷっつり断ちきられてしまったような気がする。
 槐島に支えられてもどってきたとき、祐美子は、背後の部屋のぬくもりが、むしろ快かった。
 それから幾日たったのか。昼間なのか、夜なのかも、よくわからない。
 いまわしい後見人は、ずっと姿を見せない。気を失うほど、女の性(さが)をしぼりつくされ、はらわたのなかまで見せてしまったので、もう飽(あ)きたのだろうか。冷酷で、気まぐれな槐島だけに不安をおぼえる。
 と、あくはずのない扉が、そろそろとあけられるのが見えた。
 祐美子は、本能的にベッドで身をすくめた。
 いやな予感だった。
 家政婦でないと感じたとき、彼女は、ハッと起きあがった。
 「さわぐんじゃない。おれさまだよ」
 と、運転手の中堂。
 やはり、という思いだった。
 「この間は、えらいとこ見ちゃったぜ。あんなにきれいなスッポンポンを見たのは、はじめてだ。おまえは、男をムズムズさせるぜ」
 中堂は、赤く充血した目で、乱抗歯をむきだして、にやついた。
 中堂は、パーティから戻った夜、車のなかか、このベッドで、ショーツをぬぎすてたままの彼女を、つぶさに見たにちがいない。
 「それで、どうしたら、手っ取り早くぶちこめるかと思ってな」
 つぎの瞬間、中堂はおどろくほどのすばやさで、祐美子に迫った。
 「ちょっとでも声をあげてみろ、ぶっころすぞ」
 その言葉は、嘘ではないようだった。
 この醜い五十男にとって、最後の機会かもしれない。
 「社長がなにをしようが、知ったこっちゃない。ただ、これぞと思う女を、ものにできないとしたら、我慢ができねえ。おれは肝臓が悪くてな、もう働ける時期はたかが知れてる。したい放題やらかすだけさ。さあ、ぶっといのを突っこんでやる」
 中堂は荒々しく、祐美子のショーツを引きはがした。
 「しゃぶってみろよ。いやか」
 いきりたつ肉筒がつきだされる。
 半包茎でしごきたてると、尿と垢のなまぐさい残滓が、ぷんと鼻を打つ。
 一瞬、祐美子は首を締められて殺される幻覚におそわれた。だが、死にたくはないし、野獣のような男にさからって、面倒を引き起こしたくもなかった。
 「待って。上手にできるか、どうか、わからないけど」
 祐美子は、忌まわしい怒張を目をつぶってくわえこみ、ぐふっ、すぽっ、とめくりあげ舐めあげた。
 (できれば口のなかで出して)
 ねばねばする亀頭みぞの恥垢と、異臭に、彼女は堪えきれず喘いだが、かえって中堂の情欲を煽りたてる結果になった。
 「よし、膝をついて、うしろ向きになれよ。男ってものを教えてやる。ちっとの辛抱だからな」
 「灯りを暗くしてちょうだい。見られるの、恥ずかしい」
 「いいじゃねえか。おまえのよがり泣きが見てえんだ」
 中堂は、彼女のうしろにまわり、むっちりした双臀をがっしり抱えこむ。
 「あうっ、そっとして」
 すばやい、衝撃的なひと突きとともに、祐美子は、文字どおり打ちのめされた。
 中堂がえぐるように腰をまわし、ぐいぐい突きおくると、彼女は、
 「あ、当たる。うっ、あつい。こわさないで………」
 堪えがたい痙攣を起こしてつっ伏す。
 「待ってろ。ぐちゃぐちゃにしてやるぞ」
 双臀を抱えあげられ、うむをいわさずえぐりたてられるごとに、祐美子は、はげしい苦痛の波を感じた。
 彼女は、この男が憐(あわ)れみの気持ちを、一片だに持ち合わせていないのに気づいた。
 遮二無二、突きまくるのが、彼の信念だったし、技巧については、いっさい意に介さないようだった。
 (早く終わって………、おなかまで突きぬけそうだわ。ひいーッ)
 獣の疾走に似た感覚が、祐美子の全身をつらぬいたが、ただ呻くのみで、声をださないようにこらえた。
 「くそっ。こんなに締まりがよくって、なめらかなおまんこは、はじめておめにかかったぞ」
 祐美子は、この猛り立った男が、まもなく果てると思って、つとめて意のままになった。
 しかし、中堂は、ますます深くえぐりたて、揉みぬくように引きまわし、とどまるところを知らない。
 「おしまいだと思っただろうが………。まだ、まだ、これからだ」
 「いやっ。もう、かんにんして。死んじゃう、もっとやさしくして」
 一回、一回、引きぬいて、中堂がのぞきこむと、菱状(ひしじょう)の割れ口が、あかくはれたように潤んでいる。
 「ひりひりするわ。ほんとうにつらいの。ね、口を使わせて」
 「ヘルスギャルの真似をしようってのか。そうはいかねえ」
 中堂は満を持(じ)して耐久力をしめそうとしているようだった。
 「おまえが、いいとこの奥さんだろうと、とことん、いくまでは離さねえからな。もっと気を入れろ。ほら、こんどは、こっちに入れてやる」
 獣脂のようにてらてらする肉筒が、蛾の戸わたりをすべって、肛門に埋めこまれた。
 「ち、ちがうわ。そこはいやっ」
 せっかくはれのひいた排孔が、またもやひりひりと疼く。
 「こんなに小ちゃくて、くい締めのきついけつの穴は、めったにないぜ」
 感に堪えないように中堂は呻き、断続的にほとばしらせた。
 「こ、腰がぬけそう………」
 「まるで濡れた繻子(しゅす)の紐で締めつけられるみてえだ」
 繻子どころではなかった。
 祐美子は出血して、紅玉のようなしたたりが、点々とシーツを染めた。
 「ひ、ひどいことしないで、ほんとに、わたし、気持ちが悪いの」
 祐美子は、被虐的なやるせなさに、ほとんど腰をおとしかけている。
 だが、中堂に容赦なく攻めこまれ、いつしかたぐられてふるえはじめ、
 「ひいーっ、もう、勝手にして………。ああっ、どうなるの、あああっ、死にそうよ」
 かたちのいい額にべっとり、ほつれ毛をからませ、疼くような戦慄に煽りたてられ、ずるずるとからだをのびきらせた。


 この受難は、喜与子に気づかれなかったが、翌日になっても、祐美子の神経はずたずただった。
 考えれば考えるほど、あんな凶暴な男はいない。見えない排孔はずきずき痛み、手さぐりで軟膏を塗っても、とうてい癒(い)えそうになかった。
 それでも、祐美子は起きだしてシャワーを使い、新しい運転手に穢された部分をくまなく洗った。
 あれからの中堂は、さらに執拗だった。
 打ちのめされてくずれおれている祐美子の素肌をくまなく舐めつくし、唾液でべとべとにしたのである。しかし、蹂躙しきった部分のほかは、痣ひとつつけていない。
 シャワーを浴び終えたころ、珍しく、槐島があらわれた。
 「気分はどうかね、おまえ。このところ、家内がうるさくてな」
 (それなら来なければいいのに………)
 と思いながら、祐美子は、内心うろたえていた。犯されたことを気づかれはしまいかと自然に身を縮めるようになる。
 そんなすがたを見ると、槐島は、はじめてこの女を自分のものにした日のことが思いだされる。
 槐島は、シャワーをとめ、かたわらのタオルをつかんだ。
 「どうしたんだね。からだを拭いてやろう。その手をどけろ」
 祐美子の唇をむさぼろうと、やにくさい口を近づける。一度は羞じらって拒んだものの、よけい執拗になる性格を知っているので、すぐに観念の目を閉じ、吸われるままになって、懸命におぞましさをこらえる。
 「もう一度、ベッドに入らんか。ほら、こんなになってきた」
 槐島は、ズボンのファスナーを引きおろし、毒々しい肉筒をつかみだした。
 「叔父さま、きょうは疲れてるの。こんどにして」
 その一言が、それまで上機嫌だった槐島を怒らせることになった。
 「えらそうに言うな。なにさまのつもりでいる。きょうは、きびしく躾けてやる。梶原さん、ちょっと来てくれ」
 「どうなすったんですか」
 メイド・ルームから、ほくほく顔で喜与子がやってきた。
 「叔父さま、そんなに怒らないで。わたしが悪かったわ。あなたのこと、好きですわ」
 祐美子は必死になって、槐島にすがりついた。
 濃厚な接吻をしかけられる。彼女はつられるように唇をひらき、ぴったりと受け入れる。
 「とても、すてきよ。これだけで感じてしまいそう」
 その言葉が終わらぬうちに、祐美子は突きとばされた。
 「見えすいたことを言うな。わしを見くびると、ひどいことになるぞ」
 「な、なぜなの、すべてを捧げてるのに、これ以上、なにがお望みなの」
 祐美子は困惑しきって、後見人を見つめた。
 「ふん。おまえのようなすべたに、もらうものなどありはせん。そろそろ、しおどきだと思っとるんだ」
 「なにをおっしゃりたいの」
 「晋治のことさ、ありゃ一生治りゃせん。療養をつづけ、リハビリを行っても、まず全復はしない、と病院の医師は言っとる。そこでだ、このさい、むだな経費をさけるため退院させようかと思うんだ」
 「では、主人はどうなるんですの」
 「どうもなりゃせんさ。そのうち臓器がだめになって、自然に片がつくだろうさ」
 「おねがい、叔父さま、主人を見捨てないで………。せめて療養をつづけさせて」
 「そりゃあ、おまえしだいだが本気でわしを愛するようにならなきゃあ、この話もご破産だ」
 「愛しますわ、心から」
 「そらぞらしいことをいうな。それなら、わしがひりだしたものを、おいしくいただけるか」
 「そんな………」
 「じゃあ、だめだ。わしのウンコを食べられるほど愛してなきゃ、まず、むりだな」
 槐島はにべもなかった。
 (愛と、ウンコと、どんな関係があるの、変態じじい………)
 祐美子はくやしさに、涙があらわれたが、つと、思い直したように、
 「ね、叔父さま。わたし、ショーをお見せするわ。だから機嫌をなおして」
 家政婦に大きな裁ち鋏を持ってこさせると、祐美子はエプロン・ドレスの胸と、おしり、前の部分をくりぬいて、部屋の中央でできるだけ淫らなベリー・ダンスを踊りはじめた。
 といっても、短大のころ、深夜テレビで見たことがあるだけだった。
 祐美子は裸足になった。
 すんなりした足が軽やかに床を舞うと、槐島は、ふたたび欲情をおぼえた。ここにいるのは、生殺与奪、思うがままのあわれな囲い女なのだ。
 にわかに、肉筒が勃起するのをおぼえた。
 「いいから、床のうえに横になれ」
 祐美子は、羽をもがれた蝶のように、ひっそりと横になった。
 背中に床の硬さを感じたが、少しも苦痛ではなかった。彼女は後見人に協力するため、淫らがましく両足をひろげた。
 「いいわ。どこでも、お気に召すようになさって………。わたし、ちゃんと声をあげますわ………」
 祐美子は、そっとささやきかけた。
 槐島は、勝ち誇ったように目を光らせ、彼女の顔のあたりに、紫ずんであかぐろい亀頭冠を突きだした。
 「にぎってごらん。どんな感じがする」
 祐美子は、羞(は)じらうようにほほえみ、つかんで、にぎり締めた。
 「とても太くて、大きいですわ」
 「それだけか」
 「すごく硬いわ。こわいみたい」
 「そうか。おまえのとりえは、これをおさめる場所しかないことを、よく認識するんだな。それも、すぐ萎(しお)れてしまう、ほんのつかの間の魅力だということを忘れるんじゃない。わしに目をかけられることが、どんなにしあわせか、骨身にしみるはずだ」
 「ええ、そうよ、祐美子は叔父さまのもの、いつまでもね」
 槐島がまさぐると、秘唇はすでにねっとり潤んで、オリーブ油をこぼしたように濡れそぼっている。
 「そんなに見ないで。は、恥ずかしいわ。ね、早くきて………」
 勃えきった怒張を、前ぶれもなしに送りこむと、祐美子の声は悩ましげになり、すぽっ、すぽっ、と引きあげるたびに、啜り泣きから、呻きに変わる。
 身悶えがいつもよりはげしい。
 もっと深い部分を突いてやる。
 「いいっ。叔父さま、麻生家を見捨てないで………」
 槐島は、これほど辱められながら、祐美子がいまだに犯しがたい気品を保っていることに、かぎりないいらだちをおぼえた。
 「さあ、そりゃあ、どうかな」
 じらしにじらし、ガクガクと突きまくる。
 「いやっ、だめ、そんなに乱暴しないで………。あうっ」
 祐美子は、花芯の奥まで引きつれるように感じた。
 図にのった槐島は、横にゆさぶり方向をさだめて、荒々しく抜きさしする。
 「おねがい。もう、いって………。いや、か、感じる」
 祐美子は涙声になった。ほんとうに感じはじめている。
 槐島は、その声を聞くと、超人的に硬度を増した。
 あまりの硬さに、祐美子は、意志と関わりなく、くるおしい欲情にかられ、快美の糸を引きつらせる。
 思ってもみなかったような甘美な歓びが、繰り返しおそってくる。
 「叔父さま、もうだめ」
 もうひといきで、駆けあがれる。
 「このあばずれ、淫乱、売女(ばいた)………」
 槐島は、淫らな罵声を、つぎつぎに、彼女の耳にふきこんだ。
 はじめは聞くまいと、顔を左右に打ち振っていた祐美子は、後見人のたくみなひとひねりに、わなわなと顫えだし、ふいに、子宮脛部から瘤のようなものが盛りあがり、潤んだ蜜壺が収縮するのをおぼえ、思わず口走しった。
 「お、叔父さま、いきそう、いつまでも、ここに置いて、いじめて、かわいがって………。こ、こんな気持ちになったのはじめて。いっくう、もう晋治なんか、どうでもいい。あああっ、いいわっ、ね、噛(か)んでもいい、ちょっとだけ………。叔父さまのほか、もう、だれもいらないわ………」



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   |    ・若妻飼育室・   |
   |                著者 影村 英生 |
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   |  初 版 発 行   1995年12月29日 |

   |   発  行  所   株式会社 勁文社                    |
    |          住所 東京都中野区本町3-32-15       |
    |          電話 (03)3372-5021                 |

   |              |
   | 制 作 日   1995年12月29日 |
   |  制 作 所   株式会社フジオンラインシステム |
   |           住所 東京都豊島区東池袋2-62-8 |
   |          電話 (03)3590-3103 |
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   |    本書の無断複写・複製・転載を禁じます。 |
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